大本営第二特務課の日常   作:zero-45

85 / 329
前回までのあらすじ

 色々な為になる講義を開催した提督であったが、何故かオムツプレイヤーの烙印を押される結果になってしまったという。


(※)御注意

 実はこの度とある方からコラボのお誘いを頂きまして、どれだけの話数になるかはまだ判りませんがそのお話を書く事になりました。

坂下郁 様 連載
【逃げ水の鎮守府-艦隊りこれくしょん-】
https://novel.syosetu.org/98338/

 上記にあります様に今回は坂下郁様の作品世界とコラボレートしたお話になります。

 一応内容としては互いの世界観を崩さず、更に作品世界の物語を絡ませつつも、別作品との絡みという話では無く、どちらかと言うと今まで続いている連載の中に自然な形として組み込む話を目指した展開にしようという試みで進行する努力を致します。

 また『大本営第二特務課の日常』側ではこのコラボ展開に絡む話は、サブタイトルは『日常という名の非日常の始まり』に統一する予定で御座いますので、それを目安に読んで頂けたらと思います。
 
 以下の内容に興味が無い、又は趣味趣向が合わない方がおられましたらブラウザバック推奨になります。


 それではどうか宜しくお願い致します。


2016/11/03
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きました結城刹那様、有難う御座います、大変助かりました。


日常という名の非日常の始まり(1)

 その日大坂鎮守府情報室では室長のイチゴパンツが珍しくもシリアスな顔で前を睨んでいた。

 

 あのまだ艦娘が五人しか居なかった頃、絶望が常の海ですら周りを鼓舞し、笑顔を絶やす事無く生きてきた彼女。

 

 そんな漣が目を細めて目の前にある光景を険しい相で見詰めている。

 

 

「漣ちゃん……」

 

 

 そんな漣を前に、同じく情報室の所属である初雪も沈痛な面持ちでその様を眺め言葉を失っていた。

 

 

 いつもの定位置パソコンデスク、最近こっそり導入した例の人をダメにしちゃう的なソファーも完備し、ある意味漣が日々の拠点にしていたそこ。

 

 そこには現在プスプスと焦げ臭い煙を上げた自作のフルタワーパソコンがあり、更に緊急用バックアップ用にネットから物理切断されたサーバーとタワーパソコン間でパージされた状態の緊急用サージコネクタが無残にも転がっている様が見える。

 

 情報収集を旨とされる部署に於いて、その風景はある意味戦場で負けた事を意味し、死という物理的な結果は生み出されてはいないが、情報というある意味諜報を扱う者にとって命と同義の物を取られたという結果がそこにあった。

 

 そしてそれを見る漣はただ無言でそれを見る、その小さな胸の内にあるのは怒りか後悔か。

 

 そんな彼女がゆっくりと初雪に振り向き、一度目を伏せ何かを考える様を見せた。

 

 黙って次の言葉を待つ初雪ですら、長い付き合いであった彼女のこんな姿を滅多に見た事が無かった。

 

 

 絶対の自信を以って活動してきたエキスパート、情報の最前線で戦ってきた誇りと矜持、それを踏み躙られた今。

 

 

 そんな大坂鎮守府情報室の長は徐に両の人差し指を頬に当て口から舌をペロンと出す。

 

 

「カウンター食らってパソコンオシャカですよマジで、てへぺろっ」

 

 これは後から判った事であったが、その時彼女はそんな仕事に対するプライド的な物が微塵も無く、仕事をしつつ同時にネットから落としてきたアニメデータをエンコードしていたモノがPCと共にぶっ飛んだショックで頭が真っ白になっていたという、そんなダメダメな理由を後から白雪が聞かされたという。

 

 そしてその時のイチゴパンツはどこぞのケーキ屋の店先にある赤いオーバーオールを着た例の少女人形の如く、着る毛布にすっぽり包まれた姿も相まってとてもマヌーに見えたと座敷童(初雪)が後に述懐した。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「で、やはりと言うか中身は熱暴走でオシャカ、重要なブツは定時バックアップの直後だったから殆ど実害は無い状態なんだと思いたいけど、やっぱご主人様の言う通りこの件ってばまだ探りを入れるのは時期尚早だったって事ですかぁ、ん~問題は……っと初雪ちゃん、そっちはどぅ?」

 

「ん……通信ログから最終的な漏洩先を洗うのちょっと厄介かも、串刺してある上にかなりの叩き台経由しちゃったからどこでカウンター食らったか判らない……」

 

「あー、じゃ今は火消し優先しちゃわないとヤバいかなぁ、叩きに使用した外部PCからこっちまでの経路判んないよう偽装しないと別件でウチ叩かれ兼ねないしぃ」

 

「そっちは大丈夫……ウチまでの経路跡幾つか辿ってログ消しておいたし、ここの直近4箇所のプロパイダ記録上書きしといたから多分バレない」

 

「オゥケイ、で、ウチから漏れた情報が何か特定できた?」

 

「ログのファイルサイズから検索掛けてる最中……今判明してるのは微妙なヤツばっかだけど、まだ全部判明するまで時間が掛かる……」

 

「ん~ まだ時間掛かりそうですねぇ、じゃチョロっと漣はオシャカになった機材の代替調達と予算の確保に行ってきます、お昼とか間に合うか判んないから時間が来たら適当に済ましてて?」

 

「ん……了解」

 

 

 情報室という名の巣から出て三歩、そこにあるのは『提督執務室』というプレートが張り付いた木製に偽装された耐爆仕様というちょっと狂った軽合金の扉。

 

 ノックを四回、中に詰めている事務方(じむかた)の大淀が応対に現れ、中に招き入れられる。

 

 

 部屋の主である吉野は訓練の様子を見る為外出しており、それに伴って秘書艦二人も当然留守状態、そんな結果現在この拠点の中枢には諸々の事務処理に追われる大淀と妙高の二人が留守番を兼ねて其処に居た。

 

 

「どうしました漣さん、珍しく制服を着ているみたいですが」

 

「ん~ ちょっち問題が発生した関係で、ご相談がありまして」

 

「提督では無く私ですか? という事は予算関係の話でしょうか?」

 

 

 元大本営眼鏡序列一位であったoh淀、軍のカーストの頂点と称されていた彼女であったがそれでも"最初の五人"と呼ばれている存在は特別なのだろう、予算系の話の際必ず相手に対し"話を円滑に進める為"に行う"いつもの"威圧する雰囲気は見せずに話を聞く姿勢を見せている。

 

 そんな眼鏡の王に対し漣は現状の状況を説明した上で、今後の対策とそれに対する諸々の必要機材の早急なる復旧を陳情する。

 

 

「それで…… 現状こちらから漏れた情報の内機密性の高い物はどれ位含まれていたのでしょう?」

 

「やられたのはネットに常時接続の作業用マシンだったから殆どは抜かれてもオッケーな物か、機密扱いに偽装したウイルスだったんだけと、まだ全部調べは付いてないし断言は出来ない状態なのですよ……、でもぉ」

 

「でも?」

 

「ちょちょーっと、ヤバいブツが一つだけ……」

 

 

 そうして情報室の主が事務方(じむかた)の主に吐露したヤバいブツ、それの元データを持参したノートパソコンを見せつつ解説を始めた。

 

 ツイっとタッチパットに指を滑らせ、カーソールが移動した部分にあったそこには『ご主人様』という名称のフォルダがある。

 

 タッチパットボタンを叩くとフォルダの中身が展開され、その中にあったのは大量のJpgファイルと音声ファイル、そして幾つかのテキストファイル。

 

 

「ご主人様フォルダ……ですか?」

 

「ですです、いやぁ今ちょっと計画している案件がありまして、それのある意味成功率を上げる為にネタを色々と作っていた最中だったんですけど、ちょーっといつも作業するスタンドアロンPCが別件で塞がってたから件のPCで作業してた時がありましてぇ、その時の作業データ残ってましたというヤッバーい感じと申しますかぁ……」

 

「中身は何だったんです?」

 

「あ、見ちゃいます? んん~大淀さんなら口堅いから大丈夫かなぁ」

 

 

 そうしてフォルダ内のテキストファイルの一つをタップすると、画像が添付され色々装飾された文章が散りばめられたそれが現れる。

 

 

─────────

 

【今日のご主人様】

 

0936

 グラ子のバストを頭に乗せながら大将さんと真面目な打ち合わせ、まさか今後の軍を左右する重要案件をon the おっぱいで行っているなんて大隅様も知らないだろう。

 

1019

 加賀さんの更に進化を遂げたメイド服にorzなご主人様、流石にマイクロミニは耐えられても網タイツピンヒールは無理だった模様。

 

1218

 最近色々な事に目覚めた間宮さんのアタックの為か、ご主人様の食事だけ特別仕様ナリ、料理自体は普通の秋刀魚の塩焼き定食だけど、ご飯にピンクのハートでんぶとか、秋刀魚もハート型にひん曲げて焼き上げるとか、前衛的である意味ホラー。

 

1521

 今日のクジは(空母棲鬼)っちが勝者、何かツンケンしてはいるけど移動はスキップとか、上着の裾を持ってテコテコ付いていく姿は完全にLOVE勢だと思うのですよ、でもその……バド○ールっぽいレースクイーン衣装は無い、それは無い、メイド服どこいったし。

 

1617

 夕張ちゃんの装備開発進捗状況視察、何かロボの腕がロケット噴射で飛んでったけど戻る機構を付け忘れてたとかで 大・失・敗 でもさ、もういつものシリペンは見飽きちゃったかなぁ、そろそろ新パターンを所望します。

 

2043

 自室でのんびりな一時、何やらニコニコして密林ポチしてたから履歴調べたら、た○ぱんだのトラベルセットを注文してました、何と言うかキモい、修羅の国にでも旅立てばいいのに。

 

2315

 パシフィック○ムとかのDVDを見た後真剣な表情で『もしやジ○シー式のロケットパンチならいけるんじゃなかろうか……』と呟いていた、ジプ○ーって何? 何のかんの言ってても結局スプーは気に入ってるみたい。

 

0206

 今日は叢雲ちゃんの番らしく、こっそりとオフトゥンに潜り込み開始、ものっそニコニコしつつスンスン匂いを嗅ぐのはちょっとどうかと思う、てかお薬飲んで眠らないといけないからって毎晩誰か同衾しても気付かないのは正直どうかと思うのですよ? まぁ誰も損はしてないしいいのかなぁ。

 

─────────

 

 

 吉野の一日を赤裸々に綴った素行調査書っぽいそれが画像を添付した状態で編集されていた。

 

 更に夜な夜な展開されていた潜り込み案件が発覚した瞬間である。

 

  

「あの……漣さん、これは?」

 

「ああ、今度試験的に鎮守府内でサービス開始しようとした会員制コミュの特典に付けるブツと言うかオマケですねぇ」

 

「オマケ……ですか?」

 

「そそそ、ウチではご主人様関連をオマケに付ければ収益はUP傾向にありますしぃ、同様のコミュを他拠点用に立ち上げた際、其々の拠点の司令官LOVE勢相手にオマケを配布すればどうなるのかのテストをしたかったんですよね」

 

「成る程……確かに需要と供給側の僅かな嗜好のズレが多数の顧客を取りこぼす結果になるというデータもありますし、オマケの質が高ければそれだけ取り逃した顧客を呼び込めるなら結果として収益UPは望めますね……」

 

「デショデショ? 他にも色々と計画はしてたんですけど、脆弱な設備でこれ以上色々しちゃうのもどうかと思うんですけどもぉ……」

 

「その為に今以上の予算の編成ですか…… それによる収益アップの見込みはデータとして抽出は可能ですか?」

 

「質の向上次第ですねぇ、例えばこの日記に加えて秘密のポートレートとか、継続契約の特典として秘密のボイス吹き込んだ目覚ましとか、後ピー(自主規制)とかピー(自主規制)のデータを随時更新とか、それの情報収集やセキュリティ次第で内容は変わってきちゃいます」

 

 

 淡々と新たなる提督達の危機に直結するアングラサービス設立に関する密談が繰り広げられていた。

 

 そしてそのサービスを利用する事で世の提督の赤裸々なプライベートが筒抜けになるという危機がイチゴパンツから語られ、それを銭勘定として計算しソロバンを弾く黒髪眼鏡、ある意味軍の暗黒部分を濃縮した場がそこに存在していた、主にプライベート保護の観点において。

 

 そんな二人の会話に割り込んでくる者、イチゴパンツの両肩を掴んで真剣な相の艦娘、奥で事務処理に精を出していた妙高である。

 

 

「漣さん、その、あの、その秘密のピー(自主規制)とかピー(自主規制)とかピー(自主規制)ってマジモノのデータなんですか?」

 

「はうっ!? え、えっとまぁ……ある意味情報室の全力をテストするのにご主人様という諜報のエキスパートに挑戦して得られたモノですし、中身の正確性は保障しますですよ?」

 

 

 軍の一拠点を担う、しかもその筋でいえば海軍の中では相当なレベルであろう情報を扱う課が全力で日夜繰り広げる諜報活動、それは一個人のプライベートを丸裸にするという活動に全力を注ぐという意味の判らない活動であった。

 

 それのターゲットになっている人物もその筋のプロである為活動は政府中央の情報を探るよりも困難を極め、使用している機材も手法もそこらの地方拠点では考えられないレベルの物となっているという、色んな意味で壮大かつ無駄な諜報戦が日々大坂鎮守府では繰り広げられていた。

 

 当然そこから得られる情報とは妙高の様な普通の艦娘さんに触れられる物である筈も無く、そこにピー(自主規制)とかピー(秘密のアレ)とかピー(R18指定)なんかのデータが詰まっているとすれば、とても狭い範囲のストライクゾーンを狙ったニッチなモノであってもそれは確かにお宝と言える物なのかも知れない。

 

 それは吉野のプライベーツに関わる物であるというのは当然秘密の話しではあるが。

 

 

 そんな話を聞いた妙高は漣の肩を握ったまま、キラキラエフェクトが付いた真面目な相を大淀に向ける、エフェクトの様子を見ると恐らくそれは三重キラであるのは間違いないだろうと付け加えておこう。

 

 

「大淀さん……」

 

「な……何でしょうか妙高さん」

 

「この案件、早急に処理するべき物では無いかと」

 

「"特急案件"……という事でしょうか?」

 

「はい、今すぐにでも予算編成するべきかと」

 

 

 この時大淀の頭の中では、情報面での重要性よりも、それの取り扱いで艦娘の反応が予想以上の反響を成す物と妙高の様子から判断した為、更にそこから弾き出される今後のサービス運用から得られる様々な"効果"に有用性を見出した。

 

 因みにこの辺りの効果というのは主に鎮守府の運営的に関わったりしちゃう影響力や、副次的に発生する金銭的なぶっちゃけ実弾補充という現象の事を指すというのは言うまでもない。

 

 こうして異例の速さで膨大な額の予算が情報室に投下され、その後軍の物流を掌握する明石酒保本部がある拠点という環境であったが故に、供給された設備機器は研究施設レベルのブツが、加えてそれの設備工事が例の黒ツナギの妖精さんの手で行われた為に作業速度が凄まじい勢いで行われ、其々の事象が加速して全てがまるでドミノ倒しの如くパタパタと連続して繋がっていってしまった。

 

 結果、大坂鎮守府情報室は人の繋がりという膨大な(つて)でさえ相当なレベルであるにも関わらず、更に物理的なセキュリティ、及び情報収集能力を得てその分野では国を相手にタメを張れる組織に成長してしまったというのを吉野が知ったのはこれより少し後の話である。

 

 

 

 そしてこの国家規模の性能を有する設備機器導入の引き金になった物は、吉野のピー(見せられないよ!)なモノだったという正気を疑いたくなる様な物であったのだが、ついぞそれを本人が知る事は無かったという。

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。