大本営第二特務課の日常   作:zero-45
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 前回までのあらすじ

 ムチムチのムチムチの為の宴、内容量が増量しました。

 そして特務課に新たな仲魔も着任。


 それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。


2017/12/13
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きましたorione様、有難う御座います、大変助かりました。


二桁億円の勘違い

「今回の鎮守府近海警備の草案、かなり複雑な物になりそうね」

 

「まぁお偉いさんがわんさか来るらしいからなぁ、まだ吉野司令からは話が来てないけどよ、先にある程度の事はやっといた方がいいのは確かだろ?」

 

 

 大坂鎮守内に設置された友ヶ島警備府棟。

 

 そこの執務室では司令長官のリーゼロッテと艦隊総旗艦の天龍が鎮守府の周辺地図を机に広げ、様々な駒を置いては移動しを繰り返し何やらかを話し合っていた。

 

 

「海軍でも初の大型教導施設の開校よ、それもあの吉野三郎が音頭を執ってるんなら、あちこちからこれ見よがしの使節がやって来るのは間違いないわ」

 

「まぁなぁ、こういう機会でも無いと部外者が鎮守府に足を踏み入れる機会はそうねぇだろうし、それでなくても例のオーストラリア航路の件で欧州方面は利権に食い込もうって躍起になってるんだろ?」

 

「まぁねぇ、あっちは今中東方面と、辛うじてアジアから回ってくる資源で食い繋いでる状態だし、必要資源の価格安定とか輸入量の拡大なんかは今一番優先したい事案なのは確かだから」

 

 

 欧州方面諸国の資源事情は、艦娘を戦力として運用出来なかった頃は海路・空路が使えない為陸続きの大国に頼る他は無く、主にロシア方面に依存する状態にあった。

 

 しかし経済を盾に強権を奮うロシアとの関係は、欧州諸国へ対しての干渉が顕著となり、内政を不安定にさせ、国民感情の不満を募らせるという危機を齎していた。

 

 それを避ける為に中東方面や中央アジア諸国へ資源を求めても陸路しか輸送手段しか存在しない為コストが激しく跳ね上がる他、ヘタをすると輸送物資の中抜きという事態が頻発し、関係諸国の関係はギスギスした物へとなっていくという問題が発生した。

 

 加えて北からのプレッシャーが掛かるのを嫌ったそれらの資源産出国も一応取り引きには応じる姿勢を見せたものの、積極的に動く事は無かった為纏まった量の資源入手は困難な状況にあった。

 

 しかもそういった形で資源を求める行動をした国にはロシア側から理不尽とも言える経済的制裁も掛けられる為、結局国を生かす為には頼る先は限られるという、ドン詰まりの状態が20年近く続いていたのが近年までの欧州事情であった。

 

 

 しかし近年になり爆発的とはいかないまでも、ドイツを中心とした嘗ての大戦で海軍を持っていた特定国家に艦娘との邂逅が散見される事になる。

 

 流石に自国のみの防衛には艦種の数は心許ない状態であっても、ロシアからの脱却を願う国々が協力すれば何とかなる、その程度の前提が出来上がった段階で欧州各国は水面下で協議を重ねた結果、軍事・経済をある程度共有する欧州連合という運命共同体を発足するに至った。

 

 ロシアと中央アジア方面には頼れない地理的事情は、アフリカ大陸西側航路を僅かばかり開拓し、アフリカ大陸北側沿岸方面と、ロシアの影響が薄い中東の一部国家へ経済の枝葉を伸ばす事で取り敢えずの命を繋ぎ、また元々日本と深い繋がりを持つドイツを通じて東南アジア圏の資源輸入も僅かばかりであったが可能とした。

 

 そういう経緯を辿り、現在は国を生かし経済を回すという分には何とかなっているのが現在の欧州連合と言う事になる。

 

 

「まーあちらさんはまだ取引相手が少ないからなぁ、今は言い値で取り引きに応じないといけないだろうし、ロシアから脱却しても懐事情は寒いまんまってのは悩みの種だろうな」

 

「そんな時に耳にしたのがオーストラリアの大開拓事業の話って訳」

 

「まだ完全に通商の形が固まってない新規資源産出事業の登場、これ幸いって感じで取り敢えずは粉掛けとこうってのは筋としては判るんだけどよ、欧州からオーストラリアの東側航路までってよ、あっちからじゃ遠過ぎてコストに見合わないんじゃねーのか?」

 

「欧州側は資源の量やコストはぶっちゃけ問題にしてないわ、今取り引きしてる国に対して『他に取引相手がいるぞ』って言える事実が欲しい訳、ほら、価格交渉のテーブルに着く時手持ちのカードがちょっとでも増えれば、ある程度のプレッシャーにはなるでしょう?」

 

「東側航路を使わずオーストラリア内の陸路を使って西に運べは影響は……ってどっちにしてもそっから海路に出なきゃスエズにゃあ届かないかぁ」

 

「そうね、しかもオーストラリア西側からインド洋に至る海路の途中には、これまたヨシノンの縄張りが存在する」

 

「クルイ基地か、なる程ねぇ、どっちにしても吉野司令とは繋がっとかなきゃ、あちらさんは今回のオーストラリア通商関係は上手く回らない訳か」

 

 

 結局オーストラリアの東側海路の航行は護衛関係は各国の責任の下、航行は自由という事で話は纏まりつつあった。

 

 但し開放された沿岸の殆どは日本側が開発しているエリアであり、港湾施設にしても管理は日本の海軍や陸軍が担っている。

 

 更には最南端周辺からは西へは航路が存在しない為、例え東側航路を開放したとしても、結局日本という国を無視して他の国が利権に食い込むことは不可能というのが現状であった。

 

 そういう事情を建前に吉野は経済界を説き伏せ、航路を完全に開放する事で現在そっち方面へ割り振っている戦力の幾らかを減らす事に成功した。

 

 その為それまで船団護衛の任に就き、出ずっぱりだった欧州譲渡組の艦も現在鎮守府に腰を落ち着ける状態となり、大坂鎮守府では施設の増築と平行して新たな人員配置を行い、内政の安定化に努めている最中にあった。

 

 

「で、『艦娘の為の学校』が開校する際には各国のお偉いさんが来るのは確実だってんだろ?」

 

「そういう人ってお祝いに来るっていうよりも会談をメインに考えてる人が殆どだろうし、ヨシノンとそういう話(・・・・・)が出来るポジの者が来るって事は、内地の経済界からもそれなりのVIPが来るのは確実よね」

 

「メンドクセェなぁ、これ暫くはシフト全開で警備を回さねぇと追っ付かねーぜ」

 

「確かにウチも面倒だけど、ヨシノンはもっと面倒なんじゃないの? 何せ以前揉めた連中とまーたお話し合いする事になっちゃうでしょうし」

 

「うん? 以前揉めたぁ?」

 

「あー天龍は知らないんだ? ヨシノンが前に泊地棲姫と関係を持った後の会談で、ヨーロッパの使節団と揉めたの」

 

「それかぁ、いや大体は聞いてるぜ? 確かその場にはお嬢も居たんだろ?」

 

「あ、知ってるんだ、そうそうそれよ、ヨーロッパ連合ってね、其々役割の分担してて、大体こんな交渉事はイギリスが受け持つ事になってるのよ」

 

「あっちゃ~ イギリスって、吉野司令と直接揉めた相手じゃねえ? 確か」

 

「来るのがいけ好かないあの髭(・・・・・・・・・)だってんなら、また揉めちゃうかも知れないわね」

 

 

 リーゼロッテは嘗ての会談で吉野と揉めた、髭の駐日英国大使(モーリス・ウインザー)の事を思い出し、天龍に手をプラプラさせつつ苦い表情のままコーヒーを啜る。

 

 あの時には欧州側として会談の席に着いていたリーゼロッテであったが、国家間の取り決めと、事前の打ち合わせがあった為に口を挟む事は出来ず、会議を静観する立場にあった。

 

 

「……なんかお嬢ってよ、ソイツの事嫌いなのか? すんげぇ嫌そうな顔になってんぞ」

 

「アイツはね、紳士気取りの二枚舌……相手を見下す事がデフォのならず者国家の代表みたいなモンよ」

 

「随分な酷評だなおい、その大使と何かあったのか?」

 

「……あんまその辺り思い出したくないわね、てか英国紳士とかいう存在自体胡散臭いモンなんだから、貴女もあんまり表面的なイメージでヤツらを見ない事ね」

 

「えーっと、確か会談の時レディファーストがうんたらかんたらって静海(重巡棲姫)にやり込められたんだっけか、んでもほら、日本だって昔は男尊女卑が当たり前だったって言うしさ、昔の話になったらあっちもこっちもそう変んねぇんじゃねーの?」

 

「……ここにも事実を誤解したままの者が居る訳ね、いい? 確かに昔は古今東西男尊女卑ってのはどの国でも当たり前に存在した悪習だったわ、でもイギリスと日本ってのはね、そこからの思想が違うのよ」

 

「えっと……うん? 思想?」

 

「ザックリと言うと、レディーファーストってのは男より先に女を進ませて安全を確認するデコイにしたり、先にホールや部屋へ行かせて男を出迎えさせたり、そういう男本意の都合から出た習慣なの」

 

「へ……へぇ、じゃ日本は?」

 

「そうね……代表的な例を挙げると『三歩下がって影踏まず』ってアレとか、女は男の前を歩くな的な事実だけ現代には残ってるけど、あれはちゃんとした思想と意味があるの」

 

「あー、それって亭主関白とかなんとかって話で良く出てくるアレだよな、最近じゃあんま聞かないけどさ」

 

「あの手の風習は主に武家辺りから出た訳だけど、元々侍には「常在戦場」の思想が叩き込まれててね、平時に於いても襲撃に備えるのが普通だったの、で、何かあった時はね、女が横や前に居ると抜刀したり撃退する時に巻き込んじゃうでしょ? 女は確かに男の所有物という考えがあった訳だけど、そこには己が守るべき者という考えも同時にあったの、全部が全部そうって訳じゃないけど、少なくとも『三歩下がって歩け』という習慣にはレディファーストとは反対の思想が根底にはあったのよ」

 

 

 リーゼが言う思想にはやや極端な部分もあったが、ある程度の事実も含まれている。

 

 むしろ生きてきた時間の殆どを日本で過ごした日本贔屓的感情と、モーリス・ウインザーという男に対する悪感情が口から出る悪態に拍車を掛ける結果になっていた。

 

 ぶっちゃけそれは個人的感情が八割を占めていたという、救えない事実がそこにあったりした訳だが。

 

 因みに現代ではレディファーストはフェミニズム的な思想が常態化し、三歩下がってという習慣は男尊女卑的な部分しか継承されていない為、現代に於いての其々の行動は当時の思想とは逆転した物になっていると言える。

 

 

「ゴホン……ま、まぁその話は置いといて、警備計画の進捗はどうなの?」

 

「まだ大坂鎮守府からなんも指示が来てねぇからなぁ、でも別途の名目で大淀に予算は通してあるし、装備面はある程度揃ってきてるから……まぁ準備だけなら順調なんじゃねぇかって感じだな」

 

「そう、なら取り敢えずは安心ね」

 

「て言うかさお嬢、確か教導施設の竣工って来週だろ? まだ吉野司令から警備に関しての事とかそっちに通達は来てねぇのかよ?」

 

「……それなのよね、幾ら何でも近海警備を受け持ってるこっちにまだ連絡が来ないのはちょっとおかしいのよねぇ」

 

「なぁ、もしかして俺らって不要な気ぃ使って先走ってねぇ? そこんとこ確認した方がいいんじゃねぇのか?」

 

「あー、うん、そうね、その辺り一度ヨシノンに確認した方がいいかも……」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「え……来賓を見越した鎮守府警備計画って……何の来賓?」

 

「え、例の艦娘教導施設関係の落成式とか、開校式とか……」

 

「ん? ああそれ? 確かにそんな話はずっと前にあったけどさ、ほら、ちょっと前に前島で色々(襲撃事件)あったでしょ? それを理由にして要人を迎えたセレモニー関係の催しはしませんって関係各所には話は通してあるから、身内しか来ないけど」

 

「え……嘘」

 

 

 午後に入っての友ヶ島警備府執務棟。

 

 そこには呼び出された髭眼帯が茶を啜り、警備府司令長官のオッパイの言葉に首を傾げるという執務室があった。

 

 

「いやぁ、実際セレモニーを理由にして色々会談やら打ち合わせがあったりすると面倒だし、そっち関係の段取りしてる余裕があったら他に優先する事があるしさ」

 

「……えっと、じゃ、当日の警備関係はいつもと同じでいいの?」

 

「うん、来賓って言ってもクェゼリンとクルイから司令長官が来るだけだし、警備はほら、池田(陸軍少将)さんがついでに連れてくる人員で前島を固めるらしいから、ウチは特務課を施設警備に回す程度でいいかなぁって事で」

 

「……近海警備は?」

 

「いつもの体制で充分じゃない? ウチの警備網を抜けるだけの戦力って、相当なモンだと思うんだけど、そのリスクと引き換えに得られる物って仕掛ける側からしたら今回の件には無いんじゃない?」

 

「……あ、ああそうね、確かに艦娘の哨戒部隊を通常兵器で突破しようとしたら、かなりの物量と人員が必要になるわね……」

 

「正面から来るなら大隊規模とはいかないまでも、それに近いレベルの戦力はいるよね、てかそんな大掛かりな動きがあったら陸が気付かない訳ないし、あっという間に潰されると思うけど」

 

「な……なぁお嬢」

 

「わ、判ってるわよ、今そっち関係の話をするから」

 

「うん? どしたの?」

 

 

 いつもは自意識過剰に見える程にデーンと構えているオッパイ司令長官が小動物宜しくキョドっているのと、何故かカクカクと不自然な動きをするフフ怖に首を傾げる髭眼帯。

 

 そして「ちょっと待っててね」とオッパイは一言告げ、二人は部屋の隅に移動してコショコショと何やら内緒のトークを始めてしまった。

 

 ついでにどこから現れたのか睦月型ネームシップのにゃしいと例のうーちゃんがスススと執務室にINし、髭眼帯に出された茶菓子をモリモリと食べ始めるという、ちょっと雲行きが怪しい空気が室内に蔓延し始める。

 

 

「およ? 今日はおもてなしが豪華にゃしい、何かあったのかにゃー?」

 

「ふむぅ、間宮の本練り(羊羹)に伊良湖最中のセット、これは何か陰謀の匂いがプンプンするぴょん……」

 

「え、君達どっから生えてきたの? てかそれ提督のお茶なんだけど」

 

「えへへ~ うーちゃん間接キッスしちゃったぁ♡……な~んて言うと思ったぴょん? ちょっとヨシノン自意識過剰だぴょん」

 

「いや……そんな事これっぽっちも思ってないと言うか、何と言うか君達お茶飲みたいならほら、自分で淹れたらどうかなとか……」

 

「あーあーそんなの面倒にゃしい、あっ、うーちゃんその最中睦月の分にゃしい!」

 

「ふっふ~ん、世は弱肉強食だぴょん、隙を見せたむっちゃんが悪いぴょん」

 

 

 相変わらず部屋の隅でコショコショする二人に、愛らしい見た目とは反した古参のくちくかん達からの傍若無人に挟まれた髭眼帯は怪訝な表情でシッダウンしたまま固まっている。

 

 そこには大坂鎮守府とはちょっと毛色の違う、独特のカオスが渦巻く執務室があったりした。

 

 

「ね……ねぇヨシノン」

 

「あ、ああはい何でしょう?」

 

「ちょっと見て欲しい物があるんだけど」

 

「見て欲しい物ぉ?」

 

「えぇ、取り敢えず格納庫に行きましょうか」

 

「格納庫にぃ? なんでぇ? お話で聞くだけじゃダメなのぉ?」

 

「まぁまぁ吉野司令、取り敢えず行こうぜほら」

 

「え、なにちょっと天龍君何するの引き摺らなくても歩いていけるからてかちょっとヤメテ! ねぇっ!」

 

 

 こうして髭眼帯はフフ怖に襟首を掴まれたまま引き摺られていき、茶菓子をムーチャムーチャしていたくちくかん二人は首を傾げつつも、ほっぺたを膨らませたままその後をついていくのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「……えっとリーゼ君、これは……」

 

「AH-64D アパッチ・ロングボウよ!」

 

 

 フフ怖に引き摺られ髭眼帯が連れて来られた場所、友ヶ島警備府執務棟格納庫ではボインの司令長官がフンスと腕を組みつつ一機のヘリの前に立っていた。

 

 

 AH-64D アパッチ・ロングボウ

 

 それはアメリカで開発され、現在はアメリカの他イスラエルや日本等多数の西側諸国が運用している攻撃型ヘリコブター「アパッチ」の改修進化型ヘリである。

 

 元々は対空、対地共全ての面に於いて世界最強を目指し開発されたAH-64A型を元とした派生型で、アビオニクス周りとローター関係の更新による運動性能の向上、更には武装強化に伴う火器管制システムの追加によって更なるロングレンジ寄りの攻撃を可能とした機体。

 

 故に「ロングボウ」、長弓の名を冠するこの機体は強力な電子観測機器と、場所を選ばない多様性が詰め込まれた、長距離戦闘域を広げた滞空する空の王者であった。

 

 

「……何でこんなのがココにあるの?」

 

「ねぇヨシノン、現在大坂鎮守府の管轄する海域はどこからどこまでだったかしら?」

 

「えっと……明石海峡大橋から西の大阪湾全域と、そこから続いて紀伊水道全域、和歌山県串本町から徳島県室戸岬を結ぶラインが最南端だけど……」

 

「そうね、それだけ広範囲の海域をカバーするのに肝心の拠点はかなりの北側に位置している」

 

「まぁそれは確かにそうかも知れないけど……」

 

「一昔前だと深海棲艦が跋扈していた関係で航空機の運用は不可能だったけど、今の日本近海はこちらの支配下にあるのでそれは可能になっているわ」

 

「えっと……それで?」

 

「言い換えれば現在大坂鎮守府の警戒する対象は深海棲艦じゃなく、人間、だからそれに対するには海からだけじゃなく、空からの手段も整えないといけないとは思わない?」

 

「それって空母さん達の艦載機でも対応可能だと思うんだけど」

 

「大丈夫、ちゃんとヘルファイアは積んでるから」

 

「いやそれ答えになってないから!? て言うか何で対人哨戒で対戦車ミサイルが必要なの!? 一体誰を相手にするつもりなの君!?」

 

「そしてこの機体のエンジンは空気清浄機から原子炉まで手掛ける安心のIHI、石川島播磨重工業製の物が搭載されているわ、だから整備面に関しても安心していいわよ」

 

「いや一体提督何を安心すればいいの!? てかマジでこれどうするワケ? お空へプルプルと飛ばしちゃうの!? ねぇっ!?」

 

 

 相変わらず腕を組んで持ち上がった胸部装甲をプルルンとさせるおっぱい司令長官を前に、髭眼帯はプルプルとツッコミを入れるというカオス。

 

 そんな67億円もしちゃう武装ヘリの脇からフフ怖を筆頭とする三人が姿を現した。

 

 手に何と言うか野太い筒状の何かを持って。

 

 

「やっぱり天龍さんが持つと迫力満点ぴょん、ある意味それは天龍さんが持つべき装備だとうーちゃんは思うぴょん」

 

「へへっ、そ、そうかぁ?」

 

「間違い無いぴょん、流石天龍さんだぴょん!」

 

 

 凄く怪訝な表情で髭眼帯が見るフフ怖の持つ物体。

 

 髭眼帯はそれの正体を知っていた、それはバッテリング・ラム、和名で言う処の破城槌と呼称される特殊兵装であった。

 

 ダイナミックエントリーツールとも言われるそれは、直径25cm、全長80cm程の円筒形の物体に大型の持ち手を備えたブツである。

 

 用途はドアや施錠された門を破壊し内部に突入する際に使用される物で、使用者の腕力で円筒を振り抜き、質量と運動エネルギーで物体を破壊する原始的、かつ単純で乱暴な破壊装備である。

 

 それは理屈もクソも無い、正に力技で道をこじ開ける道具、故にダイナミックにエントリーしちゃうツール。

 

 そんな用途がむっちゃ限られた原始装備を片手にフフ怖はうーちゃんの甘言に乗って、ニコニコとブンブンしている絵面(えづら)を見た後髭眼帯は何事かとリーゼへ無言で問い掛ける。

 

 

「あ……あああれはほら、何かあった時の備えと言うか、ほら、いざと言う時の為の突入に備えてって言うか、えっとそう、同時に深海棲艦に対する近接攻撃のコンセプトの一つと言うか」

 

「とつにゅー? 近接攻撃ぃ? なんでぇ?」

 

 

 本来は槌の両端平面部分に「DYNAMIC ENTRY」と刻まれるべき物が、「Powered by Melon」という文字にすげ変って刻印されてしまっているブツ。

 

 それは夕張重工開発・生産を示す悪魔の紋章と言うべき刻印であった。

 

 

「ねぇ天龍さん、それどうやって使うぴょん?」

 

「あ? そりゃあお前、こうやってスカーンと相手にぶつけてだなぁ……」

 

 

 そんなブンブンしている為に肝心の部分が髭眼帯からは見えず、ふっつーの破壊槌だと思っていたブツをフフ怖が作動させた瞬間悲劇は起こった。

 

 

 妖精さん謹製の建屋の鉄骨にそれをぶつけた瞬間轟音と共に破壊槌が弾ける。

 

 より破壊エネルギーを生み出す為、槌の内部には信管と艦娘が使用する砲弾にもINされている高性能火薬が満載されるという、夕張重工オリジナルのびっくりどっきりシステム。

 

 それが弾けると槌は爆発エネルギーを伴って超合金製のヘッドをガスンと高速稼動させる。

 

 

 もしそれが普通のドアや門等の物体に向いていたなら、破壊エネルギーは正しく向こう側へ抜け対象は粉砕されていただろう。

 

 

 しかしフフ怖がぶっ叩いたのは妖精さんが作った、執務棟という施設を支える大黒柱、超合金製のゴツい鉄骨である。

 

 少量で砲弾をキロ単位で射出する高性能火薬が生み出す爆発エネルギー×フフ怖の膂力、それが折れぬ砕けぬ超合金同士の間で炸裂する。

 

 それはつまり、諸々合算された運動エネルギーは槌の向こう側へは抜けず、反作用という形で後方へと向いてしまう。

 

 

 凄まじい衝撃音と共にフフ怖諸共槌自身を射出するという結果を伴って。

 

 

 そんなデーハーな爆発オチが発生した結果、場の者達は暫く無言で壁に空いた綺麗な人型の穴を見詰めていた。

 

 

 そして静寂の中、超真面目な表情のにゃしいがテコテコとその穴に近付き、外の様子を見て振り返る。

 

 

「……ねぇ提督」

 

「どうしたの睦月」

 

「天龍さんが出撃ドックの壁に突き刺さっているにゃしい……」

 

「へぇ……ここから50mも飛んでいったのね」

 

 

 こうしてある意味勇み足で諸々の装備を発注してしまい、それの言い訳をどうするかを考えていたリーゼであったが、悩みはフフ怖の犠牲のお陰で有耶無耶になるという結果を生み出した。

 

 またこの後友ヶ島警備府には攻撃型ヘリを始めとする、防衛というのに使用するにはちょっとアレな装備が色々と配備されてしまう事になるのだが、概ねそれは手錬(てだれ)の睦月型達の手によってそれなりの運用がされていくのであった。

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 ただ言い回しや文面は意図している部分がありますので、日本語的におかしい事になっていない限りはそのままでいく形になる事があります、その辺りはご了承下さいませ。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。


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