大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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 前回までのあらすじ

 友ヶ島警備府艦隊総旗艦天龍、彼女は己の命じるまま空を求め、何もかもを脱ぎ去ったネイキッドという姿になり、大空を羽ばたく鳥となった。


 それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。


2019/02/20
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きました対艦ヘリ骸龍様、ヒロキチ_ROM専様、リア10爆発46様、雀怜様、難う御座います、大変助かりました。


多事多端

 

「今回の事は色々と複合的な隙が生んだ結果だと自分は思ってます」

 

 

 大坂鎮守府執務棟、二階にある応接室では髭眼帯が渋い表情を表に貼り付けソファーに身を預けていた。

 

 室内には時雨、長門、龍驤の三人に電という艦娘達と、陸軍西日本即応集団司令長官である池田眞澄とそれに付いて来た士官が一人、更には友ヶ島警備府司令長官リーゼロッテ・ホルンシュタインに総旗艦の天龍、止めに現在大坂鎮守府司令部付け相談役という新しい役職に納まった唐沢という面々が、使節団規模の人間が入る広さの部屋を占拠している。

 

 

「ホルンシュタイン司令の着任関係で夕張が抜けてセキュリティ関係を山風が肩代わりしていたが、まだ対人用の機器に不慣れだったのがマズかったか」

 

「やなぁ、ついでに今回は使節団クラスの人間が来おったから陸さんも手ぇが回らん状態やったし」

 

「おまけに私と時雨は例の人員整備の後始末に追われて動けず、提督の護衛は親潮一人」

 

「最後は元老院の幹部子飼いのSPが襲撃者ってどないやねんマジで」

 

「これで怪我人だけで済んだんは不幸中の幸いっちゅーか、結果的にサブが昼行灯と思われてたから相手は油断しとったのが不幸中の幸いやな……って思わなやっとれん状況やなぁ」

 

 

 円形に組まれたソファーで其々は、髭眼帯と同じく渋い表情で茶を啜り、言葉少な気に問題点を挙げていった。

 

 

 事の始まりは友ヶ島警備府にリーゼが着任し、麾下に入る艦娘達と拠点で諸々していた時にまで遡る。

 

 

 当日は鎮守府前島にて予てより予定されていた元老院の幹部を含む経団連の使節団との会談が催されており、吉野を含めた鎮守府の者数人がそれに対応し、前島の警備を受け持つ陸軍側の人員が周りを固めるといういつもの(・・・・)状態でそれは執り行われた。

 

 会談と言ってもそれ程大層な物では無かったが、定期的に行われるそれはある意味元老院側にとっては大坂鎮守府との関係を明確にする場ともなっており、その性質上参加する者の顔ぶれの半分程は毎回違う者になっていた。

 

 そんなある意味政治的な意味合いの濃い会談の場に於いて、参加していた経団連側が連れていたSPが場を襲撃、念入りに準備をしていたのかその場では複数人の者が同時に行動を起こし、また同時に外部からも自爆テロ染みた攻勢が掛かった為に一時前島施設は狂乱とも言える状態で混乱を来たした。

 

 

「どうやって手に入れたんかは謎なんやけど、外でやらかした連中は全員フル武装で人数は16、その内10を無力化して尋問できるモンは2、残りはまだ治療中や」

 

「……使用していた装備は東側系の物で固められてたと言う事みたいですが」

 

「モノはそうやけど、全部コピーやらライセンス生産品やったから、製造ルートで考えたらロシアいうより大陸系から持ち込んだって思た方がええやろなぁ、けどこの前お前がやらかした事を考えたら、やっぱロシアがその後ろに付いとったっちゅうても不思議やないのぅ」

 

「内部で襲撃に加わった者は全員死亡か……どちらかと言えばそっちの方が情報を持っていた可能性が高かったから、出来たら捕縛したかったな」

 

「そりゃ無理や、幾ら艦娘を護衛に就けてたから言うても、あの場で応戦出来たんは親潮とサブの二人だけや、数の上でも2対4、それも元老院のお偉いさん庇いつつの事やから、相手を無力化する言うたら全力でやらんとどもならん」

 

「せめて時雨であったらその辺り何とかなったかも知れんが……」

 

「いやいや親潮君も良くやってくれたよ、彼女が居なかったら確実に誰かは死んでた、問題は場の性質上元老院関係者の前で艦娘が暴力的な行動が出来ないって縛りがあったからさ…… だからこっちはある意味手加減が出来なかったって事で……」

 

「まさか文官って事で通ってるサブがあれだけやれるっちゅうんは相手も想定しとらんかったやろ、それがええ意味で作用した感じやな」

 

 

 外からと中からという同時襲撃、それは想定した規模以上の緊急事態であった為人員を一箇所に集中する事はままならず、結果的に各所の者達は各々の持ち場の人員だけで事の収拾に当たらねばならなかった。

 

 外部よりの襲撃は出入りのゲート周辺に集中し陸軍の警備隊と大規模戦闘に発展、会談が催されていたとあって人員も装備も平時より固められてた為陸軍側は装備の損傷と怪我人数名という被害で済んだが、それでも30分以上はその場で釘付けとなった。

 

 そして会談中だった室内は、使節団関係者8名に対し、それらが連れて来た6名のSPの内4名が襲撃者となり、先ず無関係なSPが無力化され、吉野が言う様に艦娘が人に対して過剰に暴力的な行動を見せられないという縛りから、親潮が要人の盾となって動けず、結局は吉野一人が全ての襲撃者を始末した形となった。

 

 

 襲撃時は人数差と状況から使節団はおろか親潮でさえ絶望視していた状況であったが、元々対人という面の経験だけは豊富な吉野は室内という狭い空間であるという助けもあり、襲撃者全員の無力化には成功していた。

 

 その代わりに受ける被害はそれなりであり、対応した吉野の体が常人と同じ作りであったなら、恐らく受けた傷によって生死は微妙なラインにあったというのが治療に当たった電の所見であった。

 

 

「腐っても特殊作戦軍に派遣されとった専任士官や、ついでに至近距離でハンドガンしか道具が無いんやったら囲まれる心配は無い、んで要人は艦娘が盾になっとるんやったら最悪差し違えまでに被害は収まる、まぁお前はこう判断したんやろ?」

 

「えぇまぁ……お陰でこのザマ(・・・・)ですが」

 

 

 北極から帰還して漸くミイラ化が解けた髭眼帯であったが、現在はそういった事情でまたしても包帯塗れ状態になっており、割と重篤な姿を場に晒していた。

 

 この大規模襲撃が発生してからの被害は吉野本人がそれなりに傷を負ったのと、使節団の内数名が軽傷、迎賓施設の一部が使用不能状態と、施設出入り用のゲートが使用不能となっている為封鎖。

 

 陸軍に於いては装甲車両一台と兵員輸送車一台が半壊、任務に就いていた者が若干名の軽傷となっている。

 

 

「結果として尋問はそちらにお任せしてますが、情報は抜けそうですか?」

 

「国際条約に沿ったやり方やとまぁ無理やな、最悪現場で無力化した数が(・・・・・・・・・・)増える形にせんと(・・・・・・・・)どもならんわ」

 

「そこまで口が堅いとなると……」

 

「少なくとも何かしらの教育を受けたモンか、若しくは狂信者の類やろなぁ」

 

「噂ではそっち系のネットワークで実行者のやり取りをする仲介者が存在するという噂も耳にした事がありますが」

 

「あーメンドイなぁ、それやと組織って縛りで潰していく事が難しゅうなる、ウチもその手の特殊班編成せんとどもならんわ」

 

 

 現在世界は艦娘を擁する国と、資源産出国、そしてそれ以外という国々の形で情勢は固まりつつあった。

 

 その中でも資源も軍事力も無い国では政局が不安な場合が多く、そういった国の殆どは国民感情が常に不安と不満に苛まれている状態にあった。

 

 結果としてそういう事情を抱えた国々では必然的に国政が安定した他国へと労働力や富裕層が流れるという形が出来上がり、陸で国境を接する国々の間では軋轢が顕著な形になるという負の連鎖が出来上がる。

 

 そんな情勢を背景に国際社会は部分的に混沌とした物になっていた。

 

 

 そういう世界に身を置く者達の幾らかは思想よりも世間に対する不満を基にした活動家として世に放たれ、そこから生まれるテロリズムという物は人類の危機という戦いを展開している世界にも関わらず、以前と変らぬ形で諸外国へ理不尽を振り撒き続けていた。

 

 複雑な事情を抱えつつも、欲望と言う単純な原因を元に混沌とする世界では、嘗ての様に宗教や思想で敵味方が分かれる割合は少なくなっている、例え主義思考という部分が違ったとしても其々が明確に敵では無い場合は、所属が違った者同士であっても共闘するというのが現在のテロリズムに於けるスタンダードとなりつつあった。

 

 

 今は世界の中心から爪弾きになりつつあるロシアや中国という大国を背景に、武器や資金がそういう人員を要する組織や国に供給される。

 

 そしてその間には『敵の敵は味方』という暴論が蔓延る様になる。

 

 更に大国を背景に置くと言うのは実行力を得る為の資金や武器が供給されるだけでは無く、情報や段取りという面に於いても相当なバックアップとして機能する事になる。

 

 言い換えてしまえば現在の世界情勢は少数の者達がテロという手段を以って大国を相手にするという形は機能しておらず、逆に大国がそれを支援し始めた為に規模は大きくなり、またその行動範囲は全世界へと広がり始めた。

 

 その中でも厄介なのは『代理テロ』という行為が常態化しつつあるという点にある。

 

 例えば中東方面の組織がアジア圏で何かしらの行動を起こそうとする、しかし活動圏を大きく離れた地では人員と装備を用意する事が困難な為に、計画の遂行は現実的では無い。

 

 この様に国家間の距離という物はテロという活動に於いて、避けては通れない絶対的な要因というのが今までの常識であった。

 

 

 しかしその計画を大国、若しくは活動を仲介する事を専門にする組織を通し、現地で活動する別の組織へ橋渡しをする、そんな形で地球の裏側の組織が立てた計画を、遠く離れた現地の組織が実行するという事も珍しくはないのが今のテロ情勢となっている。

 

 本来主義や思想を元に活動をするテロという行為は、例えその部分から外れた行動であっても狂信者を世界のどこにでも用意可能とした。

 

 ある意味『持ちつ持たれつ』という関係で成り立つ、そんなテロのコングロマリット化が大国主導で行われた結果、日本という外部とは隔離されていた島国に於いても他国と同じ程に標的となり得るのが現状であった。

 

 

 その為陸軍は海軍のサポートという位置付けでありながら、それ以上に現在は国内の防衛という色合いが濃い組織として存在していた。

 

 

「深海棲艦との戦争が今も継続していると言うのに、人類は未だ己の利権や欲で同族の足を引っ張ってるのが現状って事ね」

 

「欲が絡むから命を掛けてでも足を引っ張んだよ、人間ってやつぁ生きるか死ぬかを離れちまぇばどいつもこいつも腹の中ぁ欲まみれで真っ黒だ、そんなヤツらを守る為に俺っちらは生きるの死ぬのやって来たワケじゃねぇんだがなぁ」

 

 

 陸軍の将が口にする世界情勢と日本の立場という話を聞き、元友ヶ島警備府司令長官と現友ヶ島警備府司令長官は揃って表情を厳しい物にする。

 

 

 結局今回の一件は各方面に暗い影を落す事になり、結果的には危機管理と言う面で常態化していた大坂鎮守府への視察団詣では暫く自粛という事で話が纏まった為、吉野達側の負担は幾分軽くはなった。

 

 しかし逆に要人を直接狙う事に手段を選ばないという類の活動が軍施設内で発生したという事もあり、鎮守府の活動は暫くの間閉鎖的な形で行わねばならず、また対人関係の防衛という事で早急に艦娘達に対しても教育を施すという方針が軍では採られる事になるのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「しかしアレだよな、吉野司令って一応ドンパチとか出来たんだな」

 

「吉野中将は自分達の間では武官で通っていますが、艦娘さん達の間では違うのでしょうか?」

 

「え、陸さんじゃそんな感じの認識になってんの? マジかよ?」

 

 

 会議が取り敢えず終了し、各関係者の代表者だけで話の詰めが引き続き行われる事になった午後。

 

 甘味処間宮では随伴として参加していた者達が、会議の終了迄の待ち時間を潰す為に卓に着いてあれやこれやと情報交換を兼ねた会話を繰り広げていた。

 

 天龍の隣には時雨、その向かいには池田の随伴で来た大田一平(おおた いっぺい)という名の准尉、その隣には龍驤と所属はバラバラだが妙に各拠点の内情に詳しいというメンツという集いがそこにあり、また陸軍の准尉という珍しい存在が卓に着いていた為に周りの者達の注目を集めるという、そんな経緯を辿り、何故かそこには妙に人口密度が高いという場が出来上がっていた。

 

 

「提督って海軍と陸軍とで評価が全然違うって聞いてたけど、武官扱いって話は僕も初耳かな」

 

「青葉はその当時の司令と接触した事がありますが、当時のあの様を思い出せば准尉さんの話には納得いく部分がありますねぇ」

 

「……何時の間に生えて来たんだお前、てか何だよこの人だかり」

 

「いや~ 司令が大怪我を負って搬送されてきたって話で大騒ぎになった後、即関係者が緊急呼集されて会議が始まったって事で、まぁその……色々と噂が流れる事になっちゃいまして、その辺り諸々の何と言いますか? 誤解を解く為にこの青葉が一肌脱ごうかなぁなんて」

 

「青葉さんが関わると別な意味で話がおかしくなっちゃうんじゃないかって僕は思うんだけど……」

 

「酷いっ!? 青葉そんな目で見られていたんですかぁ!?」

 

 

 つい先日、髭眼帯の頭に鎮座した髷を巡っての事でアハンウフンの元凶になったアオバワレ、それまでは情報室所属という事で皆にはそれなりに一目置かれるというイメージだった彼女は、その一件以来『やはり青葉は青葉だった』という評価で認知される存在になっていた。

 

 

「あの一件で色々被害に逢うたもんもようけおった筈どすし、その評価はしゃーない事や思おりまへんか?」

 

 

 そんなアオバワレに対し何か思う物があったのだろう、ドンマミーヤが京言葉を漏らしながら、ニコリと微笑んで羊羹の皿を青葉へ手渡した。

 

 このマミーヤの言葉使いは周りでは『凶言葉』と称され、彼女のアレな状態のバロメーターを推し量る物として鎮守府の者達が恐れる指針になっていた。

 

 

「あのあのあのその申し訳ありませんんん! 青葉あれから色々とその反省して滅多な事は口にしない事にしましたので、どうかそのあの、本当にそのぉっ」

 

「……そうどすか、そら良おした、あんま滅多な事口にしはりますと、ええ事ありまへんよってに」

 

 

 引き続きニコリと微笑みながら甘味処の主はしずしずとカウンターの奥に消え、その様を見る周りの者は青い顔をしてプルプル震えるという絵面(えづら)が甘味処に展開される。

 

 

「フフフ……怖い」

 

「天龍さん、決め台詞が変になってるよ」

 

「この前の事おもたらアレはしゃーないわ、まぁ暫く大人しゅうせんと流石にうちらも庇いきれんで青葉? マジで」

 

「はい……肝に命じておきます」

 

「んで? 提督が無双したって話は本当の事なのか?」

 

「……なぁ、何で武蔵まで沸いてきてんだよ」

 

「いや何、最近ヤツは昼行灯染みた(つら)が過ぎてるからな、久し振りにそっちの話が出たと言う事で楽しませて貰おうと思っただけだ、なぁ木曾よ」

 

「いや俺は単に巻き込まれただけで……」

 

「結局武闘派連中がワラワラ集まるってか、ほんとこの手の話が好きだなアンタらは」

 

「今はアイツの事を知らん者が多過ぎるからな、この際だ、ちゃんと周知させておいた方がいいと思うぞ?」

 

「提督はその辺って隠したがってる感じだしね、丁度いい機会なのは確かかも知れないね」

 

「って結局吉野司令ってどういう人間なんだよ?」

 

「うむ? そうさなぁ……どういうと言われてもだな……」

 

「えーっと、うん……どう言えばいいんだろうね」

 

 

 フフ怖の言葉に武蔵は思案顔になり、時雨もまた眉根を寄せて腕を組む。

 

 

「数字だけで言えば、そら恐ろしい人間って事になるかもな」

 

 

 そんな二人を見てキソーが助け舟を出した。

 

 実際人となりと言う物は個人によってイメージがコロコロ変化する物である、ならばその者の事を知る手段の取っ掛かりとなるのは純粋に第三者から見た評価、若しくは数字として挙げられる何かしか無い。

 

 木曾という艦娘は武蔵というイケイケを補佐しつつ艦隊を纏めるポジションに居た為、案外この手の話題を上手く纏めるというスキルに長けるという、割と優秀な艦娘であったりする。

 

 

「……数字ってどういう事でしょう? その辺りをもっと詳しく!」

 

「あー、例えば単独特務の達成率とか、無力化した相手の数とか、その辺りは実務能力を数字として見る事が出来るから色々と判断が付くんじゃねぇか?」

 

「なる程…… それで、その具体的な数字とは?」

 

「さぁ? 俺らは対人関係に関わってた訳じゃねぇから、その辺りのちゃんとした数字は出せねぇな」

 

「なんですかそれぇ、ちゃんとした数字が判らないと記事に出来ないじゃないですかぁ」

 

「ん? 記事?」

 

「はい! 今度の青葉通信のネタに前島襲撃の記事が載る予定なんですが、青葉がその記事の担当に選ばれたんですっ!」

 

「青葉通信ってお前……」

 

 

 青葉通信

 

 それは海軍所属の青葉達の手によって作成される情報媒体の総称である。

 

 一口に青葉通信と言っても、それらは扱う話題も発行頻度も違う形態の物が多数存在する。

 

 一番上位の物は軍部全ての範囲を網羅しする『全軍版』、そして同じ頻度で発行され海域単位をカバーする『地方版』、更に拠点単位でローカルな話題に終始しそこの拠点に属する青葉が発行頻度、編集が任される『拠点内版』とメインを占める物だけでも三種、その他を含めると多岐に渡るが、それらは青葉という艦娘が居ない拠点の事も考慮され、閲覧に関しては手軽にWEBサイトで全ての青葉通信が見れる様な仕組みとなっている。

 

 その為青葉通信と言えば艦娘達の情報発信源、または日々の楽しみの一つと位置付けられており、同時にどこで発行された物であっても、ほぼ全軍で閲覧可能という割と巨大な情報媒体として軍では認知された存在であった。

 

 

「広報課の許可も取ってますし、司令の許可も当然取り付けてあります」

 

「おいおい昨日の今日でその段取りの良さは何なんだよ、まさかとは思うけどそれって……」

 

「多分、ですけど、今回の一件を公にするって事は、司令はまた何かを企んでいるのは……まぁ確かだと青葉は思っています」

 

「まぁたあの髭眼帯は、マジかよ」

 

「今回は襲撃者という事であっても死人が出ている」

 

 

 声色が変った武蔵の言葉に周りの者が反応する。

 

 それは今まで軽い感じで受け答えしていた空気を霧散させて、極真面目な口調に変化した為、嫌が応でも周りの視線を集める事となる。

 

 

「それを軍部内限定媒体であっても公表するとなると、世間へこの話が漏れるのは承知の行動と言ってもいい」

 

「……まぁそうなりますね、ここだけの話青葉通信の顧客は一部のマスコミにも及んでますし」

 

「ならアイツは本気になったんだろう、国内の掃除(・・・・・)という事に関してな」

 

「キリバス周辺の整理と調整にまだ暫くは時間が掛かると言ってましたし、その間に足場固めをするという感じという事なんでしょうか?」

 

「大体はその辺なんだろうが、恐らくは陸に任せていた案件を自分の手である程度始末を付けて、余計な茶々が入る前に先手を取りたいという考えがあるんだろうよ、それで青葉よ、情報室には何か動きは無いか?」

 

「そう言えば最近あきつ丸さんと川内さんが別件って事で何か動いてる様ですが……」

 

「今回の一件でウチは人員も増え、友ヶ島警備府という拠点も纏めて抱え込んだ、何れ外に討って出る事は決まっているが、その前に後顧の憂いを完全に絶っておくつもりと考えれば、青葉にその辺りの情報を拡散させるというのもその一環と言えるだろうな」

 

「……武蔵さんがそう言い切る根拠を聞いてもいいですか?」

 

 

 青葉の言葉に暫く考え込み、そして木曾に視線を投げると、同じく考え込んでいた木曾が溜息を吐きつつ、武蔵の変わりに青葉の疑問へポツリポツリと答え始めた。

 

 その情報は多くは無いにしても、話は吉野が所属していた頃の大隅麾下特務課範囲に及び、その内容によって当時大隅がやっていた活動の仕込みとパターンに今が酷似しているという状況が浮かび上がってきた。

 

 

「先ず自分の弱みをわざと見せる事で相手を釣り上げる(・・・・・・・・)、そんで出てきた相手に自分の手を噛ませて、その上で首根っこを掴んで逃げらんねー様に押さえ込んでから死ぬまで徹底的に殴り続ける」

 

「うわぁ……それはまた、思い切ったやり方ですね」

 

「一つ間違えば噛み付かれる部分は首って事にもなり兼ねねぇからな、そんときゃ全力だし、場合によっちゃ俺達艦娘も作戦に駆り出される場合もある」

 

「わざとであっても一噛みさせてやるんだ、その分容赦はしないし、ウチに楯突けばこういう事になるんだぞと周りに脅しを入れる事にもなる」

 

「そうして大隅さんは周りを押さえ込んできたんだ、あん人の『動かずの大隅』って通り名ってのは、自分から仕掛けないがやられたら徹底的にやるって意味も含まれてる、で、そんなやり方の仕込みから実行面の先頭に立ってきたのが……」

 

「司令と言う事ですか」

 

「正確には特務課構成員、アイツを含めてバリバリの特務士官達だ、それを延々と繰り返してきた訳だから……やり方も効果も充分理解している筈だ」

 

「なる程、何にしても今回お二人からお話が聞けて良かったです、司令が今何を意図してるか理解できたらこちらとしても記事の作り方とか色々と考える事ができますし」

 

「いや、お前があちこち聞きまわって私達にこの手の話を聞くのは多分だが……アイツにとっては織り込み済みの事なんじゃないか?」

 

「という事は……?」

 

「何も聞かされず、取材の許可だけ出てるという事なら、お前はお前の思うままやるべきだ」

 

「えっとそれは……青葉が司令から信頼されているって事でしょうか」

 

「お前の能力や行動に関してという面ではそうなるだろうな」

 

 

 

 武蔵の言葉にやや表情を硬くしつつも、青葉は頭の中で様々な情報を並べ、自分がすべき事を整理し始めるのであった。

 

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 ただ言い回しや文面は意図している部分がありますので、日本語的におかしい事になっていない限りはそのままでいく形になる事があります、その辺りはご了承下さいませ。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。
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