大本営第二特務課の日常   作:zero-45
<< 前の話 次の話 >>

292 / 310
 家なき子の提督の話は単発でした。

 長々と続けるのはね?

 要望があれば続きはあるよ、でもポロリはないからね?


 それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。

2018/10/09
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きましたリア10爆発46様、柱島低督様、有難う御座います、大変助かりました。



動き出す西蘭、そして例の一族。

「スリランカ島沖調査……ですか?」

 

 

 西蘭泊地奉行所(執務棟)地下三階。

 

 有事の際に全稼動する戦闘指揮所では、吉野が秘匿回線を使用した映像通信によって大本営からの通達を受けていた。

 

 

 西蘭島、旧ニュージーランドと内地は9,300kmの距離があり、その内4/5は海底に敷設された物理回線で、残りの1/4は大深度部分を避ける為に短距離無線を利用して繋がっている。

 

 これは海底ケーブルの敷設距離を少しでも短くする為と、海軍の制海圏を縫う様に配置する為に避けられない形の敷設であると言えた。

 

 この通信網に配される無線区間の大部分は海湊(泊地棲姫)のテリトリー内にある為彼女の協力の元、その範囲は意図的に電波障害は排される事で漸くその通信網は稼動するに至っていた。

 

 

 そんな諸々の無茶をした連絡手段で繋いだ大本営からの通達は、坂田 一(さかた はじめ)海軍元帥大将の苦虫を噛み潰したかのような相をスクリーン一杯に映し出すに至っていた。

 

 

「うむ、現在日本と欧州を結ぶ海路の内、ラッカディブ海からスエズ、そして地中海に至るまでの制海圏で今まで確認された事のない種の上位個体が確認されていてね、欧州連合でも急遽調査艦隊を編成して事に当たるそうだが、君も知っているようにその海域の内アラビア海以東へ足を伸ばせない状況になっておって中々厳しいものになっているのだよ」

 

「ああ……確か『イエメン協定』の絡みですか」

 

「そうだ、欧州連合発足時に交わした協定の為にかの連合は、現在艦娘を含んだ戦力を紅海から南に出せない状態にある」

 

 

 イエメン協定。

 

 艦娘を戦力として抱える欧州は其々の国所属の戦力を出し合い連合という形で戦力を整えたが、それは同時に北の大国、ロシアからの決別という形を取るに至った。

 

 自立した制海圏の維持が可能という戦力は、それまでにはなかった国々を繋ぎ、アラビア諸国らの産油国も取り込んで一大経済圏を成す事になる。

 

 

 ただ産油国側にもそれまでのしがらみや事情があり、イラク以東のイラン、アフガニスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン等の国は現在もロシアからの武器供与や経済支援に頼っている面があり、欧州連合との関係は冷え切っている状態にある。

 

 

 これらの事情が絡み、中東を割って政治不安の火種となりそうな事案を少しでも抑制する為に、欧州連合は所有する海軍戦力の内、艦娘を含む戦力を紅海南端アデン湾より向こうへ出さないという確約の元、ロシア側にある石油産出国との関係維持に努める事になった。

 

 

 それらの取り決めがなされ、協定を締結した場がイエメンであった処からこれらの協定は『イエメン協定』と呼称される。

 

 

「うむ、その協定の為アラビア海から東の制海圏は日本が受け持つ形になっているが、今回問題となるスリランカ周辺の調査を実施するのはタイミング的に厳しい状態になっていてね……」

 

「あー……なる程、そういう事でしたか」

 

「そちらもまだ地盤固めの最中にあり戦力の抽出は難しい状況なのは判っているんだがね、こればかりは無い袖は振れないという事で西蘭泊地の戦力を出して貰えんかと、現状は内示という事になっているが、そちらの返答次第ではこれらの話は正式な作戦として発令される事になる」

 

 

 現在海軍は欧州連合と米国共同で艦娘のレンドリースを交わし、戦力調整の只中にある。

 

 それは制海圏の維持に必要な戦力、つまり船団護衛と海域維持の為の首魁を排除する戦力はあっても、それ以外の大規模作戦を実施する戦力は調整中にある状態と言えた。

 

 

 練度もそうだが、艦隊としての連携がまだ整っておらず、現在は全軍に先駆けて態勢を整えていた大本営直下の艦隊と、旧慎重派の拠点がその辺りの維持を支えている状態であった。

 

 

 更にアラビア海近海と言えば内地から最も離れた制海圏であり、そこで長期作戦を実施するには現在海軍は致命的な問題を抱えている。

 

 

 艦娘が軍事行動をとる際必要とされる物は、燃料、弾薬、修復の為の各種物資や施設、そして糧食である。

 

 その内弾薬だけは現地調達ができない。

 

 それは日本の海軍所属の艦娘は、内地で生産された弾薬しか使用が出来ないという事情があるからである。

 

 

 アラビア海直近の拠点で大規模な補給が可能なのはリンガ泊地しかなく、スリランカ周辺のみの調査であればまだなんとか往復は許容できる。

 

 しかし調査がスリランカ近海のみならずアラビア海全体に及ぶとなれば、補給の為に一々リンガへ戻るのは時間的な無駄が多過ぎる。

 

 

 だがこの問題は西蘭泊地にとって障害にならない。

 

 

 何故なら、西蘭には深海棲艦上位個体を戦力に持つという特異性があるからである。

 

 

 深海棲艦とは物資を加工なしでそのまま吸収し、体内で弾薬を生成可能という生態を持つ。

 

 それは艦娘の行う補給より少しだけ時間が掛かるものであったが、規格化された弾薬を必要とせず、単純に弾種を個別に用意しなくとも良い分運搬面で、そして活動場所という面でも優れていると言えた。

 

 また朔夜(防空棲姫)達が麾下に入って以降の調査で判明した事だが、彼女達深海棲艦は、艦娘用に作られた弾薬も取り込む事が可能で、更にはその状態での吸収は単純に未加工の物資を取り込むよりも体内で弾薬を生成する時間が短いという事が判明している。

 

 当然吸収する弾薬は内地、外地という縛りには左右されない。

 

 

 つまり深海勢を戦力に持つ西蘭泊地は、補給という面に於いて場所を選ばないという艦隊運用上の強みを持っていた。

 

 

「もし作戦が実施された場合、アラビア海に入った時の補給はどういう形になるんでしょう?」

 

「リンガからスリランカへ幾らかと、欧州側からはソトコラ島で補給は受けられる形にになっている、恐らくどちらを利用するかの判断は君達に委ねる事になるだろうね」

 

「約1,900海里範囲の両端に補給ポイントが存在するという事ですか、なる程……それならなんとかなりそうですね」

 

「まだ予想という域は出んが、調査期間は一ヶ月程度、投入する深海勢の数にもよるが、弾薬を母艦に満載して抜錨すれば現地での補給は最大二回辺りといった処だろうか」

 

「そうですね、一旦スリランカ周辺で詳細調査を行い、一回目の補給が済み次第アラビア海以東の調査を実施、ソトコラで補給を受けた後は復路を辿りつつ虱潰し……という形になると思います」

 

「ふむ、ならその辺りに対応できるよう欧州側と調整しておこう、作戦の辞令は追って発布するとして、開始は十月半ば辺りになると思うが、時間的に実施は可能かね?」

 

「えぇ、問題ありません」

 

「うむ、それでは宜しく頼む」

 

 

 こうして初めての春を迎えた西蘭泊地は、凡そ7,600海里離れたアラビア海に向けて初めての大遠征をする事となるのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「まぁそういう事で今は内示の状態だけど、来月の中頃にちょっとした作戦の指令が下りる事になっちゃってね」

 

「ふむ……欧州側の要請で場所はアラビア海か、なる程な」

 

「今んとこ決まっているのは作戦が実施される海域と、現地の補給ポイント、後はちょちょいとした取り決めがこれから行われるらしいんだけどねぇ」

 

 

 奉行所(執務棟)にある提督執務室には艦隊総旗艦の長門を筆頭に、各課の代表が集い坂田から通達のあった件に対しての報告と、それに伴う準備に於ける話し合いがなされていた。

 

 

「ここにある新手の上位個体ってまだ詳細は掴んでないんやろ? 朔夜(防空棲姫)はどんなヤツか知らんのか?」

 

「残念だけどテイトクの麾下に入ってからこっち、殆ど遠出してないからその辺りは判んないわね」

 

「まぁウチとしてはその辺り、調査と同じくらい重要な部分になるんだけど」

 

「あー、今回の作戦も鹵獲ミッションになるワケね?」

 

「そそそ、ウチは現在絶賛戦力拡大に取り掛かってるからこの辺りの鹵獲チャンスは見逃せないしねぇ」

 

 

 現状西蘭へ居を移した吉野達は、国という縛りから半ば脱した状態にあった。

 

 それと同時に国という庇護下にない現状、自身の守りは自身で賄わないといけななくなった。

 

 

 その為吉野が発令したのは、"攻め"の為の艦隊設立。

 

 それと同時に今まで自重してきた建造を解禁し、現在確認されている全ての艦娘を着任させるという計画の準備を進めている。

 

 

 現状物資はオーストラリアの吉野商事に依存しているが、冬季を除けば西蘭南島からも採掘は可能であり、燃料の方も既に海洋油田の試掘は完了済みの処まで漕ぎ着けている。

 

 それらが十全に機能するのは来年三月頃とされており、これをもって西蘭泊地は晴れて完全に自立した拠点として活動が可能となる。

 

 

「この作戦で鹵獲した個体、及び邂逅した艦娘は全てウチの麾下として持ってく確約はできたから、今回は自重せずにガンガンやっちゃおうと思う」

 

「ふむ……その提督の言う"自重しない艦隊"の草案がコレか」

 

「そそ、それを元に艦隊本部と深海艦隊本部で調整して欲しいんだけど、どんなもんかな?」

 

 

 各人へ配られた資料には、件の調査の為に吉野が組んだ編成案が記された艦隊員の名簿が含まれていた。

 

 それは実に2/3が深海勢で占められた三艦隊。

 

 人数にして十二名の深海棲艦が含まれた物であった。

 

 

「海図の作成があるから潜水艦隊は丸々参加はできん状態やけど、それをさっ引いても過剰っちゅーかなんちゅうか……」

 

「まぁ姫鬼が二艦隊分編成されるとあれば、確かに過剰戦力と言えるだろうな、それで提督よ」

 

「なに? 長門君」

 

「……この編成には時雨が含まれているが、そっちは大丈夫なのか?」

 

 

 予備人員を入れて二十四名。

 

 その人員の中、第一艦隊には時雨の名が記されており、それを見た長門はやや眉を顰めつつ吉野を見る。

 

 

 確かに時雨の治療は時期的に完了している状態にあるが、現状で言えばまだ本人は医局に収容されたままであり、本来の軍務である秘書艦業務にも復帰していない状態にあった。

 

 治療は未知の行為に及び、それが終わっても完了と呼べる物になるかの基準すらない。

 

 そんな者を艦隊に編成する事は作戦の成否は元より、本人の安否にも大きく関わってくるだろう。

 

 

「それを見越して作戦には電ちゃんも随伴するけど、医局からは一応『完全復帰の見込み』という知らせを受けているし、来月頭には彼女を含め、編成した艦隊で可能な限り演習もするつもりだからさ」

 

「ふむ……なら作戦へ投入する艦隊とは別に、演習に充てる艦隊も組まないといけないという事だな」

 

「だね、そういう事で各課には調整をお願いするから、よろしくね?」

 

「メタンハイドレートの本格的な輸出に、海洋資源プラントの稼動、海図の製作に今回の作戦、漸く冬を越したと思うたら仕事が一気に増えよったなぁ、こらしんどいわ」

 

「まぁどれも一過性の物が殆どだし、それが片付いたら内政はほぼ安定するだろうしさ、それまで負担は掛けるけど宜しく頼むよ」

 

 

 現在泊地で進行中の案件は

 

・海洋油田プラントの稼動

・メタンハイドレートの定期的な輸出と内地との調整

・鉱物資源の採掘プラントの稼動

・戦力抽出の為の建造計画

・担当海域の戦略レベルの海図作成

・欧州から依頼された海域調査

 

 

「……後の懸念は弾薬関係だけやね」

 

「そっちは時期が来るまでどこにも通達しない、いつかは報告を上げるべきだけど、今は秘匿しないと余計な混乱を招いちゃうからね」

 

 

 九月の中頃に完成した西蘭泊地空母施設群。

 

 南半球とあって龍脈は当然日本とは繋がっておらず、結局(やしろ)は内地の分社とはいかず、独立した物として建立(こんりゅう)された。

 

 

 名を赤蜻蛉(せきせいれい)神社。

 

 そこは南半球、海湊(泊地棲姫)のテリトリー内に存在する唯一の神社であり、「ホンマはどこぞから勧請してもろて分社とするところやろうけど、流石にここへ内地の神主さんを呼ぶ訳にもいかんから、まぁ八百万(やおよろず)の神を(たてまつ)るっちゅー事で(やしろ)を開こうか」という龍驤の適当かつ大胆な判断の元建立(こんりゅう)されたのが赤蜻蛉(せきせいれい)神社であった。

 

 名称の赤蜻蛉(せきせいれい)は単に赤蜻蛉(あかとんぼ)を別称にしただけに過ぎず、意味は空母達全員に深く関りがあり、接してきた九三式中間練習機の通称であった。

 

 

 そんな経緯と時短という事情の末建立(こんりゅう)された神社であったが、事後はもうお約束である各種空母系装備の生産がなされる。

 

 まさかネーという淡い期待を抱きつつ作られたそれ(弾薬)は、またしてもと言うか、何故なんだと言うか、ふっつーに使える弾薬という事が確認されてしまう。

 

 

 これにはメロン子とドラゴンはおろか、髭眼帯すらプルプルしてしまうという結末になったのだが、問題はそこで収まる訳も無かった。

 

 

 本来弾薬系に於いて、生産された物はその国に所属している艦娘しか使用できないというオカルトな法則が世界に蔓延っている。

 

 日本の海軍に所属の艦娘なら、内地の海軍大工廠(横須賀)、舞鶴、呉、佐世保、そして大坂で生産された弾薬しか用を成さない。

 

 海外では艦娘を所有している国に各一箇所、欧州連合内では共通、米国艦も自国生産の弾薬しか使えない。

 

 

 例外的に他国の艦が現地の弾薬を使用するとなれば、現地で開発した装備に換装する他はない。

 

 

 これが元で気軽に艦娘の移籍は行われず、また艦娘を所有しない国は弾薬を生産できないとあって運用が不可能という状態を作り出していた。

 

 

「まぁそこへアレだ、ウチで作った弾薬はそういう国家間の縛りに関係なく使えるなんて事を発表しちゃうとさ……色々と問題が噴出する訳で」

 

 

 弾薬の製造自体戦略的な面で言えば相当重要な案件となる。

 

 とりわけ西蘭泊地にその能力が備わっているとなれば、完全な独立拠点という形になってしまう。

 

 現在割と注目と言うか、ちょっと危険視されている西蘭にとって何もかも他所に頼らず、内需だけで何もかもが賄えてしまうという事が発覚してしまうと色々な面で面倒事が発生してしまうのは目に見えている。

 

 

 ただの弾薬(・・・・・)を生産可能という事でもそれなり以上の問題が発生するのに、その弾薬が国の縛りに囚われない特殊な弾薬(・・・・・)だと知れてしまうと、西蘭という拠点はより一層面倒事に巻き込まれる可能性が大きくなる。

 

 

 その為現在は対外的な面を装い、大坂鎮守府より弾薬を供給されているという形をとり、その実輸送船の中身は弾薬ではなくそれの原材料という偽装した形で諸々の調整を行っていた。

 

 

「少なくとも今抱えている案件全てを片して、本来の目的である未知の海域に抜錨し上位個体を鹵獲するまで伏せるしかないだろうな」

 

「その前に長門、西太平洋を攻めるか、インド洋に手を付けるかの問題も忘れてないかしら」

 

「そこは海図の完成と、再びインド洋側との接触を……ああ、深海勢は今度の作戦で出払ってしまうのだったな」

 

「そうね、私も今回は艦隊に編成されているし、こっちに残るのは(潜水棲姫)一線級(Flagship)だけだから、交渉事を進めるのは無理よ?」

 

「まぁそのへんは最悪太平洋攻めを舞鶴、大坂、クェゼリンに任せ、ウチはインド洋関係に取り掛かってもいいと思うけど、その判断はどっちにしても先の話になるからさ、今は抱えてる案件の消化に集中してくれるかな?」

 

 

 こうしてざっくりとではあるが全体の方針を纏め、各課の代表は其々資料を持ち帰って調整に入る事になった。

 

 取り敢えずの目標としてそれらの完了は来年の秋までという事に設定し、西蘭泊地の最も忙しい時期は始まったのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「満潮よ、私、なんでこんな部隊に配属されたのかしら」

 

「え……あ、はい、なんと言うか、うん、その……えぇまぁその……はい」

 

「はぁ、何建造したばかりの新人相手にキョドってるのよ、このクズ!」

 

 

 西蘭泊地大工廠『夕張重工』

 

 大坂鎮守府より移設された"例の"建造ドックの前では、かのフレンチクルーラー族の一翼を担うミッチーに睨まれ、後ろから霞ママに罵倒を受ける髭眼帯という、ある種特定の提督諸氏が言うご褒美状態に陥りプルプルしていた。

 

 

「提督のご指示で新規建造を致しまして、先行しての条件は『既に着任している艦の姉妹艦かつ資材の少ない艦種』と言う事で、今回は朝潮型の駆逐艦ちゃんを狙い撃ちにしてみました」

 

「朝潮や大潮は今出払ってるからお迎えに私に白羽の矢が立った訳よ、後荒潮姉ぇも何故か付いてきたけど」

 

「こんにちわぁ提督ぅ、と、ああ満潮ちゃんもついでにはじめましてぇうふふふふふふふふふふふ」

 

「いきなりなにそれ!? 意味判んない!」

 

 

 前後にアレな属性のくちくかん二人にサンドされ、脇にはやたらとピッタリ随伴するアッパー系のくちくかん。

 

 そして逆サイドにはいつものメロン子という、極めてアレな提督包囲網が夕張重工の一角に展開されていた。

 

 

 髭眼帯は思った、何故アレなミッチーにアレな霞ママという極めて一部提督諸氏が喜ぶ属性被りな着任劇を用意したのか、何故荒潮はさっきから嬉しそうに食い気味でアプローチを仕掛けて来るのだろうかと。

 

 

「と……取り敢えず、自分がこの西蘭泊地司令長官の任に就いてる吉野三郎だ、我々は貴艦の着任を歓迎する」

 

「……本当に歓迎しているのかしら? 何だか微妙な雰囲気が漂ってるみたいなんだけど?」

 

「何捻くれた事言ってんのよ、司令官が歓迎するって言ってんだからはいそうですかって聞いてればいいじゃない」

 

「何よ、随分司令官の肩持つじゃない、ふ~ん? そういう事? そっか」

 

「何勝手に変な想像で納得してるのよ! 訳判んない!」

 

「何よ!」

 

「何よ!」

 

「あらあらうふふふ~」

 

「ま、そういう事で引継ぎはお願いします、では私はこれにて」

 

 

 ある意味アレなクレイジートライアングルが形成されつつある提督ゾーン。

 

 シュタッと手を挙げつつ離脱を図るメロン子の肩を強く掴み、逃がしてなるものかと髭眼帯はニチャリと歪めた笑顔をメロン子へ向ける。

 

 

「え、どこに行くのかなメロン子君、君この後色々とミッチーに説明とかしたり、提督の補佐しないといけないでしょ? ねぇ?」

 

「いやいやいや、私ほら他にも色々忙しいですし? 提督のお部屋改修の様子も見ないといけないですし?」

 

「ハッハッハッまぁそう言わずに、提督工廠の事なんか全然判んないし? 最低でもほら、奉行所(執務棟)に連れてくまでは君に居て貰わないと困るからね?」

 

「ちょっ、いつもは邪険にしたりやたらとシリを叩くのに今回は何なんです? て言うかホント私これから色々のっぴきならない事で行かないといけないんですよぉ」

 

「ほぉん? のっぴきならない事情? ふぅん? ナニがどうのっぴきならないのかちょっと提督に説明してくんないかなぁ?」

 

 

 割と付き合いが長い二人かつ、妙に接点と言うか属性が近い二人である。

 

 その為感知する危機感や対処は似た物になるのはある意味仕方なく、ここに醜い争いが勃発していた。

 

 

「うふふふふ、強化は大好き~」

 

「ちょっ!? 荒潮ちゃんそれまだ調整中の試験装備だから! 触っちゃダメー!」

 

「え、ナニあれサイゼリス!?」

 

「アレはサイゼリス・改と言って、前回の失敗を鑑みエネルギーCAPを採用しつつも出力は据え置きという……」

 

「何で装備がアトミッ〇バズなのに供給はガ〇ダムのビームライフルにしちゃったの!? ぶっちゃけ技術が時代を逆行してないそれ!?」

 

「荒潮、華麗に出撃よ」

 

「そんな物騒かつメーな装備を抱えて出撃しないで! 提督からのお願い!」

 

「そこね」

 

「どこ!? ていうか提督の方にそんなの向けないで! 弾倉が空でも人に銃口は向けないって言うのが飛び道具的なマナーデショッ!」

 

「撃つわ!」

 

「あー! 満潮ちゃんまでサイゼリス・超を持ち出しちゃダメー!」

 

「超ってナニ超って!」

 

「サイゼリス・超、それは時代に逆行しつつも最先端、ガン〇ムXXがツインサテライトキャノンを使うように、アクティブバインダーを備えたそれは……」

 

「説明はいいから! てか何でカーグ〇フィックなBGMが流れてるの!? ア〇ロさんの声で解説をしてないのに!」

 

 

 混沌とした場に、独特の音楽と言うかぶっちゃけカーグラ〇ィックで〇ムロさんの中の人がカーのウンチクを口にする時のミュージックが流れる。

 

 そのノリにプルプルしつつ周りを確認すれば、いつの間に設置したのだろう例のフォールディングしちゃうテーブルセットに金剛とおっπ風がシッダウンし、優雅にティーをしつつ髭眼帯達を見ていた。

 

 因みに陽炎一族のパイ枠二強には浜風と浦風が存在する訳だが、パイパイ教の信者である提督諸氏の取り決めにより、浜風はπ(パイ)風、浦風はおっπ(パイ)風という単位もとい呼称が現在されていた。

 

 

「へ~イテイトク~、色々弁えなヨ~」

 

「主語を排したプリセットボイスに提督色々と悪意を感じずにはいられないんですけど、何でそんなトコで金剛君達はティーしてんの?」

 

「ハァン、そんな事は決まってるネー、新たな艦娘が建造され、そのコは選ばれし属性、ならお迎えティーを致すのは当然の事デース」

 

「選ばれしぃ? お迎えティー? なぁにそれぇ?」

 

 

 一時が万事ティーとパンジャンドラムを中心に世界が回る英国面を宿した紅茶戦艦の言である。

 

 ティーの時間だけでも起き抜けのアーリーモーニングティー、朝食時のブレックファーストティー、十一時に飲むという何のための行為か判らない中途半端なイレブンジズ、昼食時のランチティー、午後四時に飲むオヤツの時間的なミッディ・ティーブレイク、同じく午後四時に飲むティーでありながら来客や特別な時に飲むというこじつけ名称のアフタヌーンティー、それから一時間も経っていないのにまたティーしちゃう午後五時のハイティー、またお茶請けが軽めの場合は午後五時に飲むのに名称がファイブオクロックになっちゃったり、決まった時間に飲む以外にティーを飲みたいが為に名付けられたクリームティー、食後に飲んじゃうアフターディナーティ、そして寝る前に飲んだらカフェイン過多で逆に寝れないのではと突っ込んでしまいそうな就寝前のナイトキャップティーと、事ティーとパンジャンドラムに掛けては自重しない、全てを掛けてしまう英国面である。

 

 その中に知らない名称の"お迎えティー"がこっそり存在していても不思議ではないなと髭眼帯はプルプルしつつティーしている二人を見る。

 

 

「さて、それでは選ばれし者を迎えに行きまショウか、ウラカゼガール」

 

「て言うか金剛君に浦風君……ああ、そっかぁ、フレンチクルーラー……うん、そっかぁなる程ぉ?」

 

「う……うちは別にそがぁな区分に取り込まれた覚えはないけぇ……ほら! そがぁな目で見るのはやめんさい!」

 

「あーもう、バカばっかり!」

 

 

 

 こうして戦力増強の為の建造もスタートし、西蘭泊地は益々混沌を深めていくのであった。

 

 

 主にその混沌面は髭眼帯に対して集中するのだが。

 

 

 




・誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。
・誤字報告機能を使用して頂ければ本人は凄く喜びます。
・また言い回しや文面は意図している部分がありますので、日本語的におかしい事になっていない限りはそのままでいく形になる事があります、その辺りはご了承下さいませ。

 それではどうか宜しくお願い致します。


※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。