彼を助けたのは英雄と呼ばれた王だった。
細かな設定無視の話です。
『IS』
それは篠ノ之束が産み出した世界最強の兵器。その性能は今までの兵器をも上回り、人々を驚愕させた。
更に世界を震撼させた白騎士事件を切欠に世界はISの開発に尽力した。
しかし、その世界最強の兵器にも欠点はあった。
それは女性にしか扱えないという点だった。
そのISの登場でそれを操縦できる女性は一気に社会的地位を築き上げ世間は遂に女尊男卑の色に染まってしまった……
そしてISの登場から数年が経ち、ISの世界大会が開かれる程の人気振りとなる。
その第二回モンド・グロッソの会場で誘拐される一人の少年。
名を『織斑一夏』
彼の姉の『織斑千冬』が世界最高のISパイロットであるが故に彼女の大会連覇を阻むために彼は誘拐されたのだ。
誘拐され、何処かの倉庫に連れて来られた一夏は縄で縛られ、パイプ椅子に座らせられていた。
「お前等、何なんだ!俺をどうしようってんだ!」
「別にお前をどうこうするつもりは無い。ただ織斑千冬には決勝を辞退して貰わないといけなくてな」
叫ぶ一夏に誘拐犯の一人が答えた。
「ま、黙って誘拐されてろ。お前や織斑千冬にはそれだけの価値がある」
「そんな事の為に……俺や千冬姉を利用する気なのかよ!」
キレ気味の一夏は自身の状況が解っていないのか誘拐犯達に噛みつく様に叫んだ。
「うるさいよ!」
「がっ!?」
叫ぶ一夏に誘拐犯の一人でISを纏った女性が一夏を殴り付けた。
「男なんぞ粋がってんじゃない……殺すぞ」
「ぐ……うぅ……」
一夏の紙を摑んで睨む女性に一夏は唇から血を流しながらうめき声を上げた。
そんな時だった。
「やれやれ、大会の近くでコソコソと動く羽虫共が居ると思えば……」
「誰だ!」
誘拐犯は男が五人とISを使っている女性が一人。そして誘拐された一夏で計七人の筈だがそれ以外の人間の声が聞こえたのだ。
誘拐犯達は慌てて銃を抜く。
「大会連覇を阻むために血縁者を人質にするとは雑種は所詮、その程度の事しか出来ぬ哀れな存在か」
「ちっ、下らない事をベラベラと出て来たらどうだ!」
ISを纏った女性が叫ぶ。すると部屋の片隅から一人の少年が姿を現した。
その少年は金髪で黒のライダースーツを着ていた。
「貴様等、下選な者どもに我が面を晒してやる事を光栄に思うが良い」
「テメェ、イカれてやがるのか!?」
誘拐犯達は少年に銃を突き付けた。
「雑種風情が……分を弁えろ」
「なっ……がっ!?」
少年のこめかみに銃を突き付けていた男が消えた。
正しく言えば彼は壁に剣で貼り付けにされていた。
「な、何をしやがった!?」
「興が冷めた……去れ」
男達は何が起きたか理解できなかったが銃を金髪の少年に向ける。金髪の少年は小さく溜息を吐くとパチンと指を鳴らした。
すると銃を突き付けていた男達は最初の男同様に壁に貼り付けにされていた。
剣、槍、斧様々な武具で壁の一部にされてしまった男達を見てISを着ていた女性は叫ぶ。
「テメェは何者だ!」
「ほぅ?それがISか。雑種が生み出した玩具にしては我の興味を引く」
女性の叫びに金髪の少年は女性が纏うISを興味深そうに眺めた。
「巫山戯やがって!」
「どれ遊んでやるか」
ISを纏う女性は金髪の少年に襲い掛かった。対する金髪の少年は薄く笑みを浮かべるとパチンと指を鳴らした。
その瞬間、金髪の少年の背後に謎の空間が現れ、其処から無数の剣や槍、斧、弓……様々な物が顔を出したのだ。
「なっ!?ガァァァァァォォォォッ!?」
「ふん、軽く撫でた程度でコレか」
ISを纏う女性は剣や槍に弾かれて吹き飛ばされた。
壁に激突しダメージはデカい。
「シールドエネルギーが一瞬でゼロに!?しかもアラクネの装甲がぶっ壊れやがった!?」
「三流以下の四流の宝具しか使わなかったから、その程度の損傷で済んだのだ。有難く思うのだな」
驚く女性を後目に金髪の少年はツマらなそうに告げる。金髪の少年は既にISへの興味を失っていた。
「く、くそっ……」
「ふん、逃げたか……ま、いいだろう」
ISを纏う女性はボロボロになったISを無理矢理動かすと壁を突き破って、そのまま逃げていった。
「あ、あんた……」
「粋がったものだな雑種」
何かを言おうとした一夏だが金髪の少年は一夏を見下ろすとツマらない物を見る目で見ていた。
「あの様な状況で敵に噛み付けばどうなるか想像すれば容易に結末は見えたであろう阿呆が」
「くっ……」
一夏は金髪の少年に反論しようとしたが反論出来ずに唇を噛むしか出来なかった。
「だが、ただ座して死を待つ者よりマシだ。貴様のような阿呆は見ていて飽きぬ」
「なっ……」
一転して『無謀な阿呆』から『愉快な阿呆』にランクアップしたかランクダウンしたか判らない評価に一夏は言葉を失う。
「貴様はブリュンヒルデの弟なのだろう?貴様が舞台に上がり、無様に踊る様を愉しみにさせてもらうぞ」
「なっ……おい、待て!」
金髪の少年は一夏にそう告げるとさっさと扉から出て行ってしまう。一夏の制止にも甲斐を成さず一夏は縛られたままの状態で放置となってしまった。
それから数分後に決勝を辞退してドイツ軍と協力し一夏を救出に来た千冬だが、犯人は既に死亡しており、一夏は金髪の少年に助けられたと証言したが、その様な少年の目撃情報は無く、謎は深まるばかりだった。
◇◆日本・冬木◇◆
「何処をほっつき歩いていた?」
「ドイツで行われていたISとやらの大会見物だ」
教会の一室で神父は金髪の少年に何処に行っていたかを問う。金髪の少年はワイングラスに赤いワインを注ぎながら答えた。
「ISの大会……モンド・グロッソか。お前がそんな大会に興味を示すとはな」
「大会そのものは退屈そのものよ。むしろその後が面白かったがな」
意外そうに呟いた神父『言峰綺礼』の言葉を否定する金髪の少年。
「人生という舞台で人は必ず一役演じなければならない。あの阿呆がどの様な役に成り果てるか……くっくっくっ」
「英雄王がそれほどに関心を示すのだ……私も多少興味が出てきたよ」
金髪の少年『英雄王ギルガメシュ』はワイングラスを揺らし、中のワインを愛おしそうに見詰めていた。