大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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前回までのあらすじ

 ちょっとした追加ルールを加えると人生ゲームが人生を考えさせられるゲームに変化するというお話。

 それでは何かご意見ご要望があればお気軽にどうぞ。


2017/
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きましたリア10爆発46様、BLACK50%様有難う御座います、大変助かりました



新型母艦建造中、そしてティータイム

 

 

 薄暗いドックの中に固定された巨大な潜水母艦、漆黒の船体は周りから洩れる機器の光を照り返しその姿を僅かばかり晒している。

 

 強行潜水母艦『泉和(いずわ)』、大坂鎮守府の艦隊を前線へ運び、その母艦として運用する事を想定して作られた艦娘母艦である。

 

 

 現在この船は機能面を含め船体の完成度は約九割、操船や火器管制に及ぶソフト面では七割程の物となっている。

 

 

 この船が必要とされる任務、大坂鎮守府に割り当てられている"緊急支援艦隊任務"は人員の確保や装備の準備を考慮し年の最後に回され、10月~12月の二ヶ月を予定し調整が進められている。

 

 人員という面では完全では無い物の一応の形は整いつつある、そして装備として必ず必要となる母艦も実を言えば通常艇が一隻配備はされていたが、それは長期運用が難しい旧型艦であり、任務の性質上日本から前線へ単艦で出撃し作戦に当たるには大坂鎮守府に配備されている艦よりも大型艦が必須となってくる。

 

 そんな船を運用するとなれば戦闘員である艦娘の他に船を動かす人員が必要となり、それが確保出来ない大坂鎮守府では外洋航行可能の船は改修を施した特殊船が必須となってくる。

 

 

 岩川基地へ譲渡した轟天号はその要求を一応満たしてはいたが、数ヶ月単位で作戦に投入するには色々な面で難があった。

 

 武装面が攻めに寄り過ぎた為に撤退時の安全が心許なく、機動性を機関に依存し過ぎた為に化石燃料主体のそれは瞬発力はあっても長時間の作戦時間が捻出出来ない。

 

 船体のサイズにしては破格の性能を有してはいたが、詰め込みすぎたそれは全体的に安定性を欠いていた。

 

 

 現在建造されている泉和はその面をカバーしつつ、性能面も轟天号と遜色無い様にと設計された為、艦娘の母艦としては異例の潜水式の船体を採用している。

 

 喫水が水上艦に比べ低く、また限られた面からでしか艦娘の出入りが出来ない船体は夜間の運用が難しく、半分以上潜水した状態では荒天時の作戦では荒れる水面に浮かぶ面積が少な過ぎ抜錨も帰還にも難があるという事情があって、軍では艦娘用の母艦は水上艦以外基本採用されない。

 

 

 しかしこの泉和では艦娘が抜錨する際船体上部の出撃ハッチを用いる他、船体後部に据えられた出撃カタパルトによって射出というやや乱暴な方法を採る事によってその点を解消した。

 

 また収容時は船体からワイヤー接続された箱型簡易ドックを浮かべる事で母艦自体潜水したままそれを可能とする。

 

 その為この潜水母艦はやや太目の船体後部に半分埋め込まれた形の箱型区画が取り付いた形になっており、長期の居住性を得る為に弾薬を除いた武装の多くを船体左右に外部接続した武装区画に格納する。

 

 構造は複雑化し、構成部品はほぼワンオフとなった為にコスト面での汎用性は絶望的となってしまった船であったが、轟天号と同じく量産を視野に入れない、たった一隻の特殊装備と考えれば吉野が夕張に求めた仕様要求は何とかクリアした状態で形にはなっている。

 

 

「前線へ出撃し、一週間以上艦隊戦をした上で拠点へ戻る性能、それを無補給で出来る艦とかお前の上司はつくづく狂ってるとしか言い様が無いな」

 

「機関の小型化が鍵だったんですけど、機能の殆どを一点集中型のシステムに纏める事で余分な制御系の機器を積まなくても良くなりましたし、その分を含めてギリと言ったところでしょうか」

 

 

 ドック脇に併設される管制室から漆黒の船体を眺めつつ、自称天才ハカセの天草が咥え煙草を上下に揺らし、横でソフトウェアの調整をする夕張に苦言を漏らしていた。

 

 一点集中管理と言えば聞こえはいいが、それは船の内部設備以外の全てを一人が行うという無茶な仕様であり、本来なら数十人で行う作業を半ばオート化した上で統合するという形で纏めた船。

 

 機器の面では妖精さんの協力を取り付けた為になんとか形にはなっているが、それを制御するには膨大な情報を処理せねばならず、明石謹製の大型電算機を以ってしても人が動かすには操船がやっとという状態であった。

 

 

「単純な操船でさえ提督がダウンしちゃう有様でしたし、手動での操作も可能ではありますけどその場合は性能の殆どが死んじゃいますから」

 

「まぁ単純に考えればコレ(泉和)がやろうとしてる事はお前達艦娘がしてる事をそのまま船にぶち込もうとしてるだけだからな、その辺り理解してりゃやり様もあるってもんさ」

 

 

 現在この船には大型電算機の他に一度沈んでしまった叢雲の艤装を補助として積んでいる、結果から言えば人より脳の処理能力が高く容量が大きい叢雲という艦娘を接続する事によってこの無茶なシステムは運用可能となった。

 

 しかし船体との繋ぎとも言える部分を他者が使用不可能な部品(叢雲の艤装)で接続した為、この船は叢雲無しでは運用がままならないという状態で完成を見ていた。

 

 

「将来的には艤装が補助している部分をセパレートして、誰でも操船出来る様なシステムを構築したいと思ってるんですが……」

 

「無理だろうねぇ、何やかんや言ってもお前達は生物だ、機械は取って付けては出来るが専用にチューンされたモノを誰でも扱えるなんて都合のいいシステムなんざ出来やしないさ」

 

「……私も試しに接続してみたんですが、違和感と言うか他人の体に無理矢理入り込んだ感覚で上手く操船する事が出来ませんでした、それに……」

 

「一度誰かが支配下に置いた物を他者が使おうとすれば拒否反応が起こるか」

 

 

 吉野が繋がった際は船と自分との境界があやふやになり、精神的不安による肉体の拒否反応が深刻な問題の一つに上がっていた。

 

 しかし前世が船であった艦娘にはその感覚は皆無という状態にはなったが、一度船に繋がり支配下に置くと他者には扱えない程の違和感を感じさせるという謎の現象が発現していた。

 

 

「その辺りはオカルトの部分になるんだろうけど、多分一度繋がったらソイツ(艦娘)と船は紐付けされちまうんだと思うよ、いやぁ研究が捗るわぁ、未確認の現象がウッハウハでハカセしゃーわせ」

 

「アハハ……そうですかぁ、でも『船が艦娘の体になる』、確かにあの感覚は博士が仰った言葉がしっくり来ると思います」

 

 

 普段ロマンを追い求めトンデモなブツをホイホイ作ってしまうメロンをして、横でニヤリと笑うハカセは質の違うマッドな者として映っていた。

 

 前例無しの危険な機構でも躊躇わず手を付けるやり方、問題が発生しても利が大きいと判断すれば構わず実行する理不尽さ。

 

 周りを鑑みず欲望を隠す事もしないこの人物は、同じ何かを作る者という立場で考えても方向性や論理が全然違うと夕張は感じている。

 

 

「しっかしアレだねぇ、人の良さそうな顔をしてるがお前達の提督は随分と強欲だな」

 

「強欲? え、どう言う事ですか?」

 

 

 脈絡も無く発せられた言葉に夕張が眉を顰める、確かにこの船は吉野が要求してきた仕様を満たす為に己が建造した物だった。

 

 確かにそれは無茶を詰め込んだ物なのは理解してはいるが、そこから何故吉野が強欲という事に繋がるのかが理解出来ない。

 

 

「ん? いやお前この船を見て何も感じないのかい?」

 

「何をです?」

 

 

 遠慮も何も無く船を指して自分の提督を強欲呼ばわりされたメロンは、少し不機嫌な相で目の前の白衣を纏う女性を見る。

 

 その様を見つつも天草はわざとゆっくり紫煙を肺に満たし、そのままそれを中空へと吐き出した。

 

 

「通常大人数で動かすべき船をたった一人で操る機構、他者には扱えないワンオフ装備」

 

 

 怪訝な表情の夕張に対し、勿体つける様に煙をくゆらせ、そしてニヤリと口角を上げる天草、一端視線を薄暗いドックへ向けると火の点いたままの煙草をそれへ向けて、再び視線だけを仏頂面をぶら下げた夕張に向ける。

 

 

「叢雲は言っただろ? 『今日からこれが私の艤装』だと」

 

「……え?」

 

「アレは艤装さ、それも人間用に作られたね……お前の提督は船なんかじゃなくて、人間用の艤装を作らせようとしたのさ」

 

「ぎ、艤装?」

 

創る者(・・・)じゃ判んないだろうねぇ、でも知ろうとする者(・・・・・・・)にとっちゃあんなモン、個人の欲が生み出した道具にしか見えないんだよ」

 

「道具……ですか?」

 

 

 夕張が浮かべる怪訝な表情はそのままだったが、そこに含む色合いが変わったのを見た天草は短くなった煙草を携帯灰皿に捻じ込んだ後、そのまま新たに取り出した物を咥えて再びそれに火を点ける。

 

 そして暫く、恐らく夕張に何かを言う為の言葉を頭の中で整理しているのだろう、暫く考えた後にボソリと言葉を吐き出し始める。

 

 

「お前は物を作る事に喜びを感じ没頭するタイプの者だ、でも私みたいな研究というモンを常とする者は物創りに対する意味合いが全然違う」

 

「創る意味合い……とはどういう事です?」

 

「あ~……物を知ると言うのは何かを分解し、刻んでバラして仕組みを解明する処から始まる(・・・・・・・・・・・・・・)、何かを知ろうとした時、真理に近づく為にはそれだけじゃ足りない、理解したモンを、バラバラにした物を再び組み上げてそれが元通りに動くかどうか、ぶっちゃけ何かを解剖したならその知識を使って同じモンを創って、それが解剖したモンとまったく同じブツなのを確認した時点で漸く研究は完了なんだ」

 

「再現性……リバースエンジニアリング、ですか?」

 

「そんなカッチリしたモンじゃないけどまぁ工業系で言うならそんな感じかねぇ、先ず分解する、そしてそれを調べて再現する、そうやって物事を知る、そうして壊しては創るを繰り返してるとさ、何か他人が手を入れたモンを触った時ソイツが何を意図してどういう物を作りたかったのかってモンが透けて見える様になるんだ」

 

 

 理解する為に細分化(壊し)し知識を得る、次いでそれを確認する為に同じ物を作る、筋としては真っ当で当たり前の様に聞こえる言葉。

 

 しかしその対象が無機物で無かった場合、突き詰めて言えば壊して複製するモノが生物という物に置き換えた話であるなら。

 

 

─────それが艦娘や人間であったなら。

 

 

「昔さ、私がここに来た時いけ好かないヤツが居たのさ、いつも甘っちょろい論理観とか精神論をブチ上げて、何かを対価にしてリスクを背負わないと未知の知識なんて手に入らないってのにさ」

 

 

 視線はドックの中に浮かぶ黒い船体を見ていたが、天草の見ていたのは時間を遡った在りし日の大阪鎮守府だった。

 

 

「何かにつけて張り合ってあんまいい関係じゃ無かった、コイツとは同じ道を往く事は無いだろうって思ってた、だけどココが深海棲艦にやられちまって、毎日傷病者の処理に追われて……それが終わった時なんだけどさ、そのいけ好かないヤツがフラリとどっかに消えちまう事が多くなったんだ、身内がみんな死んじまって抜け殻にでもなっちまったかと思ってどうしたモンかなぁって考えてた矢先に、私は見ちまったんだよ」

 

 

 薄暗い地下施設、研究も一端凍結されて利用されていない筈のラボの奥。

 

 一人の研究者が一心不乱に何かを創ろうとしていた、己の知識を全て向け、外法と呼ばれる類の技術を以って。

 

 

「身内が絡んでるから狂ったのかと思ったけどさ、暫く見てたらさ……それが何をしているか判った……判っちまったんだよね、何を考えてるかって事は理解出来なかったんだけど、ソイツは研究者として自分の知識を使って何かを創ろうとしていたのさ」

 

 

 一心不乱に注がれる技術、生を繋ぎ止める以外の尽くを無視した狂気、天草はその姿に純粋な探求者の姿を見たという。

 

 知る事を求め、得た物を体現する、それは欲求を越えた執念の先にこそ存在する物だとその時理解したのだと。

 

 

「あの姿を見て初めて私はソイツを尊敬する事が出来た、身内を使ってそこまでやれる覚悟と執念、未だに私はあそこまでの執念に辿り着く事は出来ていない……多分自分を切り刻む程度じゃまだまだ足りないんだろうねぇ」

 

 

 自嘲に歪んだ口から煙が吐き出され、天草の視界に映る船に向かって焦点が定まっていく。

 

 個人の名を出さずともそれは自分達の指揮官に関わる事だというのは夕張には理解出来た。

 

 

「お前らの提督が何を考えているかまでは理解出来ないけど、この船は間違いなくアイツが何かをしようとする為に作らせた物だよ、誰かの為じゃない、自分の為の道具さ…… 結局叢雲が使う事になっちまったから計画は頓挫したんだろうけどね」

 

 

 そして再び天草は夕張に視線を戻し、本当に嬉しそうな色を滲ませて言葉を続ける。

 

 

「何をしようとしてるかは理解不能だ、でもアイツはただの昼行灯じゃない、ドロドロとした……欲望を腹に抱えた食わせモンだ、誇っていいぞ? あの手のヤツってのは狂っていても無能じゃない、指揮官としての仕事も必要だからやっているんだろうさ、それにお前らが乗っかっても余程の事じゃ折れる事も無いだろう、あんなのは今のご時勢そうは居ないよ」

 

 

 貶しているのか褒めているのか微妙な評価に首を傾げながら、それでも評価はされているのだと無理矢理納得した夕張は気持ちを切り替え、予定されている母艦の評価試験に間に合わせる為に作業に戻るのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「金剛君……」

 

「何デスカ?」

 

 

 天才ハカセに食わせ者やら狂っていると称された髭眼帯は手にしたティーカップを指で摘みつつカタカタ震えていた。

 

 そのカップの中には芳しい香りが漂う紅茶が湯気を上げ、その向こうにはスタンドタワーに並べられたマフィンやサンドイッチ、視線をずらせばテーブルにはクッキーやケーキが所狭しと並べられ、紅茶を一口含んだ金剛が満足気に溜息を吐く白いテーブル。

 

 

 正面にその金剛が、左右には榛名に霧島、そして金剛の隣には比叡という金剛型姉妹が集うティータイム。

 

 にこやかにテーブルを囲むその雰囲気は華が咲いたかの如く上品で、供された紅茶も菓子も本格的なレベルの物であり、ティータイムという行為に掛ける金剛の拘りというか本気度が伺えるひと時。

 

 

「あ、提督このマフィン榛名が焼いた物なのですが、お味は如何でしょう?」

 

「ドンパチ一辺倒だった榛名が料理を覚えるとかこれは愛の成せる技でしょうか……お姉さま」

 

「比叡も人の事言えないネー、何だか最近厨房に入り浸ってるらしいじゃないデスカ? どういった心境の変化デス?」

 

「金剛お姉さま、それは……鳳翔さんが比叡お姉さまのその……色々矯正しないといけない部分に使命を燃やしているというか何と言うか……」

 

「oh……そうデスカ、それは……うん、頑張ってネ」

 

 

 にこやかに交わされる会話、隣から問答無用に口へマフィンを放り込まれる髭眼帯は相変わらずカタカタ震え、なすが儘で青い顔をしていた。

 

 

「いや金剛君……」

 

「Yes? さっきからどうしたネテイトク?」

 

「うんティータイムはいいんだけど、それにお誘いされるのはやぶさかでは無いんだけど……」

 

 

 視線を紅茶オバケから周りへ巡らせる。

 

 青い空、白い雲、遥かに見える水平線に続き視線を流せば鎮守府に程近い前島と色々な景色が目に映っていく、そして吹き付ける風。

 

 

「何故監視塔のテッペンでティータイムを致しているのか聞いても?」

 

 

 大坂鎮守府の東西南北には高さが30m程の監視塔が設置されている。

 

 それは近海の監視を目的とした無骨な鉄骨製の塔であり、一番上には簡素な手擦(てす)りと屋根が掛かった2m四方の物見台が乗っかっている。

 

 そんな地上30mの鉄骨の上で、ティーテーブルや諸々がギュウギュウに詰め込まれた状態で海風吹きっ晒しのティータイム。

 

 色々突っ込み所満載な上に寒さと高所による恐怖でカタカタ震える髭眼帯は、至極真っ当な質問を暢気に茶をシバいている金剛型四姉妹に投げ掛ける。

 

 

「ン~? お気に召しませんデシタか?」

 

「いや気に入るとかそんな次元じゃなくて、そのお茶するにはこのシチュエーションてか場所は如何な物かと……」

 

 

 暢気に話してはいるが、そこは2m四方しか無い物見台である、そこにティータイムセットを全て入れるとなれば人の存在出来るスペースは凄まじく狭い物となる。

 

 ぶっちゃけ手擦りで体勢を保っているが、少しそのポジションがズレてしまうと半身は空中に押し出されてしまうという危険な状況。

 

 

「今日は金剛お姉さまが監視の任に就くシフトでしたので、職務を遂行しつつもティータイムを過ごす為にはこうするのが最適なのではと計算しました」

 

 

 鮨詰め状態の席の向こうで霧島ネキがドヤ顔で眼鏡をクイクイとさせている。

 

 見張り+優雅なティータイム、確かにそれを考えるとシンプルにこの様な形になるのだろう、しかし言い換えれば何の工夫も無いドストレート、計算と言うか、ただ足し算をしただけの脳筋理論なのでは無かろうかと吉野は目の前の眼鏡ネキを見る。

 

 

「流石霧島です、お陰でお姉さまとの距離も……ふふっ、気合! 入ります!」

 

「いやそれ以前にテーブルとか椅子とかどうやってこんなトコに運んだの君達……」

 

 

 呆然とする髭眼帯の質問、この監視塔は梯子が設置されているがエレベータの類は設置されておらず、また転落防止用に梯子の回りは鉄製の枠で囲まれている為テーブルなどの類は物理的に運搬が不可能に見える。

 

 

「ああ運搬ですか、これは局地戦を想定して作られたティータイム装備なので問題はありませんよ?」

 

「……局地戦用ティータイム装備ぃ?」

 

 

 ティータイムという優雅な名称とは程遠い名称が混合された茶道具に怪訝な表情の髭眼帯、それを放置してよいせっと掛け声一つ、榛名が座っていた椅子を持ち上げその背もたれを叩くと、それはカシャカシャと音を立てて折りたたまれ、最終的にコンパクトに纏まった椅子は片手サイズの物となる。

 

 

「局地戦用ティータイム装備、フォールディングチェアーです」

 

「何今の!? 南京玉簾(なんきんたますだれ)っぽく折り畳んだんだけど何が君達にそうさせてんの!? てかフォールディングチェアーってふっつーに折り畳み椅子って意味だよね!?」

 

「因みにこのフォールディングテーブルもワンタッチで手持ちサイズに縮小可能です」

 

「何でもフォールディングって言えばいいもんじゃないからね!? これ手持ちサイズって物理的に無理があるデショ!?」

 

「いえそう申されましても……折り畳める物は仕方ないと言うか、ほら」

 

 

 霧島が空になったティーカップをソーサーの上に置き、ピンと指で弾くとカチャカチャと音を立ててそれは3cm程の立方体へとトランスフォームする。

 

 

「"ほら"じゃなくて! 何で陶器のカップとか皿が変形しちゃうの!? 物理的におかしいデショそれ!?」

 

 

 ヒートアップする吉野に揃って首を傾げる四姉妹、温度差のある双方の間を海から吹きつける風が通り抜ける。

 

 

「まあまあそう興奮しないで、ほら提督、甘いものでも食べて落ち着いて」

 

「いや比叡君今そのケーキどこから出したの? 胸のサラシのトコっつーか服に手ぇ突っ込んで出したよね?」

 

「はいそうですが?」

 

 

 何を言ってるんだと首を傾げる金剛型二番艦は更にクッキーやらマカロンをポイポイと皿の上に並べている。

 

 久し振りに見た艦娘ご用達四次元ポケット、実の処吉野も夕張から渡された装備にその機能は備わっていたが、その原理や仕組みは解明されていない。

 

 以前母艦を設計する上でその機能を利用してはどうかと提言した事はあったが、『何言ってるんですか提督、そんなの無理に決まってるじゃないですか~』と一蹴され、結局未だにこの現象は謎のままであった。

 

 

「ああうん……何と言うか茶道具とかアレだ、わざわざ折り畳まなくてもそこに収納すればいい気がするんだけど……」

 

「ン? そんなの無理に決まってるじゃナイデスカーHAHAHA」

 

「いやその無理とか無理じゃない基準て一体何なの!? ねぇ!?」

 

 

 本気で突っ込みを入れる吉野に対し何故か微笑みで返す金剛型四姉妹、にこやかな笑顔のソレは追及を躊躇わせる程の不自然な世界をそこに出現させ、再び髭眼帯はカタカタ震えるだけになるのである。

 

 

「あ、折り畳みで思い出しましたが、日向さんが瑞雲をフォールディングして携帯する事に成功したそうですよ?」

 

「oh それはfantasticネ!」

 

「……なんて?」

 

 

 震えが収まり怪訝そうな表情にシフトした髭眼帯に霧島ネキがチョコンと首を傾げる。

 

 

「いえ、日向さんが瑞雲をフォールディングする事に成功したと」

 

「いやその……瑞雲をフォールディングしちゃうとどうなるワケ?」

 

「さあ? 何でも多目的局地水上偵察機瑞雲が完成したと仰ってましたがそれ以上は……」

 

「折り畳んだだけで何でそんなに色々瑞雲に乗っかっちゃうワケ!? そもそも多目的なのに局地っておかしくないそれ!? ねえっ!?」

 

 

 寒風吹き(すさ)ぶ午後のティータイム、地上30mの見張り台で繰り広げられたその集いは、話題が航空戦艦の独自に開発した謎の新兵装の事に至った辺りで不自然な終わりを告げ謎を残す事になった。

 

 

 後にこのフォールディングされた瑞雲が深海棲艦との戦いに於いて多大な影響を及ぼすと思われたが、実はそんな事は一切無かったという。

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。
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