大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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前回までのあらすじ

 南洋での戦いに終止符を打ち戦艦棲姫の鹵獲に成功する第二特務課+αの面々、激闘を制した彼女達は大漁旗を掲げ大本営への帰路に就く。


 それでは何かご意見ご要望があればお気軽にどうぞ。

(※)御注意

 未だ捷号作戦の章では御座いますが、閑話休題というかワンクッションのギャグ回になっており、ここ数話とは違いイメージが凄まじく違うギャグのみの話になっております。

 そんなシリアス以外に認めないよという提督な方はブラウザバック推奨です。


南極とベヘリットとダークタワー

 

「それでは不肖この武蔵此度の祝勝会の乾杯の音頭を仕る、皆の者グラスは行き渡ったか? ならベンガル湾海域解放及び姫級鹵獲作戦成功を祝し乾杯!」

 

 

 大本営第二特務課秘密基地大茶室。

 

 あの南方での海戦を経て帰還した作戦参加艦が集い祝勝会が行われていた。

 

 時系列で言うと最後に戦艦棲姫を蹴っぱぐって拉致ってから四日、吉野の治療完了と時雨の精密検査終了に合わせ取り敢えずの祝勝会が執り行われていた。

 

 

 何故"取り敢えず"なのかと言うと先ず吉野の体調。

 

 爆風による全身打撲に加え、四肢に埋め込まれた血液ろ過プラントが衝撃で閉鎖し、現場で薬品によって内部破壊を行って弁を強制的に開いた為、医局で修復手術を行なわねばならず以前の入院時程では無かったが薬品の後遺症で現在例の"痛痒い症"が発症していた。

 

 二つ目は時雨の件。

 

 一応精密検査は終了したものの結果詳細はまだ出ておらず、それは後日知らさせる事になっていたが、事と次第によっては"深海棲艦化"という未知の変異を辿った彼女を取り巻く環境は厳しい物になる事が予想された。

 

 

 また色々やらかした件に於いても物議を醸し出し、作戦は成功という形になっていたが水面下では色々な問題が噴出しており、実際の処吉野の戦いはこれからだと言っても過言では無い状況になっていた。

 

 

 先の事を考え溜息を吐きつつ右を見れば横綱が酒をかっ喰らう時に使用するかの如き巨大な皿に盛られた大量の握り飯。

 

 左を見れば何となくデジャヴを感じる顔面フルーツやらリンゴのうさちゃんピラミッド。

 

 そして正面を向けばどこぞの結婚式で新郎新婦が入刀するのでは無いかと思うほどに重ねられたブツ。

 

 

「加賀君……アレナニ?」

 

 

 三角帽子にヒゲメガネを装着された、道頓堀で見掛ける太郎ちっくな格好をさせられた吉野が震える手で正面のタワーの如き重ねられた物体を指刺す。

 

 それは巨大な積層構造になっており、構造物質がケーキならばまあ見た事はあるという代物であったが、ソレは何故か色が黒に近い暗色をしており、会場のド真ん中に据えるにはとても……凄く地味な色合いが逆に異様な雰囲気を醸し出していた。

 

 

「え? 間宮の本練り(羊羹)ですが?」

 

 

 何言ってんのコイツみたいな視線を投げ掛けサラリと巨大積層構造物を羊羹だと言ってのける一航戦の青いヤツ。

 

 眉根を寄せたまま吉野は無言で視線を会場中央の黒いバビロンタワーに戻す。

 

 

 

 ───────── それは羊羹(ようかん)というにはあまりにも大きすぎた、大きくぶ厚く重くそして大雑把過ぎた、それは正に黒き塔であった。

 

 

 

「って間宮羊羹んんん!? ちょっとナニシテンノ食うのアレってか幾らしたの!? ねぇっ!?」

 

 

 吉野の突っ込みにプイッと横を向く青いヤツ、間宮羊羹と言えば確か一本800gで¥3,000程した筈である、そして目の前のダークタワーは特大のウエディングケーキ程の大きさを誇っている。

 

 顔面蒼白な食い倒れ吉野はプルプルと震えつつ無駄に頭をフル回転して羊羹の塔の建設費を弾き出していた。

 

 

「はい提督、アーン」

 

 

 そんな吉野の顔面を掴み、グリっと横に向けて時雨がイチジクを口に押し込んできた。

 

 彼女の手元を見ると例の如く顔面カットされたイチジクが皿の上でゴロリと幾つか転がっている。

 

 人の拳大の歪な果実が顔面状に掘り抜かれ、紅い果汁が滴るそれが積み重なる様は何と言うか物凄くヤバい何かを彷彿してしまう。

 

 

「べ……ベヘ○ット」

 

 

 手足の自由がやや不自由な為アーンは正直在り難いのだが、それは同時に色々諸々防御不能という事を意味し、今や吉野は成すがままこの宴を乗り越えなければならない状況に陥っていた。

 

 

 作戦から戻ってきた後第二特務課の面々は普段はいつもと変わらない状態であったが、何故かアーン攻撃やら必要以上のボディタッチが増えている気がして吉野は心の平穏を保つのに苦心していた。

 

 特にそれは時雨、榛名、朔夜(防空棲姫)辺りに顕著に表れ、そうで無い者も何かと事あるごとに絡んでくる様になった。

 

 

 眉根を寄せて口の中の果実を咀嚼し、ニコニコしている秘書艦から解放されようと苦心していると、今度は反対側からグリュッと嫌な音をたてながら首を回される。

 

 一瞬意識が飛びそうになる食い倒れ吉野の口にはストローが差し込まれ、何事かとそれを見るとハート状に三重ループされたストローが絡み合っており、反対側には同じくストローを咥えた榛名が上目遣いでジルジルと桃色の液体を啜っていた。

 

 そのドロリとした液体はいつもの如くピッチャーにINされてはいたが、やたらと粘度が高そうなタプタプ感がして、試しに啜ろうとしても中々ストローから口の中にそれが流れ込んで来る事は無かった。

 

 

「提督どうですか榛名特製生絞り桃ジュースは、果実100%なので味が濃厚で美味しいと思うのですが……」

 

 

 桃を生絞り、そう称しているが製法は多分また果実を握り潰したブツに違いない。

 

 それが証拠に幾ら啜っても何か微細な固形物が混じった液体はハートの中程で詰まったままビクともしない。

 

 榛名程の凄まじい肺活量を誇る者が啜るにはそれで問題無いのだろうが、吉野の様にヒョロ助だとそれは不可能な領域なのである。

 

 

「あ…… あの榛名君、ちょーっと自分今体力がそのアレで、吸う力が弱いみたいでストローで飲むのは難しいかなー……とか」

 

「あ、すいません提督のお体の事をすっかり忘れてしまってました……では榛名が直接……」

 

 

 何故かグイっとピッチャーを煽りドロリ桃ドリンクを口に含む榛名、頭を両手で固定され、その顔が近づいてくる。

 

 幾ら吉野でもこれから榛名がしようとしている事は予想がつき必死に逃れようともがくがそれは適わない、何せその腕力は戦艦棲姫を殴り倒し鬼の様な艤装を吹き飛ばす程の膂力を備えているのだ。

 

 近付く唇、目を閉じた榛名の顔が一定の辺りまで来た時、吉野の視界は黒い何かに覆われる。

 

 

 ムチューという音に続き、ジルジルジルと液体が流れる音が続く。

 

 

 プハーと息を吐き顔を上気させた榛名の目の前には何故か頬を染めた冬華(レ級)の顔があった、それを確認した榛名は思わず手に力を込めた為に吉野の頭蓋がメシリと嫌な音を立て卒倒させる。

 

 吉野が上げた悲鳴に反応して一瞬力が緩んだ隙に脱出を果たし悶絶しつつ冬華(レ級)を見る、そこには黒パーカーの襟を掴んで榛名の前へ押し込んだ格好の朔夜(防空棲姫)がニヤリと笑っている姿が確認できた。

 

 

「あらゴメンなさいね、ちょーっと手が滑ったみたい」

 

「……どう手が滑ったらこんなピンボイントで異物を榛名の前にねじ込む事が出来るんですかねぇ……」

 

「え!? 今ボク異物とか言われた!? ヒドイよハルナァ」

 

 

 榛名と朔夜(防空棲姫)の間に殺意と共に空気が圧縮された様な雰囲気が漂い始める、その中心には涙目の冬華(レ級)が放置プレイされているがこの際それはどうでも良い。

 

 戦艦棲姫を殴り倒す武闘派戦艦と、同じく延髄切りでそれを屠る白い異形がラブラブ桃ジュースを発端に死闘を始めようとしていた。

 

 

 プルプルと震え身の危険を感じた吉野は脱出を試みるが、その時襟首を掴まれズリズリと畳の上を引き摺られながら部屋の隅に引っ張られていく。

 

 流れる景色の中ではクロスカウンター状態の榛名と朔夜(防空棲姫)が見え、その横ではナガモンに捕獲され涙目でもがく時雨の姿が見えた。

 

 畳の上を引き摺られる食い倒れっぽい吉野、それをするのは南海から拉致ってきた戦艦棲姫の片割れである"ヤマシロ"

 

 

 彼女達は海戦で破れ鹵獲された立場であったが元が戦う事よりも静かに暮らす事に執着していた事もあり、第二特務課秘密基地へ取り敢えず軟禁して色々話をしてみた処、何故かこの施設の居心地とまったりした雰囲気がお気に召した様で、三食昼寝付きならと言う事で即日朔夜(防空棲姫)の配下に付く契約を交わしていたのであった。

 

 

 部屋の角に据えられて何事かと前を見れば、黒い扇情的なワンピ姿の黒髪の姫が二人、正座でこちらと対峙している。

 

 言葉尻や行動を見ていると元は扶桑型姉妹だと言うのは明らかな存在ではあるが、その容姿はまた別な意味でバインバインで、ポンキュッボンであった。

 

 

「こちらでお世話になる事になりましたが、まだここの主である吉野様にちゃんと御挨拶をしておりませんでしたのでこの様な無礼な形では御座いますがお話をさせて頂けたらとお招き致しました、私戦艦棲姫の"姉"で御座います」

 

「同じく妹の"ヤマシロ"です、どうかよしなに」

 

 

 二人の戦艦棲姫は三つ指を付き、綺麗に揃って頭を下げる、自由奔放気味の他の深海勢とは違い物静かで礼を弁えてる風に見える二人。

 

 もし吉野が押し込められている場所が部屋の隅の三角コーナーでは無く、更に膝を付き合わせる距離で囲まれている状況でなかったらとても好印象だった事だろう、むしろ引き摺られてきたお陰でズボンから半ケツが見えている状態であったがまぁそれは気にしない事にする。

 

 そして彼女達は吉野に対し挨拶と会話を求めるという友好的な行動を見せている、ならば第二特務課を指揮する者としてはそれなりに対応するのが礼という物ではないかといずまいを正す。

 

 

「ご……御丁寧にどうも、自分がここの責任者の吉野三郎です、えっと扶桑さんに山城さん、で、いいのかな?」

 

「え? 確かに妹はヤマシロですが、私の名前は"姉"であってフソウという名称ではありませんが……」

 

「ん? ……んんんん? 姉さん、ですか?」

 

「はい、姉です、どうか末永くお傍に置いて下さいませ」

 

 

 ヤマシロに姉と呼ばれていた戦艦棲姫の名前は、予想していた扶桑という物では無く姉というまんまの名称であった。

 

 別に呼び名に何か思う処は無いはずだが、とても違和感があると言うかぶっちゃけ色々言い辛い。

 

 

 例えば誰かに彼女を紹介する際『彼女がウチの姉さんです』となるのに始まり、朝の挨拶は『おはようございます姉さん』になったりもする、更にもし何か不可解な事案が発生したりなんかすると『姉さん、事件です』とか言う事になったりしたりしてしまう。

 

 姉さんという言葉はある意味人を表す呼称であるが、それは固有名詞では無く関係性から来る仮称であって名前に宛てるのは不適切な呼び方なのだ。

 

 その辺り目の前のニコニコしている戦艦棲姫にどう説明したものかと思案をしていると、その悩みを発生させている当事者が何故かとてもキラキラした表情でこちらを見ていた。

 

 

「な……何か?」

 

「いえ、聞けばテイトクは以前空母棲鬼さんをなぎ倒しボコボコにした事もある猛者だと聞いております、普通なら信じられない事ではあるのですが、あの破廉恥ブルマ二人をたった一度の砲撃で倒したのがテイトクとお聞きしまして……」

 

 

 彼女達に話をしたのが誰かは判らなかったが、吉野のやった行動は何故か大きく事実が捻じ曲げられて伝わっていた、因みにタ級を破廉恥ブルマと称した辺りの言葉には何故か悪意を感じなくもないがスルーする事にする。

 

 

「あ、いや結果的にそうなったと言うか、ボコボコにした事実はありませんし色々運に助けられたといu」

 

「ほらヤマシロ、やはりテイトクは凄いお方でした、この方に付いていけば私達の生活も安泰ですよ!」

 

「流石姉さま先見の明があります、この方を垂らし込んdゲフゲフ、旦那様に迎えれば私達は永遠の三食昼寝付きが保障されるのですね!」

 

 

 盛り上がる姉妹が言う内容は良く判らない物だったが、それは禄でもない物であるのは吉野には理解出来た。

 

 例えるならご家庭のお父さんの立場が一家の大黒柱という威厳のある物では無く、暗証番号と金額を打ち込むとお札がニュルッと出てくるあのマシーン的な物と認識されているみたいな悲しい立場になっている感じである。

 

 人はそれをAutomated Teller Machineと呼称するが、略称すると涙が止まらない人が出そうなのでここでは割愛させて頂く。

 

 

「これでもう一郎と次郎の餌に困る事や、金色からの無茶なノルマで枕を濡らす日々を過ごさなくてもいいのね……」

 

「イ……イチローにジローぉ?」

 

「はい、私達の(ともがら)で、分身とも呼べる存在(艤装)です」

 

 

 吉野の脳裏には顔面の殆どが口を占めるムキムキマッチョな艤装の姿が思い浮かんだ、その艤装には一郎と次郎という名前が付けられているという。

 

 一郎に次郎、そして自分の名前が三郎、何故か物凄く微妙な気持ちになってくる。

 

 

「そう言えばテイトクのお名前は三郎様と仰いましたね」

 

「成る程、何故か親愛の情が沸いて来ると思ったら名前が三郎だからなのね……」

 

 

 どうやら自分は目の前の戦艦棲姫姉妹に親愛の情を向けられているらしい。

 

 しかもペットに向ける類の物を。

 

 お札がニュルッとでるマシーンでペットな立場にされそうな吉野は、もしかして今自分はとてもヤバい状況になっているのではと今更ながら危機感を覚えていた。

 

 助けを呼びたくてもここは戦艦棲姫姉妹という壁に隔絶された三角コーナー、視界はボインボインとニコニコとした角の生えた顔でガードされ外界との接触は絶望的な状況。

 

 そんな三角コーナーの辺りでプーンと何やら蚊が飛ぶ様な音がする。

 

 耳を澄ませばそれはどんどん大きな物になり、何と言うか酷く聞き覚えのある音へと変わっていった。

 

 

「あら、この音って確か……」

 

 

 何かを言い掛けた姉さまの側頭部にズガンという音と共に緑の何かが突き刺さる。

 

 プスプスと煙を上げるそれは翼に六三四空と書かれた水上偵察機、少しフロートの部分が形容し難いナニカになってはいるものの、瑞雲界のエリートと呼ばれるソレが姉さまの側頭部に突き刺さっている様は在りし日の艦橋を模したアレを頭に乗せた彼女の姿を彷彿させる。

 

 

「空はあんなに…… あ、知らない天井が……」

 

「ねっ……姉さまああああああ!」

 

 

 突如飛来した緑の刺客に戦艦棲姫はとてもいい笑顔のままゆっくりと後ろに倒れる、ヤマシロが姉さまの肩を掴んでブンブンと振り回すが頭部にダメージを負った者の頭をシェイクするのはとてもマズいのでは無かろうかと思う吉野は再び襟首を掴まれ引き摺られていく。

 

 流れる視界をヒゲメガネを通して眺めつつ、ああ今日はこんなパターンなのかと思う吉野の心には世界の○窓からのテーマソングが流れていた。

 

 そして終着駅、そこに居たのは陽炎に不知火、そして妙高の三人。

 

 其々は顔に笑みを貼り付けていたが何故かそれが不自然に映るのは気のせいだろうか、自分は彼女達に何かしたのだろうかと頭にある三角帽子の位置を直しつついずまいを正す。

 

 

「提督、私は事務特化重巡ではありますが、一応戦いではそれなりにサポートをこなして艦隊のお役に立ったと自負しています」

 

「不知火も始めは艦隊の目として、後半は雷撃で敵を蹴散らす八面六臂の活躍をしたと思っています」

 

「私も艦隊護衛から長門さんと一緒に突撃とか色々頑張ったと思うの」

 

 

 三人に囲まれリンゴを口にヒョイヒョイと詰め込まれつつ、相槌の意味を込めて首をカクカクと上下に振ってみる。

 

 周りを見れば様々な料理を盛った皿が所狭しと並べられているのに、何故自分はフルーツしか口にしていないのだろうと思っていたのをおくびにも出さないのは、諜報の世界で生きてきた吉野なりのテクニックであった。

 

 

「サポートで色々……艦隊に尽くしているんですよ?」

 

「不知火の索敵情報が無かったらあれ程航空戦力の効率的な展開は無かったと思っています」

 

「今回私の撃沈スコアは加賀さんよりも多かったのよ」

 

 

 リンゴの全力投入は収まったが、妙高の手には黄色の宇宙炭酸が握られる瞬間が見える、更に陽炎の手には着ぐるみを着た謎のオッサンが鬼怒のホーズをしている姿がプリントされた茶色の液体が入ったジョーンズさんソーダがちらりと見える。

 

 あれは悪名高き『ジョーンズソーダベーコン味』、炭酸飲料なのにキリっと効いた塩加減と香ばしく焼き上げられた風味が脳みそを混乱させるアメリカンソウルフードな炭酸飲料。

 

 更に不知火の手には銀色に輝くペンギンが小さくプリントされた缶が鈍く光を反射させるのが確認出来た。

 

 女性の味方、オシャレの代名詞カネボウが作ってしまったスポーツドリンク、その名も『瞬間冷水』、のどごしスッキリ・体感刺激というキャッチフレーズで発売されたソレは飲むと体の火照りが収まり色々な意味でスースーする、主に消化器官系が。

 

 そんなペンギン親子をプリントして南極のイメージを前面に押し出そうとした飲料の味はタ○ガーバームという打ち身筋肉痛を癒す虎がINしてしまったスポーツドリンク、テイスティングしたメーカー担当者はきっと味覚異常者に違いない。

 

 

 宇宙にベーコンに南極の虎という狂ったトライアングルに囲まれた吉野に待っていたのは、リンゴが僅かに残っていた口中に同時に注がれる色々な飲料。

 

 その口中の状態をわかり易く説明すれば、シャクシャクとアポーを食べていたら何故か唐突にベニヤ板一枚でウチューに放り出され、()()うの体で地球に帰還したがそこは南極で、寒さに震えつつペンギンに囲まれベーコンバーベQをしているという人生を走馬灯の如き速さで体験している状態である。

 

 

 そして恐ろしいのはこの内二つの飲料は炭酸系である、繰り返し味が口中でスパークリングされ、更に命の危機にそれらを飲み下すとゲップと共に悪夢が再来するという地獄が繰り返される。

 

 

「ちゃんと活躍したんですよ、提督?」

 

「不知火も活躍しました」

 

「司令、私頑張ったよね?」

 

 

 君達の影が薄いとか一言も言った覚えは無い、そう言おうとしても吉野の口中は形容のし難い味の絨毯爆撃で機能不全に陥り意味不明な唸り声しか出てこない。

 

 

 そんな薄れいく吉野の視線の先では、天をも貫こうかという黒いタワーに猛然と立ち向かうナイフとフォークを装備した赤と青の弓道着に身を包んだ二人の艦娘の姿が映っていたという。

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。

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