やはり俺の大学生活は間違っている。   作:おめがじょん

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ハァハァ……
21時ぐらいから公式のツイートで知って
勢いで書きました。
次回は14.5巻読んでネタ思いついたら書きます。



番外編3:一色いろは生誕祭

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜のファミレスの雰囲気が好きだ。

 時刻は四月十五日、午後十一時三十分。メインターゲットであるファミリー層は既に帰宅の時間。俺達のような暇な人間ぐらいしか客が居ない。人の喧騒も少なく、店内のBGMが丁度いい感じの音量で耳に入ってくる。どこか懐かしいメロディーに耳を傾けていたくもあるが、

 

「そろそろ、いろはの誕生日だな……」

 

「ああ……。とりあえず、煩いからプレゼントは用意したが……」

 

「うむ。はたして、中古の教科書で良かったのだろうかという疑問は残るが……」

 

「いや、お前だったらどう思う? 教科書代浮くんだぞ? 嬉しいに決まってるだろ」

 

「……いや、盲点であった! 確かに嬉しい! 凄く嬉しい!」

 

 大学の新学期における教科書代はバカにならない。俺達のような貧乏学生にはかなり手痛い。

 昨年誕生日にラーメン奢ったらその後暫く口を聞いてくれなくてまたも大学でぼっちになってしまったので、今年は先手を取ると決めた。既に一色から今年どんな授業をとるのかは聞いている。隼人を使って方々に頭を下げた結果。上級生から格安で教科書を譲ってもらう事ができた。今年は完ぺきなプランだ。実用的かつ、売れば金になる。これ程嬉しいプレゼントはないだろう。だが──

 

「先輩方、ちょっといいですかね?」

 

 俺の正面。バイト帰りにそのまま拉致ってきた一色いろはが一体何が不満なのかわからないが、口を尖らせている。俺達の奢りのドリンクバーで注いできたコーラの氷を、ざくざくとストローでつつくと、

 

「可愛い後輩の20歳の誕生日に、普通教科書送りますかね? それと、本人の前で誕生会の打ち合わせするの本当に最悪だと思うんですけど!」

 

「何だよ一色。お前、俺達にサプライズとか期待してるの? お前が望むなら、後日不意打ちで義輝送り込むけど」

 

「我が書いた、いろは殿が主人公の異世界転生物小説音読付だ。嬉しかろう」

 

「……私が悪かったです。ごめんなさい。でも! でもですよっ!? それにしたって教科書はなくないですか!?」

 

「えっ……。いろは。じゃあ教科書要らないの?」

 

 隼人の言葉に一色が一瞬固まった。一色とて言葉では拒否してはいるが教科書は欲しいのだろう。何度でも言うが、大学の教科書代は本当にバカにならない。一色が苦悶の表情で受け入れるかどうか悩んでいる。──三分ぐらい苦しんでいただろうか。ため息をつくと、

 

「教科書欲しいです…………」

 

 一色が堕ちた。欲望には逆らえなかったらしい。ニヤニヤしながら俺が渡すと、睨みながらもきちんと教科書は受け取った。それと同時、

 

「いい加減にしな」

 

 頭部に鈍い衝撃が加わった。義輝の「ブモッ」という悲鳴が響く。痛みを堪えながら顔を上げると、青みがかかった黒髪が見えた。沙希ちゃんの登場である。本当にかっこいい最高のタイミングでの登場だ。一色なんか「沙希せんぱぁ~い」等と甘い声を出しながら抱き着いている。あれは男子限定の技じゃなかったのか。同性にも使うとはどこまでも可愛く恐ろしい女だった。

 

「遅くなってごめんね。……あんた達、いろはの20のお祝いなんだから、ちゃんと祝ってあげなよ」

 

 沙希に睨まれてしゅんとなってしまう。本当に俺達は沙希には頭が上がらないのだ。ともあれ、沙希がギリギリ間にあったのでそろそろ良い時間だ。時計の針もそろそろ十二時を回りそうだ。さりげなく隼人が追加でドリンクバーを注文し、アイスコーヒーを持ってきた。相変わらず抜け目のない男であった。ドリンクも揃ったところで、時計の針が十二時を差した。一色いろは生誕祭の開幕である。隼人のそつがないおめでとうコメントに続き、俺達もおめでとうと投げかける。

 

「はい。いろはおめでとう。これ誕生日プレゼント」

 

「わ~。ありがとうございます! これ今めっちゃ話題のハンドクリームですよね!」

 

 一色が珍しく素で喜んでいた。沙希が数時間かけてうろうろと沢山の店を回った甲斐があるものだ。飯につられてついていったが、あれは疲れた。なんだかんだ真面目で、頑固で少しだけ怖いけど優しいのだ。ゆるゆりした光景に俺の歪んだ心も矯正されていく。百合はその内ガンに効くかもしれない。

 

「教科書より全然嬉しいです~。沙希先輩。ありがとうございます!」

 

「つーか、まさかあんたら。本当に教科書だけじゃないよね?」

 

 ゆるゆりから一転。沙希の顔が歪んだ。グラップラーのような厳しい顔つきになる。恐るべき変わり身の早さだった。しかし隼人は余裕を崩さない。義輝もやれやれとばかりに肩を竦めた。どうでもいいがこの態度。非常に見てて不愉快極まる。

 

「ちょっとしたジョークだよ。──はい、いろは。これは俺から」

 

「流石は葉山先輩! ありがとうございます!」

 

「いろは殿。我からはこれだ。小説も欲しければいつでも製本して届ける所存である」

 

「まさかの中二先輩までっ!? しかもこれ良いタオルじゃないですか~。欲しかったんですよね~。小説の方はお気持ちだけ頂いておきますね~」

 

「まったくあんた達は。最初から持ってるならきちんと祝ってあげなさいよ」

 

 朗らかな青春ラブコメ的な空気が漂っている中、俺一人だけが脂汗をかいていた。やはり俺の青春ラブコメは間違っている。主に、俺だけが。ヤバい。俺だけ何も用意していない。本当に教科書が最適解だと思ってしまっていた。隼人に負けるのは仕方ない。義輝以下、という事実が更に心を重くしている。

 

「先輩達も人が悪いじゃないですか~。それで、先輩は何をくれるんですか?」

 

 すっかり機嫌の良くなった一色が可愛い笑顔で俺を見る。沙希も再びゆるゆりモードだ。そんな中、隼人と義輝は俺の異変に気付いたようだ。助けて!とばかりにアイコンタクトを送ったが────あいつら、目を逸らしやがった。このままでは一色になじられ、義輝以下のレッテルを張られた挙句に沙希に〆られる。腹を括るしかない。みっともなくあがいて。俺が一色に送る事のできる誠心誠意とは何か。答えは一つしかない。むしろこれしかない。

 

「ああ、一色。そうだな…………」

 

 ゆっくりとポケットに手をまわし所在を確認。涙を呑みながら俺は宣言した。

 

 

「今日の支払いは、全部俺が持つわ……っ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全くもう。最後はお金で解決ですか。本当に最悪ですね」

 

 むくれながらケーキを食べる一色の正面。俺はソファーの上に正座させられていた。俺の奢りが決まった瞬間。一色が片っ端からデザートを全種類頼み始めたので、気を利かせた店員さんが隣の席も使えるようにしてくれた。隣の席では人の金という事で、一切遠慮のない義輝と隼人が穏やかにステーキを注文している所だった。八幡。コノウラミワスレナイ。

 

「悪かったよ……。だからこうして俺の奢りで誠意をもって対応してるじゃねぇか……。こんなに奢ったの、お前ぐらいだ」

 

「はっ! 何なんですかいきなりお前だけ特別アピールとか口説いてるんですか? そういう台詞はもっと私の事大事にして、私にだけ優しくしてからお願いします。ごめんなさい」

 

「二十歳になってもその芸風続けるの?」

 

「先輩こそ二十歳超えてるのに芸風変わらないじゃないですか」

 

「違うから。高校生の頃は貧乏キャラじゃなかったから。捻くれてぼっちで貧乏になっただけだから少しは俺も成長してるんだぞ」

 

「それ悪化してるじゃないですか……」

 

 ドン引きしてる割にはデザートは随分と幸せそうに食べている。そんな笑顔を見せられては、こちらももう何も言えない。満足いくまで食って欲しい。隣の席で「炒飯追加で」「我、ステーキおかわり」とかほざいている奴らは本当に地獄に落ちてほしい。

 

「いろは。二十歳になったからお酒もう頼めるね。何か飲む?」

 

「いいですね。何かおススメとかあります?」

 

「あたし最近焼酎飲む事多くてねぇ。そうだ。焼酎頼んでドリンクバーで割ればいいよ。それなら飲みやすいでしょ」

 

「いいですね! じゃあ、焼酎頼みますね。──ボトルで!」

 

「どんだけ飲む気なんだよ……」

 

「先輩のお財布が空になるまででーす」

 

 ああ、この小悪魔め。なんて思ったがそのウインク可愛すぎなのでつい許してしまう。何なのこいつ本当に。しかしまぁ、せっかく二十歳の誕生日だ。俺も一色に嫌味を言う程子供というわけでもない。一色に言わせれば悪化しているが、少しは大人になった自負もある。そうこうしている内に店員さんが人数分のグラスと焼酎を持ってきてくれた。氷までついている気遣いがありがたい。まずはロックで乾杯といきたい。グラスに氷と少しの焼酎を注いて行く。

 

「先輩。乾杯の音頭をお願いします!」

 

「はいはい。あー……おめでとう一色。これからもよろしく」

 

「ええ、先輩方ありがとうございます! これからもよろしくお願いします」

 

 グラスを打ち付け、皆で乾杯した後焼酎を喉奥に流し込む。すると、ふと一色と目が合った。「美味しいですね」と小さく呟くと照れくさそうに一色は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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