リリカルなのはINNOCENT×EX‐AID~天才ゲーマー「F」~ (放仮ごdz)
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予告!

あらすじでドンッと載せた理由で新作投稿しました、放仮ごです。東方ウィザード系をリメイクしたおかげで色々すっきりしてしまったので新たな東方×仮面ライダー作品として書いてみました。

フランが主役です。ディケイドでもキバでもダキバでも無い、天才ゲーマーなフランが主役です。ふざけているようでちゃんと意味があります。

まずは予告から、どうぞ。


20XX年夏。地方都市の研究者(変わり者)が開発したゲームが、世界を変える。

 

「ゲーム」とは人間が生み出した究極の遊戯である。そんなゲームの代表格である超人気ゲーム「マイティアクションX」に次ぐ新世代ゲームがこのたび、世界に席巻した。

 

その名も、体感シュミレーションゲーム「BRAVE DUEL(ブレイブデュエル)

 

3Dキャラクターを自分で体を動かした通りに操って遊べるバーチャルリアリティゲームだ。しかし、バーチャルリアリティと言う科学の真髄は、とある歪みを生み出した。それは、未知の病原体として現実世界にまで侵食するゲームウイルス「バグスター」だ。

 

バグスターはブレイブデュエルからマイティアクションXを始めとした他のゲームを伝って徐々に増殖し、勢力を強めて行った。

 

 

 

 

 

 

浸食が本格的に活性化するその半年前、これが隔絶された世界「幻想郷」に、ゲームを伝って侵食し全滅すると言う未来を視た一人の吸血鬼が妖怪の賢者に相談、賢者は「普通の魔法使い」「月の頭脳」「動かない大図書館」「水の中のエンジニア」「七色の人形遣い」と言った幻想郷有数の知能を持つ者達に協力を持ち掛け、対抗手段として「ゲームの力で変身し、バグスターを除去する道具」を発明、開発した。

 

しかしそれは、性質上「ゲームが得意な者」しか使用できない代物であった。しかも幻想郷で製造したせいか、幻想郷の人間にしか扱えないと言うおまけ付き。文化が遅れた幻想郷でゲームなどしている者など限られてくる、そのため賢者は困り果てたが、吸血鬼がまた未来を予測、同時に提案する。

 

 

 

 

 

 

 

科学のバーチャル世界で魔法を使い戦う少女達に迫る脅威・バグスター。その脅威に立ち向かうのは吸血鬼の妹、フランドール・スカーレット。

 

 

「いいわ。このゲーム、私がノーコンティニューでクリアしてあげる。変身!」

《レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?…アイム・ア・カメンライダー!》

 

 

何も壊さなくていいゲームを心の底から楽しむ少女は、天才ゲーマー「F」としてバグスターを殲滅するゲームクリアを目指し、同時にブレイブデュエルの頂点に立つことを決めた。

 

 

《マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティ・アクショ~ン!エックス!!》

 

「覚悟してね。あなたが、コンティニューできないのさ!」

 

 

 

 

これは数多のライバルと出会い競い高め合う少女達が邂逅する、過酷な運命に挑む破壊を望まない破壊者の少女の物語(ニューゲーム)

 

 

――to be continued?




こんな感じになってます。今のところ、ゲンムまで五人のライダーの配役を決めてます。

エグゼイド→フラン(天才ゲーマー「F」
ブレイブ→???
スナイプ→???
レーザー→???
ゲンム→???


次回はプロローグを投稿しようと思います。ではでは。


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運命に導かれて(確信犯)

プロローグです。まだ予告だけだったのにお気に入りしてくださったお二方、ありがとうございます。


結界で外の世界と隔絶された全てを受け入れる地、幻想郷。その有数の湖である霧の湖の畔に存在する目が痛くなるほど紅い館、今や外の世界では忘れられてしまった吸血鬼の住む「紅魔館」の地下室で、一人の少女が暗い部屋で何やら熱中していた。

 

彼女の名はフランドール・スカーレット。今彼女は、外の世界と繋がっているオンラインゲームに勤しんでいた。次から次へと「敵」を撃破し、一切の無駄なく自陣を勝利へと導くその姿はまさしく勝利の女神。しかし、現実の少女はそうではない。

 

窓一つなく真っ暗な中で唯一輝くモニターの画面から漏れる光を受けて輝く髪は人ならざる美しさを持つ金糸であり、その瞳は血の様に深紅に染まっている。何よりも背中から伸びる、宝石の様な物が付いている異形の翼と、口元から覗く鋭い牙。カチカチと鳴らしているリモコンを握っているその手には、鋭い爪が生え揃っているにも拘らず器用に操作している。

 

薄汚れた悪魔。人間からそう非難され迫害を受けた種族、吸血鬼の名門スカーレット家の次女。それが彼女と言う存在だ。そして何より、この幻想郷の者なら誰しもが持つ「程度の能力」は彼女にとって忌々しい力だった。

 

 

【ありとあらゆるものを破壊する程度の能力】

 

 

生まれた時から持っているそれは、文字通り全てを破壊してしまう、幻想郷でも規格外の物だ。「悪魔の妹」と呼ばれるぐらい、姉は悪魔と呼ばれてはいるが、自分の方が悪魔なんじゃないかと思う。

だから、何も壊さないでいられるゲームの世界と言うのは彼女にとって唯一とも言える逃げ道だった。破壊衝動を抑える事無くゲームの中で暴れて解消し、それでも現実では何も壊れない。

これに気付いた姉が数年前に香霖堂から買って来てくれたテレビゲームで、彼女の顔に純粋な笑顔が戻ったことがどれだけ姉が嬉しかったのか。そのことを彼女は知らないがそれでも、姉には感謝していた。

 

 

「あなたが、コンティニューできないのさ!」

 

 

元々コンティニューなんかできないゲームだが、決め台詞の様な物であるその言葉と共に、敵を撃破。【win!】と画面に表示され、フランはコントローラーを置いてググッと伸びをする。

 

 

「うーん、ゲームクリアー♪人間も強い人いるけど、さすがにこれは勝てないよねー♪」

 

 

このゲームはいわゆるサバゲーだ。彼女が行なったのはただ一つ、「狙撃銃のスコープをゲーム開始時から付けたままプレイする」それだけだ。本来ならばスコープを付けると表示がなり相手にもそれが分かる仕様になっているのだが、フランはそれを気付かれない様にしたのだ。

言うだけなら簡単であろうが、そうはいかない。スコープを付けたままだとスコープ外の様子がまるで分らずろくに移動もできないからだ。しかし、彼女は天才的センスでそれを可能とした。場所が分からない狙撃程恐ろしい物は無く、あっけなく敵陣は全滅した。これがプレイして一日でフランが編み出した、このゲームの必勝法である。

 

 

「ヘル・ゲイツだっけ?王だかなんだか知らないけど、私の敵じゃないよ」

 

 

彼女が知らないが、そのヘル・ゲイツと言う男は近接戦闘・・・CQCプレイならば世界最高峰の男である。仮にも世界最大のゲーム会社のCEOを務める天才プログラマーでもあるプロゲーマー相手にそう豪語する彼女は、天才ゲーマーと呼んで然るべき腕前だろう。

メニュー画面に戻し、傍に置いておいたコップに注がれているトマトジュースを飲み干し、一息つくフラン。すると唐突に天井に付けられた蛍光灯に光が灯り、彼女は眩しげに眼を細めて恨めしいと言う感情を大いに表情に表して入り口付近を睨む。そこには、お盆を持ったメイドがいた。

 

 

「妹様、薬を持って参りました。…また電気も点けずにゲームしていたのですか?」

 

「咲夜。眩しいから電気を付けるのは言ってからにしてよ…」

 

「言っても「点けないで」って言うのがオチでしょう」

 

「ぶーぶー、いいじゃないの。暗い方がゲームに集中できるんだから」

 

 

そう文句を垂れる相手は、紅魔館のメイド長を務める銀髪が特徴の人間の少女、十六夜咲夜。この地下室に訪れる数少ない一人である彼女に、フランは頬を膨らませて抗議するが慣れているのか咲夜は譲らない。

 

 

「そのうち、目が見えなくなりますよ」

 

「いいもんだ。もう目は悪いもんだ」

 

「そう言う問題じゃないでしょう」

 

 

すちゃっと紅いフレームの眼鏡をかけ、誇らしげに胸を張って踏ん反り返るが一蹴されてしまい不満げにお盆を受け取ったフランは部屋の中央に置かれた机にそれを置き、欠伸をして咲夜に尋ねた。

 

 

「今何時?」

 

「昼の十二時です」

 

「もうそんな時間?地下だから気が付かなかったわ」

 

「お嬢様はもう就寝なされました。妹様も、ゲームは休んで早めに就寝なさってください」

 

「いいじゃないの。お姉様と違って私に昼夜なんて関係ないし」

 

「よくありません。寝ないのは健康に悪いですよ」

 

「…分かったわよ。寝ます、寝ればいいんでしょ」

 

「はい。お休みなさいませ」

 

 

笑顔で一礼した咲夜が出て行くと、フランはお盆の上に置かれた錠剤の入った瓶と水・・・の様な液体の入ったコップを見やると、錠剤を三つ取り出して口に含み、水の様な液体で流し込んだ。

 

 

「…苦い。もう少し味をどうにかできないのかしら、甘くするとか」

 

 

今度の診察の時にあの薬師に文句言ってやろうと心に決め、パソコンの電源を切ると灯りを消し、布団に潜り込んだ。外は既に真昼、吸血鬼にとっては真夜中同然の時間帯だ。自然に眠気が彼女を支配し、フランは目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きなさい。いい加減に起きなさい、フランドール・スカーレット!」

 

「ほえ?」

 

 

目を覚ますと、そこは周囲を不気味な目がギロギロ睨んで囲んでいる空間で、目の前に浮かんでいたのは見覚えのある金髪の毛先をいくつか束にしてリボンで結んでいる特徴的な髪型と、紫にも金色にも見える瞳を持つ女性。フランは辺りを見渡して誰も居ないことを確認するとギロッと睨んで口を開いた。

 

 

「レディが就寝中にこんな所に落とすなんて、不作法極まりないんじゃないの?…八雲紫」

 

「生憎様、私達にとっては起きている時間なのよ。寝ているのは貴女と今も夢の中の姉ぐらいよ」

 

「…で、お姉様じゃ無くて私をこのスキマに連れ出したのはどういう了見?今度こそ幻想郷から出て行ってくれって?」

 

「当たらずも遠からずよ。貴女にはこれから外の世界に行ってもらうわ。もちろん、拒否権無しでね」

 

 

いい笑顔でほざく諸悪の根源にイラつき思わず拳を握りしめながらフランはただ睨みつけ、言葉を紡ぐ。

 

 

「だが断る。もちろん、力づくでね。ゲームを置いて行けるかって話よ」

 

「あら、残念ねえ…せっかく、面白そうなゲームをプレイできるって言うのに…」

 

「…ゲーム?」

 

 

意地悪そうに笑った賢者が次げた言葉に、好奇心が惹かれたのか興味津々に耳を寄せるフラン。その様子に満足したのか、紫は話を続けた。

 

 

「外の世界でブレイブデュエルってゲームが開発されてね?画期的な発明で、私もちょっと興味を惹かれたんだけど…異変が起きたの。そのゲームから発生したゲームウイルスが現実にまで干渉できる様に進化してしまって、貴方の姉が予知したところによると、いずれ貴方を始めとしたゲーマーの持つゲームから増殖して幻想郷まで侵食するらしいのよ」

 

「ウイルスって、幻想郷には薬師も居るし、妖怪が病気になんてそんな簡単にかからないでしょ。いらぬ心配じゃないの?」

 

「そのウイルス「バグスター」に感染した病気・・・ゲーム病を患った人間が、ウイルスに身体を乗っ取られて消滅するとしても?」

 

「!」

 

 

その言葉で、全てを悟った。幻想郷を隔絶する結界は、ただ一人の人間の存在により現状を保たれていると言っていい。それにフランの親友である魔女や、紅魔館唯一の人間たる咲夜・・・それらが消滅したら、それこそ一大事どころではない。前者に限ったらそれは、幻想郷の消滅を意味する。理解してしまった大事に、フランは戦慄する。…と同時に疑問が生まれた。

 

 

「…それが事実だとして、ゲームをプレイできるってのはどういう意味?遊んでいる暇なんてないんじゃないの?」

 

「考えて見なさい。ゲームから生まれたウイルスなのよ?対抗できるのも、ゲームしかない。さすがにゲームと現実の境界を歪めたら大変な事になるからね。そこで、幻想郷の頭脳が集結して発明したのがこの「ゲーマドライバー」よ」

 

「…なにこれ、ゲーム機?」

 

 

手渡されたのは、蛍光グリーンと蛍光ピンクと言う目が悪くなりそうなカラーリングがなされたゲーム機の様な掌大の物。フランからしたら本当に大きく、両手で受け取る。

 

 

「残念ながらバックルよ。これを挿して使うの」

 

「これって…マイティアクションX!?」

 

 

【MIGHTY ACTION X】と書かれた、薄いカード状のテレビゲームのカセットにグリップがついていると言う変な形状のアイテム「ライダーガシャット」を受け取り、それに書かれた題名を見てフランは最近噂のゲームだと思い出す。

 

 

「…つまりこれって…マイティアクションXの主人公、マイティの力を使ってそのゲームウイルスと戦えって事?」

 

「バグスター、ね。大まかに言えばそんな感じよ。使い方は説明書を見てね。それで、引き受けてくれるかしら?」

 

「…何で私なの?やっぱり、厄介者だから?」

 

 

唯一残った懸念。それは、自分が異端だと分かっているからこそ過る考え。しかし、紫は首を振ってそれを否定した。

 

 

「貴女の姉から頼まれたのよ。…ゲームの世界を現実で体験できるなら、貴女にやらせてあげてって。妹思いのいい姉ね。でも私が頼んでいるのはバグスターの「破壊」よ。そこは忘れないで」

 

「…ゲーム、なんだよね?」

 

 

ガシャットとゲーマドライバーを握り、俯いてプルプル震えるフラン。その表情は、陰になっていて見えなかった。

 

 

「ゲームなら私、クリアできるよ。霊夢も魔理沙も、咲夜も死なせたくない。ゲームで現実が破壊されるのは嫌だ。だから、バグスターは私が倒す!」

 

「…そう返事するとレミリアが予言していたわ。…いや、アレは確信かしら。…ああそうそう、言って置くけど私が頼んでいるのは貴女だけじゃないわ。幻想郷の他の人間にも協力を頼んでいる、だから貴方一人だと言う事は決してない」

 

「うん、分かった。あ、でもゲームは…」

 

「安心しなさい、住居が決まったらスキマで貴方のゲームは全部送ってあげるわ。それと、あの世界で怪しまれないために境界を弄って置くわね。どこがどう変わったのかはすぐ分かると思うから」

 

「え?ちょっ・・・」

 

 

いきなり宣告された魔改造宣言に、慌てて止めようとするフランだったが既に足下には新たなスキマが開いており、一瞬浮遊感が彼女を襲う。

 

 

「じゃあ、よろしく頼むわね。天才ゲーマー「F」さん?」

 

 

フランの意識が飛ぶ前、最後に見たのは、憎らしい程綺麗な笑顔を浮かべた紫の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほらなのは、すずか。目的地はすぐそこよ」

 

「見えて来たよ、なのはちゃん。早く早くっ」

 

「二人共待って、人混みが…やっと出られたぁ。ってうにゃっ!?」

 

 

聞き慣れない三種類の声が聞こえ、何かに脇腹を蹴られてフランの意識は覚醒した。

目を開けると、彼女は横たわっていた様で痛む上体を起こすとそこには、幻想郷では絶対に見ないビルが立ち並んだ市街が広がっていた。自分を蹴りつけて来た張本人の顔を見ようと顔を向ける。

 

 

「い、痛い…散々なの…」

 

「なのはって本当にどんくさいわね…」

 

「あ、あの、大丈夫ですか?」

 

 

そこにいたのは、自分を蹴った・・・というか躓いたのか倒れてちょっぴり涙目になっている茶髪を青いリボンで短いツインテールにした少女と、茶髪の少女に溜め息を吐きながらも手を貸して立ち上がらせる金茶髪の少女、そしてこちらを心配し手を差し伸べて来る紫色のロングヘアーの少女だった。

 

 

「…うん、大丈夫。ありがとう」

 

 

その手を借り、立ち上がるフランだったがそこで違和感を感じる。…吸血鬼なら一秒で回復するはずの蹴られた箇所の再生が一向に始まらない…?それに、背中の翼の感触も…?

 

立ち上がり、目の前で心配している紫髪の少女を無視して自分の手を見てみる。意識が無くなる前まではあったはずの、鋭い爪が無い。背中に触れる。そこにあったはずの歪な翼が消えていた。空を見る、太陽の下。雲一つない青空だった。どうやら季節は夏らしい。

 

 

「!?」

 

 

いや待て、可笑しい。フランドールは吸血鬼だ、日光を苦手とする闇に生きる種族。もちろん、太陽なんか直に見た事なんてこれまで一度も無かった。なのに、焼け爛れるはずの肌は白いままで、別に苦しくもなんともない。服装を見てみる。パジャマから赤を基調とした私服になっており、頭にはちゃんと帽子も被っていた。

 

 

「まさか、境界を弄るって…」

 

 

目の前で困惑する少女三人組を無視し、フランは何かを確かめる様に周囲を見渡す。そして背後に建つビルの、そのショーウィンドウの映る自分の姿を見て確信した。…吸血鬼は鏡に映らない。太陽の下では生きられない。翼も爪も、鏡に映る姿を見るからに牙も無くなっている。

 

 

其処に映っていたのは10代前半ぐらいの、金髪と紅い瞳を持つ、人間の少女だった。

 

 

「…そ、そう言うことかぁ…」

 

「「「?」」」

 

 

境界を弄られ、人間にされてしまった少女は思わず咆哮しそうになり、そして思い止まって一言漏らす。別段困る事は何一つない、むしろ吸血鬼でなくなった事を喜ぶべきだ。そう考え直し、ふと前方を見てみる。

 

 

「ホビーショップT&H……ブレイブデュエル・・・?」

 

 

ご丁寧な事に目的地にまで飛ばしてくれたらしい。変な所で仕事をこなす賢者にフランは苦笑して溜め息を吐いた。そして、やっと少女三人に向き直ると一言。

 

 

「で、貴方達、誰?」

 

「それはこっちの台詞よー!」

 

 

コミュ症でぶっきらぼうにしか話せないその発言に、金茶髪がキレた。下を見る、そこにはゲーマドライバーとガシャットが転がっており、ギャーギャー騒ぐ金髪少女の声を無視してそれを拾ったフランはガシャットをポケットにしまい、ゲーマドライバー片手に手をヒラヒラと上げた。

 

 

「フランドール・スカーレット。これでいいよね?じゃあ私、あのブレイブデュエルってのに用があるから」

 

「ああそれはどうも、アリサ・バニングスです…じゃないわよ!貴方が倒れていたせいでなのはが転んだんだから、落とし前付けてもらうわよ!」

 

「お、落ち着いてアリサちゃん・・・あ、私は月村すずかと言います」

 

「私、高町なのは。さっきは蹴っちゃってごめんね?」

 

「ん。寝ていた私も悪かったから…」

 

 

初対面にも関わらず自己紹介してくる、自分よりも少し幼く見える少女達に戸惑いながらも何とか言葉を返すフラン。しかし金茶髪少女…アリサは食い下がらなかった。

 

 

「何でこんな外で寝ていたのよ!?」

 

「えっと…」

 

 

どうしたものか。馬鹿正直に言ったところで馬鹿にしてんのか!と逆上するオチだろう。かといって、何で寝ていた(気を失っていた)のか説明しないと多分、納得しない。この数分でそれは何となく分かった。そして、ギャルゲーまでこなしてきたフランの脳内がフル回転し、打開策を思いつく。

 

 

「…何でこんなところで寝ていたのか、思い出せない…」

 

「はあ?」

 

「もしかして…」

 

「記憶喪失・・・なの?」

 

「…多分、それかなぁ…」

 

 

しかし事実だ。アリサは訝しんでいるがどうやらすずかとなのはと言う紫髪と茶髪の少女は納得してくれたらしい。コミュ症で流暢に話せないのが功を差した。

 

 

「…分かったわ。だったら、私達もそこのT&Hに行こうと思ってたのよ。ちょうどいいから貴方も着いて来なさい」

 

「…三人がいいならそれで」

 

 

一人で人が大勢いる場には行けなかったので助かる提案にすがる思いで承諾する。

 

 

 

これが始まり。純粋な思いで駆け抜けた少女達と、ゲームに想いを託した少女の出会いで物語(ニューゲーム)は始まった。

 

――to be continued?




始まりは何時だって紫さんである。

この作品のフランは色々特殊です。
天才ゲーマー、引き籠り、眼鏡、何かの薬を服用している、コミュ症などなど。「破壊」を義務付けられた少女にとってゲームは本当に救いだと思います。姉の真意は如何に…

今回名前が登場したフランの対戦相手、ヘル・ゲイツは「電波教師」のキャラクターです。ナイフ一本でゾンビに立ち向かう姿がかっこいい人です。

次回は変身します。お楽しみにしてくださると嬉しいです。感想をいただけると励みになります。


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I'm a 「F」! I'm a 仮面ライダー!

お久しぶりです!更新が遅れたのはひとえに、エグゼイドとなのセントって描写が難しいよね、という事で長いです。難産でした…あと、分ける所が見付からなかった。今回は一貫してなのは視点で描きます。

初変身、初プレイ。楽しんでいただけると幸いです。では、どうぞ。


こんにちは!私立海聖小学校4年1組、高町なのはです!今日は親友のアリサちゃん、すずかちゃんの二人と一緒に、駅前に新しくできて今日オープンした大型ショップのおもちゃ屋さん「ホビーショップT&H」に来ています!

 

アリサちゃん曰く「ものすっごいゲーム」が置いてあるみたいで、大型ショップな事もあってその前は人ごみでいっぱいで、私は二人を追い掛けて人ごみを出たら寝ていた人に躓いて転んでしまったの。

 

 

それがこの、アリサちゃんより薄い色の短めの金髪をサイドテールに括って帽子を被っている、ルビーの様に紅い瞳と紅い眼鏡、お人形の様に白い肌が印象的な大人びた女の子、フランドール・スカーレットちゃん。ちょっと人見知りなのかおどおどしているけど面白い子で、何でこんなところで寝ていたのか思い出せないらしく記憶が無いらしい。でもT&Hの「ブレイブデュエル」って言うゲームが目的だったらしいので、自己紹介した由縁もあって、私達三人と一緒に行くことになったんだけど…

 

 

「しかしデカいね…外の街ってどこもこんななの?」

 

「外の街って…どんな田舎出身なのよ?」

 

「どんなって…ルーマニア?私が住んでたところは建物の方が少なかったかな…」

 

「地方のお嬢様ってところかな?」

 

「私達と同じって事ね。見るからにお嬢様だもの」

 

「そうかな?」

 

 

T&Hに向かう中きょろきょろ街を見渡し、アリサちゃんとすずかちゃんの言葉に応えるフランドールちゃん。へえ~外人さんでお嬢様なんだ。でも日本語上手いなぁ…でも同い年に見えるけど、お父さんとかと同じ感じがするのは何でだろ…?

 

 

「さて、ようやくついた。ホビーショップT&H、ここで間違いないわ!」

 

「「大きい~」」

 

「…目前に来たら猶更デカい…すごいな外の世界…」

 

 

辿り着いたのは、本当に大きいビル。さすが、噂になるだけはあるの。

 

 

「さあ、さっそくすんごいゲーム「ブレイブデュエルね」・・・ブレイブなんちゃらを見に行くわよっ!」

 

「ブレイブデュエルだってば。人の名前より言いやすいよ?」

 

「あーもう!横文字は覚えにくいのよ!」

 

「名前が横文字なのに?」

 

「アンタ人を煽るの好きでしょ、そうなんでしょ」

 

「ゲームで煽るの地味に重要だしね。後はお姉様とお茶会する時は大体煽ってるかも」

 

「フランドールちゃん、お姉さん居るんだ…」

 

 

私と同じでお姉さんがいるすずかちゃんが共感する様に言う。でもお姉様って言うだけあってやっぱり偉い所のお金持ちさんなのかな?」

 

 

「なのは、口に出てるわよ」

 

「え?ご、ごめんなの!」

 

「いいよ。別に気にしないし。…お金持ちじゃ無くて落ちぶれた貴族だけどね」

 

 

失礼だったかと慌てて謝るが、そう暗い目で言って興味深げに自動ドアの向こうに見える店内を覗くフランドールちゃん。聞けば聞くほど、何て言うか…違和感?を感じる子なの。

 

 

「でもアリサちゃん、こんなに大きいと探すの大変じゃないかな?」

 

「お店の人に案内をお願いした方がいいかもしれないね」

 

「…言ってる傍から来たみたいだよ、お店の人」

 

 

そう言ってフランちゃんが指差すと、そこにはお店の中から出てきた、金髪を緑のリボンでツインテールに纏めて赤い瞳で、T&Hと書かれたエプロンを服の上から身に着けた私達より年下に見える女の子がいた。女の子はにぱっと笑顔で私達に話しかけてきた。

 

 

「ようこそT&Hへ♪何かお探しかな?お姉さんが案内してあげるよっ」

 

((((お姉・・・さん?))))

 

 

ちんまりとした小さい体で自慢げにそう告げて来た少女に、私達の考えが合致した気がした。するとフランちゃんが率先して前に出て女の子に話しかける。

 

 

「お店の子?初めまして、案内してくれる?」

 

「おっけー!私はアリシア。アリシア・テスタロッサだよ。あなたは?」

 

「…フランドール・スカーレット。じゃあ案内よろしく、アリシア」

 

「ぶー。ノリが悪いなー」

 

 

素っ気ない返事のフランドールちゃんが残念だったのか頬を膨らませ、私の傍にとてとてと来るアリシアちゃん。フランドールちゃんは早く入りたかったのか、ちょっと残念気にこちらを見ている。

 

 

「あ、えっと…高町なのはだよ。初めまして、アリシアちゃん」

 

「それじゃあなのはだね!なのは達は今日、何を見に来たの?」

 

「噂の凄いゲームを見に来たのよ。あ、あたしはアリサ・バニングスよ」

 

「だからブレイブデュエル。名前言わないとゲームに失礼」

 

「何よ、言いやすいんだからいいでしょ!」

 

「月村すずかです。お店のどこにあるのかな?」

 

 

睨み合いするフランドールちゃんとアリサちゃんを余所に、ちゃんと聞くすずかちゃんは偉いと思うの。

 

 

「なーんだ、ブレイブデュエル!それなら早く言ってくれればいいのに」

 

「「「「?」」」」

 

 

そう言ってエレベーターに乗せられて連れて来られたのだが、T&Hの最上階。大きなステージと、お客さんがいっぱいいる広いエリアだった。天井も私の両親が経営している喫茶店「翠屋」と比べても高かった。

 

 

「最上階のここが当店自慢の体感シミュレーションゲーム!その名も「BRAVE DUEL(ブレイブデュエル)」だよ!」

 

「「おお~!」」

 

 

アリサちゃんと一緒に目を輝かせるフランドールちゃん。本当にゲームが好きなんだね。

 

 

「すっごい人ね~…さすが目玉商品だわ」

 

「ホントに…」

 

「これってどんなゲームなの?」

 

「体感シミュレーションって事は3Dのアバターを自分で身体を動かした通りに操作できるバーチャルリアリティゲーム?」

 

「よく知ってるね~そう言うゲームの種類に入るみたいだね」

 

「なるほど、確かに画期的なゲームだね」

 

 

ふ、フランドールちゃんが何を言っているのかがよく分からない…見た目は私達と一緒に見えるけどもしかしたらもっと年上なんじゃないかな?

 

 

「なんだか難しそうね…」

 

「私達にもできるのかな?」

 

 

そう言うアリサちゃんとすずかちゃん。同感なの。

 

 

「だいじょ~ぶ!私の妹もすっごい上手いんだから!取り敢えず遊んでみようよ!」

 

「それじゃあアリシア、遊び方を教えてもらえる?」

 

「かこしこまりっ!それじゃ助っ人さんを呼ぶね。エイミィ~!」

 

「はいはいっ、呼ばれて駆けつけエイミィさんですよ~」

 

 

フランドールちゃんに言われ、アリシアちゃんが呼ぶと出て来たのはT&Hのロゴが入ったエプロンを付けた優しそうな茶髪のお姉さん。エイミィさんと言うらしい。

 

 

「右からアリサにすずか、なのはにフラン!ブレイブデュエルを遊びに来てくれたんだって!」

 

「「「初めまして~!」」」

 

「は、はじめまして…ってアリシア、フランって何?」

 

「名前が長いからね。あだ名♪」

 

「あ、そう・・・」

 

「あらそれいいわね!私もフランって呼ばせてもらうわ!」

 

「あ、じゃあ私も…」

 

「私もっ、いいかな?」

 

「…別にいいけど」

 

 

アリシアちゃんに三人で便乗したけど、フランちゃんはそんなに嫌がってないみたい。「あだ名・・・友達・・・」とかぼそぼそ呟きながら、フフフフフと妖しく小さな笑い声を上げていた。う、嬉しいのかな?

 

 

「案内を手伝って欲しいんだけど…エイミィ、大丈夫?」

 

「まっかせといて。ちょうど今手が空いてるし」

 

「よ~っし、それじゃあ私たちがばっちり案内しちゃうからみんなはしっかり聞いててね?」

 

「「「はーい!」」」

 

「は、はーい…」

 

 

アリシアちゃんの言葉に元気よく答える私たちとは対照的にビクビクしながら答えるフランちゃん。いきなりの大声で驚いたのかな?

 

 

「それじゃあまずは皆にこれ渡すね!」

 

 

そう言って渡されたのは、プレイヤーの証でデータを記録する「データカートリッジ」と言う小さな機械と、「ブレイブホルダー」と言うカードデッキを保存するケース。人数分渡され、私達は興味津々に、特にフランちゃんは目を輝かせて掲げていた。

 

 

「ちなみになんとっ、両方とも開店サービスでプレゼントしちゃうよ!」

 

「ありがとうございますっ」

 

「マジで?」

 

「マジで」

 

「普通ゲーム機って安くて一万円はするんじゃない?」

 

「アーケードゲームみたいな物だし?」

 

「納得した」

 

「その代わり、たくさん遊びに来てくれるとお姉さん嬉しいな♪」

 

「こうやって入りやすくしてお客を掴むのね…上手い商売だわ」

 

「アリサちゃーん…」

 

 

何か驚いていたフランちゃんも納得したみたい。そのままエイミィさんに案内されると、巨大なモニターで私たちと同じくらいの金髪赤眼だけどフランちゃんとは全く違う雰囲気の少女が、大の大人相手に立ち回り勝利するエキシビジョンマッチの映像が流れていた。その子はこのお店が誇るエースさんらしい。どこかアリシアちゃんに似ていたからお姉さんかな?

私はそれを見て、面白そうだと、かっこいいなと思った。自由に空を駆ける姿が綺麗だと、そう思ったんだ。

 

 

「今のがブレイブデュエル…基本的に弾幕ごっこと同じ…?でも、肉弾戦もできる体感シミュレーションゲーム……なにより、スペルカードと似ている「スキル」…これは楽しめそう」

 

「ねっ、面白そうでしょ?」

 

「うんっ」

 

「ちなみに経験値とか練度みたいなものはあるの?」

 

「ううん、無いよ?実際に運動してる人でも想像力豊かな人でも楽しめる自由なゲームだよ~」

 

「それはよかった。初回無双も夢じゃない」

 

「お、おう…」

 

 

あ、フランちゃんの言葉にアリシアちゃんが引いている。半分以上何を言っているか分からなかったけど、うずうずしているのは分かった。ゲームが大好きなのかな?

 

 

その後、必須アイテムを作るとの事で「スーパーローダー」と言う夢のスーパーマシン(?)を使って自分の写真が描かれた「パーソナルカード」を作った。「N」「N+」「R」「R+」とランク付けされていて、「N」のカードはコレクション用らしく、戦えるのは武器や防具も描かれている「N+」かららしい。そうやって高ランクのカードを使えば、ゲーム中の自分…いわゆる「アバター」の性能を上げれるんだとか。ランクを上げるには強化や合成を使う、フランちゃん曰く「ソシャゲ」仕様なんだとか。

ちなみに私は機械の杖の様な武器、アリサちゃんは剣、すずかちゃんは手袋(?)、フランちゃんは湾曲した黒い杖…の様な武器が装備されたN+のパーソナルカードだった。アリシアちゃん曰くフランちゃんの武器はまだ見たことない珍しい武器らしい。凄い。

 

 

「これってレーヴァテイン…?また、紫かな」

 

 

ボソッと何やら溜め息半分に呟いていたのが気になったけど、遊んでみるのが一番という事で私たちは「ブレイブシュミr「シミュレーター」…///」…よくアニメとかで人が入っているポッド?の様な機械の真ん中に立つ。右からすずかちゃん、私、アリサちゃん、フランちゃんと言った並びだ。

 

 

「よっしそれじゃあ…ブレイブシミュレーター!」

 

「スイッチオン♪」

 

「あっ!私が押したかったのに~!」

 

 

エイミィさんから横取りしてスイッチを押して起動したアリシアちゃんがガクガク揺さぶられているのが見え、私達はぶわっとその場に浮かぶ。浮遊感…というか、アリサちゃん曰く無重力体験…が近いのかな?ふわっとして、不思議な感覚だ。フランちゃんはそうでもないらしく「へぇ~」と感心した様にきょろきょろ観察していた。

 

 

『ふっふ~ん♪もっと凄いのはここからここから♪「4人プレイ」で「フリートレーニング」…最初だし「雲海上空ステージ」がいいかな~。それじゃあ慣れてそうなフランちゃん、今言った三つをウィンドウに入力してみてっ』

 

「あ、うん…これもいいのかな?」

 

 

ポチポチポチと慣れた手つきで打ち込むフランちゃん。するとブブゥ~とブザーが鳴った。

 

 

『あれ?なんかエラーが出た…なんで?』

 

『これは…ねえ四人のうち誰か、「ユカリさん」って人から何か預かった人いない?』

 

「あ、私…」

 

『じゃあもしかして貴女が噂の天才ゲーマー「F」さん!?』

 

『え、フラン本当なの!?』

 

「巷でそう呼ばれてるけど…」

 

「え?え?」

 

 

アリシアちゃんとエイミィさんは興奮していて、フランちゃんは困った顔をしているけど私達三人は置いてきぼりだ。天才ゲーマー「F」?有名な人なのかな…?

 

 

「噂に聞いたことがあるわ…ジャンルを問わず全てのゲームを踏破し、攻略サイトを立ち上げている正体不明、性別不明、分かっているのは常に名乗っている「F」と言う名前だけの謎の天才ゲーマー…!まさかフランの事だったなんて…」

 

「アリサちゃん?知ってるの?」

 

「詳しいね」

 

「え、ええ…つい昨日、うちと同じ実業家の天才プログラマーで天才ゲーマーでもあったCEOが「F」に敗北したらしくて…ちょっと噂になっていたのよ。そのCEOはリベンジを希望しているみたい」

 

「す、すごいんだね…」

 

 

じゃあフランちゃんもさっきの女の子みたいに大人に勝ったって事なのかな…?それは本当に凄い。でも何でエラーが?

 

 

「でも貴女、そんな顔してギャルゲーやらにも手を出しているなんて…人は見た目によらないわね…ジャンルを問わずってことはそう言うゲームも…」

 

「わーわーわー!え、エイミィさん!この預かったのどうすればいいのかな!?あ、バックルだから付けたらいい!?」

 

『あ、うん…それは特定の人しか付けれないスペシャルコンテンツだから…ダイブする時にちょっと手順がいるんだ。えーっと、ゲーマドライバーを腰に装着して、ガシャットを起動するだけでいいみたい』

 

『これ、説明書?』

 

『うん。グランツ博士から店長を通してこの店に置かれたんだ。他の店でも置かれているはずだよ』

 

 

それを聞いたフランちゃんはアリサちゃんの言葉から逃げる様に黄緑色の機械を腰に装着、それはヒーローものでよく見るベルトになり、さらにゲームカセットの様な物を取り出すとスイッチを入れて起動した。

 

 

《マイティ アクション エックス!!》

 

「…あれ?」

 

 

するとガシャット(?)が桃色に輝き、フランちゃんの後ろに【MIGHTY ACTION X】と書かれた画面(?)が出現。…そして何も起こらなかった。でもそれでOKだったらしく、アリシアちゃんに言われた通りに私達はブレイブホルダーを胸の前に掲げ、コールする。

 

 

「「「「ブレイブデュエル・スタンバイ!」」」」

 

《プレイヤースキャン・開始します。アリーナ上にアバター生成。出現座標はランダム。続いてセンス、ダイブします。…………フルタスク・コンプリート。プレイヤーの一人にゲーマドライバー使用を確認、ゲームエリアを展開します》

 

 

機械音声が響いて一瞬裸になったような気がしたけど、そのまま水の中に沈む感覚と共に私たちは自然と目を瞑り…アリシアちゃんの声で、目を開ける。

 

 

「な、」「な、」「な、」

「「「何これ~!?」」」

 

 

そこには、広大な青空が広がっていた。雲の上、そこに私たち三人は浮いていた。

 

 

「どどどどどうなってんの!?コレ雲の上じゃない!」

 

「わわ、私達浮いてるよアリサちゃんすずかちゃん!?」

 

「そ、それより…フランちゃんは?」

 

「「え。あ」」

 

 

言われて、気付いた。もう一人いたはずの少女が、居ない。

 

 

「何で飛べないの~~~~~~!?」

 

 

いや、居た。見下ろすと、そこには絶賛降下中のフランちゃんが見えた。どうやら一人だけ飛べず、落ちてしまった様だ。なんで!?

 

 

「フランちゃん!」

 

『ああ、助けはいらないよ~。フラン、それを使うんだよ。初めてだから分からなかった?』

 

「普通に出来ていた飛べる事が出来ないだけで混乱しているんだよ!?」

 

《ガッシャット!》

 

 

そう叫んだフランちゃん、その手に持っていたガシャットをゲーマドライバー(?)に差し込み、出現した格ゲーのキャラ選択画面みたいなものの、ピンク髪でゴーグルを付けた様なキャラの顔に顔面から飛び込んだ。固唾を飲んで見守る私達。

 

 

《レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?》

「「「!?」」」

 

 

そんな音声と共に、フランちゃんは文字通り「変身」していた。

 

 

《アイム・ア・カメンライダー!》

 

「変身したけど止まんない~~~!?」

 

 

顔はあの突っ込んだキャラと同じだけど白くて太く、ずんぐりしているゆるキャラの様な姿。胸にはゲームの体力表示みたいなものがあった。変身してなおも絶叫しながら落ちていたフランちゃんだったが、ベルトの左側を操作して説明書?の様な物を立体映像で出すと、チョコのブロックの様な物が足下に出現しそれに乗る事でようやく止まった。胸をなでおろす私たち。特別仕様何だろうけど、何で飛べないんだろう?

 

 

「なるほど…よっと!」

 

 

そのままピョンッと跳躍し、その先に出現したチョコブロックに飛び乗りそれを繰り返して私たちと同じ高さまで戻ってくるフランちゃん。でもこの姿をフランちゃんと呼ぶのは抵抗があるよ…

 

 

『それは特別仕様【仮面ライダー】!もう既に何人かが別のショップでやっているんだけど、うちは初めてなんだ~。名前はどうする?リングネームみたいな物だけど』

 

「…私が求めるのはゲームによる究極の救助(EXTREME-AID)。だから名前は、EX-AID(エグゼイド)。仮面ライダーエグゼイド!」

 

「な、中々かっこいいわね…」

 

「…何で救助なのかな?」

 

「フランちゃんは飛べないんですか?」

 

『ゲーマドライバーを持たずにブレイブシミュレーターに入れば皆と同じように遊べるよ。フランちゃん、今回は仮面ライダーでいい?』

 

「問題ない、かな?まあ飛べないけど跳べるし?」

 

 

そう言ってピョンピョンとチョコブロックの上で跳ねるフランちゃん…エグゼイド。何か可愛い。

 

 

『だったら説明するね!これが当店目玉、体感シュミレーションの最新鋭にして最高峰「BRAVE DUEL」!』

 

『なのはちゃん達の視点・感覚は今、シミュレーター中央の「アリーナ」にいる「アバター」と完全にリンクしてるんだよ!フランもまるで生身のように感じてると思うけどどうかな?』

 

「うん、自分の体の様に動かせるし風の感覚もあるよ(…確か現実世界で変身できるって聞いたんだけどな…後で試すか)」

 

 

その場でバック転して見せ、アリサちゃんの頭上を飛び越えて背後に出現したチョコブロックに飛び乗って見せるエグゼイド。ただただ、凄い。とても同じ動きができるとは思えない。でも確かに、風が気持ちいい…

 

 

『ここまでくれば後は遊ぶだけだよっ』

 

「…って言われても…」

 

《ご心配には及びません》

 

「ふえ?」

 

 

どこからか声が、ゲーマドライバーと違う女性の機械的な声が聞こえ、その方向を向くと…ここに来た時から持っていた杖があった。

 

 

《初めましてナノハ。ブレイブデュエルの世界へようこそ》

 

「は、初めまして…」

 

《私はアナタの武器たる「デバイス」RH‐01です。操作説明を行ないますか?》

 

「う、うん。お願いします…?」

 

 

どうやら私の相棒らしい。言われた通り、移動するべく飛びたい方向に意識を集中すると。難しそうだと思ったけど、足に羽が生え、クルクルと考えた通りに空を駆ける。なんだかおもしろい、もっと飛びたい。

 

 

「おお、もう飛んでるのか。外の世界の人は飲み込み速いなぁ…幻想郷だと普通の人間は飛べもしないのに。しかしなのは、飛ぶの上手だな。…えっと、仲間や対戦相手を見付ける時は「レーダーモード」で索敵、普通は立体映像を使うけど仮面ライダーの場合はこのゴーグルに映るのか。対戦の基本は「アタック」「シールド」「シュート」、仮面ライダーはその内シュートが使えない、と。まあマイティに遠距離攻撃は無いからね、しょうがないね」

 

 

ボソボソとエグゼイドが確認する様にベルトを操作しているのが見えた。フランちゃんの「仮面ライダー」はデバイスが無い代わりにゲーマドライバーに説明書が付いているのかな?ちょっと不便そう。

 

 

《いっちょかましてやれアリサ!》

 

「分かったわ!それじゃいっくわよ~…フラン!」

 

「え、私?」

 

「じゃあ私たちもやろうか、なのはちゃん」

 

「え、あ、うん!」

 

 

アリサちゃんがエグゼイドに突進するのと同時に、ふわっと近付いてきたすずかちゃんがデバイスらしい手袋を付けた右手を向けて来て、私も構える。…どう攻撃すればいいのか分からないので、すずかちゃんが飛ばしてきた氷の弾をひらひらと避ける事に集中する。うん、避けるのは結構簡単かも!

 

 

「問答無用よ!天才ゲーマー「F」、討ち取らせてもらうわ!トリガーを引いてから鞭を打つ感じで…払う!」

 

「よっと!」

 

 

アリサちゃんが剣を振るって横に炎の斬撃を飛ばすも、エグゼイドはピョンッとその場で跳ねて回避。そのままピョンピョンと次々現れるチョコブロックを跳び継いで行き、「大人しく当たりなさいよ!」と叫びながら闇雲に剣を振るうアリサちゃんを翻弄して行く。凄い、私達みたいに飛べる訳でもないのに、立体的な動きでそれ以上の速さを見せている。

 

 

「それじゃ駄目、弾幕ごっこの基本は相手を追い詰める様に誘導する事だよ?」

 

「っ!…助言、ありがとうと言って置くわ!」

 

 

エグゼイドの物言いにカチンと来たのかそう言って三本の炎の斬撃を同時に飛ばすアリサちゃん、しかしピョンッと宙返りして真正面から突っ込んだエグゼイドはその手にボタンが二つ付いたハンマーを出現させるとそのまま呆けていたアリサちゃんの額にポコンッと叩き付けた。

 

 

《ガシャコンブレイカー!》

 

「なあっ!?」

 

「大技を撃ったからって油断するとこうなる」

 

「…天才様は違うわね」

 

「というか本気で倒しに来たね?」

 

「た、対戦ゲームなんだし…いいじゃない、練習よ!それに天才ゲーマー相手に遊んで挑める訳が…」

 

「ゲームは遊ぶものでしょ」

 

「むぅ…悪かったわよ。よーし、次はすずかよ!」

 

「負けないよ、アリサちゃん」

 

「じゃあ私は何処まで動けるか試してみようかな」

 

 

完敗したアリサちゃんはぐうの音も出ない様だったが誤魔化す様にすずかちゃんに戦いを挑み、エグゼイドはそのままチョコブロックをいくつか出現させて跳び回り始める。もう十分動けていると思うんだけど…

 

RH‐01の話だとアリサちゃんとすずかちゃんは属性のあるパーソナルカードを手に入れたらしく、炎と氷に特化していて味方としてもライバルとしてもいい関係になれるんだとか。私も何かないかと聞いてみたけど何も属性は無いらしく、ちょっと落ち込んだけど代わりにさっきのすずかちゃんの攻撃を避けた空中制動を褒められ、「空を飛ぶ才能」あるのかもしれないと言われて嬉しくなった。

 

 

「ありがとう、ええっと…RH‐01ってなんだか呼びにくいね…」

 

《そうですか?》

 

「RHだから、う~ん…レイジングハート!レイジングハートなんてどうかな?」

 

怒り狂う心(レイジングハート)、ですか?》

 

「え、そう言う意味なの?」

 

《直訳すると。並外れた心、とも捉えられますが》

 

「じゃあそれで!…だめかな?」

 

《いいえ。良き名をいただきました。これからよろしくお願いしますナノハ。プレイヤーデータをリセットしない限り私はずっと貴女と共にいます》

 

「うんっ。よろしくねレイジングハート♪」

 

《それはそうとプレイ時間も限られていますのでそろそろお友達と遊ばれては…》

 

「うん。開いているのはフランちゃん…エグゼイドかな?」

 

 

RH‐01改めレイジングハートに言われ、対戦しているアリサちゃん達と違って一人で試しているはずのエグゼイドに向き直る。そこには、

 

 

「ヒャッハー!自由に動かせる上に足場も自由なアクションゲームとか何それチョーイイネサイコ~!」

 

 

足場を次々と出現させそれに一瞬だけ脚を付けて跳躍し、目にも止まらぬ速さで縦横無尽に跳ね回りまくるエグゼイドがいた。見た目の割に、さっきの私より速い。

 

 

「……ピンボール?」

 

《彼女の特性は万能性、ですね》

 

「だね。アレに攻撃を当てられる気がしないの…」

 

《下手な鉄砲数撃ちゃ当たると言う諺もありますよ》

 

「何の慰めにもなってないの…」

 

 

天才と凡才の差に少し落ち込んでいると、唐突に甲高い警告音が鳴り響き、<!CAUTION!>と書かれた映像が空に映り込む。これは…?

 

 

「な、なになに!?」

 

《このコールは…乱入者ですね》

 

「乱入者ですって!?」

 

「トレーニングモードだったはずだけど…」

 

「うう、目が回った…もしかして一緒に押したアレかな…?」

 

 

エグゼイドだけは何なのか分かったらしく、それと同時に映像からシュバッと光が私たちの真ん中に落ち、そこに現れたのは…赤く可愛い服を着て兎の顔が付いた帽子を被った赤毛の三つ編みの少女がハンマーを手に現れていた。身長は私たちより小さく、アリシアちゃんより大きい。傍には赤いスカーフを巻いた、帽子に付いている物と同じ顔をした兎の縫い包み(?)が腕を組んで立っている。アレが、乱入者…?

 

 

「なんだあ?見ねえ連中だ、お前等もテストプレイ組か?」

 

「テストプレイ組?何の事よ?」

 

「アリサちゃん、凄いよ…あの子」

 

 

そう言われ、私もレイジングハートを介して彼女を見てみる。所属ベルカ【鉄槌の騎士】ヴィータ、とあった。ヴィータちゃん、か。

 

 

「所属のベルカって言うのは分からないけど、「R」クラスのカードな上に通り名まで持っているみたい…実力者だよ」

 

「…実力者、ねえ」

 

 

ちらっとエグゼイドを見るアリサちゃん。あーうん、たった今天才の動きを見ている立場からすると、どれぐらいなのかなぁ…って感じだよね。強いのかな?

 

 

「見たところ「N+」が三人、それに…仮面ライダー、だと?お前、ゲンムか?いや。色が違うな…」

 

「ゲンム?私はエグゼイド、だけど」

 

「へんっ、まあいい。どうやら初心者の様だな。弱い物イジメは趣味じゃねえが記録更新のためだ…全力でブチのめす!」

 

「対戦ゲームに乱入?上等!」

 

 

突進してくるヴィータちゃん相手に、ピョンピョンッと軽く跳躍して同じくハンマー…ガシャコンブレイカーを突き出して空中に飛び出したエグゼイド。

 

こうして私達の初めての戦いが、始まった。

 

 

―――See You Next Game―――

 




落ちながら変身ってかっこいいよね!仮面ライダーは基本飛べません、即ち陸があるステージでしか本領発揮出ません。ゲーマドライバーを装備してなければちゃんとプレイできます。

フランドール:天才ゲーマー「F」たる由縁を見せつけた。説明書は読み込んでから捨てるタイプ。初プレイ時はヒャッハーしてしまう普段は冷静(人見知り)、プレイ時は心躍る人。ブレイブデュエルは弾幕ごっこの様な物だと考えている。エグゼイドが気に入った。飛べないと焦る(というか人間になってるからブレイブデュエル以外だと飛べなくなってる)。アリシアが苦手。友達ができてご満悦。

なのは:空を飛べる才能に心躍る。フランの実力にちょっと疎外感を感じているけど仲良くなりたい。

アリサ:天才ゲーマー「F」の実力に戦慄し心滾る。今の目標は一発でも当てること。

すずか:フランに正体の分からない親近感を感じている人。アリサとの戦いに心躍る。

アリシア:T&Hの看板娘。お姉さん。妹とどこか似ているフランがお気に入り。T&H初めての仮面ライダーに心躍る。

エイミィ:残念なお姉さん。仮面ライダー登場に心躍る。

ヴィータ:鉄槌の騎士。エグゼイドと同じでハンマーが武器だから運命を感じた。仮面ライダーの一人、ゲンムを知っている。


次回、レベルアップ!楽しみにしてくださると嬉しいです。感想をいただけると励みになります。


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初めてのLevelUp!

……|д゚)チラッ


誰か待っていた人はいたのか。こっそり投稿。2017/07/08以来になります。本家エグゼイドの怒涛の流れに飲まれて更新止まってました、申し訳ないです。なのセントとエグゼイドのゲーム的バトルの描写が難しいんじゃあ。

初レベルアップ、二人目の仮面ライダー。楽しんでいただけると幸いです。では、どうぞ。


 体感シミュレーションゲーム、ブレイブデュエルで遊んでいた私たち。天才ゲーマーなのだと言うフランちゃんの変身した仮面ライダー、エグゼイドの動きに驚かされていたところに、突如乱入して来たすずかちゃん曰く「実力者」の所属ベルカ【鉄槌の騎士】ことヴィータちゃん。

 

 

「弱い物イジメは趣味じゃねえが記録更新のためだ…全力でブチのめす!」

 

「対戦ゲームに乱入?上等!」

 

「まずはテメエからだ、エグゼイド!」

 

 

 ハンマー型のデバイス・・・グラーフアイゼンを手にして突進してきた彼女に対し、同じくハンマーのガシャコンブレイカーを手にしてチョコブロックを跳躍して迎え撃つエグゼイド。激突するかと思われた二人だったが、それは思わぬ乱入者によって遮られた。

 

 

「いくわよフレイムアイズ!」

 

《ん?おおっ、俺の事か!?》

 

「せえ・・・のっ!」

 

「あぶなっ!?」

 

 

 背後からアリサちゃんの放った炎の刃が迫り、ギリギリ気付いたエグゼイドはバック転。炎の刃がヴィータちゃんに迫るも、「しゃらくせえ!」の一言と共にグラーフアイゼンを叩きつけて消し飛ばしてしまった。

 

 

「ちょっ・・・反則じゃないアレ!?」

 

「熟練プレイヤーみたいだし、そういうことができるんでしょ。それより危ないよアリサ!何のつもり!?」

 

「なにって、不意打ちに決まってるじゃない。貴女なら簡単に避けられると思って」

 

「・・・変な信頼だけど、まあありがとう。でも邪魔はして欲しくなかったな」

 

 

 少し不満げなエグゼイドのジト目にウッと言葉に詰まるアリサちゃん。アリサちゃんの性格から、置いてけぼりにされて放っておかれるのが嫌だったのだろう。私とすずかちゃんは苦笑いだ。

 

 

「やってくれるな。だったら・・・おかえしだ!」

 

 

 そんな二人の隙を突く様に、ヴィータちゃんは取り出した四つの鉄球を打ち付けると、軌道が螺旋を描いて綺麗にエグゼイドを避けてアリサちゃんに集束。「やばっ」と声を上げるだけで避けれなかったアリサちゃんはあっけなく倒され・・・あれ?

 

 

「なん、だと・・・?」

 

「・・・タゲ集中って奴だね。アリサに来るって分かってるなら迎撃できるよ。その程度の、魔理沙の弾幕よりも密度も速度もいまいちな四つ程度の弾幕なら」

 

「ふ、フラン・・・?」

 

 

 四つの鉄球は、炸裂する前にガシャコンブレイカーを振るったエグゼイドによって弾き飛ばされていた。見えなかった。アリサちゃんがやられる光景まで幻視してしまう程の鮮やかな迎撃。すごい・・・フランちゃん、かっこいい。

 

 

「何か知らんがあいつ等と同じで弾幕は駄目か。だったらこいつはどうだ?」

 

「アリサちゃん!ここはフランちゃんに任せて・・・」

 

「スキルカード『パワードレイン』」

 

「二人共、後ろ!」

 

 

 すずかちゃんがアリサちゃんに駆け寄った瞬間、ヴィータちゃんの傍に居たウサギのぬいぐるみ?が何時の間にやら接近していて、二人の首筋にトンッと叩いていた。気付いてすぐにぬいぐるみにガシャコンブレイカーを振るうも逃してしまったエグゼイドの言葉虚しく、力が抜けたのか気絶してしまうアリサちゃんとすずかちゃん。

 

 

「なんだ・・・やっぱり、仮面ライダー以外は大したことねぇ。全国二位様だったらこんなの効かねーどころか手痛いカウンターまでしてくるからな。あとはお前か、白いの」

 

「私を忘れるな!」

 

「おっと!お前はメインディッシュだったがまあいいか!先にブチのめしてやんよ!」

 

 

 空に出現させたいくつものチョコブロックをピンボールの様な動きで経由して背後に回り込んだエグゼイドの攻撃も、振り向き様に迎撃してしまうヴィータちゃん。そのまま猛スピードで何度もチョコブロックに戻って攻撃、戻って攻撃を繰り返す・・・えっと、ヒット&アウェイ?を試みるエグゼイドと、その場に止まり迎撃し続けるヴィータちゃんは私には入り込めそうにないバトルを繰り広げていた。でも、見るからに戦闘慣れしているヴィータちゃんが優勢で、まだまだエグゼイドを使いこなしていないフランちゃんは苦戦気味だ。

 

 とりあえずアリサちゃんとすずかちゃんを回収してこっちに持って来たけど・・・どうしよう、このままじゃ私、役立たずだ。

 

 

「どうしようレイジングハート。このままじゃフランちゃんも・・・」

 

《私を相手に向けこちらのスキルを使ってください》

 

「う、うん!」

 

 

 言われた通り、レイジングハートを両手に構える。スキル・・・これかな?

 

 

《シールドの展開を提唱》

 

「あん?エグゼイドが必殺技でもしてくる予兆があったか?」

 

 

 グラーフアイゼンに気付かれたみたいだけどヴィータちゃんにはバレてない。今なら・・・!アリサちゃんと同じ様に、フランちゃんを信じよう!

 

 

「いくよ・・・っ、ディバインシューター!」

 

「ちっ!・・・そら、倍返しだ!」

 

 

 展開した四つの光弾を、同時に撃ち出す。エグゼイドは飛び退き、ヴィータちゃんは三角の魔法陣を掌に浮かべると防ぎ切ってしまったばかりか、八個もの鉄球を取り出してさっきと同じように打ち出してきた。エグゼイドがこちらに向かおうとしたみたいだが、チョコブロック経由ではどうやっても間に合わない距離だった。

 

 

「ごめん、間に合わない!避けて、なのは!」

 

《ナノハ!》

 

「うん分かってる!レイジングハートとフランちゃんが褒めてくれた空飛ぶこと・・・それを全力で・・・やってみる!」

 

 

 再び足に羽が生え、イメージする。あれを避け続ける。やれる?やれない?・・・やれる、じゃない。やるんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランside

 さっきは余裕ぶっては見せたが、それでもアリサに来ると分かっていたからこそ迎撃できた、恐らくはブレイブデュエルの上達者の放つあの鉄球が八つも。何時も相手していた霊夢や魔理沙の弾幕に比べれば、何時もの私なら簡単に避けられるものだが、標的を追って複雑な軌道を描く上にスピードが尋常ではない。避け始めたなのはも、直ぐに沈む。そう思ったのだけれど。

 

 

《三機自壊。残り五機です。・・・残り二機》

 

 

 圧巻だった。お姉様には及ばないが、例えば魔理沙の様な、弾幕を振り切ってしまうスピード。そして霊夢の様な、完全に見切った上での紙一重の回避能力(グレイズ)。そのどちらも合わせた様な動きに、私は茫然とするしかなかった。

 

 ゲームとはいえ、外の世界にこれほどまでの人間がいるなんて。割と最近に幻想入りして来た早苗も凄いとは思ったが、正直比べ物にならない。なのはだったら回避だけで幻想郷の人間と渡り合えそうだ。・・・アレで初心者だとか、天才ゲーマーの名が廃るな。

 

 

「よ・・・っ、避けきった・・・?やったよ、レイジングハートっ!」

 

《ナノハ!上です!》

 

 

 避けきって油断したなのはの上空から飛来したヴィータが、その手に握ったグラーフアイゼンを振り被っていた。でも残念、鉄球が避けきられると判断した瞬間に動いていたのは、見えていた。

 

 

「させないよ!」

 

 

 足場のチョコブロックを両足を使って全力で踏み砕き、その勢いで頭からヴィータに激突。片手持ちのハンマーとか扱った事無いからこれしかできなかったが、虚を突く事は出来たらしい。体勢を崩させ、なのはが防御姿勢を取る時間ぐらいは稼げた。こっちの体勢も崩れて落ちて行くしかないが、さっき反応も出来ずにアリサとすずかをやられた事に比べれば安い物だ。

 

 

「っ・・・えっと、シールド!」

 

「あめえ!『ラケーテンハンマー』!」

 

 

 咄嗟に張ったシールドが、あっさりと砕け散る。手数の差が違い過ぎたか。ズガンッ!という爆音と共に発生した爆発により姿が見えなくなったなのはの安否を確かめようと、クルリと回って体勢を整え、下に出現させたチョコブロックを蹴って舞い上がった。

 

 

「ゆだんたーてきってな。逃げ足だけじゃ、他人に助けてもらってばかりじゃデュエルにゃ勝てねえ」

 

「それを言うなら油断大敵。頭が弱いの?」

 

「うっ・・・うっせー!いいんだよ何となく合ってるから!次はお前だ、エグゼイド!何時までレベル1で戦ってんだ。さっさとレベルアップして本気を出しやがれ!」

 

「レベルアップ?」

 

 

 戻って見たらなんかほざいていたのでツッコんでみたら知らない情報が出てきた。レベルアップ?まだ経験値をろくに集めてないのに無理言うなし。キャ●ピーかス●イムでもひたすらに狩ればいいのか?そもそも雑魚敵の概念とかレベル上げの概念がこのゲームにあるのか?・・・合成で強くなるとは言ってたか。でも「仮面ライダー」はダブるとかないだろうしそれはないか。

 それに、何で私がレベル1だって分かるんだ?もしかして、一目で分かる特徴がある?・・・・・・まあいいや。詳しくは説明書を読むとして、まずは勘違いを正さなきゃ。

 

 

「・・・案外、私の連れは他の二人と違ってしぶといみたいだよ?」

 

「なに?・・・ちっ、まだ倒れてなかったか。まあいい、それじゃトドメはこいつでしまいだ」

 

 

 二人して振り向く。煙が晴れて、少々黒こげになったなのはが出てきた。焦燥しているが、負けたくない!って気持ちが伝わってくる表情だ。でも、ヴィータも鉄球を一つ取り出して蹴りを付けようとしている。

 どうしようか迷った。なのはがやられる瞬間にできるであろう隙を突いて不意打ちするか。それとも、なのはを守るか。でも、この胸の体力ゲージ大雑把過ぎてどれだけ耐えれるか分からない。最初からノーダメで来た弊害が此処に・・・!アリサとの戦いで確かめて置けばよかった。不覚・・・最初から完璧にゲームクリアを目指そうとする私の馬鹿野郎。

 

 

《制服の女の子。「ストライカーチェンジ」を使って。ピンクの仮面ライダーはレバーを引いて》

 

 

 ギャルゲーとか何時ものゲームなら、選択肢程度で迷う事は無いのに何故か優柔不断になってどうしようと迷っていたら、声が聞こえた。・・・アリシア?いや、違う。そっくりだけど、なんというか、冷静だ。レバー?・・・レバーって、どう考えてもベルトに付いてるこれか。でも何の意味が・・・?

 ガシャットを外して左腰のスロットに差し込んで使う「キメワザ」とやらはさっき「レベル1」の基本操作について見たときに載ってたけど・・・もしかして、ネタバレが嫌だから見なかった次のページに何かあるのか?

 

 

「ストライカー・・・チェンジ?」

 

《君のデッキには「N+」のカードが二枚入っているはず。その二枚を出して・・・後は君のデバイスが補助してくれる。急いで》

 

「させるか・・・よっ!」

 

 

 私が説明書を見るべきか否や迷い、なのはが説明を受けている最中、ヴィータが鉄球を打ち出してきた。むっ・・・それは駄目でしょ!

 

 

「チュートリアル中の攻撃は禁止ぃ!」

 

「ぐあっ!?」

 

 

 ドロップキックを後頭部に叩き込む事に成功したが、一瞬遅れて打ち出された後だった。また爆発による煙が広がる。・・・一度めならまだしも二度目なら、心配しなくてもよさそうだ。

 

 

「へっ、いくら堅くてもさすがにコレなら落ちるだろ。ってか、不意打ちとはやってくれるじゃねーかエグゼイド。レベルアップしないならこのまま一方的に叩きのめすのもいいかもなあ?」

 

「最初に言って置くね。フラグ乙」

 

「は?・・・!?」

 

 

 その瞬間、煙の中から上空に飛び出したなのはの姿に面食らうヴィータ。あの攻撃、アリサの時よりも強力だったから渾身の一撃だったのだろう。それがほぼ無傷なのは、正直私も驚いている。

 

 

「カードリリース、ノーマル二枚!カードフュージョンっ!ストライカー・・・チェンジッ!!」

 

 

ブレイブホルダーとカードを両の手に握り、交差させるなのは。かっこいい。私もしたい。

 

 

「ドライブ、レディ!・・・リライズアップ!!」

 

 

 魔法少女の変身ぽいなあとか思っていたら、本当に変身していた。白を基調とした、さっきまで着ていた制服をモチーフにしたロングスカートの重装甲服。なのはが着ているとどうもしっくりとする服だった。

 

 

「んげっ・・・あいつセイクリッドタイプだったのかよ!?どうりでバカかてえと思った・・・しかも「白」とか超が付くレアカラーじゃねえか!?」

 

「そうなの?」

 

 

 言うなればソシャゲで言うウルトラレアカードの更に期間限定みたいなものか。色合いもそうだけどマーリンかな?無欲ななのはだからこそだろうけど、あの物欲センサーとか言う幻霊だけは破壊したい。って、そうじゃない。でも私が何をすることも事無く決着が着きそうだ。

 

 

《ナノハ。最後のカードをスラッシュしてコールを》

 

「うん!スキルカードスラッシュ!」

 

「やっべえ!?」

 

 

 レイジングハートの先に巨大な魔法陣が描かれ、目に見えて分かる膨大な力が集束して行く。まるで、魔理沙の十八番のマスパみたいだった。・・・今度は本気でなのはと戦ってみたいなあ。

 

 

「ディバイン・・・・・・バスタ―――――――!!」

 

 

 ピンクが瞬く。巨大な桃色の光が、ヴィータを飲み込んで行った。やったかな?

 

 

「勝った・・・の?」

 

《アイム・ア・カメンライダー!》

 

「やべーやべー、何とか間に合ったわ」

 

「え・・・!?」

 

 

 しかし、煙が晴れたそこに居たのは思いもよらぬ人物。シアンを基調とした仮面ライダーが、そこにいた。今の私とほとんどそっくりだ。その手に握られている小さな盾と剣は武装の違いだろうか。周りに私のチョコブロックみたいに宝箱が出現したし、RPG(ロールプレイングゲーム)の主人公みたいだな。今にも飛び出そうとしているヴィータの首に腕を回して押さえている姿はアレだけど。

 

 

「てめー、離せ!邪魔をするなテンコ!」

 

「テンコ言うな。私が介入しなくても防げただろうけどお節介させてもらったわよ。真面に喰らってたらどうなってたか」

 

「いいから離しやがれ!負けっぱなしでいられるかよ!」

 

 

 テンコ?・・・・・・誰だっけ。仮面ライダーって事は幻想郷の人間だろうけど知り合いにテンコって名前はいなかったはずだけど。

 

 

「えっと・・・貴方も仮面ライダー・・・?」

 

「・・・こう名乗るのは慣れてないけど。私はこの鉄槌の騎士ヴィータの同僚。ベルカスタイル専門「八神堂」SP(ショッププレイヤー)ヴォルケンリッターの不屈の騎士、仮面ライダーブレイブ。さすがに二対一はうちのヴィータが危ないかなっと思って助太刀に」

 

「余計なお世話・・・だ!」

 

「うそっ・・・まだ・・・!?」

 

 

 ブレイブと名乗った仮面ライダーであったが、腕の短さが祟ったのかヴィータを抑え込むことができず突貫。私が止める間もなく、その手に握られたグラーフアイゼンがなのはを捉える。ブレイブの登場で油断しきっていたなのはにはどうしようもなく・・・ガキッ!と何かが防ぐ音が聞こえた。

 

 

「ロケテスト中全国ランキング6位。ベルカスタイル「鉄槌の騎士」八神ヴィータ。そんな熟練プレイヤーが初プレイの初心者に乱入なんて感心しないよ」

 

 

 なのはの前でグラーフアイゼンを止めていたのは、アリシアに似た金髪赤眼の黒衣を纏ったツインテールの少女。どこかで見た顔と思ったけどすぐに思い出した。エキシビジョンマッチとして店内に流れていた映像に映っていたT&Hが誇るエースの子だ。手に持つ大鎌型のデバイスがかっこいい。というか全体的にかっこいい。同じ金髪と赤眼だけどあっちの方がずっとかっこいいと思えるぐらい、その光景は様になっていた。

 

 

「へっ・・・全国2位様のお出ましか。上等だ、そっちの仮面ライダーと初心者ヤローとまとめて・・・・・・・・・・・・・・・初心者ぁ!?」

 

 

 あ、ヴィータが止まった。むしろ今の今まで気付かなかったのかと。すると空中にモニターが現れて、手を合わせて謝罪しているアリシアとエイミィさんが映し出された。今更出るのか。

 

 

《ごめんなさーい》

 

《ゲーム設定の最後のボタン、多分フランが押した奴だけど教えるの忘れてたよー》

 

《【対戦相手求む・腕に覚えあり・全力勝負希望】になってたみたい・・・》

 

「むしろそうだと思って設定したんだけど」

 

《まさかの確信犯!?》

 

 

 オンラインゲーだとよく見る奴だし。もし強い人来ても私一人が対処すればいいかなって。なのはたちに言うのは忘れてたけど。

 

 

「え、えーと、その・・・うちのフランちゃんがどうもご迷惑をおかけしました・・・?」

 

「・・・油断してたとはいえ、あたしに一撃入れたんだ、次は手加減しねーかんな。ほら、帰るぞテンコ」

 

「それは断る」

 

「は?」

 

 

 帰ろうとするヴィータの言葉をバッサリ切り捨てるブレイブ。ジッとこちらを見詰めているのはただの興味か。それとも・・・

 

 

「・・・いやいや、白い子だけチュートリアル完了ってそれは不平等じゃない?」

 

「誰がチュートリアルだ、テンコ!」

 

「テンコ言うな。私は新人ライダーの相手をしてから帰るわ。術式レベル2」

 

《ガッチャーン!レベルアーップ!》

 

 

 そうつぶやくとゲーマドライバーのレバーに手をやるとそのまま開くブレイブ。すると演出なのかは分からないけど、目の前に出現したガシャット端子を模したパネルを通り抜けるブレイブ。すると一瞬だけ様々な風景が見える多数の扉と宝箱がある空間に変わって手足のパーツがパージされ、顔部分が背中となりその姿が変わると扉を開けて出てきた。これがレベルアップ。経験値とかいらないのか。

 

 

《タドルメグル、タドルメグル、タドルクエスト!》

 

「とまあそんな訳で。帰らないならヴィータは下がってなさい?全国二位さんと白い子もね」

 

《ガシャコンソード!》

 

「テンコお前、絶対自分が戦いたいだけだろ」

 

 

 ずんぐりとした二頭身のマスコット染みた姿から、胸部にライダーゲージの記された装甲を付け、全身に鎧を纏った騎士へと変わったブレイブ。手にはガシャコンブレイカーに似た剣が握られた。タドルクエスト。確かマイティアクションシリーズを作った会社の初期の名作ゲームの名前だったかな。中々にコアだね。

 腕とか脚、顔半分は露出してるのか。なのはの変身した後の姿と似た感じかな。・・・ちょっと待って。フルフェイスの兜で顔の上半分は見えないけど、その赤い眼光と水色の髪、自信に溢れた不敵な笑みは見覚えあるぞ。テンコってまさか…

 

 

「比那名居、天子・・・?」

 

「そういう貴方はフランドール・スカーレットよね?先輩として手ほどきしてあげるわ、来なさい」

 

 

 博麗神社を一度は破壊した、悪名高き戦闘狂の天人もどき。直接会ったことは無いけど、肉体的な強さは幻想郷でもトップクラスだと聞く人物だ。お姉様と同格、いわゆるラスボスだ。どちらかというと弾幕ゲーじゃなくて格ゲーの。・・・天界の人間と聞いていたけど、ゲーマーだったのか・・・いや、私も人の事言えないけどさ。で、私に勝負を挑むと。・・・私より強いって言いたげな顔だな。

 

 

「上等!」

 

 

 売られた喧嘩は買うもの!ゲームで私に勝とうなんて495年早いよ!エグゼイドのゴーグルを介して、複数のチョコブロックをブレイブの前に出現させて跳躍する。まずは様子見!タドルクエストの能力って事は絶対搦め手があるはず!

 

 

「さてまずはステージセレクト・・・っと」

 

 

 そう言ってブレイブがベルトの左腰部分・・・キメワザスロットホルダーのボタンを押すと、周囲が大空の上からどこかの広場へと変わる。周囲には宝箱とチョコブロックが散乱していて、私と天子の戦いのための場だと分かる。好きにステージを変えれるなんて便利だな。使いこなしたら面白い事できそう。

 

 

「半人半霊の台詞を借りる様で悪いけど・・・私に斬れない物はないわ!」

 

《カ・チーン!》

 

「炎の斬撃・・・!?」

 

 

 すると思った通り、ブレイブの振るったガシャコンソードから超高熱の炎が放たれ跳躍して避ける。あ、これ。思ったより楽しそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはside

 いきなりステージが空からどこかの広場へ変更されて、ヴィータちゃんと私、そして助けてくれた金髪の子が見る前で、剣から炎を飛ばして攻撃するブレイブと、それを避けながらガシャコンブレイカーを手に何度も攻撃して迎撃されるエグゼイドの激闘が繰り広げられていた。

 目に見えて胸の体力ゲージが減って行ってるけど、避けるしかなかった私とはえらい違いにちょっと引き気味だ。ヴィータちゃんは戦いたいのかうずうずしてるし、隣の金髪の子は困り顔だった。・・・とりあえず、助けてくれたお礼を言って置かないと。

 

 

「・・・えっと、助けてくれてありがとう」

 

「どういたしまして。・・・ヴィータは勝負にこだわり過ぎる所があるけどいい子なんだ。でも、あの人の事はよく知らなくて・・・初めての仮面ライダーでブレイブって名乗っていて、凄く大人げない人だってことぐらいかな。あの仮面ライダーの初めてのデュエルでも手は抜かないと思う。教えたはずなのに何でレベルアップしないんだろう・・・?」

 

「フランちゃん、天才ゲーマーだって言ってたから自信があるんだと思う。それよりデュエルって・・・?」

 

BD(ブレイブデュエル)の戦いはデュエル、そしてプレイヤーはデュエリストって言うんだ。初めてのデュエルはどうだった?」

 

 

 そう聞かれて、考える。初めてのデュエル・・・びっくりして、戸惑って。いきなり強敵で、悔しくて・・・でも。

 

 

「楽しかった。すごくすごく楽しかったよ!」

 

「それはよかった。私はフェイト。フェイト・テスタロッサ」

 

「わたし・・・なのはっ。高町なのはだよ!よろしくね、フェイトちゃん」

 

 

 私にとっては、この出会いが始まり。私の物語の始まりだった。

 

 

 

 

 

「・・・ねえすずか」

 

「なぁにアリサちゃん」

 

「何か空からステージが変わっていて、フランが知らない剣士と暴れていて、それをなのはとエキシビジョンマッチで見た女の子とあのハンマーの子が観戦していて、何がどうなってんのこの状況」

 

「私に聞かれても・・・わからないかなぁ」

 

「あー、立てるか?さっきは悪かったな・・・」

 

 

 後ろでアリサちゃん達が目を覚ましたのに気付いたヴィータちゃんが助け起こしていたけど、私とフェイトちゃんはフランちゃんと天子さんの対決に見惚れていてその事には気付かなかった。あとで謝ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランside

 ブレイブを中心に広範囲に地面に放たれる炎の波はチョコブロックを足場にして避けて、縦、横と連続で放たれる炎の斬撃は打ち返したり跳躍して避けたりで対処。攻撃パターンが分かって来たから、たまに反撃として飛び掛かってみるけど迎撃される。

 空じゃなくなってチョコブロックを足場にしなくてよくなったのはいいけど、何時もの空中戦ができないから、やりにくさはあまり変わらないなぁ。コントローラーなら変わったぐらいでもすぐ対応出来るのに、バーチャルゲームはなあ・・・とりあえず虚勢を張って置こう。

 

 

「いい加減、見飽きて来たよその弾幕!」

 

「やっぱり幻想郷出身にはあまり通じないか・・・なら!」

 

 

 あれ?まだ何かあるの?さすがにゲームのボスキャラみたいにワンパターンじゃないか。脳筋だと思ってなめてた、ヤベーイ。

 

 

「凍れ!」

 

《コ・チーン!》

 

「それあり!?」

 

 

 炎を使っていたと思ったら氷結して来た。ガシャコンセイバーのボタンを押したら炎を模っていた剣身がくるりと回って氷柱みたいな形状となった。私のガシャコンブレイカーはボタン押しても剣にしかならないのにズルい。・・・いや、確かにシンプルなアクションゲームに属性とかは基本ないけどさ。あるとしても続編からだし。

 でもそれを言うなら勇者に属性技ってのも少ないんじゃないでしょうか!ほら、ゼノ●レイドとか笑える程に属性技ないよ!?お姉様みたいな能力の剣持ってるのに!魔術師ポジの年長者二名はバンバン属性使うけど!

 

 

「・・・全身凍り付いてるのに余裕みたいね。覚り妖怪に貴方の心を読んでもらわなくても分かるわ」

 

「そりゃ余裕だよ。・・・だって、右腕とベルトだけ凍らせてないじゃん。こんな細かいことできるなんて、もしかして熟練者?」

 

「いんや。始めたのはつい一週間前。小狸ちゃんからは天才だとか言われたわ」

 

「ああ、分かる分かる」

 

 

 やり込むのもいいけど、大体さらっとできちゃうよね。まあせっかくのご厚意、さっき教えてもらって、実際目にした奴をやってみよう。まさかのネタバレ喰らったけど、そのやるせなさは倒す事で紛らわす!

 

 

「掛け声は・・・うーん、そうだなあ」

 

 

 レバーに手をかけ、考える。変身より凄い変身。だったらまあ、単純だけどこれでいいかな。なのはみたいにかっこいい掛け声もしたいけどそれはまた、通常モードでやるときにしよう。

 

 

「大変身!」

 

《ガッチャーン!レベルアーップ!》

 

 

 バックルのレバーを開き、目の前に出現したガシャットの基板のエフェクトに飛び込む。ブレイブと同じようにレベル1の白いパーツがパージし、腕と足が解放される感覚と共に視界がグルンと反転した。・・・なるほど、さっきまでの顔が背中になったのか。この感覚はちょっと気持ち悪い、けど解放感は悪くない。

 

 

《マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション~エックス!!》

 

 

 ブレイブとは対照的に、ピンクというかマゼンタがメインカラーで黄緑が配色された、何時もの服に似た軽装。胸元にはライダーゲージが記されてアーマーとして付いていて、両手にはピンクと黒のグローブがはめられ、両足にはピンク・黒・銀に配色されたシューズと膝当てが。視界を覆うゴーグルには自分の体力などのステータスが端に表示され、違和感から髪に触れてみると何か前髪だけ逆立っていた上にピンク色に染まったみたいだ。後ろ髪はいつもの形と色なのは、エグゼイドの特徴みたいなものなんだろう。

 

 そして、何よりも変わったのは。

 

 

「・・・ねえ、もしかしてレベルアップしたら幻想郷でと同じ種族…じゃない、スペックになれるって解釈でおk?」

 

「さあ。それは分からないけど。・・・やっと全力みたいね」

 

 

 背中に歪な翼が戻っていた。飛べる訳じゃない飾りみたいだけど、うん。バランスがとりやすい。さっきまで近づけもしなかったけど・・・これなら、やれる。さっきまでとは明らかに違う。レベル2でこれだけ変わるのか。カンストとかしたらヤバいな。できるのか知らないけど。

 

 

「じゃあ改めて・・・ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!」

 

《ジャ・キーン!》

 

 

 Aボタンを押して剣にしたガシャコンブレイカーをビシッと掲げ、そう宣言するとブレイブは傍の宝箱を斬り裂いて中から取り出した走る人が描かれた黄色のメダルに触れた。アレは・・・エナジーアイテムだったか。

 

 

「チュートリアルでも容赦しないわ!」

 

《高速化!》

 

 

 瞬間、目にも止まらぬスピードで駆け抜けて来るブレイブ。咄嗟に横っ飛びで回避するが、ブレイブの通った道が氷結、氷柱ができていた。続けて突進して来たので跳躍で回避するとブレイブはそのまま広場を制圧する様にビュンビュンと走り回り続けた。アレを続けられると立てる場所が無くなっていくか。跳び回り続けて避けまくるけどこれは不味い。

 ・・・ブロックに飛び乗って空中から襲うのもいいけど、まず間違いなくブロックに降り立った硬直時間を狙われて炎の斬撃が飛んできて避けられないだろうし、こっちから攻撃するにしても接近戦用の武器しかないからアレに無理に当てようとしたら氷柱に当たってしまう。自主的だけど弾幕ごっこのルール的にも、個人的にもノーダメで切り抜けたいところだ。

 

触れただけでダメージありそうだから極力触らないように…待てよ?それは、あちら側にも言えることなのでは?

 

 

「よーし!そんななまくらじゃ私は斬れないよ、センパイ(・・・・)!」

 

「んな!?…言ってくれるじゃない!」

 

 

 出現させたチョコブロックに乗って挑発すると、一瞬立ち止まったブレイブは分かりやすくキレてピョンピョンとチョコブロックを介して逃げ始めた私を、ガシャコンソードを地面に這わせて通った道を凍らせながら激走。逃げ場を失わせながら迫りきて跳躍、ジャンプ斬りを仕掛けて来て私は咄嗟にガシャコンブレイカーの剣身で防御。弾き返すも凍り付いてダメージを受け、まだ凍っていない広場の中心に投げ出された。

 

 

「天才ゲーマーだからって、初めてのゲームで慢心するのはいただけないわね」

 

「あいたたた…ちぇっ、ボス戦ノーダメはやっぱり無理か。でもまだノーコンティニュークリアーは目指せるもんね…!」

 

「この後に及んでまだ勝てる気でいるなんて…おめでたいことね!キメワザで終わりよ!」

 

《ガッシューン・・・ガシャット!キメワザ!》

 

 

 同じく広場の凍っていない場所に降り立ったブレイブはそう言ってガシャコンソードのスロットにタドルクエストガシャットを装填、すると空中に格闘ゲームの必殺技カットインみたいな映像が映し出される。

 

 

《TADDLE CRITICAL FINISH!》

 

「さらにエナジーアイテム!」

 

《分身!》

 

「そしてスペルカード…じゃない、スキルカード【気炎万丈の剣】!9hitの全方位からの氷結斬撃…これでも勝てるかしら!」

 

 

 ブレイブは逆手に持ったガシャコンソードに冷気を纏わせて構え、側の宝箱を殴って手にしたエナジーアイテムを取って複数人に分身して私を取り囲み、どうやったか知らないけどスペルカードと思われるものを取り出してデータ化させ分かりやすい赤いオーラを剣身に纏わせてきた。バフの暴力とか大人気ない、こっちはまだちゃんとシステムも理解してないってのに。同じことを思ったのか、見物していたヴィータが口を挟んできた。

 

 

「あのバカ…本気でやることねーだろ、テンコ!そいつブレイブデュエルも仮面ライダーも初めてなんだろ!?」

 

「テンコ言うなバカヴィータ!これはゲーマー同士の真剣勝負なのよ?手加減したら逆に失礼ってもんよ!そうよね、天才ゲーマーFさん?」

 

《バ・コーン!》

 

「うん、こっちも本気で行くよ…!」

 

《ガッシューン・・・ガシャット!キメワザ!》

 

 

 やり方は教えてもらったし、その心意気、買った!ハンマーモードにしたガシャコンブレイカーにガシャットを装填っと。分身を打倒するための相場と言えば、本体を倒せばいい。でもこれじゃどれが本物か判別は不可能。だけど、私には作戦がある。

 

 

《MIGHTY CRITICAL FINISH!》

 

「会心、喰らいなさい!」

 

 

 そして複数のブレイブは同時に突進。そして私も空中に跳躍、ガシャコンブレイカーを振りかぶる。

 

 

「本物は、お前だ!」

 

「なあっ!?」

 

 

 そのまま地面を叩いた際の衝撃波を目の前のブレイブに向けて叩き込むと、本物だったらしいブレイブにクリーンヒットして吹き飛ばし、変身を解除させた。天子が転んだそこには、綺麗に凍っていない一本道があった。

 

 

「な、なんで本物の私の居場所が…」

 

「気付いてなかった?あなた、どんどん通り道を制限して、一方向しか残されてなかったのよ。分身しようが、ゲーマーなら余計なダメージは受けたくないはず。あとは待ち構えてれば勝手に当たる。分かる?あなたが、コンティニューできないのさ!」

 

《GAME CLEAR!》

 

 

 勝利宣言すると、目前にGAMECLEARの文字が浮かび上がり、天子の手から見覚えのないガシャットが飛んできて私の手に収まった。えっと…シャカリキスポーツ?一人称視点の自転車でのレースゲームのアレかな。でもなんで?

 

 

「仮面ライダー同士が戦うとね、敗者から勝者にガシャットが一つ譲渡されるのよ。最悪、変身するためのガシャットも譲渡されるわ。せっかくスナイプに勝って手に入れたガシャットだったけど…私の完全敗北だししょうがないか」

 

「え。じゃあこれ、私がもらっていいの?」

 

「ええ。文句はないわ。じゃあ私とヴィータはこれで帰るから。今度戦う時は負けないからね!」

 

 

 そう言って呆れ顔のヴィータと共にこのフィールドから消えていく天子。…色々聞きたいことがあったけど、今度でいいかな。なんにしても……

 

 

「楽しかった!弾幕ごっこもいいけど、手に汗握る戦いを体験できて、現実じゃ何も壊さない!神ゲーかな?」

 

 

 このゲーム、個人的神ゲー認定だった。仮面ライダーを使わない通常ゲームもやらねば(使命感)。ぜひともやりこみたい。…あ、その前になのはたちと合流しないと。それに全国二位さんとやらにも話を聞かねば。…あと、衣食住もなんとかしなくちゃ。もう紅魔館には帰れないもんなあ。

 

…そう言えば私は何でこっちの世界に来ることになったんだっけ?真面目に忘れてしまったんだが。なんにせよ、前途多難だな。どうしよう…

 

 

―――See You Next Game―――

 




…下手したらこの回で完全に更新が止まるかもしれないのでとりあえず最終回風味に…誰か書いてくれるなら設定渡すから引き継ぎたい。

フランドール:天才ゲーマー「F」たる実力を発揮。レベルアップすると吸血鬼に戻る。知り合いに会えてちょっと嬉しかった模様。剣よりハンマーの方が使いやすい。ノーコンティニューでクリアする!

なのは:初変身。こちらも天才。フラン曰く弾幕ごっこでもいいところ行けるらしい。

フェイト:前回映像だけで出てた人。初登場。仮面ライダーに勝てる数少ない人。テストプレイ全国二位の名は伊達じゃない。

アリサ:ヴィータに完敗。フランの大暴れっぷりに引き気味。

すずか:アリサと同上。レベルアップしたフランの姿にさらに親近感を覚えた模様。

アリシア&エイミィ:この作品ではフランが勝手にやったのでボタンに関しては無実。ブレイブに勝利したフランを引き込みたい模様。

ヴィータ:噛ませ犬…げふんげふん、ヤガミドー最年少のショッププレイヤー。自分も勝てないブレイブに勝利したエグゼイドと、負けそうになったなのは相手に闘志を燃やす。

天子:初登場。仮面ライダーブレイブ。ドMじゃない。暇つぶしのためにゲームしてたらいつの間にかゲーマーになってた残念なニート天人。騎士らしくフェアな戦いを好んでいて、正々堂々真っ向勝負が好き。フランの好みはオールマイティなのに対し、暇つぶしのために始めたためRPGが好き。一番好きなゲームはゼ●ブレイド。

次回もちょっとだけ書いてるので楽しみにしていただけたら嬉しいです…未定ですが。感想をいただけると励みになります。


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