大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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 今回も引き続き坂下郁様の作品世界とコラボレートしたお話になります、又話の時間軸として今回の話はあちら様の32話から33話の間にあたる部分を大坂鎮守府側で埋めた形のお話になりますので、合わせで読んで頂く事で意味が通る仕様となっております。

坂下郁 様 連載
【逃げ水の鎮守府-艦隊りこれくしょん-】
https://novel.syosetu.org/98338/

 一応内容としては互いの世界観を崩さず、更に作品世界の物語を絡ませつつも、別作品との絡みという話では無く、どちらかと言うと今まで続いている連載の中に自然な形として組み込む話を目指した展開にしようという試みで進行する努力を致します。

 また『大本営第二特務課の日常』側ではこのコラボ展開に絡む話は、サブタイトルは『日常という名の非日常の始まり』に統一する予定で御座いますので、それを目安に読んで頂けたらと思います。
 
 以下の内容に興味が無い、又は趣味趣向が合わない方がおられましたらブラウザバック推奨になります。

 尚今回も支援として挿絵頂きました、有難う御座いましたァッ!

『無能転生 ~提督に、『無能』がなったようです~』
https://novel.syosetu.org/83197/
作者、たんぺい画伯、カオス物書きのあの方です……


 それでは何かご意見ご要望があればお気軽にどうぞ。


2018/09/23
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きましたforest様、柱島低督様、有難う御座います、大変助かりました。


日常という名の非日常の始まり(5)

「それでAdmiral、二人っきりになった訳だが私はこれから夜伽でもすればいいのか?」

 

 

 場所は大坂鎮守府執務室、査察部隊と思われる一団と軽く一戦をぶち、結果としてその隊の艦娘数名を鹵獲、尋問しようと試みるがその内の一人、羽黒が錯乱状態に陥りそれは出来ないまま現在に至っている。

 

 状況的には売られた喧嘩を買った状態であったがそれをするには差し向けた戦力が大人気無さ過ぎた。

 

 大坂鎮守府所属の深海艦隊全員での迎撃、恐らくそれは大本営の第一艦隊ですら凌げる事は不可能なイケイケ艦隊である、しかもその旗艦である朔夜(防空棲姫)は激オコ状態。

 

 お手柔らかにと言ってもそれを聞く筈は無いと吉野は半分諦めていた、そしてその結果鹵獲してきた艦娘と顔合わせをしてみれば、何故か全員バインバインのプリンプリンで亀甲縛り。

 

 その格好を見て大体何がどうなっているのか察した吉野であったが、それに混じって何故か一人だけ別の世界を展開していたフルフラット園児を敢えてスルーしたのは脇に置いといて。

 

 

「また古風な言葉を知ってるんだね、色々そっちに魅力を感じない訳じゃ無いんだけど、この前軽く打ち合わせした件で色々進展があってねぇ……」

 

 

 結局欲しかった査察部隊の情報は得られず、取り敢えずの執務時間も終了したそこにはグラーフと吉野の二人だけ、事務方の二人も既に引き上げ珍しく静まり返った室内で二人はソファーに腰掛け、心の篭らないピロートークを展開していた。

 

 

「ふふっ、てっきりAdmiralはいつもの調子でツッコミを入れてくると思ったんだがな、そういうジョークも交わせない程嫌な感じになっていると?」

 

「……だねぇ、前に説明した別口のお客さんだけど、やっぱり大陸系の息が掛かった組織だったよ」

 

「ふむ、では今ここで私と二人きりで打ち合わせと言うことは、それに対してカウンターを仕掛けるというのが決定したのだな」

 

 

 そう言葉を漏らし、コーヒーを一口含むと静かに溜息を吐く白い航空母艦、それを見る吉野も眉根を寄せたまま黙って一度首を縦に振った。

 

 カウンター、グラーフが言うそれはそのままの意味であり、彼女がドイツで所属していた部隊での言葉の意味をそのまま述べれば攻めて来る相手に対し、迎撃をするという言葉になる。

 

 そして対象をテロリストという存在を前提に成されるそれは、相手の無効化、それも殲滅()というのを意味する。

 

 

「自分に狙撃を仕込んでくれた人が今陸軍特殊作戦群の西日本方面の指揮を執っていてね、三日前にそっち系の拠点に強襲を掛けてなんとか鎮圧したみたいなんだけどさ」

 

「ほう? Japan(ヤーパン)にもそんな組織があったのか、それで?」

 

「そこから押収した資料の中に、ウチに関係する計画書が混じってたみたいなんだよねぇ」

 

「そこを押さえたにも関わらずカウンターか…… 討ち漏らしでも出たのか」

 

「いやいや、鎮圧は思いの他順調だったらしくて作戦は成功、んで普通ならこんな形で計画が露呈した場合繋がりのある組織とか関係者ってほとぼりが冷めるまでそういった計画ってのは延期するか、中止が妥当なんだろうけどね……でもその連中は計画を実行する中で実行員の質の向上を図って外部の、ん~思想の絡まない系の相手と契約してたみたいでさ……」

 

「テロリストでは無くプロか、厄介だな……で、そこを潰した時点では既に?」

 

「ああ、もう入金は済ませて契約は交わした後だった」

 

 

 世の中には仕事に責任を持つプロという人種はどこの世界にも存在する。

 

 技術を売りに活躍する者、物を扱う者、そして戦いを請け負う者、そんな様々なプロという名の者達が日夜金銭という対価を得るために活躍をしている。

 

 そしてそんなプロ意識が高い職人とも呼べる者達に一貫して見られる特徴は、己の技術に絶対の自信を持ち、またそれを使って得る対価の大きさと、それに伴う信用に拘る傾向にある。

 

 そこには妥協も無く、一旦請け負った仕事は余程の事が無い限り途中で投げ出す事は無い。

 

 例え雇用主がどうなろうと一旦受けた仕事は遂行する、基本信用という物でしか雇用関係の保障が無い世界に生きる者達は、次の仕事を得る為の信用を保つ為に、どうしても通さないといけない筋と意地がそこに存在する。

 

 

 そんなプロ意識が高い者が仕事を請け負う、そこに対価が支払われていれば、後は責任を果たすという結果が残されるのみであった。

 

 

「相手はそこそこ名前が売れた狙撃手らしくてね、どうもソイツは一人で仕事をしてるフリーランスって事で……」

 

「スナイパーが単独か、成る程、では私はそいつに対する哨戒と無力化を受け持てばいいのか?」

 

「いや、グラーフ君には哨戒だけに専念して貰おうかな、で、相手を発見したらだけどその場合自分へ直接報告して監視を続行、その後はこっちで対処するって流れで、自分が動かない限りは多分危険性は無いと思うから監視だけで暫く放置でもいいんだけどさ」

 

「……では今回のターゲットはAdmiralか、しかしその状況で直接対峙するとなると危険過ぎやしないだろうか」

 

「本当なら君にお任せするのが一番いいんだけどね、何というか言い難いんだけど、どうも自分の首には賞金が掛かっちゃってるみたいでさ、なーんかそこらの有象無象も出てきそうな雰囲気なんだよねぇ」

 

 

 消費者からは放置したラジカセの風味がすると言われている炭酸飲料が入った缶の中身を一口飲み込み、小さくゲップをした後に難しい顔のパイパイ空母に視線を戻す。

 

 今は深夜という時間帯であったが、数時間前に発生した査察部隊の強襲という事を受け、現在基地周辺は(空母棲鬼)の艦載機が上空を飛び回り、そしてもしもの為に交代で寝ずの番に当たっている者達が、煌々と輝くサーチライトに照らされた海に目を光らせていた。

 

 そんな明るい窓からの光が執務室を時折照らし、やや暗い室内に居る二人の影を散らす。

 

 

「まぁ幾らそんなのが攻めてきても恐らく問題は無いって程にはここは安全だと思うんだけど、しかしそういった輩がここの実体を知った上で外部に情報を持っていくととてもマズい事になる」

 

「ああ…… 深海艦隊の事か」

 

「そそそ、そしてこっそり来るそんなヤツらを毎度一人残らず迎撃できるなんて保障はどこにも無い」

 

「ふむ、大体の話は理解したが、何故そこでAdmiralが出るというんだ? そんなリスクを背負う位なら私が全て終わらせる方が効率的だ」

 

「グラーフ君の言う事は尤もだし、ヤツらもプロに違いない、幾ら手練を集めたとしても軍事施設に喧嘩を吹っかけて無事で済むなんて甘い考えはしていないだろうさ、そんな状況でも狙ってくると言うのは自分という存在に付け入る隙があるという認識が向こうにあるからだろうね」

 

「だから今回はAdmiralが直接襲撃者を始末すると?」

 

「そう、おあつらえ向きに今回の相手はその筋でもかなり有名処らしいし、狙撃系の者なら地の利を有するこちらが優位に立ち回れる、そして首尾良く始末が出来たらその情報を陸のお知り合いに頼んでパーっと配布」

 

「見せしめ……というよりその程度では予防線を張る程のレベルにしかならないか、それで勝率は?」

 

「基地外で事が推移したら恐らく一割届くかどうか、でもここでやるという条件下でなら七割」

 

「成る程、外では不意打ち的に狙われるだけだが、ここでやる限りは相手の存在が掴めるから後は狙撃技術の問題という事になるだろうしな」

 

「自分の技術云々というよりは、ここを管轄する立場で、更に相手と同じ狙撃手というJobの自分からしてみれば、幾らか予想される狙撃ポイントを潰して相手を誘導する事も可能だし、君に哨戒を任せれば不意打ちの確率は大幅に減る」

 

「ふむ……しかしリスクを背負ってソイツを始末した所で後はどれ程の抑止力が働くのか……それが問題だな」

 

「いやぁ、その辺りはまだ確定とは言えないけどちょっと面白い情報が入ってきてねぇ、効き目はニ~三週間程持てば充分なんじゃないかなと」

 

「そうなのか? ふむ、なら取り合えず私はそのフリーランスの警戒に専念すれば良いのだな?」

 

「既に幾つか手を回して狙撃ポイントを絞っているから、その辺りを重点的にお願いします、あ、自分が建物の外に出る時には連絡を入れるから、警戒はその時だけでいいからね」

 

「ああ、そう言えばここはバカみたいに建物が頑丈に出来ているんだったな、了解した」

 

 

 軽い言葉で交わされる言葉、その中身は充分な迎撃体制を整えたという前提であっても成功率は七割という不安を残したミッションである。

 

 しかしそれでも吉野自身に迷いは無い、ほんの一年前ではそんな条件での任務が日常であったからである。

 

 そしてそんな差配をし、艦娘という存在である自分を"人を屠る作戦"に迷い無く投入する指揮官に対し、サイコパスと呼ばれた者は口角を吊り上げ仕事の準備に取り掛かる。

 

 その心にあったのは、信用されているという確かな手応えと共に、自分という存在を充分理解してくれているという喜びであったという。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「夜分遅くまでご苦労さんだね、間宮さんに頼んで夜食を用意したから手が空いた子から食べちゃって」

 

 

 グラーフとの打ち合わせを終え、次に吉野が向かったのは出撃ドックに併設された待機室、部屋の約四分の一が仮眠用の畳敷きという小上がりになっている、そして現在そこには今回夜襲を想定した集中的な警戒を実施中である為に、自主的に鎮守府の戦闘員が集い、ローテーションで仮眠をとりつつ待機していた。

 

 現在はまだ夜明けまでは至らず、部屋にいる半数の者は持ち込んだ寝巻きに身を包み、そして現在哨戒に出ている者と入れ替わりを予定している者はいつ抜錨しても良い格好でそこに居る。

 

 右を見ればアニモー達が転がる畳敷き、左を見れば何故かフリフリでキラキラ状態のメイド服の一団。

 

 

 何故臨戦態勢の艦娘がメイド服で待機という事になっているのだろうか。

 

 

「……長門君」

 

「ん? どうした提督、顔色が優れんみたいだが」

 

「うんその、この状況で顔色が優れる人って……ある意味ケンペーサンにお世話になっちゃう様な人だけなんじゃないかなって提督は思います」

 

「ふむ? 何を言っているのかは判らんが取敢えず夜食の事に関しては礼を言う、丁度皆も空腹を覚えてくる時間帯に差し掛かっていたから手配しようかと思っていた所だった」

 

 

 そう真面目な相で述べる艦隊総旗艦はカメの着ぐるみを着た状態でくちくかんに囲まれ、まるで昭和のディスコホールにぶら下がっていたミラーボールの如くキラキラエフェクトを撒き散らしながらクネクネ運動をしていた、きもい。

 

 そしてメイド服の一団を見るとそこそこ気合が入っているのか、それぞれ只ならぬ雰囲気を(たた)えたまま黙々と艤装の調子を確認したり装備を触ったりしているのだが、その格好を見るとマイクロミニon the スパンコールなシャンソン一航戦や、そんな格好で海に出てポンポンを壊さないのだろうかと心配になるビキニメイドの武蔵殺しとか、そんなビジュアルの異世界が広がっている。

 

 そこから意図的に目を逸らせば夜食を配っている給糧艦達の後ろ姿、そのマミーヤさんとイラーコさんは色違いのミニスカオープンバック割烹着から見える背中を曝け出して吉野の前に双璧として聳え立つ。

 

 甘味の女王に並ぶもう一人の給糧艦もパックリ背中が開いた割烹着を当たり前の様に着たまま給仕をしている、一体彼女に何があったのだろうと吉野はその生背中を怪訝な表情で見詰めている。

 

 

「……あの、伊良湖さん、何故貴女までその……背中全開というかその……」

 

「ああこれですか? 間宮さんにどうですかと薦められたので」

 

「いつも提督思うんですが……伊良湖さんはもう少しその、自主性というか、そんなカンジの物を心掛けた方がいいと思うんですけど……」

 

 

 いつも思うのだが、ある程度カオスに慣れた頃にほんの少しだけ変化球を織り交ぜ、微妙に精神的均衡を崩してくるというか、真綿で首を絞めるカンジで彼女達は殺しに掛かってくるのは何故だろうと吉野は乾いた笑いを口から漏らしていた。

 

 そんな待機室に少し音量を押さえた電子音が響き、それを聞いたビキニメイドな金剛型戦艦と、何故か色違いのビキニメイド服のポイヌ(夕立)が装備を整え部屋を出る。

 

 その雰囲気は勇ましいという文字が似合う雰囲気であるにも関わらず、榛名のプリンプリンとポイヌ(夕立)の太ももに装備された魚雷発射管の固定ベルトがフリフリの付いた青いガーターベルトという訳の判らない組み合わせの為に、緊迫しつつもファンシーという混ぜるな危険が展開された場がそこにあった。

 

 何故戦場にメイド服なのか、艤装にまでヒラヒラのフリルの装飾は必要なのだろうかという吉野の疑問は入れ替わりで帰ってきた者の言葉で霧散した。

 

 

「ただ今戻りました、今の所近海には目立った動きは無いですね」

 

「そうか、大和に球磨も寒空の下ご苦労だったな、丁度今夜食が届いた処だからそれを採って仮眠を取るといい」

 

「クマ~ 丁度ハラペコだったクマ」

 

「有難う御座います、では頂きますね」

 

 

 そう言ってニコニコとミニスカオープンバック割烹着の給糧艦の元へ向かう二人を吉野は眉根を寄せて凝視する。

 

 日本を代表する国の銘を冠する大戦艦、史実では不遇な運用と世情が絡んでその力を発揮する事無く海へ没した存在は、現在生まれ変わって幾多の戦場を渡り、今はこうして大坂鎮守府で再び戦闘艦として活躍をする存在になっていた。

 

 

 メイド服を着て。

 

 

 その淡い赤色のロングスカートはサイドに腰上までも開いたスリットが入り、ノースリーブの脇は過度に布が少なく横から何と言うか盛大に……ものっそ見えていた、人はそれを横チチという。

 

 そして手首にはヒラヒラを縫いつけたリストバンドに服と同色のヘッドドレス、更にはピッチリしたそのメイドドレスはワンピースタイプであり、前部分は左前で布が重ね留められエプロンには龍の刺繍が入っている。

 

 

 大和型一番艦チャイナ服メイドが推して参った瞬間であった。

 

 

 更に大和と哨戒に出ていた球磨であるが、彼女の着る物は濃紺のメイド服にこれでもかと白いレースの刺繍が施され、膝上までのレースのソックスに黒いパンプス。

 

 頭に乗せたヘッドドレスはリボン状で服と同じくレースの帯が長く垂れ、アホ毛と共にエアコンの風にユラユラとそれが揺れている。

 

 

 水雷戦隊旗艦、ゴスロリメイドベアーが其処に居た。

 

【挿絵表示】

 

 

 

「く……球磨ちゃん……」

 

「き……聞かないで欲しいクマ、これは仕方が無かったんだクマ、球磨は何も悪く無いクマ……」

 

 

 吉野の視線に耐え切れず、プイッと横を向くゴスロリメイド、その横ではいつもの不自然な程にカッチリとした胸ではなく、横から際どい膨らみをバインバインさせ、美脚をチラ見せつつ大和がにこやかに吉野の傍に寄ってきた。

 

 どうやらこの装備の際は一式徹甲ブラは装備していないらしく、その何と言うか流石大和型というアレをプルンプルンさせつつ皿に乗った握り飯を吉野へ差し出して来る。

 

 

「提督も如何ですか? この調子だと朝食がちゃんと採れる保障は無いですし」

 

「ああうん……ていうか大和君……それは……」

 

「え? ああこれですか、取り合えずスカートが短くないのをお願いしますと明石さんに頼みましたらこれが……」

 

 

 淑女な彼女は周りの様に短いスカートは良しとせず、ロングタイプの物を注文したのだという。

 

 しかしそこは色々隙が無い明石セレクション、スカートの丈だけを指定した結果、それ以外が扇情的で、ある意味ミニスカよりもそっち系に振れてしまっちゃうメイド服が届くという結果になってしまっていた。

 

 

 頬を薄っすらと朱に染め上目遣いで見上げてくるチャイナメイドを直視出来ずにプイっと横を向くと、そこには夜食を配る為忙しなくパタパタと小走りなドリルが視界に入る。

 

 

 神風型三番艦 春風

 

 戦闘艦では無く甘味処間宮で活躍する大坂鎮守府所属の駆逐艦。

 

 そのくちくかんとも思えぬ所作は落ち着いた物であり、何かと気が回る性格と特徴的な佇まいから周りより『大正娘』、若しくは『甘味ドリル』と呼ばれ、皆から愛されている艦娘である。

 

 

 普段は意識してか余り目立つ行動はせず、そっと寄り添う感じで給仕するというのが常の彼女であったが、何故か吉野にのみ視界に入るとコバンザメの様にペッタリとくっ付き離れないという謎の悪癖があった。

 

 

「ふう、やっと配膳が終わりました、さあ司令官様、春風がこしらえたお味噌汁、ちゃんとフーフーしておりますから丁度良い按配になっていますよ、如何です?」

 

 

 ほんの一瞬目を離しただけなのに瞬間移動の如き速さで吉野の後ろを取るドリル、更にその手にはいつ用意したのだろうか湯気が立つ味噌汁の椀が用意されている。

 

 戦闘は苦手だと給糧活動に転向した筈なのに、ポイヌ(夕立)や陽炎を遥かに超えるその身体能力は何だと突っ込みを入れたい吉野であったが、そのいつもと違うドリルの着衣に目を引かれて言葉に詰まってしまった。

 

 ノスタルジーを感じさせるいつもの袴姿とは違い着物を着込み、その上にエプロンという和を前面に押し出したその衣装。

 

 遠目から見たそれは落ち着いた感じの物であったが近くでそれを観察すると、隣のチャイナ戦艦と同じく腰まで深いスリットが入っており、動く度に脚はおろか恥骨すら見えてしまうというデンジャー仕様。

 

 更に胸の下に巻いた花菱柄の帯は後ろでやや垂れた状態でヒラヒラしており、着物の裾と共に揺れるそれはまるで揚羽蝶の様に揺らめいている。

 

 

 和装チャイナメイド揚羽蝶ドリル風味。

 

 

 ニコニコとそんなドリルを見る吉野はプルプルと震え動けないでいる。

 

 何故着物でチャイナなのか、大正ロマンがどうしてそっち系にロマンしちゃったのか。

 

 そんな固まった吉野に何かを気付いたのか、大正ドリルはコホンとわざとらしい咳払いと共に、ニコリとくちくかんらしからぬ微笑みを浮かべている。

 

 

「大丈夫、ちゃんと貼り付けておりますから」

 

「そんな事聞いてないよ!? てか提督そんな心配微塵もしてないからね!?」

 

「そうなのですか? なら司令官様的にコレは剥がした方が宜しいのでしょうか?」

 

「そんなデリケートトライアングルの処置まで提督は指定する気無いから!? てか何でいつも君はそっち系の話題ばっか振ってくる訳!?」

 

「いえ、妻たる者夫の趣味嗜好に全力で応えるのが務めと聞き及んでおりましたもので」

 

「……明石?」

 

「はい、いつも色々お世話になっております」

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああかしいいいぃぃぃぃぃ! ナニくちくかんに余計な事吹き込んでるんだぁぁぁああああああかしぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! 夫ってどういう事だぁぁぁああああああかしいいいぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 

 いつもの如く高速地団駄の吉野に、隣に寄り添う片側はプルンプルンと高速でアレが揺れ、もう片側ではヒラヒラと裾が舞い腰までチラリズムなくちくかん、ある意味いつもの風景である。

 

 

 そんな吉野の肩をそっと叩く手。

 

 後ろを振り向けば沈痛な面持ちで吉野を見上げ、アホ毛とリボンをユラユラ揺らすゴスロリ軽巡。

 

 

「提督、いつも言っているクマ……人間諦めが肝心クマ……」

 

 

 そんな衣装に身を包み、プルプル震え涙目でそう語るゴスロリの言葉は何故かいつもより説得力のある言葉として吉野の胸に響き、何故か目頭を熱くしてしまうという現象を引き起こしてしまったという。

 

 

 

 こうして査察部隊を迎える準備を整えその時を待つ面々であるが、本人達は凄く真面目であるにも関わらずそれが元で基地司令の評判を色んな形で広げてしまうという事態を引き起こす結果となる。

 

 査察報告書にそれは正式な報告として記載される事によって。

 

 

 

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。
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