女の子だらけの職場で俺が働くのはまちがっている   作:通りすがりの魔術師

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昔と違って書く気力が失われた感ありますねぇ、ありますあります…


それでも比企谷八幡は変わっていない。

世間がバレンタインというお菓子メーカーの策略に踊らされている中でも、社会人は仕事に次ぐ仕事である。外のひんやりとした空気とは違い、オフィス内は暖房によって過ごしやすくなっている。ずっと座っていると肩や首に血がたまる感覚がしてポキポキと鳴らしていると、隣から視線を感じた。

 

 

「どした」

 

 

「いや、最近なんか頑張ってるなぁって」

 

 

ごくごく自然に目線だけを動かして、視線の主へ問いかけるとなんだか感心するように、まるで俺がいつもは頑張っていないかのようなことを言われた。確かに俺は手を抜けるところは手を抜いて、やるべきところはしっかりと表面上は頑張ってやっている。あれ?もしかしてまるで全然ダメなのでは?

 

 

「まぁ、仕事だしな」

 

 

「そうじゃなく、なんて言うんだろ」

 

 

うーんと唸りながら涼風は考える素振りを取るも、だんだんと首を捻り始める。

 

 

「キャラデザは今まで通りだし、はじめさんの補佐もやってるし、でもなんだろな…」

 

 

言葉だけなら褒めてるように聞こえるのに、その声音はちょっと複雑な感じがするのはなんでなんですかね。元専業主夫志望にしてはめちゃくちゃ働いてる方だと思うんですけど。散々考えた挙句、涼風はにこりと笑った。

 

 

「わかんないや」

 

 

「なんだそれ」

 

 

けれど、まぁ俺は最近頑張っているのだろう。どこを、どのように、どうやってという具体的には言えないが頑張っているのは伝わっているというのはいい事だ。自分でできる範囲で目の前にある仕事をひたすら片付けていこうと決めた身としては、その成果を他人に認められるというのは喜ばしい。

 

 

「…これ売れるかな」

 

 

「知るか」

 

 

「ええっ!?」

 

 

これというのは今イーグルジャンプで作っているゲーム『デストラクション ドッヂボール』、略してDDBの事だろう。それ以外は知らない。涼風が画集を出すには早すぎるし、自作のポエムも書籍化するというのなら喜んでオフィス内に拡散しよう。買わないけどね!

 

 

 

「売れないと困るじゃん!私たちが何やってるか分からなくなるよ!」

 

 

ガララッと椅子のタイヤを回して俺の隣へ近づいてきた涼風がこちらを覗き込むように切迫してきた。相も変わらず紫がかったツインテールが揺れて、俺の首筋にかかってこそばゆい感覚が走る。幸いだったのは近づかれても胸部装甲が薄くて、スーツ姿だからあまり接触効果が薄いことだろうか。これがひふみ先輩だと間合いに入られた時点で即KO。求婚して拒否されセクハラで訴えられて社会的地位を失うところまで見えた。いや、そんなに好感度は低くないはず…ないよな?

 

 

「まぁ、心配しなくてもはじめさんが何とかするだろ」

 

 

あとは葉月さんとか大和さんとか。遠山さんがいるのも心強い。フェアリーズ・ストーリーを売り出したスペシャルでアドバンテージなプロデューサーとマーケティングリサーチの鬼がついていれば怖いものはないと思いたいが。

 

 

「そういや、発売時期が被ってるゲームがあるんだっけか」

 

 

一応、ゲーム会社に入ってからは他社のゲーム発売時期をチェックするようになってしまったのでそういう知識が入ってしまっている。別にやりたいなー欲しいとかそういうんじゃないよ。ほんとに。

 

 

「そうなんだよ!!」

 

 

「っおぉっ!?」

 

 

俺のそんな独り言に答えたのは隣にいた涼風ではなく、逆方向から唐突に俺の机を叩いたはじめさんであり、あまりにも急でしかも近くて岩盤に叩きつけられるような衝撃を受けてしまった。

 

 

「ダイナギアーズだよね!?私も体験版やってさ、めちゃくちゃ面白くてさ……それであれがDDBの10日後発売なんだって!」

 

 

他社のゲーム作品を褒めていいのかと聞かれたらダメですが、面白いものにはちゃんと面白いって言わなきゃダメだと思うのではじめさんの言葉は大正解。けれど、大声で言うのはやめましょうね。

俺が涼風に聞かれるであろうことを全部話してくれたはじめさんはやや興奮気味にそう言うと、俺の方を見た。

 

 

「それでさ、このゲームどうなんだろうって。本当に面白いのかな…って」

 

 

いや、それあんたが言っちゃダメだろ…。考案者が面白くないと思うゲームを誰が面白いと思うのだろうか。そう言いたかったが残念ながら俺にそんな根性はない。代わりに思ったことをズバズバと言える人に代弁してもらおう。

 

 

「なんやなんや、はじめが面白い思ってなかったら意味ないやんか!」

 

 

「ち、違うんだ。その、なんて言うかさ、面白いとは思うんだけど…これでいいのかなって…」

 

 

ふくれっ面のゆん先輩にはじめさんはぶんぶんと手を振る。まぁ、不安になるのは分からなくもない。自分が面白いと思ったものが他の人にも共感を得られるかどうかというのは。

 

 

「じゃあ聞いてみたらいいんじゃないですか?」

 

 

その他大勢には社外秘のため聞くことは出来ないが、ここにはゲームが出来ていく過程を見ていて何かしらの感想を抱いた人間はいるはずだ。それがポジティブだったり、ネガティブであるかは別の話だが。

 

 

「涼風、なんかないか?」

 

 

「へっ!?わたし!?」

 

 

他に誰がいるんですかねと目を向けると、ゆん先輩やはじめさん、さらには傍観していた望月の視線も集まる。

 

 

「え、えっと、面白いとは思うんですけど、キャッチのタイミングが簡単すぎるかなぁって」

 

 

「逆やろ。キャッチがむずい!取れん!せやから防御しててキメ技のゲージが溜まらへん」

 

 

涼風の意見にゆん先輩は腕を組みながら声と態度で反発する。けど、ここはゲームが得意不得意の差だと思うんだが。タイミング取るのってリズム感覚とかとは別ベクトルだから、俺でもできるし。言ってる事が逆の2人では参考にならないなと俺は望月に目配せする。

 

 

「私ですか?ゲーム自体は面白いと思うんですけど…思ったよりカメラが引きで細かい部分が潰れてしまうのでもっと単純なデザインにしておけば…と」

 

 

なるほどさすが根がゲーマーのやつは視点が違う。それに加えてキャラデザの視点も入ってきて、参考になりにくいな。これにははじめさんも苦笑いだ。はてさて、これでは改善点が見えてこないな…いや見えてきたら手直しが必要になるからいらないんだけどね。

 

 

「他にも聞いてみましょうか」

 

 

「うん」

 

 

 

とりあえず近場から順を追ってインタビューすることにした。となると、まずはハリネズミのマスコット人形が目につくひふみ先輩だろう。

 

 

「ふ、ふぇ、八幡に、はじめちゃん?ど、どうしたの?」

 

 

言葉と言葉の間隔はなくなったけど口篭りは相変わらずで可愛らしいひふみ先輩にDDBについて良いところや悪いところはないかと聞いてみた。

 

 

「わりとあっさりしてるかな…あ!いや!でも一般ユーザーくらいならこれが丁度いいと思うよ!!」

 

 

ガチゲーマーの本音に加えてのヲタク特有の早口。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。そうだよなぁ。ゲームショウのデモプレイで最高スコア出す人にとっては今回のゲームはかなり簡単な部類なのかもしれない。

 

 

「言ってる事がバラバラだ…」

 

 

メモを取りながらそう呟いたはじめさんの顔は浮かず、どうにも彼女の得たい意見とは違うらしい。賞賛も批判も大歓迎という感じなのだろうが、はじめさんに建前を使わずに本音で話す人間というのはやっぱりゆん先輩とか遠山さんや葉月さんくらいではないのだろうか。この場にはいないが八神さんも思ったことはすぐに言うタイプだから、こういう時は頼りになるのだがいない人に頼っても仕方あるまい。

 

 

「次行きましょ」

 

 

「う、うん…」

 

 

続いてやってきたのはプログラマーブース。今回は納期まで安定して仕事が出来ているらしく暗雲は漂っておらず、どこか弛緩した空気が流れていた。

 

 

「お、ハッチーとはじめさん」

 

 

「どうしたんですか?」

 

 

いち早く俺とはじめさんに気づいた桜と鳴海が首を傾げ、追従するようにうみこさんも気づいたらしい。顔見知りでちゃんと話したことがあるのはこの3人くらいなので聞くならば、適役だろう。

 

 

「外野っているのかなーって、ちょっと思いますね。ただの球拾いだし」

 

 

「ミニゲームを追加してほしー!そして私が作る!!」

 

 

カールした髪をいじりながら何かドッヂボールで暗い経験があるのか鳴海がむくれながら言うと、逆に桜は意見ではなく誇らしげに自らの要望を口にした。最もそれは聞いていたうみこさんに却下されているが。

 

 

「なるちゃんのは一理あるかな…」

 

 

いや外野大事だと思いますよ。授業が終わるまで何もしなくていいって言う点では。内野にいてもボールは取れない触らせて貰えないし、なんなら1番当てやすいからと速攻で外野送りにされる上に、球の威力が強いんだよなぁ。そのあとはどちらかが力尽きるまで終わらないので、見てるだけで終わるから…まぁスポーツマンタイプはいればいいんじゃないかなと思います。

 

 

「現状リスクとリターンのバランスもいいと思います。ただ、よりライトユーザー向けにキャッチ時間増加などのリスク軽減は必要かと」

 

 

続いては企画班。常にユーザーを意識して、カスタマーサイドに立って仕事してるだけあって意見が的確で明瞭だ。はじめさんもうんうん唸りながら聞いており、リーダーデイレクター補佐の……えっとそう世界の破壊者みたいな名前した人。確かはじめさんがつかささんって呼んでたから間違いない。けど、「さ」で終わる人に「さん」付けってしにくいよな。おのれディケイド。

 

 

「凸凹があって防壁になるマップとか。キャッチ出来なかったら爆発するボールとか入れたら面白いと思う」

 

 

ステージギミックや特殊ボールというアイデアは既にあるものの、真新しさはなかったのでレベルデザイナーの人は参考になるなぁ。で、このチャイナ服着せたら似合いそうな人誰?

 

 

「もっと女の子キャラを増やしたいです…」

 

 

名前は知らないけど割と話したことのあるシナリオ担当の人の意見は、取り入れられるかは別として、確かにストーリーは男の子主体で女の子は少なめではある。けれど、ゲームだけでも男性は多い方がいいと思います。ほら、ここほとんど女性だしね。

 

 

「そういえば、八幡はどうなの?」

 

 

あとは葉月さん、遠山さんとなったところで当然というべきか俺に白羽の矢がたった。そういえばと思い出したように聞かれたが、はじめさんの目は真剣そのものであり、俺の言葉を待っている。

 

 

「俺は別に…けど、今の仕様なら買わないですね」

 

 

「え」

 

 

「概ね、聞いたことと変わりませんけど、付け加えるならドッヂボールで3対3って少ないですし、戦略性に幅が出ません」

 

 

「う、うん…」

 

 

「あとは発案者が面白くないって思ってるゲームは俺も面白くないんで」

 

 

「…へ?」

 

 

「じゃ、俺、仕事溜まってるんで。あとははじめさん1人でお願いします」

 

 

そう言って足早にはじめさんの前から消えて、ちょこっと給湯室に寄り道する。コソッと顔を出して俺のせいではじめさんが落ち込んでその場で泣きじゃくってないかを確認するが、その顔は先程の浮かないものではなく晴れやかなものになっていた。

 

 

「よしっ!」

 

 

はじめさんは自分の頬を叩いて気合を入れ直し、葉月さんのいるフロアへと急ぎ足で向かっていく。どうやら俺の心配したようなことはないらしい。ホッと一息つこうとする頬に温かい感触がし、振り向くと俺にマグカップを押し当てる遠山さんがいた。

 

 

「お疲れ様」

 

 

「ども」

 

 

一歩間違えたら火傷しますよという言葉を飲み込んで渡されたマグカップを受け取る。中はどうやら紅茶らしく、芳醇な香りが鼻腔をくすぐる。

 

 

「はじめちゃんのサポートしっかりやってるみたいね」

 

 

「はぁ、まぁ仕事なんで」

 

 

「ふふっ、そう」

 

 

そう仕事だから。きっとはじめさんのサポート役なんて仰せつかわらなければ俺ははじめさんを助けることも発破をかけるような真似はしなかっただろう。誰かに頼られて、褒められて図に乗って自己欲求を満たしたいとかそういうのはもうやめたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




割と書いてみたいネタはたくさんあるけどそれを言語化して物語する力がもうないので他力本願寺ってことで誰か書いて感がすごいですね。
やはり歳をとるってのはこういう事なんすねぇ(しみじみ)
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