大本営第二特務課の日常   作:zero-45

98 / 329
前回までのあらすじ

 髭が大坂鎮守府へ帰還し、新たに加わった仲間と共に宴会したが、それは仲間でもあり仲魔という事が発覚したというカオス。

 それでは何かご意見ご要望があればお気軽にどうぞ。


大坂鎮守府
そして一年、これからの一歩


 大本営所属独立艦隊第二特務課

 

 現在は拠点を関西に移し、旧大阪鎮守府があった人工島を改修して大坂鎮守府として活動する部署である。

 

 そこは人類の仇敵と言われた深海棲艦の、それも上位個体と言われる者達を取り込み、しかも海軍では二つ名を背負う猛者達を多数取り込んだ異色の"組織"となりつつあった。

 

 

 指揮する者は提督と称してはいるが戦いという物に向いていないという諜報寄りの者が執り、戦力的には尖ってはいたものの、そこは情報や政治的な方面に強いというタイプの鎮守府である。

 

 

 主任務は艦娘運用に於ける装備の開発と運用試験、そして深海棲艦を含む所属艦を用いての教導任務とされているが、世情と調整が整わない現状立場的には宙に浮いた存在となっていた。

 

 そんな同課に転機が訪れる、予てより協力関係にあったドイツから知らされた情報、そして艦娘という存在を得た米国からのアプローチ。

 

 元々政府内でも問題視されてきた第二特務課という特殊な存在と、そこに集う深海棲艦の扱いはそれまでとは違い半ば無理矢理に近い形で世間へ公表され、公の元活動する事が決まっていた。

 

 

 そんな変えられない確定された未来を見据え、その先を生き抜く為に今日大坂鎮守府司令長官、第二特務課々長吉野三郎が自分の麾下の艦娘全員を執務棟第一講義室へ集合させた。

 

 それは比喩では無く全員、哨戒任務も電探のみという簡易的な状態にして、全ての部下をそこに集合させていた。

 

 

「さて諸君、君達も聞き及んではいる事と思うが、この度政府は我が課に所属する深海艦隊の存在、及び彼女らと交わしている不可侵条約の事を公表すると正式に通達してきた」

 

 

 教壇を中心に扇状に配置された机に座り、言葉に耳を傾ける者に驚きの色は見えず、既に覚悟は固めたのだろう、吉野を見る眼にはこの後下されるであろう命令を受けるだけの覚悟と、そして長らく行き場の無かった艦娘としての、振るう事の適わなかった力を漸く向ける事のできる喜びが滲み出していた。

 

 

「日本という国がどこと手を結び、どういう道を歩むかというのは現時点ではまだ確定してはいないが、我らがやる事、そして受ける物はどの道変わらない、外圧を受け、一部の国民に敵視され、しかしそれでも我らは此処で生き、そして戦い方を知らない者を導いていかなければならない」

 

 

 現在の日本とは違い、戦時下という時を30年重ねた日本というこの世界は有体が大きく違う部分がある。

 

 ネットというその場に居ても情報を個人が取捨選択できる環境は整いつつあったが、現状でいえば政府が発表する情報とマスコミから流される物が一般国民に与える影響は大きく、そして情報統制がされ易いという環境である事。

 

 そして長らく"深海棲艦は人類の敵である"という情報が流されてきた為、それとは真逆である融和の情報が発表されてもそれが根付くまでは暫く、数年単位での時間は要するだろうという予想。

 

 そしてその混乱に乗じ他国の、主に日本がその様な力を持つ事を良しとしない国からの横槍の為暫くは不安定な情勢が続くのも予想されていた。

 

 

 その元となる日本国内に存在する団体や組織が根を張っている原因は、元を辿れば太平洋戦争の頃まで遡る。

 

 

 当時開戦当初、大陸へと軍事活動の手を伸ばした日本の軍は数で圧倒する大陸側の戦力を粉砕し、一時期その国を落とす程の勢いで大陸を席巻した。

 

 それは開戦まで着々と近代化を進め、軍備を整えてきた事と、天皇という存在を神として、死を恐れない戦闘民族として育て上げた日本という国の性質が余りにも異端過ぎた為の結果と、日本という小国の実態を掴み切れていなかった大国としての驕りが生み出した結果だった。

 

 しかし戦いを通じて小国と侮っていた大陸側はその狂信さに恐れ、トラウマとして日本人という存在を心に残した。

 

 

 そして戦後、その状態での日本を相手に勝とうと思えば正面からぶつかるのでは無く、内側から日本という国を侵食、弱体する必要があると感じたかの国は時間を掛け政治経済に潜り込み、影響力を大きくしていった。

 

 延々と、戦敗国であるという日本の弱みに付け込んだそれが効力を発揮し始めた頃、その計画が頓挫する出来事が起こる。

 

 

 深海棲艦という人類の天敵が現れ、人類の脅威となって立ち塞がる。

 

 

 その脅威は空を奪い、海を奪い、そして陸がどこにも繋がっていない日本は世界から孤立、逆を言えば大陸側からの影響をまったく受けない環境に置かれる事になったのである。

 

 

 そして日本は暫く後、その人類の天敵に対する唯一の対抗手段である艦娘という力を手に入れ、更に政治形態を大きく変貌させ国内情勢を大きく変えていった。

 

 結果、天皇という存在を絶対的にでは無いが再び(いただ)く形となり、隔絶された小国は生きる為に再び戦闘民族としての道を歩む形となった。

 

 

 経済という比較的自由度の高い世界では張っていた根は残ったものの、生きる為に牙を剥き始めた日本という小国の中枢からはその類の物は駆逐され始め、そして軍として再編された力の象徴はもはや断絶状態となった国の影響を受ける事無く、国益の為に国内の癌を潰し始めた。

 

 良くも悪くも、滅亡の危機が国内の腐った部分を切り捨て始め、戦時下という環境が本来の日本という国に生きる国民性を呼び覚ます結果に繋がった。

 

 

「政府はドイツを始めヨーロッパ諸国と足並みを揃え、深海棲艦との融和という情報を国民へ公表する形になるだろう、予想では来年の春頃それは行われる、残された時間としては凡そ三ヶ月、そして我々はそれまでの三ヶ月を"一歩を踏み出す為の足場固め"の為に活動する事にしようと思う」

 

 

 一歩を踏み出す為の三ヶ月

 

 吉野個人としては第二特務課に降り掛かるであろう厄介事を先んじて潰す為に奔走し、大坂鎮守府という存在を国内拠点として名実共に周りへ認知させる為の(つて)を作り上げる期間として活動する。

 

 そして所属艦娘としては情報室の人員を一時増員し、事務処理もフル回転させつつ、他の者は現在"もしもの為"程度に行っている哨戒任務を、"外敵を想定した強固な物にする為"の運用を形作り、そして脆弱的な部分を洗い出して強固な物にするという指示が出される事になった。

 

 

「また急ではあるが、球磨を旗艦とする水雷戦隊六名は明後日から約一年、南方リンガ泊地へ出向、その間は同泊地司令長官である斉藤少将の指揮下で動く物とする」

 

 

 大坂鎮守府水雷戦隊、旗艦球磨を始めとする不知火、陽炎、夕立、時津風、朝潮の六名は、海軍でも恐らく現在一番戦闘回数が多いとされる最前線、リンガへと送られ、これより一年そこで本物の戦場で過ごす日々が待ち受けていた。

 

 

「君達は実力的には一人前でも経験という面では半人前だ、そしてこれから先誰かを導こうと思えば、そしてこの鎮守府を守ろうと思えば戦場を知っておかなければならない、故にこれからの一年は比喩では無く生死を掛けた任務に就いて経験を積んで貰おうと思っている」

 

 

 室内の上段、席で言えば後方に位置する場所に陣取っていた駆逐艦達を見ると其々は居住まいを正し、無言で吉野の言葉を聞く姿が見えている。

 

 普段は笑顔が常である小さな一団からは緊張した色が見え、見た目幼い彼女達には似つかわしくない、背筋を伸ばした軍人としての佇まいが僅かばかり感じられるという、ある意味吉野が苦笑してしまう絵面(えづら)がそこにあった。

 

 

「我々は、彼女達水雷戦隊の者を含め……この鎮守府の者は皆弱い、其々は己が求めた強さを手に入れる為に不要な物を贅肉と称し捨て去り、そして尖った強さを手に入れた者達ばかりだ、それは個としての強さはあっても多様性が無い、艦隊としては致命的な形だと自分は思っている」

 

 

 敵を屠る為にのみに拘り特化に走った者、守るという事に拘りそれを成した者、其々は一流であっても一芸特化、柔軟性皆無の有体を無理に押すという歪さが際立った生き方に過ぎなかった。

 

 それは強くもあったが一定のラインを超えた時、一度瓦解すれば総崩れとなるという危険性を孕み、諸刃の刃となって全てを終わらせてしまうだろう。

 

 

「強くなる過程で不要と切り捨てた物、確かにその時はそう感じた物であっても、ある意味極めてしまった君達なら……今の君達ならその捨てた部分を有効に使えるんじゃないかと自分は思っている」

 

 

 一度言葉を切り、周りを見渡す。

 

 吉野が口にした弱いと言った言葉、切り捨ててきた物を再び拾い集め、そして今よりも強くと求めたそれは、目の前に居る艦娘達に対する言葉と同時に自分にも当てはまるという自覚がある言葉。

 

 

「強くなろう、全員で、先ずはその為の三ヶ月、そしてその先は自分も見ようとしなかった、逃げてきた物に対峙する為に暫く君達を頼る事になると思う、今までとはまったく違う、茨の道へと足を踏み入れる事を……回避せずに突っ切るという事は君達に負担を掛け、巻き込む事になると思うが、それでも自分は進もうと思う、今回の件は自分の我侭の部分が多い物が発端となっているがどうか、それは許して欲しい」

 

 

 脱帽しそれを教壇へ置く、そしてそこから一歩引いて深く、頭を垂れる、これからの一年はその先の一生を左右すると思われる大事が控えている。

 

 そこには無茶や無謀が当然の如く含まれる日々が始まる、そしてそれは一人では成し得ない事であり、協力してもどれだけ理想に近づけるか微妙な結果しか得られない可能性が多分にあった。

 

 現状で言えばギリギリのライン、それはひとえに今まで吉野が先送りにし、敢えて避け続けてきたという艦隊運用がそうさせた一面もあった。

 

 

「我々は貴方が良しとする物を基準に動いてきた、それに対して詫びられる(いわ)れは無い……貴方は本当に、変に気を回し過ぎる、もっと提督としての自覚を持って我々を使って貰いたい」

 

 

 長門が言う言葉に頭を上げ、そして苦笑の為髭に半分埋もれた口を歪ませる。

 

 

「私としては、やっとテイトクが本気になったってワクワクしてたんだけど?」

 

 

 深海棲艦の旗艦としてその場に参加していた朔夜(防空棲姫)が口角を上げて吉野を見ていた、そして同じくそこにいた白い肌の一団も珍しく揃って頷いている。

 

 それまで一番割りを食っていたのは誰でもなく、協力する立場でありながら対等とは呼べない立ち位置を強いられ、そして大坂鎮守府という場所に押し込められていた彼女達に他ならない、それでも此処に留まっていたのはいつか吉野が朔夜(防空棲姫)に話した物、艦娘という存在を人と共に生きる隣人として認識させる事、それは即ち人という存在でありながら自分達が生命の頂点では無いという事を自ら認め、歪な関係性をあるべき形へとしようとする、軍人としても人間としても己を否定するという矛盾した生き方。

 

 当時は一介の兵でしかなかったこの男の妄言に興味を持ち、その話に乗っかる事にした、目的云々では無く面白そうだからという理由から。

 

 そこから共に歩み、修羅場を乗り越えた今、この場に居る深海棲艦の彼女達は自分達がこの男に対等の立場の者として、女としても戦力としても正当な評価を受け、またこの短期間で国に影響をもたらす程に立ち回るという事を間近で見てきた。

 

 『約束を違えず、道を外れず』朔夜(防空棲姫)の下した吉野に対する評価はそれであり、あの時あの島で男が吐いた妄想は形になりつつあった。

 

 自由気ままに生き、無目的に過ごしてきた彼女にとって、彼女達にとってはそれは不思議な光景であり、そして惹かれる物であった。

 

 いつかこの男なら今よりもっと面白い事をするだろう、そして自分達の居場所も忘れずに用意してくれるだろうという期待と信頼があるからこそ、彼女達は吉野という男と行動を共にしている。

 

 そして朔夜(防空棲姫)の中にはこの"面白い男"に対し、少なからず恋慕という感情があるのも此処にいる理由の一つという自覚はあった。

 

 

「あと一年、我慢すればいいのよね? 私達」

 

「ああ、それから先は誰でも君達の存在は知る物になっている筈だ、様はそれに対し掛かる有象無象に我々が耐えられる体制を築いているかどうか、そして」

 

 

 吉野にしては珍しく、攻撃的な相を隠そうともせずに朔夜(防空棲姫)の言葉に答えを返した。

 

 

「遠慮なく、我々が何者かを、どんな存在なのかを知らしめる為の備えをこのこれからの一年で積み上げようと思う」

 

 

 周りに気を使い、組織に属し、国に殉じる為に言われるが(まま)の事を受け入れてきた。

 

 その為に自分を殺してきた、組織という物に属する者にとっては当たり前であるとも言えるそれは、気付けば周りから関わる全てが命を狙われるという程には理不尽な物へと変わっていた。

 

 軍人として殉じる覚悟は変わらない、国に対する想いも変わらない。

 

 

 但し、降り掛かる理不尽に対し決別をすると決めた。

 

 

 それが筋の通っている物ならば死ぬ事は厭わない、しかしそれが納得のいかない物であったなら、今まで幾らかあった、誰かの都合で自分に関わる者達に理不尽を押し付ける物であったなら。

 

 

「諸君、物言わず耐える時は過ぎた、我々は我々の為に強くなろう、誰よりも強くだ」

 

 

 この日、今まで文官然として振る舞い、表立って力という物を口にしてこなかった司令長官が初めてそれを口にした。

 

 それは彼女達艦娘という力を軸に据えた、ある意味海軍士官が執る組織としては当たり前の姿であったが、今まで影に潜んで直接的な行動を良しとしなかった男が腹を決めた、それは彼女達艦娘という存在が本来最も求める形。

 

 自分達が頼られ、大坂鎮守府という場所が、己達の力を目一杯奮える場になったと認識できる鎮守府が誕生した瞬間であった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「提督、来週予定されている大本営側との演習資料が送られてきました」

 

 

 大淀に資料を手渡された髭の眼帯が有難うと返事を返し、それを手に目の前のソファーに座る白髭の老将の元へ向かう。

 

 歩みは遅く、杖をついての移動はぎこちない男の顔は、その所作とは逆に見る者を引かせる程には獰猛な色を帯びていた。

 

 

「えらく嬉しそうじゃねぇか、ボンよ、何かあったかい?」

 

「ええ唐沢さん、ちょっと来週大本営……艦隊本部から通達された演習がありましてね、これがその相手艦隊の編成表なんですが……」

 

「演習艦の事前通達かい? どれどれ……っておい、こいつぁ……」

 

 

 髭爺の手にある書面には、大本営より通達された演習時に参加すると言う艦娘の名前が一艦隊分、六つ並んで書かれていた。

 

 

 旗艦 Iowa改

 Warspite改

 Roma改

 Prinz Eugen改

 Saratoga改

 翔鶴改二甲

 

 

「この一年で関係各国の要請を受けて受領、手塩に掛けた艦娘を軸に据えた、ある意味多国籍オールスター艦隊……と言った処ですかねぇ」

 

「戦艦3、重巡1、正規空母2か、正面からガチの殴り合いを想定したメンバーだな……にしたって大本営選抜って言いながらこりゃ何だよ、横文字じゃねぇのは鶴だけじゃねぇか」

 

「編成に偏りがあっても彼女達はここ一年、第一艦隊の代わりに幾らか海域維持の為に出撃を繰り返し錬度も経験も積んだ者達です、戦力としては申し分ありません」

 

 

 黒と白の髭がテーブルを挟んで言葉を交わしつつ、白いのは眉を(ひそ)め、黒いのは飄々とテーブルの上にある紙を眺めていた。

 

 吉野が大坂鎮守府の艦娘を集め、大改革を告げた日から一年、そこは大きく変貌を果たしていた。

 

 

 あの時予想していた通り、初夏を迎える頃には深海棲艦の件は世間に公表され、同時に現在の日本を取り巻く環境とこれからの事は国民の知る事になった。

 

 一時期混乱と不安が広がり、一部の団体による抗議活動が繰り広げられたものの、それは日本だけでは無く他国、ヨーロッパ連合という巨大な国の集合体も同じくとあって長くは続かなかった。

 

 そして現在ではチクチクと嫌がらせ程度には大坂鎮守府にちょっかいを掛ける民間団体をあしらう程度の日常と、噂話程度の誹謗中傷がマスコミから流れるといった状況。

 

 

 そしてその発表と共に大阪湾から紀伊水道の海域は呉の管轄から外れ、大本営の管理という形で大坂鎮守府が管轄し、同時に友ヶ島警備府も大本営所属、大坂鎮守府麾下(きか)に置かれる事になった。

 

 

 体勢としては元々艦隊本部の色が濃かった佐世保鎮守府がよりその色を濃くし、岩川基地を取り込んだ関係で九州は丸ごとその派閥の色合いに染まっていった。

 

 これにより各所綺麗に縄張りに線引きがされた形になり、一旦落ち着きを見せる形となったが、それと同時に大本営直下でありながらも独自路線という立ち位置を表に出した大坂鎮守府へ圧力が掛かる事になる。

 

 その一環がこの"大本営側より通達された演習"であった。

 

 大坂鎮守府が先を見据えて備えた様に、大本営、それも元々大隅を頭とする文官の派閥とは対立してきた艦隊本部中心の派閥は体制を整え、海外との繋がりを強化し窓口として認知させる為、積極的に海外艦を要所に据え、運用するという路線を取っていた。

 

 その対外的関係は一定の形で成ってはいたが、深海棲艦という存在を欠いた状態では対等とも言えない微妙な立ち位置にあり、しかしそれを取り込むには無理という事情が絡んでいた為、第二特務課という存在は目の上のたんこぶという形で現在邪魔者となっている。

 

 

「まぁ随分と色々嫌がらせされちゃきたが、今回は直接的に叩いて身の程を知らせてやろうって事かいこりゃ?」

 

「仰る通りで、ウチも色々やっちゃいましたし、明日リンガから水雷戦隊が戻ってくる事で教導任務も準備段階に入りましたからね、ここで鼻っ柱の一つもヘシ折って、教導を受けた先へ及ぶと予想されるウチの影響を弱くしようって狙いもあるんでしょうね」

 

「中央ってのはちっせぇ事に拘んのは今も昔も変わんねぇな、んで、ボンはこの演習に誰を出すつもりだい?」

 

 

 顰めっ面の髭爺に吉野が一枚の紙を差し出す、そこに書いてある編成表を見て眉を跳ね上げ、そして再び目の前の男を睨み正気かと問う髭爺。

 

 その紙に記されている名前

 

 

 旗艦 金剛改二

 榛名改二

 摩耶改二

 夕立改二

 時津風改

 龍鳳改

 

 

「制空権も取れねぇ、総合的な火力も劣る、確か演習開始は午前だったよな? 夜戦も見込めねぇこの演習に駆逐艦二隻を出した上に軽空母、まさか接待演習でもあるまいに……何考えてやがんでぇ」

 

「いやいや唐沢さん、今回はウチも勝ちに行きますよ、その為の秘密兵器も用意してますし準備も整えてありますって」

 

「……秘密兵器ねぇ、んで本当に大丈夫なのかコレ?」

 

「流石に完封は無理ですが、こっちの艦隊には轟沈艦無し、そして相手は全滅を目標にしています」

 

「マジかよ!?」

 

 

 こうして長らく、一年という時間を要して積み上げた大坂鎮守府の意地と、形を整え影響力を強くし始めた艦隊本部のメンツが掛かった大一番が開催される事になった。

 

 

 それは対外的な影響力を視野に入れた艦隊本部と、それを受ける条件として要求した目的を果す為の大坂鎮守府という其々の目的があったが為に実現した演習でもあった。

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。