鎧なんて飾りです。   作:C-WEED

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まだ一年は経ってない!! 遅いのは違いないけども。遅くなって申し訳ないです。

楽しんで頂ければ幸いです。


第二十一話

「久しぶりだね、本田君」

 

眼鏡置き(あいぜんたいちょう)……生きて、いらっしゃったんですか? でも、あの眼鏡は……」

 

 その(胃痛の)重みに耐えかね、侘びるように頭を差し出す。……故に、とか言ってる場合じゃない。

 

「ああ、実は、何者かに私は命を狙われていてね。敵を欺くにはまず味方から、と言うだろう? 死んだように見せて、姿を隠していたんだ」

 

「そう、でしたか……」

 

 考えろ、考えろ。この状況……どうする? お腹痛い。いや痛いけどそれよりまず何とかしないと。

 

「と、言ってみるのもありかと思ったがね」

 

「それは、どういう……」

 

「君なら、解っているだろう?」

 

 は? 何言い出してんだこの眼鏡置き。知るわけねーやん。腹痛いし。あ、あれか。多分、ルキア拉致して崩玉取り出すんだろ? 

 

「茶番は終わりだ」

 

「な、何を……?」

 

「尸魂界と袂を別つ時がきた」

 

「っ……!?」

 

 驚き過ぎて声も出なかった。何故それを俺に言うんだ? 俺が雛森枠じゃないのか……? そりゃあ、いくらイケメンでも眼鏡置きとハグするのは御免被るけども。

 

「君も、着いてきてくれるね?」

 

「っ!?」

 

「今まで君はよく働いてくれた。期待通り、いや、期待以上かな?」

 

「……」

 

「一番大きかったのは、志波海燕を助けに行った時のことだ」

 

「え……?」

 

 どういうことだ? 海燕さん助けることの何が眼鏡置き(あいぜんたいちょう)の役に立つ? 

 

「あの時君は、メタスタシアの霊体融合を受けた。そうだね?」

 

「っ……はい……」

 

「それがあって、君の価値は跳ね上がった。この意味は、わかるだろう?」

 

「な、なんのことやら……」

 

「……フ、まあいい、話を戻そう。私に着いてきてくれるだろう? 本田君」

 

 考えるまでもなく無理。俺はルキア奪還編を乗りきって平和に副隊長やるんだ……ん? ……平和はまだ遠かったなそういえば……。いや、にしても眼鏡置きの下に着くとかありえない。

 

「……た、大変嬉しい申し出ではございますが「朽木ルキア、阿散井恋次は君の幼馴染だったね」……っ!?」

 

「処刑は恐らく止められるだろう。だが……」

 

「……」

 

「混乱の最中だ。二人くらい死んだ所で、おかしくはないと思わないかい?」

 

 ……。基本的に我が身可愛さで生きているわけだし、原作キャラの二人は早々死ぬまいとは思っていた。でも、それは原作通り行けばの話。眼鏡置き(あいぜんたいちょう)が本当に殺すつもりで行ったら、生きていられるだろうか? いや、無理やん。スペックが違うよ。

 

「それに、だ」

 

 まだ何かあるのかよ……。

 

「君は自覚していないようだが、これまでの君の行動は、護廷十三隊に所属するものとして正しいものだったかい?」

 

「えっ……?」

 

「特に、朽木ルキアの処刑が決まってからの行動だ」

 

 始めっからルキアを助けるつもりでいた。だからこそ、黒崎君を見逃した。だからこそ、鎌鼬雨竜相手にも加減した。捕まったままだと何もできないから脱獄した。で、また捕まって脱獄した。

 

 ……ん? 

 

「君の行動は、常人からしたら理解できないものだ。何故はじめから迷いなく朽木ルキアを救おうとすることができた? なぜ旅禍を見逃すような真似をした? 何故捕まってからも大人しくせず、混乱を招いた?」

 

 あっあっ……ヤバい、過呼吸になりそう。

 

「きっと平穏無事に処刑を止められたなら、君の行動は徹頭徹尾朽木ルキアを救おうと努力した結果、と言えるだろうね」

 

「じ、実際、そうですから……」

 

 かろうじてそれだけは言えた。頭がどうにかなりそうだ。

 

「しかし現状、まだ何も解決していないこの状況に於いて、君は非常に疑わしい。それこそ誰かが、君のことを、「彼は初めから僕の部下だった」とでも言えば、真っ黒に変わるほどにね。……理解しているかい? 自分の状況を」

 

 死んだわ。こんなの無理だよ。

 

「ゴホッ」

 

 血が……。ヤバイって……。もう腹痛くなくなってるよ。

 

「もう一度聞くよ、本田君。私に、着いてきてくれるね?」

 

「……はい」

 

 俺はどこで間違えたんだろう? 最初から? やめろよ死にたくなる。

 

 

「お、皆さんお揃いで」

 

「市丸隊長……っ!? 雛森まで……」

 

 勘弁してくれ……。シロちゃんまだ? 

 

━━━━━

 

 日番谷冬獅郎を襲撃した後、雛森はまたも牢に入れられていた。

 度重なる脱獄の結果、厳重な拘束をされている。まともにできることと言えば空想にふけることのみ。

 

「本田君は今頃どうしてるかなぁ……。私のこと探してくれてるかな……? ううん、今はそれどころじゃないよね……。でも、もし、そうなら……」

 

 "雛森! 助けに来たぞ!"

 

 "本田君!! 私のことは放っておいていいから、早く朽木さんを!!"

 

 "お前を置いてなんて行けるわけないだろ!! 俺にはお前が必要なんだ!!"

 

 "本田君……"

 

 "雛森……"

 

 しかし、その時間は唐突に終わりを告げる。

 

「ハァーイ、雛森チャン。元気しとる?」

 

「市丸隊長!? どうしてここに?」

 

「何でやと思う?」

 

「暇潰しですか?」

 

「まず出てくるのがそれって、雛森チャン、ボクのこと何やと思っとるん?」

 

「市丸隊長は市丸隊長です」

 

「ま、ええけど。本題に入ろか」

 

「本題、ですか?」

 

「雛森チャン、ここ、出たない?」

 

「!? ……いえ、いいです。今良いところだったので」

 

「何が?」

 

「もうすぐ私と本田君が結ばれる所でした」

 

「……えー? あー……ふぅん」

 

「ですから、大丈夫です」

 

「ウン、そんなら、質問変えるわ。本田クンとこ行きたない?」

 

「行きます!」

 

 熱い手のひら返し。食い気味に答えた雛森の目に迷いは無かった。

 

 

 

 そんなことがあって、雛森は市丸に連れられて藍染達の元へとやって来たのである。

 

────―

 

「ほら雛森チャン、本田クンやで」

 

「本田君! ……と、藍染……隊長……!? どうして……!?」

 

「さて、本田君」

 

「……はい」

 

「彼女はどうしようか?」

 

「どう、とは?」

 

「袂を別つにあたって、身辺整理が必要じゃないかな? 不要な関係性は切り捨てるべきだ。そうだろう?」

 

「それは……」

 

 雛森を斬れってことか? 「憧れとは(以下略」みたいに? いや正確には刺してたけど。俺に、雛森を攻撃しろと? 

 

「君が望むなら連れていっても構わないが?」

 

「藍染隊長……? 一体何の話を……連れていくって?」

 

「気にすることはないよ雛森君。じきにわかる」

 

 そう言って眼鏡置き(あいぜんたいちょう)は雛森へと歩を進める。このまま行くと原作通りに……いや、下手したら雛森が死ぬ可能性もある。

 

「待ってください……俺がやります」

 

「……そうか。なら、任せるよ」

 

 眼鏡置き(あいぜんたいちょう)に任せて死ぬ可能性を上げるよりは、俺が自分で、ちゃんと死なないようにする方がいい。たぶんだけど。

 とはいえ、これで俺は、完全に言い逃れができなくなる。きっと、虚圏か空坐町辺りで眼鏡置き(あいぜんたいちょう)か、あるいは黒崎君サイドの誰かに斬られて終わるんだろう。……何やってんだろう俺は。何やってんだほんと……どうしてこうなった。

 

「本田君?」

 

「雛森、ごめん……」

 

「……どうして、謝るの?」

 

 顔を見れない。見てしまったらきっと覚悟が鈍ってしまう。

 雛森が死ぬよりマシだ。そう、マシなんだ。どうか死なないでくれ。あとできれば今すぐシロちゃん来て。今なら間に合うから。

 

 ……そうだ、時間を稼ごう。

 

「教えてくれないの? っ!?」

 

「少しだけでいい……このままでいさせてくれ」

 

 今、俺は雛森を抱き締めている。眼鏡置き(あいぜんたいちょう)がやってたそれを模倣しているのだ。発想が貧困な俺ではこうするぐらいしか思い付かなかった。

 

「あの、えっと……どうしたの?」

 

「……」

 

 なんとなく、こうしてしまったわけだが、どうしたものか。頭が回っていないようだ。シロちゃんはまだ来ない。

 

 どのくらい時間が経った? 数分か、数秒か……? 腹が痛くなくてかえって気持ち悪い。何か言わないと。

 

「……」

 

 駄目だ出てこない。

 

「……」

 

「……本田君」

 

「……どうした?」

 

「話して、くれないんだね」

 

「ああ」

 

「さっき謝ったのは、今こうしてることとは別のことにだよね?」

 

「……ああ」

 

「……これから、何かあるんだよね?」

 

「……そうだ」

 

 ……まだ来ない。

 

「朽木さんを助ける為……?」

 

「……」

 

 これがルキアを助けるためだと言えるのか? 雛森を攻撃することがルキアの助けになると? 

 

 言えるはずがない。

 

「ごめん……」

 

「えっ……?」

 

 小さく呟いて、斬魄刀を突き刺した。たぶん一瞬だったはずなのだが、酷くスローな感じがした。刃が肉を切り裂いて進んでいく感触がとても気持ち悪い。

 あいつは間に合わなかった。

 

「本田、君……」

 

「ごめん……ごめん……」

 

「……どうして……」

 

 斬魄刀を引き抜く。急所は外した……卯ノ花隊長が早く来てくれれば大丈夫だろう……。

 そういえば、人を斬ったのはこれが初めてだった。最悪だ。この不快感は忘れられないだろう。

 

 

「ふむ、君には難しいと思っていたが、存外、できるものだね」

 

「ボク最初っから言うてたやないですか。本田クンはやればできる子やって」

 

「そうだね。ギンの言うとおりだったようだ」

 

 

 

「……本、田……君……」

 

 まだ、意識があったのか、雛森が呼び掛けてきた。

 

「大、丈夫……?」

 

「何言って……」

 

「つらそう、だよ……?」

 

「っ……気にしなくていい」

 

 

 つらいとか、刺した理由だとか、言えるわけがない。言ってどうなるものでもない。それに何より、雛森は自分の心配をするべきだ。刺した俺が言うことではないのだろうけれど。

 

 雛森の魄動が弱くなっていく。

 

 こんなことをするために今まで頑張ってきたんじゃないのに。何でこうなってしまったのか。

 何故こんなことをしなければならないのか。

 

 黒幕は眼鏡置き(あいぜんたいちょう)だ。そんなことは知ってる。

 だが、この事態を招いたのは、こうして雛森が傷付くことになったのは、考えなしの俺の行動のせいだ。

 

 今までだってそうだ。たまたま、運良く、大きな事態にならなかっただけで、俺の行動のせいで、歯車が狂ってしまったら、本来助かるはずの命が、失われてしまうかも知れない。救えたはずの誰かが、救えずに終わるかもしれない。

 よかれと思っていた。それが尚更質が悪い。

 

 俺は……俺は……。

 

 

「オイ……こいつはどういうことだ?」

 

 この声……。

 

「何で、雛森が倒れてんだよ……!? 何で、お前が、斬魄刀持ってそこにいるんだよ……!?」

 

「……」

 

「答えろ!! 本田ァ!!!!」

 

 日番谷が、明確な敵意を持って俺を睨んでいた。

 返答によってはただじゃおかない、とでも言いたげに。というより、最早確信を持っているのだろう。

 雛森を刺したのが俺であると。

 

 しかし、今更、何だと言うのか。

 遅いんだよ。来るのが。

 

「見てわからないか?」

 

「あ?」

 

「刺したのは、俺。刺されたのは、雛森だ」

 

「てめぇ……」

 

 日番谷が刀に手をかける。戦いは避けられないだろう。

 ……どうせ、避けられないのだ。八つ当たりの自覚はあるが、思ったことを言わせてもらおう。

 

「そして……」

 

「?」

 

「お前は間に合わなかった……今まで何やってたんだ? 天才君」

 

 

 一瞬だった。あったはずの距離が縮まり、目の前には、憤怒の形相の日番谷。振り下ろされた刃をこちらも斬魄刀で受け止める。

 

 

「俺はてめえを許さねぇ……!」

 

「許してくれなんて言ったか?」

 

 自分で言うのもなんだが、俺は副隊長としてはまあまあ強い方だ。が、隊長格に敵う程ではない、と、思っていた。だが、今のところ、対応できている。

 日番谷が冷静さを欠いているからとか、理由は何かしらあるのだろう。それか、修行の成果が出てるのか。あるいはその両方か。

 

「何で雛森を斬った!?」

 

「……」

 

 "お前がさっさと来ねぇからだよ!!"なんて言ってしまっても、事情を知らない彼には伝わらないだろう。伝わらないなら言わなくていい。

 

「雛森は、お前のこと……! お前は、何とも思ってなかったってのかよ!?」

 

「大事な部下で、同期の友人の一人だよ」

 

「そんなこと言ってんじゃねぇ!!」

 

 じゃあ何なんだ。というか何で言われっぱなしでいなきゃいけないんだよ。我慢できるか畜生。

 

「俺は言ったよな? そんなに心配なら十番隊に連れてけって」

 

 確か断られたんだったか。そのときは。なんだっけ、「うるせえ、別にそんなんじゃねぇよ」だったっけか。

 

「伝えるのが恥ずかしかったか? 俺はお前を守りたいって、だから側にいろって言うのが。本当に雛森が大事なんだったらそれくらいやれるだろうにな」

 

 斬魄刀で打ち合いつつ、彼の目を見て言う。

 

「……まあ、こうして間に合わなかったんだから、側に置いてても大して意味はなかっただろうけどな……牢屋に入れても駄目だったんだから」

 

「……殺す!!」

 

 

 余程今の言葉が堪えたのか、あるいはさっきから続く俺の態度に堪忍袋の緒が切れたのか……もし後者なら雛森を傷付けてる時点で堪忍袋の緒はもうみじん切りレベルだろうが……とうとう殺害宣言が出てしまった。

 

 

「卍解!!」

 

 始解は冷気と、それによって作り出された氷の竜を刀身から放つ。四方三里にいるうちは味方さえも巻き添えで殺してしまいかねない程強力な斬魄刀。

 その卍解は、天候すらも支配する。斬魄刀を持つ手が氷の竜に包まれ、背中から氷の翼を生やしたその姿は正に一体の竜。放たれる冷気も始解の時の比ではない。

 

「大紅蓮氷輪丸!!」

 

 怒りで荒れ狂うその霊圧は、隊長格の名に恥じない凄まじいものだ。だが、どうしてだろうか。別に怖くない。原作知識で未来を知っているから? 俺の実力が上がったから?

 ……いや、曲がりなりにも眼鏡置きの下に付いたことで、この場で俺が死ぬ可能性が限り無く低くなったからだ。

 我ながら情けない限り。笑いも起きない。

 

「今までも、これからも、どうあがいたってお前の思う通りにはならないよ」

 

 流石に弱く見えるぞとは言えなかった。あれは実力が隔絶してたからこそ言えることだ。眼鏡置き(あいぜんたいちょう)のようにはいかない。

 

 ……あれ、さっきの俺の発言はもしかして俺にも該当しているのでは……? 

 

 考えないことにする。

 

「……忠勝」

 

 鎧を纏う。あいつの卍解のせいで極寒だったが、今は暖かい。ホンダムの心遣いを感じる。でも腹がまた痛くなってきた。胃薬を完備してくれと切に願う。

 

 ……無理だよな。

 

 と、ぼんやり考えてる内に、氷付けにされてしまった。流石は卍解と言うべきか。流石は氷雪系最強。気づいた時には凍っていた、なんて、どんなホラーだろう。

 

 でも、ホンダムは止まらない。

 

 凍らされた程度で止まるものか。

 

「何……だと……?」

 

「何だよ、もう終わったとでも思ったのか……?」

 

 驚愕の表情の日番谷。どうやら本当に終ったと思っていたらしい。

 鎧の表面に張り付いていた氷が崩れ落ちる。

 

「さっき言ったろ。どうあがいても、お前の思う通りにはならないって」

 

 槍が回転を始める。霊圧を込めれば込める程、回転は速く、そして穂先は巨大化していく。

 

「流石氷雪系最強。気付いたら凍らされてた。怖い怖い。でも、その程度じゃあ、足りないんだ」

 

 バックパックからブースターが飛び出し、加熱を始める。

 

「お前の氷じゃ、俺を止めることも、殺すこともできないし、雛森を守ることも、自分自身を守ることも、できやしないよ」

 

 加熱は充分。槍も、準備万端だ。あとは、ぶち抜くのみ。

 

 

「さようなら日番谷冬獅郎」

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。楽しんでいただけたなら何よりです。


作者によるオリ主虐めを始めたつもりだったんだが……思っていたより虐められてない気がする……。

それはそれとして、シリアス入りましたが如何でしょうか。流石にずっとシリアルではいられないと言うか何と言うか……こうして叩き落とすのが醍醐味というか……まあ考え方は人それぞれでしょうけども。

続きは気長にお待ち下さい。


ちなみに、私がBLEACHで一番始めに好きになったキャラは日番谷君です
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