大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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前回までのあらすじ

 大坂鎮守府に新規着任艦が配備され、着々と運営が軌道に乗りつつあった、そして今日も其々は明日を見つめ、努力をしていくのである。

 それでは何かご意見ご要望があればお気軽にどうぞ。


2018/10/09
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きましたforest様、坂下郁様、拓摩様、orione様、柱島低督様、有難う御座います、大変助かりました。


護身完成、そしてロボ

「摩耶、用意は出来たか?」

 

「ああ、言われた通り準備はしたけどよ……マジでやんのか?」

 

 

 鎮守府にある室内訓練場、通称『体育館』、そこの一角では10m四方畳敷きのエリアが作られ、そこには長門に大鳳、更には榛名が一同に会し、彼女達の前では艤装を展開した摩耶がストレッチを終えて待機をしている。

 

 その摩耶に対する位置には白いジャージに身を包んだ吉野が手足をプラプラさせて同じく待機状態、運動を想定した格好はしているものの艤装を担ぐ相手に対してこちらは素手のままという、摩耶からしてみれば首を捻る様な絵面(えづら)が展開されている。

 

 

「今日は提督がどれ程出来るのかという試しの為にお前に来て貰った訳だが、事前に言った様に飛び道具は抜きで、純粋に格闘での試しをして貰おうと思っている」

 

「試しっておい長門、最近提督が色々トレーニングしていたのは知ってるけどよ、これからすんのは要するにスパーだろ? それも艤装込みでって一体何考えてんだよ?」

 

「艦娘と人間では超えられない力の差が存在する、しかし極一部の者は……陸の上という条件付きでだが、我々と張り合える者が居るのはお前も知っているだろう?」

 

「ふ~んウチの提督がその域に達しているってか?」

 

「私に大鳳、そして榛名が全力で仕込んだ、と言えば納得するか?」

 

「……まぁ長門がそこまで言うなら別にいいんだけどよ」

 

 

 摩耶が見る吉野は既に準備を終えているのか静かにこちらを見詰め、戦闘開始前に感じる特有の緊張感をその身に漂わせている。

 

 静かに立つ佇まいは素人のそれでは無く、対峙して初めて髭の眼帯には隙という物が見当たらない事に気づく、強い弱いという話は別として、摩耶から見てもその様は少なくとも戦う者としての基礎を備えている様には見えていた。

 

 

「はっ、面白れぇ、そんじゃちょっくらお手合わせといこうかねぇ」

 

「良し、では試しの差配はこの長門が担当しよう、それでは早速だが始めて貰おうか、双方準備はいいな?」

 

 

 吉野と摩耶は声に頷き、長門の口から出た始めの合図に構えを取りつつ様子見の為に互いの出方を伺っている。

 

 左前で軽く構える吉野に対し、艤装を背負う関係で立ち技しか繰り出せない摩耶は身を低くして構え、目の前にいる髭眼帯を睨み付ける。

 

 

 摩耶の動きに合わせ足に掛かる体重を調整し、突っかかろうとする方向へ牽制をしつつも視線は摩耶へ向けたまま。

 

 やや前に体重が掛かっているものの体幹(たいかん)はブレず、細かなフェイントを放ってもそれに誘われる仕草は皆無。

 

 踏み込もうとする先を尽く読み、出鼻を挫かれ前に出る事が出来ない摩耶、『戦いとは陣地の取り合い、詰め将棋と同じく』を地で行く行動。

 

 その対峙する姿はまごう事無き強者特有の佇まい、摩耶をして攻め手に欠く程の立ち振る舞いは、長門の言う『艦娘と渡り合える者』という存在には違いないと認識した摩耶は嬉し気に口角を吊り上げる。

 

 

 陸の上限定であろうと艦娘と人間という種の壁を飛び越える存在、強者、それが自分の指揮官であるという喜び。

 

 ならば小手先の技など必要無いだろう、力を叩き付けて強引に攻め、どこまでやれるのか見てみたい。

 

 軸足に力を込め、高雄型四番艦が今正に飛び出そうとしたその時、長門の制止が入る。

 

 

「……何で止めんだ?」

 

「そこまでだ摩耶、今お前は何も考えず強引に飛び込もうとしたな?」

 

「ああ、だから?」

 

「止めておけ、それ以上は恐らく後悔する事になる」

 

 

 後悔する事になる、長門が言う『そのままやれば負けが確定する』とも取れる言葉に摩耶の表情が険しい物になる。

 

 確かに力ずくで真っ直ぐ突っ込もうとはしていたが、人が繰り出す一撃で艦娘が行動不能に陥るという事は先ず考えられない、例えそのやり方で窮地に陥ろうともそこから活路を見出す自信も摩耶にはあった。

 

 ならば事が始まる寸前で待ったが掛かるのは彼女にしてみれば本意では無く、不完全燃焼で顔を歪めるのも当然の事だろう。

 

 

「榛名もこれ以上は止めておいた方がいいと思いますよ?」

 

「お前まで止めんのかよ……何なんだよったくよぉ」

 

「これ以上やれば提督は医局直行コースだ、もしそんな事になったらお前は後悔しないか?」

 

「……は?」

 

 

 怪訝な表情で首を傾げる摩耶の前では至極真面目な相で腕を組む長門、そして隣でうんうんと相槌を打つ榛名。

 

 

「……えっと? 今なんつった?」

 

「何をと言うかほら、虚弱体質の提督がお前の一撃なんぞ食らってしまったら跡形も無く吹き飛んでしまうだろう? だから試しはここで終了だ」

 

「はぁぁ!?」

 

「腕立て60回で限界を迎える筋力、ランニング3キロで行動不能になる体力、そんな人並み以下の者に艦娘の一撃が入ってしまったら、重症は確実……ヘタをすれば再起不能です」

 

 

 大鳳が真面目に解説する向こうでは、居住まいを正して深呼吸をする髭眼帯。

 

 その姿は相変わらず隙の無い物に見えるが、実は吹けば飛ぶような脆い存在であるという。

 

 

「いやお前ら……え? 今提督ほら、何かほら」

 

「どんな相手にも屈しない強靭な精神力、交渉の場では本音を絶対見せないポーカーフェイス、そして小手先事なら器用にこなしてしまう学習能力」

 

「そこに榛名達が格闘の構えやフェイントを徹底的に叩き込み、威嚇方法を伝授する、名付けて『張子の虎』作戦」

 

「ハッタリか!? 要するに今のアレ、ハッタリなんか!?」

 

「大本営第二艦隊旗艦を張ってたお前に通用するならまず合格だな、うむ、これで提督の護身は成った」

 

 

 ニヤリと笑うナガモンにうんうんと相槌を打つ武蔵殺し、そしてその向こうに居る髭眼帯は鋭い眼光で前を睨み、蚊が停まりそうなヘロヘロしたスピードでシャドーボクシングを始めている。

 

 軍の中でも特に攻撃に特化し恐れられる存在から全力でハッタリを伝授される艦隊司令長官、色んな意味でやり切った感の彼女達に囲まれて摩耶は怪訝そうな顔のままその様子を見るという体育館。

 

 

「フッ……ハッタリなら任せたまえ」

 

 

 こうして大坂鎮守府司令長官、海軍中将吉野三郎は新たな力を手に入れ次のステージに飛躍していくのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「えーとそれで? 母艦の操船システムは上手くいっていると?」

 

「はい、提督が繋がるというのはやはり無理がありましたけど、電算機に引き上げた叢雲さんの艤装を繋いで、その上で叢雲さん自身がシステムに繋がる事で無理なく全ての機能が整いました」

 

「……元々艦の前世がある艦娘だからこそ船と同期しても違和感が無いと」

 

「それもあるけど艤装のワンクッションがあるから感覚的に動かせるって感じかしら、まったくハカセ様々よねこれは」

 

 

 大坂鎮守府地下四階、潜水母艦の出撃を想定して作られた水中ドックに吉野と夕張そして叢雲が集って、未完であった新型艦娘母艦のソフトウェア面の試験を行っていた。

 

 全長108m、全幅15.2m、喫水深は20mを超える半潜水艦型の船は、今も軍に残されたそうりゅう型潜水艦に似たフォルムであり、それより幾分か長く幅が倍程もある船体となっている。

 

 機関は静寂性を重視しスターリングエンジンに回帰発電システムを組み込んだ物を採用、それは妖精さん技術で極力小型化され、バッテリーの蓄電容量は従来の物を桁一つ上回る性能を有している。

 

 そこへ更に緊急推進用のモーター式ウォータージェットを組み込む事で、短時間ではあるが水中を60ノットで航行するという馬鹿げた性能を叩き出す。

 

 船内は轟天号よりは狭いものの、工廠や入渠施設を備え、3艦隊を収容したまま行動する事を可能としたこの船は、夕張お決まりの漆黒で外装を塗り上げられている。

 

 

「強行潜水母艦『泉和(いずわ)』、これが私の新しい(艤装)って訳ね」

 

「本当なら誰でも接続可能なソフト周りを目指したんですけど、流石にこれだけ大掛かりな物になっちゃうと電算機だけでは処理に無理がありまして」

 

「まぁ私の場合艤装と切り離されても影響無いし、元々研究素材としてバラされる予定のブツを再利用出来たんなら丁度いいんじゃないの?」

 

 

 ドックに浮かぶ巨体から這い出てきたむちむちくちくかんはニヤリと微笑み、船体横に備えられたバルジ形魚雷室の上に降り立つと、腰に手を当て仁王立ちして吉野達を見下ろしている。

 

 元々この船は轟天号から得られたデータを下に、第二特務課で運用する為の最適化を更に突き詰める為に作られた船であった。

 

 装甲を追加する代わりに潜行する事で防御面をカバー、操船は従来と同じ集中式で平時なら一人でも航行は可能であるが、そこより一歩踏み込み操船する者がシステムに直接介入する事により戦闘航行も可能にする仕様となっている。

 

 その役目は吉野がテストべッドを勤めていたが、結果は芳しく無い為にその計画は頓挫し掛かってはいたが、そこに天草が研究していた技術と叢雲という存在を船の(コア)に据える事で技術面を強引にクリアし、現在この船は抜錨に向け日々試行錯誤を繰り返している。

 

 

「システムがシステムなだけに、支援艦隊が出る時は叢雲さんが出ずっぱりになっちゃう事になるのは申し訳ないんだけど」

 

「ム・ラ・ク・モ」

 

「……はい?」

 

「私は大坂鎮守府所属、練習駆逐艦叢雲よ、いつまでも敬称付きで私を呼んでたら周りに示しが付かないでしょ? いい加減そこんとこきっちりしたらどうなのよ」

 

 

 目を細めるドヤ顔のむちむちくちくかんに苦笑を浮かべ、その様を見る髭の眼帯。

 

 あの時やった狂気の演習、それから二日、叢雲を含め勢揃いした最初の五人は地下に潜り誰とも会おうとしなかった。

 

 そして再びそこから現れた彼女はいつもと同じ、何一つ変わらない姿の叢雲としてリスタートを切っていた、吉野の私物である緊急脱出艇に乗って教導任務に携わり激を飛ばす、業務へ積極的に関わる姿も相変わらず。

 

 ただ一つそれまでと違ったのは、彼女が日課の様に通っていた、日が沈む頃に海を見に行くという事をしなくなった事、何かを吹っ切ったのか、努めてそうしているのかは判らかったが、時間が許すなら必ず海を見に行っていた彼女はそれをしなくなった、だから彼女はきっと変わったのだろうと吉野は納得していた。

 

 そしてここに集った他の四人も特に何する訳では無く、二日篭った地下での日々を誰にも告げず、其々は笑顔で自分の居場所へと戻っていった。

 

 

「それじゃ船の調整とか君が海に出ている間のシフトとか、その辺り全部任せてもいいだろうか、叢雲()

 

 

 君付けが双方の丁度良い落し処だったのだろう、そう呼ばれたむちむちくちくかんは溜息一つ、それでも今まで以上に弾けた笑みを表に貼り付けこう述べるのであった。

 

 

「了解したわ、任せなさい提督(・・)

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「……で、メロン子」

 

「何でしょう提督」

 

 

 鎮守府南側に広がるコンテナヤード、寒風吹き付けるそこには怪訝な表情の吉野と夕張が目の前のブツを見ている。

 

 ガンメタリックに光を反射させ、フロントを地に着ける形の逆立ち系で変形している拠点防衛ロボスプー、その両肩からはマフラーエンドがおっ立ちボボボボという重低音を響かせ排気ガスを撒き散らしている。

 

 そのロボの前には長門が赤いピッチリとしたライダースーツに身を包み、ヘルメットを片手に仁王立ちをしている。

 

 そしてその隣では漆黒のMA70型スープラがアイドリングの音を響かせて停車されている。

 

 

 MA70ターボA

 

 古のグループA参戦の為のホモロゲーションとして作られた3.0リッターターボエンジンを驕られた車両、270PSを搾り出すその車は当時フェアレディZやスカイライン、そしてRX-7達と並び国内最速車両の座を争っていた特別な車両。

 

 その漆黒のワイドボディは鈍く光を反射し、フジツボ謹製ストレート管から野太いアイドリング音を響かせてそこに存在していた。

 

 

 その伝説の車両の前には青いピッチリとしたライダースーツに身を包んだ大和が、これまた手にヘルメットを抱えて長門と同じく仁王立ち状態。

 

 そんな某特務少佐(槇原 南洲)の気遣いで送られてきた希少な車両の前で、鋼鉄の胸部装甲を持つ大戦艦がそんな格好で仁王立ちしているとなれば吉野の『嫌な予感メーター』がレットゾーンへ突入しちゃっても不思議では無いだろう。

 

 

「スプー弐号機て……アレ?」

 

「はい、一号機は変形機構を組み込んだ為に機動力に難がありましたので、その弱点をカバーする為に弐号機とセットで運用する事にしました」

 

「ふむ、なる程ね、それでメロン子」

 

「何でしょう提督」

 

「何当たり前の様に希少な車魔改造しちゃってるの! 提督言いましたよね? 私物とか流用してロボ作るの禁止って!」

 

 

 仁王立ちのガンメタロボと漆黒のスポーツカーの前では生尻をベシベシと叩かれるメロンの姿、例え天才的な技術を持つ艦娘であっても、ロマンという魔物の前ではやっちゃった後に来る生尻殴打という結末が待っているという、そんな事を考慮する学習能力という物はお空の彼方へ消え去ってしまうようである。

 

 

「う……うぅ、久々に尻ペシ食らうと効きましゅね……」

 

「事と次第によってはお代わりが投入されます、さてメロン子、あの黒いヤツを一体どうしちゃったのかちゃーんと提督に聞かせて貰えるかな、うん?」

 

「はい、先程も言った通り、一号機は運用に(いささ)か難がありました、その弱点を補うと共に更なる強化の為に弐号機をロールアウトさせ運用する事にしました、ロボと言えば変形、ロボと言えば合体、そんな心のセレナーデ……聞いて下さい、では長門さん大和さん、お願いします!」

 

 

 不自然に前屈みのメロンが一声掛けると戦艦コンビは其々のマシンへ乗り込んでいく。

 

 昭和臭漂うブリキのロボ風味に乗り込んだ長門は『一号機リフトオフ!』と叫びロボにガッツポーズを取らせる、因みに自立状態であるロボの周辺には当然ながらリフトの欠片も見当たらない。

 

 更に弐号機に乗り込んだ大和はどこで覚えたのだろうか、見事なドラテクで一号機の前に車を滑り込ませる。

 

 

「良し大和、合体だ!」

 

「はい師匠!」

 

「合体ぃ?」

 

 

 怪訝な表情のままである髭の前では位置調整の為だろうか、大和が車庫入れ駐車の如く車を小刻みに動かしており、その後ろでは長門がそれの誘導を行っている。

 

 オーライオーライという間抜けな絵面(えづら)と必死の形相の戦艦二人、合体と勢い良く声を上げてから後、たっぷり五分程は車庫入れ状態が延々とコンテナヤードで展開されるハメになる。

 

 

 寒空の下延々とそんな物を見せられている吉野は怪訝な表情のまま、対して必死に作業をする戦艦二人という双方の間にある温度差は相当な物になっているのはここでは触れないでおく。

 

 

「よし、そこだ、合体するぞ!」

 

「はい師匠!」

 

 

 大和が車外に出て車のフロントを力任せに引っ張ると、黒い車両の後部を残し隙間が生まれる、そこに一号機が膝を着く形でぶっ刺さりドッキングは完了、その合体したロボの姿は(いにしえ)のゲッ○ー3、若しくはガ○タンクを彷彿させるというフォルム。

 

 ぶっちゃけスープラの上にスープラがフロントを下にして落下してきちゃった、そんな事故の後風味とも言うべきアレなロボの勇士が髭眼帯の前に鎮座していた。

 

 何故合体プロセスに人力が必要なのか、大和クラスの怪力でないと車を引き摺るという事は不可能なのではなかろうか。

 

 そんな色々な突っ込みを置き去りにして何食わぬ顔で運転席に戻る大和を見つつ、吉野はいきなり見つけてしまったロボの欠点に頭を抱える。

 

 

「これが一号機の性能を飛躍的にアップするシステム、其々単体で運用するのでは無く、あえて弐号機を支援兵装としてドッキングさせる、これぞ『高機動型スプーIIS型』」

 

「いやメロン子、ちょっと……」

 

「ではお二人、宜しくお願いします!」

 

 

 髭眼帯を置いてきぼりにして、○ッター3が疾走を始める、野太い排気音を轟かせ見た目に似合わぬ速度で直進し、口をあんぐりさせる吉野が見守る中それはあっと言う間にコンテナヤードの端に到達する。

 

 

「武装面を担う一号機は長門さんが、機体のコントロールは大和さんが、そして其々の機体には試製41cm三連装砲と46cm三連装砲が装備されています」

 

「また主砲装備したの!? だから長門君と大和君が乗っちゃってるワケ!?」

 

「因みに摩耶さんが乗れば対空型に、加賀さんが乗れば航空機の支援が出せる仕組みになってます」

 

「それロボ意味無いよね!? ロボの存在価値どこいったの!? ねぇ!?」

 

 

 遥か向こうのガンタ○クはモタモタそろそろと方向転換を行っている、それは先程の車庫入れと同レベルのスローモーなペースで行われていた、そんな高機動と言うには詐欺レベルのそれに髭眼帯の視線が釘付けになる。

 

 

「くっ、やはり……方向転換がネックになったか……」

 

「やはりってナニ……あれスープラの上にスープラが縦に刺さってるだけじゃない? てかアレそのままカーブして戻ってくればいいんじゃないのかなって提督思うんですけど……」

 

「いえ、重心が高いのでそのまま曲がってしまうと転倒する恐れがあります、ですので転蛇には細心の注意を払う必要があるんです」

 

「それふっつーに設計ミスじゃないの! 何の為に高機動化したの!? もう車に主砲積んだ方が良くないかなって提督思うんですけど!」

 

 

 そんな髭眼帯を見る夕張は暫く"何言ってんだコイツ"みたいな顔で見詰めた後、鼻をフフンと鳴らして掌を上に向けて肩を(すく)める、それを見る吉野の額には青筋が立つといういつもの光景。

 

 

「車に主砲を乗せるだけではロボとは言いません、それにそんな陳腐な物を作って何が面白いと言うんですか?」

 

 

 やれやれというゼスチャーをするメロン子の向こうでは再び疾走を開始したゲ○ター3、良く見るとドライバーズシートに納まっている大和からは何故かキラキラエフェクトが確認出来るという救い様の無い絵面(えづら)が確認出来る。

 

 ついでに弐号機に刺っている一号機はガッツポーズのままガオーと雄叫びを上げ、僅かに見えるフロントガラスからは同じくキラキラしたエフェクトが洩れ出ていた。

 

 

 こうしてチョ○Qの様に直線だけの機動力を得たロボがガオーガオーとコンテナヤードを往復し、その騒ぎを聞きつけたくちくかん達が羨望の眼差しでギャラリーと化す、更にはいつの間にか龍驤やオカン(鳳翔)が屋台を出してお祭り騒ぎが開始されるというカーニバルがそこに出来上がってしまう。

 

 

 そしてこのロボを製作したユウバリンコはその片隅で髭眼帯から再びケツペシの刑に処された後、いつものバケツ正座のコンボを食らうハメになるのであった。

 

 

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。

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