大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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 前回までのあらすじ

 第二次メイド大戦勃・発!

 それでは何かご意見ご要望があればお気軽にどうぞ。


2017/11/09
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きました拓摩様、鷺ノ宮様、有難う御座います、大変助かりました


第二次メイド大戦勃発 -に-

「なぁおいサブよ」

 

「なんすかキャプテン」

 

「キャプテン言うなし! てかお前、そのそれ……その眼帯……」

 

「眼帯がどーかしましたかねぇ?」

 

「どーかしたっつーか、ふへっ、人の事散々キャプテンつったり重雷装巡洋艦の微妙枠つったり、改二実装じゃなくて厨二実装とか言ってたお前が……ククッ」

 

 

 大坂鎮守府甘味処間宮、引き続きバレンタインメイドフェス開催中の只中で、ちょっと豪華な革張りチェアーに拘束された吉野の前で、大本営第一艦隊副艦である木曾がニヤニヤ状態で髭眼帯を見下ろしている。

 

 

 ゴスロリメイド服を着用して。

 

 

 色は黒を基調とした例のキャプテンマント柄ではあるが、形状は球磨が着る物と同じデザインをしており、頭にはいつもの帽子の代わりに装着されたフリフリリボンと、更に眼帯は薔薇の刺繍が施された例の水銀○さんみたいなブツがセットされている。

 

 

「一応コイツも球磨型だからユニホームは球磨とオソロでキメてみたクマ」

 

「て言うかウチの大将から北上ネーチャン送ってけって指令受けたから送り届けに来たら、いきなりクマネーチャンに拉致られてこのザマなんだけどよ……」

 

「ああ……大隅大将殿から連絡着てた北上様って今日着任だったのかぁ……うん、そうなのかぁ……」

 

 

 半分諦めが混じる言葉を口から吐き出す吉野の横にはアホ毛を揺らすクマがゴスロリメイド状態で立っており、目の前には同じくゴスロリのキャプテンが、更にその向こう側にはアイボリーのゴスロリメイド服の三つ編みお下げな北上様が見えている。

 

 

「アタシは北上。まーよろしく」

 

 

 とことん軽い口調で着任の挨拶を述べる元祖重雷装巡洋艦北上、伝説の三つ編みお下げは球磨と同じデザインのアイボリーなゴスロリメイド服に身を包み、片手には何故かティーポットを装備し、更には由緒正しい例の重雷装艦のポーズをキメてそこに存在している。

 

 木曾がゴスロリを強要された経緯を考えると、恐らくこの三つ編みも大坂鎮守府入りした瞬間そんな服装に着替えるのをアホ毛に強要されたと言うのは容易に想像が付いてしまう。

 

 しかし例のポーズはいいとしても何故ティーポットなのか、確かにメイドが14cm単装砲では絵面(えづら)がアレだからと言うのは理解出来るが、それでもその格好と装備はノリノリ過ぎでは無いのだろうかと吉野は眉を顰める。

 

 

「えーと、うん、その……自分が大坂鎮守府司令長官の吉野三郎です、どうか宜しくお願いします……」

 

「あー色々木曾から聞いてるよぉ、まーなんてーの? そのお陰で色々特殊な集いって言うかこんな宴にいきなり参加させられても納得はしてるんだけどねぇ」

 

「ちょっとキャプテンに何吹き込まれたか知らないけど! このサバトって提督の趣味的嗜好から発生した事案じゃ無いからね!? ついでに自ら進んで椅子に固定されてる訳でも無いから!」

 

「まあ…… 性癖は…… そう…… まあ…… そうねぇ……」

 

「キソー! おいキソー! 北上様に何言っちゃってくれたの!? ねぇ!?」

 

 

 国内鎮守府を治める海軍中将と、その配下として送られた艦娘が初めて邂逅するのが椅子に拘束された司令官と、ゴスロリメイド服姿の艦娘という救い様の無い状態。

 

 しかも相手はキングオブマイペースと言うか、必要以上に落ち着いた佇まいの北上様が妙に生暖かい目で見ているというのが吉野的に色々と言うか、心の傷に塩を塗り込む形としての着任の儀となってしまうバレンタイン。

 

 

「取り敢えずさぁ、紅茶、ここに置いておくね~」

 

「あ、はい、イタダキマス……」

 

 

 そんな色々傷心の吉野にティーをINしたカップを手渡し、北上様はティーポット片手に例のポーズのままスススと他の者への挨拶の為にその場を後にする。

 

 そんな阿修羅閃空宜しく不自然な動きで去っていく北上様を見送る一団、キャプテンキソーは羞恥心の為顔を上気させた状態でモジモジクネクネとし、球磨はアホ毛とリボンをゆらゆらさせた状態でチョコをポケットから取り出し始めた。

 

 

 こうして動物チョコというお子様向けの菓子をまたしても口一杯に捻じ込まれる形になった髭眼帯は、モジモジクネクネするキソーを横目に見ながら血糖値をグングン上昇させていくのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「ねぇしれぇ、チョコ食べてよチョコ、ほらぁ~」

 

「いやちょっと時津風君、さっきから投入速度がホラ、ペースが……」

 

「んも~しれー、よくない、よくないなぁ! 夕立ちゃんと時雨ちゃんのチョコはパクパクしてたでしょ~! もっと私のも食べてよぉ」

 

 

 相変わらずちょっと豪華な革張りの椅子に拘束された髭眼帯、クマ姉妹がどこぞへ消えたあと紅茶を啜ろうとしていた所に今度は子犬(時津風)が襲撃を掛け、膝の上に馬乗り状態で跨り両手一杯に抱えたチョコを口へ放り込むというマウントポジションがそこに展開されている。

 

 何が彼女をそうさせるのだろう、口調はいつもの子犬(時津風)だが、何故か目に鬼気迫る物が見え隠れし、更に押しがいつもよりも激しい状態という訳の判らないカンジになっている。

 

 

「て言うかそもそも口にチョコ入れるのに拳握ったままだと提督の口がデンジャーだから!」

 

「しれーがちゃんとあーんしないからじゃない! ほらぁ!」

 

 

 しれーしれーと連呼する子犬(時津風)はやはりメイド服装備、淡いブルーにフリフリのミニスカエプロン、そしてもう定番になりつつある犬ミミと尻尾という状態で馬乗りという、ある意味事案発生真っ最中の状況。

 

 そんな惨状を取り囲む様に、似たようなアニモーフリフリメイド服のくちくかんである陽炎とぬいぬい、そして朝潮がこれまたチョコ装備で待機し、髭眼帯のお口にチョコの砲撃を致すタイミングを虎視眈々と狙っているという恐怖。

 

 

 更に吉野を取り巻く絶望はこれに収まらない、この大坂鎮守府くちくかん戦隊の更に外側には建造間もない山風、霞、島風、天津風という新人アニモーくちくかんも参戦という、ちょっと豪華な革張りチェアーの周りにはくちくかんの包囲網が形成されていた。

 

 

「て言うかなんでくちくかんの中に間宮さんが混じってるのか聞いても?」

 

「ええ、ついでに」

 

「間宮さんのついでっていつも致命的にトドメになってる気がするのは気のせいでしょうか……」

 

 

 馬乗りの子犬(時津風)を筆頭にくちくかんがチョコの波状攻撃を敢行し、弾薬(チョコ)随時甘味処の主(間宮)が補給するという完璧な布陣。

 

 そんな少女達に揉みくちゃにされる海軍士官という、ムチムチのバインバインとは別のベクトルである事案が発生する一角。

 

 

「司令、不知火の手作りチョコのお味は如何でしょう?」

 

「うんその……ぬいぬい君、提督の鼻の穴には味覚を感知する器官は存在しないのですが……」

 

「やっぱりバレンタインって言えばコレよね! 司令もそう思うでしょ?」

 

「陽炎君……どさくさに紛れてスモークサーモンパテ味のソーダを口に捻じ込むのはバイオテロと変わらないと提督はゴフッ!?」

 

「一発必中! 肉薄するわ!」

 

「やめっ!? 朝潮君チョコ顔に叩きつけるの禁止! てか物理的に肉薄とか提督の膝の重量制限越えてるから!?」

 

 

 いたいけな少女に囲まれるアレでコレなウフフはそこには存在せず、既に余裕が無くなりつつある吉野の向こうでは、新しく建造された四人に何やらレクチャーしているナガモン。

 

 そんなポンコツビッグセブンに戦闘指導を受けた四人は、背後に『ゴゴゴゴ』という擬音を背負いつつ、只ならぬ雰囲気を漂わせながらゆらりと戦場を睨み始めた。

 

 

「幾ら先任とは言え同じ駆逐艦……でもこっちも二水戦所属は伊達じゃないわ。島風、付いてらっしゃいな」

 

「もっともっと速くなってもいいの?」

 

「敵艦発見…。攻撃するから…用意して」

 

「覚悟は完了してる。後は、行くだけ! やるわ!」

 

「待ちに待った艦隊決戦か。胸が熱いな。よし! 艦隊、この長門に続け!」

 

「続かなくていいから! なにしてんのビッグセブン!? て言うかバケツ正座はどうしちゃったの君!?」

 

 

 ワンコのメイドくちくかんにバニーメイドくちくかん、更にはイメージしちゃうプレイングなキラキラした衣装のナガモンが参戦するというカオス。

 

 その外輪では相変わらずのマミーヤとイラーコが給糧活動をするという状態が続く。

 

 そしてそんな艦隊決戦が終了した後に残ったのは赤疲労でヒューヒュー痙攣する髭眼帯と、キラキラが付いたくちくかんズ、それは正に事後という惨状であった。

 

 そして再び時雨に処されてしまい、石抱きが追加されたバケツ正座のナガモンが鎮守府突堤に鎮座し、その隣では前回から引き続き台詞も出番も無しにバケツ正座のまま放置されてシクシクと涙を流すメロン子という風景があったという。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「お疲れさん司令」

 

「……何と言うか、メイド服もアレだけど、チョコだけは何とかなんないかなぁと提督は思うのですが……」

 

「あー、それなぁ、確かに司令にしたらむっちゃチョコまみれって感じるやろうけどな、ウチら艦娘からしたら一つ一つが色々な想いを込めたチョコやさかい、一纏めにして無下にって事はできへんわなぁ」

 

「て言うか、せめて強制アーンは無しにして貰えれば随分と違うんだけど」

 

「既に誰かからアーンしてもろた後やからな、もう手遅れやと思うで?」

 

「あーうん、そっかぁ……うん、まぁそれはいいんだけど龍驤君?」

 

「なぁに司令官?」

 

 

 色々チョコ攻勢で疲弊した髭眼帯を気遣ってか、人払いをした龍驤が苦笑いしつつ飲み物を手渡し労いの言葉を口にする。

 

 それは鎮守府内の人員に対して取り纏め役をしている彼女なりの色々な優しさと気遣いであり、これらの祭りは艦娘と吉野の間にあるギリギリの落し処を見越しての行動とも言えた。

 

 そんな彼女が持ってきた飲み物はホットチョコというある意味吉野にとって救えないブツではあったが、強制的に口に放り込まれないだけマシかと苦い表情のまま、それでもチビチビと口にする。

 

 

 一見ほんわかとした雰囲気、しかしその中心に居る髭眼帯はプルプルと震えつつホットチョコを啜り、龍驤を凝視している。

 

 ニコニコとする龍驤、そんな彼女は何故か『うょじうゅり』と書かれたゼッケン風の布着れを胸に縫い付けた青いスク水を着ており、その、何と言うか平たい胸族の佇まいを遺憾なく発揮しつつ、何故か違和感を感じさせない状態でそこに存在している。

 

 そして何故かその隣では同じく『うほいた-伊』という布を胸に縫い付けたスク水の大鳳が、頭にヘッドドレス風の何かを装備した状態で並ぶというカオス。

 

 何故スク水なのか、どうして大鳳はそんな真面目な相で潜水艦コスをしているのだろうか、この二人がセットと言うのは恐らく共通点が『全通甲板』という単語辺りというのはなんとなーく理解が及ぶのだが、それにどう対すればいいのかという葛藤が髭眼帯の中に発生していた。

 

 

「おはようございます! 改装済み大鳳です! 甲板装甲を強化! 防御力もさらに向上! 提督のために、露天駐機で、艦載機数も充実です!」

 

 

 笑顔でそういうタウイタウイの手に握られるのは瑞雲(六三一空)、本来は潜水母艦運用の為に用意されたというネームドズイウンである。

 

 潜水艦達から譲って貰ったのだろうか、どうして正規空母の彼女がそれをニコニコと握っているのだろうか、そしてスク水を装備して何故甲板装甲が強化され防御力が上がるのだろうか。

 

 

「この装備、いいわね!」

 

「良くないよ!? 正気に戻ってタウイタウイ!?」

 

「潜水母艦伊-大鳳、出撃します!」

 

「スク水でどこに出撃するの!? てか君装甲空母デショ!? 伊-大鳳ってナニ!? そんなにズイウン装備したいワケ!?」

 

「提督、どう? これが大鳳の、そして私たち機動部隊の本当の力なんです!」

 

 

 キラキラした目でズイウンをズズイと見せ付けるタウイタウイ、その横では何故かスク水のまな板が空ろな目でハハハと口から乾いた笑いを漏らしている、スク水を装備して本当の力を発揮するという病的な機動部隊と言うのは聞いた事が無いが、タウイタウイのキラキラを見るともしかしてと髭眼帯は色々な可能性を感じずにはいられなかった。

 

 そんな二人、実は色々とこじらせた大鳳に引き込まれ、平たいコミュニティ所属の龍驤は巻き込まれてスク水装備をされられるという事情が生み出した惨状であったが、そんな事情を知る由も無い吉野は怪訝な表情でそれを眺めるしかなかった。

 

 

「そうだ、艦載機を放って突撃。これだ……」

 

「だからズイウン絡んだら師匠が生えるからヤメロってあれ程いったデショ!」

 

「そうか、ヴァレンタインというやつだな。仕方無い、特別な瑞雲をやろう。ほら」

 

「うっわチョコで出来たズイウン!? て言うかナニそれ何で提督に向けて構えてるの!?」

 

「航空戦艦の真の力、思い知れ!」

 

「チョットヤメテそのズイウンで提督にナニする気助けてシグえもーーーん!」

 

 

 

 こうして何故かスク水の平たい族に挟まれて、ファンシーなアン○ミラーズ風のフリフリを着た師匠のズイウンアタックを受ける髭眼帯は更に疲労度と血糖値を上昇させつつ、更に続いてしまうサバトの渦に巻き込まれていってしまうのであった。

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。

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