書いてみた、という感じです。
ネメシス・ブラッドハンター。
この名は近代オラリオ史の中で最高の英雄と称され、記された神話でも見たことのない逸話は畏敬を集める。
本人以外は知る由のない事であるが、正史には存在しないはずの人間であり、転生者である。
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「エイナさーん!」
血みどろの少年が街中を駆け抜け、ギルドに一直線に入り込み、世話になったギルド職員の名を呼びながら朗らかに駆け寄った。
その様子を見ていた町人達は皆が『ダンジョンから命からがら逃げ出して、
ギルド職員のエイナとは少年がギルドに登録する際の担当者であり、何かと世話を少年に世話を焼くハーフエルフである。
エルフは皆して絶世の美女と言っても相違ないような見た目をしているが、その容貌を見ると竦んでしまうのか近寄りがたい印象のある種族である。しかし、ハーフエルフのエイナはその美しさという棘を削りながらも、人間の柔らかさで包み込んだような親しみやすい容姿の女性である。とはいえ、美女であることには間違いないので、人気は高い。
エイナは丁度、少年のことを考えていた。
半月前に英雄になりたいと目を輝かせながら語った危なっかしい少年。お人好しが過ぎるというか、純粋というか、生来からの優しさが前面に押し出されており、それは見た目にも言えたことで、白兎に似過ぎた可愛らしい見た目は冒険者に成るには弱々しさを感じさせ、14という年齢はまだまだ社会を経験しておらず、注意力がイマイチ少ないことも相まって、何かと心配からくる世話焼きをしてしまう。今日も、ダンジョンで命の駆け引きをしているのだろうが、やはり心配になってしまう。
もしかして、これは恋なのだろうか?
(……ないなぁ。だって、ベル君だもん)
少年、ベルが求めたものの一つは今、一つのかけらとして台頭することなく消え去った。
ただ、エイナがこんな呑気なことを考えられるのも、彼の声が耳に入り、今日も無事に帰ってきたんだという安心感が得られたから。
青年になりきらない少年の声に目元の険を解しながら、手元に置いていたメガネをかけ直し、声の聞こえた方に目を向ける。
「うわああああああああああ⁉︎」
「アイズ・ヴァレンシュタインさんの情報を教えてくださああああああああいっ!」
ある一室にて、血塗れだった少年の汚い赤はすっかり目につかなくなり、澄んだ赤が瞳を染めており、赤一色でわからなかった頭部は、大空を気ままに漂泊する雲のような白が映える瑞々しい元気よさのある天然パーマの髪の毛は、可愛らしい形に纏まっている。ああ、一部先程の文を訂正しよう。『白兎まんま』である。
白兎、ベルの前に腰掛けているのは、先程、絶叫をあげてしまったエイナである。何があったのかは知りもしないが、何やら怒っているようだ。
「あのね、ベル君。ギルドに来るなら、流石にシャワーを浴びて、血を落としてからにしなさいよね……」
「すいません……」
やれやれ、このうさ、ベル君は……。
エイナは呆れを隠さない声音でベルに忠告するが、兎はしょぼんとして顔を俯かせている。孤独死しそうな雰囲気である。エイナがいるというのに。いや、美人と二人きり、『男の妄想』の加速する状況下であるのに、だ。……『男の妄想』という汚い表現をしたことを、少し謝罪しよう。
エイナはその後、一度だけ小言を言うと、穴があってもそこで孤独死するんじゃないかと思わせる雰囲気を放ち出したベルを見かねて早々に打ち切り、「これから気をつけてね?」と注意すると嬉しそうに大袈裟な首肯を見せる兎に、『耳が付いてたらペシペシ当たってるんだよね……。それもそれでいいかな?』と和むが、関係のないことを考えていることを自分で苦笑いしつつ、兎、ベルの要件に答える。
「アイズ・ヴァレンシュタイン氏の情報ね? 情報を教える前に聞かせて欲しいんだけど、なんでそんなことを?」
「あ……、ええっと……」
次の兎の話にはエイナも流石に怒った。何度も言い含めてきたことを目前の兎は破っていたのだ。
美人が怒ると怖いのは本当っていうか、エイナさんには怒られてばっかだな、と考えているベルはまたもお説教を食らった。
「兎が牛に追いかけ回されるなんて!」「エイナさん、兎って?」「君の事です!」「はい、すいません!」「せめて鮫なら、神様方も『因幡の白兎』って言って盛り上がるのに!」「……エイナさん、なんの話ですか?」「君の話です!」
と、上記の流れはまるで嘘だが、エイナが言いたいのは『冒険者が冒険しちゃいけない』、この一点である。口を酸っぱくして言われたエイナの万感の思いの篭ったこの言葉には、様々な意味のとり方があるが、主なものは『危険に挑むな』ということである。
駆け出しが、憧れた英雄の冒険譚のように未知の溢れるダンジョンに乗り込んでいって、帰ってこないなんて話もざらであり、ましてや、経験が浅い駆け出しほどその傾向が高いと言われている。
「はあ、もう。あの人のお陰で冒険者が増えたのは褒めるべきことなんだろうけど、こうも無謀な少年を作っちゃったのはある意味で罪だね」
「ネメシス・ブラッドハンターさんの事ですか⁉︎」
「え、ええ。ベル君も彼に憧れて冒険者になったんでしょう? ……まあ、君はダンジョンに変な夢を見ているみたいだけど」
「あ、あはは?」
溜息をついているエイナを他所に、ベルは自分が憧れた英雄に想いを馳せる。
ネメシス・ブラッドハンター。
LV.二桁と予想され、素性の知れないオラリオ最強の英雄。
ファミリアも不明、住居も不明。それどころか、ダンジョンに一度潜ると次に目撃できるのが三ヶ月後で、『ダンジョンに住んでいるんじゃないか』という噂がたつほど人物であり、最近では『ダンジョンを踏破している』との噂もあるような、一級冒険者にも次元が違うと言わせる孤高の【
この迷宮都市中の畏敬、尊敬、畏怖を集め、特に血骨教会と言われる警備組織は、悪人の粛清をモットーとし、『ネメシス様の望むままに』と全く理念になってない理念を掲げる、無法を働く悪人たちの恐怖の象徴である。
このように、彼が及ぼした影響力は計算するだけで馬鹿なものである。
ベルもこの冒険者の冒険譚は知っていた。何でも、彼の信者が彼の逸話の綴られた書籍を大量に購入し、『もっと彼の事を知ってほしい』という一心で、大量の彼の英雄譚を無料で配布したらしい。それをたまたま手に入れた祖父がベルにくれたのだ。
内容は言うまでもない。嘘のような話ばかりだった。いや、嘘もあったのだろうが、嘘がどれか全く分からないほどに本物の逸話も嘘のようだったのだ。
そして、祖父が死んで、どう生きるかと考えた時に、彼の名前が真っ先に思い浮かび、この地に向かうことを決意させた。まあ、他にも下心があったのだが。
「ベル君、教えると言っても、公然の事実しか話せないけど?」
「あ、はい」
エイナの言葉に優先順位を変え、話に集中する。
知らないこともあるかもと聞いてみれば、意外と知っている情報が多かった。
ロキ・ファミリア所属のLV.5の一級冒険者。剣の腕前もさる事ながら、次々とモンスターの命の灯火を強風で吹き飛ばす強さ故に、神々から受けた二つ名は【剣姫】。
強さはこのオラリオで、【
絹糸のように滑らかで黄金に映える金髪に、女神も見惚れさせる顔の造形、すらりと伸びた同性も魅了させる四肢、其の美しさに惹かれぬ男は居ないと男神達も口を揃えて述べており、当たり前のように幾百と交際を申し込まれている。幾百ということであるから勿論のこと、男たちは玉砕。この間には、とうとう『千人斬り』を達成との話である。
ここまでガッツポーズあり関心ありでベルは聞いていたが、次にエイナの語った内容に絶望する。
ネメシス・ブラッドハンターを尊敬して止まない、彼の追っ掛けの一人であり、『会いたい』という一心でダンジョンの深層に潜ることは有名。
「ーーーと言っても、何度潜っても彼と出会えたことは無いそうよ。
ん? ベル君、どうしたの?」
「……」
「ベル君?」
「……」
「おーい、ベル君?」
「……あ、え? どうしました、エイナさん?」
暫し、呆然。その様子に訝しんだエイナは近寄って、ベルの目元で手を縦に振りながら彼の名を呼んだ。
ベルは絶望感の中で、これが英雄なんだよなと諦観の念で、自分の中で落とし所を作った。それと同時に、自分も英雄になればと希望を見出した。
眼差しに光を灯し直したベルはエイナの自身を呼ぶ声を聞き、少し固い笑顔でエイナを見る。
「うーんとね? 直球に訊くけど、ベル君はヴァレンシュタイン氏に惚れたの?」
「はうっ!」
「今は少し余裕を取り戻したみたいだけど、さっきまでの表情を見れば誰だって分かるよ?」
「うっ!」
「覚えていた方がいい言葉があるわ。『【
「グフッ!」
やられた。
ベルの少年の心は、塩酸をかけられたようにジュージューと音を立てて、みるみるうちに小さくなっていく。削られて空いた心の穴を補填しても、その度に甘くなるガードにどしどしと煽られる言葉の強酸。痛いです、エイナさん。
ベルはギルドに来て、エイナの名前を呼んでいた時の笑顔の面影が無くなるくらいに小さくなり、心臓を抑えて縮こまっていた。
「ごめんなさい、エイナさん。もうしませんから、許してください。ごめんなさい、エイナさん。もうしませんから、許してください。ごめんなさいーーー、「ぷっ、あはは」エイナさ、え?」
「あーあ、ベル君は面白いなぁ」
「え? ……もしかして僕をからかったんですか?」
「ふふふ。ええ、そうなるわね」
「もう! エイナさんの意地悪!」
「ふふふ。ごめんね、ベル君。そんなに拗ねないで」
「エイナさんなんて、もう知らない!」
からかわれたことに口をツンと尖らせ、プイとそっぽを向く兎はとても可愛らしい。そんな様子を見ると余計にからかいたくなるが、ふと窓の方に目をやれば、日が傾きだしている。
そろそろこの子を家に帰さないと、飼育いnーーゲフンゲフン、ヘスティア様も心配するでしょうしね。
プイとそっぽ向いた彼に「ああ、もうこんな時間だわ」とベルに今の時間を把握するように促す。すると、「あ、本当ですね」と荷物を持って立ち上がる。
やっぱり素直すぎるわ、とさっきまでのもう知らないという態勢を一瞬で返したように口を利く兎に、内心で何度目かわからないため息をつきながら、ギルドのカウンターまで戻る。
【ファミリア】のためにお金を手に入れる必要のある兎が換金する様子を視界の端に捉えながら、どう声をかけたものかとエイナは考える。一年中発情期である兎は多感なのだ。そんな彼への言葉を一つでも誤れば、好物の人参を齧ることも出来ずに、ガラスのハートを痛めたまま孤独死してしまうだろう。
とは冗談で、思春期の男子の軟弱な精神へは一言が重くのしかかる。故に、優しく、それでいて希望になるような言葉を送ってあげるのがベストなのだ。
換金を済ませたカモ、失敬、兎が此方に歩み寄ってくる。
一言、二言、文句を聞いて、それに正論で撃破していくとやはり俯いてしまう。うむ、発情期とは難しいものである。
そのまま帰ろうとする彼の背中に考えていたことを伝えてあげる。
「あのね、女性はやっぱり強くて頼りがいのある男の人に魅力を感じるから……えっと、めげずに頑張っていれば、その、ね?」
「……」
「……ヴァレンシュタイン氏も、強くなったベル君に振り向いてくれるかもよ?」
何も言わない兎に、しくじったか? と思うも、その直後の行動に成功を確信する。
兎は駆け出しながら、大声で叫んだ。
「エイナさん、大好きー‼︎ ありがとぉー!」
跳ねながら帰る兎の背中を見て、微笑む。どうにか元気を取り戻してあげることが出来たようだ。
直ぐに踵を返して、エイナは書類仕事につこうとするが、その前にポツリと誰にも聞こえない声で呟いた。
「ちょろすぎて心配になってくるわ……」
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迷宮都市オラリオ。
世界唯一のダンジョンの周囲を円形に造られた世界有数の大都市。広大な面積を誇り、堅牢な市壁は一見の価値がある程、見ものである。都市中央に天を衝く白亜の巨塔が聳え立ち、そのバベルを起点とし、放射線状に八方位に大通りが伸びている。
世界唯一のダンジョンの恩恵である魔石による産業によって、他の普遍的な国では及びも付かない程に豊かな都市である。
ただし、何処にでも貧富の差というものは存在し、儲かるものは一級の土地にて居を構えることができるが、銭の少ない兎が住むには外れのうらぶれた場所にあるところがうってつけなのだ。
兎、ベルの
ただ、住めば都と言うように、中は生活感がある。実際に神の居住む神殿であるのだ。あまり悪く言うと神罰が下るので、気をつけて頂きたい。神に嘘は通用しないのだ。
半月という僅かな時間でも慣れたものである。ベルはひょいひょいと足の踏み場もないガタガタの道を進んでいく。急いでいるわけではないが、エイナの言葉に強さを求める心が昂ぶっており、少しばかり心の高鳴りと共に足の筋肉が逸るのだ。
瞬く間に教会の中まで駆け込んだベルは、崩れ落ちた内装でトラップのように巧妙に隠された床の穴をスイスイと避けて奥まで歩く。
「神様、ただいま帰りました!」
「おお〜、ベル君ではないか。今日もお疲れだね〜」
「あはは、もちろん! 僕は神様の唯一の眷属ですからねっ!」
「う、うん。そうだね……」
あれ? ベルは歯切れ悪く答える自分の主神の様子に違和感を感じた。いつもならニコニコとして『さっすがベル君! それでこそ僕の眷属だ!』とか言って、舌を出しながらサムズアップをきめてくるのに。
ベルが疑問を何処かに打ち捨てて、早く食事にしようと言う前に、ベルの主神は顔を上げた。その真剣な表情は、度々見せてくれてくれる時もあったために、初めて見た訳ではないが、初めて見る感情がそこにはあった。
ベルは半月という短い期間だが、最早家族同然と言っていいくらいには自分の主神を愛していた。そうだ、ここに居られるのも、冒険者になれたのも、今日の出会いに恵まれたのも、全ては自分に手を差し伸べてくれたこの神様がいたからだ。
ベルの心中は穏やかではない。自らの主神の瞳に陰る暗い種火は燻ったままなのだ。一度、なりを潜めていたのだろうが、消えることはなかった炎が自分の何かが起因して、また熱を持った。それは、主神を愛する我が身としてはどうしようもなく心苦しかった。
ただ、その愆釁も処方箋はあるはずなのだ。たかが14というまだ青い若造であるが、家族である以上は家族の苦しみを共有したい。
そう思ったベルの行動は速かった。口を真一文字に結び、疲れを持て余してへばりそうになる体を整え、踵を揃える。正眼に主神を見据えながら、問いかける。
「神様、僕は神様の家族です」
「!!」
「ですから、神様の苦しみを僕にも分けてください。一緒に悩んで、一緒に解決しましょう。それが家族ですよ」
「……ベル君」
ポツリと呟いた自分の名前は、ポトリと落ちていく雫に悲しみは吸い込まれて、消え去った。僕の家族の悲しみを拭ってあげられた。そう思うと疲れているというのに小躍りしてしまいそうな体を必死に抑え、少しばかりの余裕とともに、主神が語り出すのを待つ。
時間はそうはかからなかった。
「……僕にはね、もう一人の眷族が居たんだ」
「えっ⁉︎」
ある意味予想外の内容である。それが本当なら、この場にいないのはおかしいではないか。
ベルの『唯一の眷属』という言葉を悲しく思ったのだろう。それに確かに自分は今まで唯一なんて言わなかったし、眷属からその言葉を聞いては悲しみも一入だろう。ああ、僕は何てことを……。
後悔しながらも、もう一人の眷族がいない理由を探す。
行方不明? 引退? 改宗? ……もしかしてーー、
「ううん。死んだわけじゃないよ」
「ああ、そうですか。よかった〜」
「そうだね。ベル君は顔に出やすいから、気をつけたほうがいいね。ポーカーフェイスだよ、ポーカーフェイス」
「ははは。これからは気をつけます」
「うん、素直でよろしい!」
若干ではあるがいつもの人懐っこい笑顔を浮かべて、いつもの雰囲気も取り戻しつつある主神を見て、ホッと一息。あんな暗い雰囲気は神様には似合わないや。
ベルはギルドでエイナに言われたことを思い出しながら、そんなに顔に出るかなぁ、と今晩は鏡の前で百面相する計画を立てるが、今は話だと顔を引き締め直して、続きを促す。
「……14年前、眷属になってくれた日からずっと行方不明なんだよ」
「……」
それはなんとも言えない。地上の子供の中でも、血を分けたとも言える特別な子供が安否がわからないままで、十四年。確かにその痛みは尋常ではないものだろう。
ベルはヘスティアの苦しみが分からない。祖父を亡くした過去があるので、失う苦しみは分かる。しかし、生きているかも死んでいるかも分からず、それらしき情報を得ては一喜一憂するヘスティアの今までの行動は、賽の河原の石積みと言い換えても変わりない。
そして、何よりも自分の不甲斐なさ故の罪悪感だ。そんな彼女にどんな言葉をかけたらいい?
押し潰されそうな表情で必死に唇を噛みしめる主神は、見た目通りの幼気な少女のように震えている。分かりもしない癖に分かったふりして彼女の今までの苦痛をいい加減な言葉で軽んじるのか?
きっと彼女の事をよく知らない誰かは同情で『そんな放浪者、忘れてしまえ』と投げ掛けただろう。だけど、自分では分かる。手を伸ばせば届きそうで、届いた先は蜃気楼のように霞んで行く苦しみ。そう、奇しくも自分の【ファミリア】探しと一緒だ。素気無く断られることも門前払いを食らうこともあった。だけど、もう少しで入れるかもという所で落とされる絶望感。それでも、と足に力を入れて倒れてしまわぬように耐える苦行。……やはり、良くも悪くも素晴らしいんだ、神様は。
僕には勿体無い神様で。僕には暖かすぎる神様で。僕なんかじゃ釣り合わないような神様で。
人間では及ばない魅力を持った神様だ。
長い沈黙はどれだけ続いたのだろう。降って湧いた答えじゃ納得出来ない。閃いた答えでその場凌ぎは絶対に認めない。だから、ゆっくりと自分の短い半生を振り返り、言葉を絞り出した。
それは誓いのようで、それが正しく宣言だ。
「神様」
「……なんだい?」
「大丈夫です。僕は貴方の眷属ですから」
「!!」
ヘスティアにとって、今のベルの言葉はとても嬉しかった。具体性も何もない。男の意地というような、唯の一言。
だけど、それで十分だった。いや、その言葉で伝わってきた。嘘かどうかではない。その言葉に込められた自分の眷属の『こころ』。
その言葉で十分に伝わった。
ベルは内心ではオロオロと慌てふためいていた。自分の宣言を後悔しているわけではない。では、何故か?
ヘスティアの黒の真珠のような瞳から、雫が一つ二つと流れ落ちているからだ。
というのは建前で、
それよりも顎を伝い落ちる先が、大きな大きな巨峰の上というのに唆られているからである。
ゴクリと生唾を飲み込むベルである。悲しきかな、エロガキ。
本心を伝えて、十数分。
漸く、ヘスティアは顔を上げた。その顔は、先程の邪念を吹き飛ばす虹のような笑みが浮かんでおり、瞳の先には何も見られない。いや、熱っぽい何かが見える気もするが、概ね問題ないだろう。
ヘスティアは満面の笑みでベルに言った。……恋心を隠さないように。
「ベル君。僕は君を頼りにしてるからねっ‼︎」
どこまでいっても下心は拭えない。いや、消し去ることが出来たら、そいつは男じゃない。ましてや、こんな魅力的な女性がいて、感情が昂らないなど正気を疑う。
だけど、そうだな。
「はいっ!」
今は気にしない。
だって、
「家族ですからねっ!」
僕は神様の眷属なんだから。
続きを書くかどうか分かりません。
因みに、続きを書くとしたら、オリ主のヒロインはリューさんです。
これだけは譲らない。