「だ・か・ら、なんでお前に着いていかないといけないんですか?こっちは、今忙しいんです。」
「忙しいって、たかが団子食ってるだけだろ?しかも、人の金でそんなの持って歩けるだろうが!!」
俺は内心焦っていた。久しぶりの恋人・坂田銀時とのデート。いろいろプランを考えてて、今日は映画でも観に行こうかと思っていたが、コイツが待ち合わせ時間に遅刻してその時間潰しのために甘味屋に入ったのが不味かった。
コイツ、映画観るなんて知らないし(まぁ、言ってないから仕方ないけど)大量に注文しやがった。少しは可愛いげあってもよくないか?
「立って食べたらいけないって母ちゃんに言われなかったか?」
「いつの話ししてるんだよ。ほら、行くぞ。」
半ば強引ではあるが、銀時の腕を引き立たせる。
「も~う、なんなんだよ。」
「時間がねぇんだよ。」
「時間?」
訳がわからない様で、銀時が首をかしげる。
「まだ、間に合うな。2時からなんだよ。映画。」
「何?映画観んの?……………って2時からって言った?」
「言ったけど?」
「帰る。」
甘味屋を出て、映画館に向かい歩き出したときに言われた。
「待ってくれ 。」
「忘れてたんだけど、今日2時からってさ“湯けむり温泉宿殺人事件。猫が見た犯人の顔。美人女将とルポライターが解き明かす15年前の殺人事件。”があるんだよ。だから、今日はここまで。帰るね。」
「………忘れていた割には、偉くタイトル覚えてるじゃねぇか。」
肩に触れるが、手を退けられる。
「本当に帰るのか?」
「そうだって言ってるじゃんか。」
手を振り、逆方向へ歩き始めてしまった。
「はぁ~」
銀時にフラれせっかく貰った休みが意味をなくした。
久しぶりだったから、喧嘩なんてしたくなかったのに……。
呑みに行って忘れるか。屯所に戻り残っていた書類を終わらせた。時間は夜の7時。そろそろ、行くか。
黒の着流しに再び腕を通し出掛ける。
「おや、今日は一人かい?」
居酒屋の親父が茶化す。まぁ、ここは“いつも”の場所だし、銀時との待ち合わせによく使っているからな。
「フラれたんだよ。親父いつもの。」
「銀さん、ちゃらんぽらんだからね。」
奥に行ったかと思うとすぐに熱燗が運ばれてきた。
「つまみはどうするかい?」
「何があるんだ?」
「おでんとコロッケ、煮物もあるよ。」
「おでんで、ジャガイモとちくわ……後、大根。」
「はいよ。」
今日は、来ないんだろうな。と思いながらも心のどこかで銀時を待ってしまう。
チビチビ呑んでいたら、10時になっていた。もう、銀時は来ないだろうっと思い店を出た。
月明かりでいつもは暗くて見えない路地裏までよく見える。サァ~っと風が吹きごみ袋がカサカサ揺れる。音のする方を見ると、見覚えのある白い着物、黒のブーツ。銀時だと嫌でもわかる。が、いつもと違う。少なくとも今朝の面影はない。何故なら、白の着物が赤になってる。赤で白の着物に花が咲いてる。すぐに動けない。情けないが、状況が理解できずにいる。
血の付き方が、あきらかに銀時が怪我をしているものでは無いのを示していたから……。
やっとの思いで、銀時に近づく。
息はしているが、意識がない。
「銀時!起きろ!」
ペチペチと軽く頬を叩くが反応が、まるでない。
辺りを見渡すと、1軒の連れ込み宿を見つけた。銀時を担ぎ宿に向かう。
部屋には、簡単な布団が敷かれている。布団に銀時を寝かせて洗面所に行きタオルを濡らし戻る。
顔や髪にも付いてる。ほんとなら風呂に入れてやりたいが、酔っているので無理がある。
「っん………」
銀時が、うっすら目を開けた。
「銀時、わかるか?」
お湯で濡らしたタオルで、顔を拭いてる。斜めに付いた血、勢いよく斬らないとこうは付かない。不意に、銀時の手が伸びてきた。
「どうし……ん……」
ヒヤッと冷たい手で俺の首を絞めてきた。銀時に馬乗りにされ体重をかけて締め上げてくる。
「うっ………やめ………」
必死に、銀時の手を退かそうとするも力では敵わず。もがき敷かれていた布団のシーツが、俺の足の爪で破ける。息が出来ず、口を開けても声が出ない。頭がぼっーとしてきて、警告をならすように目の前がチカチカする。
悪ふざけではなく、本気なのだと感じたときこのままでいいと思った。
銀時が本気で、俺を殺したいんならそれでも構わないと……そう思うと自然と自分の手から力が抜けた。
最後に、銀時の顔が見たくて勝手に出てる涙を拭く。
銀時は、悲しげな表情だった。
ヤメテ!!!
どこからか声がした。
銀時の手から力が抜け、一気に酸素が俺の身体を駆け巡った。
「ゲホッゲホッ。」
いきなりの事で、
「やっぱり、ダメか。」
銀時が、ため息混じりに言う。
「ぎ、ん…とき?」
「そんな虫酸の走る名前で呼ばないでくれない?俺は、白夜叉……って呼ばれてたけど、正直俺名前ないんだよね。」
銀時の姿をした者は、自分の事を白夜叉と言った。
あの戦争に参加した人物。それが、銀時の事だとは知っていた。けど、今目の前に居る者は、銀時ではなかった。うまく言えないが、銀時とは表情と言うか雰囲気と言うか、オーラ的なものが違う気がする。
「俺はさぁ、あの戦争で産まれたんだ。
ムカつくんだよね。自分は犯罪者なのに、
お前もお前だよ、なんで犯罪者を捕まえない?なんで、なにも言わず犯罪者を抱く?
だから、思ったんだ俺が
けど、
お前のこと好きなんだね。」
そういうと、白夜叉は力を失い布団に倒れこんだ。
「っん……」
「おはよう。」
「トシだぁ~♪」
翌朝、寝ぼけてるのかいつもの甘ったるい声で俺に抱きついてきた。白夜叉に首を絞められ跡が残った為、山崎に隊服を持ってこさせた。スカーフで隠しとかないととてもじゃないが、銀時の前には居られなかった。
「トシちゃん、お仕事いくの?」
いつも、俺の名前なんて言わないのに寝ぼけてるの最高かも。思わず、抱きつく。
「え?なにトシちゃん甘えたいの?」
俺の頭をポンポンしてくれる。珍しい銀時のデレに口元が自然と緩んでしまう。
「トシちゃん可愛い♪」
頬にkissされる。お前の方が可愛い過ぎる。
スースーと規則正しい呼吸音が聞こえる。再び寝てしまった。
銀時を抱き締めて、瞼を閉じた。
完