大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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 仕事という物は人を選ぶのでは無く、それを通じて人を作り変える事で適正を生み出す。
 そして作り変えられた者はある意味それに縛られて、元通りの状態には戻らない、それが経験と呼べる有用な物となるのか、それしか出来ないという邪魔になるのかは身に付けた物と環境に依存する為正解という物は導き難くく、そして経験してきた仕事から離れる事は困難となる。

 それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。


2021/08/24
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きましたリア10爆発46様、orione様、拓摩様、黒25様、皇國臣民様、酔誤郎様、有難う御座います、大変助かりました。



職業適性

 握る右手には逆手に持ったサーベル。

 

 半身で前に出す左手は拳を握り。

 

 踏み込む足には全体重を乗せて。

 

 

 三歩程開いた間合いを一足で詰め、その勢いのままに体を左右逆にしつつ右手の柄を捻り込む、そうする事で直線的な運動エネルギーは円運動を上乗せした状態で右手へと流れ、更に突き出す手先へと収束する。

 

 爆発的な挙動の全てを乗せて、木曾が放った逆袈裟に切り上げられるそれを日向は体をぶつけつつ刀でいなす。

 

 

 密着した事で完全に振り抜く前のサーベルは威力が半減し、勢いが流される事で木曾自身の体もやや体幹(たいかん)が崩され、互いに寄り掛かる形で体が密着する。

 

 

 木曾のサーベルは日向の右側から抜ける形で空にあり、日向の刀はサーベルに弾かれる形で肩に担いだ状態。

 

 互いはそのまま短く息を吸い込み、次の動作に繋げていく。

 

 

 前に出た右足を軸にして左足を地面に蹴り込む事で木曾は円運動を生み出し、密着しつつも次に来るであろう日向の一撃を躱そうとする。

 

 そして右手一本で担いた刀の柄尻を左手で掴み、肩を支点にして、まるで抱き込む様に刀を下へと振り抜いた日向の切っ先は、辛うじて身を躱した木曾の変わりに地面の芝生に突き刺さり、更に吹き飛ばして穴を開ける。

 

 

 身を捻りつつ前へ転がり抜け、サーベルを逆手に持ったまま木曾は片膝立ちで日向を睨み上げ、振り返った日向は水平に構えた刀の刃を返し、腰を落として迎撃の姿勢で木曾を見下ろす。

 

 

「密着からの担ぎ上段かよ、おっかねーなぁ」

 

「初撃から捨て身で首を狙ってくるお前よりは、まだ私の方が大人し目だと思うが」

 

「刃を上に向けての突きの構えとか物騒な待ちをしやがって、そんな()る気満々のモンを見て誰が大人しいなんて思うよ?」

 

「なに、お前相手に加減などしていたら首が幾つあっても足りんからな、一切手を抜く気はないぞ?」

 

 

 互いに真剣を用いての死合(しあい)いは触れ合う事で刃を傷めるのを嫌った二人の立ち回りが特徴的で、受けという行動を極力排除したそれは相手の肉を捕らえる為にのみ狙い繰り出される。

 

 

「……武蔵君」

 

「何だ?」

 

「バケツを用意しとけって言ってたけどまさか……これで刃傷沙汰になるとか言わないよね?」

 

「ヘマをしなければ腕が切り飛ばされようが足を落とされようがバケツで元通りだ、何も問題は無いだろう?」

 

「訓練で四肢欠損とかシャレになってないからね!? てかキソーは明らかに首狙ってたし! 師匠も頭カチ割ろうとしてなかった!? ねえっ!?」

 

「折角バケツで瞬間回復する術があるんだ、ギリギリ殺し合いにならない程度の訓練をしなくては意味が無い」

 

「どんだけ殺伐とした訓練してんの大本営第一艦隊!?」

 

()第一艦隊だ」

 

「あの……提督」

 

「……どしたの榛名君」

 

「あの訓練、榛名も混ぜて頂いても宜しいでしょうか?」

 

「うん? 火器の類を使用しないなら別に構わんぞ? ただし自分の分のバケツは自分で確保しておけよ?」

 

「なに物凄くいい笑顔で語り合ってんの君達!? て言うか今キソーのサーベル師匠の足に突き刺さってんだけど!? ってか師匠もキソーをぶった切ってるからぁぁ!? 何してんのあれぇぇぇぇ!」

 

「訓練だが?」

 

「スタァァァァップ! 芝生の上血だらけーーー! 中止! 中止ぃぃぃーーーー!」

 

 

 訓練と称していきなり始まったキャプテンと師匠の死合いは髭眼帯の強制介入で中止となったが、それでも派手に互いを刻んだ状態で、運動場中央の芝を赤に染め上げ、後片付けが色んな意味でカオスになってしまう事態へとなってしまっていた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 事の発端は前日深夜までに及んだ武蔵と木曾の所属部課署はどうするかという話に遡る。

 

 元々武蔵と木曾は支配海域の首魁を殲滅する為、その行動に特化した大本営第一艦隊に籍置いていた、それは戦力という面に於いては頼りになる存在であったが、それに特化し過ぎていた為に他の能力はダメのダメダメであった。

 

 状況を鑑みればその経験を生かし教導の教官へ宛てるというのが最も効率的であったが、現在大坂鎮守府では教導を受ける者に対して教官の数があぶれ気味状態であり、マンツーマンという極端な比率とは言わないが、一艦隊に二人教官を就ける程度には余裕がある状態にあった。

 

 逆に艦娘お助け課や資格取得施設の教習施設方面は人員が足りない状態であり、鎮守府所属の人員適正を考慮して配置換えを考えるにしても、元々が戦う為に生まれてきたと言えなくも無い艦娘事情が絡み、戦闘技術以外の能力は個々の趣味に近い部分に依存するとあって、中々その辺りも悩ましい事になっている。

 

 そんな状況、『大本営第一艦隊のしていた訓練』を一般にも施し、個の戦力引き上げという形の別カリキュラムも用意してはどうかという武蔵の提案の元、その訓練内容の把握と確認の為初っ端髭眼帯が見せられたのは今の死合いであった。

 

 元々本物の深海棲艦を仮想敵とし、艦隊の練度と経験を向上させるという他拠点では出来ない訓練を施すと言うのがウリの大坂鎮守府であったが、それに加え個別の能力向上に戦闘特化の大本営第一艦隊の技術を得られるとなれば、確かに教導と言う面では他の拠点では得られない程の物を提供する事になるだろう。

 

 しかし物には限度がある。

 

 他の全てを投げ捨てて戦闘特化としてあり続ける為に日々精進する艦隊は、そこへ至るまでの道程が険しい茨の道という表現では余りに生ぬるく、そして苛烈な物であった為に、髭眼帯は初っ端の訓練で待ったを掛けるに至っていた。

 

 

「武蔵君、真剣での切った張ったでは死人が出る可能性があるので中止した方が提督はいいと思います」

 

「うん? しかし無手でやっても相手を殴り殺す可能性もあるし、その辺りは余り変らんと思うんだが」

 

「てか相手を殴り殺すとかその辺りの加減はしようよ! 何本気で殺しに掛かってんの君達!?」

 

 

 武蔵に木曾、そして日向は芝の上で首を傾げつつ体育座りで髭眼帯を取り囲み、その横では何故か加賀がフィンランド産の黒いアレをボリボリと咀嚼しつつその様子を見学していた。

 

 

「うむ、確かに徒手空拳でも得物を使っても大して結果は変らんと私も思うぞ?」

 

「だーかーらぁぁ! 長門型や大和型が本気で相手殴ったら影も形も残んないでショ! 君達手加減って言葉知ってる!?」

 

 

 大和型二番艦に長門型ネームシップの脳内辞書には、手心を加えるという類の言葉がページごと落丁(らくちょう)しているという事実が発覚した瞬間であった。

 

 

「しかし提督、加減云々よりも武蔵の言う格闘術や剣術の習得は、今の大坂鎮守府の人員には必須の技術ではなくて?」

 

「……と言うと?」

 

「日本近海は深海棲艦に対する脅威が下がっているわ、でも私達は相変わらず拠点周囲の警戒を今まで以上に重視して行動している、その理由は主目的とする敵が深海棲艦だけじゃないからだと私は理解しているのだけど」

 

「……まぁ確かに、現状ウチの立地で考えれば深海棲艦より人間に対する警戒が中心になってるのは確かだけど……」

 

「でも私達の武装では相手に手心を加えるなんて事は出来ないし、仮にその手の輩を鎮圧するとして、武装以外の鎮圧する何かを習得していなければ相手を穏便に無力化するのは難しいわね」

 

 

 加賀の言う大坂鎮守府の現況も、そしてもしもの時の懸念も最もな話であった。

 

 デフォルメして小型化してあるとは言え、彼女達の使用する武装は嘗ての軍艦が装備していた武装の威力をそのまま発揮する。

 

 そしてそれらは基本的に手を加えると動作をしないという性質を持ち合わせる為、対人としての戦闘に用いるのは即ち殺傷を前提した物と言う事になる。

 

 木曾や日向、そして嘗ての叢雲の様に、近接武装という得物を持つ艦娘も居ない訳では無いが、そういう武装を持つ者の絶対数は少なく、またある程度の技量が無ければそれも人相手には使用出来ない。

 

 大坂鎮守府が自治を全て自力で賄うと言うのは強固な防衛線を維持すると同時に、国内という地理的事情を考慮すれは対象を非殺傷、かつ無傷に近い形で無力化する防衛手段を持つのは課題の一つとして上がってはいた。

 

 

「今まではその辺りに手を回す余裕が無かったが、これからは立場的に外に対する対応にも気を使わねばならないと考えれば、武蔵の言う訓練は私も教導を抜きにして必要な物だと思うのだがな」

 

「だからって全力の切った張ったまで必要なの?」

 

「なぁ提督よぉ」

 

「うん?」

 

「力加減ってのはよ、自分の限界を知った上でないと上手く使えねーんじゃねぇか? ほら、大は小を兼ねるって言うだろ?」

 

「……手加減の為に全力での訓練をするって事?」

 

「まぁ、そうなるな」

 

 

 どう聞いてもそれは脳筋理論という範疇を出ない物であったが、結局はそれを身に付け、維持していく為に必要な物という事に対し髭眼帯も一定の理解を示す事となり、教導として取り入れる前に先ず鎮守府内の者達への訓練としてそれを行い、その結果を見て正式に教導メニューに加えるかどうかという判断をするという条件の元、武蔵を筆頭とした木曾・日向を教官とした艦娘に対する「体術・格闘戦」の教導プログラムは大坂鎮守府の訓練科目に取り入れられる事となった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「それで? 何でその話から提督の射撃講義に繋がるのか理由を聞いても?」

 

 

 甘味処『間宮』地下二階に設置された射撃訓練用シューティングレンジ。

 

 地下一階に食料備蓄庫という基本的に人が居ない空間的緩衝がある為音を気にしなくて良く、また携帯火器用施設の為基本的に吉野しか使用しないそこは間宮の地下に設置されていた。

 

 射座は計6と規模はそれ程大きくは無いが、射手が射座でターゲットの操作が出来るコンソールが設置されていたり、照明の光度も調整可能とする造りは本格的な物となっている。

 

 

 そこには現在例の鎧武者姿の髭眼帯を筆頭に長門武蔵日向、そして加賀に木曾と先程の切った張ったメンバーが居並び、更にグラ子と五十鈴という二人を加えたメンバーがシューティングレンジに集合していた。

 

 

 髭眼帯以外は何故か全員メイド服姿で。

 

 

 兜を脱いだ頭にグラ子のチチをセットした状態の髭眼帯は、コンクリ剥きだしの無骨さが何となくお気に入りという空間に狂い咲くメイド服を見て眉根に深い皺を寄せ、どうして武蔵の提案した訓練カリキュラムの話が自分の射撃講座へと繋がるのかという疑問を口にしている。

 

 

「うむ、それは先程加賀が言った様に私達の武装は人間相手の戦闘には向かない、それに対して格闘という技術も必要だとは言ったが、それに加え携帯火器という対人兵装も使用すれば、非殺傷弾を用いての防衛も容易くなるし、効率的になるのではという意見が上がってな」

 

「……まぁ確かに小火器ならゴム弾やスタンガンみたいな選択肢があるし、安全っちゃ安全かも知れないけど……」

 

「だろう? そしてその手の装備はお前の十八番(おはこ)だからな、それに対人制圧部隊出身のグラ子に、小銃型の砲を扱う五十鈴へ技術を教え込めばカンペキだろう?」

 

「ああうん言いたい事は理解したよ、んで……その訓練に何で君達はメイド服で臨んでいる訳?」

 

 

 繰り返し言うがそこは無骨で殺風景な髭眼帯オキニの男の世界である。

 

 そして鎧甲冑姿の頭にはちょっと布面積の少ないディアンドール姿のグラ子のブツがポヨンポヨンしており、目の前ではタケゾウが桃色のウサギバニーで耳をピクピク状態、当然ナガモンもキャプテンも例のバニー姿であり、加賀に至っては白いハイレグでピンヒールという攻めのバニースタイルという混沌とした絵面(えづら)がそこにあった。

 

 

「て言うか……師匠、それは?」

 

「うん? 瑞雲12型だが?」

 

「うんその……ズイウンなんだぁ……それぇ……ふーん……そっかぁ……」

 

「そうだ、寝間着はノーマルの瑞雲だが、室内用は12型を着る事にしている」

 

「室内用なんだぁ……」

 

 

 言葉に出来ない混沌としたメイド服(?)の師匠から髭眼帯は目を逸らすと、今度は凄く真面目な相の五十鈴と目が合った。

 

 

「……なに? 五十鈴に何か言いたい事あるの?」

 

「いえその……うん、えっと五十鈴君のそれ……」

 

 

 怪訝な表情で髭眼帯が見る先には、ブルマに体操服という組み合わせの五十鈴がさも当たり前の様に腕を組んで立っている。

 

 まぁ確かにそれは訓練用の服装と言えなくは無い、しかし何故それがブルマなのか、そしてどうしてその服装でニーハイソックスなのかという謎があったが、確かに平時で彼女はニーハイソックス装備なのである意味それは普通なのかと髭眼帯は色々と考える事を放棄した。

 

 

「えっとそれじゃ長門君、銃の構造や用途に付いてははしょってもいいんだったよね?」

 

「そうだな、基本的に構造部分は砲に通じる物もあるし、ここに居る者達は小火器の事に付いてはある程度の把握をしている」

 

「んじゃとりあえず取り扱い時の注意点と、発砲までの手順から説明した方がいいかな……」

 

 

 頭にグラ子っぱいを乗せつつ顎に手を当て、色々思案する髭眼帯の前でスパっと師匠が手を上げる、着ているアレの構造上その手がどこから出ているのか、絵面(えづら)的に無理があるのでは無いかと吉野は思ったが、それは多分気にしてはいけないのだろうと常識的な思考を一時凍結する事にした。

 

 

「えーとズイウン君、何でしょう?」

 

「12型だ、いや今我々が手にしている銃だが、提督がこの中から選べと並べた物から比べると、我々の物は明らかに提督の銃より巨大だなと思ってな、普通は素人に対し扱いを覚えさせる時は取り回しの良いサイズの物を宛がう物だと思うのだが、その辺り何か理由があるのか?」

 

「あーそれね、えっと木曾君がさっき言ってた『大は小を兼ねる』という理論に基づき、君達の使用火器を大口径マグナム弾を使用する銃に限定させて貰ったんだよね」

 

「ふむ、しかし非殺傷兵器という考えからすれば、大口径銃は用途的にそぐわないのではないか?」

 

「小口径だと威力の上限が限定される、そして炸薬量による初速は威力以上に射程距離に反映される、更に大口径弾という事は弱装弾……つまり炸薬量を減らした弾にすれば威力の調整も可能で、更に弾頭が大きければ大きい程様々な仕掛けが可能だから選択肢が増える」

 

「なる程、選択肢が増える中に小口径銃の用途も含まれると考えれば良い訳か、しかしそれなら何故提督は我々よりも小型の銃を携帯しているのだ?」

 

「腕力が無いから」

 

「……そ、そうか」

 

「大口径の銃……特にオートと呼ばれる類の物は、基本的に日本人が使用するには適さないからね、だから自分はその選択肢の中で扱える限界の威力を持つ45ACP弾オートを使用しているんだ」

 

「うん? 日本人が駄目と言うのはどういう事だ? その辺りは提督限定の事情ではないのか?」

 

「基本オートと呼ばれる銃は、発砲時に発生したガス圧と運動エネルギーを利用してスライドを後退させ排莢と給弾を行うんだけど、そのスライドを作動させる充分なエネルギーと言うのは言い換えると衝撃と言う事になるから、骨格や筋量の不足している者が発砲した場合、そのエネルギーを支える事が出来なくて体が衝撃を吸収しちゃうんだ、だからスライドは充分に後退せず、結果は弾詰まり……ジャムを誘発する原因となる」

 

「そうか、ならこの手の大型拳銃は欧米人の様なムキムキにしか扱えないと言う事になるのだな」

 

「だねぇ、ムキムキマッチョな人が両手で支持して初めてその手の銃はちゃんと用を成す、けど君達艦娘はその辺り……人よりも力が強いから、より用途的な幅が広がる銃を選定したという事で」

 

 

 色々な面で納得したのか、ズイウンは首をカクカクと上下させて頷いていたが、その仕草は見た目がアレな状態であり、またその形状的にどうやって首を出しているのかちょっと物理法則的に謎な部分があったので、髭眼帯は取り敢えず納得したならとその先を深く考える事は辞めようと思ったのであった。

 

 

「そんじゃ諸々の事は納得したと思うから、続きをレクチャーし……て……」

 

「おーやってるねぇ、呼ばれて来たのはいいけどちょい到着が早過ぎちまってよぉ、聞けばナンか面白れぇ事やってるって聞いたから見学させて貰おうかなって思ってな、いいだろ?」

 

「あ……ああ、輪島さんお疲れ様です……て言うかうん、あの……その……」

 

 

 この日は吉野にとって色々と大事な事を打ち合わせる日であり、まだ防諜に対する直通手段の無い舞鶴との会話を外に漏らさない為に輪島は大坂に訪れたのだが、その予定よりも数時間早く現れたこの男に吉野は面食らった訳では無く、その後ろに控える秘書艦であろうの千歳の姿を見て面食らっていた。

 

 それは電や叢雲と同じ意匠の所謂ネコネコとしたブツであったが、着ている者がくちくかんでは無く水上機母艦なのである、更にちとちよと言えば同艦種の中でも飛び抜けて一部分が大型化している事で有名な艦である、そんな艦がネコネコしつつ顔を真っ赤にしてプルプルしている様は色んな意味でキケン極まりないと言えるだろう。

 

 

 そんな色んな部分をプルプルチリンチリンする水上機母艦に声を掛ける事が出来ない髭眼帯を見て、輪島はポンと手を叩きつつ"ああ"と頷いてとても良い笑顔を凶悪なツラに貼り付ける。

 

 

「ここに来る前暇潰しに酒保に寄ったらよ、ナンか『提督オススメコーナー』ってのがあってさ、んでそこに並んでるブツを取り敢えず千歳に着せてみたんだけと……吉野サン、マジいい趣味してんねぇ」

 

 

 本当に悪意の無い笑顔で笑う輪島の向こうでは、何故か顔を真っ赤にして髭眼帯を睨み上げつつプルプルする千歳お姉さまが居る。

 

 そしてその視線を受けつつプルプルする髭眼帯は、『提督オススメコーナー』という聞き慣れない、且つとても不穏な単語を聞いた瞬間壁に備え付けの内線を手に取り、酒保の番号をピポパしていた。

 

 

「もしもし明石酒保? あ、妖精さん? 自分だけど、え? 自分自分って言い方はややこしいからそろそろパターン変えてくれないかって? いやそんな事言われてもって言うか何か今日むっちゃ不機嫌じゃない? ああいやうん、えっとその明石居る? え? 留守? どこ行ったの? え? 『商売とは1%のひらめきと99%の営業である』ぅ? ナニそれエジソンさんなの? フィラメントピカピカしちゃうの? え? クルイに営業行ったってナニ!? ……うんうん……あそう……うん……へぇ……ふーん……そうなんだぁ……うん……そうなんだぁ……」

 

 

 ピンクの企む色々な事に思考を巡らせるが、そのどれもこれも碌でも無い結果しか生まない予想にしか辿り着けない髭眼帯は、そのまま銃の安全装置を掛け直し、今も尚笑顔の狂犬の後ろでそろそろ涙目になりつつある爆乳水母からの視線に耐えかね、思わず視線を足元に落すという、ヤンキーに睨まれたパンピー的な状態のままプルプル震えるのであった。

 

 

 それから暫く、色々な者達との話し合いの予定時間まで取り敢えずの『提督の小火器射撃講座』は続けられ、後にその辺りの専任教官はブルマもとい五十鈴とグラ子の二人となるのだが、この辺りはまた後日語られる事になる。

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。

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