大本営第二特務課の日常   作:zero-45
<< 前の話 次の話 >>

252 / 301
 前回までのあらすじ

 クズロリが大坂鎮守府へやってきた。


 それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。


2018/03/01
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きましたリア10爆発46様、対艦ヘリ骸龍様、forest様、京勇樹様、じゃーまん様、有難う御座います、大変助かりました。


見た目ではなく魂で繋がる関係

「凄い……姫鬼のみの艦隊という破格の戦闘力も凄まじい物だけど、それを相手取る艦隊の連携がちゃんと戦力分散と迎撃を機能させている」

 

 

 海の上でありながらも波を砕く猛火が赤々と景色を滲ませるそこは、大坂鎮守府西側海域に設定された演習用海域。

 

 艦娘特殊兵学校の卒業を明日に控えた一期生の十八人、三艦隊という変則的な連合艦隊は仮想敵を務める六人の姫鬼相手に水面を駆けていた。

 

 前衛に扶桑(戦艦棲姫)姉妹が陣を張り、中央に朔夜(防空棲姫)、そして後方に(空母棲鬼)水晶(空母水鬼)を配し、水中では(潜水棲姫)が虎視眈々と獲物を狙う。

 

 戦闘面でも性能面でも穴がない、現存する深海棲艦という存在の中で考え得る限りの最悪最強の組み合わせ。

 

 単体でも熟練の艦隊一つを相手取ると言われる者達が艦隊を組み、更には連携する事で数倍の戦力を有するという悪夢を前に、舞鶴、クェゼリン、クルイ選抜教導一期生の面々は包囲戦を仕掛けつつ互角の立ち回りを繰り広げていた。

 

 数的な差は1:3、しかし個々の能力や頑強さはそれを引っくり返して余りある物ではあるが、その絶望的差を連携と戦略で埋めながら教導生達は戦線の維持に努める。

 

 主力である舞鶴艦隊は矢面に立ち火力面を担いつつも無理に突っ込む事はせず、立ち回りで相手を削りながら深海艦隊前衛からの攻撃を受ける盾として砲撃戦を繰り広げ、二人の鬼が放つ熟練艦載機は同じく航空戦力強化の為に教導を受けていたクェゼリンの空母機動部隊が優勢に一歩届かないまでも、ピンポイントで要所を潰していく。

 

 そして(潜水棲姫)からの雷撃を警戒して、クルイから選出された水雷戦隊が舞鶴とクェゼリン艦隊を護衛しながらも対空補助や囮を努める。

 

 どういう形で意思疎通を取っているのかは謎だが、それは誰かが動けば瞬時に誰かがカバーに入り、相手から来る猛攻に対し瞬時に対応する動きを見せる。

 

 派手さもインパクトも無い、だがしかし艦種も所属も違う十八人の艦娘達が織り成す統率の取れた動きは、佐世保から来た司令長官付け秘書艦の初霜から驚愕の相を引き出していた。

 

 

「個の戦力差は数の戦略で対処するというのは定石だけど、あの規模の深海棲艦上位個体達を相手に、それも目視距離の……遮蔽物もないこんな海で成立させるには、単純に連合艦隊三つは必要な筈……」

 

「まぁ定石(・・)って言うんならそうなるわよね、でもそんな程度の物でいいならわざわざウチみたいな専門機関なんかに教導させなくても、前線に暫く放り込んでおけば事足りるわ」

 

「……確かに、それなりに経験を積んだ艦ならそれ位は出来るかも知れませんね」

 

「何事にも言えるけど、現場で覚える物はどれも有用という反面、無駄をそぎ落として出来るだけ物事をシンプルにしていく傾向にあるわ」

 

「そうですね、やる事が増えればミスが増える訳ですし、やる必要が無い事は切り捨てて隙を無くすのが肝要だと思います」

 

「その考えは間違ってないわ、でもそれじゃ力量差がある相手にはどんな手を使っても勝てない」

 

 

 戦いの推移を見逃すまいと演習を目で追いつつも、初霜は隣で解説をする叢雲の言葉に耳を傾け思考をそちらに向けるという器用な事をしていた。

 

 佐世保のツートップと言われる初霜と若葉、どちらも駆逐艦としては熟達した、そして手錬(てだれ)の艦と言われているが、実際この二人は戦い方も考え方も正反対にある。

 

 若葉は直感的な物に頼り戦うタイプの武人肌、初霜が理詰めで行動する頭脳派で知られ、今回の様に視察という名目で他所へ出る時には大抵初霜が情報収集に当り、若葉が司令長官に随伴してストッパーの役割に就くというのが佐世保のデフォルトになっていた。

 

 

「戦力や性能に勝る者に対して、身体能力が殆ど画一化されている艦娘が対するなら単純に数を揃えるしかない、でも現状では深海棲艦の総数に対して私達は劣勢と言うにはおこがましい程に差がある状態にあるわ」

 

「……そこで戦術ですか」

 

「そ、それも相手の手の内を徹底的に知り、分析し、自分達と対比した上で何が出来るか、それを突き詰めた上で完全な役割分担で行くしかない」

 

「でも艦隊に居ながら戦う以外の役割を担ったり、囮のみに専念するなんて機会は余りありませんから……言葉だけでは無駄が多い風に取られるかも知れませんね」

 

「あれは三艦隊で戦う場合の(・・・・・・・・・)戦略よ、他にも連合艦隊、そして一艦隊用の戦い方を仕込んでいるわ、其々の戦い方には其々の特徴はあるけど、全員が一極集中するなんてケースはまぁ稀ね」

 

「しかしこちらが一艦隊のみで対する場合、姫鬼で固めた艦隊に勝つのは難しいのではないですか?」

 

「正直連合艦隊でも難しいわね、でも戦い方を知っていれば撤退する時の確率も上がるわ、そして様々な上位個体に対するやり方を知っている者が増えていけば、時間は掛かるけど数はそのままに軍の戦力は増していく」

 

「なる程、今はそういう戦い方が出来るのはあの三艦隊だけですが、その者達が他の者達に知識面だけでも伝えていけば……」

 

「えぇ、鼠算的にそういう知識は広がっていく、そしてその知識は私達すら気付いていない新たな戦略を生み出す素地にもなる」

 

「拠点によって運用や環境が違いますしね、ここで教導を受けた方達は経験を元に其々の艦隊に合った戦い方をする事になる……ああ、なる程、ある意味ここの卒業生達が帰った拠点では彼女達が教導艦として機能するんですね」

 

「それだけじゃないわ、現場からこっちに帰って来たデータは更に先鋭化されて、次の教導へ反映される、私達があの艦隊から勝利判定を捥ぎ取るのに要した期間は半年、でもあの子達は三ヶ月でそれを達成した」

 

「半分ですか、回数を重ねればペースは緩やかになるでしょうけど、教導のペースが短くなっていくとすれば、全ては今以上に加速していく……そう聞けば教導特化という拠点があるという利点は確かにありそうです」

 

「最終的には一ヶ月を目指すつもりだけど、今はこれが限界ね」

 

 

 大坂鎮守府という拠点にデータが集約され新たなる戦略が生まれる、そして教導を受けに来た者達にそれが仕込まれ、巣立っていった者達が現場でそれらを実証しつつまた大坂鎮守府へデータを上げていく。

 

 その循環した輪が延々と続けば戦力として及ばなくとも、戦略という面では常に進化していく為徐々に絶望的な差が縮まるかもしれない(・・・・・・)

 

 余りにも先が長く、そして途方も無い計画を頭の中で整理する初霜であったが、それが眉唾と一笑に伏すには目の前の光景は異質だった。

 

 派閥や拠点の縄張り意識が邪魔をしてそれらの伝達は上手く回らない部分も大きいだろう、しかしそれでも僅かながら、今までより確実に前に進めると言える根拠には成り得ると、今も業火瞬く海を見つつ初霜は色々な情報を頭の中で咀嚼していくのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「……色々と予想はしてたが、まさかこう色々が積み重なるのは想定外だった」

 

 

 執務棟の応接室脇に設置された関係者控え室では若葉が苦い相を表に貼り付け、対面に座る時雨に向ってぼやきとも取れる言葉を口から漏らしていた。

 

 現在二人の主である髭眼帯と九頭は応接室で会談中にあり、それに伴っていた二人だったが途中で退室を促され、現在は控え室で待機中にあった。

 

 

「九頭司令の言葉に随分とすんなり従ったから、こっちは何と言うか……意外だなと思ったよ」

 

「あー、いや、基本はクズロリなんだがな、仕事モードに入るとアレは極めて優秀だ、そしてあの部屋には暴走源(くちくかん)も無いしまぁいいだろうと判断をした」

 

「な……なる程」

 

 

 若葉の言う仕事モードでは優秀と言う言葉よりも、くちくかんがいないから退出に従ったという言葉に時雨は微妙な笑顔で返しつつ、湯飲みの中身を啜って文字道理茶を濁していた。

 

 

「ウチの提督がああいう席に付く時は良く随伴するんだが、あれだけ本気モードを発動した上に人払いをするなんて数える程しか無かったからな、まぁそれなりに驚いてはいる」

 

「そうなんだ、ウチは秘密主義的な面が強いからこういうのは結構あるかな」

 

「そこはスタンスの違いなんだろう、それでも真面目モードで提督があれだけ食い気味になるのは珍しい、余程そちらの司令長官がやり手でなければああはならないさ」

 

 

 佐世保鎮守府では九頭が司令長官になって以降、内政拠りの運営方針が採られ、また必要最低限の対外処理とピンポイントな人脈の太さのみで全てを賄っていた。

 

 九頭が感情的な面での軍務遂行を嫌う為、他所とは極力利害関係のみで繋がるという方針を軸に、それでも有能であったが為に戦力、経済面は驚くほど磐石に整えられる事になる。

 

 対して人の縁や(つて)を最重要とする諜報畑の吉野とは真逆のやり方、それはある意味いつも何かしら対外的な問題を抱える大坂鎮守府と佐世保鎮守府の内情にも当てはまる状態とも言える。

 

 

「艦隊運営の経験不足を熟練の艦で賄い、拠点運営に長けた司令長官で回している拠点だと……そう認識して来たんだが、蓋を開けてみればとんでもなかった」

 

「え、いやそれ間違ってないと思うけど、提督は基本現場は誰かに任せて大抵は裏方に回ってるし……」

 

「そこだ」

 

「そこ?」

 

 

 首を傾げ頭に「?」マークを浮かべる時雨に、若葉はビシリと指差しながら苦い表情で睨みあげる。

 

 

「鎮守府に所属する艦娘殆どとカッコカリをして、あまつさえ深海棲艦すらそういう処理をする、そして現場周りは艦娘に丸投げというやり方、そこから答えを導くなら相当強固な規律と強権で部下を縛り、ガッチガチに管理された運営をしているのではという予想してたんだ」

 

「ああ、そういう……」

 

「で、いざ邪魔してみればガッチガチどころかユルユルもいいところだ、寧ろ下の者にやりたい放題をさせている」

 

 

 実際の処九頭という男へ対し髭眼帯はノーマークに近い状況にあった訳だが、それは放置していた訳では無い。

 

 前提として対立派閥の拠点であった事と、対外的な行動を避ける傾向の運営にあった佐世保に対し枝葉を伸ばす機会も必要も無かったという理由が先ずあった。

 

 次いで九頭自体の能力の高さが対外的な関係を嫌う部分に注がれていた為、吉野の枝葉に掛からないという作用も生み出していた。

 

 更にわざと色々な情報を垂れ流している反面、肝心な部分は吉野が全力で印象操作をしている大坂鎮守府のやり方は、九頭からしてみても中途に触ると極めて面倒臭いという考えを誘発し、結局は偏った能力が異様に高い二人を無意識的に無視し合うというおかしな状態を作り出していた。

 

 そんな状態から接触を果たした二つの鎮守府は、現在苦々し気な若葉の視線が時雨が着るワンコメイド服にロックオン状態になる程には困惑を含んだ物を生み出すという流れに繋がっている。

 

 そして対立派閥にある佐世保に入る情報は、やはり艦政本部筋の物がメインになる。

 

 本気で調べたなら九頭の能力を以ってすればある程度の内情は掴めた筈であったが、大坂側から持ち掛けられた突然の邂逅という現状は、吉野のガードする部分を覗き見る為には時間があまりにも無さ過ぎた。

 

 その為九頭側には艦政本部筋から流れてくる情報しか手元に無く、しかし実際吉野と接触した九頭の手応えは明らかにその情報とは違う物にあった為、やや強引ではあったが自身が大坂に乗り込む事で少しでも多くの情報を得ようとした。

 

 と言うのが九頭的に今回の視察目的の五割を占めていた。

 

 そして残りの五割は何だったかと言うのは最早お察しではあったが、敢えて言うならむちゅき型フルコンプ状態の友ヶ島警備府が大坂鎮守府に取り込まれているからとかは口が裂けても言えない若葉であった。

 

 

「ユルユル……なのかな?」

 

「自覚は無いのか? 鎮守府の中をそんな特殊な着衣で艦娘が闊歩するなんて聞いた事が無いし、工廠でロボを作るとか風呂が健康ランド染みているとか、そんなの普通無いぞ」

 

「て言うか、僕としては秘書艦が提督を殴り飛ばすなんて事が驚きなんだけど……」

 

 

 双方の呟きは至極真っ当な物であるのは間違い無い。

 

 しかし双方の現状が軍という組織内に於いて、非常識極まりないのも間違い無い。

 

 繰り返し言うが双方の言っている事は常識の範疇にあるが、其々がやっている事は非常識な状態なのである。

 

 

 そんな有能である指揮官が差配する、部分的にメーというアレな拠点同士が邂逅した結果、それらのプラスとマイナス其々の部分が大幅に増大するという、色んな意味でとんでもない事態へとこの先発展する訳であるが、この時二人はその事に気が付いていなかったのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「そんな訳で飯野司令(クェゼリン司令長官)日下部司令(クルイ司令長官)は明朝〇八:〇〇(マルハチ マルマル)には到着予定との事で、お二方が到着予定の時間から余裕を以って一〇:〇〇(ヒトマル マルマル)から卒業式を執り行う事になっています」

 

「あ~……うん、それは予定通りという事だよねぇ……」

 

「来賓は例の件がある関係上前回よりも絞らせて頂き、ほぼ関係者のみという事になっています、しかし舞鶴、クェゼリン、クルイ三拠点の司令長官に加え、今回は九頭司令もご出席との事ですので警戒自体は最高レベルに設定しています」

 

「へぇ~……そうなんだぁ」

 

 

 艦娘寮大広間。

 

 業務が終了し、メシ・フロが終わったプライベートタイム。

 

 艦娘特殊兵学校の一期生の卒業式を明日に控えた現在は、たれぱんだジャージというラフな格好の髭眼帯の前で、これまた私服に身を包んだ大淀が最終的に決定した予定を伝えに髭眼帯の前にシッダウンしていた。

 

 海外から来る関係者との最終調整が整うのに時間は掛かったが、概ね予定通りに事が推移している状態に大淀はメガネをクイクイしつつ、段取りを進めた責任者としてドヤ顔で報告を伝え終える。

 

 

「あ~うん、色々あって殆ど任せてしまったけど、流石大淀君だねぇ……」

 

「はい、計算通りです」

 

「うん流石だねぇ……えっと、うんその、まぁアレと言うか大淀君?」

 

「はい、何でしょう提督」

 

「その……その格好は……」

 

 

 大坂鎮守府艦娘寮大広間。

 

 その用途は主に皆で朝食を摂る為に利用されているのと、たまに行われる宴会の場所として、そして毎日夜のプライベートタイムには艦娘提督分け隔てなく、其々が寝るまでの間にダラケる為の社交場として利用されている。

 

 大抵は私服か、パジャマという名の着ぐるみという格好がデフォの者達が集う総畳敷きのそこは、現在冬である為こたつが幾つか点在する癒しの空間になっていた。

 

 そんな中、提督ゾーンと呼ばれる八人が入れる大型コタツの前で、たれぱんだジャージの髭眼帯の前ではピシッとした正座をしつつクイクイとメガネをいじるoh淀の姿。

 

 ただその行動は24時間運営の大坂鎮守府では業務報告が後回しになり難いという特殊な事情を抱えている為、ある意味いつもの事と言える状態ではあったが、光景はいつもの物とは言い難い状態になっていた。

 

 

「ああこれですか、提督は以前免許センターの視察をした際、教官達が香取タイプの礼装を着用する許可を出された件は覚えていらっしゃいますよね」

 

「え、許可したと言うかなんか気付いたらそうなってたと言うか……」

 

「それで後日、その礼装を着用した教導結果のデータが上がってきまして」

 

「え、教導結果のデータ? なにそれ提督初耳なんだけど」

 

「普段とは違う出で立ちによる軍務に就く事で戦意が高揚され、それによる効果ではないかと思われる教導成果の微増が確認されました」

 

「うそん!? マジで!?」

 

「はい、まだデータとしての母数は少ないので確実とは言えないのですが、実験的に着用時と未着用時の差を対比した際、明らかにデータの違いが見られました」

 

 

 心なしメガネのクイクイ度を増したoh淀は、ドヤ顔を盛大な物にしつつ髭眼帯に諸々の報告を述べていた。

 

 

 島風のコスチュームに身を包みながら。

 

 

 島風とはぜかましとも呼ばれる、あの速さに囚われたハレンチ娘の事であり、oh淀が着込むソレはあのハミパンと言うか、パンツの体を成してないと言うか、見せパンと仮定したとしてもそれは無理があるパンツなんじゃないかと言うあの着衣。

 

 それを装備し頭に例のリボンを乗せる事も忘れない黒髪メガネは、クイクイしつつドヤ顔で髭眼帯の前に正座していた。

 

 

「……えっと、じゃ、oh淀君がそんな狂ったコスしてるのは……」

 

「流石にデフォルトの制服では無い為戦闘には向きませんが、メイド服と同じ生地で縫製している為日常生活では支障がありません、そしてこういう着衣を纏った場合、プライベート時に於ける個々の気分が高揚状態にシフトする為艦隊運用に於いては有用であると結論が出ましたので、希望者には試験的に着用を許可してみました」

 

 

 そんな事後報告という物にプルプルする髭眼帯は、そんなコスをしニコリと微笑むoh淀を直視出来ずにプルプル震えながらプイッと視線を逸らした。

 

 確かにoh淀、そしてあの明石という二人は一見まともな格好をしてると見せかけて、スカートの両サイド、主に恥骨辺りを部分的にカットしたブツ、所謂"スケベポケット"を備えたスカートを履く艦娘ではあった。

 

 真面目系にそんなアレという対比は背徳的かつギャップ萌えというあざといコスとも言えたが、それは限定した部分のみというシチュが織り成すインパクトがあってこそのコスである。

 

 それが何故、よりにもよって部分的な一部だけ(・・)を残しそれ以外の殆どをキャストオフしちゃう、平時とは真逆の攻めとも言うべき格好を0h淀がしているのか。

 

 そんなワケワカメな状態に思考が追い付かず混乱する髭眼帯の近くに、誰かの足が見える。

 

 誰だろうと視線をゆっくりと上げていくと、そこには赤いニーハイソックス、錨の意匠が施されたガーターベルトに、半スケのケシカランワンピという着衣が徐々に見えてくる。

 

 

「え、なに天津か……ぜ?」

 

「五航戦の子なんかと一緒にしないで」

 

 

 そこには腰に手を当てたあの天津風ポーズで、しかも天津風コスをした一航戦の青いのが髭眼帯を見下ろしていた。

 

 

「……五航戦の人たちはそんなハレンチな格好はしないと提督は思います」

 

「良い装備ね。さすがに気分が高揚します」

 

「いやなんでキラ付いてるの!? てかムダにポージングしないで君!? 色んな意味でそれアウトだから!」

 

 

 プルプルしつつ、スケスケワンピをピッチリ着るBlueに全力突っ込みを入れる髭眼帯に、トントンと誰かが肩を叩く。

 

 それにどうしたのかと振り向いた先に居た者は、黒い半スケタイツに、裾の端を縛ったセーラーの上着だけというアレな着衣を装着していた。

 

 それは大坂鎮守府では天津風とほぼセットで行動している時津風。

 

 

「南雲機動部隊、出撃します!」

 

 

 のコスをした一航戦の赤いのだった。

 

 

「その格好で南雲機動部隊を名乗るのは止めて差し上げて赤いの! お願いっ!」

 

「この勝利で慢心しては駄目。索敵や先制を大事にしないと……って、頭の中で何かが……」

 

「誰に勝ったって言うの!? 寧ろその格好慢心っていうレベルじゃないよね!? てかそんなコスでそのセリフは危ない人筆頭なイメージしか湧かないんじゃないかって提督はとても心配になります……」

 

 

 ぜかまし(oh淀)、あまつん(Blue)、子犬(時津風)(赤いの)という、単純に他の艦の制服を着ただけなのに痴女という部類にカテゴライズされてしまうのではというトリオに囲まれ、髭眼帯のプルプル度は最早限界値に差し掛かる。

 

 そんな時、背中に何故か冷たい視線が突き刺さり肩をビクリとさせる髭眼帯。

 

 経験上こんな時のバックアタックという物は大抵碌な事が無い、寧ろオチ的爆死が来るのがほぼ確実だった為、覚悟を完了した髭眼帯はジリジリと後方を確かめる為に振り向く。

 

 そこには生足がスラリと伸び、時津風に酷似したセーラー服を纏った上半身が見える。

 

 常々思うが、それってスカートを履き忘れてるのではという気がしないでも無いアレな出で立ちの制服、それは陽炎型八番艦雪風の物だった。

 

 

 そしてここに来てそれは誰かのコスでは無く本人が登場するという事態になり、何故かジト目で口を△にしながらゆきかじぇは髭眼帯の真後ろで正座していた。

 

 

 なぜよりにもよって狂った風トリオの前で、モノホンのゆきかじぇが降臨して髭眼帯の退路を絶っているのか。

 

 確かにいつもゆきかじぇは髭眼帯が大広間にINしている時はちょっとだけ離れた位置で常駐しているが、接近してくる事は稀というレアキャラポジである。

 

 それが何故という思考を巡らせる前に「ヘンタイ」「ヘンタイ」と呟きつつ指でピシピシと髭眼帯の背中を弾きだすというカオスが開始される。

 

 ある意味それは、色々間違った風系包囲網が出来上がってしまった瞬間でもあった。

 

 

 そんな異空間へ唐突にカットインしてくるミュージック。

 

 軽快かつどこかで聞いた事のある特撮染みた音楽は、確かゴ〇ンジャイというコントで流れていたヤツではと髭眼帯は眉根の皺を深くする。

 

 狂った風達がポージングし、ゆきかじぇにピシピシされ続けている髭眼帯の前には、畳の上を横にズザザザとスライドしてくる例のヤツの姿があった。

 

 

「フラットドラゴン!」

 

 

 例の仮面に何故か千歳の制服を着たドラゴンが獣のポーズで現れる。

 

 

「え、ドラゴンそれ千歳おねぇの制服……」

 

 

 いつもとは違うパティーンに困惑する髭眼帯をおいてけぼりにして、間髪入れずズザザザとスライドしてタウイタウイが鳳凰のポーズで現れる、千代田の衣装に身を包んで。

 

 

「フラットフェニックス!」

 

「あ、今回はそういうパターンなの? てか君達その衣装着るのはいいんだけどその……属性が違うと言うか何と言うか……」

 

 

 軽空母でも割とムチムチと言うかそれなりにナイスバディという千歳姉妹コスの二人に困惑の色を深める髭眼帯。

 

 確かにそれはインパクトがあるが、それって自虐的なネタなのではと髭眼帯は思ったが、それを言っても良いかどうか迷っている間に更なる戦士がズザザザとサイドスライドしつつ畳を滑ってきた。

 

 

「フラットクレイン!」

 

 

 一航戦の青いコスをしたズイズイが荒ぶる白鳥のポーズを決める。

 

 

「えっ、なにそれは……て言うかなんでズイズイ青いヤツのコスしてんの? て言うかマジナニコレ」

 

「しっ……仕方ないでしょっ!? 今回はそういう趣旨なんだからっ!」

 

 

 ズイズイの言う趣旨はなんとなーく察する事が出来たが、何故ノット属性のコスまでして自虐行為に走るのかと怪訝な表情で三人を凝視する。

 

 そんなトリオに四人目がゴレ〇ジャイのテーマに乗りつつスライド入場してくるのは最早予定調和と言えた。

 

 

「フラット Soup Makitamago!」

 

「あ~今回はそっちか~ グーグル先生で出汁巻卵って検索したらトップに来るもんね~ そっかぁ~そっちかぁ~」

 

 

 相変わらずやたらと長いネームのたべりゅはシャチのポーズでビタリと停止する。

 

 何故か祥鳳コスというアレなカンジの格好で。

 

 確かにドラゴンやフェニックス、そしてクレインのコスを見ればもう傾向と予想はバッチリではあったが、まさかそれに続く者が姉妹のコスをしてきたという予想外に、思わず髭眼帯は首を傾げた。

 

 

「フラットグリーン!」

 

「って葛城君いつの間に!? と言うか随分とはっちゃけたねと言うか……ねぇ、それってもしや……」

 

 

 いつもの捻りの無い名前のグリーン(葛城)は、ブルータス的なポージングをビシリと決める。

 

 雲龍型長女が着るあのキワドイ衣装に身を包んで。

 

 

「我ら航空戦隊フラット5!」

 

「ちょっとドラゴン……」

 

「あーあー判っとる、今回の衣装の件やろ?」

 

「……ああうんその……えぇまぁ、はい」

 

 

 それはいつもの流れとも言えるカンジで髭眼帯を中心とした状態で織り成す扇状の正座という布陣がそこに出来上がる。

 

 因みにその向こうでは一航戦コンビにoh淀の風トリオが様子を伺い、ゆきかじぇが未だピシピシ続行中なのは言うまでもない。

 

 

「えっとな、今回のコスの話があった時にな、皆でどないなコスやろかって相談してたんよ」

 

「あーうん、提督的には先ず相談する以前にこういう催しはちょっとどうかなって言うか……ほら、お客さんも居る訳だし、ねぇ?」

 

「ほんでその相談してた時にな、うち気付いてしもたんや」

 

「……何が?」

 

「いつもいつもほら、うちらはバイーンとかボイーンとかのヤツらに対抗意識燃やしてただけで、そいつらの気持ちって考えた事一度もなかったなぁて」

 

 

 争いと言う物は、極論で言えば殆どの場合嫌いという感情が其々の根底にあると言える。

 

 嫌いが過ぎれば憎しみとなり、それらに呼応する者が現れれば怨嗟の円は広がっていく。

 

 憎いという感情は相手を滅するという行為でしか消化されず、多くの場合それを達成する事でしか争いが解決されないという不毛な結末しか待っていない。

 

 

 また正義と正論というのは人の数と同じ程あり、自分の正義が誰かの正義になるとは限らず、逆の場合が多いのが世の理でもある。

 

 

 だがそこで一歩踏み込み相手の立場に立てたとすればどうだろう? それは難しく不可能に近い行為だが、自身の気持ちではなく、相手の気持ちになれたなら?

 

 全てとは言えないが、それは自身の考えが「自分の都合」から出る物だと確認出来、同時に「思ってもみなかった相手の気持ち」に気付く事で争いの連鎖は止められるのではないか?

 

 それらはとても難しい事というのを髭眼帯は知っていた、だがしかし今ドラゴンが言っているのは、普段は敵視する者達の気持ちになり、そして客観的に自分達の行為を振り返るという建設的な行動の第一歩なのではないのかと真剣に話へ没頭し始める。

 

 

「ほらアレや、「敵を知り己を知れば百戦殆からず」って言葉もあるしな」

 

「え~ 敵を知るぅ? コスを着てぇ?」

 

 

 なまじ先読みと理詰めで考える思考が仇となり、一瞬でもプラスへ傾いていた自分の考えが見事に打ち砕かれた結果、髭眼帯は怪訝な表情になる。

 

 確かに龍驤という艦娘は軽空母であり、同じカテゴリで分類すればヒエラルキーの頂点は確かに千歳おねぇになってもおかしくはない。

 

 しかし続いて千代田コスに挑むのはタウイタウイ、彼女は装甲空母、類別してしまうと彼女は正規空母枠なのである。

 

 それがどうして千代田という軽空母をターゲットにしているのだろうか。

 

 更にズイズイは例の青いヤツコスをしており、そのライバル視している人物本人がゴゴゴゴという効果音を背負いつつ、半スケのあまつんコスで彼女を絶賛見下ろし中であった。

 

 そんなフラット5の面々を順に見ていき、髭眼帯はたべりゅとグリーンの辺りで怪訝な表情を更に深めた。

 

 

「ねぇ……君達」

 

 

 髭眼帯はそこまでしか声を掛ける事が出来ず、目頭をそっと押さえて視線を逸らしてしまった。

 

 それと同時に何故かフラットSoup Makitamagoとフラットグリーンは俯いてプルプルを開始してしまった。

 

 嘗て「兄より優れた弟など存在しない」という名言を残した世紀末の人が居たが、「姉より優れた(意味深)妹など存在しない」という法則はやはり避け得ぬ運命なのだろうと髭眼帯はプルプルした。

 

 

 そんな姦しい喧騒に包まれる大広間の中心は、提督を中心とした僅かの範囲が無言の世界となり、暫くはゆきかじぇがピシピシする音が支配するだけの世界となってしまった。

 

 

「ふっ……ふぉぉ……ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 

 そんな物凄く気まずい空気を切り裂いて、奇怪な声が響き渡る。

 

 声の主は六尺五寸を超える長身の、筋肉で身を固めた丸坊主。

 

 髭眼帯のラフな格好に比べ、威圧度が更に増してしまうかの如き着流しに身を包むその男。

 

 佐世保鎮守府司令長官九頭路里(くず みちさと)が両の拳を握り締め、今にも誰かを殺してしまうのではという険しい表情でコタツの向こうからぬらりと現れた。

 

 

「愛らしい天使達のオーラを感じて(いざな)われてみれば、まさか……その者達は……!?」

 

「えぇ~ 天使たちぃ? (いざな)われるぅ? なにがぁ?」

 

「バ……バカナッ!? くちくかんのオーラを発する空母だとぉ!? くっ……我が鎮守府では見られなかったこの反応は一体何だっ!? 確かに……確かに身体的特徴はマイスウィートハニーズに通ずる物があるのは認めよう、しかしそれはあくまで擬態してるだけで真なる存在ではない筈、なのにどうした事だっ!? 拙者のセンサーにビクンビクンと反応するこのくちくかんオーラはっガフゥッ!?」

 

 

 筋肉ダルマの慟哭は初霜ふもふの超低空ドロップキックを受けて掻き消され、崩れ落ちた膝上に駆け上がってきた若葉タンが放つシャイニングウイザードの追撃が顔面に入る。

 

 

「いきなりっ、なに特大の地雷をっ、踏み抜いてっ、いるんだっ、おまえはっ!」

 

「待つでござるよ若葉タンッ!? ほら感じるでござろうっ! あの五人が持つ……見渡す限りの水平線が放つが如きツルッとしたオーラをっ!」

 

 

 うずくまった体勢であっふぅ、オォンという声と共に狂った理論が筋肉ダルマから漏れ出す。

 

 そんな周りがドン引きする中、龍驤おねぇがスっと一歩前に出て歯を見せるが如き獰猛な笑いを湛えながら折檻ご褒美中のクズロリを見下ろす。

 

 

「アンタが例の佐世保から来た中将はんか」

 

「ふっぬぅ、それが、どうしたと、言うで、ござるかっ」

 

「アンタがうちらに何を感じたんか知らんけどな、もしうちらがアンタんとこの連中に無い何かを持ってるとしたらや……それは決意やっ! 極限まで贅肉をそぎ落とし……心までソリッドになったうちらの決意は並大抵のもんやあらへんでっ!」

 

 

「くっ……空母如きに何を思う物もないがオヒョゥッ!? その心意気や良しっ! アッフゥ!? 真っ直ぐな心はフラットな体躯に宿るっ! それもまた真理っ! ぬふうっ!? 流石同士吉野(うじ)が鍛えし者達っ! 空母にすらくちくタマスィーを仕込むとは真に天晴れですぞぉぉぉぉぉー!」

 

 

 龍驤おねぇのアツき言葉に、クズロリが同調するかの如き言葉を秘書艦二人に嬲られつつ恍惚の表情を湛えながら返す。

 

 

 こうして前方には涙を誘う的な平らな五人が並び、その向こうにはぜかましコスoh淀、あまつんコスの青いのと子犬(時津風)コスの赤いのが配備され、背中ではピシピシするゆきかじぇという包囲網の髭眼帯の脇では、うずくまり珍妙な声を挙げくちくかんから折檻を食らう筋肉ダルマがセットされるという、これまでに類がない混沌が大広間に顕現してしまったのであった。

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 ただ言い回しや文面は意図している部分がありますので、日本語的におかしい事になっていない限りはそのままでいく形になる事があります、その辺りはご了承下さいませ。

 それではどうか宜しくお願い致します。



※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。