大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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 前回までのあらすじ

 クェゼリンから受け入れていた教導任務が半ばを迎え、先が見えてきた時点でその任を巡っての大坂鎮守府の立ち位置と、更なる目的が垣間見えてきた。

 それでは何かご意見ご要望があればお気軽にどうぞ。


2018/10/30
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きましたリア10爆発46様、柱島低督様、有難う御座います、大変助かりました


和製ツインテパイパイ

 海路を二日、本土に入り手続きを済ませ一旦休んだ後更に陸路で大阪入りを果し、移動を都合四日を掛けて泉佐野にある前島の大坂鎮守府連絡路線へと至る。

 

 そこ(鎮守府前島)から見る西側には割りとくっきり目に映る人工の島が海の只中に浮かんでいる。

 

 物資の輸送を目的とした貨物車両に便乗して前島駅から出発すれは、ほんの数分でそこに辿り着く、そうして大坂鎮守府へ踏み込めば、駅構内には迎えの為に来たのだろう一人の艦娘の姿が目に入る。

 

 

「ラバウル基地より本日付けで大坂鎮守府へ着任する事になりました、軽巡洋艦五十鈴です、どうか宜しくお願いします」

 

 

 敬礼をする彼女、長良型二番艦五十鈴は南洋ラバウル基地より大坂鎮守府へ着任を果した。

 

 

 南北に長く東西に狭い大坂鎮守府、その東北端に位置する駅ターミナルから中央の執務棟までは割と距離はあったものの、施設移動用に使われるカートを利用すればものの十分程度で辿り着く。

 

 事前に家具などの荷物は送付していた為、私服と必要書類だけ入れた旅行鞄一つ抱えただけの五十鈴は駅ターミナルに迎えに来ていた艦娘 ───大坂鎮守府艦隊総旗艦長門 の後姿を視界に捉えつつ、周りに見える鎮守府を興味深げに眺めていた。

 

 効率や防衛の為に大抵の拠点は出撃ドックという水辺でしか機能しない施設を基準点とし、全ての施設を建設した際、中心に執務棟を置く形で主要施設が方円状に設置されるのが推奨される形である。

 

 しかし大坂鎮守府は元々存在した広大な地下施設と組み合わせ、更に空港施設を改修した拠点である為に、比較的沈下リスクを回避する為に地盤が強固に作られた滑走路部分に施設群が直線状に立ち並ぶ独特な施設配置となっていた。

 

 広大なエプロンやターミナル施設があった場所には野外訓練設備や屋内運動場が点在し、そこを遊歩道で繋ぎ、更には程よい間隔で木々が並び、その殆どの部分を芝で敷き詰める事で自然公園もかくやの様を見せている。

 

 また、空港時代に数回に渡り拡張工事がされたというその人工島は東西二つの区画を連結した形になっており、島の北側からは運河の様な水路が島の中心まで入り込んだ形で配されており、その終端には出撃ドックが置かれ、更にその南側は通常船の着岸を想定した港湾施設が設置されていた。

 

 

 基本的に出撃の際はドックを出て中央運河を北へ(はし)り海へ出るいう形になるが、元々洋上に存在する人工島である為に360°が海という特殊性を利用した、どこからでも抜錨は可能となっている軍事拠点。

 

 

 そんな人工島という特殊性であり、鎮守府即ち島というある意味拠点という括りで言えば大型である敷地の中を、長門が運転するカートの助手席から眺めてみれば、東側から運河を渡り施設群が並ぶ西側へ差し掛かる際、湾内の狭い水域で訓練に勤しんでいるとおぼしき艦娘達の姿が目に入る。

 

 

 密集して浮かぶパイロン、その狭い間を飛沫を上げて猛スピードで左右に駆ける姿、それは通常の転蛇訓練に比べ遥かに狭い間隔で、更にハイペースで進むという中々に難易度が高い訓練に見える。

 

 単縦陣で回避突撃を想定でもしているのであろうか、六人の艦娘がそれ程離れずに突入しているが、熟練艦である五十鈴から見ても難しいと思われる高速転蛇での航行はやはり難しいのであろう、陣の中程を航行する者が転倒し、その者に対し脇から激しい檄の声が拡声器を通して飛ばされている。

 

 主要任務に教導を置いた国内五番目に設置されたというこの鎮守府は、なる程それなりに活動しているのだと、ラバウルから来たこの艦娘を納得させる程には思わせる様をそこに見せていた。

 

 転任の辞令を受けた後、聞き覚えの無い国内拠点、それも鎮守府の名を冠する場所にやや疑念を持った五十鈴は集められる情報をかき集め、事前に大坂鎮守府という拠点がどういう場所であるかを知ろうとした。

 

 必要に迫られ自衛隊という組織から軍として再編成された際、大本営を除き実質的に一番最初に深海棲艦に対する拠点として運用されたのが大阪鎮守府であった事、一度は深海棲艦の攻勢によりそこは壊滅し、長らく放置されていたが最近になって再整備された場所が現在の大坂鎮守府であるという事。

 

 そこには軍でも名だたる戦歴を持つ艦娘が不自然な程短期に集められていた事、更にそこには深海棲艦上位個体を囲い、その存在が協力しての艦娘の戦闘経験を積む為の教導活動をしているというのを主任務にしていた事。

 

 

 拠点の構造的な特異性、そして深海棲艦が居るという為に抑止力として戦闘力の高い艦娘が集められたという予想をすれば納得がいく部分も確かにあった。

 

 しかしその指揮を執る者は無名の、それも艦隊指揮の経験も浅い人物であるという点に五十鈴は大きな違和感と胡散臭さを感じずにはいられなかった。

 

 

 元々は大本営の大将が子飼いしていた文官であり、ほんの二年程前には名も知れない一介の大尉であったその人物、それがこの短期間の間に三十路にも至らない身で中佐、大佐とへ昇進し、そこからいきなり中将という軍政に関わる地位にまで上り詰めた。

 

 聞けば関西に根を張る旧家に連なる者であり、軍閥の中でよりも経済・政財界に対し強い繋がりがあるという声も聞く、詳細は不明と言わざるを得ないが、イメージ的には軍人と言うより元老院側と繋がり、その力を背景に成り上がった野心家という印象を強く感じる。

 

 

 今回自分が異動を申し付けられた件も、詳細を確かめれば短期間に他拠点より錬度の高い艦娘を大坂鎮守府に集めているという不自然極まりない動きの一部であると知り、本音を言えば余り良い気がせず、更にその様な者の下に就けられる事に不安を覚えていた。

 

 

 そんな新任地に対し高揚感よりも不安と不満を抱えた状態で執務棟へ入り、長門の案内でこの鎮守府の主が詰める執務室の前まで五十鈴は来ていた。

 

 重厚な造りであるにも関わらず品の良い装飾が施された両開き式の扉、その上には分厚い木札に達筆な毛書で『提督執務室』と書かれた物が掛けられている。

 

 

 ノックをして入室していく長門に続きそこへ踏み込むと、先ず目に入るのは正面に見える膨大な書籍が詰め込まれた書架。

 

 それは天井に届く程の高さを誇り部屋の奥まで続いており、そこに収められている物を見ると新旧様々な物が雑多に目一杯詰め込まれ、まるでそこだけ見れば図書館の一角を切り取った様な異様な風景と言えなくも無い様を見せている。

 

 

 先に入室した長門に促されそちらに視線を巡らせば、豪華ではある物のそれなりに纏められた応接セット、その対面には提督が座す執務机があるのだろうが、張り出した書架が衝立の様な配置になっている為様子が伺えない。

 

 呼ばれる声に歩を進め、部屋の主と対面する為奥に行けば、目の前には木製の重厚な机が置かれ、その上には積み重なる書類の山が先ず目に入る。

 

 その周りでは白露型の駆逐艦であろう少女が傍に立ち、その反対側には明らかに艦娘とは異なる存在、それは対潜に特化し海で死闘を繰り広げてきた五十鈴にとって最も恐れ仇敵としてきた存在、潜水棲姫が控えていた。

 

 そんな者を脇に従え執務机に座る者、黒い一種軍装に身を固め、顔の前で両手を組みこちらを見る男、それは間違いなくこの鎮守府の主であり、これから五十鈴の上司になる男であろう事は理解出来た。

 

 

 一見すると隙が無く、滲み出る雰囲気は事前に抱いていた文官のそれではない、三十路に手が届くとは言え若輩と呼べる筈の歳若い男からは、数多の戦場を経験した猛者から漂う特徴的な色が見て取れた。

 

 更に自分を見る眼は形容のし難い迫力が感じられ、隻眼であるにも関わらず、そこには思わず息を飲み込む程の圧力が漂っている。

 

 

 事前に調べイメージした物とは正反対な(たたず)まい、只ならぬ雰囲気を滲ませる目の前の男は歴戦を潜り抜けた軍人と言うにも生ぬるい、そう評するに足る空気を纏った者がそこに居た。

 

 

「本日付けでラバウル基地より着任した五十鈴です。水雷戦隊の指揮ならお任せ。全力で提督を勝利に導くわ。よろしくね」

 

 

 敬礼を取りつつ命一杯虚勢を張っての着任の言葉を口にするが、それでも目の前にいる男の圧力に耐えるのが精一杯の状態。

 

 これはただの権力に溺れる文官では無く、それよりももっと厄介で、恐ろしい相手だと警戒する五十鈴の横でニヤリと笑う長門。

 

 

「ふむ、前線で現役を張っていた者を気圧させる空気に眼光、どうだ不知火、提督の出来は」

 

 

 その言葉に奥の扉からスススっと表れたぬいぬいは長門と同じく口角を上げ満足気に頷いていた。

 

 

「流石司令です、まさかこの短期間でこれ程に見事な(ガン)付けを身に着けるとは、手ほどきしました不知火としても鼻が高いです」

 

「うむ、達人の雰囲気に続き強者の眼光の体得、これて益々提督の護身は完璧に近づいたな」

 

 

 戦闘力が伴わないというエア達人のオーラに続き、戦艦クラスの眼光を持つとされるぬいぬいからメンチを仕込まれたという髭眼帯。

 

 その結果前線で戦ってきた猛者である五十鈴が見ても只物では無いと感じさせるという術を身に着けるに至る。

 

 未だ某ネ○フのゲンドウさんちっくなポーズのまま五十鈴を見る吉野の両脇では、時雨と(潜水棲姫)がうんうんと頷いており、満足気なナガモンとドヤ顔で胸を張るぬいぬいに囲まれた五十鈴は話が見えてこず、怪訝な表情で首を傾げている。

 

 

「着任ご苦労、自分が大坂鎮守府司令長官、吉野三郎海軍中将である、我々は貴官を心から歓迎する」

 

「うむ、完璧だぞ提督、名を告げる時は先ず官位を前面に押し出し、立場的優位で相手に威圧を与えるという基本も抑えている」

 

「ふふふ……任せたまえ、この手のハッタリに関しては誰にも負ける要素を感じない」

 

「……ハッタリ?」

 

 

 怪訝な表情の五十鈴の前で、威厳の篭った低い声色にハッタリという言葉を乗せ口から漏らす髭眼帯。

 

 武のハッタリに続き眼光という非致死性の武器を手に入れたヒョロ助は、艦娘達から全力で色々諸々仕込まれ着実に進化を遂げていくのである。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「いゃぁ改めて遠路遥々ようこそ、自分がここの司令長官をしている吉野三郎です、以後宜しく」

 

 

 応接テーブルに移動し茶菓子を前に其々が座る場で砕けた挨拶をする吉野、その対面には口を△にしてジト眼で吉野を睨む黒髪ツインテの五十鈴の姿。

 

 結論から言うと、例の吉野の修行の成果を試す為に利用された五十鈴は、事情を聞いた後あまりの馬鹿らしさに呆れつつも、まんまとそのハッタリに乗せられてしまった自分に(いささ)か不機嫌になっていた。

 

 

「なに? 結局そんな馬鹿らしい試しに五十鈴を利用したって事? 着任の歓迎にしてはちょっとこれってあんまりなんじゃないかしら?」

 

「いやいや申し訳無い、ちょっと悪乗りが過ぎちゃってホント、申し訳ない、まぁそのお詫びと言ってはナンだけど間宮さんに頼んで茶菓子を用意したから、それを摘みつつ色々話をさせてくんないかな?」

 

 

 イカツい見た目に反して軽い口調の髭眼帯、五十鈴の目の前には山盛りになった豆大福、確か事前に得ていた情報ではこの鎮守府には大本営から異動してきた間宮が居を構えている筈であり、普通に考えればそこから供されるであろう菓子は間宮の代名詞である羊羹かアイス、若しくは伊良湖が手掛ける最中辺りが定番という状態である筈であった。

 

 しかしそれでは無く皿に盛られるのは豆大福、更に供されるのはやや濃い目に淹れられたほうじ茶。

 

 それは五十鈴の好物とする組み合わせであり、一応間宮のメニューには含まれてはいるものの、割とマイナーと言われる部類の茶菓子である。

 

 

 普通に考えればたまたま好物が目の前に並んだと喜ぶ処であったが、一面識も無い者が手配したそれ、更に好みという公の情報にはなり難い極個人的な物で対されるこの歓談。

 

 事前に着任する者をある程度調べるというのは当然の行為ではあるが、人に知れる程自分は好事を表に出した覚えが無いという自覚がある五十鈴にとって、目の前に盛られている饅頭も横に添えられている茶も、それが意図して用意された物なら空恐ろしい物として眼に映る結果となっていた。

 

 またしても怪訝な色を滲ませる五十鈴に首を傾げ、ドクペを口に含みつつ吉野は暫くその様子を眺めていた。

 

 

「ねぇ提督、この豆大福って間宮の豆大福?」

 

「ん? ああそれね、五十鈴君の好物って聞いてたから間宮さんにお願いして持って来て貰ったんだけどそれが?」

 

「ほうじ茶も……」

 

「うん、そんな感じで」

 

 

 事も無げに好物だからと告げられた言葉に五十鈴の表情が真剣な物になる。

 

 たかが饅頭、たかがほうじ茶、言ってしまえば相手の好みに合わせた茶の席に供された物。

 

 数多居る艦娘の、それも前線で居る者の、しかもプライベートでしかない好みという情報をピンポイントで知るという情報収集能力、本人に接触する訳でも無くそれを調べ上げるという所業。

 

 上で様々な話し合いがされたとしても恐らく五十鈴の事を調べる期間は一月にも満たなかった筈であり、それでもこんなプライベートすら調べ上げるのは並大抵の事では成し得ない。

 

 

 ニコニコと饅頭をほお張り暢気にドクペを口にする髭眼帯を前に、たった饅頭一つに茶一杯で普通じゃない印象を覚えたこの軽巡洋艦は興味を覚え、この自分に降り掛かった慌しい着任劇の裏側にある筈である事情が何なのだろうかという考えに至る。

 

 

「失礼します、提督がお呼びだとお聞きしまして……ってうわ、饅頭パーティですかぁ?」

 

「あー忙しいトコお疲れ様、まぁ君もどうだい?」

 

 

 そんな茶の席に呼ばれたのは工廠の主、装備施設課の責任者である夕張は吉野に勧められるまま五十鈴の隣に腰掛けた。

 

 

「失礼しま~す、あ、もしかして新任の方ですか? 始めまして私ここの工廠『夕張重工』の責任者をしている工作艦夕張です、宜しくお願いします」

 

「よろしく……って工作艦?」

 

 

 自己紹介に含まれる言葉に首を傾げる五十鈴に、戦闘不能になった為に工作艦として着任しているのだとザックリとした説明をするメロン。

 

 色々型に(はま)らない運営をしている鎮守府ならそういう者が居ても不思議ではないかと五十鈴は納得し、握手を交えて挨拶をする。

 

 

「えっと夕張君を呼んだのはこの五十鈴君の装備なんだけど、ほらウチには対潜特化って朝潮君だけだし、軽巡は球磨ちゃんしか居ないからさ、装備改修とか整備の面で相談に乗ってあげてくんないかなとか思ってねぇ」

 

「ああそういう訳ですか、なる程……確かに五十鈴さんであれば通常装備以外にも対潜装備のコンバートを考えたバランスを考えないといけませんし、拠点だけじゃなくて母艦での装備転換も視野に入れた設備なんかも用意する必要がありますね」

 

「へぇ……対潜なんて限られた兵装なんて普通既存設備で合わせる範囲で調整される物だけど、ここでは専用設備を用意したり調整も受けられるのね?」

 

「対潜は肉眼では探知不可能な走査から始まり、攻撃まで単体でこなさないといけないデリケートな物ですから、本来はそうあって然るべきなんです」

 

「あら、随分と話が判るじゃない、何だかあなたとは話が合いそうね」

 

 

 話が弾む軽巡と元軽巡、茶の席という砕けた雰囲気も相まって先程まで色々警戒の色を見せていた五十鈴であったが、何時の間にかにこやかに話をする様になっていた。

 

 

「まぁ一線を退いたって言っても夕張くんも対潜特化で活躍していた訳だし、五十鈴君とは色々と話が合う部分も多いだろうねぇ」

 

「あらそうなの?」

 

「あはは……まぁ、随分昔の話なんですけどね」

 

「夕張はどこの艦隊に所属してたの?」

 

「え? ああ大本営の第二艦隊ですけど」

 

 

 豆大福を口に含み、ミョーンとそれを伸ばしつつ答える夕張、笑顔のまま固まる五十鈴。

 

 そして対面に座る吉野の膝には何時の間にか奥から出てきた時雨と(潜水棲姫)が"よいしょっと"と言いつつ、いつものボジションである膝の上で(くつろ)ぎ始める。

 

 なごやかなお茶の時間、いつもは余り供されない豆大福を口にして笑顔の面々。

 

 そんな中でたった一人、ラバウル基地より着任してきた黒髪ツインテのオッパイ軽巡が怪訝な表情で固まっているという絵面(えづら)

 

 

「ね……ねぇあなた、今大本営の第二艦隊って言った?」

 

「ふぁい? いいまひたけど?」

 

「大本営第二艦隊に居た夕張って……もしかしてあの(・・)"対潜の夕張"?」

 

 

 大坂鎮守府で日々怪しいブツを(こしら)える、最近尻の皮が厚くなったと評判のメロン子、そんな彼女の前任は大本営兵装調整用試射場責任者であった。

 

 しかしそこから更に遡れば、摩耶が旗艦へまだ就いて無い頃の大本営第二艦隊に所属し、軍が南洋に手を付け始めた頃の激戦区であった海で猛威を奮い、現在の軍に於ける対潜の常識を確立させたと言われる軽巡洋艦であった。

 

 本来戦う力を無くした艦娘は解体されるのが常であったその頃にあって、蓄えた知識や理論が有用と判断された彼女は工作艦として生き永らえる事になる。

 

 

 最初の五人であり、現在大坂鎮守府に居る『対潜の電』の二つ名を継ぎ、教練書にすら名前を刻むという存在が目の前で暢気に豆大福をミョーンしているというカオス。

 

 

 言ってしまうと初代の人修羅(叢雲)二代目の人修羅(長門)が存在し、同じく対潜の名で呼ばれた二人(電・夕張)が棲み、更に千里眼と呼ばれた者()が居て、実質人でありながらそれと双璧を成す者(吉野)が指揮を執るという伏魔殿が大坂鎮守府。

 

 五十鈴は確かに事前の情報収集は行っていた、しかしそれには長門や大和の如く調べなくとも出てくるメジャーな名は含まれていても、夕張の様に遥か昔に一線を退いた者や、電や漣、叢雲の様な存在は基本情報が隠蔽され、吉野に至っては特務課という諜報に関わっていた関係上素性の多くは、表と裏という形で分けられ徹底的に操作された情報を流すという状況であった為に知る術が無い状態であった。

 

 

 必要があって来た者、それを核として集った必然、たったそれだけの事だったが結果出来上がってしまったカオス。

 

 名前や通称が大層ではあるが、其々はやりたい放題のクセがあるという変人の見本市というこの魔窟の実態を、黒髪ツインテバインバイン枠として張る事になった五十鈴は程無く知る事になったという。

 

 

 

 

 尚この着任を以ってグラ子の白金、プリケツの金、そして五十鈴の黒というツインテ三強という集団が大坂鎮守府に誕生し、後に発生する『大坂鎮守府第二次メイド服事変』で猛威を奮う事になるのだが、それが勃発するのはまだ先の話であった。

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。

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