これは原作知識のない主人公が相模南として生まれ変わり、原作なんて知らねぇ!! と、色々暴走しちゃうお話。
勢いに任せて書いた
後悔はしていない
早朝の平日。時刻は午前七時を少し回った頃。
私は洗面台の前に立つと何かおかしなところはないかと身だしなみを確認する。
黒のブレザーに胸元には赤のリボン、無地のシャツにシワや汚れがないか確認してからとどめとばかりに鏡に向かってニコリと微笑む。
果たしてそこには少し冷徹そうな印象の吊り眼を持つ少女がぎこちない笑みを鏡の向こうから返してきた。
「うわぁ……」
げんなりとした感情を得ながらも私は絶句した。前世からの愛想の悪さは生まれ変わっても治らないらしい。引きつった頬がぴくぴくと痙攣する。
突然だが私には前世の記憶がある。それも幼少から死ぬ直前――道路に飛び出した子供を助けたはいいが、自身は逃げ遅れ、そのまま大型トラックに撥ね飛ばされたとこまではっきりくっきり記憶してる。ちなみに私を轢いた車の運転手は居眠りしていやがった許すまじ。
それが数奇なことに気が付くと見知らぬ場所で寝ていた私。身体も動かせず口を開いても呂律が回らず、だー、だー、と赤子のような声が出るばかり。
あれ、おかしいぞ? と思い始めたら妙齢の女の人がやってきて戸惑う私を抱き上げ、お母さんですよー! とあやし始めたところで私は察した。
結論を言おう。
私は転生したらしい。
……何を馬鹿な、現実的じゃない。と思ったが現実として起こってしまったことなので諦めるしかない。
前世の母、そして父に何一つ親孝行できず先立ってしまったのは悔恨が残るばかりである。いや、ほんと、アラサーにもなって孫の顔を見せてやるどころか結婚も出来なかったので親不孝レベルでは最大値と言っても過言ではない。
しかしそこまで顔は悪くなかったはずなのに何故前世で結婚出来なかったのか。そこだけが今世を通じての永遠の謎だ。
男友達の言葉を借りるなら、君って一人でも生きていけそうだよね。である。
……いや、これ以上過去を振り返るのは止めよう……不毛すぎる……。
今の私は花も恥じらう乙女、志し半ばで斃れた前世を教訓に目標は今度こそ後悔なく人生を全うすることである。
そのために私はひたすら自身を高めることに専念した。
始めに勉強を。
これでも前世では名門大学を卒業している。復習を兼ねつつ前世の苦手分野だった数学も高校二年生である現時点で
大学専門レベルまでに達している。他の教科も言わずもがなである。
次に運動。
これも前世で得意だったバスケを始めにテニス、バレー、スキーにスノボー……最近では合気道まで趣味の範疇ではあるがお陰様で運動神経は並の男子以上はある。
そして習えることは片っ端からやった、ピアノにバイオリン。ダンスに習字、それから料理等。我ながら飽きれるほどである。
今でこそ学業と料理教室以外の塾はさすがに止めてしまったが、それでも時々ピアノを弾きたいなー、と思ったりする。社会人になって、一息つくことができたらまたやってみるのもありかもしれない。
まぁ、以上のことから私は前世では考えられないほど多趣味な高スペック女子高生になっていた。他にこんな子供居ないだろってレベルの。いや、居たら居たらで怖い。前世から引き継いだ大人の精神と要領のよさで私はここまで自身を高めたが、こんなのは反則もいいとこである。これで私並のスペックを持つ同年代の子が居たら、それこそ真の天才だ。
「南ー? もう時間よー、学校大丈夫なのー?」
廊下からそんな母の声が響いた。我に返った私は「はーい!」と元気よく返事してから自身の赤茶の髪に寝癖がないか確認して部屋を後にした。
「じゃ、いってきまーす!」
「いってらっしゃーい」
忘れ物がないか鞄をチェックしわが家を後に、外へ出る。
ふと、凪いだ。一陣の風が頬を撫でる。
「よし、今日も頑張りますか!」
密かに両手を握り、拳を作る。今度こそ人生を全うすると、決意を胸に。
生まれ変わった私の新しい名前は
× × ×
「さっがみーん!」
学校に着き、下駄箱で上履きに履き替えていると、高らかに私を呼ぶ声がした。私ではない、緩いウェーブがかかった茶髪が振り返った視線の先で揺れる。
「わぷっ」
そして覆われる視界に着崩れた制服から押し付けられる豊満な胸。
「ちょ、苦しい……。結衣……」
ぽんぽんと、彼女の背を叩きつつ降参の意を示す。
すると彼女は慌てた動作で私を解放した。
「わ、ごめんさがみん!」
「……謝るなら最初から抱きつかないでもらえるかな……」
ふぅ、と息を整えてから改めて私は改めて彼女を見遣る。
相変わらず短めなスカートにボタンが三つほど開かれたブラウスと校則を完全無視した出で立ちの彼女はにっこりと人懐っこい犬のような笑みを私に向けていた。
彼女――
最初はそのちょっと軽めなその容姿に、性格も今時の子っぽくチャラいのかなー。と、一方的な苦手意識を持っていた私だったが、いざ話してみると彼女はとても心優しく、更には気配りもできる子で、その
「さがみーん、一緒に教室行こー?」
「う、うん」
語尾に音符が付きそうなほどの陽気な声で私の腕をぐいと引っ張る彼女の毎回近すぎる距離感に戸惑いつつも、しかし満更ではない気分を抱きつつ、私は首肯して返事を返すのだった。何が言いたいのかと言えばつまり――
――
続かない
※ガハマさんとのあれこれ追加しました。