大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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 近日更新すると約束したな?

.  _,._  あれはウソだ
( ゚д゚)
く(___) ̄
  ))
 ̄ ̄ ̄}    ))
  /   ( ̄) うわーーっ
  |  と(;´Д`)つ
 /


 ……サーセンした、ほんとサーセンした。そんな訳で再開します。ほんとサーセンした。


 それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。


2019/08/08
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きました水上 風月様、柱島低督様、有難う御座います、大変助かりました。


海の真実
事後承諾という名のパワーワード


 

 

 西蘭泊地松浪港脇、仮設住宅群。通称『狩人村』

 

 吉野達が大坂鎮守府から居を移して以来現在までずっと港湾施設脇を不法占拠してきたそこは、外事課の設置や中間棲姫との邂逅を果たした関係で配置換えが進み、維持が困難になった。

 

 と言うか一部方面から苦情が入り粛々と整理される事になった訳だが、そこは見て見ぬ振りをするという汚れた大人の対応で今回解体されたと言っても良いだろう。

 

 

 そして現在、狩人村の解散式という名目で大宴会が準備され、ついでに大規模改装が実装された金剛や海風、そして赤城の為のお披露目おめでとう会もついでにしようず的な、正にごった煮と言うか寧ろ病み鍋もとい闇鍋状態の只中、髭眼帯は宴会時に正装とされてしまった例の食い倒れな太郎的格好のまま虚ろな目でプルプルしていた。

 

 

 色々な艦(意訳)に囲まれて。

 

 

「……ねぇ海湊(泊地棲姫)えもん、ちょっと聞いていい?」

 

「む? どうしたヨシノン」

 

「えっとその、今提督の前にずらりと整列している見慣れない方達と言うか新種っぽい姫さん達はどこのどなた様か確認させてクダサイ……切に」

 

「ああそいつらは中間棲姫の配下の者達だから、私に聞くよりもそっちに聞いた方がいいぞ?」

 

 

 海湊(泊地棲姫)の言葉に油が切れたか玩具の如くギギギと首を回して見る先には、何故か満面の笑みを浮かべつつネオアーム〇トロングサイクロンジェットアームストロング砲で作成されたポンポン菓子をモーシャモーシャと咀嚼する中間棲姫が居たりする。

 

 

「……中間棲姫さん?」

 

「え、どうしたのかし、ら?」

 

「えと、あの、すいませんこちらの方達のご紹介と、出来ましたら提督の前でものっそビシリと整列している理由をお聞かせクダサイ」

 

「えーと……多分、その子達って私の下僕? かし、ら? 何でここに居るのかは、判らないわ、ね」

 

「え~…… 判らないってなにそれぇ」

 

 

 髭眼帯が見る位置的な状況を説明をすれば、右に海湊(泊地棲姫)、左に中間棲姫、そして前には四人の姫級と思われる深海のフレンズという布陣が敷かれ、背後には秘書課所属の時雨、響、親潮、不知火が控える形で髭眼帯を中心とした多国籍(比喩)輪陣形が形成されちゃったりしている。

 

 因みに前後左右を取り囲む者達は皆一様に例のビクトリアンスタイルのメイド服を着用している時点で、既にどういう立場になっているかは確認しなくとも判明しちゃっているのであるが、それでも一縷の望みという名の現実逃避をしつつ髭眼帯は震える声で目の前に居る姫級四人(戦略級カルテット)へ素朴な疑問を投げ掛けるのである。

 

 

「……えっと、こんにちは」

 

「突然押し掛けて申し訳ございません、我々は中間棲姫様配下の四将。此度(こたび)は中間棲姫様がテイトク様の麾下に入ったとの事で、急ぎ馳せ参じた次第で御座います」

 

「我は東の守護をしている深海海月姫」

 

「私は西を受け持っている太平洋深海棲姫です、宜しくお願いします」

 

「あたしは北側担当の潜水新棲姫さ、にひっ」

 

「で、私は南側を任されている集積地棲姫って訳、ヨロシク」

 

 

 一部聞いた事のあるカンジのフレンズに混じって初耳な姫級が其々自己紹介をしつつアッピール的にポージングを取るが、何をどうアピールしても彼女たちの格好は例のビクトリアンスタイルのメイド服姿なのである。

 

 それはつまり、今現在既に西蘭的な教育を完了済みであり、果たしてどこまで浸透しているかは不明だが、それは本人達が当たり前に振舞える程に染まってしまっていると言えちゃったりするだろう。

 

 

 恐らく他海域に行けば首魁を余裕のヨッちゃんで張れるだろう猛者が、ビクトリアンスタイルのメイド服を着てアピールするカオスに髭眼帯は色々直視できずにプイッと視線を逸らし、プルプル度が加速してしまった。

 

 

「ふむ、軍のデータベースにない姫級が多数混じってるね司令。コレはアレじゃないかな、敵対勢力に対して秘密裏にマッチポンプとか破壊工作を仕掛ける時の偽装とか、隠蔽したりとか、その辺り諸々の工作とか、色々捗りそうだね」

 

「響君、新しいフレンズの自己紹介が終わった直後に黒い企みとか暗躍を(ほの)めかすぶっちゃけトークは止めようか? 提督物凄く先行き不安になってしまいます」

 

「陸上型に潜水型が更に参入となると、もう怖い物はないね。ふふっ」

 

「時雨君が何に対してそう言ってるのか理解したくないのですが、ぶっちゃけ提督はその辺りが物凄く怖いです」

 

「取り敢えず見た感じ基本は押さえてるようですし、いいんじゃないでしょうか」

 

「親潮君、彼女達の何を見てどういう基本を押さえてるという答えに辿り着いちゃったのかを提督聞く勇気がないんですけど、恐らくそれは海軍的に大きな間違いだと思うので思考の方向修正を切に願います……」

 

「取り敢えずこのメットを装着して性能のテストを実施してからですね。でなければ最終的な判断はできないと不知火は具申致します」

 

「ぬいぬい、今しれっと差し出したそのアンテナ付き銀メット、一体どこから取り出したの? 寧ろ君が火器管制ユニット的な扱いになってるからって他の人達までそういうオプションパーツとして扱うのは止めて差し上げて? 提督からのお願い」

 

 

 髭眼帯は思った。目の前にはもう西蘭的に染まった(メイド服が標準装備化)深海のフレンズが居るという手遅れ状態だが、このまま流れに任せてしまうと致命的かつ手遅れな事になってしまうのではないのだろうかと。

 

 

「取り敢えず今日は顔見せで全員呼んだんだけ、ど、普段は一人か二人をここに常駐させようと思う、の。いいでしょ? テイトクさん」

 

「いや常駐て、中間棲姫さんのテリトリーはそれで大丈夫なんです? 寧ろ彼女達がウチに常駐する必要性はないと思うんですが……」

 

「ふむ、取り敢えず中間棲姫の世話係という事らしいからな。ついでにネオアーム〇トロングサイクロンジェットアームストロング砲の整備もやって貰おうか」

 

「ちょっと海湊(泊地棲姫)えもん! 仮にもエリアボスクラスの姫級フレンズにやって貰う仕事が大型ポンポン菓子製造機のメンテとか色々おかしくない!?」

 

「そうそう。夕張ちゃんとこで研修を頼まなくちゃいけないわ、ね。なにせネオアーム〇トロングサイクロンジェットアームストロング砲の維持整備は最優先事項ですもの、ね」

 

「何がどうなったらそこまでネオアーム〇トロングサイクロンジェットアームストロング砲に執着できちゃう訳君達!? 色々とオカシイデショ! ねえッ!?」

 

「あぁ、仕事の合間に余裕ができたら……深海鶴棲姫のとこにもお知らせに向かって貰おうかし、ら。まぁそっちはついでだか、ら、適当にやってもいいけど、ね」

 

「原初の者の一角の扱いィッ! ポンポン菓子製造機の保守点検より大首魁の重要度が低いってどういう事ぉ!?」

 

「まぁアイツは戦バカだし、いいんじゃないか、ついでで」

 

「深海鶴棲姫さんの扱い雑過ぎィ! 寧ろ今まで名前しか出てなかった大首魁と気軽に接触しようずって何事!?」

 

 

 全ての深海棲艦を統べる、世界の海を五つに割った其々に君臨する原初の者達。

 

 北極海から広大な海域をテリトリーとする北方棲姫。インド洋を支配する船渠棲姫。太平洋の北を支配(仮)する中間棲姫。同じく太平洋の南を治める海湊(泊地棲姫)。そして大西洋の一部と南北アメリカ大陸東側沿岸を根城にする深海鶴棲姫。

 

 その内髭眼帯が接触していない唯一の存在は深海鶴棲姫のみ。

 

 

 現状足場固めと流動的な各国との関係を優先する吉野にとって、その存在は無視できないまでも世情を考えれば優先度自体は低かった。

 

 寧ろこの状態でそちら側の問題も抱えるとなれば、明らかにキャパオーバーとなりどうしようもなくなってしまう。

 

 

 て言うか海湊(泊地棲姫)&中間棲姫の言葉から推察するに、元々二人は深海鶴棲姫とは何かしらの関係を持つ。しかもそれなりに通じてるかの如き物言いに髭眼帯の混乱は更に加速し天元突破寸前だったりした。

 

 そんなプルプルがガクガクに変化する寸前、事務方の大淀がノートパソコンを片手にスススと髭眼帯の脇に寄ってきた。

 

 

 何故か薄緑色チェックのビキニと同色のパレオを装着して。

 

 

 その様子に嫌な予感メーターをピコンと反応させ、ピタッと震えを停止した髭眼帯は怪訝な表情のまま夏季限定グラ的衣装を装着するoh淀を凝視する。

 

 

「提督、入電です」

 

「……誰から? て言うか何でoh淀君はこんなクソ寒い時期に水着なんて着てんの?」

 

「入電は北方棲姫さんからです。そしてこのコスチュームは大本営より『夏季に任務に就く全大淀はこの装備を装着して執務を実施するように』と厳命されているので仕方なく。そんな訳でどうか御了承下さい」

 

 

 母港で任務(クエスト)タブをクリックした時に聞こえるセリフをまんまリアルで口にするoh淀。

 

 因みに西蘭島は南半球に位置する関係で日本とは季節が反転している。つまり日本が夏であるならば西蘭島は冬。しかも八月となれば真冬である。

 

 幾ら大本営からの厳命であってもその辺り何かしらの機転は利かせられない物かと思いつつ、パカッとオープンされたノートパソコンの画面にはSound Onlyと表記されたあのモノリスっぽいCGが映し出されていた。

 

 

『あーあー、オニーサン聞こえてるぅ?』

 

「あ、はい聞こえてます。どうしたんですか?」

 

『んーと、前々からやってた事で進展があったからその報告と、今後の予定なんかを知らせとこうかと思って』

 

「進展ん? ……報告ぅ? それってどれの事です?」

 

『えっとほら、前にオニーサンから番人の素体貰ったじゃん?』

 

「えぇ、送りましたね」

 

『んで今まで立ててきた仮説とか、そっちのハカセ達とやってた共同研究の確認の為にさ、その素体を使って実証試験をやったのよ』

 

 

 北方棲姫が言う【番人の素体】

 

 それは嘗てまだ軍が艦娘の建造というシステムを構築する以前。吉野の母やハカセが人工的に艦娘を産み出そうと作り出した"最初の五人"の分身。

 

 幾体製造されたのかは秘匿されている為不明とされているが、吉野が認識している分だけで言えば吹雪、電、叢雲、漣、五月雨の細胞を培養した五体のみ。

 

 その内の電を模した素体は裏取引で北方棲姫に譲渡され、残りの四体は現在西蘭泊地地下研究施設の封印区画に保存されていた。

 

 

 "魂が入っていない"という一点を除けば最初の五人と同じ組成をした存在であり、北方棲姫曰く『深海棲艦と艦娘とは何かという答えを得る為の重要なピース』とまで言わしめた、吉野的には負の遺産とも言える物であった。

 

 

『んで色々やった結果、素体に魂を定着させる事に成功したの』

 

「はぁッ!? 魂を定着ぅッ!?」

 

『ただ色々あってさ、やっぱり番人をそのまま模すのは安全性、そして技術面でも無理があったから……』

 

「……無理があったから?」

 

『結論から言って姫級になっちゃった、それも原初の者クラスの。いゃ~流石番人クラスの素体だしさぁ、その辺りは予想通りって感じ?』

 

「はぁぁぁぁッ!? 原初の者クラスの深海棲艦を作ったぁ!?」

 

『そね、んで素体に埋め込んだ魂ってふっつーの物じゃ定着しなくてさ、まぁ私の魂をちょちょっと分け与えたらもぅ、なんかガッツリ特徴引き継いちゃった。そんな訳で命名【北方棲姫妹(ほっぽうせいきまい)】』

 

 

 ほっぽちゃんの言葉と言うかネーミングセンスに髭眼帯から驚きの表情が消え、物凄く怪訝な物に変化する。

 

 

 因みにネーミングセンス的なアレで言えば、髭眼帯自体ほっぽちゃんに負けず劣らずアレな状態であるのだが、捻り出すのと外部から入力された物を精査する部分はまた別であった為、その辺りが作用して髭眼帯の思考は停止する。

 

 

 例えば髭眼帯的にドクペは敬愛し愛飲する程美味な飲料ではあるが、他の毒飲料は趣味と知識欲を満たすために試飲するものの、実際は美味しいと感じてはいない。

 

 世間一般ではドクペも立派な毒飲料であったが、髭眼帯的にはその評価を受け入れつつも美味しい清涼飲料という位置付けとなっているのである。

 

 

 例えはややこしいが、ぶっちゃけ「それはそれ、これはこれ」論理が炸裂した結果、髭眼帯の表情が真顔から怪訝な物へとシフトするという変化をさせたのであった。

 

 

「ほ……ほっぽうせいきまい……さんですかぁ」

 

『そそ、んでそれだと長ったらしいから私は"まい"って呼んでるんだけど、まぁそれは横に置いといてさ。この子って私のソウル()を引き継いでるだけあって一部の能力も使えちゃったりするのが確認されたの』

 

「あー…… まぁ、その辺りは不思議じゃないというか、門外漢なんで自分にはなんとも……」

 

『ま、そんな訳でこっちでできる研究はこれで一区切りついたのよね』

 

「えっとそれは、おめでとう御座います?」

 

『ありがと。でさ、このままこれ以上の研究を続けていくなら新しいアプローチって言うか、環境の変化が必要なのよね』

 

「あー…… そうなんです?」

 

『そんな訳でさ、まいにムツを補佐として就けたらこっちの維持もできそうだし、その辺り整ったらそっちに引っ越すからヨロシク』

 

「ん…… んん…… んんんんん?」

 

 

 ほっぽちゃんの言葉に今一理解が追い付かず、髭眼帯は怪訝な表情のまま首を傾げ、後ろに居並ぶ秘書艦ズからはスーっと表情が抜け落ちるという輪陣形。

 

 

『いや、だからもうこっちでできる事って殆どないし。ほら、ハカセとか電ちゃんと一緒に研究した方が何かと都合がいいって言うか有意義じゃない? だから引っ越すよ』

 

「……どこに?」

 

『え、オニーサンとこにって言ってるじゃん』

 

「……ナンデ?」

 

『ちょっとねぇ、私の話聞いてた? 研究の為だって言ったじゃん!』

 

「え、いやそんな事急に言われても準備と言うか心構えと言うか覚悟と言うか色々諸々マズいのでちょっと待ってみようかほっぽちゃん」

 

『まぁそんなワケで、日程が決まったら連絡するし、あー荷物とかはもう送っちゃったからよろしくー』

 

「えちょまっ!?」

 

 

 混乱する髭眼帯をおいてけぼりにして、ノートパソコンの画面は無常にも通信が切れた事を示す"Sign-Out"の文字が表記される。

 

 と同時にノートパソコンを持っていたoh淀はパタンとそれを閉じ、ペコリと会釈だけすると用事は済んだとばかりにスタスタとその場から撤収していった。

 

 

 薄緑色チェックのビキニと同色のパレオをヒラヒラさせつつ。

 

 

 そして取り残された髭眼帯が呆然としていると、何者かが肩をツンツンとするので無意識にそちらへ視線を向けると球磨型一番艦がアホ毛をゆらゆら揺らし、ゆっくりと首を左右に振っているのが見えた。

 

 

 例のビクトリアンスタイルのメイド服を装着して。

 

 

「提督…… いつも言ってるクマ? 何事も諦めが肝心だって」

 

 

 かくして西蘭泊地には何故か原初の者五人の内三人が集結する事となり、二つ名を持つ艦娘を最大数保有するという人類側の拠点というアレな状態のみならず、深海側からもある意味アレな拠点という認識を持たれる事になるのであった。

 

 

 

 




・誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。
・誤字報告機能を使用して頂ければ本人は凄く喜びます。
・また言い回しや文面は意図している部分がありますので、日本語的におかしい事になっていない限りはそのままでいく形になる事があります、その辺りはご了承下さいませ。

 それではどうか宜しくお願い致します。

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