大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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 前回までのあらすじ

 江風さん着任、そしてグラ子とピシーンパシーンした後神通さんにパスされ、水雷タマスィーを仕込まれた模様


 それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。


2017/09/19
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きましたリア10爆発46様、眞川 實様、鷺ノ宮様、有難う御座います、大変助かりました。


Their campfire.1

 

「提督、ちょっといいクマ?」

 

「うん? どしたの球磨ちゃん」

 

 

 大坂鎮守府一八三五(ひとはち さんご)、取り敢えずの執務も片し鳳翔へ夕食を摂りにいこうと執務棟を出た髭眼帯(黒カリ)に、微妙な表情の球磨から声が掛かる。

 

 現在鎮守府では相変わらず南洋へ送る艦娘達のあれこれをしている状態であったが、演習系のデータ収集等はほぼ取り終わり、残すはそのデータの纏め作業と装備改修系の物だけになっている状態で、それまで繰り広げられていた昼夜通しのドンパチというある意味お祭り騒ぎは漸く終息したばかりであった。

 

 そんな三交代な体制も解除されて漸く落ち着きを見せだした夕刻時、髭眼帯は詳細を聞かされぬまま球磨に袖を引かれ、遊歩道を北へと連れて行かれる。

 

 

 無言で球磨に袖を引かれ、何事かと首を傾げつつもテコテコと歩いていけば、多目的グラウンド脇のちょっとした広場、良くバーベキュー等が行われる芝生が敷き詰められた場所が見えてくる。

 

 

「……北から今度着任してきたヤツらの事だけど、提督は自己紹介以降あいつらに会ったクマ?」

 

「あー、今ちょっと執務がバタバタしててねぇ、毎日自室と執務室の往復が殆どで、新しく着任した子達とはとんとコミュニケーションが取れて無い状態なんだよねぇ」

 

「やっぱり……ちょっとアレ見て欲しいクマ」

 

 

 グラウンドの中程辺りまで連れてこられた髭眼帯(黒カリ)は、球磨が指差す方向を眺め、その辺りの広場に展開する謎の光景を目を細めて確認しようとする。

 

 

 夕闇が影を落す広場、そこには青だの黄色だののテントらしき物体が幾つか立ち並び、遠目であった為にその詳細は判らないがそこでは数人の人影がチョコチョコと動いているのは確認出来る。

 

 

「……テント?」

 

「クマ、着任してきたヤツらを中心に、何だかお泊り会とか言ってテント泊をしてるみたいクマ」

 

「へー、何と言うかちょっとした林間学校みたいな感じなのかな、まぁこれから一緒にやってく仲間になるんだから、軍務に差し支えが無いなら別にいいんじゃないかって思うんだけど」

 

「ただのテント泊なら別にいいクマ、でも……」

 

「でも?」

 

「口では説明が難しいクマ、一度提督にも参加して色々確認して欲しいクマ」

 

「……うん? まぁ自分が混ざって彼女達の邪魔にならないのならいいんだけど」

 

 

 球磨に促されてテントが立ち並ぶ一角へと近付いていく髭眼帯(黒カリ)。

 

 それは遠目から見た分は極普通の野外泊という物に見えていた、そしてその一角に近付くにつれ髭眼帯の表情は徐々に眉根を寄せた、怪訝な物へとシフトしていく。

 

 

 先ず見えたのは恐らく2~3人用程の大きさの普通のテント、そしてその間にやたらと大きめの青いテントみたいな物体が見える。

 

 それはちょっと都会の公園なんかで見かける自由な人たちが暮らす、ブルーシートなんかで作られた家屋に酷似したと言うか、まんまのビジュアルなブツが三つばかり。

 

 そしてその住居が円陣を組んだ状態で建ち並び、その中心では焚き火を囲む様にご丁寧にも倒木が数本設置され、そこでは誰かがギターをボロロンしていたり焚き火では調理をしていたりと、当初テント泊という名のお泊り会をやっていると思っていたそこは、フリーダムな人たちが暮らすテント村的なテリトリーになっているという絵面(えづら)

 

 

「あっ、提督どうしたの?」

 

「うん……いやその時雨君、そのセリフは提督が言いたいのですが……」

 

 

 そんなテント村から髭眼帯を見つけたのか、秘書艦のお下げがテテテと駆け寄って来るが、恐らくお着替え中だったのであろう、何故かその格好はいつも寝る時に着用するクマの着ぐるみの頭部だけ装着した、そんな何とも言えない格好でニコニコとしていた。

 

 

「時雨君、コレ……何してんの?」

 

「え? んと皆で親睦を深める為にちょっとしたお泊り会をしてるんだけど」

 

 

 時雨の言葉に再び髭眼帯(黒カリ)はテント村へ視線を戻す。

 

 そこに取り敢えず見える光景はふっつーのテントの間に見える本格的なブルーシートの居城と、そこから生えたパラボナアンテナや引き込まれた電線等、どう見ても野外泊と言うより、ガッツリそこに住む的な雰囲気漂うフリーダムな人達のテリトリー的空間が展開されている。

 

 更に中心の焚き火の辺りでは、倒木に腰掛けギターをジャンジャカしつつ語り引きをしている江風と、その前で焚き火を利用して巨大な中華鍋を振り回しチャーハンを炒めている駆逐艦、そしてテーブル辺りではパタパタ忙しそうに食器等を運んでいる水色お下げの駆逐艦の姿が見える。

 

 

「……お泊り会?」

 

「そそ、ほら今回の着任で妹とか増えたじゃない?」

 

「ああうん、そうだね……」

 

「でね、折角だから皆で一緒の部屋で暮らそうって事になったんだけど、一人用の部屋じゃ狭いからね、今二部屋分ぶち抜いて改装して貰ってるんだ」

 

「ああ、その部屋の改装が終わるまで野外泊しようって事?」

 

「そそ、で、そんな事してたらね、他の子達も面白そうだからって参加してきちゃってさ、気付いたら結構な大所帯になっちゃったんだ」

 

 

 何となくテント泊に至った経緯は時雨の言で判明はした。

 

 しかしその催しがどうしてガチの居住施設が設置されるテント村になっているのだろうか。

 

 更に良く見れば街路樹の間には紐的な物が張られ、そこには洗濯された服や下着がヒラヒラと風に揺られ、その様はサバイバリーさと言うか、自由人のテリトリー臭と言うか、そんな世間とは隔絶されたガチの空気が漂うという色んな意味でおかしな状況に、流石に髭眼帯(黒カリ)もどう反応したら良いのかワケワカメな状態であった。

 

 

「あ、提督晩御飯はもう食べた?」

 

「う……うん? いやまだだけど」

 

「じゃ今支度してるとこだからさ、一緒に食べようよ」

 

「ああうん……それじゃ頂こうかな、球磨君も来るでしょ?」

 

 

 そう言って傍にいる球磨に声を掛けるが、何故かさっきまでそこに居たアホ毛軽巡の姿は忽然と消えていた。

 

 その状況に例の嫌な予感メーターがピコンと反応するが、時既に遅し、『KAGAKAGAKAGA~』と楽しげに歌を口ずさむヘッドだけクマな秘書艦に引き摺られながら、髭眼帯はテント村へとドナドナされて行くのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「あっ、提督、こんばんは、どうなさったんですか?」

 

「こんばんは海風君、いやちょっとね、何かね、色々とね、うんあの……うん」

 

「長波、ごはんもう一人分追加お願いできる?」

 

「ん? いいよ~ メシも多めに炊いてあるからさ、皆と同じで五目チャーハンでいいだろ提督?」

 

「ああうん頂きます……」

 

 

 焚き火の脇では江風と同じく北方方面から送られて来た夕雲型四番艦 長波と、白露型七番艦 海風が夕食の支度をしていた。

 

 

 其々月の輪熊とアライ熊のアニモーな着ぐるみを装着して。

 

 

「よぉ提督、相変わらず頭ボーンしてンな、メシの匂いに釣られて来たのか?」

 

「うんまぁそんなカンジで……そんな風味で」

 

 

 ギターをジャカジャカしつつもニヤリと笑ってそう言う江風、当然彼女もレッサーパンダのアニモーな姿というラフな格好をしていた。

 

 

 どうやってアニモーなモフモフとしたハンドでギターを弾いてるのかは判らないという不思議な状態で。

 

 

 まぁレッサーパンダの着ぐるみ姿が、ラフなのかどうかというのは常識的にどうなのかと色々と意見が分かれる状態と言えるだろうが、そこはそれ、一応パジャマなのだから彼女ら的にはそれはラフな格好という認識であるのは間違いないだろう。

 

 

 そんなアニモーが集う焚き火に招かれ、倒木に腰を掛けて怪訝な表情の髭眼帯は改めて周りを見渡した。

 

 普通のタイプのテントが三つ、例のブルーなシートな家屋が三つ、そして今髭眼帯の周りにはアニモーが四匹。

 

 一人一棟という考えでいけば当然まだこの動物の森には人数が二人程足りない。

 

 

 その残りの二匹はどこに居るのかとキョロキョロすれば、恐らく探していた内の一匹だろうアニモーがガサガサと草むらを搔き分けつつ現れた。

 

 

「鳳翔さんにお肉頂いてきましたよぉ~ 今日のカレーはビーフカレー決定です~」

 

「でかした綾波、鍋はコンロで暖めてあっからそっちは頼んだ」

 

「了解でーす、あ、こんばんは司令官」

 

「ああうん……こんばんは黒豹さん……」

 

 

 怪訝な表情の髭眼帯の前では、肉の包みを持った黒豹もとい綾波型一番艦 綾波がニッコリと微笑んでいた。

 

 その格好はもう説明不要であるが、黒豹の着ぐるみ姿である。

 

 

「っつーか夕立はどこ行ったンだ姉貴? もーすぐメシだっつーのに」

 

「食後のデザートを間宮さんの所に買いに行くって言ってたけど……ちょっと遅いね、どうしたのかな」

 

「そう言えばデザートと一緒に飲み物も買ってくるって言ってたから、それで手間取ってるんじゃないかな」

 

「そーなんだ、一人で大丈夫かな……言ってくれれば荷物持ちの手伝いに行ったのに」

 

「夕立ちゃんならさっきバイクであっちを走ってましたけど……リアカー付きの」

 

「なら大丈夫なんじゃないかな、取り敢えずこっちはいつでもごはんが食べれるように用意だけしてさ、それでも帰ってこなかったら迎えに行けばいいんじゃない?」

 

「だな、よっと……取り敢えずチャーハンあがったぜ、後は綾波よろしくな」

 

「はーい」

 

 

 駆逐艦達による和気藹々とした夕食の用意という風景。

 

 普通ならそんな癒され空間とも言える只中では、髭眼帯が相変わらず怪訝な表情のまま倒木にシッダウンして周りの様子を伺っていた。

 

 何せふっつーに会話が聞こえてはくるが、そのどれもこれもはアニモーな出で立ちのくちくかん達からなのである。

 

 

 キャンプと言うには物々しいコロニーに蠢くアニモー、そしてそこからはギターがジャカジャカ鳴り響き謎のソングが轟くというそこは、球磨が言う様に言葉としては説明のし辛い状況には違いない。

 

 

 しかもそのテント周辺では、明らかに洗濯物とおぼしき服とかタオルとか下着がヒラヒラしているというサバイバリーな状況。

 

 すぐ目の前の艦娘寮にはランドリーがあり、そこで洗濯すれば乾燥機も設置してある為に洗濯物を干す必要は無い筈である。

 

 と言う事はもしかしてその洗濯さえも手洗いでやっているのか、それとも洗ったブツを干しているだけなのだろうか。

 

 そんな事を考える髭眼帯の視界、丁度パンティーとブラがヒラヒラしている真ん中で、明らかに異物と言うか白くてモフモフしてると言うか、ぶっちゃけ巨大な毛皮的な物体が風に靡いているのが見えた。

 

 

「ねぇ時雨君、アレって……」

 

「え? んと……ああ、提督僕のパンティーに興味があるの? それなら脱いでくるけど……」

 

「チガイマス! てかちょっと待って!? 何で君テントの影に行こうとしてんの!? てか提督が聞きたいのはそのパンティーとブラの間でユラユラしてる白いヤツ!」

 

「ああそっち? んと、この前北極行ったでしょ?」

 

「うん」

 

「その時仕留めた白熊なんだけど、剥いだ皮をちゃんと処理してなかったからさ、丁度いいから今その処理をしてるんだ」

 

「丁度いいって何が丁度なのぉ? てかいつの間にハンティングしてたの時雨君……」

 

「提督が寝てる間にちょっとね」

 

 

 唖然とする髭眼帯(黒カリ)の前ではアニモーヘッドで前屈みになり、スカートへ両手を突っ込んだままのポーズの時雨と、その向こうで下着に紛れ風にゆらゆらする白熊の毛皮というワケの判らない世界が展開されていた。

 

 

「ただいま~ デザートと飲み物もってきたっぽい~」

 

「あ、夕立お帰り、随分沢山買ってきたんだね」

 

「途中で陽炎に会って、キャンプの事話したら色々差し入れくれたっぽい、あ、提督さんだ~! 提督さんもお泊りするっぽい?」

 

「いやお泊りと言うか晩御飯をご馳走になるカンジと言うか……」

 

 

 夕立が乗るバイク、HONDAのNSR250Rの後ろには古風なリアカーがドッキングされており、そこには色々なブツがINしているのであろう、トートバックやダンボールが積まれているのが見えていた。

 

 

「……えぇ~」

 

 

 しかし髭眼帯は見逃さない、その様々なブツに紛れ、目の覚める様なBlueの巨大なクーラーバックと、その脇にはコンビニで提督諸氏が目の色を変えて手を突っ込むあの一番くじの箱の如き形のブツが鎮座しているのを。

 

 

 吉野は思い出す、今夕立は何と言ったかと。

 

 途中で陽炎とエンカウントし、そして差し入れを貰ったというそんな言葉。

 

 そして更に思い出す、嘗てまだ第二特務課が大本営に居を構えていた頃、あのお茶会で繰り広げられた大惨事(テロリズム)を。

 

 

 今目の前にあるクーラーボックスに無地の白い箱、それはあの時陽炎が用意していたパンドラの箱と同じブツではないのかと。

 

 

 そんなブツを見てプルプルする髭眼帯はどうした物かと眉根を寄せ、確実に来るだろう陽炎テロリズムの回避方法を模索しようと視線を彷徨わせると、何故か膝下辺りまでパンティーをずり下ろしつつ、髭眼帯の視線に気付いたのかニッコリとする時雨の姿があったりした。

 

 

「時雨君、ナニシテンノ?」

 

「え? これ提督のパンティー……」

 

「パンティーというワードに提督という呼称を接続しないで!? てか提督パンティーギブミーしてないからね!? つーか夕立君も何で頬膨らませてスカートに手ぇ突っ込んでるワケ!? 海風君ヘルプ!」

 

「あ……あの、提督が下着に並々ならない執着をお持ちなのは時雨ちゃんから聞いてますけど、流石に食事時にその……プレイに走るのはどうかと思います」

 

「プレイってナニ!? 提督そんな属性持ちじゃないからね!? てかマジで違うから! そんな目で提督を見ないで!?」

 

 

 こうして唐突に動物の森に引き込まれた髭眼帯(黒カリ)は、様々な誤解を解きつつも何とか食事の席に着くのであったが、その頃には赤疲労状態に陥ってしまい、リアカーに搭載されているブツの存在がすっかりと頭から抜け落ちてしまった為に、この後繰り広げられてしまう地獄のキャンプファイヤーマイムマイム事変に巻き込まれていくのであった。

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 ただ言い回しや文面は意図している部分がありますので、日本語的におかしい事になっていない限りはそのままでいく形になる事があります、その辺りはご了承下さいませ。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。

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