大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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 前回までのあらすじ

 チヨコレイトを武器に戦いを繰り広げるメイドさんな艦娘達、そして甘美な地獄。

 それでは何かご意見ご要望があればお気軽にどうぞ。


2017/09/13
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きましたリア10爆発46様、sat様、有難う御座います、大変助かりました


第二次メイド大戦々後処理とガブガブ

「特別なイベントなのは判っていますけど、ちょっと調子に乗り過ぎなのです」

 

 

 大坂鎮守府地下三階医局兼研究ラボ。

 

 甘味処間宮にて行われたサバトで色々集中砲火を浴びた吉野はフラフラの状態でこの地下施設へ退避していた。

 

 人体というのは短時間で糖分を多量摂取すると、糖代謝能力が追い付かずに数々の弊害を引き起こす。

 

 イラつき、眠気、または意外な事に低血糖等、実際摂取は不可能なレベルではあるが一日辺り砂糖換算で約1kg摂取すると人は死んでしまうとも言われている。

 

 

 しかしチョコ爆撃を延々と食らった髭眼帯であるが、実はその辺りの栄養摂取系は一般人より強い体の造りになっている。

 

 それは単純に腎機能を肩代わりしている体内に埋め込まれた毒素ろ過用のプラントが過剰摂取した糖分を回収して血糖値を調整するからであるが、しかしそのプラントは定期的にメンテナンスや損耗したフィルターの維持の為に薬品摂取が必須であり、今回の様な一度に過剰な負荷か掛かる状態だと医局での処置が必須となってくる。

 

 

 そんな訳でチョコを大量に摂取した影響で吉野は現在医局で諸々の後始末という処置の真っ最中。

 

 主治医である電はチョコチョコ状態の吉野に処置を施しながら、カスンプ状態で説教を口から漏らしつつ、びっくりする程ぶっといお注射をジト目で髭眼帯へブッスリとするのである。

 

 

 ネココスメイド服を着て。

 

 

 どうして例のシッポに鈴が装備されたネココスメイド服でチリンチリンとしながらお注射なのだろうか、何故にカスンプ状態でなんでそんな格好をしているのか。

 

 そして何故時雨もカスンプ状態で吉野にしがみ付き、カブガブと首筋に甘噛み状態なのだろうか。

 

 

「誰かが持ってきたチョコレートボンボンを食べ過ぎて酔っ払ったらしいわね」

 

 

 そんなしがみ付き状態の時雨を苦笑の相で見る朔夜(防空棲姫)は、何故かプリティなミニスカメイド服という出で立ちで苦笑している。

 

 真紅のその衣装は白いフリフリが付いた物であるが、胸の部分が大きくVの字にカットされたセクシー系の物であり、白いレースのニーソは同色のガーターベルトで吊られており、ご丁寧にも両手にはレース製の手袋という完全装備。

 

 そんな状態で周りを囲まれる吉野自身は、痛いのやら痒いのやらを我慢しつつ、前に座る人物を見ながら首を傾げて頭に"?"を幾つか浮かべている。

 

 

「チョコボンボンで泥酔するとかどれだけ食べたのやら……て言うか朔夜(防空棲姫)君」

 

「何?」

 

「君がココに何故居るのかというのもアレだけど、何故彼女もここに?」

 

 

 吉野の言う彼女、先程の宴で邂逅したばかりの艦娘である伊-14が何故か朔夜(防空棲姫)の隣に腰掛け、時雨にガブガフされた状態の吉野を興味深げに見ているという謎な状態。

 

 

「あーそれなんだけどね、ちょっとした緊急事態と言うか、話しておかないといけない事があって」

 

「緊急? どしたの?」

 

「ちょっと前の話になっちゃうんだけど、テイトクと初めて会った後、(空母棲鬼)が引き連れてきた艦隊とドンパチしたじゃない?」

 

「うん、やったねぇ……それが?」

 

「でね、その時あの子()の艦隊にレ級が居たの覚えてる?」

 

「居たねぇ、轟沈しちゃったけど、それが?」

 

 

 吉野の言葉に少し微妙な表情をした朔夜(防空棲姫)は一旦何か考える仕草を見せ、うーんと唸った後衝撃的な一言を口から漏らした。

 

 

この子(伊-14)、その時のレ級らしいのよね」

 

「……なんて?」

 

「だから、この子ってあの時沈んだレ級だって話」

 

 

 唐突な話題に言葉が消える室内、色々思考が追い付かず固まった吉野は時雨にガフガフされたまま、朔夜(防空棲姫)は苦笑いで、衝撃的な紹介をされたイヨは相変わらずガフガフされている吉野を観察するという珍妙な医務室。

 

 

 吉野と朔夜(防空棲姫)が邂逅した南鳥島では、第二特務課艦隊と朔夜(防空棲姫)を追ってきた(空母棲鬼)が率いる艦隊が戦い、最終的には(空母棲鬼)以外の深海棲艦は全て轟沈するという結果となっていた。

 

 その直後に朔夜(防空棲姫)から知らされた話では、その海戦に参加した深海棲艦中朔夜(防空棲姫)(空母棲鬼)冬華(レ級)それともう一人(空母棲鬼)の艦隊に居たレ級が『艦娘から深海棲艦へとなった存在』であったと吉野は聞かされていた。

 

 そして現状、朔夜(防空棲姫)が言う伊-14がその時沈んだレ級だというのが本当ならば、元々艦娘であった彼女が一度沈みレ級として黄泉還り、更にそこから轟沈し、再び艦娘となって戻ってきたというとてもややこしい存在だという事になる。

 

 

「……ごめん、ちょっと話についてけないって言うか、その辺りの経緯が判明した辺りをもっと詳しく……」

 

「えっと、この子がテイトクに挨拶した後なんだけど……」

 

 

 朔夜(防空棲姫)が言うには、あの笑劇の着任劇の後、潜水艦娘の一団はごーやに連れられ甘味処に集っていた他の者達へ挨拶周りをしていたのだという。

 

 その中には当然大坂鎮守府に棲む深海勢も含まれており、当人達は驚きつつも事情を説明され、恐る恐るであるがコミュニケーションを取っていた。

 

 そんな最中、このイヨという艦娘は何故か(空母棲鬼)に対し強い興味を示した状態で、しきりに彼女へ()へアプローチをしていたのだが、その内色々(空母棲鬼)に対し訳の判らない事を口走り始めたという。

 

 

「訳の判らない事?」

 

「て言うか、結論から言うと空とあの時沈んだレ級しか知り得ない個人的な情報とか、私達しか知らないあの海戦の時の話とか諸々ね」

 

「マジで? てかイヨ君、君その辺りの自覚ってか状態はどんな感じなの?」

 

「えっと、(レ級として)の記憶は薄っすらとあるみたいな?」

 

 

 イヨの言葉に再び固まり、ガフガフされる吉野。

 

 簡潔にイヨという艦娘の状態を述べれば 艦娘→深海棲艦→艦娘 という変化を経た存在という事になるのだが、それを説明するには吉野の中にある情報に合致しない、更に見過ごせない重要な部分が存在する。

 

 

 朔夜(防空棲姫)から(もたら)された情報では、深海棲艦の上位個体の中には前世が艦娘であった者が幾らか存在しているのだという。

 

 そこから更に考えを進めれば、その深海棲艦が再び沈んで艦娘へと還る可能性もあながち否定は出来ないとも言えるだろう。

 

 しかし今回のケースでは、それ以前に無視出来ない事実が一つだけある。

 

 

 それはあの時レ級が轟沈した(場所)、そこは日本近海と呼ばれる海域であり、深海棲艦達が"聖域"と呼ぶテリトリーの内であったという事。

 

 朔夜(防空棲姫)言うには、その"聖域"という場所は日本に存在する靖國の影響下にある特別なエリアであり、そこで海で沈んだ上位個体と呼ばれる者に限って、他の海域とは違い黄泉還る事無く存在が消滅、若しくは靖國へ還るという話であった。

 

 しかし今ここに居るイヨという艦娘があの時沈んだレ級であるとするならば、靖國の影響下で沈み消滅するという前提は崩れる事になり、それ以外の可能性や事実が他に存在するという事になる。

 

 

「って事は……靖國の影響から来る現象が、朔夜(防空棲姫)君の認識と違うという物であったという事でいいのかな?」

 

「少なくとも私が前にテイトクへ言った事は事実よ、あの話は何度も繰り返し起こった事で確認が取れている確実性のある話だって保障してもいいわ」

 

「って事は、その事象に加えまだ知られていない事実が存在したと」

 

「そうなるわね」

 

「う~ん……ちょっと情報を整理してみようか、ってこの子が例のレ級だったって事は(空母棲鬼)君は認めているって事でOKなんだよね?」

 

「そうね、あの子この話があんまりにも衝撃的だったみたいで、今間宮で真っ白になって固まっているわ」

 

「ああうんそっかぁ……それは何と言うかうん、そっかぁ……」

 

 

 ガフガフされながら苦笑いの髭眼帯、以前に靖國の話を聞いた時も衝撃を受けたが、同時にその情報は当時色々と先が見えないという絶望を持っていた吉野にとって、行く末を好転させるのではと思わせる程の情報であり、同時に降って沸いた希望でもあった。

 

 そしてその情報を得て覚悟を決め、色々動き、現在に至るまでの組織、鎮守府を作ってきた。

 

 しかし今それを大きく覆す事にもなり兼ねない新たな情報、それは吉野が目指す未来への障害になるのか、それとも追い風になるのか、その判断と現状把握の為に頭をフル回転させ思考の海へ没入する。

 

 

「先ず確認なんだけど、朔夜(防空棲姫)君が言っていた情報では、日本近海という海域で上位個体と呼ばれる存在が轟沈した場合は、他海域で成立している"轟沈から再生するという生態のループから外れる"という現象を引き起こす」

 

「そうね、その現象は間違いなく起こっている……けど、実はその結果である『魂が靖國に吸収される』と言われている状態は証明出来ず、詳しいプロセス自体は謎のまま"存在が消え失せる"という事実だけが延々と語り継がれてきたわね」

 

「そしてイヨ君が艦娘として黄泉還って来た訳だけど、そこから考えられる可能性としては、『元艦娘だった深海棲艦上位個体に関してはその現象から外れ、艦娘として還ってくる』か、『たまたまそうなる可能性』があったか」

 

「聖域で沈んだ上位個体の数は私が知ってるだけで6体程ね、数は少ないけど消滅した連中の中には各海域のボスとかも割と居たらしくて、その関係で縄張りのパワーバランスが崩れたり混乱したりとかあったから、聖域に関する情報は割と広く知られている状態ね」

 

「なる程……逆に言うと、そんな事実があると前提して、今のイヨ君の状態が特別なのかどうなのかと判断するには、上位個体の轟沈という母数が少なくて確定は無理って状態になるのかなぁ」

 

「そうね、他にもレ級のみに対してそういう事が起こるとか、聖域内でも沈んだ場所によって変化があるかもとか、原因なんか考えればキリが無い位出てくるわね」

 

「イヨ君の今の状態に限定して可能性を無理に纏めるなら二つ、『元艦娘だったから黄泉還った』か、『それとは関係無しに日本近海で沈んだ上位個体は艦娘として黄泉還る』のか」

 

「今発生している事実、それだけに限定すれば答えは簡単よね」

 

 

 確率を述べる程の母数が無い以上、可能性を模索するのは建設的では無く、情報を組み上げる要素として予想という物は不純物となる。

 

 それを廃して事実だけを並べ、そこから得られた答えと自分がやろうとしている(未来)に対する関係性を模索した髭眼帯は、大きく一度溜息を吐き、ニヤリと口角を上げて朔夜(防空棲姫)へ自分なりの答えを伝えた。

 

 

「起こっているという現象だけに絞れば、今回レ級が轟沈した結果艦娘として蘇ったという事象しかまだ存在していない訳だし特に問題は無いかな、一応他の可能性も考慮すべきではあるけど、今はそれを完全に詰める段階では無いだろうね……ところでイヨ君」

 

「うん、なーに?」

 

「君の中には断片的にレ級だったという記憶が残ってるみたいだけど、更にその前の艦娘だった時の記憶ってあるのかな?」

 

「……ん~覚えてないかなぁ」

 

「って事は、今回は(空母棲鬼)君という君の前世(レ級)を証明する者が居たから、君自身認識していなかった"艦娘からレ級になり、そして再び艦娘となった"事実が判明した訳だけど……」

 

「ああ、成る程……もし誰かがその子の前世を証明出来なければ、何回かそういうループをした事実があったとしても本人が認識出来ない状況だから、その事実自体"無かった事"になる訳ね?」

 

「だねぇ、今回はたまたま発覚した訳だけど、案外この辺りの事情って割と良くある事かも知れないねぇ」

 

「それを証明しようとするなら、この海域で私みたいな存在とか、別海域から上位個体を鹵獲してきて沈めてみないといけないんじゃないかしら?」

 

「冗談でしょ? 何かを証明する為だけに命を海へ沈めろと?」

 

 

 少し憮然とする髭眼帯、そしてそれを見る朔夜(防空棲姫)は逆に笑みを表に貼り付け言葉を返す。

 

 

「その沈める命は貴方達人類の仇敵、深海棲艦の物よ?」

 

「自分はそういう分け方はしない、人類であってもこちらの敵となる者は存在し、深海棲艦であっても道を同じくする者が居る、朔夜(防空棲姫)君……種という単純な括りだけで敵か味方か分けてしまうのはね、人類の終焉という未来しか生み出さないんだよ」

 

 

 これまで自分が目指す目的の欠片さえ見せなかった男が、ほんの少しだけだが本音を口にした。

 

 それは種という枠は関係なく、個としての繋がりでのみ共に生きる者を選択するという言葉。

 

 

 この髭で眼帯の海軍士官がやろうとしている事は相変わらず不明ではあるが、この男の認識では少なくともこの戦争は人類対深海棲艦という簡潔で単純な図式でないという物であるという考えであり、そしてそれは同時に─────

 

 

「テイトクなら、そう言うと思ってたわ」

 

 

 ─────この場に居る朔夜という名の防空棲姫を含めた者達を、種の括りという物で分け隔てる事の無い隣人として認識しているという考えを、言葉という形ではっきり表に出したという、その事実にこの深海棲艦上位個体は改めてこの男と行動を共にする価値はあると再認識したのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「でだ、あの……朔夜(防空棲姫)君」

 

「ん? 何かしら?」

 

「彼女は一体さっきから何をしているのでしょうか?」

 

 

 一連のややこしい話題が終了し、吉野の処置も終了した現在、処置室には吉野に朔夜(防空棲姫)、そして相変わらず髭眼帯の首やら腕をガブガブと甘噛み状態の時雨の姿があった。

 

 一連の話の間不自然な程無言であった電は何か思う事があったのだろう、吉野達が交わした会話をメモに取り、それを片手に『ちょっと天草先生と色々話して来るのです』と言って部屋を後にした為現在は不在。

 

 

 そして最後に残された一人、伊号14潜水艦と呼ばれる彼女だが、何故か現在吉野の周りをどこかのワンコみたくウロウロしつつ、難しそうな表情で観察の真っ最中である。

 

 

「……何してるのか知りたければ本人に聞いてみれば?」

 

 

 防空棲姫から放たれる問答無用のカウンター、確かにそれは正論ではあったが、それをするには髭眼帯の周りをぐ~るぐ~るするフリフリの付いたスク水の艦娘から滲む雰囲気は異様な圧力があった為、妙に声が掛け辛いというかぶっちゃけ嫌な予感がしてプルプルしているしかなかった。

 

 眉を吊り上げジッと見る(まなこ)に対し目を合わす事が出来ず、ただしがみ付いた時雨のガブガフを甘んじて受けつつ俯く海軍士官という珍妙な絵面(えづら)

 

 判り易く表現すると、街のゲーセンなんかでちょっとはっちゃけた方に絡まれて、斜め45°の下からガン付けされている小心者的なパンピー的雰囲気が今の髭眼帯と酷似しているという現状。

 

 そんなプルプル震える吉野を尚もぐ~るぐ~るするスク水は突然ピタリと動きを止め、腕を組み難しい表情のまま何かを考える仕草を見せる。

 

 

 それを見る朔夜(防空棲姫)も最初はじっと様子を見ていたが、無言で行われる謎行動に痺れを切らせたのか徐に部屋の隅へイヨを引っ張っていき、コショコショと何やら話を始めた。

 

 

 ガブガブと噛まれ続けプルプルする髭眼帯に、部屋の隅でコショコショと繰り広げられる密談、もはや訳が判らない異空間がそこに完成しつつあった。

 

 

「し……時雨君、もうそろそろガブガブはヤメテくんないかなぁとか提督思ったりするのですが……」

 

 

 そんな髭眼帯の懇願にピタリと動きを止めた小さな秘書艦。

 

 

「……僕のチョコあんまり食べてくれなかったでしょ」

 

「いや結構食べたと思うんだけど」

 

「でも朝潮とか時津風のチョコより50gは少なかったよ」

 

「ナニソレどんな細かいチェックしてんの君!?」

 

「細かく無いよ、50gって板チョコ一枚分になるんだから、全然細かくない」

 

 

 口を△にしつつジト目で下から見上げるワンコ秘書艦に返す言葉が無い髭眼帯。

 

 板チョコ一枚分と言えば確かに差が大きいと言えるかも知れない、しかしそれは吉野自身が自分で口に運んだ物では無く、言ってしまえば椅子に固定されたまま次々口に押し込まれた状態であり、誰がどれだけのブツを押し込んできたのか吉野自身には正直確かめ様が無い状態というのが真実であった。

 

 しかしバレンタインというイベントに於いて、一生懸命作ったチョコを送るという乙女心からしてみれば、そんな髭眼帯の事情は陳腐で些細な問題に過ぎないのである。

 

 

「リトライを要求するよ」

 

「……ナニガ?」

 

「今度提督の部屋にオヤツ作って遊びに行くから、ちゃんと食べてよ……」

 

「うん? えっと、別に構わないけど……」

 

「絶対だからね」

 

「ああうん判っt」

 

「ちょっとテイトク」

 

 

 ワンコ秘書艦の表情が幾らか柔らかくなりかけた矢先、呼び掛けられて確認した方向には何故かジト目で口を△にした朔夜(防空棲姫)の姿。

 

 今度は一体何事かと首を捻ってその様を見ていると、昨夜の口からまたしても厄介事を知らせる絶望が言葉として吐き出される。

 

 

「この子……テイトクに僚属(りょうぞく)したわよ」

 

「……ナニガ?」

 

「この子レ級だった頃の記憶が残ってるって言ったでしょ?」

 

「うん、それが?」

 

「あの時テイトクが(空母棲鬼)を狙撃したとこを目撃してたみたいなんだけど、それのインパクトが大きかったみたいで」

 

「……んんんんん?」

 

 

 怪訝な表情の髭眼帯の見る先では、ジト目の朔夜(防空棲姫)の影に隠れる様に、こっそりとこちらを見るスク水の姿。

 

 それは何故かモジモジしており、更には気のせいだろうか、何故かキラキラエフェクトが見えている。

 

 確か以前にも(潜水棲姫)をゲットしてポケ○ン図鑑へ登録した時も同じパティーンだったと思い出した吉野は、思わずそれから目を逸らしてプルプルと震え始めた。

 

 まさかラプ○ス()に続きまたGO的レアを引いてしまったのか、見た感じマイペースとノーてんき気質を匂わせる行動がある気がするので、彼女(イヨ)は存在的にはベロ○ンガ辺りのレアではなかろうかと吉野は*こんらん*していた。

 

 

「えっと、何でそうなったのかを聞いても……」

 

私達(深海棲艦)は強さと言うのが価値観の大きな部分を占めていると言うのはテイトク知っているわよね?」

 

「ええまぁ……」

 

「で、(空母棲鬼)っていう絶対者に近い関係であったレ級(イヨ)の前でテイトクはスカーンとワンパンかましちゃった訳よね?」

 

「……スカーンてナニソレ」

 

「無力というのが当たり前の人間が強者に一矢報いるというインパクト、そこから発生する感情は本当なら憧れとか尊敬という形として相手に向く筈だった……」

 

朔夜(防空棲姫)さん何でいきなりそんな物語り口調になってるのか提督ちょっと不安で仕方ないのですが」

 

「その感情が向いた相手が雄という運命の巡り合わせ、雌しか存在しない私達(深海棲艦)にとってそれは尊敬では無く別の感情として花開いても不思議ではない運命の出合い……」

 

「いやちょっと語りながら変な世界に旅立たないで!? てかイヨ君も何コクコクと頷いてるの!? 一体君達部屋の隅で何話してたワケ!?」

 

 

 

 熱く語り出す真紅のメイド服を着た姫の後ろでは尚もコクコクとする潜酔艦娘、そして一時は大人しくなっていたが何故か再びガブガフを再開するワンコ秘書艦。

 

 そのガブガブは何故か甘噛みでは無く痛みを伴う噛み付きとなっおり、色々諸々な理不尽に襲われるという髭眼帯。

 

 そしてそれは後日約束の履行を果す為に時雨がオヤツ持参で自室に遊びに来た際も、何故かまた似たような状況が繰り広げられる事態へ発展し、再び地獄を見るハメになるとはこの時吉野は知る由も無かったのであった。

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。

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