錬鉄の英雄、オラリオに降り立つ (蒼輝銀河即ち塩むすび)
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錬鉄の英雄、オラリオに降り立つ
初めまして!初投稿です。蒼輝銀河即ち塩むすび、と言います。おにぎりって呼んでください(´・ω・`)
初投稿なので至らない点しかないと思いますが、生暖かい目で見守って下さい()
本作品のエミヤは、UBW→FGOを経験している、という設定です。
「む…呼ばれているのか…。」
そういうことも、あるのかもしれない。
人理が修復された後なら、再び聖杯戦争が行われていても可笑しくなどない。
或いは時間軸の違い。人理焼却がという偉業が成される前の可能性もある。勿論その場合、この記憶…記録は持ち込めないだろう。
平行世界、というのも有り得ない話ではない。
「だがまぁ、呼ばれてしまったからには行くしかなかろう。全く、今度はどんなマスターが私などを呼び出してくれたのか。余程運の悪い…いや、違うな。少なくとも彼女は、運に恵まれていたのだろうから─────。」
*
「サーヴァント、アーチャー。召喚に応じ参上した。我が真名は…と、む?これは…」
マスターとのパスが感じられない。だが確かに私は呼ばれたのだが…。
いや、マスターとのパスが無いのならば、そもそも魔力はどうやって…
「なっ…!」
驚いた。当たり前だろう。何故ならこれは…
「
そう、
「いや、落ち着いて考えればこれは何だ?サーヴァントでも無いし、守護者としての現界でも無い…聖杯や、抑止力からの知識の補充すらないではないか…!」
全く、イレギュラーだらけだ。
だが、此処で1人立っていても何も始まらない。何かしら行動に移すべきだろう。
「───ああ、これも、あのマスター…マスター達から影響でも受けたのかもしれないな。」
そう呟きながら歩きだす。
*
前方に、大きな都市が見えた。
「ふむ、中々に大きな都市だな。人も多いだろうし、存外困ることは無さそうだが…。」
…一見した限りだが、文明レベルはそれほど高くはないような建築物だな。まぁ現代には及ぶべくもないだろうが、不便はしないだろう。
「そしてあの巨大な塔だが、やはり目立つな。」
私が目印にして歩いてきた塔だ。巨大な都市にあってこれでもかとそびえ立っている。
「まぁ、別段今気にすることも無い。どうしても、となれば聞けばいいのだからな。」
そうこうしているうちにもう都市の入口も目の前だ。
取り締まりなどは特に無いようだが、一応立っている門番に話しかける。
「すまない、他所から来たものなのだが、此処で手っ取り早く稼いで、拠点を確保するにはどうしたら良いかね?」
そう、契約者も居らず、受肉しているからには食い繋が無くてはいけないのだ。拠点は最悪無くても大丈夫だが、まぁ、日本人としてはやはりあった方が良い。
「なんだいお兄さん、わざわざオラリオに来たってのに冒険者になるつもりじゃ無いのかい?拠点なんて、ファミリアに入っちまえばすぐだろうに…。」
…薄々勘づいてはいたが、やはり此処は平行世界、というよりも異世界、と呼ぶべき世界のようなものらしい。詳しくはないが、刑部姫や黒髭が話しているのを耳にしたことがある。
そしてオラリオ、というのはこの都市の名前だろうか。
「ああ、いや、この辺りには疎くてね。ファミリア、というのは何だろうか。」
「そんなことも知らんのかい。不思議な人だねぇ?…まぁ、ファミリアなんかについてだったらギルドに行って聞いた方が早いと思うぜ?」
「そうか、ありがとう。ではそうしてみるとするよ。」
どの道他に宛も無い。この都市においてそこまでの大きさを持つものだ。冒険者、というのも考えてみるとしよう。
いかがでしたか?エミヤ感ありました?無いですよね?独り言だけですしね?
まぁ、間違いなどありましたらガンガン報告お願いします。小説投稿初心者なので全然分かってないですが、宜しくお願いします…。
次回からはもっと長くなると思いますので…。
書き溜めが無いので、気長にお待ちください。
2019/9/11
一部修正
※マスター達、というのは凛とぐだです。ぐだ2人世界線とかじゃありません。
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白兎との出会い
…(´・ω・`)
「…なるほど、まさか神が地上に降りているとはな…。」
エイナという職員に話を聞き、ダンジョンやファミリア、
「神、か───」
カルデアに居た神霊は───勿論複合サーヴァントであるというのは大きいものの───そこまでのことは起こさなかった。だがそもそも神というのは総じてロクデナシなのだ。
「今にして思えば、そういう意味でも、
恐らくオラリオの神達も、娯楽を求めて人に関わる類だろう。それによって与えられた力、ファルナ。それが人の役に立っているのは良いが、いつ何をするかわからないのが神というものだ。
「あまり信用出来たものではないな…少なくとも裏で何か考えていたり、といった神が殆どだろう。…だが、確か…『神に嘘は通じない』、だったか。となると────」
───トス、と軽い音がして、人とぶつかった。
「あぁ、すまない。少し考え事をしていて────おい、大丈夫か?」
ぶつかった人が倒れている。
男、まだ少年と呼ばれるくらいだろうか。そして、彼の体は、ボロボロに傷ついていた。
「この装備、冒険者か?しかし仲間も居ないようだな───仕方あるまい。」
少年を背負い歩きだす。ひとまずはギルドに行けば良いだろうか。そして、元来た道を戻って行く。
「神様…僕…強くなりたいです─────」
ふと足を止め、ため息をつきながら、守護者は歩きだした。
その夜、運命に出会う。
*
「それで、君が倒れていたベル君を運んできてくれたのかい?」
「その認識で構わんよ、神ヘスティア。ギルド職員はまだ仕事もあるだろうからな。私はその代わりに、という訳だ。一応ギルドで手当てを受けさせはしたがな。」
ベットに寝かせられている少年───ベルをチラリと見る。身体中、そして装備もボロボロだが、幸い深い傷は無いらしい。
「そうだったのかい!ありがとう、疑ったりしてごめんよ?」
そう、エミヤがベルを背負いこの教会───ヘスティア・ファミリアのホームを訪れたとき、ヘスティアは最初、
「ボ、ボクのベル君を返せ!乱暴しやがって!お金か!お金が目的なんだろーっ?!」
などと言い、掴みかかったのだ。
その後なんとか説明し疑いは晴れたのだが…。
炉の女神ヘスティア、ゼウスの姉か…。確かに威厳もへったくれも無いが…まぁ、これも神話の通りだからな…。これもまた、神、という事か…。
「構わんさ。そんなことより、彼は何故あそこまで疲労するほど1人でダンジョンに潜っていたのだ?あれで何の事情もないなどという訳がなかろう。」
そうだ。明らかにおかしい。仲間も無しにこんな時間まで、そしてあんなになるまで、とは…。これが普通だとしたらこの都市は異常である。
「うーん…無責任なようだけど、ボクにはわからないんだ。今日は外に食べに行っていたから、そこで何かあったのかもしれないけど…。」
───ほう。彼女は…自らの眷属を本気で心配している。なるほど、ファミリアとは家族、とも聞いていたがこういうことか。少なくとも彼女───ヘスティア神は信頼出来る神のようだ。
「──そうか。ところでこのファミリアの団員は彼1人しかいないのか?」
…まぁ、1人で外食に行っていたり、拠点が
「うん、そうだよ。何分出来たばっかりのファミリアでね、ベル君1人に無茶させちゃってるんだよ…。」
「ふむ、では、物は相談なのだが────」
「うっ…ううん…。」
「ベル君!気がついたかい?!」
───言いそびれたか。もとより傷というより極度の疲労による気絶だ。覚醒にかかる時間が長くなりはしないのは分かっていたが…。
「ええっと、神様、僕は何を…それに、そちらの方は?」
「ベル君、ダンジョンに潜ってたんだろう?街で倒れそうなところを彼が見つけてくれたんだよ!」
見つけた、と言うよりぶつかったのだが…言わぬが花だろう。
「そうだったんですか。えっと…」
「エミヤだ。もしくはアーチャーと呼んでくれ。」
「…?はい、エミヤさん、ありがとうございました!」
「あぁ、なんて事はないさ。もとより行く所も無かったからな。」
*
「それで、エミヤ君。さっき言っていた相談っていうのは?」
「それか。別段難しい事ではない。私をヘスティア・ファミリアに入れて欲しい。」
「「…えっ?」」
…何故そんなに驚くのだろう。
「本当に?!本当にここで良いんですか?!あ、いや、入って欲しくないわけじゃ無いですが、エミヤさんなら他に入れてもらえるファミリアも多そうだし…!」
「そうだよ!本当にボクのファミリアで良いのかい?後悔しない?まだ他のファミリアに行ってみてもいないんだろう?」
…何故そんなに嫌がるのだろう。
「君達が駄目、と言うなら仕方ないが、私としてはこのファミリアに入りたい。」
「いや、もちろん入って欲しいよ!ベル君1人しかいないのは流石に困っていたからね!」
「神様、すいません…僕がもっと強かったら…。」
「なぁに言ってんだよベル君!そんなこと言ってまた無茶したらボクは怒るぜ?」
…ああ、やはりこのファミリアは好ましい。
「───あぁ、やはり私はこのファミリアへの入団をを希望しよう。」
「…そうか!じゃあ、うん、ベル君!」
「はい!」
「ヘスティア・ファミリアにようこそ!」
はい。豊穣トマト事件()の後の話になります。
前書きでなんか言ってましたがキニシナーイ、キニシナーイ。
今回はタイトル通りベル、そしてヘスティア・ファミリアとの出会いとなりました。
追記
本州の台風忘れて呑気に投稿してました!←道民
皆さんお気をつけ下さい!
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ステイタス
これが小説を書くということか(ただのうっかり)
なんとか今日中に投稿出来ましたが…。
んな事言ってて台風で大変だった人いっぱい居ましたよね。
そういう人はこんな小説見てないでやる事あるでしょうし、見てないでしょうが…。頑張って下さい…。
誰だ古戦場とギル祭重ねたやつ!
鳥の鳴き声が聞こえた。
「神様ー、神様ー?起きてくださーい!」
「んにゅ、もう朝かい…?」
そう、この女神、例によって眷属の上で寝ていた…寝ているのだ。
「なんだいベル君。いつもならボクを置いといてダンジョンに行くじゃないか…。」
「なんで不機嫌そうなんですか…?…それで、えっと、エミヤさんが
「そうだ、神ヘスティア。昨日はそのまま全員寝てしまったからな。改めてファルナを刻んで頂きたい。」
カルデアでは睡眠を取っているサーヴァントが多かったが、基本的にサーヴァントならば睡眠を必要と───度々目のクマや充血が酷いことになっていた
「そっかそっか、…うん、まっかせとけ!…でもエミヤ君?ファミリアの一員として、その口調は頂けないんじゃないかい?神ヘスティアっていうのもちょっとね…。」
「…口調は癖になってしまっているのでな。善処はさせて頂こう。そして呼び名か…具体的に、どう呼べば良いだろうか。」
「ヘスティアで良いよ?堅苦しいのも苦手だからね。」
「了解した。それでは、ヘスティアと。」
「うんうん。ベル君もこれくらい素直なら良いのに…。」
「?神様、何か言いましたか?」
───む。これは…。
流石と言うべきだろうか。女難で有名な人理の守護者は、ベルの「鈍感系」のそれを一瞬で感じ取った。…まぁ、それで何が出来る訳でもないのだが。
「ふーんだ、別に何も言ってないよ!ささ、エミヤ君。ファルナを刻もうか。その後で2人でダンジョンに行ってみたら良いよ!」
「ああ、それなんだが、今日は行ってみたい所があってだな…ベル、明日でも良いだろうか。」
「僕は別に構わないですけど、何処に行くんですか?」
「武具を扱っている所だ。確かバベルにあるんだろう?何か買うと決まった訳じゃ無いが、興味があってな。」
「そうなんですか。じゃあ一緒にギルドに行って、冒険者登録を済ませたら別れましょうか!」
「良いと思うぜ!じゃあ、さっさとファルナを刻んじゃおう!はい、上脱いでベッドにうつ伏せになって。」
言われた通りにうつ伏せになる。…今更だが、何故ベッドがあるのに誰も使わなかったのだろうか…。
*
「さてと…。うーん、見事に黒いねぇ…。」
彼の背に跨る。良く鍛えられた褐色の身体は筋力Dなんて馬鹿にはさせないという強い意志を伝えて来る。…今なにか変な電波を受信した気が…。
「ん゛ん゛っ。」
気を取り直して針を指にチクリと刺し、血で彼の背にファルナを刻んで行く。
──ようやくだ。これでベル君1人に無茶させるなんてことも無くなる。ベル君と2人の生活も良かったけど、安全に代えられるわけが無いからね。エミヤ君ならきっといい仲間に───そしてストッパーにもなってくれるだろう───。
そんな事を考えながら作業を進めると…。
「はぁっ?!」
*
背中から素っ頓狂な声が聞こえた。
「なっ、ななな、なんで、え?可能性としてはあるのかもしれないけど、そんな、まさか…」
…?何だろうか。最初のステイタスに差が出ることなどまず無いと聞いていたが、驚くようなことがあったのだろうか?
「うーん、これは、ベル君の時と同じに…いや、ここは言うべきか…。身近な存在に追い抜かせることでベル君にヴァレン某のことを諦めさせ…ブツブツ」
「神様、どうかしたんですか?」
「いや、大丈夫だよ。うん。いやや、大丈夫じゃないんだけど…。取り敢えず羊皮紙取ってくれ、ベル君。」
〜
「で、問題のステイタスなんだけどね…。」
Lv1
力:I 0 耐久:I 0 器用:I 0 敏捷:I 0 魔力:I 0
《魔法》
【
・固有結界
・派生 【投影魔術】
《スキル》
「えっ、ええっ!最初から魔法がある?!こんなことあるんですか神様!」
「ボクだって知るもんか!というかエミヤ君は何をそんなに落ち着いているんだい!」
…魔法、か…。聞いてはいたがやはり慣れないな…。
「私も驚いてはいるよ。だが、身に覚え…というか、こうなっても仕方ないだろうと予測してはいたが…。」
「嘘が通じないならって言葉を濁すんじゃないよ!それで、一体どういう事なんだい?」
コホン、と一つ咳をして話し始める。
「では言ってしまうと、これは私が元から使えたものだ。ファルナがあれば魔法が発現するが、無いものは使えない、という訳では無かろう。元から備わっているものはある。そも、魔法はレベルアップしても消えはしないのだろう?ならば、0から1になっても消えはしまい。」
「む、むぅ…。前例があるかはちょっとわからないけど、ボクじゃ反論のしようもないなぁ…。」
「で、でも凄いですよ!もう魔法が使えるってことですよね!羨ましいなぁ…!」
「でも、魔力は0になってるけど使えるのかい?詠唱も書いてないよ?」
「詠唱については問題無い。魔力もだ。ステイタスが0でも、ステイタス以外にそもそもの身体能力はあるだろう。同じステイタスでも普段から鍛えていた者とそうでない者には差があるだろう?」
「むむ…これで嘘ついてないんだからなぁ…。それで、一体どういう魔法なんだい?固有結界、なんて聞いたことないぜ?」
「簡単に言うと刀剣類の複製だな。見た武具を登録し投影するというものだ。」
…固有結界については説明する必要は無いだろう。使う場面などまず来ないだろうからな。
「ということは直接攻撃する魔法じゃないんですね…。」
「…どうせヴァレン某のと似てるなぁなんて考えてるだろうベル君はほっといて…元から知ってたってことは君、武具を見に行くってのも
「…まぁ、そうだな。無論単純に興味があるのも間違いではないぞ?」
「ふーん、そうかい。ボクとしてはヘファイストスのとこの作品がパクられるのに抵抗はあるんだけどね…。むむむ、これ如何に…。」
「人聞きが悪いな。別に作り手に害がある訳でもあるまい。私が使うだけなら何の問題も無いはずだ。」
「はぁ、仕方ないなぁ。…それで、君達はエミヤ君の冒険者登録に行くんだろう?ボクもそろそろバイトの時間だし、早いとこ行かないと時間が無くなるぜ?」
「そうですね!じゃあ神様、行ってきます!」
「行ってらっしゃい!ほら、エミヤ君も!」
「──あぁ、行ってくる。」
*
「あら、ベル君!昨日は大丈夫だったの?」
「エイナさん…。ええ、お陰様でなんとか…。」
…ベルの表情が優れないな。無茶をした事を怒られると察知したのだろうか。確かベルの担当アドバイザーである彼女とは、オラリオの説明を受けたときに話したが、「冒険者は冒険してはいけない」などと言っていたし、ベルの行動には当然怒るだろう。
「また無茶して!…また説教してあげたいところだけど、ひとまず要件を聞こうかしら?」
「は、はい。ええと、今日はこちらのエミヤさんの冒険者登録をお願いしたくて…。」
「あら、貴方確か昨日の…。ヘスティア・ファミリアに入ることになったのね?」
「エミヤだ。入団については、丁度ファミリアを探していたところだったのだ。折角人手の足りないファミリアに関わる事になったのだからな。」
「…ふーん。場所は選ばないって言ってたけど、まさかそこにとはねぇ…。…ともあれ、冒険者登録ね。わかりました。それと一緒にダンジョンについてもある程度レクチャーしてあげましょう。」
「わかった。ベルはダンジョンに行くのだろう?ここで一旦お別れだな。では、またホームで会おう。」
「はい!エミヤさんも頑張って下さい!」
…レクチャーを受けるだけなのに、何処に頑張る要素があるのだろうか?
この後ベル君は豊穣にお金返しに行っています。
今回試しにヘスティア様目線を入れてみたんですが、需要ありますかね?エミヤ目線だけだと表現し切れないところは確実に出てくると思ったので…。
あと、この作品のタイトルの、オラリオに「立つ」に違和感があるんですが、いい案お持ちの方居たらコメントにお願いします…。
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神会
神ジュナは居るのにね(´・ω・`)
修正案が飛んできてますが、直せば直すほど他が歪んだりするので目立つとこの修正は減らそうかなと思ってもいる。まぁ直すとこは直しますが。
───なる、ほど…。
ベルが頑張ってなどと言っていた意味が分かるかもしれないな。
『はい!エミヤさんも頑張って下さい!』 そう言われたことに首を傾げながら別れ、エイナのダンジョンについてのレクチャーを聞いていたのだが…いかんせん情報量が多い。冒険者になったばかりの者が潜る階層の分だけとはいえ、ダンジョンの階層丸ごとの情報を詰め込むのだ。或いはベルも何かトラウマがあったのかもしれない。というか、あったのだろう、確実に。説教だのと言われていたしな。
「とはいえ、まだ時間はあるか。予定通り武器を見に行きたいところだが、一先ず昼食にした方が良さそうだな。」
今日は1人で行動すると言った後、ベルから『これ、お昼の分のお金です!貧乏なので武器代なんかは無理ですが、これだけなら!』と昼食代金──この世界の金額の単位は「ヴァリス」らしい──を渡された。
「さて、と。軽く食事が取れそうな所は…。」
「ニャ?ひょっとして、ご飯食べる所を探してるんだニャ?」
「む、ああ、そうだが…君は?」
「アーニャだニャ!そういうことならここで食べれば良いニャ。」
アーニャはそう言って目の前の建物を指さす。
「豊穣の女主人…君はここで働いているのか?」
「そうニャ!それで、食べてくニャ?」
「そうだな。折角だし、ここで頂いていこう。」
「分かったニャ!1名様ご来店ニャー!」
料理店というより酒場に近いだろうか。店内を見回していると、大柄な女性が近づいてきた。
「おう!見ない顔だけど、あんた冒険者かい?」
「エミヤだ。冒険者ではあるが、なってからあまり時間は経って居ないよ。」
「へぇ、それにしちゃあいい身体してんじゃないか。鍛えてたのかい?」
鍛えていた、か…。それを言うならこの店の店員もかなりの身のこなしに見えるが──。
「それなりにな。それで、貴女は?」
「店主のミアさ。じゃ、あたしゃ厨房に戻るからね。シル、注文頼んだよ!」
「はい!ではエミヤさん、ご注文をどうぞ!」
「そうだな。何かお勧めで、軽く食べられるものを頼む。」
「分かりました!」
改めて店内を見回す。確か
ドンッ
「…? ………ッ?!」
豪快な音を立てて目の前に置かれたのはミートソーススパゲッティ。それだけなら何も違和感を抱くことは無いのだが、いかんせん量が問題だ。どう見ても通常の料理店で出てくる量の3~4倍はある。
「おい、これは…。幾ら何でも多すぎないか…?昼に食べる量ではないだろう。というか、夜だとしても───」
「なんだい、お勧めって言われたからお勧めを出したんだけどね?」
視界の端でシルがペロッと舌を出す。
「──そうか。分かった、頂こう。」
…食べ物を粗末にする訳にはいけない。イメージするのは
*
「ふぅ…。」
食べ切った。量には驚かされたが、見掛け倒しでは無くちゃんと美味かった。いや、それを差し引いても多いのだが。かなり苦しいのだが。
「良い食いっぷりだったよ!冒険者ならそんくらい食わないとねぇ!」
「…そうか。……美味しかったよ。まぁ、量は多過ぎると思うが、くどくない味だ。しっかり絡んでいるソースも、素材の味を活かし、それでいて押し付けがましくない。」
「…へぇ、あんた料理詳しいのかい。」
「プロには及ばんが、とある食堂で料理を出していたこともあってな。」
「ふぅん、冒険者らしくないねぇ。まぁいいさ、気に入ったんならまた来るといいよ!」
「ああ、了解した。」
──だが、昼に来るのはやめよう──そう誓い、店を後にした。
「ベルといい、面白い奴が増えたねぇ…。…ってあんたら!遊んでんじゃないよ!仕事は終わったのかい?!」
*
バベル内にあるヘファイストス・ファミリアの武具売り場
何故武器を見る必要があるかというと、単純な問題だ。
ここで宝具を投影し使用すれば、どう考えても目立つ。それは必要最低限───干将・莫耶は普段使いの武器としてしまえば良い。火力の高いものを何種類も出すのが問題なのだ───にしなければいけない。また、神に関わりのあるものも感知されてしまう可能性が高い。そうでなくとも、こちらの世界で使うのはこちらの世界の武器である方が良い。
「やはり、値の張る高級品は一点物が多いな。これでは使いにくい。」
魔法を込めた剣、魔剣。決して壊れない
「む、ここは確か、まだ無名の鍛冶師達の作品か。」
陳列されるでもなく、箱に入れられ置いてある武器達。だが確かに、何か違う輝きを放つものもある。
「興味があるが、ここではないか。」
目的は量産品だ。無かったらここに戻ってくることになるが、恐らくあるだろう。
そんな考えを持ち、また歩みを進めていく。
*
「さてと、用は済んだが、折角バベルに来たのだから少しはダンジョンを見てみるか。」
目当てのものを見つけ、ついでに少し調べ物──主にオラリオの歴史についてだ──をして、まだ時間がある事を確認してダンジョンに向かう。
「なるほど、確かに迷宮だな。エイナから教えて貰った知識もあるし、まず迷うことも無いだろうが。…む。」
曲がろうとした角の先に気配がある。壁から顔を少しだし様子を伺う。
───ゴブリン。数は3。こちらには気づいていない。
「…まずは肩慣らしだな。──
投影した干将と莫耶を握り一息に距離を詰める。
「…!」
1匹がこちらに気づくが構わずに走り、ゴブリンを丁度通り過ぎたところで強引に反転し、首を刈る。
「ギィッ!」
後ろから飛び込んで来るもう2匹を振り向きざまに纏めて蹴り飛ばし、壁に激突した所にそれぞれ剣を投影して飛ばす。
コロン、と小さな音と共に、音の通り小さな石が転がった。
「これが魔石か。モンスターの強さに応じて大きさが変わるのだったな。ギルドで換金出来ると言っていたが、拾っても入れるものが無いな…。」
少し考えて、ベルトポーチを投影する。
「一先ず、こんなもので良かろう。さて、もう少し狩って行くか。」
受肉による体の限界はあるだろうが、そもそもの身体能力はほぼ変化していない。バベルで見た剣もこの階層の敵なら何ら問題は無さそうだ。少なくともしばらく装備の更新は必要無いし、ましてや宝具を使う場面は来ないだろう。
*
「帰ったぞ。」
「おかえりなさい、エミヤさん。」
「おかえりエミヤ君。ちょっと聞いてくれよ。ベル君ったらあんなことになったばっかだってのに、また6階層まで潜ったんだぜ?」
ふむ。エイナの話なら、確かにまだベルが潜るべき階層では無いのだろう。6階層からはウォーシャドウというモンスターが出現するらしい。
「大丈夫ですよ神様。ステータスもかなり上がったんですし!…というか、何でこんなに急に上がったんですかね…。」
「さ、さぁ…?ボクハナニモシラナイナァー。」
…明らかに何かを隠しているな。神は嘘を見抜けるようだが、この神は嘘をつくのも下手らしい。
「…はぁ。とりあえずベル、貰っていた昼食代を返そう。少しダンジョンにも入ってみたからな。」
「エイナさんのレクチャーも受けたんでしたもんね。いい感じの武器は見られましたか?」
「ああ、目的は果たせたよ。」
「へぇ、エミヤ君もダンジョンに行ったのかい。じゃあステイタスも更新しちゃおうか。丁度ベル君のステイタスも更新するとこだったからね!」
「ああ、それでは頼もうか。」
「じゃあベル君から、ベッドにダイブだ!」
*
やっぱり、この伸び方はおかしい。このスキルは、それ程の壊れスキルなんだろう。
ベル君のステイタスの、スキルの欄を見る。
『
このスキルの影響はとても大きい。ベル君は直ぐに強くなってしまう。
──ベル君に影響を与えたのがボクじゃないのは寂しいけど、それでも。ボクはボクに出来ることをしなきゃな。
*
「ベル君、ボクはちょっと用事が出来たよ。本当は行かないつもりだったんだけどね。」
更新したステイタスを見て喜ぶベルに向かってヘスティアが言う。
「?…どうしたんですか、神様?」
「いや、なんてことは無いよ。ボク達神の、
『カルナさーん、ちょっとポテチ取ってきてくれッスー』
…何処かの
*
エミヤ
Lv1
力:I 0→8 耐久:I 0→0 器用:I 0→18 敏捷:I 0→13 魔力:I 0→19
《魔法》
【無限の剣製アンリミテッド・ブレイドワークス】
・固有結界
・派生 【投影魔術】
《スキル》
「というかエミヤ君、攻撃1発も貰わなかったんだね。」
*
「はぁ、相変わらずガネーシャは変な趣味してるなぁ…。」
──子供達の為だ。ボクも頑張らなくちゃ──
「おっ、ドチビ!ドレスも無いのに何しに来たんや?」
────お前は!とりあえず!死ね!
え?『人理修復後』なのになんでジナコ居るんだって?細かいこと気にしちゃいかんよ!(2部後って解釈してもいいのよ?ノウム・カルデアもあるし)
…アンケ取るか…。
エミヤのダイジェストステイタス更新は書くことが無いからです…。
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もちろん箱イベです。他の意図はありません。
ギル祭と古戦場とクラバトのせいで遅れました。僕は悪くありません。
ガール・カフェ・ガン入れたら端末性能的に無理でした。
アンケご協力ありがとうございました。好き勝手にやらせて頂きますぜ。
堅実な剣。自分とは違う得物を使っていても、それは解る。斬り払った双剣に隙は無く、敵を実力で突き放していても慢心は感じられない。唖然とする敵に逆の手で刺突。敵は、避けられない。
武器を砕かれたコボルトが、その一撃で沈んだ。
「え、えーっと…やっぱりエミヤさん、お強いですよね…。」
神様が出かけて行ってから何日か経って、エミヤさんと2人でダンジョンに来るのは2回目になる。
一緒に戦ってみてわかるが、この人はやっぱり強い。自分のことで精一杯な───今までソロだったことを考えても───僕のことにも常に注意を払ってくれているし、攻撃を受けている場面もまず見ない。
「何を言っている。前にも言ったが、私はここに来る前から鍛えていたし、戦闘の経験もあったからな。別段才能がある訳でもない。それを言うなら、ベルこそよく戦えているではないか。」
…本人はこう言うけど、神様が出かけて行ってからステイタスの更新はされていないと云うのに、こんなに強いなんておかしいと思うんだけど…。
「ところで、そろそろ夕方だろう?」
「確かに、そうですね。そろそろ帰りましょうか。」
…まぁ、彼の強さについては別に今聞かなくても良いだろう。
*
いつも通りの探索を終え、地上へ戻る道中。たまたま目に付いたのは大量に運ばれている荷物だ。
「あれ?何でしょうか、あのカーゴ…。」
「ああ、私は見たことが無いが、ベルは何か知っているか?」
「物資運搬用のものだと思いますが、けっこう数がありますね…。って、うん?」
「グルルルルル…」
恐らくはその荷物の中から、何かの呻き声が聞こえてくる。…というか…
「…これ、もしかして、中に…」
「ベル、他人の荷物に勝手に近付くのは…」
ドンッ
「うわぁっ!」
「ふむ、やはり中にモンスターが?」
「ええ、でも、何のために…。」
「おー、
「しっかし、こんなのを押し付けられるガネーシャんとこも大変だよなぁ…。」
他の冒険者さん達が話しているのが聞こえてきた。
「モンスターフィリア…。何かの祭りだろうか?」
「あ、エイナさんが来てる!エミヤさん、僕ちょっと聞いてきま…」
「止まれ、ベル。恐らく彼女は仕事中だろう。声を掛けるのはまた今度にしておくと良い。」
「あー…、はい。そうします!」
まぁ、エイナさんにはギルドに行けば会えるし、急ぐ必要も無いだろう。
*
オラリオの街は夕日に照らされ、
「それで、エミヤさんはどうしてそんなにお強いんですか?」
「…ふむ、何故、か。いや、これだという理由は無いな。ただ単にその必要があっただけだ。」
この人は時々含みのある言い方をすることがある。気になるけど、知ったところでどうこうという話じゃ無いだろう。
「へぇ…、僕も早く強くなりたいなぁ…。」
「すぐになれるだろう。君には確かな才能があるからな。強くなることへの意欲が強過ぎる嫌いはあるが、直感的な戦闘センスはかなりのものだと思うよ。まぁ、ステイタスの育ち方についてはよく知らないし、私からは何も言えることが無いがね。」
「えっと…はい、ありがとうございます!頑張ります!」
───そうだ、神様のためにも早く強くなって、アイズさんに追いつかなきゃ!僕はもっと、強くならなきゃいけないんだ!
*
「ベル君はもっともっと強くなる!そのためにも、彼には武器が必要なんだ!」
所変わってヘファイストスファミリア。オラリオ最大級の生産系ファミリアであるここは、武器・防具の生産に特化しており、ヘファイストスブランドといえば超1級品の武器ばかり、という認識はオラリオ中に広まっている。
「あのねぇヘスティア?確かにお金を貸してっていう話では無かったけど、今度は武器って…まぁ、勿論代金は払って貰えるでしょうけど、それだってあんたたちのファミリアに払えるの?」
…当然の疑問だ。
「自慢じゃないけど、うちの上級鍛冶師の作品は性能も値段も一流なの。その代金が払えて、そしてその性能を扱いきれると思う?」
…当然すぎる疑問だ。出来たばっかのファミリアにヘファイストスブランドの1級品なんて買えるわけが無い。
「第一なんなのよ、その格好。虫みたいに丸まってられると出来る仕事も出来ないんだけど?」
「土下座。これさえすればなんでも許してもらえる最終奥義。」
「何よそれ?許してもらえる訳ないじゃない。誰に吹き込まれたの?」
「
「あいつ…めんどくさい事を……ってちょっと待ちなさい!子供
「引き受けてくれるのかい?!」
「引き受けるとは言ってない!」
…ちぇっ
「えっと、エミヤ君は3日くらい前に入団してくれたんだ。まだあんまり話せてないけど、いい子だよ?…それで、武器のことは…」
「武器のことは?」
「武器のことは!…うん、問題ないんだ。彼は自前で武器があるからね。」
「…?…そう。」
……っああぁっぶなあぁぁぁーーーっ!エミヤ君の魔法のことがバレたらどうしようかと思ったよ!
「…それで?どうしてあんたはそこまでするの、ヘスティア。」
そんなの、決まってる────
「ベル君の力に、なりたいんだ!ベル君は変わってる!不変であるボクたちから見て、じゃなくても!どんどん変わっていってる!目標を見つけて、仲間が出来て、走り始めようとしている!ボクは、ベル君の力に、なりたいんだよ…!ボクだけが何も出来ないなんて、嫌なんだ…!」
────もう、ベル君が傷ついた姿を見るだけなのは、絶対に嫌なんだ─────!
「…そう。わかったわ、折れてあげる。」
……!
「ほ、ほんとかい!」
「ええ、あんた、諦める気なんてさらさらないでしょ?」
「…うん!ありがとう、ヘファイストス!」
…やった、やったよ、ベル君!
「…言っとくけど、ちゃんと代金は払いなさいよ?」
「も、もちろん!ボクだって、やるときはちゃんとやるんだぜ!」
*
「ちょっと待つニャ!そこの白髪頭2人組!」
「ん?」
「はい?」
あれは確か…豊穣の…
「おはようございます…あの、僕達に何か?」
「ニャ!これをあの
「???(チラッ」
…ベルが明らかに困ってこちらを見ているが、助け舟を出す必要は無いだろう。何故なら───
「おはようございます、クラネルさん、エミヤさん。アーニャ、それでは説明不足ですよ。」
「おはようございます、リューさん。」
「ああ、おはよう。」
「全くリューはアホニャ、怪物祭を見に行ったのに財布を忘れたおっちょこシルに財布を届けて欲しいってことくらい…」
「分かる訳が無かろう。」
「ガーン!ニャ!」
「…ということです。分かりましたか?クラネルさん。」
「えぇ、分かりました!…ところで、怪物祭って何なんでしょう?僕、オラリオに来たのが最近なので…」
「ああ、私もだ。怪物祭という単語については耳にしたことがある程度だな。」
「ふっふーん、しょうがないニャア、ミャーが説明してやるにゃ!良いニャ!怪物祭とは…
「あんまりニャー!」
*
「じゃあ、僕はシルさんを探してきますので、エミヤさんは自由に見て回っていて下さい!」
「良いのかベル?気など使わなくとも…」
「大丈夫ですよ、探しながらでも見て回ることは出来ますし、僕が頼まれようなものですから!」
「そうか、まぁ、あちこち見て回っていれば会えるだろう。ではな。」
「はい!」
さて、と。見て回る、とは言ったものの、実際に調教などを行っている会場以外は飲食店が殆どだな…。
「豊穣の女主人が忙しいと言っていたのもこれだろう。適当に
道すがらシルが見つかるかもしれん。となると次はベルを探すことになってしまうのだが…
「む、手頃な屋台があるな。ジャガ丸くん…?」
聞いた事は無いが、揚げ物のようだ。じゃが、というからにはじゃがいもだろうし、コロッケでは無いのだろうか…。
「その、ジャガ丸くんというのをひとつ頼む。」
「あいよ、何味が良いかい?」
「初めて食べるのでな、オススメのものを頼む。」
「んじゃあ、どうすっかねぇ…」
「小豆クリーム味、オススメ。」
…?誰だろうか、この少女は。
「アイズたーん、1人でどっか行かんといてやー!」
急に現れて引き摺られていった…
「…では、その小豆クリーム味、というのを頼む。」
「…今のって、もしかして剣姫…?」
「おい、注文を頼む。」
「ああ、すまんすまん、小豆クリーム味ね。…うん、珍しいチョイスだな…。」
…嫌な予感がするのだが…
*
「…ふむ、悪くは無い。無いのだが…万人受けはしずらいだろうな…。」
上からかかった甘さとそもそもの塩気。組み合わせ自体は良いが、甘さが圧倒的に勝っている。味を感じ分けられるのなら良さは見つけられるのだろうが…。
「大抵の場合はデザート扱いだろうな…。この味は…。」
次は違う味を試して見た方が良さそうだ…。
「…む?何やら騒がしくなって来たな…。」
「モ、モンスターだ!モンスターが出たぞおおおおお!」
「…な、に?」
モンスター?街中に?いや、有り得る…。油断しきっていたな…闘技場にモンスターが居ると言うことは脱走の可能性も0では…!
「きゃああぁぁぁぁぁ!」
…!
とっさの判断で剣を投影、座り込む少女に襲いかかろうとする山羊のようなモンスターの前に飛ばし、突き刺す。
「グルルゥ!」
剣の腹に体当たりして弾かれたモンスターに突っ込み、蹴り飛ばして距離を作ることに成功。
「む、娘をありがとうございます!」
「ギルドかバベル、冒険者の居る方へ逃げろ!闘技場には近づくな、モンスターの出処かもしれんからな!…っ!」
交差させた干将と莫耶で、モンスターの突進を角に刃を当て受け止め、そのまま押し返して上段から切り裂く。
「今なら行ける、急げ!」
「はい!」
「そら、これもくれてやる!」
ダメ押しにヘファイストスファミリアの剣を飛ばす。
「ガッ…!」
モンスターは目の光を失い、倒れ、魔石になった。
さて、祭りの為に運び込まれたモンスター全てが脱走したかは分からないが、複数のモンスターが居るということはその可能性が高い。冒険者だらけのオラリオなら倒すのは難しくないだろうが、問題は…。
「なっ…!」
何処かから伸びてきた緑の触手に右足を掴まれた。
「チッ…!」
干将と莫耶を触手へ投げつけ切断し、カーボン弓を投影。番えた矢を触手の伸びる先へ射る。
ガキッ
「速いな…」
矢を弾いた触手の動きは、先程までのモンスターとは打って変わってとても俊敏、よりレベルの高いモンスターだと分かる。
足止めされるが、まずはこいつを倒さねばなるまい。
「この分だと、ベルも襲われているのでは無かろうな…!」
襲われてますね…
ヘファイストスの口調、無理。
戦闘描写、無理。
どこで切るか考えるの、無理。
エミヤが襲われたのは干将・莫耶が魔力で編まれてるからですね。
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こんな小説待ってるやつおらんやろ!
ひと月経ってもモチベが出ず、このまま闇古戦場に流れ込む訳にも行かないから一念発起して書いた…カイタハイイケドモ‥。
「おーい、そこの人、大丈夫?!」
「む?」
此方に向かって来る触手が無くなったと思えば…ほう、あれが本体か。花のような見た目をしているが、どう考えてもモンスターだな。そして、戦っているのは3人。
「ああ、問題ないが、そちらは?冒険者だろうが、あんなモンスターに素手で殴りかかるのは感心しないな。」
「へ?あたし達のこと知らないの?んー…まぁいっか!お兄さんも冒険者でしょ?あそこに倒れてる仲間が居るんだけど、危ないから保護しといて!」
「ああ、承知した。」
…酷い傷だ。貫通してはいないが、腹に穴が空いたか…。だが、息はある。流石は冒険者といったところだが、ひとまず動かさないように固定用の包帯等を投影し───────
「ジャァァァァァ!」
「チッ!」
急いで抱き抱えて跳んで回避。急な動きはあまり良くないだろうが仕方ない。
「あ、忘れてた!気をつけて!こいつら魔法に反応するから、あんまり使わないように!」
「そういう事は先に言って欲しいな!──っ!」
風が、吹いた。折れた剣に纏う風が吹き荒れ、金色の髪がたなびく。
…違う。断じて、かの騎士王が此処に居る筈が無い。だが、似ている。共に戦うことは殆ど無くなり、食堂で会う程度になってしまったあの風に、あの輝きに────
「あ…うぅ…、こふっ…」
「ふむ、気がついたかね。今避難させるから───」
「降ろして…下さい…」
…この傷で、何を?
「あぁ、エルフは他人との接触を嫌うのだったか。だが、そんなことに拘っている場合では───」
「
ああ、その台詞は、確か────
「──そうか。良いだろう。だが、他者の為に己を犠牲にする事を、黙って見ている訳にはいかなくてな。」
抱えたままのエルフを、そっと地面に立たせる。
「『ウィーシェの名の元に願う 森の先人よ 誇り高き同胞よ 我が声に応じ草原へと来れ』」
「…
「ちょっ、なんでまだ居るの?!」
「うわっ、凄い魔力…!」
勿論、こんな事をすればモンスターは此方に向かって来る。だが、それなら私も勝手に投影が使える。…そして、そこに武器があれば、彼女達は───
「これ、借りるよ!」
…では、後は時間を稼ぐだけだ。
「『終末の前触れよ 白き雪よ 黄昏を前に風を巻け』」
迫ってくる点を防ぐのに、点の攻撃──投影武器の射出は意味が薄い。では、やるべき事は明快だ。剣で防ぐ、弾く、時には切り飛ばす。4人いれば壁役には十分だ。
「『閉ざされる光 凍てつく大地』」
後ろで強力な魔力が膨らんでいく。
「『吹雪け、
「!!? この詠唱って…!」
「うん、レフィーヤのものじゃなくて、リヴェリアの!」
4人それぞれ横へ跳躍、射線から逃れる。そして出来た道を穿くのは─────
「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!!」
*
「おーーーい、アイズたーーーん!武器拾って来たでーーーー……、…ん?」
「あ、ロキ!モンスターならもう倒したよ!」
「なんやて!うちの頑張りは何やったんや!アイズたん達の活躍も見られんかったやないかぁー!…そんで、そっちのしらん男は?」
…ロキ。悪戯神ロキ。それがこんな関西弁を話すことには違和感しかないが…。
「お初にお目にかかる、神ロキ。私はヘスティア・ファミリアのエミヤという者だ。」
「は?ドチビの?ファミリア?…1人しか居らんって話じゃ無かったんか?」
「ドチビ…というのはよく分からないが、私がファミリアに入ったのは最近の話だ。それでその、ベルを──ファミリアの仲間を探しに行きたいのだが、良いかね?」
「ああ、構わん構わん。…しかしドチビのとこにねぇ…ドチビを馬鹿にするネタが減っちまうなぁ…。」
「では、失礼する。」
ドチビ…ふむ…。主神の仲が悪いファミリアは交流が悪化…という事もありそうだが…ふむ…。
*
───ベル。あの男の人──エミヤさんは、あの男の子と同じファミリア。そして彼は、ベルを探している。…探さないといけない状況にある。こんな街の状態じゃおかしい事では無いけれど─────
「アイズたん?どないしたんや、そないにボーッとして。それよりそれより、さっきの奴ファミリア入ったばっかでアイズたん達と一緒に戦えたってマジか?!」
「うん、そうだけど…。それより、早くレフィーヤを治療して貰いに行かなきゃ。」
何も無いと、良いけど────。
*
「…見つけた。ベル!ヘスティア!」
「あ、エミヤさん!あの、えと、神様が、神様が…!」
「ええい、落ち着け、落ち着いて話せ!外傷は無いし、大丈夫だ。ひとまず寝かせられる所を探そう。」
「…はい!わかりました!それじゃあ…」
*
「それで神様、過労って聞きましたが、出かけてから3日間何処で何してたんですか?」
「土下座さ。頑固女神を説得する為の、30時間ぶっ続けのね…。」
「なっ、30時間?!30時間も土下座して過労、とはな…。足の痺れと体の痛みで途中で終わるものだと思うのだが…一体、何のためにそんな事を?」
過労死する半神の英雄が居れば過労で倒れる女神くらい居てもおかしくない…のか…?いや、それにしても原因が土下座とは…。
「前も言ってましたねそれ…。僕には土下座が何なのか全く分からないんですが…どういう理由があったんですか?」
「そりゃあ、
薄々勘づいては居たがやはり
「ヘ、ヘファイストス!?神様、これ…!」
「…へへ。君がどんどん強くなっていくから、ボクにも出来ることないかなぁ、ってさ。これ、世界に1つしか無いんだぜ?」
「だがヘスティア、代金は大丈夫なのか?」
「大丈夫、話はつけてあるから、今すぐに請求されるなんてことにはならないし。」
「…それに、ボクは君の力になると言った。君が強くなる助けになると言った。だからさ、これくらいのお節介はさせてくれよ。────ボクは君らの、神様なんだぜ?」
*
「さて、次はいよいよ7階層だ。新しいモンスターも出てくるが…行けるかね、ベル?」
「はい!もちろんです!」
漫画13話までの内容になりました。
アイズとロキがシルバーバック討伐後のベルを見かけるシーンなどなどはカット。まぁ、原作と余り変わらないので。エミヤが抱えて屋根伝いも考えましたが、アイズに見てもらわないと…ねぇ?
抱えてたのはエミヤかもだけどな。
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出会う白兎 働く正義の味方
あ、あけましておめで申し訳ありませんでしたァァァァァァァァ!
ええ、はい。やろうやろうと思いながら書かないでここまで来てしまいました。本当に申し訳ないです…。「許さねぇよこんな小説一生読まねぇよ!」という方に言える言い訳は無いのですが、これからも読んでくださるという方は、どうか、今年もよろしくお願いします!
(※この話に入る時点でエイナさんとのお買い物エピソード=防具買うやーつは終了しております。エミヤの「用」はこの裏で依頼されていたものとお考え下さい。)
「…あれ?おはようベル君。今日はまだ家に居たんだね?」
「あ、おはようございます、神様。今日はエミヤさんが用があるとかで…。それを伝えておこうと思って、まだ出掛けてなかったんです。」
「ふーん、用がある…。まだ出掛けてない、ってことは今日は1人でダンジョンに行くのかい?」
「はい。」
1人で潜るのか…。エミヤ君がファミリアに入ってからは2人パーティが多くなっていたし、ベル君にとって、武器を手に入れて強くなったのを確かめる良い機会かもしれないな…で、
「それで、その用ってのは一体なんなんだい?また武器を見に行きでもしたとか?」
「いえ、豊穣の女主人の手伝いを頼まれたそうです。なんでも、怪物祭で大量に使ったのと例の騒ぎのゴタゴタで仕入れがあまり上手くいってないとかで、今日で食材が足りなくなっちゃうみたいなんです。」
「つまり、買い出しでも頼まれたのかい?」
「えーっと、買い出しではなくお店の方らしいです。いつも仕入れている人の方が何かと顔が利くととかで、直接まとめて買ってくるみたいです。」
ほーん、そう来たかぁ…。確かにエミヤ君は料理が上手いけど、あそこの店員は女の子しかいないよなぁ…む、待てよ?あそこの店員にベル君に気がありそうな輩が居たな…。なんでも、お弁当を渡したとか。その子がベル君に行くのをエミヤ君で防げば…
「…様?神様ー?聞いてますー?」
「ん、ああ、聞いているとも!それで?」
「本当に聞いてたんですか…?…とにかく、エミヤさんはいつ帰ってくるかわからないそうです。まぁ、お店が終わるまでには帰ってくると思いますけど。」
「わかったよ!それじゃ、君はダンジョンに行くのかい?」
「はい、神様。それじゃあ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい!新しい武器の使い心地、存分に確かめて来るといいよ!」
*
「ところで神様?もうバイトの掛け持ちなんかしないで下さいよ?」
「ギクッ」
「…神様ー?」
*
「…で、ミア。私は何を手伝えばいいのかね?」
「そりゃ厨房さ。そもそも、あたし以外にまともに料理が出来るやつはこの店には居ないからね。」
「…成程。それで良くやっていけるものだと感心するが、その前にだ。なぜ君は私が料理をできると知っていたんだ?そうでないと依頼などしないだろう。」
すると、遠巻きにこちらを眺めていた店員達の中からシルが走り寄ってくる。
「あ、私です!ベルさんが言ってたんですよ、エミヤさんは料理が上手い、軽食も作ってくれるからもうお弁当を貰う必要はない、って!いよいよ受け取らない口実を作られちゃいました…。」
「頼んだ理由としちゃあ、冒険者ばっかり来るうちの店じゃあ、料理出来るやつはなかなか知り合えないからねぇ。」
「君か…。まぁ確かに、ベルに食事を渡すことがあったらしいな。…理由についてはわかった。わざわざ私に厨房を担当させるということは君が食材を買いに行くということで良いんだな、ミア。」
「そうとも。いや、そんな遠くまで買いに行くわけじゃ無いんだけどね、直接仕入れに行くとなるとあっちこっち回らないいけなくてね。それに、仕入れ元に行くならこいつらよりもアタシの方がいい。」
「そうか、承知した。店にある食材は好きに使って良いんだな?」
「ああ良いとも。だが…お前さん、ちょっとついて来てみな。」
言われた通りについて行ってみると、食料を置いてあるところに着く。
「見ての通りだ。ある程度はあるが、魚や肉なんかは明らかに足りない。こんなんじゃ今日1日持たないね。」
「成程、君が仕入れから帰ってくるまではこれでもたせる必要があるという訳だな。
端に置いてあった大きな袋に目が行き、聞いてみる。
「ん?ああ、そいつは貰いもんでね、なんでも極東の方の食いもんで、コメって名前らしい。お前さん、使えんのかい?」
「ああ、使える。調理器具もなんとかなるだろう。」
まぁ投影でだが。
「そいつぁ助かる。それも加えたらなんとかなるだろう。それを使った料理の値段は他のメニューと比べて決めちまってくれ。じゃあ、頼んだよ!」
「うむ、任された。」
まぁ、最悪炊飯は鍋でも出来る。それで困ることは無いだろう。
*
「よし、久しぶりに1人でダンジョンだ…。エミヤさんは居ないけど、このナイフに防具もあるんだ。大丈夫なはず…!」
そこまで言って気づいたけど、久しぶりなんて言ってもエミヤがファミリアに入ってからそんなに経ってないんだよなぁ。なんというか、神様と僕の2人の時より今に慣れちゃったんだなぁ…。
「…さん!お兄さん!」
「…え、僕のこと?」
「はい、白い髪のお兄さん!」
知らない人。種族は…たぶん
「君、昨日路地裏で…」
「昨日、ですか?リリ、お兄さんとお会いしたことありましたか?記憶にないのですが…」
「えっ、本当に…?それじゃあ、なんで僕に話しかけてきたの?」
「それなら簡単な話ですね。冒険者さんのおこぼれにあずかりたい貧乏なサポーターが、自分を売り込みしているんです!」
サポーターかぁ…。前々からいて欲しいとは思ってたし、エミヤさんが居ない今日は尚更かもなあ…
「どうでしょう?サポーター!」
「あぁ、うん…。出来るなら欲しい…かな…?」
「ほんとですかっ!なら、リリを連れていってください、お兄さん!」
「いや、良いんだけど、それは…」
〜
「では、自己紹介を。リリはソーマ・ファミリア所属のリリルカ・アーデです。」
「え、ソーマ・ファミリア?じゃあどうして僕に?ファミリアの人達とパーティを組めば…」
「あはは、リリはこんなに小さくて、何も出来なくて…だからダメなんです。」
ファミリアの中で身内を除け者に…?なんだってそんなことを…
「それでホームに寝泊まりも出来ず、手持ちのお金も心許なくて…。なのでぜひっ!ぜひお兄さんとダンジョンに潜りたいんですっ!」
「うわっ…と。うん、リリルカさんの事情は分かったけど、ひとつ聞いていいかな?」
「はい、構わないですけど、なんでしょう?」
「本当に僕達、会ったことない?」
大きなリュックを背負っていて、フードを被ってはいるけど、どう見ても昨日追われていた
「お兄さんとは初対面のはずなのですが、見間違えではないですか?」
「…うーん、それじゃあ良かったら、フードを取ってみてくれないから?」
「…あっ、やっ、その…」
フードを取ってしまえば昨日と同じ状態。それなら流石に見間違えは有り得ない。
「…わ、わかりました…。」
そう言ってリリルカさんは、フードに手をかけ…
「…へっ?」
耳。紛れもない
「じゅ、獣人?」
「はい、リリは
ぎゅむっ
「んっ!」
…間違いない、本物の耳だ…。
「あ、あのお兄さん…、お兄さん…!」
「う、うわっ、ごめん!!」
「リ、リリの大事な
「本当にごめんねっ?!」
〜
「それでお兄さん、リリを雇って貰えますか?今日はお試しなので収入をお分けいただければ構いません!3割も頂ければリリは嬉しくて飛び上がってしまいます!」
…本当に3割で良いのかなぁ。
「…わかりました。名乗るのが遅くなったけど、僕はベル・クラネルです。ひとまず今日1日、よろしくお願いしますね、リリルカさん。」
謝っといてこの文量の少なさ。これが筆者クオリティ。
ぶっちゃけると受験期なのでまずいんですけど(まず過ぎる)、次話も脳内にチラチラ出来始めてはいるので、そう遅くはならないかと!(大嘘)
福袋は、裁とか讐のやつを引きます(福袋課金はまだです…)、筆者でした!
それでは皆さん(新年開始早々こんなの読んでる人はなかなか居ないでしょうがそれはさておき)、良いお年を!
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