・・・桜って属性一つ目覚めただけで人生バラ色じゃないだろうか?
だが、ふと考えてみよう。
この子特定の属性にとってみればものすごいラッキーな待遇なんじゃねえの?
「先輩、お話があります」
衛宮士郎はある日、ものすごい真剣な表情をした後輩の間桐桜に正座を要求された。
いったい何をしたのか皆目見当がつかないが、その剣幕に思わず正座をしてしまった。
「ど、どうしたんだ桜。そりゃ最近は寒くなってきたから土蔵で眠ったのはまずかったけどさぁ」
「そこは今問題じゃないです」
そういいながら桜が取り出したのは、一本の包丁だった。
魔術の鍛錬の際に手慰みというか気分転換に使った一本だが、それがいったいどうしたのだろうか。
「・・・先輩、先輩は一体どんな問題のある人に魔術を教わったんですか?」
・・・背筋が凍り付いた。
「な、なにを言って―」
「隠しても無駄です。間桐は魔術師としてはそこそこ名のある家系ですから、これを見たら一目瞭然です。むしろ別の意味で心臓が止まるかと思いました」
さらに心臓が止まりそうになる。
妹のように思っていた桜が、ある意味日常の象徴だった桜が、魔術について語っている。
その衝撃はとても重かったが、しかしそれ以上に真剣なその眼に引き込まれた。
「・・・死んだ爺さ、親父から無茶を言って教わったんだ。結局あまり詳しく教えてくれなかったんだけど、そんなにまずいのか?」
「私もあまり真剣に教えてもらっているわけではないですけど、どう見ても間違ってます。先輩のお父さんを悪く言いたくありませんけど、息子に教えるような方法じゃありませんよ」
桜は二の腕をつかみながら静かにうつむく。
「何年間もそんな方法で鍛錬を積んでたなんて、死んでもおかしくありません。・・・その様子じゃここのセカンドオーナーが遠坂家だってことも知らないんじゃないですか? ばれたらいろいろと大変なことになると思いますよ?」
頭痛をこらえるように額に手を当ててから、桜は意を決したように顔を上げた。
「とにかくちゃんとした素晴らしい修練方法を今すぐ知るべきです!」
だがなんでだろう。
「さあ、今すぐ家に行きましょう! すぐにおじいさまに手伝ってもらわないと!!」
・・・なんか目が輝いているような。
「・・・桜」
「はい?」
衛宮士郎は生唾を飲み込んでいた。
目の前で間桐桜が服をいそいそと脱いでいるどころかいつの間にか自分の服すら脱がしているという事実がここにある。
だがそんなものはどうでもいいというかなんというかそれどころではない理由で士郎は生唾を飲み込んでいた。
「まあ言いたいことはわかるわ小僧。だが桜に目を付けられたことこそがすべての終わりじゃ。・・・あきらめろ」
後ろの方で明らかに人間に見えない老人が溜息とともにそんなことを言うが、それってつまりえっとどういうことかと士郎は混乱状態だった。
そして、視線をゆっくりとしたに向ける。
それは裸になっていく桜の豊満な肉体から視線を外したいという照れ隠しでは決してない。
というか、できればこっちに視線を向けるほうが嫌だけど向けざるを得ない。
ちょっとしたプールのような広さの空間が埋まっている。
チ○コみたいな蟲で。
「なんでさ」
今から俺が受けるのは魔術の訓練じゃなかったのか?
そんな視線を思わず後ろの老人に向けるが、その老人の表情はむしろホッとしようなものだった。
「おお、ちゃんと嫌悪感を持ってくれるか。桜の奴はここ最近はもはや喜々として飛び込んでいくからのぉ、祖父として別の意味で心配じゃったからな」
だったらなんでこんな指導方法にした!
心の底からそう叫びたかったが、今はそんなことを言っている場合ではない。
ああ、これは明らかにまともな魔術の鍛錬方法ではない。
自分の鍛錬がいろいろと問題があったことは道すがら桜に聞いたが、これは間違いなくそれとは別の次元でまともな方法ではない。
「さ、桜! 俺はこの後一体何をするんだ!?」
一縷の望みをかけて士郎はそう尋ねた。
目の前には中学生とは思えないナイスバディな妹分の全裸があるけどそんなものを気にしている余裕は全くない。ないったらない。
頼む、何というかソフトな表現という以下仲良く触れあうアットホームな感じであってくれ―
「もちろん穴という穴にツッコンで体内から調整するんですよ。すっごく気持ちよくって鍛錬だって忘れちゃうぐらい最高なんですよ? 先輩もすぐに強くなれますから安心してください」
「すごいな。いや、内容じゃなくてそれを堂々と発言できる精神性が」
オゥゴッド。我が後輩は知らないところで俺なんか至ることが不可能な領域へと上り詰めてました。いや、堕ちた?
「遠坂家は不可侵だから姉さんには勧めれないし、魔術回路がないと気持ちよくなれないのか兄さんは近づこうともしてくれないしで困ってたんです。これでやっと毎日蟲の話ができるようになります! しかも先輩と話せるなんて夢のようです!」
「ま、待ってくれ桜。確かに魔術がちゃんと使えるようになるのは望むところだし桜と共通の話題ができるのもうれしい。だけど世の中にはもっと大事なことがいっぱいあると思うんだ」
士郎は後ろに下がりながら桜から少しずつ距離を取る。
それがまずかった。
「あ、」
すでにギリギリのところにいたのに後ろに下がればバランスが崩れて堕ちるのは当然だった。
少しずつずれていくしかいの中、せめて絶望を先送りにしたいと思ったのか、体は後ろに向いたりしない。
「あ、先輩ずるいです! 私も!!」
全裸で飛び込んでくるかわいい後輩の姿はとても素晴らしいと思うのだが、そのあと待ってる展開が地獄すぎた。
・・・ああ、なんでさ。
「アァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「あ もぅがっつがないで、私は今日ずっとここにいるから♪」
悲鳴と嬌声が響く中、間桐臓硯は過去を思い返していた。
思えばいつから桜はこんな属性に目覚めたのだろう。
趣味と実益を兼ねた拷問のつもりが、むしろ桜にとってこそ趣味と実益が兼ねた習慣となってしまった。
まあノリノリでやってくれるならそれはそれでいいし、むしろより効率的にするために研究までしているので止める必要もないのだが、とても物足りなかったのだ。
しかも目を離したすきに慎二に体験までさせるとは思わなかった。おかげで適度に酒のさかなとして楽しめていたコンプレックスが完全に消滅し、むしろ真逆の科学の道に行くことでトラウマから逃げようとする始末。文明社会に適応するにあたって実に助かるが、あれさえなければ実にねじくれまくってかわいげのあるおもちゃになってくれたのにと思うと少し残念である。
アインツベルンにやとわれた魔術師殺しの関係者の監視も兼ねて桜を送り込んでみれば、魔術の鍛錬すらろくにしていなかったとは思いもしなかった。
まあいい。これで魔術の鍛錬を苦しんで行ってくれるのならば、このコレジャナイ感から少しは解放されるだろう。
あの手の性質の制御方法は心得ている。自分を心から慕っている後輩の真摯な視線からは逃れられまい。一応ちゃんと魔術回路は鍛えてやれば感謝はされずとも苦情も言うまい。
そんなことをぼんやりと考えながら、臓硯は孫の歓声をBGMにしかしぽつりと漏らすのだった。
「・・・・・・・・・なぜこうなったのじゃ」
自分はただ、幼女が絶望に震えるさまを見ながら胎盤を調整したかっただけなのに。
・・・なぜ、絶望せずに喜ぶその姿にホッとしているのだろう。
何百年も前に失った願いが、アブノーマルな状況によって再び目覚めかけていることを、まだ彼は気づかない。
続き、書きませんよ。出オチですし。
いや、確かにこれをベースにした第五次聖杯戦争は考えたんです。臓硯も手元に二人も参戦者がいれば重い腰を上げるだろうと。そして臓硯はこっそり鞘を抜き取るぐらいするだろうから、もう大きく聖杯戦争は変わっていくだろうと。
ただそうなると自分では書き切れないというかそこからくる参戦者たちの違いまで用意できる自信がなかったんです。
と、言うわけなのでこのネタはこれでおしまいです。もしかしたら続きを書くことがあるかもしれませんが、可能性はごくわずかです。
もしこのネタを使って長編を書きたいという方がおられればご自由にお使いください。