砕蜂のお兄ちゃんに転生したから、ほのぼのと生き残る。   作:ぽよぽよ太郎

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あけましておめでとうございます。
更新が大幅に遅れたことについては、本当に申し訳ありません。
まったり更新な本作ですが、どうか今年もよろしくお願いします。

新章のプロローグです。

*注意*
本日は2話更新しています。ご注意下さい。
こちらは2話目です。
 


第23話

 

 

         +++

 

 

 

 

 一方の檜佐木は、迫りくる(ホロウ)への対処で精一杯だった。なんとか浅打ちで攻撃を逸らしてはいるが、一対一だからこそできていることでもある。空中にいた十体の(ホロウ)のうち九体は未だに空中に浮かんでいて、檜佐木と(ホロウ)の戦いを面白がって眺めている。

 

 だが、どうやら時間切れのようだった。痺れを切らしたのかもう一体の(ホロウ)も動き出し、檜佐木を葬るために唸り声を上げながら迫ってきた。

 

 ここまでかと、(ホロウ)の攻撃をなんとか防いでいた檜佐木は、己の最期を予感していた。一体の攻撃を防いでいる檜佐木には、もう一体の攻撃を防ぐ(すべ)がないのだ。

 

 「――舐めんじゃ、ねえッ!!!」

 

 それでも、諦めることはできなかった。檜佐木は全力で(ホロウ)の爪を弾くと、完全に崩れた体勢のまま吠えた。見習いとはいえ、死神の矜持を示すために。

 

 ――ガキィィィィン!!!

 

 だが、そこに飛び込んでくる影。(ホロウ)の攻撃に為す術のなかった檜佐木を庇うように、雛森、恋次、イヅルの三人が立ちふさがり、もう一体の(ホロウ)の攻撃を浅打ちで受け止めた。

 

 「お前ら……!!」

 

 驚いた様子の檜佐木。

 

 「申し訳ありません! 命令違反です!」

 

 「助けに来たんだから見逃せよな、センパイ!」

 

 恋次とイヅルの二人は恐怖を紛らわすかのように檜佐木へ叫ぶ。半ばヤケクソだったが、なんとか攻撃を防げたことに安堵する。一方の雛森は、謝罪の(いとま)も惜しんで自身の覚えている最高火力の鬼道を詠唱を始めた。一刻も早く、この状況を打破するために。

 

 「――”君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ”! ”焦熱と争乱 海隔て逆巻き南へと歩を進めよ”!」

 

 標的とする(ホロウ)を睨み、雛森は叫んだ。

 

 「――破道の三十一”赤火砲”!!!」

 

 その言葉と共に、灼熱の玉が(ホロウ)へと撃ち出される。それは轟音と共に(ホロウ)の顔面を捉えて、その顔から黒煙を上げる。

 

 「「「よし!!!」」」

 

 完全に決まったことで笑みを浮かべる三人。

 

 「……いや――」

 

 しかし、檜佐木が掠れた声で呟く。

 

 「――ダメだ……!」 

 

 煙が晴れると、そこには鬼道の直撃を受けても尚無傷の(ホロウ)。他の九体ももちろん顕在だ。

 

 「嘘だろ……?」

 

 誰が口にした言葉だったか。全員が共通して感じたその言葉が、絶望の空間に虚しく響く。

 

 自分たちはここで死ぬ。為す術無く、この(ホロウ)たちに殺される。四人はその事実を肌で感じ、手足が震えた。既に他の生徒の姿はなく、取り残された四人。彼らは震えを止める努力もできず、恐慌状態に陥りかけた。

 

 こんなの嘘だ。嫌だ。死にたくない。

 

 そう叫び出す寸前、それは起こった。

 

 「――ッ!?」

 

 四人を襲おうとしていた十体の(ホロウ)のうち、半分が爆散したのだ。

 

 「な、なんだァ!?」 

 

 そして、困惑する四人の前に先程の死神が降り立った。死覇装(しはくしょう)(ホロウ)の攻撃を受けたせいかボロボロになっているが、肉体に傷は見当たらない。

 

 「あーくそ……、そろそろ出てこいっての……」

 

 彼はなにかをぶつくさ言いながらも、四人を守るようにして(ホロウ)たちの前に立ちふさがる。四人はその光景に唖然としながらも、どこか安堵もしていた。彼の背中は、それほど大きく見えたのだ。

 

 そこからは一方的だった。彼は腰に差した斬魄刀を使うことなく、白打のみで次々に(ホロウ)をなぎ倒していく。

 

 (ホロウ)も反撃するが、彼は先程攻撃を受けたのが嘘のように、その全てを難なく避けていく。そして、攻撃しようとした(ホロウ)は同時に白打をぶつけられ消滅していった。

 

 体躯の違いなど意味を成さないほど、決定的な力の差。

 

 そんな殲滅戦の様を成した戦闘もすぐに終わり、死神は息を吐いて四人の元へと向かってくる。その顔は戦闘中とは違いどこか飄々としていて、気の抜けた雰囲気を感じさせた。

 

 「「「「……」」」」

 

 その雰囲気に当てられて、身構えていた四人は身体から力が抜けていく。先程まで死地にいたのだ。それがいきなり脅威を取り除かれ、置いてけぼりにされた感覚を拭えなかった。

 

 ともあれ、彼にお礼を言わねばならないだろう。持ち前の真面目さでいち早く再起動した雛森は、単純にそう思って口を開く。

 

 「あの……」

 

 だがそこで、不意に彼女は身体が硬直するのを感じた。蛇に睨まれた蛙のように、背中に嫌な汗が滲む。()()()()()()()()()()

 

 「……射殺せ――」

 

 囁きを感じて、雛森は思わず振り返えろうとした。

 

 「――きゃっ……!」

 

 それと同時に、雛森は誰かに抱きかかえられ強引に身体を持ち上げられた。突然の衝撃に雛森は悲鳴を上げながら目を瞑り、自分を抱き上げた人物にしがみ付く。そうでもしなければ振り落とされそうな気がしたのだ。

 

 ぐんぐんと身体にぶつかる風を感じながら、雛森は次第に離れていく悪寒を認識した。あのままあの場にいたら、きっと良くないことが起こっていた。なんとなくだが、雛森はそんなことを思った。

 

 どれくらいそれが続いただろうか。次に雛森が気が付いた時には、衝撃は既に止んでいた。恐る恐る目を開けると、そこにはこちらを覗き込んでいる死神の姿がある。

 

 彼は抱えていた雛森を地面に降ろしながら、気遣うように穏やかな口調で尋ねてくる。

 

 「大丈夫か?」

 

 「え? は、はい、大丈夫……です……」

 

 その張りのある低い声が耳朶に響き、雛森は急に恥ずかしさが込み上げてきた。目鼻立ちのはっきりとした綺麗な顔で覗き込まれていることも、恥ずかしさの一因かもしれない。

 

 なんとなくこの死神は自分を助けてくれたのだということを理解できていた雛森だったが、すぐにここにはいない三人のことが頭を過る。残された、恋次、イヅル、檜佐木の三人のことが。(ホロウ)はいなくなったとはいえ、あの場にまた現れる可能性だってあるのだ。それに、悪寒の正体が彼らになにか害を成すかもしれない。

 

 「……ッ! み、みんながまだ――!」

 

 だが、慌てる雛森とは対象的に、死神は苦笑いを浮かべていた。

 

 「彼らは大丈夫だ。今頃はもう、五番隊の隊長さんたちが来ているはずだからね」 

 

 「五番隊……藍染隊長が!?」

 

 藍染惣右介。真央霊術院にも講師として頻繁に訪れている隊長で、雛森たち生徒の間でも人気の高い人物だ。彼の名前が出たことで、雛森はほっと安堵の息を吐いた。人格、実力ともに護廷十三隊でも指折りとされている藍染が一緒なら、あの三人に危険はないはずだからだ。

 

 そこでふと、雛森は目の前の死神の表情が改めて目に入った。彼は相変わらず飄々とした雰囲気を崩していないのだが、そこ顔はどこか苦しそうに見える。うっすらとだが、汗も滲んでいるようだ。そう、まるで怪我をしているかのように。

 

 雛森がはっとして彼の身体を見回すと、その脇腹に血が滲んでいるのが見えた。(ホロウ)の攻撃というよりも、刀を突き刺されたような小さく深い傷だ。

 

 「あ、怪我を……!」

 

 驚いた雛森は思わず叫びそうになるが、怪我をしている本人の死神は苦笑いを浮かべたままなんともないように立ち上がった。

 

 「大丈夫だ、この傷は大したことない。……全く、油断して一撃もらうなんて、夜一さんに知られたら――」

 

 「夜一さん……?」

 

 最後の部分は聞き取れなかったが、”夜一”という言葉だけは聞こえた。知っている名前が彼の口から出てきたことに、雛森は少なからず驚いた。その名前がというよりは、その名前を彼が親しげに呼んだことにだ。

 

 四楓院夜一。護廷十三隊でも古参の一人である二番隊の隊長で、少し前に再編された隠密機動の総司令でもある一廉(ひとかど)の人物だ。尸魂界(ソウルソサエティ)の人間ならば、誰もが聞いたことのある名前だろう。大貴族であり隊長でもあるため、普通の死神ならば面識を持つことさえ難しいはずだ。そんな女性と親しい素振りをする彼は、一体何者なのだろうか。

 

 (も、もしかしたら、高位の貴族だったりするのかも……)

 

 流魂街出身の雛森は、それほど貴族のことを知っているわけではない。だが、霊術院で生活している間に感じた貴族に対するイメージは良いものではなかった。何かと傲慢でプライドの高い人々。そんなイメージだ。例外といえば、気安いことで知られる四楓院夜一くらいだろう。

 

 そんな貴族を怒らせてしまったことなど、雛森は想像もしたくなかった。

 

 だからこそ、目の前の死神が貴族だった場合のことを考えると途端に冷や汗が出てきた。何か無礼なことをしてしまったのではないか。粗相をしたのではないか。

 

 混乱した雛森は、とにかくお礼と謝罪を言うべく慌てて顔を上げた。

 

 「――縛道の三十二、”流雷(りゅうらい)”」

 

 だが、言葉を発する直前、パチンという音がした。同時に雛森は自分の身体から力が抜けていくのを感じた。踏み込むこともできず前に倒れる身体。ぽすりと自分の身体が彼の胸に抱きとめられたのを感じ、同時に視界が黒く染まったことに気が付いた。

 

 (あ、ま、また抱きしめられてる……)

 

 顔は赤くなっていないだろうか。そんなことを思いながら、段々と意識が遠くなっていく。

 

 「――ごめん……」

 

 そして、泣き出しそうな声を最後に、雛森の意識は消失した。

 

 

 

 

 

 

 

 次に雛森が目を覚ましたのは、四番隊の病室だった。小さな個室で、ベッドの横には小さな椅子とテーブルが備え付けられている。

 

 「――あ、目が覚めましたか」

 

 雛森がベッドから身体を起こしてぼけーとしていると、部屋に入ってきた女性隊士から声がかかる。四番隊の救護員だろう。彼女は雛森が目覚めたのを見て、誰かを呼びに足早に部屋を立ち去った。

 

 手持ち無沙汰な雛森だったが、すぐにそれは解消されることになった。部屋を去った女性隊士が連れて来たのは、厳格な雰囲気を放つ壮年の男だった。

 

 彼は自分を一番隊の者だと話し、(ホロウ)の襲撃事件についての事情聴取に来たと言った。

 

 「事情聴取……ですか?」

 

 「そうだ。(ホロウ)の襲撃時に現れた死神について、知っていることを話してもらう」

 

 「あの人の?」

 

 雛森たちにとって、命の恩人ともいえる死神。死神を目指す生徒たちからすれば、憧れていた死神そのものといえる強さを持っていた。だが、男から告げられたのはそんなイメージを覆すものだった。

 

 「――あの人が、犯罪者……?」

 

 「ああ、そうだ。奴は凶悪な事件を起こした重罪人の逃亡幇助を行い、護廷十三隊から指名手配されている」

 

 「そんな……」

 

 その後のことは曖昧だった。雛森も年頃の娘だ。窮地を助けられたことで、彼に対して多少なりとも憧れを持っていた。そんな相手が、指名手配されるような犯罪者だったのだ。自分の見た彼の姿と、目の前の男が言う彼の本性。その乖離に驚き戸惑っているうちに、事情聴取は終わったようだった。

 

 元々ただの死神見習いから重要な情報を聞けるとは思っていなかったのか、男は雛森から有用な情報が出てこないと判断すると、すぐに部屋を出て行った。

 

 恋次やイヅル、檜佐木にも同じように事情聴取をしたようなのだが、彼らからも情報は出てこなかったらしい。

 

 混乱する雛森だったが、どうしても自分を助けてくれた彼が悪人には思えなかった。雛森が意識を失う間際の表情なんかは、特に――

 

 「――あっ……!」

 

 そこで、雛森は彼が最後に呟いた名前を思い出す。四楓院夜一の名前を。 

 

 「あの人に聞いてみれば……」

 

 彼と夜一の関係は、雛森にはわからない。そのことがなんとなくひっかかる雛森だったが、やるべきことは決まった。死神見習いでしかない自分が彼女に会えるとは思えないが、彼について聞いてみたいという思いは変わらなかった。

 

 夜一とコンタクトを取る方法について、雛森は思考を巡らす。先程まで感じていた疲れは、もうなくなったいた。

 

 「――あの、だから事情聴取はもう終わったんです! もう休ませてあげて下さい」

 

 「だから、事情聴取なぞはせんと言っておろうが! 儂は聞きたいことがあって来たんじゃ!」

 

 そんな雛森の耳に、病室の外から喧騒が聞こえてきた。誰かが言い争っているようだ。

 

 「彼女は一応、今日一杯は安静にしていなくちゃダメなんです! 精神的な疲れでトラウマになったらどうするんですか!」

 

 「ええーい、こうなったら力づくで――!」

 

 「――夜一隊長。隊舎内ではお静かに」

 

 「あ、隊長!」

 

 「げっ……う、卯ノ花……」

 

 そして、その会話に驚愕する。

 

 「夜一隊長が、外にいる……?」

 

 雛森は慌ててベッドから立ち上がり、病室の扉を開いた。彼について、聞くために。

 

 「あ、あの――!!!」

 

 

 

 

 

 




次回から原作一巻の時系列に突入します。
龍蜂がどうなっているのか、ぜひお楽しみに!

今後はある程度定期的に更新できると思いますので、これからもよろしくお願いします。


 
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