大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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 前回までのあらすじ

 漸くミッドウェー島へ抜錨を果たし、其々の任に赴く者達、未だ緒戦とも言える状態にも関わらず激しくなる鉄火場で早くも動きが見られた。
 果たして彼女達を含む艦隊は作戦を完遂する事が出来るのだろうか。


 それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。


2017/10/20
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きましたリア10爆発46様、teika-様、有難う御座います、大変助かりました。


集いつつある海

 艦爆と艦攻が視界を埋める様に飛び交う只中、一人の艦娘が波を蹴り飛ばすかの如く(はし)る。

 

 駆逐艦の如く波頭を跳ねる様にでは無く身の丈程の波を割る様に進み、それでも鈍重とも言われる大型の艤装を背負っても尚、数十の艦載機からの攻撃を避け続け、致命的なダメージは今尚受けずに航行する。

 

 

「ちょっと……何あれ、無茶苦茶じゃない」

 

 

 舞鶴鎮守府艦隊総旗艦陸奥は、爆撃と雷撃が生み出す衝撃と水飛沫によって暴風雨染みた世界となったそこで、踊る様に立ち回る武蔵の動きに驚愕の相を滲ませる。

 

 低速と言われる速度を一杯に、進路の邪魔にならない程度の攻撃なら多少の事は無視しつつも。

 

 それは頑強な装甲に任せた強引な立ち回りと言われればそうかも知れない、しかしそれでも被弾した数から見れば、武蔵の負っているダメージは不自然な程に軽微な物に収まっていた。

 

 

 攻撃はただ受けるのでは無く誘う様に、その時は装甲が厚い部分で、それは戦艦にとって基本的な立ち回りと言えた。

 

 その基本以上の立ち回り以前に陸奥の目を惹いたのは、武蔵の艤装の使い方にあった。

 

 

 長門型よりも一回り以上巨大なそれは、本当なら的が大きくなる為にヒットボックス(被弾面積)が大きくなる、攻撃を増す為に必要な備えは装備の大型化を余儀無くし、背負ってるだけで攻撃を受ける率を増してしまうデメリットともなる。

 

 しかもその艤装に乗るのは試製51cm連装砲、口径が最大なら砲の基部も砲室も並みの砲より遙かに大きくなり、重量も増す。

 

 海軍最大火力と言われる大和型の艤装周りは、同時に海軍で一番被弾率が高い武装とも言えた。

 

 

 そんな艤装を背負う大和型二番艦は目に見える光景と、聞こえる音と、そして感じる空気の揺らぎを読み取りつつ敵の弾雨を歯牙にも掛けず進んでいく。

 

 

 乗らない速度による回避率低下の代償に装甲で受け、重い艤装を振ってその勢いを殺さず、全身のバネと主機の推進力で慣性をコントロールして。

 

 時には主砲の角度すら調整してまるで水上をスライドするかの如く右へ左へと己の位置を調整していく。

 

 

 艦娘が備える推進装置、それの核となる主機は実際の船とは違い非実態エネルギーが生み出す、仮想スクリューによって水を搔いて前に進む仕組みになっている。

 

 仕組みは非科学的な装備であっても物理法則は従来の艦と同じく、それが水中で回転する事で推進力を得られる為に、主機が水に浸かっていなければ艦娘は前に進めない。

 

 それと同時に基本主機が生み出す推進方向は前か後ろへしか発生せず、転蛇には体を傾けたり足の捻りを利用する必要がある。

 

 故に艦娘が真横にスライドする事は物理的に在り得ない、もしそうするなら高速で航行した末に転蛇する他は無い。

 

 

「艤装を振り抜いて、その重さで真横へスライドするなんて……」

 

「正に大和型にだけ許されたチートテクね」

 

「そんなの考え付いても普通実践しないわよ、例えそれで真横に移動出来ても慣性が死んだらその場で止まっちゃうもの、そんなの意味無いでしょ」

 

 

 陸奥の後ろから前を見る千歳は、現在艦載機全てを索敵機へ換装していた為戦闘に参加出来ず、また空母水鬼の位置が判明した現在、艦隊に随伴しつつも足の遅い第一艦隊が効率的に前に出れるルートを俯瞰しつつ、陸奥をナビゲートしていた。

 

 そんな舞鶴のツートップの前で艦載機のヘイトを一身に受ける武蔵の動きは異常を通り越し、信じられない状態に見えた。

 

 強引に横スライドすれば通常はそれで足が止まるが、更に回転を加えて慣性を別方向に発生させて前に出る、また必要とあればその途中で片足を水面から浮かせ、主機を異常回転させそれを叩き付ける。

 

 

「確かに水圧が掛からなければ主機の回転数は上昇するわ、でもその状態で水面に戻せば足元が暴れて体勢が崩れる筈……なのにそれを強引に捻じ伏せるとか、どんな筋力してるのよ」

 

 

 武蔵の異常さはそれだけに留まらない、不規則に左右に動き、時には回転し、それでもチャンスがあれば主砲を撃ち進路上の敵や、空母水鬼へ砲弾を叩き付ける、それは適当な狙いでは無く至近弾や命中弾として相手へと突き刺さる。

 

 そんな艦隊旗艦のヘイト稼ぎをサポートする様に、五十鈴の対空砲火が狙い済ました位置へ撃ち込まれる為に、爆撃や雷撃による致命的な被弾は未だ一つも受けず、状態で言えば小破程度で武蔵は進み、他の者も現在目立った損傷が無い状態で済んでいた。

 

 

「ちょっとあんまり無茶しないで、こっちは対潜装備をメインに積んできてるんだから、対空砲の残弾はそんなに無いのよ」

 

「ははっ、その割には痒い処に手が届くいい支援をしているじゃないか、流石五十鈴様と言ったところか?」

 

「茶化さないで! このペースだと空母水鬼の処に辿り着いても対空手段が尽きちゃうわ!」

 

「ヤツの懐に入れるまで持てばいい、それ以降はガチンコだ、そうなれば……よっと、逆に支援なんて出来んだろう?」

 

「貴女が良くても周りの事があるじゃない、そっちはどうする訳?」

 

 

 全身を使っての機動を繰り返しつつも尚軽口を叩く武蔵は、口元に笑いを滲ませつつも進行方向を睨む。

 

 僅かに見える空母水鬼の周りには盾になり得る深海棲艦は四体程、それ以外にも幾らかいたが、それらは自分が突っ込む分には無視できる個体達と判断する。

 

 更にまだ第二艦隊にはまだ弾薬の半分も消費していない阿武隈が殿に付いていた為、突破力という面ではまだ余力があると武蔵は考えている。

 

 この戦いは空母水鬼をどうにかすれば敵の殆どは無力化が可能な現状、継戦という面で言えば極端だが後先は考えなくても良いとの判断の元、武蔵は多少無茶でも強引な行動に出ていた。

 

 

「ちっ、そろそろ厳しい物になってきたか、もう少し前に出たらアブゥ、一度進路上に酸素魚雷の斉射を頼む」

 

「それは……そのまま突っ込むのはマズいと思うんですけど、ほら、横で第一艦隊が暴れてるしぃ」

 

「心配ない、我々が着く頃にはあっちの体制も大体落ち着いてる筈だ」

 

「えぇ~……」

 

 

 最初に突貫した第一艦隊はほんの少し前に敵本陣と接触したばかりであり、その向こうでは更に件の雪風型が健在であった。

 

 その状況にも関わらず武蔵は戦場を前に押し出した末で接近戦を挑む事を選択し、航行速度を更に上げていくのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 派手な水飛沫が舞う中、波に揉まれる様に進んだ酸素魚雷が不規則な航跡を見せつつもチ級(雷巡)flagshipへと吸い込まれていき、次いで爆発の為の水柱が上がり幾らかのダメージが入る。

 

 しかしその距離はチ級(雷巡)にとっても都合がいい距離であった為に、応射の雷撃による爆発が神通の周りに発生する。

 

 

「やはり雷撃での削り合いになってしまいますか、仕方ありません……受けてたちましょう」

 

 

 雷撃に特化した異形と雷撃に特化してしまった軽巡洋艦、このおかしな、しかしガチでの組み合わせは主武装が一撃必殺の物でありながらも、撃てば命中までの時間が掛かる物であった為に、互いの動きを牽制しつつの読み合という様相を呈していた。

 

 だがそれは変化の少ない物では無く、それなりに動きが見える対峙になっていた。

 

 何故ならチ級(雷巡)には22inch魚雷の他に6inch連装速射砲という砲も装備されていたが、神通には5連装酸素魚雷が三つという狂った組み合わせの装備しか無かった為、立ち回りや駆け引き的にチ級(雷巡)に分があった為である。

 

 

 波を読み、砲で相手の動きを抑制しつつも誘導し、撃ち出した魚雷のコースへ相手を乗せる。

 

 チ級(雷巡)が神経を集中しつつ一手一手を積み上げていく。

 

 対して神通も相手の動きを見極めつつ雷撃の機会を伺うという、詰め将棋の如くの駆け引き。

 

 互いの姿が見えた状態での攻防は、当然雷撃を命中させるにはそれ以外での何かが必要となってくる為、おいそれとは雷撃を行えない。

 

 誘導機構を持たず、放てばただ真っ直ぐ進むだけの兵器。

 

 しかもそれは着水時の角度で深度や方向が決まり、僅かな水流で進路は逸れる、雷撃という物は当れば絶大な威力を誇るが、使用時のプロセスは殊更デリケートな為に、ある意味地味な攻撃手段であるとも言える。

 

 

「ここっ!」

 

 

 一見的外れな方向に見える神通の雷撃は比較的浅い位置を狙って放った為、海流と波に揉まれて左右に大きく変化しつつもチ級(雷巡)の直近へと到達する。

 

 が、それを途中で読んでいたのか、砲で散らされた上に、そのままカウンターの砲撃が神通へ飛んで来る。

 

 既に似た様なやり取りは数合行われ、其々は至近での爆風によるダメージを負いつつも命中した物は皆無、しかもこれまでの応酬でチ級(雷巡)側には神通が雷装しかない事がばれつつあった。

 

 

「どうにも砲撃をメインに、魚雷は置き(・・)に来るだけの事が目立ち始めましたね、相手に後どれだけ残弾があるか判りませんが……」

 

 

 神通は自身の残弾を確認する。

 

 左右の腿に固定してある魚雷管の内右は撃ち尽くし、左に一射分の5本、そして左腕に装備の魚雷管に2本、未だ進展の無い現状では割りと絶望的な残弾と言えた。

 

 現状把握の為そっちに気を回している隙にチ級(雷巡)が放つ砲弾が左側頭部を掠める様に飛んでいき、反射的に退避行動を取った神通が見る先には、己を目指して進む回避不可避のコースにある雷跡が見えた。

 

 

「まだっ!」

 

 

 咄嗟に身を捻りつつ振りぬく左腕、そこに格納されていた二本の魚雷は着水と同時に爆発。

 

 それはチ級(雷巡)が放った魚雷と共に爆ぜ、身の丈の数倍になる水柱を発生させ神通を吹き飛ばす。

 

 

 二転三転と跳ねる様に水面を転がり、それでも勢いを利用して跳ね起きる神通の前には、チ級(雷巡)が砲を構える姿があった。

 

 体を捻り回避しつつ魚雷を射出した為爆発は神通の体を前に押し出し、またチ級(雷巡)が進出してきた為、両者の位置はそれまでよりも遙かに近い物となっていた。

 

 

 直撃弾では無いと言っても魚雷数本分が爆ぜた威力は凄まじく、一瞬で神通を中破までに追い込み、しかも両腿の魚雷発射管を歪な形に歪めてしまった。

 

 前屈みで口元の血を拭う神通にはもう武装は残されておらず、それを見るチ級(雷巡)は、ゆっくりと獲物に止めを刺す事に愉悦を感じる笑みを浮かべたままで砲の狙いを定める。

 

 その様を見つつも右腿の魚雷管をパージし、基部が歪んだままのもう片側を強引にひっぺがした神通は、何食わぬ顔のままそれを空に放り投げ、そしてチ級(雷巡)へと視線を戻した。

 

 

「心を持つというのは時に脅威ともなりますが……律せなくば己を死に追い込む事になります」

 

 

 ゆっくりと、しかし確実に狙いを付ける異形に淡々と言葉を投げる川内型二番艦には、焦りの色も恐怖の色も無かった。

 

 

「もし心が無ければ貴女は迷わず私を撃ち抜いていた事でしょう、そうしなかった為に貴女は死を呼び込む事になった」

 

 

 言葉が終わると同時に撃ち出される砲弾、それは至近と言える距離であった為に弾道を読んでいた神通が左腕の魚雷発射管で受け流す形で弾き─────

 

 しかしそれでも信管が作動して爆発、神通は血を撒き散らして後ろに飛ばされる。

 

 

 そこへ高く放り投げていた彼女の魚雷発射管が、主が居なくなった位置へと落下してくる。

 

 その様を見て勝利を確信したチ級(雷巡)は砲に次弾を装填しようとした。

 

 

 刹那─────

 

 

 目の前で爆発が発生し、そこに巨大な水柱が発生する。

 

 

 まるで魚雷が弾けたかの様な水柱が。

 

 

 その様に何事かと目を見開き、固まるチ級(雷巡)が見た物は波を割る様に飛び込んで来る艦娘の姿。

 

 

 黒髪を空に散らす様は瘴気を背負う様に、構える腕の奥には殺意が宿る相貌が光る。

 

 それ(・・)は嘗ての大戦に於いて最も激しく戦った巡洋艦と言われた。

 

 艦隊の攻撃を通す為探照灯を敵へ向け、一身に攻撃を受けても尚燃える船体からは、真っ二つになって海へ沈むまで応射が止む事は無かったという戦船(いくさぶね)

 

 

「シィッ!」

 

 

 食いしばった歯の隙間から気合と共に空気が漏れ出る。

 

 飛び込む勢いと共にチ級(雷巡)の脳天へ肘が振り下ろされ、顔面にあった仮面が砕け散る。

 

 ベコリと頭蓋が陥没し勢いで仰け反るそれ(チ級)に、身を預けるように半身を寄せ、次いで喉元を握り膝を叩き込む。

 

 それで仰け反った体は跳ねる様にくの字に折れ曲がり、胸元へ頭が下がった瞬間それを抱える様に極めると、神通は体を反転しつつチ級(雷巡)担いだ(・・・)

 

 

 極めた首は高速で捻られた為頚椎が粉砕され、そこを始点に背に担がれた為に圧壊。

 

 

 ほんの一瞬で起こったそれは、チ級(雷巡)を数度殺せる程の手数が重ねられた攻撃だった。

 

 

「……あの時すぐにでも砲撃なり雷撃なりして止めを刺しておけば、私に詰め手を進めさせる事も無かったでしょうに」

 

 

 チ級(雷巡)が勝利を確信し、愉悦と共に狙いを付けたあの時。

 

 すぐに砲撃が来る気配が無いと見た神通はわざと脚部の魚雷管を空へ投げた。

 

 それにはまだ射出していなかった魚雷が半分潰れた形で残っていた。

 

 

 そしてそれが落下してくるまでのカウントを心の中で呟きつつ、後ろに飛びずさるタイミングを見計らっていた。

 

 しかしその前にチ級(雷巡)が砲撃、結果的に小さくは無いダメージを負う事にはなったが、逆にそれが相手の隙を生み、更に落下してくる魚雷管から注意を逸らす形になった。

 

 落ちてくる魚雷管、そこへ砕けた左手から捥ぎ取った魚雷管をぶつける。

 

 

 暴発した魚雷5本分の爆発力は、神通が助走し跳躍する間の時間を稼ぐ程に、巨大で派手な水柱を生み出した。

 

 

「私の腕一本に対し貴女が支払ったのは命、それは慢心が生んだ結果だと知りなさい」

 

 

 極めた手を解き、背を伸ばすとチ級(雷巡)の亡骸はスルリと吸い込まれる様に水面へ飲み込まれていく。

 

 砲撃より盾にした左腕は完全に折れていたが、それに構わずボキリと位置を戻した神通は周りを見渡すと、少し離れた位置でリ級(重巡)タ級(戦艦)を相手取る摩耶とポイヌ(夕立)を確認する。

 

 

「足が無傷だったのは僥倖でしたね、これならまだ一働きは出来そうです」

 

 

 頬から流れ落ちる血を舌で一舐めした川内型二番艦は、やや口角を上げた相を表に貼り付けつつ、次に定めた獲物を見定めると、主機を全開にして(はし)って行くのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「翔鶴君が大破ですか?」

 

『ああ、最後の上位個体(空母水鬼)がアイツらの直近に潜ンでてよ、その不意打ちをモロに食らっちまった』

 

 

 高速揚陸艦飛魚(とびうお)、対象となる艦娘母艦へ進むその艦内では髭眼帯が輪島から聞く戦況に顔を歪めていた。

 

 吉野達は現在戦場を大きく東へ迂回している進路を取っており、距離で言えば予定の半分も進んだ辺りにあった。

 

 そこはタイミング的には行くか戻るかの選択が出来る最後の位置であり、その最終判断の為に吉野は泉和(いずわ)へ通信を行っていた。

 

 

「不味いですね……そのままでは色んな意味で艦隊の動きが制限されてしまう」

 

『取り敢えず第二艦隊の合流には支障はねぇが、そっからが問題になっちまうな』

 

「……彼女を曳航して退かせる事は?」

 

『無理だな、姫2に鬼1、おまけにザコどもも集結しつつある、ここで戦力を間引く訳にはいかねぇ』

 

 

 現状深海棲艦本陣と接触した第一艦隊の脇に空母水鬼が出現し、それに向って南から武蔵率いる第二艦隊が合流する形で移動、更には主戦場とにっている位置では榛名と霧島が姫と鬼に接触しつつあった。

 

 ある意味南北から迫りつつある戦場の真ん中で翔鶴は行動不能に陥り、庇う形でそこに瑞鶴が釘付けとなっていた。

 

 航空母艦である為動かずとも彼女は戦いを継続する事が可能ではあったが、その場合は回避が伴わず更なる犠牲となる可能性もあった。

 

 コンソール脇に設置してある端末を確認すると、敵味方入り乱れた光点が徐々に集中しつつある様を見て、事態が最悪を含む物に推移しつつあると判断した吉野の表情が更に厳しい物になる。

 

 

「……まだ東側は戦闘が発生してない様ですね」

 

『ああ、そっちは吉野さン達が通過する方向だからよ、意図的に戦闘域が広がらない形で艦隊を展開させてンだよ』

 

「なる程、それじゃこっちから側からならまだ彼女を救出に向う事が可能ですね」

 

『は? 何いってンの吉野さン、救出っておい……翔鶴の事言ってンのか?』

 

「です、どのみちあのままだと攻めも守りにも無理が出る、ならここはこっちの足の速さを利用して翔鶴君を回収した方がいい」

 

『おいおい何無茶言ってンだよ、そンじゃそっちの作戦はどうすンだよ?』

 

「こっちには脱出艇が乗せてあります、自分達はそれを使って最少人数でミッドウェーに向えば予定を崩さなくて済みます」

 

『バッキャロゥ! 脱出艇って例の水上バイクだろうが! ンなもンで敵中を突っ切って行くってのかよっ!』

 

「えぇ、あれでも一応この船と変らない程には速度が出ますから」

 

 

 緊急脱出艇『松風』

 

 それは嘗て髭眼帯の愛車であったHONDA CBX1000を夕張が改造し、ロマン溢れる技術で作り上げた水上バイクである。

 

 元々は技術検証の意味合いも強くトンデモ装備満載だったそれは、色々と諦めた髭眼帯が許可を出してしまった為数々の改修を施され、現在は『松風リベイクフルシティ』というメロン子の趣味全開ネームを付けられた末に飛魚に搭載されていた。

 

 

『あの、提督』

 

「ん? どしたの夕張君」

 

『松風リベイクフルシティはあれから性能面を重視に色々と煮詰めましたから、現在は全速力で65ノット、ニトロ使用時は80ノットは出せる仕様になってますよ?』

 

「……おいユウバリンコ」

 

『夕張です、何でしょう提督』

 

「それ提督初耳なんですけど!? てか65ノットってナニ!? 時速120kmで走る水上バイクってこけたら死ぬデショ!? ナニシテンノねぇっ!?」

 

『遅いと敵に追いつかれて死にますし、ね? だから速さは大事じゃないですか』

 

 

 コンソールをバンバン叩いて突っ込みを入れる髭眼帯の肩を、まあまあと肩を叩いて古鷹エルがなだめるという飛魚艦内、今も鉄火場では半死半生の艦娘達が戦うという世界があるにも関わらず、肝心の司令長官周辺は相変わらずの空気が流れていた。

 

 

 こうして戦闘を繰り広げる艦隊に対し別働班として動いていた吉野達であったが、緊急事態と言う事もあり急遽作戦を修正、人員分けを行った上で引き続き作戦を続行する事になった。




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 ただ言い回しや文面は意図している部分がありますので、日本語的におかしい事になっていない限りはそのままでいく形になる事があります、その辺りはご了承下さいませ。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。

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