大本営第二特務課の日常   作:zero-45
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 前回までのあらすじ

 何と言うかお金儲けに血道を上げる体の世知辛い鎮守府事情。


 それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。


2017/12/13
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きましたリア10爆発46様、黒25様、orione様、有難う御座います、大変助かりました。


誰かの常識は、他の誰かの非常識

 

 

「結局の処例の新規に邂逅した艦の内ウチに来るのは、秋月型の一人のみって事で話は纏まったそうだよ」

 

「まぁ以前ごーやをウチへ引き抜いたという前科があった訳だし、その辺りは仕方ないんじゃないかな」

 

 

 椅子に深く身を沈めた髭眼帯は、時雨に手渡された書類に目を通しつつ溜息を吐いていた。

 

 先日吹雪からあった内示では、大陸近海に於いて行われた作戦の展開中、大本営艦隊が新たに邂逅を果たした艦の内伊400という艦娘と、秋月型の三番艦が大坂鎮守府へ着任すると言う事であった筈だが、今日通達された着任指令にはその内の一人の名しか無い状態にあった。

 

 それは現在の大本営潜水艦隊が新規の潜水艦娘を常々切望していたという現状と、以前ごーやを引き抜かれたという前科があり、今回の人事に対して潜水艦隊司令長官より大隅へ直談判した結果、こういう形の着任劇というのに繋がっていた。

 

 だが元々曰く付きという経緯を持つ艦娘達に対し、着任に対して乗り気で無かった髭眼帯にしてはそれは余り気にする話では無く、以前の引き抜きにしても自分が主導した訳でも無かったが、結果的にごーやを引き抜いたという借りをこれで清算できるとなれば、逆に今回の話は歓迎すべき内容とも言えた。

 

 寧ろこの際秋月型の三番艦も他の拠点が引き取ってくれないかとも思っていたが、そこはそれ、大隅の顔もあるのだろう、着任が決定するまで大本営では色々なゴタゴタもあったが、結果としてはその艦娘は大坂鎮守府への着任という事で落ち着く結果となった。

 

 

「まぁそっちよりもアレだ、この涼月という艦娘さんに関してだけど……」

 

「艦政本部第四部の少佐が随伴してここへ届けに来るんだっけ? その辺り何かあるのかな」

 

「今まで邂逅が無かった新規の防空駆逐艦って事で、当初は性能評価や運用研究の諸々はあっちがしたいって強い要望があったらしくてねぇ」

 

「えっと、もしかしてこの子の着任が遅れたのって……」

 

「ん、せめて基本のデータ収集くらいはさせて欲しいって事で、暫くはあっちで色々やってたみたいだよ、多分その辺りの諸々を引き伸ばしてどさくさ的に彼女を抱え込もうとしたんじゃないかな」

 

「ねぇ提督」

 

「ん? 何かな時雨君」

 

 

 隣に立つ小さな秘書艦はペトっと体を寄せて書類を覗き込み、次いで物凄くいい笑顔で髭眼帯を見上げる。

 

 

「また、厄介事の匂いがするね」

 

「ちょっとヤメテ!? そんな縁起でもない事笑顔で言うの禁止っ! 提督そのヘン考えないようにしてんのにいっ!」

 

 

 ニコニコする秘書艦が放つ本音の言葉は割りとこの辺りに慣れ切った状態で吐き出され、同じく碌でもない匂いを感じていた髭眼帯であったが、改めてそれにダメ押しされた状態になってしまい、思わず頭をバリバリと搔く事になってしまうのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「艦政本部造船部所属矢野(やの)歌ノ香(かのか)です、新邂逅艦、秋月型三番艦 涼月を大坂鎮守府へお届けに上がりました」

 

「秋月型防空駆逐艦「涼月」です。皆さんを……皆さんをいつまでもお護りできるよう、私……頑張ります。よろしくお願いします」

 

 

 髭眼帯が頭を抱えた日の午後、その話題の中心である艦娘と艦政本部から来た少佐が執務室にやって来た。

 

 秋月型駆逐艦特有の改造セーラーに銀の長髪、頭には『第四十一驅逐隊』と書かれた白いペンネントを鉢巻の如く添えた、やや大人しそうな駆逐艦がピシリと敬礼の姿勢で着任の言葉を口にする。

 

 その並びには事前に連絡のあった艦政本部から来たという少佐が並び、同じくやや硬い感じの敬礼で髭眼帯と対する。

 

 こちらは歳の頃は20代に見えるやや背が低い女性で、スカートタイプの一種軍装に白手袋という士官の正装に身を包み、切れ長の目からは睨むかの如き視線を眼鏡の奥から覗かせていた。

 

 

「任務ご苦労様、自分が当大坂鎮守府司令長官の吉野三郎です、秋月型 三番艦涼月、確かに受領しました」

 

 

 大体予想してた事とはいえ、好意的とは言い難い視線に苦笑しつつ答礼する髭眼帯であったが、その歓迎せざる空気が件の少佐だけでは無く着任する艦娘からも漂っているのを見て、あ、これアカンやつや、と、内蔵されている嫌な予感メーターがピコンピコン反応するのであった。

 

 

「えっと引渡し関係の書類には、既に改装を終えたとなっているんだけど……」

 

「はい、現在の練度は58、更新された装備はそのままの状態にしてありますが、彼女の初期装備は研究の為こちらに頂くという許可は頂いておりますので、ここへはお持ちしていません」

 

「うん、その辺りは問題ないよ、えっとそれで……彼女はまだ実戦未経験って事でいいのかな」

 

「はい、まだ実戦は経験しておりませんが、こちらの育成プログラムの集中運用で経験は豊富な状態にありますし、そのまま艦隊に配備しても問題は無いと思います」

 

「あーうん、その辺りはまぁウチの教導課へ一時預かりとして、暫く様子を見てどうするか決定しようと思います、そんな訳で叢雲君、お願いできるかな」

 

「了解よ、それじゃ今日は鎮守府の施設案内と荷物整理って事で、本格的な教導は……」

 

「お待ち下さい」

 

 

 髭眼帯より涼月を任せられた叢雲が予定を口にしようとした処で、眼鏡の少佐は待ったを掛けた。

 

 揃って首を傾げる髭眼帯とムチムチくちくかん、対してクイクイと眼鏡ポジを調整しつつ睨む少佐。

 

 そんな一瞬無言になった場では相変わらずメガネをクイクイしつつも、少佐がズズイと前に進み出て、明らかに苛立たし気な視線を更に強めて髭眼帯を睨んだ。

 

 

「教導過程も終了し、そのデータも提出している筈なのですが、何故その彼女を再び教導する必要があるのでしょうか」

 

「うん? ああそれなんだけど……」

 

「郷に入っては郷に従えってヤツよ、幾ら基本的な教導過程を終えたからと言っても、通常新規艦は拠点に着任すれば、そこの運用に則した再教育がされるのが常識って事くらい、アンタは知らないって事は無いわよね?」

 

「提出した引渡し書類にも記載していますが、そういう『二度手間』を省く為にこちらでは着任先を想定したカリキュラムを予め施し、そして送り出す事にしています、ですのでこの子の再教育は必要ないと具申致します」

 

「その教育した艦がちゃんと使えるのかどうかってのを確かめる意味でも、一旦教導課へ送られるのが普通なんじゃないの?」

 

「それは、こちらの教育が信用ならないという事でしょうか」

 

「まぁそうね」

 

「なっ!?」

 

 

 髭眼帯そっちのけの舌戦が執務机前で勃発し、ムチムチ対眼鏡のグヌヌという睨み合いがそこに始まってしまう。

 

 

 基本的な物で言うと、この手の話は叢雲が言う筋が正しく、どんなに経験があっても拠点を異動した艦は先ず演習なり教導なりを積み重ね、その拠点の運用に適した教育が施されるのが普通であった。

 

 またそれは先任の者達との連携や意思疎通等の摺り合わせという意味でも重要な部分を含む為、緊急性が無い場合は着任即艦隊へ編入という事は通常在り得ない。

 

 ただその部分を受け答えするムチムチの叢雲も眼鏡の少佐の物言いに思う処があったのか、キツい返しになってしまったという悪循環が発生し、互いはグヌヌ状態のまま執務室は険悪な空気に包まれていく。

 

 

「あーえっと矢野少佐」

 

「……なんでしょうか」

 

「実際涼月君は現時点ではウチの所属艦である訳だから、君の意見は参考にはある程度させて貰うけど、それ以上ははっきり言って越権行為になるんじゃないかなって思うんだけど」

 

「しかしそれはっ! ……いえ、はい、確かに仰られる事は間違いではありません、ですが……」

 

「あー、んじゃアレだ、もし君が良ければだけど、涼月君を教導している処を見学してったらどう?」

 

「見学……ですか?」

 

「そそ、そっち側の予定が許せば、だけどね?」

 

 

 こうして其々の意地から出たグヌヌ案件は理知的な解決が困難と判断した髭眼帯の言葉によって一旦は終息し、眼鏡の少佐は上にお伺いを立てた結果、一週間の間涼月に対して行われる教導に随伴するという形で話は落ち着く事になった。

 

 

「あの……歌ノ香さん」

 

「判ってるわよ涼月、一週間もあればこんな理不尽ひっくり返すくらいの矛盾は見つけてあげるわ、だから安心して」

 

 

 時雨に案内された寮の一室、ベッドに腰掛ける矢野は不安気な表情を滲ませる涼月の前でそう宣言し、ニヤリと口角を吊り上げる。

 

 

「権力を嵩に着たこんな理不尽な人事なんか、絶対許す訳にはいかないわ」

 

 

 こうして艦政本部から来た眼鏡の少佐は色々含む物を抱えたまま夜が過ぎていき、翌日から始まった教導を通じて大坂鎮守府の色々な面の洗礼を受ける結果になっていくのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 波が沸き立ち、飛沫が(はし)る者達の身を叩く。

 

 砲撃による水柱の大樹と、機銃や爆撃による白い物が足に纏わり付き周囲を深い森の如く変貌させ、行く手を阻む。

 

 空には猛禽類もかくやという脅威(艦載機)が群れを成し、水の上では牙を剥いた肉食獣達が互いの喉元を噛み千切らんと機会を伺っていた。

 

 

『長波ぃ! カバー遅いーーー! さっさと海風と合流しろぉーーーー!』

 

「くっ…… 判ってるけどさぁっ、前が良く見えないってーの!」

 

『ブツクサ文句を句言うなーーーー! 喋る暇があったら一発でも相手に反撃しろぉーーーー!』

 

 

 赤く発光する丸い異形が上から襲い掛かり、長波と海風の間を更に分断する。

 

 

「なろー! 今そっちに行くかンな! 二人とも退くンじゃねーぞ!」

 

『そんなとこでチンタラしてんじゃなーーーい! ちゃんと周り見えてんのか江風ぇーーー!』

 

 

 そんな二人を庇う様に江風が射線へ割り込もうとするが、進路には砲弾が集中する為思う様に動きが取れない。

 

 

『涼月ぃ! アンタが上を蹴散らさないでどーーするーーーー! さっさと対空に回れぇーーーーー!』

 

 

 大坂鎮守府西側海域。

 

 そこでは最近鎮守府に着任した江風、海風、長波と、それに涼月も加えた四人で実戦形式の教導の為に、人数制限をした演習の真っ最中であった。

 

 江風を筆頭とし、其々の錬度は凡そ80と少し、そこに涼月が58となればそれなりの立ち回りは出来る筈だが、仮想敵として対するのは(空母棲鬼)静海(重巡棲姫)、そして扶桑(戦艦棲姫)の深海勢。

 

 一人空母機動艦隊の(空母棲鬼)が放つ艦載機は暴力的な数での圧殺を上から齎し、扶桑(戦艦棲姫)が放つ砲撃は直撃していないにも関わらず誰かを吹き飛ばす。

 

 そして静海(重巡棲姫)の精密射はピンポイントで崩れた部分をかき回す事で四人はまともに陣形すら組めない有様になっていた。

 

 本来なら海域の首魁として存在するレベルの者が三人も並ぶという異常事態、それに対する者はそれなりの性能があったとしても駆逐艦。

 

 誰がどう見てもその対決は無茶振りであり、守勢と言うには余りにも余裕の無い立ち回りは一方的とすら言えない有様となっていた。

 

 

 そんな駆逐艦達へ叢雲は松風ルプスレクス(ムチムチ専用水上バイク)に跨り、拡声器を片手に檄を飛ばすというスパルタ教育が展開される。

 

 

「な……何よアレ、姫とか鬼相手に駆逐艦だけで演習って、一体どういう事!?」

 

「どう言うもこう言うも、見たまんまやな」

 

 

 擁壁に両手を突いて目の前の光景にカクカクするメガネ少佐に、程近い東屋で茶をしばく龍驤がまんまの返答を返す。

 

 状況的には少佐の言は尤もな物であり、龍驤の返答も間違ってはいないと言えちゃうが、色々とそれはおかしいとも言えちゃう絵面(えづら)でもある。

 

 

「いつもは鍛えるっちゅう目的の為の演習やけど、今日のは新顔が混じっとるからまぁ本人の適正見るんのと、周りとの相性確認する為の演習って言えるかも知れんなぁ」

 

「なにそれ!? こんな乱暴な方法で何が判るって言うの!? 無茶よ!」

 

「なんやどこぞの誰かが詳細データ取ってるから基本訓練は不要って言うたから、ほたら諸々省略して演習からいっとこかって叢雲は言うてたけどな」

 

「えっと……ねぇ龍驤、ここじゃあんな演習が常態化してるの?」

 

「いやいや流石にあんなんはたまにしかせんよ?」

 

「たまにでもやってるの? あんな一方的な訓練じゃ何も得る物なんて無いじゃない……」

 

 

 今も尚反撃はおろか、攻撃を躱す事が精一杯で陣形も組めない状態の駆逐艦達を見つつ、矢野は苛立たし気に親指の爪を噛む。

 

 その様を見ながら龍驤は特に言葉を返す事は無く、茶を啜りながら寛いでいた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「で? 昨日は姫鬼との無茶な演習をやって、今日は接近戦の練習?」

 

「うん? どうしたメガネ子、物凄く難しい顔をして」

 

「誰がメガネ子よっ! 矢野よ矢・野! さっき自己紹介したじゃないっ!」

 

「ああすまないその……メガネ子? 何か気に障ったなら謝る」

 

「全然訂正してない上に疑問符っ! もぉぉなんなのよ貴女!」

 

 

 (空母棲鬼)達深海勢と駆逐艦達との演習から明けて次の日。

 

 今日は屋内練武場(体育館)にて同じメンバーに伊勢を加えての格闘訓練が始まっていた。

 

 

 五人に対するのは武蔵に木曾に神通。

 

 それは大坂鎮守府でも十指に入る近接戦闘の猛者を据えた、昨日と同じ程にガチの訓練。

 

 そんな訓練を見学する矢野と、今日の案内役である日向が見学する場がそこにあった。

 

 

「なってねぇなオラ、腰が入ってねぇから切っ先が泳いでんじゃねぇか」

 

 

 手持ちの武器を選択した海風と涼月は木曾が相手を務め、既に二時間程の模擬戦を休憩なしで繰り広げている。

 

 二人掛りで薙ぎ、突き、叩く。

 

 駆逐艦とは言っても艦娘の膂力から繰り出されるそれは速さも威力も相当な物であった。

 

 しかしそこは経験の差か、デフォルトで刀を装備する為か、それら全力の太刀は木曾に掠りもせず、しかも受けさせる事も殆ど無いという一方的な展開になっていた。

 

 

「涼月さんは下をっ!」

 

「……はいっ!」

 

「そうだ、格下のお前達が俺に一太刀浴びせようとするなら連携しての挟み撃ちしかねぇ、んでもよ……それ声に出してちゃバレバレだぜ! ちゃんと呼吸を合わせて自然と動けるように体へそいつを覚えさせんるんだ!」

 

 

 何にも当たらず空を切る太刀は、何かに当たって止まるよりもスタミナを消耗させ、同時に精神的な損耗も大きくさせていく。

 

 そうしてヨレヨレになりつつも二人は木曾に檄を貰いつつ、延々と立会いを続けていく。

 

 

 その向こうでは江風と長波が神通を相手に無手で挑んでいたが、まるで冗談の様にポンポンと投げ飛ばされていく。

 

 

「踏み込みが甘いですね、もっと懐に入り込んで相手の動きを制限させないと、カウンターの餌食になってしまいますよ」

 

「ってぇ~、カウンターってさっきから神通さん殴りじゃなくて投げばっかじゃん」

 

「懐に入るってさ……瞬間移動みたいにこっちの背後に回るもンだからどうにもなンないっつーのっ!」

 

 

 端から見ればちょっと触った程度なのに、真上や真横という在り得ない角度で飛ぶ二人を見て、矢野は昨日にも増してカタカタして目の前の光景に唖然としていた。

 

 

「ねぇ日向……なんで艦娘に格闘戦の技術が必要になるの?」

 

「うん? 何故と言われてもな、手足が生えてるんならそれを戦いの道具に使わない手は無いだろう?」

 

「手足が生えてるって……確かに昔は艦娘も人型だからって、そういう戦い方をさせた時期もあったけど、結局艦娘の装備やダメージ効率を考えたら、海の上では砲雷撃を突き詰めた方がいいって事になって、格闘戦なんかは教練メニューからは消えちゃったじゃない」

 

「まぁ、そうなるな」

 

「ならなんでそんな非効率的な訓練させてるのy」

 

 

 駆逐艦達がボロンチョンにされている様を横目に矢野が日向に食ってかかろうとした瞬間、チンという小さい鍔鳴りと共に背後の壁にズガンという音を立てて何かが突き刺さる。

 

 

「……え?」

 

 

 呆気に取られつつも前を見れば、刀に手を添えて首を傾げる日向が居る。

 

 そしてそこからゆっくりと背後の壁に目を向ければ、短かい棒切れの様な物が突き刺さり、その下には壁から生えている物と同じ長さ程のブツが転がっていた。

 

 そこから更に練武場に視線を巡らせれば、武蔵と対峙していた筈の伊勢が何故か両手を合わせ、メガネ子へ拝む様にペコペコとする仕草が見える。

 

 

「あっちゃ~ ゴメンゴメン、ちょっと木刀すっぽ抜けちゃった、怪我してない?」

 

「うむ、大事はないぞ姉よ、だが出来たらもう少し集中して稽古をして貰えると助かる」

 

「あははごめ~ん、ちょっとムキになっちゃってさ、て言うか日向さぁ」

 

「ん? なんだ?」

 

「えっとその……確かに私ってあんたの姉さんだけど、気のせいじゃなければほら、あんたって私の事「姉さん」とかじゃなくって「伊勢」って名前呼びにしてた気がするんだけど……」

 

「……む、そうなのか?」

 

「ああいやなんとなーくそう感じただけでさ、うん、えっとその……出来たらそういう呼び方された方が落ち着くかなぁ……みたいな?」

 

「そうか……ふむ、それではなるべく善処する事にしよう、黒インナーポニテ子」

 

「何で呼び方修正したら姉妹関係が更に遠くなる名称になっちゃうのよっ! 確かに私はあんたみたいに瑞雲ってキャラ付けなんかは無いけどさっ、それ以外の特徴を見出したらポニテしか無いってどうよまったく!」

 

「すまんポニテ子」

 

 

 冗談か本気か判らない師匠の受け答えを耳にしつつも、壁に刺さるブツを指差しカクカクするメガネ子。

 

 そんな様を見て何かを察したのか、師匠は懐からズイウンを取り出してプロペラを回し、ブィーンとメガネの顔面に風を送る。

 

 

「ねぇ……日向、これナニって言うかそれナニ?」

 

「うん? それは木刀でこれは瑞雲だが?」

 

「いやどうして瑞雲をこっちに向けているのじゃなくってっ! これっ! こ・れ!」

 

 

 色々混乱状態のメガネ子がビシビシと指差す壁に生えたブツを見て、首を傾げて暫く考える素振りを見せると、更にもう一機懐からズイウンを取り出し風を当て始めるる師匠。

 

 そのやり取りは場のズイウン率を増大させ、ワケワカメ空間が更に広がってしまった。

 

 

 因みに大坂鎮守府では格闘に秀でた者がそれなりに揃ってはいたが、剣術という事に関して言えば時雨が三番、木曾が二番。

 

 そして今メガネ子の前でズイウンをプルプルしている師匠が、実は大坂鎮守府ではぶっちぎりのトップであるのは余り知られていない事実であった。

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 ただ言い回しや文面は意図している部分がありますので、日本語的におかしい事になっていない限りはそのままでいく形になる事があります、その辺りはご了承下さいませ。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。



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