大本営第二特務課の日常   作:zero-45
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 前回までのあらすじ

 提督、サイコパスな殺し屋に狙われている事が発覚、更に矢矧さんにこき下ろされるという被害を被りヘコむの巻。


 それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。


2018/07/11
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きましたリア10爆発46様、皇國臣民様、K2様、有難う御座います、大変助かりました。



今日も大坂鎮守府はドッタンバッタン大騒ぎ

「それではこれより定例報告会を急遽変更し、鎮守府緊急大会議を開催したいと思う」

 

 

 大坂鎮守府執務棟一階。

 

 その最奥にある会議室に於いて鎮守府の要職に就く者達が二十人は着けるであろう巨大な卓を囲み、厳しい相を表に滲ませつつ議長である長門の言葉に耳を傾けていた。

 

 そこには艦隊総旗艦兼会議議長の長門、副艦那智、教導課総括叢雲、今年に入り正式に鎮守府相談役に就任した龍驤、事務方総括の大淀、職場環境保全課総括足柄、艦娘免許センター代表香取、夕張重工代表代理山風、給糧課代表鳳翔、そしてちょっと豪華な革張りチェアーに拘束されてシッダウンしている髭眼帯という計10名が居並ぶという絵面(えづら)がある。

 

 

 長門の後方にある巨大モニターにはデカデカと『大坂鎮守府緊急大会議』と宣言した言葉通りの文字が映っており、卓の空気はピンと張り詰め、そしてシッダウンしている髭眼帯はプルプルして場を見るというそんな会議室。

 

 本来なら週明け月曜の午前は鎮守府各課の代表者が集い、其々の課に於ける軍務の進捗状況の報告や業務に於ける話し合いが主とする定例会が開催されている時間であったが、何故か今日はそれがキャンセルされ、髭眼帯を上座に拘束状態のそんな会議が開催されるという状態。

 

 

 髭眼帯的には何も聞かせられず拉致られた末で今の状態にあったのだが、場の雰囲気と拘束されているという自身の状態で凡そ現状はとても良くないという事は感じ取っており、また先程から特定の人物達からは緊張というよりも、殺気という類の空気が滲み空気が揺らめく様はとても不穏かつデンジャーにあった為、例の嫌な予感メーターの針がピコンピコンと絶賛上昇中にある。

 

 

「えっとあの……長門君」

 

「うん? どうした提督」

 

「この、何と言うか緊急会議って何だろうかというか提督何も聞いてないというかどうして椅子にこう……縛られて身動きがとれない状態にあるのかとかその辺り色々聞きたいんですが」

 

「提督、緊急会議ではない、緊急"大"会議だ」

 

「ああ……うん、そうなの? うんまぁ何がどうおっきいのかは一先ず横に置いといて、どうして提督が椅子に縛られているのかの理由だけでも聞いていい?」

 

「必要な処置だ」

 

「またそれ!? てか今まで提督このパターンの時って大抵ロクな目に遭ってない気がするんだけど!? 仮にも鎮守府司令長官を椅子にシッダウン状態で手枷足枷ってのは艦隊総旗艦としてはどうなのって思うんだけど!? ねぇっ!?」

 

「あー、それでは皆の者も会議の趣旨は既に周知にあると思う、なので取り敢えずは各課からの報告から始めたいと思う」

 

 

 ちょっと豪華な革張りチェアーに鎖で拘束された髭眼帯の抗議はフル無視され、会議は粛々と進行していく。

 

 その扱いは鎮守府司令長官と艦娘という関係的にはどうなのだろうと言えなくはないが、大坂鎮守府ではある意味このパティーンはいつもの事と言えなくも無いので誰もその事には一切触れないという、髭眼帯的には悲しい場がそこには広がっていた。

 

 

「えーそれでは、我が事務方からは各課から上がってきたこの件に対する緊急予算申請に対応する為、現在プールしている資金の一部を開放する準備を整えました」

 

「ふむ、大淀よ、その準備金とはどの程度の額を調達出来ているのだろうか」

 

「取り敢えずは鎮守府運営規模の三ヶ月分、その他現在洗浄中の資金も投入予定ですので、都度申請毎に対応していく形になると思います」

 

「ちょっ!? 鎮守府運営三ヶ月分て? ナニソレそんなオゼゼ何に使うつもりなの君達!?」

 

「なる程、それなら当座は凌げると思いたいが……」

 

「問題は夕張重工から上がってくる予算申請ですね、確認出来た範囲でも相当大規模な設備更新を計画中みたいですし」

 

「山風、その辺りはどうなんだ?」

 

「ん……お金はどれだけ掛かるか判らない、けど……今全員徹夜で色々作ってるから、いっぱい予算は必要だと思う……」

 

「工廠課全員徹夜ぁ? ナニソレ提督なんも聞いて無いんですが、何作ってるの山風君!?」

 

「提督よ、今は緊急事態に対応して各所との調整に忙しいんだ、話の腰を折らないでくれ」

 

「てか提督その発生しちゃってる緊急事態ていうの自体何か知らされて無いんですが……」

 

 

 髭眼帯の言葉に長門は真面目な相で視線を投げるが、すぐにそれを苦い物に変化させると片手で顔を覆い、そしてテーブルの一角を指差した。

 

 髭眼帯が怪訝な表情で首を傾げつつその方向を見ると、そこには『特務課』という札が倒されたままの空席が一つ見える。

 

 それを確認した髭眼帯は怪訝な表情のまま視線を戻し、一体何を言いたいのかという無言の問いを長門へ向ける。

 

 

「特務課代表あきつ丸と川内、並びに青葉は昨日午後から陸へ出向している、また主任の漣殿を始め内務の者達も情報収集にフル回転らしくてな、会議に出席してる暇は無いそうだ」

 

「え、特務課フル回転て……なにそれぇ?」

 

「ときに提督よ、貴方は現在殺し屋に狙われているらしいな」

 

「……どこからその話を?」

 

「昨晩青葉から鎮守府イントラネットに向けて、矢矧と提督の間で話し合われた会話データがアップされてな」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁおぉぉぉぉぉぉぉぉぉばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「まぁ提督の事だ、その手の事は内々に処理するつもりか、段取りが終わってから我々に伝えるつもりだったのだろう? だがしかし仮にも鎮守府の司令長官を狙う輩が居るとなれば、それは貴方個人の問題では収まらない」

 

「せやな、キミの安全に気ぃ使うんは当然やけどな、同時にコレは鎮守府に所属するモン全員のメンツと意地にも関わってくる」

 

「艦娘という戦う者としての意地、提督という者を狙われたという怒り、そしてたった一人で我々を相手取るという舐めた行為に対する憤り、胸にある想いは其々違う物になるだろうが、少なくとも今回の件に対する我々の意見は一致を見ている」

 

 

 この会議に至った理由を説明し終えた長門は、髭眼帯に向けていた視線をそのまま場に居る者達へ向ける。

 

 その言葉に対し卓に着く者達は無言のまま一度頷いて、上座に固定されている髭眼帯へ視線を向けると、言葉にしないが心中にあるのは長門が言った事に相違ないという意思表示を態度で示した。

 

 

「重ねて言うが、この件は幾ら提督の指示があろうと譲る訳にはいかない、それ以前に止めても聞かん者が既に行動を起こしてしまっているからな、もう既に事は動き始めていると認識して貰いたい」

 

「あー、榛名とグラ子が鬼みたいな形相でなんぞ準備しとったなぁ」

 

「確かマンハントがどうとか言ってましたっけ?」

 

「マンハントぉ? なにその物騒なワードぉ?」

 

「時雨とポイヌ(夕立)が中心となって提督の特別警護班の編成もしている様だが……」

 

「特別警護ぉ? これ以上提督の警護増やしてなにするつもりぃ?」

 

 

 長門の言う言葉に髭眼帯が怪訝な表情で返したその時会議室のドアからノックの音が四回聞こえ、キィィという音を立ててそれが開かれる。

 

 そこに見えるのは例のワンコメイド服を着用した二人、今絶賛話題に上がっていた時雨とポイヌ(夕立)が居た。

 

 

 割と真面目かつ髭眼帯的には色々と予想外な話が進行している状態にある現状、例のワンコメイド二人が真顔のまま会議室にINする様は思考が追いつかず首を傾げる状態になってしまい、また他の者達も何事かと二人を注目した為、会議室は水を打ったかの様にシーンと静まり返ってしまう。

 

 そんな全員が見守るという中を音も無くスススと移動する二人は、部屋の隅に置いてあった予備の椅子を其々髭眼帯の脇にセットし、何食わぬ顔でストンと腰掛ける。

 

 恐らくそれは長門が言う警護に関わる行為なのだろうと髭眼帯は思ったが、それが何故ワンコメイド服で行われているのだろうか、そして何故時雨の両腰にはポン刀がセットされているのか、どうしてポイヌ(夕立)はナックルガード付きグローブにパイルバンカー装備でニコニコしているのだろうかとプルプルを開始し始めた。

 

 

「ふむ、警護の任か、ご苦労」

 

「ぽいっ」

 

「え、いや待って、警護って二人共ちょっとそれ何でそんな物騒なモン装備してるワケ?」

 

「今回はいつもと違うからね、確実に提督を狙う相手が来るって聞いたし」

 

「ぽい」

 

「いやまだ提督が100%狙われてるって確定してないから」

 

「でも殺し屋は『色欲』の異名が付いた将官をターゲットにしてるんでしょ、ならもう提督に間違いないと僕は思うんだけど」

 

「せやな、それがあったからウチのモンらは本気になったんやで」

 

「ちょっと何でそんな風評被害を切っ掛けにした情報で君達本気になってんの!? てか色欲ってワードが提督に直結するって物凄く納得いかないんだけど!?」

 

「久し振りに封印してた武器ロッカーを開放したから、警護は任せてくれるかな」

 

「え、武器ロッカーて……例の明石謹製の武器が入ったアレぇ?」

 

「うん、取り敢えず夕立と朝潮、後は天津風に武器を貸し出したし、僕を含めた四人が24時間体制で警護に当たるから、そこは安心していいと思うよ」

 

「ん、()るっぽい!」

 

 

 時雨が封印しているという彼女専用武器ロッカー。

 

 それは嘗て第二特務課立ち上げ当時、明石が試作し、時雨へと手渡された数々の近接武器が収められているという武器ロッカーの事を指す。

 

 それは元祖工作艦が作ったシャレにならないマジモンのブツが目白押しであった為、当時髭眼帯が使用禁止として言い渡し、現在までそれらは封印されたままであった。

 

 徹頭徹尾武器としての性能と効率を突き詰めた明石作のそれらは、ロマンと趣味性を多分に含んだ夕張作の物とはベクトルが違い、高性能かつ殺傷力が高い代わりに使用すれば必ず相手は死ぬという仕様になっていた為、それらが収められた時雨の武器ロッカーは、いつしか鎮守府の者達の間では『禁断の箱』と呼ばれる様になっていったという。

 

 

「えっとその、あの武器使うの以前提督メーって君に言ってなかったっけ?」

 

「……ここは譲れない」

 

「ナニガ!? ってちょっと時雨君目……目のハイライト消えてるからぁ!? てかポン刀抜いてうっとり眺めるのヤメテ!? マジシャレなんないからそれっ!?」

 

「選り取りみどりっぽい?」

 

「夕立君も提督の隣でそんな物騒な武器構えるのヤメテ!? ビッグセブンヘルプ!」

 

 

 こうして髭眼帯に関わるあれこれは青葉ワレのリークによって鎮守府中に知れ渡る事になり、予想外の大騒ぎという形で厳戒態勢に突入していくのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「そんな訳で昨日から工廠課では総出で鎮守府の防衛設備強化と平行して、予ねてより計画していました武装強化ユニットの試作品を急ピッチでロールアウトする作業に入っています」

 

 

 鎮守府南端に位置する例のコンテナヤード。

 

 そこには現在武装したワンコメイド二人に脇を固められてしまった髭眼帯が、鎮守府の防衛強化真っ最中と聞いた工廠課の様子を見に足を運んでいた。

 

 

「えっとウチの防衛設備って確か、現状で近隣地域に支障が出るギリのラインって前言ってなかったっけ?」

 

「はい、現状我が鎮守府の防衛設備は大本営が定める「国内拠点に於ける設備要綱」を参考に配置している状態にあります」

 

「だね、確か鎮守府を再整備する時そう聞いたけど」

 

「しかし提督、その大本営の設備要綱には『近隣ノ住民ニ配慮シツツモ、拠点防衛ニ則シタ設備ヲ適時敷設スルモノトス』と記載されているのはご存知でしょうか?」

 

「え、うんそれは知ってるけど……」

 

「で、我が鎮守府は内地では唯一海上に存在する人工島に設置された拠点、周辺環境で言えば他の鎮守府とは事情が違います」

 

「え、事情が違うぅ? なにがぁ?」

 

「陸から離れた環境、更に陸に設置された唯一のアクセスポイントすら軍用地として徴発された立地、それは言い換えてしまうと他拠点とは違い、360°一定距離に生活環境が皆無という特殊な拠点と言える状態になっています」

 

「ああうん、確かにそう言われればそうかも知れないけど」

 

「それはつまり! 他の鎮守府よりも強固かつ多種の設備を設置しても近隣に影響が及ぶ可能性が低いという事なのではないでしょうか! そういった環境を念頭に再び鎮守府の防衛設備を見直した結果、これまでより更に強力かつ多数の兵装を設置可能という結論を工廠課は導き出しました!」

 

 

 武装ワンコメイドに挟まれ、凄く真面目な表情の髭眼帯の前では屁理屈に片足を突っ込んだ理論を熱く語るメロン子というカオスが展開される。

 

 

 そして髭眼帯は思った、このパターンは良くない事が起こる前兆だと、このまま放置してしまうとまたなし崩し的に色々メーな事態に発展してしまうと。

 

 だから是が否でもそれは阻止しなければと行動を起こそうとする。

 

 だが髭眼帯は忘れてしまっていた、今までこのパターンに至った場合、自身へメロン子が持論を展開している時点で既にそれらは完成してしまっているという事を。

 

 

 つまりそれは判りやすく表現すると、世間一般で言う処の『手遅れ』と呼ばれる状態にあった。

 

 

「いや君が言う事も尤もだと思うけど、やっぱ大袈裟な事をしちゃうのは……」

 

「但しこの計画に於いては事務方より予算獲得の為に様々な条件が付けられました、その為工廠課ではこれまで開発した試作品や武装を出来る限り投入し、無駄の無い防衛強化計画を推進する事を前提に事を進める事になりました」

 

「え、試作品? 予算獲得ぅ?」

 

「今回はその成果の一部をお目に掛けたいと思います……それじゃぜかましちゃん! やっちゃって!」

 

『をうっ!』

 

 

 怪訝な表情の髭眼帯をおいてきぼりにしたメロン子は、いつの間に装着したのだろうインカムに向ってゴーサインを出し、更にはスカートに手を突っ込みゴソゴソとした後、ズルリそこからとノーパソを引っ張り出してはなにやらポチポチと操作し始めた。

 

 因みにそのノーパソは例の齧り掛けのリンゴマークが張り付いたフルサイズのブツであり、どう考えてもスカートの中にINするにはサイズ的に無理があるブツではあったが、そこは艦娘という存在の収納に於ける機密事項に抵触する為触れてはいけない。

 

 

 プシューと空気が噴出する音が木霊する。

 

 次いで何も無かった波打ち際に近い位置に、クソ長いレールが地面を割ってゴンゴンと生える様が見える。

 

 更にはその作動音を掻き消す程の轟音が耳を叩き、それに何事と視線を向ければ、そこには例の夕張が棲む例のラヴ的なキャッスルである『夜のスナイパー』が高速でリフトアップする事で、真昼間にも関わらずコンテナヤードにいかがわしい雰囲気が漂い始める。

 

 そして地面に生えたレールはコンテナヤードに留まらず、視線が届かない程遙か向こうまで延々と続き、逆側は地下から生えて来たキャッスルに接続される。

 

 

 それらが全て地上に現れた刹那、回転灯が眩い赤を周囲に撒き散らし、同時にキャッスルの扉が開かれる。

 

 怪訝な表情でその様を見る髭眼帯達が見る先には、ガシュンという無骨な音と共に鉄の巨人が現れるのが見えちゃったりした。

 

 

 それは嘗て髭眼帯の愛車であったスープラを改造して作られた拠点防衛ロボスプー、最早説明不要のゲッ〇ー3と言うかガ〇タンクの如きその巨体は、駆動輪がタイヤから鉄輪へと換装され、地面から生えて来たレールにセットされている。

 

 この時点で次に何が起こるかなどもう髭眼帯には予想が付いていたが、何故かヤッ〇ーワンが発進するかの如き絵面(えづら)をリアルで見せられるというインパクツと、更にはその鉄の塊がンゴゴゴーと音を立て高速で移動を開始した様を見て唖然とするしかないというカオス。

 

 

「拠点防衛ロボスプーの唯一にして最大の弱点、それは横Gに対する応力が低く、転蛇に難があった事です」

 

「ああまぁ直線番長と言うか、曲がれない高機動ガンタ〇クだったっけアレ……」

 

「しかしあの形状は合体変形という機構を成り立たせ、尚且つカーとしての存在を残す唯一のフォルムなのです、なればその姿を生かし、尚且つ拠点防衛に則した運用をするにはどうすればという問いを突き詰めた結果、地面に軌道を配し、その上を走らせればいいという答えに到達しました、その結果生み出されたのがあの『勇者特急スプー軌道型』です!」

 

 

 夕張の説明の向こう側には両手のアームを上げた鬼怒のポーズのまま疾走していくスプーというおかしな姿があり、それは高速で移動する為ドップラー効果の残す轟音を残しつつどんどんと小くなっていく。

 

 それと同時に髭眼帯のプルプルが目に見えて増していく。

 

 

「おい、ユウバリンコ……」

 

「夕張です、なんでしょうか提督」

 

「あのスプーさ、レールの上ガーっと走ってったじゃない?」

 

「はい、一応設計上では南海電鉄のラピートと同じく最高時速は130km程を出せる仕様になっています」

 

「いやそれはいいんだけどさ、レールの上を走るって事はアレ、変形しても動輪が鉄輪だから最早カーとして使えないんじゃないの?」

 

「タイヤなんて飾りです、偉い人にはそれが判らんのです」

 

「車からタイヤ消失したら車ジャナイデショ! て言うか変形ロボのアイディンティティどこいったの!? ねえっ!?」

 

 

 こうして取り敢えずは拠点防衛としての性能を獲得したロボであったが、同時に汎用性を大きく欠いた欠陥を抱える事になってしまった為、またしても使い辛さが際立ってしまう結果が発覚してしまったメロン子は久々の生尻ペシペシの刑に処され、その悲鳴はコンテナヤードに空しく木霊するのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「そ……それでは引き続き鎮守府防衛計画、試作品改修プランBを紹介したいと思いましゅ……」

 

 

 スプーが鎮守府外縁を一周してキャッスルに格納された後、コンテナヤードでは引き続き工廠課が立案した鎮守府防衛計画の結果発表会が行われていた。

 

 シリを不自然に突き出しプルプルする夕張は、インカムに何やらボショボショと語り掛け段取りを進めており、その向こうからはスプーから降りてきたぜかましが盛大にやり切った感を漂わせながらトコトコと歩いてくる。

 

 

「しかしあのレール鎮守府一周してるとか、どんだけ手間掛けてんのよ……」

 

「一応平時は移動用の小型車両も走らせるって事にもなってるし、無駄にはならないんじゃないかって思うんだけど」

 

「それが無かったらシリペシじゃなくてケツバットの刑に処してたとこです」

 

「あ、島風お疲れ」

 

「をうっ!」

 

「ぽいっ!」

 

 

 苦笑いで例のスプーの評価を話し合う髭眼帯と時雨の脇では、せがましとポイヌ(夕立)がハイタッチを交わしつつ、何故かそのままぜかましがヨジヨジと髭眼帯をクライミングして肩車の体勢に入るというカオスが展開する。

 

 普通の提督と艦娘という関係から言えばそれはある意味メーな状態とも言えるが、それはもう大坂鎮守府では常態化しているという事なのだろう、本人達だけでは無く周りからもそれに対して何か突っ込み的な物が入る事はなく、ここに武装ワンコメイドに挟まれ、更にはぜかましをパイルダーオンしてしまった髭眼帯というセットが完成してしまう。

 

 そんなカオス空間から少し離れた海上。

 

 陽の光を白く反射した何かがザザザザと波を切って(はし)り、高速でコンテナヤードを目指し進んでくる。

 

 

「……アレナニ?」

 

「あれが試作装備改修プランB、夕張重工謹製艦娘追加兵装『オーキス』を改修した物でしゅ」

 

 

 尚もシリを突き出しプルプルするメロン子の向こう側、海を疾走するそれは、何か巨大なブツを背負った者が徐々に近付いて来る様が確認できる。

 

 

 白く巨大なそれにはクソ長い砲が二本据えられ、また装着者の機動補助の為のウォータジェットの飛沫が白く尾を引いている。

 

 その武装の隙間からは、海軍最大と言われる51連装砲が左右から姿を見せ、それも相まって全体のシルエットは混沌とした物になっていた。

 

 

「オーキスの欠点にして最大の欠陥、それは動き出すとその自重故に自沈の危険性がありました、それは機能を盛り過ぎ性能を優先させた失敗とも言えました、今回は装備重量の殆どを占めていた多段層コンテナを取り除き、シンプルに砲装備のみを配し、同時に装着者の艤装装備も加えたレイアウトという機構を採用しています」

 

「おい……ユウバリンコ」

 

「夕張です、何ですか提督」

 

「あれ……単に島風君じゃ沈んじゃうから榛名君に装備背負わせただけじゃないの?」

 

「……君のような勘のいいガキは嫌いだよ」

 

「誰がガキだっつーの!? てかアレ全然欠陥解消されてないから! 寧ろ見た目巨大化してて悪化してるんじゃないの!? ねえっ!?」

 

「ご心配なく、それ以外の欠点も既に克服していますので」

 

 

 重量関係を駆逐艦から戦艦へ積み直すという単純かつそれでいいのかという運用転換で誤魔化された巨大追加兵装。

 

 それを指差すメロン子の先には、武蔵殺しの背部兵装の中心辺りにある、陽の光を銀色に反射する物体が微かに見える。

 

 

 物凄く怪訝な表情の髭眼帯はその部分を目を細めて確認する。

 

 

 波を切る大型の移動物体、そこにあるのは不自然に輝く銀色の半球と、それから生えたクルクル回るアンテナ。

 

 良く見ると、その半球の下には陽炎型二番艦のフェイスがチラリと見えていた。

 

 

「ちょっと待って!? 何であんなトコにぬいぬいをセットしてんの!? ドウイウコトなのあれぇっ!?」

 

「オーキス二つ目にして運用に支障を来たす弱点、それは火器管制システムである不知火さんがシステムの移動速度に追随出来ない事にありました、なのでその問題は彼女を装備にパッケージングする事で解決、そして榛名さんのパゥワーにより重量、火器管制システムという二つの弱点を克服するばかりか、155mm榴弾砲二門+51cm連装砲のフルバーストを可能としました、その威力は絶大、故にこのシステムはオーキスから進化した機体、ミーティアとなったのです!」

 

「装備改修どころかアレ何もかも足した上で榛名君のパワーに依存してるだけでしょ! ミーティアってナニ目指してんの!? てかぬいぬいを火器管制システムとか言うのヤメテ差し上げて!?」

 

「さあこの夕張重工最強にして最大の新兵器の威力……とくとご覧にいれましょう、では榛名さんっ! やっちゃって下さいっ!」

 

「主砲! 砲撃開始!!」

 

 

 疾走していた榛名はその勢いのまま背部武装を展開、巨大な155mm榴弾砲が左右に据えられ、更には51連装砲を伴って構えるその様は圧巻であり、そして絶対的な強者の風格さえ水面(みなも)の上に漂わせる。

 

 そして全ての砲による一斉射。

 

 榛名を中心とし衝撃波が作り出す円が幾重にも重なって飛沫を撒き散らせ、膨大な火柱による瞬きと音の暴力がコンテナヤードに居る者達を容赦なく襲う。

 

 それは間違いなく最強の一撃であり、食らえば姫や鬼であっても只では済まないと理解する程の光景を垣間見せる。

 

 

 しかしその規格外の攻撃力は砲の口径と数に依る物であり、物理の法則に則れば、射出時に発生する運動エネルギーは射出された砲弾だけに乗る訳ではなく、射出した榛名自身にも反作用として襲い掛かる。

 

 ぬいぬいを含む武装構成はトップヘビーとなって只でさえバランスが悪く、51連装砲の斉射ですらギリの榛名にとってその衝撃に耐えられる事は当然出来ない。

 

 

 結果として榛名はそのまま後ろに吹っ飛びひっくり返った為に、ウォータージェットのノズルが天へ向いた結果、そこに某犬神家のあの有名なシーンの如き絵面(えづら)水面(みなも)へ展開させる結果となった。

 

 

「ファーーーーーッ!? ちょっ!? ハルナクーーーーン!?」

 

「認めたくないものだな。自分自身の若さ故の過ちというものを……」

 

 

 こうして運用の目処が立ったと思われた追加兵装であったが、またしても根本的な欠陥が試験運用の時点で発覚、あわや榛名とぬいぬいが溺死の危機と言う結果を以って再びそれらは封印される事となってしまった。

 

 そしてノリノリでそれらを作り出したメロン子は再び生尻ペシペシの刑に加えバケツ正座のコンボを喰らい、この鎮守府防衛計画の一部は急遽見直される事になっるのであった。

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 ただ言い回しや文面は意図している部分がありますので、日本語的におかしい事になっていない限りはそのままでいく形になる事があります、その辺りはご了承下さいませ。

 それではどうか宜しくお願い致します。


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