大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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前回までのあらすじ

 メイド服+にゃんこ+くちくかん+合法ロリ。


 それでは何かご意見ご要望があればお気軽にどうぞ。


2019/02/20
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きました雀怜様、有難う御座います、大変助かりました。


日常という名の非日常の始まり(序)

「クェゼリン艦隊の教導受け入れ無期限延期だと?」

 

 

 色々説得の末ピンクなメイド服(色々なイメージ先行型)の装備を控えて貰い、いつものタイムパトローラー然とした服を着用した長門が手にした書類に視線を落としつつ顔を(しか)めている。

 

 大阪鎮守府提督執務室、其処には情報部室長漣を筆頭に、第一艦隊旗艦長門及び水雷戦隊改め第二艦隊の旗艦球磨、そして深海艦隊より朔夜(防空棲姫)の都合四人が召集され、昨夜クェゼリン基地より連絡が来た内容を吉野が各所の責任者に通達している処であった。

 

 

 事の始まりは前日の1800、一報はクェゼリン基地司令長官である飯野健二から吉野へ対し直接申し入れがあった事に始まる。

 

 その内容を要約すると、先ずは飯野の盛大な侘びから始まり、本題の教導任務の無期限延期の要請、最後にそれに付いて詳細な理由の説明が出来ない状況に対しての侘び、更に埋め合わせの為に今度メシ奢るわ的なフレンドリーかつやんわりとした関係性の維持という実に一方的な通達と、いらぬ心配りな物であったという。

 

 そして明けた0900、その通達を受理した旨の報告と、以後の活動内容の変更についての大雑把な打ち合わせを兼ねて、各所の代表者を集めての会議が始まったというのが現在の状況である。

 

 

「予定をキャンセルでは無く無期限の延期、しかもその理由は教えられない、随分と勝手なものね……ねぇテイトク、海軍ってこんなに無責任が普通に横行している組織なのかしら?」

 

「いや普通ならこんな筋の通らない事は認められないモンなんだけど、正直あの飯野さんがこんな片手落ちの状態でこちらに頭を下げるって事自体緊急的な物じゃないかと自分は踏んでるんだけどねぇ」

 

 

 少し憮然とした朔夜(防空棲姫)の言葉に首を傾げつつ感想を述べる吉野。

 

 事の問題は一方的かつ勝手な状態で一拠点の司令長官が予定の変更を申し入れてきたという異常性(・・・)に集約されると吉野は考えている。

 

 軍内部の常識から考えても少し強行的に進められた教導任務、しかもそれを推し進めてきた本人が納得出来る理由も挙げずに一方的にそれを反故にした形なのである。

 

 これは正規の手続きとしても問題があった、そしてそれは結果として艦隊司令長官としての評価が下がる恐れがあり、更に言うと第二特務課に対しても借りを作る形になるというのは目に見えている。

 

 しかしそれでも延期という形にしなければいけなくなったという事は、相当なトラブルか、若しくはそうせざるを得ない事情が絡んでいると考えるのは当然の事だろう。

 

 

「って事でご主人様の指示で集められる情報は集めてみた訳なんですけどね、これまた厄介な事になってると思うんですよ」

 

「漣の集めた情報によると、どうやら中部海域の最前線、クェゼリン基地及びショートランド泊地に対する補給経路の急な変更に伴って色々問題が発生している様で……」

 

 

 現況、海軍の支配海域の最前線に位置する拠点では、防衛ラインを維持する為に拠点自らの維持に必要な資源を確保する余裕が無く、所属の人員は戦闘・哨戒に充てられている為兵站の殆どを本国に依存した形で運営されていた。

 

 その為拠点機能を維持する為には強固な補給線と確実な輸送手段が必要になるのだが、それでも日本から支配海域の端までという距離は空路が使えない現況ではそのまま直接物資を輸送するというのは現実的ではなく、幾らかの中継的な拠点を置いて補給線を細分化し、各拠点間で物資の遣り取りを行うといった形で前線の維持に努めている。

 

 具体的な話として、国内は四大鎮守府が本土防衛の戦力として置かれている関係上、南部海域及び中部海域への兵站は一度九州の岩川基地へ集積され、南部海域へは高雄基地、ブルネイ、リンガという海上ラインを構築して前線を維持している。

 

 対して中部海域では、岩川基地から硫黄島基地、更にトラック泊地を経由してそこから最前線のクェゼリン、若しくはショートランド泊地へと分岐するラインで物資の輸送を行っていた。

 

 

「クェゼリンとショートランドに対しての補給路変更……という事は、硫黄島かトラックのどちらかに問題が発生したと?」

 

「球磨がここに来る前には硫黄島から入れ替わりで矢矧が着任したクマが、特におかしな事は無かったクマよ?」

 

「まだ連絡が来てすぐなんで深い処まで調べは付いてないんだけど、どうもトラック辺りで何か問題が発生したみたいで、現在補給路は硫黄島を基点にしてパラオ・ショートランドってラインで、クェゼリンに関しては硫黄島から直接補給が行ってるらしいんだよね……」

 

「おいちょっと待て、パラオ経由でショートランドはまだ距離的にどうにでもなるが、硫黄島からクェゼリンに直接となると距離があり過ぎて船団規模が膨れ上がる事にならんか?」

 

「長門君の言う通り、硫黄島からクェゼリンに直接ラインを結ぶとなると、航続距離の関係上どうしても補給艦の導入が必須になり、更には支配海域ギリギリのラインを通過する箇所があるので護衛船団を追加する必要性が出てくる、結果として船団規模が大きくなり輸送時間がかなり掛かるっていう、コストも時間も無駄だらけの困った状態になっちゃう訳なんだけどねぇ……」

 

「そしてそれだけ肥大した輸送船団で物資を運ぶとしても、その物資量は今までと変わらずっていう、もぅコレ誰得って感じがしちゃうんですけどぉ」

 

「なんとなく事情は察したクマ、でもそれなら何でクェゼリンからその情報が流れて来ないクマ?」

 

 

 吉野の解説と、漣の感想に一同は首を捻り現状の把握に努めている。

 

 拠点に於いて緊急事態が発生するというのは割と珍しくは無い物であるが、それは大抵最前線に於いて起こるものであり、支配海域の中にある拠点、しかも物資や移動の中継となる場所が拠点単位で機能しなくなるというのは通常在り得ない事であった。

 

 

「トラックはその性質上中部海域を支える柱であると共に最悪の場合絶対防衛線として機能する拠点だ、そこに所属する艦娘は精強と謳われている猛者揃いの筈だし、位置的にクェゼリンが無事でトラックが落ちるなんて事は在り得ない」

 

「……基地で内紛が発生したか、拠点丸ごと軍に対して反旗を翻したか……」

 

「調査中なので何とも言えないけど、後者は状況的に無いんじゃないかな、もしあそこでそんな事したら本土と前線に挟まれてフルボッコになっちゃうからね」

 

「ふむ…… しかし漣や提督の(つて)でも詳細が入ってこないのか?」

 

「入ってこないと言うより圧力が掛かりやがりました、何やら艦隊本部内で新設された部隊が監査を入れるらしいので、その露払い的に外部を通じて圧力が掛かったというメシマズ状態なんですよ」

 

「外部が絡んだ情報って部分は漣だから知り得た情報であって、他じゃその情報に触れる事すら出来ない状況なんじゃないかなぁ……だから飯野司令は情報を寄越さないんじゃなくて、そもそもその情報を掴めないでいる(・・・・・・・・・・・・)、とか」

 

 

 最初の五人と謳われる内の一人、綾波型九番艦 漣

 

 彼女は軍創成期には前線で戦い日本を窮地から救った立役者の内の一人であったが、他の者と同じく激しい戦火を潜ってきた結果艤装に致命的な損傷を負い海へは出れない存在になっていた。

 

 そしてその後、電は医療研究者として、吹雪は大本営の艦娘の取り纏めとして生きる道を定めた様に、漣は己の能力を生かしたいが為にまだ本格的な諜報機関が存在しなかった軍に海軍情報部という組織を立ち上げ、情報の面で軍を支えるという戦いを続ける事にしたのである。

 

 しかしそんな組織は時間の経過と共に彼女の思惑とは逸れていき、戦いの場が外では無く主に内側へ、つまり派閥闘争の道具として利用される物へと変貌した為彼女はすっぱり見切りを付け退任、更にその際己の持つ情報網や抱える情報全てを引き上げ部署を形骸化させた結果、現在海軍情報部は腐敗の一途を辿り、各将官達は私兵を使って独自の情報部署を持つという現況を作り出す事になった。

 

 そんな事情で生まれた組織の一つが大隅大将麾下の特務課であり、そこは言わずと知れた吉野の古巣であった。

 

 

 軍として再整備された組織の初期に軍の情報を掌握していた漣と、彼女が消えた後軍内部の文官の長である大隅の元で情報戦の最前線を張っていた吉野が手を組んでいる。

 

 そんな大坂鎮守府で把握出来ない物があるなら、恐らくクェゼリンの様な戦闘重視の拠点では情報の把握が付かないまま混乱していてもおかしな事では無いとも言える。

 

 

「という事はトラック泊地が騒動の元と認識しても良いのだな?」

 

「ですね~ 鎮守府裏掲示板のトラック泊地スレもここんとこストップしたまんまで沈んじゃって、もうすぐ過去ログ倉庫行き待ったなしですし……漣的にはトラックで何かあったのは確定だと思うのですよ?」

 

「その掲示板が情報確定の判断材料と言うのなら提督は異議を唱えたいと思います……」

 

 

 げんなりした吉野の前に、ニヤニヤした漣がタブレットをスイっと差し出す。

 

 そこにはチカチカと目に優しくない配色のサイトが映し出されており、世の提督にとってはある意味危険極まりない情報が満載された禁断の世界が詰まっていた。

 

 そしてその掲示板のスレッド一覧のトップには 【益荒男降臨】大坂鎮守府総合Part97【鎮守府総嫁】 という吉野的には知りたくなかった文字が躍っていた。

 

 

「ちなみに最近は漣も初雪ちゃんもスレ立てしておりませーん、ので、スレタイは他拠点の艦娘さんが付けたものですのであしからず」

 

「ちょっと待って何でカッコカリとかその辺りの情報他の拠点の艦娘さん把握シテンノ!? てか鎮守府総嫁って明かに情報漏れてるよね!? そんなのでいいの情報部室長!」

 

 

 漣はピコっとスレタイをタップする、そして図らずも吉野はその内容の一部を見る事になる。

 

 

─────────

108 :嫁に来ないか?@大坂鎮守府:2016/10/○○(※) 14:44:29 HOST:○○○○-×××××.Lingam.Navy.com

噂に聞いてたけど吉野クンって好き者確定? ウチの多門まr じゃ無かった提督も割りとそっち関係はお盛んな方なんだけど

 

109 :嫁に来ないか?@大坂鎮守府:2016/10/○○(※) 14:49:31 HOST:○○○○-×××××.yokosuka.Navy.ne.jp

  好き者かどうかは知らんが、ドクペが好きなヘンタイと言うのはこの51連装砲に掛けて真実だと言おう。

 

110 :嫁に来ないか?@大坂鎮守府:2016/10/○○(※) 14:55:18 HOST:○○○○-×××××.Tauitaui.Navy.com

  嗚呼……ウチの妹も毒牙に掛かってしまいました…… よりにもよって何でおしるこ話で明け方まで話を聞くハメに(T_T)

 

111 :嫁に来ないか?@大坂鎮守府:2016/10/○○(※) 15:08:02 HOST:○○○○-×××××.oosaka.Navy.ne.jp

  朱に交われば何とやらなのです、案外中に入ってしまうと何という事は無いのです!

 

112 :嫁に来ないか?@大坂鎮守府:2016/10/○○(※) 15:11:25 HOST:○○○○-×××××.Lingam.Navy.com

  >>111

  関係者キタ!、よしっ、友永隊、頼んだわよ!

 

113 :嫁に来ないか?@大坂鎮守府:2016/10/○○(※) 15:14:46 HOST:○○○○-×××××.yokosuka.Navy.ne.jp

  そうだ、艦載機を放って突撃。これだ……

─────────

 

 

 正に諸行無常。

 

 

 吉野はガラスのハートが砕け散る前にそれらから目を背ける。

 

 例え書き込み情報であるホストアドレスと会話内容から誰が書き込んだ物なのか判ってしまっても敢えてそれを深く考えない事にする、世の中それが真実でも知ってはいけない事実があると言うのは裏の世界で生きてきた吉野は充分弁えているからである。

 

 

「ふむ……この掲示板とやらは誰でも使える物なのか?」

 

「あ、長門さん興味あったりしちゃいます? 何ならこの漣、通信機器の手配から使用方法までバッチリお手伝いしちゃいますよ~?」

 

「ヤメてイチゴパンツ!? これ以上内部情報のリーク元増えちゃうと提督の毛根ダメージ半端無いから!」

 

「ああ冬華(レ級)が言ってたウチゲバ掲示板ってコレの事だったのね?」

 

「キヨシィィィィィィ!? 提督の何ウチゲバしたのぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 

 こうして初の教導任務に向けて準備を進めていた第二特務課であったが、業務の取り消し自体は無かったものの、実質予定が無くなった状態になってしまい予定の組み直しを迫られる事になってしまった。

 

 

 

 そして後日、吉野の元にはトラック泊地で発生したトラブルが大本営側から正式な報告書として届けられる事になる。

 

 

 その報告書には、渦中のトラック泊地では深海棲艦の強襲を受け大規模戦闘が発生、基地司令長官が負傷し、同時に戦力の損耗もある程度あったものの、たまたま査察に訪れていた特務士官が代理指揮を執ってこれを撃退、現在基地機能回復の為急ピッチで復旧中という内容が記載されていた。

 

 

「あー…… 何だか拠点が深海棲艦の攻勢を受けて半壊してたって事らしいんだけど、漣サンとしてはこの報告書の内容はどう思われますか?」

 

「ん~ はっきり言いますと、取って付けたような理由と言うか、拠点が強襲された時点で何故友軍への救難要請が無かったのかなぁとか、そもそも情報周りがガッチガチに圧力が掛かっていた件について! その辺りもっと突っ込む事は出来ますけどそこに踏み込むと何かヤ~な展開が待っている気が」

 

「だねぇ…… ウチとは殆ど関係ない話だし、ほら……ココ、これはちょっと触るな危険ってステッカーが張り付いちゃってるんだよねぇ」

 

 

 報告書の末尾には『艦隊本部麾下監査部隊』という名称と、報告書の作成者とおぼしき『槇原南洲(まきはら よしくに)』という特務少佐の名前が記されている。

 

 

 吉野の記憶が正しければ監査部隊という組織は記憶に無い部署であったが、大本営に於いて艦隊本部というのは通常独立して運営されている将官お抱えの艦隊に対し、命令権及び監査権を持つ唯一の部署である。

 

 大規模作戦が発令された際作戦立案や実行の命令はここから発令される事になり、基本その指揮系統は一律その部署に集約される事になっている。

 

 平時に於いては他拠点の管理、及び戦力の分配を担い、更には建造等の管理という艦政本部も内包するという、正に軍の実務面を一手に担う組織であった。

 

 

「ウチみたいな事務方(じむかた)とは対極にある組織だからねぇ、ある意味一番対峙したくない相手なんだよねココ」

 

「あらあらぁ? ウチはイケイケの戦力が揃っちゃってますが、いつから事務屋になっちゃったんですかぁ?」

 

「今んとこ朔夜(防空棲姫)君始め、深海側の窓口としてウチは存在してる訳だし、そこんトコ軍が反故(ほご)にしない限りウチは只の後方支援艦隊でかつ教導艦隊という物でしかないんじゃないかな?」

 

「もし反故(ほご)された場合はどうなっちゃうのか漣聞きたいなぁ~」

 

「国をバラバラにしてでもそれをしたいって連中は、基本日本海の向こう側の連中辺りだろうから……そんな事になる前に色々諸々としちゃう為に我々は事務屋をしているんですよ漣クン?」

 

「あ、な~る、その時は事務屋パゥアー全力でキュッ! と、ウチのやり方で(・・・・・・・)?」

 

「まぁ長門君とか榛名君辺りは嫌うやり方になるだろうけどねぇ」

 

「で、ご主人様結局この件はどうします? 新設の部隊とか色々情報は拾っておいた方がいいと漣は思っちゃうんですけど?」

 

「今はスルーで、この件はまだアツアツの状態なのでつつくと火傷する可能性があるからほとぼりが冷めてから、事が落ち着いて周りが緩んだ辺りにそれとな~く探りを入れていこうか」

 

「アイアイサー」

 

 

 

 しかしこの後、この一旦棚上げにした案件の渦中にある組織を巡って第二特務課は別方向から思わぬ形で関わりを持つ事になる。

 

 それはこの大坂鎮守府に於いて未曾有のトラブルが勃発し、それを元にした数々の邂逅とカオスが待ち受けているのをこの時誰も知る由が無かった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「風がとても気持ちいいですね」

 

「ハイソウデスネ……」

 

「榛名も最近くじ運に見放されて中々一番くじが当たりませんでしたが、今日やっと当選できました」

 

「ソレハタイヘンデシタネ……」

 

「丁度昨日酒保からオーダーしてた衣装が届きましたので、今日はそのお披露目です」

 

 

 鎮守府施設群前にあるグラウンド、その芝の辺りでは三時の午後休憩の為手隙(てすき)の者が集ってまったりと休息を取っていた。

 

 そこに集う艦娘達は先日提督から指示というか懇願というか土下座染みたお願いがあって、取り敢えずはメイド服を自室以外では着用しないという取り決めが成されていた為に普通の制服を着用していた。

 

 

 榛名以外は。

 

 

 何故榛名のみがメイド服を着用しているのかに付いては、何やら『三時の休憩の際にのみ提督を独り占めしていいよシステム』というのが存在し、その時のみメイド服を着用して良いという事になっているのだという。

 

 そしてそのシステム関係には吉野の拒否権は微塵も加味されず、更にそれはくじ引きという方法で参加者を募って日々色んな駆け引きが繰り広げられていた。

 

 

「くじ引きなんて物で戦いを挑むなんて私達にとっては勝ち目なんt……嗚呼……空はあんなに青いのに……」

 

「嗚呼……姉さまの心がお空の彼方に飛んでいってしまったわ……不幸だわ」

 

 

 芝生の端には戦艦棲姫姉妹が空を眺め黄昏つつ項垂(うなだ)れていた、この様にくじシステムは運の要素が多分に絡み、公平でありながらも連続して同じ者が権利を取得してしまうという不公平さも同時に持つという側面もあったが、現在話が纏まりつつある"日替わり本妻のローテ"が決まるまでの予行演習的意味合いもあるので現況特に異議を唱える者は居なかった。

 

 

 現況を判り易く解説すると、現在はその日の気分でめにぅを決めちゃうファジーなオーナーシェフが作る『シェフの気まぐれランチ』が目玉の店が経営している状態であるが、後に放漫な経営状況に店を閉めるハメになり、そこには新たにフランチャイズな食堂が建ち、その店の目玉めにぅが『日替わりランチ』という物であった的な、そんなカンジである。

 

 

 そんなシステムの勝者である榛名は先程述べた様にメイド服を着用していた、それは白を基調としたシンプルなメイド服であり、肩やスカートの一部にワンポイントで黒の縦縞が入いるという色合いの落ち着いた物であった。

 

 

 人はそれをダズル迷彩と呼ぶ。

 

 

 まぁダズル迷彩と言えばある意味榛名の代名詞であるのは周知の事実であり、色合いも落ち着いた物であった為にそれは特に違和感が無い物と言えるかも知れない。

 

 しかし色合いが落ち着いたダズル迷彩の物であったが、特注のそれは他の艦娘達が考えに至らなかった彼女のオリジナルデザインが反映されていた。

 

 先ず通常着用している改造巫女服の様に袖と胴部分がほぼセパレートになっており、脇の部分一点だけでそれは繋がっていた、更にスカートの丈はどこぞのレディカガの様なマイクロミニという狂った物では無かったが、その代わりに他の箇所でマイクロ的な部分が存在していた。

 

 それは上着の丈が非常に短い作りになっており、当然その部分をカバーするべき布が存在しないのでヘソが丸出しの状態で外気に晒されていた。

 

 

 それはビキニメイド服という新たなジャンルが爆誕してしまった瞬間である。

 

 

 そんな新種のメイドに現在吉野は膝枕という状態でロックされている訳だが、その姿勢のまま上を向くと、何と言うかたわわな果実の下側がチラリズムでとても危険な状態なのである。

 

 思わず頭のポジションをずらして横を向いたりするのだが、その度にゴキリと嫌な音を立てて首の位置を矯正させられるという事が数度繰り返される。

 

 何せそれをする者は姫級相手に力比べで勝ってしまう大艦巨砲主義を地でいく艦娘である、本人はそっとしているつもりでも吉野が性的な意味以外で鼻血を垂らしてしまうという威力をそこに生み出していた。

 

 そんな訳で現在吉野は鼻ティッシュ状態で、膝枕をされつつリラックスと言うか半ば放心状態で力無く横たわっていた。

 

 

 膝の上に半分魂が抜けた基地司令長官の頭を乗せ、御満悦なヘソ出しメイドはジルジルジルとひやしあめを啜ってプハーと息を吐く。

 

 その度に横並びのアンダーなアレがプルルンと揺れて色んな意味でデンジャーなビジュアルが展開される、そしてそれを見せ付けられた吉野は反射的に首ポジを変更するが、またしてもオートでゴキリとそれは矯正された。

 

 

 ダズルなビキニメイドが飲み物を口にする度に吉野の寿命が刻々と削られていく、判り易く表現すると、『ジルジルジルプルルンゴキリはなぢブー』という状態である。

 

 端から聞くととてもコミカルな擬音の集合体であるが、そこには尊い命の灯火が掛かったとても切実な惨事の休憩時間の出来事であった。

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。

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