大本営第二特務課の日常   作:zero-45
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 前回までのあらすじ

 ロリっ子由良タン 光 臨 ☆ミ


 それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。


2018/01/13
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きましたorione様、pock様、有難う御座います、大変助かりました。


可能性のケモノ

「まいった……ね、予想はしてたけど、まさかここまで差があるなんて……」

 

 

 大坂鎮守府西側海域。

 

 日付も変ろうかという時間にあった漆黒の世界には、小さな二つの影が対峙していた。

 

 月明かりを反射し、鈍く光を散らす刀を両手に、肩で息をするのは駆逐艦時雨。

 

 口から漏れる息は白く霧散し、体温も相当上がっているのだろう、湯気の様な物が体から立ち上っている様は、相当激しい運動をした後だとその様子を切り出しただけでも判る程の様を滲ませいてる。

 

 

 対するは陽炎型 八番艦雪風。

 

 こちらもやや汗を滲ませてはいたものの、息はそれ程乱れている訳では無く、隙の無い構えで対峙しつつも時雨の様子を伺っている。

 

 

 片や艤装は背負っていても武装は使用出来ず、手にした刀だけが全ての黒髪お下げ。

 

 そしてもう片方は、背に空の魚雷発射管を背負っただけの無手の雪風。

 

 武装は装備していないが、代わりに両手には厚手のフィンガーグローブが嵌められていた。

 

 それは打撃を想定してか、拳骨の部分に特殊合金製のプレートが張り付いた明石謹製のブツであった。

 

 

「あの雪風ちゃん……今まで相当な修羅場を潜ってきたみたいですね」

 

「あぁ、比較すれば地力は明らかに時雨の方が上回っているが……雪風は持てる力を要所のみに絞って全開にする事で攻めにメリハリを付けてるだけじゃなくスタミナの消費も効率良く抑えている、あれは実践で培った技術だ、訓練なんかじゃあんな戦い方は身につかん、その経験の差がこの戦いには顕著に現れてるな」

 

 

 吹雪が大本営へ帰ってから暫く、時雨の鍛錬はそのまま終わる事は無く、相手を山城(戦艦棲姫)扶桑(戦艦棲姫)に代えるという変化があったが、あれからずっと継続していた。

 

 しかし暫く後に教導業務が本格化するとあって、仮想敵としての役目を担うよていにある戦艦棲姫姉妹は時間が中々取れず、協力出来たとしても深夜に少しだけという日々が続く。

 

 その為時雨が鍛錬の為に充てる時間は必然的に短くなる。

 

 

 深海化していないとしても、基本近接戦が中心の時雨を相手取る者は鎮守府には限られており、またそれが出来る手錬(てだれ)は何かしらの要職に就いている者ばかり。

 

 そういう事情があり、時雨は殆どの時間を基礎訓練の時間に充てるしかない状態にあった。

 

 

 訓練による能力上昇が体躯に反映されない艦娘にとって、基礎体力訓練だけの鍛錬は著しく非効率であり、そればかりに注力すると逆に勘を鈍らせてしまう。

 

 故に一定以上の練度に達した艦娘の訓練は専ら演習中心の物となり、主に技量面を磨くという方向性に収束していくのが普通であった。

 

 

「あの子が何を思って時雨の相手を買って出たかは判りませんが、鍛錬の相手としては願っても無い存在なのは確かですね」

 

「まぁ攻撃を"受ける"のが中心の山城(戦艦棲姫)君と違って、雪風君は"躱す"タイプだから、訓練後の修復資材も少なくなって提督はほっとしています」

 

 

 時雨と雪風が鍛錬をする場から少し離れた処、いつもの例の東屋では扶桑(戦艦棲姫)に武蔵、そして髭眼帯がもしもの時に備えるという建前で待機しつつも、いつ終わるかも判らない演習を(おか)から眺めていた。

 

 

「ところで提督よ、時雨のアレ(・・)はお前が課した無茶が原因の元での事なのだろう?」

 

「あら、そうなんですか?」

 

「提督は時雨へ『深海化の禁止』を言い渡した、だからアイツは是が非でも今の状態から脱却する必要があると思った訳だ」

 

 

 持ち込んだ二合瓶の日本酒を煽りつつも少しも酔った様子も見せない武蔵は、防波堤の上に胡坐をかく髭眼帯の背中に苦言を投げる。

 

 

「……特務課を設立して、自分を警護する子が増えたからね、状況的に彼女へはあんな無理を強いる必要は無くなったから」

 

「しかし時雨からあの力を取り上げるという事は、唯一のアドバンテージを封じるという事にならんか」

 

「確かに深海化は爆発的な能力上昇が見込めるけど、一度そうしてしまうと必ず行動不能になるってマイナスも付いて来るから」

 

「戦えてる内はいいですけど、途中で守られる立場になってしまうとなると、確かに深海化は本末転倒と言えなくはないですが……あの子の気持ちを考えると、それは酷な話だと思います」

 

「『深海化するなら自分を殺してからでしか許さない』、そんな事を言われてしまってはな……アイツはもうあの力は奮えなくなってしまうのは当然だ」

 

 

 苦い相の扶桑(戦艦棲姫)と責める武蔵の視線を背中に感じ、それでも海でまた始まった鍛錬を見る髭眼帯の隻眼には確固たる決意の色が滲んでいる。

 

 

 これまで時雨がその力を奮った時は、どんな相手でさえ必ず粉砕する程の膂力を見せた。

 

 しかしそれは極短時間でのみ有効な力であり、後には必ずフォローをする誰かを必要とする、とても不安定で極端な能力であった。

 

 

「彼女の力は言い換えれば使い捨ての戦力と同義だよ、自分は彼女をそういう形で使うつもりは無い、それでももし使わなくちゃいけない場面が来るとしたら、それはもうどうしようも無くなった時だけだと思ってる、なら……」

 

「だからテイトクを殺してから使え……ですか」

 

 

 常用すればリスクの方が大きい力、使えば自分という物ですら手放してしまう諸刃の剣。

 

 吉野からすれば、それに頼ればいつか時雨自身を手放してしまう事になるという思いが。

 

 時雨は己を使い潰してでも、吉野の盾となるという思いが。

 

 

 互いが互いを想った結果が、今のどうしようも無い状況を作り上げてしまっていた。

 

 

「……時雨自身の伸び代はあと僅かしかない、なら違う手で残りは補う他は無いな」

 

「それは自分でも感じてるんだろうね、最近は工廠にも良く足を運んでいるみたいだよ」

 

「工廠ですか……それで何とかなるんでしょうか」

 

 

 答えの出ない問答を繰り返す岸とは対象に、ただぶつかり合うのみに終始していた海では、時雨が再びダウンする事で鍛錬の終わりが訪れる。

 

 結果はお世辞にも僅差とは言えない結果であった、それが証拠に時雨は膝を着いて動くことは出来ず、雪風は汗を拭いつつもまだ余力を残す状態にあった。

 

 

「お前が考えを曲げないと言うなら仕方ないな、アイツに残った僅かばかりの伸び代を……無理矢理にでも搾り出すしかない」

 

 

 胡坐のまま海を見る髭眼帯の脇を、一陣の風が通り抜ける。

 

 それは防波堤を飛び越え、艤装を展開した武蔵が海に躍り出た為に起こった物であった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 膝を着き、呼吸を整える事に専念する。

 

 自己診断では体にダメージらしい物は殆ど無い、そこから考えれば今の状態は体力の枯渇。

 

 極限に近い状態での攻防は、平時よりも体力を消耗させ、それ以上に精神を磨耗させる。

 

 相手の懐に飛び込み接近戦を仕掛ける、時雨と雪風の戦い方は単純な意味では殆ど同じと言える。

 

 しかし獲物を頼りに戦う時雨に対し、無手で対する雪風というのは僅かばかり間合いが違い、また組み、打ち、投げる雪風の方が選択肢も多い。

 

 だが単純な戦力として考えれば、通常は素手の者よりも武器を持つ者の方が有利である為、この対峙は時雨に分がある筈であった。

 

 世には『剣道三倍段』という言葉がある。

 

 それは色んな意味を含むが、単純な話とするなら武器という得物を持つ者の優位性を示す言葉であり、間合いも攻撃力も上の相手を無手の者が相手にする際の難易度がそういう言葉を生んでいると思われる。

 

 しかしそれはあくまで技量が拮抗した者同士という前提の話であり、今の時雨と雪風の様をその言葉に当てはめれば、互いの技量は雪風の方がこの結果よりも遙かに上という事になる。

 

 

 差し出される右手、それを見上げると、汗は滲ませてはいたが、相変わらず無口の雪風が見える。

 

 荒い息を無理矢理押し込め、納刀し差し出す手を掴む。

 

 引き上げた相手を見れば、やはり感情は読み取れないが、じっと己を見る相貌が印象的で、何故だかそれを真っ直ぐ見る事が時雨には出来ない。

 

 

 くやしさなのか、怒りなのか、思わず目を伏せ唇を噛んだ時、耳には波を切る音が聞こえてきた。

 

 そして音のする方に目を向けた時雨の視界には、巨大な艤装を背負った大和型二番艦の姿があった。

 

 

「……今日はもう(しま)いか」

 

「うん、そうだね……そろそろ時間も時間だしね、雪風も武蔵さんも有難う、忙しいのに無理聞いて貰って」

 

「なぁ時雨よ」

 

「……うん? 何かな?」

 

「自分の不甲斐なさの結果を、『時間』を理由にして誤魔化すのは止めろ」

 

 

 投げられた無遠慮な言葉に思わず時雨は武蔵を睨む。

 

 しかしその武蔵は言葉尻のキツさとは逆に、穏やかな相を表に貼り付け時雨を見ていた。

 

 

 言われなくとも判っていた、今の言葉は自分の不甲斐なさを隠すための、精一杯の言い訳という事は。

 

 だから時雨は言い返せない、武蔵が口にした言葉は真実であったから。

 

 

「精一杯全てを出し切った者は、そんな自分を誤魔化す様な言葉なんぞは吐かない」

 

「……そうかな、うん、そうかも知れないね」

 

「この鍛錬は単純に技量を磨く物では無い、お前はそれを判ってはいない」

 

 

 武蔵の言葉に再び時雨は押し黙る。

 

 そして雪風は目の前の二人を黙って見つつも、耳に入る言葉を一つづつ咀嚼し、意味を拾い上げようと必死に考える。

 

 俯く時雨に、何かしらを考える素振りを見せる雪風。

 

 そんな二人を見た武蔵は一度大きく溜息を吐くと、暫く黙って様子を伺う。

 

 

「これは時雨だけでは無く、雪風ちゃんにとっても試練なのかも知れませんわね」

 

「ん……時雨君にとってはこれからの自分を模索する試練、雪風君にとっては、ここ(大坂鎮守府)で自分の居場所と人との繋がりを得るにはどうすれば良いのかを考える試練、って処かな」

 

「ですわね、聞く処によれば彼女は今まで一人で生きてきたのでしょう? だから自分の能力を誰にどう役立てば良いかという事を考え、その答えが時雨の相手を務める切っ掛けとなったんじゃないかと仰ったテイトクのお話は、今のあの子達を見ればなんとなく理解が出来ます」

 

「どっちも今は考えて考え抜かなければいけない状態なんだけどさ、自分にはそこから先をどうしてあげたらいいか判んないんだよねぇ」

 

 

 何かを察する事は出来たとしても、艦娘という大海原で戦う者の矜持や心根という物は、同じ立場の者でしか理解し得ない。

 

 言葉を尽したとしても、それが芯を外れた物ならば、只の慰めにすらなりはしない。

 

 だからこそ髭眼帯は様子を眺めつつも、口を出す事が出来ない。

 

 

 今自分に出来る事は見ている事だけだと理解していたから。

 

 

「時雨だけじゃない、雪風にも決定的に足りていない物がある、それは自分を成す芯、何事にも対する為に()()となる物が内に存在していない、だからここ一番という時に迷いが生じ、行動にも精彩を欠き、同時に己を見失う」

 

 

 武蔵は言葉と共に、握った拳を軽く二人の腹へ当てていく。

 

 

「お前たちのココ(・・)に詰まっている物はなんだ?」

 

 

 問われた二人は腹と、当てられた拳に視線を落とし言葉の意味を考える。

 

 

「判らんか? そこに詰まっている物はな、クソの詰まった臓腑なんかじゃない、お前たちの腹に詰まっているのは……嘗てのお前達その物だ」

 

 

 拳が引かれると、其々の視線は自然と武蔵の方へと向く。

 

 そんな視線の先にあったのは、作った拳を更に握り締め、誰を見るでもない彼方に視線を飛ばす武蔵の姿だった。

 

 

「我らの中には嘗て海原を駆け、戦い、沈んでいった戦舟(いくさぶね)としての自分と、共に戦ってきた英霊達の欠片が詰まっている」

 

 

 淡々と語られるそれは静かではあったが、確固たる信念が篭っていた。

 

 

「例え己と同じくする者が世に数多存在し、幾つかに別たれ、肉を持って生まれてきたとしても、お前たちの中には駆逐艦時雨、そして駆逐艦雪風という物が詰まっている、だから生れ落ちたその時から戦う術を持ち、海を駆ける事が出来るんだ」

 

 

 嘗ての自分()と言う言葉に、ジワリと何かが二人の中に沸き起こる。

 

 

「お前たちは誇れるか? 今の自分を……嘗ての自分に、そして共に戦った英霊達に」

 

 

 僅かに沸き起こったそれは、何かというのは理解が出来なかった、理解できなかったがしかし、それに気付いた今は無視出来ない程の疼きが心を侵食していく。

 

 

「俯くな、それは嘗ての自分に、英霊達に対する侮辱だ」

 

 

 言葉と共に、メシリという、骨身が軋む音が聞こえる。

 

 

 共に幸運艦と呼ばれた二人の前世はその言葉とは裏腹に苛烈で、理不尽で、そして筆舌に尽くし難い運命に翻弄される物であった。

 

 凶弾に沈む事無く長く存在したということは、それだけ他の艦よりも多くの戦場を渡ってきたという事になる。

 

 マレーに没した時雨も、役目を全うし解体された雪風も、終わりが違ったというだけで歴戦艦と言われる程には戦い、同時にその内で死した者の数は少なくない。

 

 だからこそ、小さな体躯の内に込められた嘗ての英霊達の想いは他の者達よりも数多あり、尚強く、そして殊更に重い。

 

 

「それを背負っている限りは、例え力及ばずとも、水底(みなぞこ)へ沈もうとも、魂を込めたこの拳は……握り続けなければならない!」

 

 

 固く握られた拳が振り下ろされ、瀑布が立つ。

 

 その拳は戦艦武蔵という、一方的に理不尽を奮われても尚、ただ沈むだけの様で相手を震撼させた、あのエンガノ沖で空や海から来るどれもこれもを全て受け止めた者が内に秘める、究極のやせ我慢が乗った拳だった。

 

 

「理屈も何も無い、無理矢理の精神論ですわね」

 

 

 扶桑(戦艦棲姫)が苦笑交じりに武蔵の言葉をそう断じた、が、しかし同時に磁器の様に透き通る白い肌にはふつふつと鳥肌が浮び上がる。

 

 

「でも、不思議と心に響く物があります」

 

 

 力と信念を以って艦隊を牽引し、敵を駆逐し続けた長門。

 

 己を盾とし、決して理不尽を後ろへ通さなかった大和。

 

 その二人から聯合艦隊旗艦を受け継いだ武蔵は、先達とは違った戦上手として周知され、最も安定した艦隊旗艦と言われていた。

 

 しかしその本質は周りの評価とは全然違う。

 

 

「彼女の力は個の膂力も相当な物だけどさ、何ていうのかな、行動や立ち振る舞いが全てが人を焚き付けるって言うか、不思議と奮い立たせる力があるんだよねぇ」

 

「それは得ようとして自分の物に出来る類の物ではありませんね、持って生まれた性質……という物でしょうか」

 

「羨ましいねぇ、自分にもちょっとだけでいいからそういうのがあったらって、昔は思ったもんさ」

 

「だから敢えて彼女を常用艦隊には編成せず、教導艦隊所属にしているんですね」

 

「本人にしては今のポジは意に沿わない物になってるとは思うんだけど、まぁたまにガス抜きの機会は作るって事で我慢して貰うしかないかなぁ」

 

 

 こうして結局時雨と雪風が求める物というのに確たる答えは出なかったが、代わりに尻を叩かれる事で頑なな想いを崩す事となり、其々は新たな可能性も視野に入れた行動をしていく事になるのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「そんな訳で時雨ちゃんから相談を受けて開発してみました、戦闘支援武器コンテナシステム『オーキス』です!」

 

 

 件の夜が開け昼過ぎの同じ場所。

 

 再び東屋に来た髭眼帯と時雨、そして忙しい扶桑(戦艦棲姫)に代わって参加した山城(戦艦棲姫)の前では、夕張が盛大なドヤ顔を貼り付け新規兵装のお披露目を催すという場があった。

 

 

「……オーキスぅ?」

 

「をぅっ!」

 

 

 怪訝な表情で見る髭眼帯の前には、いつもの艤装に追加して、何やら物々しいブツを背負ったと言うか、ぶっちゃけブツに埋もれたぜかましが海にプカプカ浮いていた。

 

 それは多角形の何かを組み合わせたクソデカい箱っぽいブツに、超長い砲身が一本生えるという、某ガ〇ダム作品に出ていたアレを彷彿する見た目をしていた。

 

 

「……ねぇ夕張君、これ……こんなの背負ってたら身動き取れないんじゃない?」

 

「ああその辺りはご心配なく、確かに重量はそれなりにありますが移動補助としてホバーを装備してありますので、艦娘の主機と併用する事でこのシステムは80ノットでの移動が可能になってますから」

 

「をぅっ!」

 

「80ノットぉ? 出しちゃうのぉ? ホバーでぇ?」

 

 

 80ノットを時速に換算すれば約150km/h程、正直水面を走る速度としてそれは狂気の沙汰では無い。

 

 水という流体は静かに触れれば流れ落ちる儚い物であるが、触れる勢いが増せば固く、骨を砕く程にカッチカチの物体へと変化したりするのだ。

 

 因みに海軍でナンバーワンと言われる島風の航行速度は約40ノット、73km/h程である。

 

 それを考えれば、このクソでっかいブツが出す速度がどんなに狂った物かというのは想像に難くない。

 

 

「うん、それならカタパルト無しでも母艦から発艦する時は大丈夫だね」

 

「え、何言ってんの時雨君、母艦からて、君これ装備してゴーするつもりなの?」

 

「うん、そのつもりだけど?」

 

「やですねぇ提督、さっき言ったじゃないですか『時雨ちゃんから相談を受けて開発した』って」

 

 

 髭眼帯は凄く真面目な相でオーキス(ぜかまし)から夕張、そして時雨へと順に視線を流す。

 

 そこにはキラキラするぜかましっぽい何かと、キラキラするメロン子、そしてキラが付いた小さな秘書艦という、何かを口にするのが戸惑われる雰囲気が蔓延してしまってる絵面(えづら)があった。

 

 

 因みに時雨の向こうでは、何故か空を仰いで「空はあんなに青いのに」と姉のセリフを呟きつつ現実逃避を計る山城(戦艦棲姫)の姿があったが、それは取り敢えずスルーする事にする。

 

 

「この装備の凄いところは、武装コンテナとしての役割と推進機構としての役割を一つの装備としてパッケージングしつつも、いざとなったらそれら全てをパージする事で、装着者自体はいつもの状態で戦えるという面にあります」

 

「ああ……うん、つまりその、これってまんまデンドr……うんまぁ……はい」

 

「そして何と言ってもこの、コンテナの中身! 射出型の箱の中身は三式爆雷を詰めたり、三式弾をINしたり、一式徹甲弾がセットできたりと八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍が期待出来るんです!」

 

「をぅっ!」

 

 

 ジャコンという音と共にコンテナ前部分の蓋が開かれる、そこにはギュウギュウに詰め込まれた三式弾がまるでトウモロコシの様な状態で詰め込まれるというカオスが垣間見える。

 

 吉野は思った、それらが一斉に射出されれば確かに敵側にとっては大惨事であろうが、もし被弾した際誘爆してしまった場合は、装備する本人だけでは無く艦隊全体が大惨事になりはしないかと。

 

 そういう防御面に対する物はどうなっているのだろうと確認しようとした処で、不自然な物体が視界の隅に入る。

 

 

 銀色を鈍く輝かせるヘルメット、陽炎型特有の艤装に乗る全てを索敵兵装で固めた特徴的なシルエット。

 

 そして頭上にはアンテナがピコーンピコーンと回転するオポンチなシステム。

 

 

「……ぬいぬい?」

 

「不知火に何か落ち度でも?」

 

「いや、君そこで何シテンノ?」

 

 

 オーキスというクソでかいブツの影になって見えてなかったが、そこには例のコップ染みたメットを装着したぬいぬいが随伴していたという事実が表面化する。

 

 そんなぬいぬいを見て、これはどういう訳なのかという意味を込めた視線を髭眼帯が投げると、その意図を察したのだろうメロン子は「ああ」と言いつつ状況説明を始める。

 

 

「この兵装は対潜、対空、そして砲撃全てに対応した武装ではあるのですが、それを狙った位置へ放つ機構が従来の電探系では数が数なだけに賄い切れません」

 

「……それで?」

 

「なので、そういう部分はセパレートして不知火さんが担う事で、システムの性能を100%発揮する仕組みになっています」

 

「水雷戦隊、出撃します!」

 

「待ってぬいぬい!? それどう見ても水雷戦隊って言うには無理があるから!? てかマジで出撃するつもりなの!? 寧ろ力技にも程があるからっ!? なにこの無理矢理感!」

 

「あの海峡は…ううん、なんでもない、行こう、もちろん、僕も、行く」

 

「いや時雨君もっ! 別にここE4じゃないから!? 気持ちは判るけどそういう気合は海峡夜棲姫さんか防空埋護姫さんに対して発揮して!? 提督からのお願い!」

 

 

 何故か殺る気満々な空気を滲ませて、ぬいぬいはオーキスに並んでシャドーボクシングばりの準備運動を開始する。

 

 そして隣に居る時雨のキラが心なしか二重になった気がした。

 

 

「そしてこのオーキス最大にして最強装備、155mm榴弾砲は全力航行状態であっても、不知火さんのカバーさえあれば精密射も易々こなすという驚くべき性能を発揮するのです、では夕張重工脅威のメカニズムをご覧頂きましょう……島風ちゃん、やっちゃって!」

 

「をぅっ!」

 

 

 ジャキンとクソ長い砲が稼動し、同時にホバーを全開にしたぜかまし(オーキス)がコップなぬいぬいを伴って出撃する。

 

 まるで大口径弾が着弾したかの如く水柱を生み出し、無骨な塊は一瞬の内にトップスピードに乗り、波を切り裂いて海を駆ける。

 

 それは見た目からは想像も付かないの速度を伴って(はし)るが、不安定さの欠片も感じさせない安定感を伴い、白波の尾を青の世界へ刻んでいく。

 

 その圧倒的でありつつも飛ぶかの如き機動が(もたら)す結果に、場の者達は目を見開いて驚愕の相を表に出す。

 

 

 置いてけぼりになって追従するぬいぬいの姿を見て。

 

 

 オーキスの巡航速度はぜかましとセットにする事で最高80ノット、対してぬいぬいの航行速度は凡そ35ノットである。

 

 完璧と思われたメロン子の新武装は、システムを成立させる為にセパレートした筈の火器管制システムが、本体に追随出来ないという基本的かつ致命的な欠陥を抱えいてるという事が露呈してしまった。

 

 

「……おいメロン子」

 

「え~っと島風ちゃん、ちょちょっとスピード落としてみようかぁ……30ノット位に」

 

「え~ コレ50ノット以下だとホバー出力が足らなくて沈んじゃうって言ってたじゃない、どーすんの~」

 

「はぁ……不幸だわ……」

 

 

 こうしてタケゾウに焚き付けられた小さな秘書艦は、色々な可能性を模索する為に行動を開始したのであったが、それは大坂鎮守府という魔窟で行った為に周りを巻き込んだ数々のカオスと騒動を起こしていくのであった。

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 ただ言い回しや文面は意図している部分がありますので、日本語的におかしい事になっていない限りはそのままでいく形になる事があります、その辺りはご了承下さいませ。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。


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