虚無の魔神   作:千本虚刀 斬月

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43話 剣と鞘

 

 

 

 

ウルキオラは、虚と実の狭間を揺蕩うのでは無く、その境界を超越しつつある。黒崎一護や藍染惣右介のように、真の超越者に成りつつあるのだ。

 

もっとも、崇宮 澪(始原の精霊)相手を想定するならば、この領域が最低ラインと言える。これで漸くヤツの有する3つの『天使』に対抗出来る。それでも油断は一切出来ない。ヤツは『天使』を使うまでもなく並みの精霊程度では鎧袖一触で終わる程の基礎スペックがあるのだから。

 

そして、元凶とも言える魔術師四名も当然殺す。特に、DEMのアイザック・ウェストコットとエレン・ミラ・メイザース。むしろ殺害対象としての優先度は崇宮 澪(始原の精霊)以上と言える。

 

本来のメインプランは、過去に遡行して始原の精霊を殺すか召喚者を実行前に殺して顕現を阻止することでどうにかして歴史を改編して、今現在の精霊絡みの悲劇そのものをまるごと無かった事にするとこだ。しかし、世界には抑止力があり、絶対的ではないものの決して無視は出来ない。鳶一折紙という例を鑑みるに。故に、スペアプランとして、現在の有様を許容し未来を見据える方法も模索する必要があるだろう。

 

本条二亜自身も認めているように〈囁告篇帙(ラジエル)〉は完全無欠というわけでは無い。未来については、そもそも検索対象外で識る事が出来ない。過去と現在でも、知ろうとしなければ知れないうえに、実体験とは僅かでも確実に差異がある。何より『心』まで知ることは出来ない。

 

やはり情報は新鮮な生のものが1番だ。

 

 

4月10日、来禅高校2年4組に時崎狂三が潜入することになった。

 

クラスの副担任にして物理担当として村雨 令音(始原の精霊)もまた潜入しているが、敢て、時崎狂三の素性そのままに転入手続きをした。初日の挨拶は保護者としてウルキオラも同伴した。本条二亜は喧嘩売ってるとしか思えない煽り具合に大爆笑していたが…

 

 

とは言え、本日はホームルームで軽く自己紹介して、始業式が終われば基本帰宅となる。

 

終わりのホームルーム後、やはり一部の生徒が群がってきた。話が多少は盛り上がってきたところで

 

⚠⚠⚠⚠⚠⚠⚠⚠⚠⚠⚠⚠⚠⚠⚠―――――

 

けたたましく鳴り響くサイレン。連日の空間震警報。避難する生徒達。流れに逆行する一人。

 

そして、またも顕現する剣の精霊。

 

五河士道は剣の精霊と接触し、空中戦艦フラクシナスに回収された。今後は精霊に対するジョーカーとして本格投入されるのだろう。

 

必然的にラタトスク機関と始原の精霊も本格始動することになる。DEMの連中も否応なしに動かざる得ない。盤面が大きく動き出す。

 

 

 

翌日、案の定五河士道と村雨令音と五河琴里(炎の精霊)は科学準備室に。どうやら、先ずはギャルゲーで軽く慣らし運転するらしい。

 

およそ10日後、五河士道はインカムを装着した状態で、担任教師を口説きだした。一瞬、黒歴史を暴露されすぎてついにとち狂ったのかと思った。

 

ギャルゲーに時間をかけ過ぎな上に、いきなり跳ばし気味では無かろうか。

 

うっかりタマちゃん先生に踏み込みすぎて攻守逆転された挙げ句に遁走する有様。あれで大丈夫なのか心配になる。

 

廊下を遁走する五河士道と、このままでは曲がり角でぶつかる。

 

「つつ……すまん、大丈夫か?えっと…時崎?」

 

「ええ、大丈夫ですわ。士道さん」

 

五河士道は動揺を隠しつつ、何やらしどろもどろに言葉をかけてくる。いっそ微笑ましい。

 

「俺、実は前から時崎のこと知ってたんだ」

 

「あらあら、…わたくしも、以前から士道さんの事は知っておりましたわ。……五年前の大火災の日から」

 

激しく狼狽し、頭痛に耐えるように頭を抑える五河士道。狂三は畳み掛ける。

 

「わたくしも、精霊ですのよ?」

 

もはや絶句している。

 

そこで計ったように空間震警報。

 

「あらあらあら。この気配は、剣の精霊さんですか。場所は…丁度ここですわね」

 

逡巡する五河士道に声をかける。

 

「士道さんはまず剣の精霊さんの方を構ってあげてくださいませ。あの方は、とても不安定ですから。わたくしのことは、おいおい」

 

そう言い残して時崎狂三はそそくさと他の生徒達と合流して避難する。

 

 

翌日、臨時休校となったため喫茶店で余暇を満喫してしていると、見るからに寝不足な凸凹コンビが入店してきた。村雨令音と五河琴里である。

 

同時にウルキオラからの通信で、静粛現界した剣の精霊と五河士道が3度目の接触を果たした映像が送られてきた。

 

二人が店員に案内される途中、狂三と目が合った。

 

「…おはようございます、村雨先生」

 

「…ああ、おはよう。狂三」

 

「っ!?――〈ナイトメア〉!」

 

「はじめまして、五河琴里さん。わたくし、時崎狂三ともうしますわ。〈ナイトメア〉では無く、ね」

 

芝居がかった大仰な所作と言葉使いに、慇懃無礼さがにじみ出ていると感じたらしい。咥えていたチュッパチャプスをガリリと噛砕いた。

 

「琴里、少し落ち着こう。気持ちは分かるが、ここで狂三の不興を買っては不味い」

 

村雨令音に窘められて

 

それで、あなたは五年前の大火災のことを知っているのね!?あなたから霊力がまるで観測できないのはどういうこと?〈ホロウ〉とはどういう関係で、彼奴は今どこに居るの?

 

と矢継ぎ早に質問攻めしたいところを辛うじて飲み込んだ。

 

狂三の向かい席に腰掛ける2人。

 

ささっと注文して店員が去るや否や、冷水を一気飲みして多少は落ち着きを取り戻した。

 

「ごめんなさい、時崎さん。幾つか訊きたい事があるんだけど、良いかしら」

 

「狂三で構いませんわよ、琴里さん。それより、士道さんのサポートをしてあげなくて大丈夫ですの?」

 

狂三は丁度入店してきた男女を指さす。

 

ソレを見た二人は暫しの停止の後、揃って盛大に吹き出した。

 

しかし、他の精霊と比べても群を抜いて不安定な霊圧だ。精神的な問題以外にも何かしらの問題を抱えていそうな感じがする。

 

「どうあれ、剣には鞘が必要ですわよね」

 

 

 

斯くて剣は鞘と巡り会い、恙無く無事に収まった。丘の展望台の崩落やASTの負傷など、問題に値しない些末事だろう。

 

結局は始原の精霊の想定通りに。

 

あの少年も、10の精霊達も、所詮は誂えられた舞台装置。

 

…今はそれでも良いだろう。だが、台本通りに踊り続けてやる気は毛頭無い。

 

幸いにも、特級の飛び入り参加者(ウルキオラ・シファー)が居る。

 

だから、何時か必ず――

 

「貴女の反吐が出る茶番劇を最高のタイミングで台無しにして差し上げますわぁ…っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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