岸くんに憑依したので世界は救われないかもしれない (Iaなんとか)
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1部 電■■想■界 アストルム
Re:プリンセスコネクト!


これだけ設定盛らないと原作岸くんに並べなさそう。



―――夢を見ていた―――

 

―――小説のような――非現実的で美しい夢を―――

 


 

■■■  「クソッ…! オレ(贋作)では届かないのか……!」

 

覇■皇帝(「愛■」の■?) 「アナタがウォッチャー(領域外の■■)だったなんて… 

      でも()()()が足りないわ。全て…終わらせてあげる…」

 

ヒ■リ  「もうやめようよ……!これ以上…   …おかしくなっちゃうよ……!」

 

覇瞳■帝(■ー■ト?) 「()()()()()()… そのためなら()()でも…   そう…()()でも……!」

 


 

―――電子世界(アストルム)セブンクラウンズ(7人のマスター)プリンセスナイト(サーヴァント)を従え、願望器(聖杯)を奪い合う夢を―――

 


 

■■■  「騎■クン…いつか…必ず…■■■を殺しにきて……」

 

■ウ■  「ああ…!オマエを必ず…■■■やる……!」

 


 

「おはよう。」

 

「うぅ……ア■ス(フィ■)……?」

 

「まだ寝ててもいいわよ、あたしも作業に集中したいし……あんたを混乱させたくないから。

 …でも、あんたはなぜか()()()()()()()()()()みたいだったから…心配ないわね。

 もっと、いっぱいお喋りしたかったけど、今回はこのへんでお別れね。

 ()()は残酷よね。でも、あんたなら乗り越えられる。そう…信じてるわ。

 じゃあ、またね。」

 


 

う~ん。変な夢を見たと思ったら、プリコネってゲームの主人公になっていた…。

夢?じゃないかなっとも思ったけど、夢にしては写実的だし… 

ここは現実だ~って感覚がビンビンするし、前の世界?が妙に懐かしくさえ感じてくる…。

っで、今、ゲームの主人公に成り代わっているということを信じることにしたわけだ。

 

目の前には、原作主人公(岸くん)を「主さま」と慕ってくれるコッコロっていう女の子がいるんだが…、

う~ん、もの凄い罪悪感があるな…勝手に意思を、絆を、存在を奪うってのは…

 

「わたくしは…    …コッコロと申します。」

 

うん、知ってる。でもコッコロが探してるヤツは俺じゃない…

 

…あなたさまのお名前をお聞かせ願えますか?」

 

俺の名前は■■■ ■■。…今、なんて考えた…? 名前はなんだっけ… 

…!? 名前どころか過去の記憶が全くない…!?

 

「ふむ。覚えていない、と。あなたさまのお名前は『ユウキ』さまとアメスさまは仰って…

 

ユウキ…ふむ…デフォルトネーム…FGOの藤丸立香みたいな「主人公」の名前か…

 

「お腹すいた~…お腹すいた~…」

 

テレビで聞き慣れた、女性の声がする…

 

「はい、心得ております。あなたさまがお目覚めになられたら、召し上がっていただこうと、ご飯を炊いておりましたから。」

 

いや、俺じゃねえよ…!? そもそも、性別すら違うよ!?

 

「うわぁい! ありがとうございますありがとうございます! お腹がすい…

 

「……どちらさまでしょうか…?」

 

この子は原作でペコリーヌって呼ばれてた子だ。物語の主要な舞台のランドソルって国?の王女でなんかあって武者修行してたんだけど、国に帰ったときには、別人(覇瞳皇帝)に成り代わられてた、めちゃくちゃ不憫な子…。コッコロさん?にはどう答えようかなぁ… できれば、助けになりたいなぁ…

 

「……ユースティアナ・フォン・アストライア?」

 

「「!!」」

 

あっ…思わず、本物(岸くん)なら知らないはずのことを言ってしまった…

 

「わたしのこと覚えているんですか!?」

 

「ユースティアナってあの…」

 

話が拗れた。 完全に俺のせいだけど。

 

「きゃああっ、助けて~!」

 

「ユースティアナさまのお話はあとにして、まずは魔物を片付けましょう。」

 

「わたしも手伝います! いま助けますよ~そこのひとっ♪」

 

「えっ、誰っ? そこにいるのは……騎士クン……!?」

岸くん(騎士クン)』、その言葉が(ニセモノ)を苦しめる。

「空から落ちてきたあなたさまのことをなぜ知っているのでしょうか…?あとで聞きましょう…

 今からあなたさまに「力」の使い方をお教えします…!

 あなたさまの「力」は仲間を強化する力です。仲間との絆を意識すれば使えるとアメスさまは

 仰ってました。」

 

よし、できた! 仲間との絆か… でも…、それは本物なのだろうか…

 

「わぁっ! いつもより強くなってます! やばいですね☆」

 

えっと…剣の振り方はこうっ、かな… 剣は振れたけど、コレじゃ当たる気がしない…。

 もしかして…両手剣…? アニメとかじゃみんな片手で振ってたから気づかなかった…。

 


 

……ふぅ、無事全部倒せた。ストーリーとかだいたいしか覚えてないけどこんなのだっけ…

 

「ありがとうございます!お陰で助かりました…」

 

「いえいえ、ご無事で何よりでございました。

 あなたはどうして魔物の大群に追われていたのですか?」

 

「その子っていうより、わたしを狙ってたんだと思いますよ。」

 

「それは…」

 

「うぅ…ユウキ…」

 

「あそこで倒れている人がいますよ… えっと…」

 

「名乗っていませんでしたね。わたくしはコッコロと申します。こちらはユウキさまです。

 あの人もあなたさまを知っているのでしょうか…

 

「あっ、わたしも名乗ってなかったよね。わたし、ユイっていいます。わたしが回復魔法を掛けま

 す!」

 

……。ユイちゃん…本物(岸くん)と冒険して…本物()恋に落ちた子だ……。

 

全部、洗いざらい話すなら、今しかないんだ…

でも、怖い。 俺が憑依した誰かであると知ったら…

彼女たちは優しい。 俺を責めることなど絶対にしないだろう。

それでも、怖いんだ…

 

「この方をどうしましょう…あなたさま。」

 

えぇと…。

 

「とりあえず…キャ…このひとを街まで運ぼう!」

 

俺は岸くん(原作主人公)ではないと明かすべきだったのに…

本当のことを伝えるべきだったのに…

 

 …わたくしたちの物語はここから始まるのですね♪」

 

あぁ…始まってしまったんだな…




気が向いたら連載になる。


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バッドエンドのその先へ

とりあえずFGO要員は今のところこいつだけ。

実は原作と現実の人間関係とかが違う影響がすごく出てたり…
原作と真逆のことを言ってるシーンがあったり…





ユウキ   「なぜ此処にいる…! ■■■・■■■■■…! 

       まさか…この世界(アストルム)天体魔術(型月魔術)が実装されているのはおまえが原因か…!!」

 

■■■   「ひどい! 

       この世界(銀河)に来てまでファーストコンタクトでボクをディスられるなんて!」

 


 

「ユイ*1さまはなぜユウキさまのことを知っておられるのでしょうか…?」

 

「わたしたちはトゥインクルウィッシュ*2のみんなとユウキくんの4人でソルの塔の頂上を目指す

 夢をずっと見ていたんです。」

 

「レイ*3さまとヒヨリ*4さまも同じ夢を…?」

 

街に来てトゥインクルウィッシュのギルドで話をすることになったけど、とても気まずい……

()()本物(岸くん)と一緒に冒険していたんだ…

偽物なんかに向けられていい視線じゃない…

 

…ふと思ったが、もやっと冒険の記憶がある…? これは岸くんのものなのか… 

だとすると、俺は本物(岸くん)から思い出まで奪ったのか…

 

「じゃあ!じゃあ! ここにいるのが本物の王女様で、王宮にいるのは偽物なの!?」

 

…!? もうそこまで話が進んでる!? 全く聞いてなかった…

 

「話を聞くかぎり、ユースティアナ、と名乗るのは危険ではないでしょうか…」

 

原作のペコリーヌという偽名は好きだから、口出ししておこう…

 

「じゃあ、お腹ペコペコの『ペコリーヌ』ってのは駄目か…?」

 

「あなたさま…少し酷いのではないでしょうか……」

 

ディスられた! 「それっいいですね♪…

あれっ? そういえば、コッコロが俺に「主さま」って呼び方をしていない…!?

原作(ゲーム)と全部同じということでもなさそうだ……

 

「うぅ~ ユウキ… 「倒れてたあの子が起きましたよっ♪」

 

「あたしはキャル! 魔物をけしかけたのはあたし…! だから…だから… あんたたちの敵よ…!」

 


 

■■■ 「ペ■リー■…なんで…いつもいつも…あたしを…

 


 

■■■ 「あんたっ…■んだら承■しないわよっ!」

 


 

…!? これは…本物(岸くん)の記憶!?

 

ああ…こんなの見せられたら…放っておけないじゃないか…

 

「「待って(ください)!!」」

 

言ってしまった… でも、後悔はしない…それは決して間違ったことじゃないと思ったから…

 

「わたしもよくわからないですけど… あなた(キャルちゃん)は優しい子なんですっ! 

だから…そんな悲しいこと言わないでください…!」

 

そうだ…俺は識っている…  

画面越しでも、借り物の記憶でも、キャルはみんな(美食殿)との日常で最も輝いてたんだって!

 

「たとえ…敵だとしても…信じてる…!」

 

だから、俺は…

 

「どれだけ否定しても、あたしはあんたたちの敵で…「だったら…なぜ泣いてるんですか…!」

 

「そうだ… 泣きながら言っても…説得力なんて…ないじゃないか…!」

 

否定しよう… 荒唐無稽な夢物語(ハッピーエンドのその先)を、俺も見たいから…

 

「うぅ……」

 


 

「行ってしまわれましたね… わたくしも…キャルさま…が優しい子だって…信じたい…です…」

 

「あたしもっ♪」「わっ、わたしも…」「私にも彼女(キャル)が悪い人には思えないんだ。」

 

良かった… みんなもキャルの善性を信じてくれた…

 

「じゃあ、キャルちゃんがいつでもこれるように居場所を作ってあげようよ!」

 

「それっ、いいですね☆」

 

「ギルド管理協会*5なら、何か方法があるかもしれない。

 私からカリンさん*6に相談してみよう…!」

 

居場所を作る、か…

たとえ、俺が偽物だと知られても、優しい彼女たちは居場所を用意してくれるんだろうなあ…

 

俺もできるなら全部ぶちまけたい。

でも、怖いんだ… 糾弾されるのが、同情されるのが、幻滅されるのが…

何よりも、この世界を原作という色眼鏡越しでしか見ていないと思われるのが嫌なんだ…

 


 

シズル   「弟くんが…弟くんが…昔のような曇った目をしてた…」

 

リノ    「お兄ちゃんが…!」

 

ラビリスタ 「大丈夫…彼は強い子だ。自力で立ち上がれるそういう子だ。」

 


 

…俺は識らなかった。 映像(ゲーム)体験(現実)にどれだけの差異があるのかを…

…俺は識ったんだ。  人が誰かのために動ける理由を…

 

だから、あんな…悲しげな顔…俺には堪えられない。

キャルの…みんなの…悲劇なんて見たくない…。

そんな、()()を俺は抱くのは悪いことなのだろうか…。

 

俺は本物(岸くん)には…成れない。 でも…それは、願い(渇望)を諦める理由には…ならない…と思う…。

偽物だと言い出せない小心者の俺でも、大切なものを守るためなら強くなれると思う…。

だから、手が届くヤツは全員救う。 そう決めたんだ。

 

 

ランドソルまで来るとき、見渡す限り若草色の草原が広がっていて…、

遠くには、空色の透き通った大空に巨大な塔が溶け込んでいる…とても幻想的な風景を見た…

 

……本物(岸くん)が見てた光景って、こんなにも儚くて、美しい(脆い)世界(箱庭)だったんだろうか…

だとしたら…守りたくなる気持ちも、少しは分かるのかもしれないな…。

 


 

ユウキ   「■ーリもう少しだ…! ネ■■! キー■を■けてくれ!」

 

ネ■ア   「いきなりどうしたってのよ…」

 

■ー■   「■ん…ぱ■…」

 

ネビ■   「そういうことね、ふんふん?

       確かにここなら修■が■かないかもしれないけども…

       どうなっても、知らないわよ…」

 

*1
岸くんのことが好き。ヒーラー。

*2
ユイ、ヒヨリ、レイが属するギルド。 ランドソルにおいてギルドとは法人のこと。 国家の行政機能もギルドとして運営されているが、地方公共団体が公法人として存在するのを考えれば、別段不自然ではない。 分からない人はフェアリーテイルのギルドを思い浮かべればいい。

*3
このあと「カリンに相談してみよう」とか言うクールな方。剣士。

*4
じゃあ!じゃあ!とか言ってる元気な方。困っている人を放っておけない。拳を使って戦う。

*5
ギルド、即ちこの世界における法人を管理する公的機関。現実世界風に言うならば、お役所の人に相談しよう的なノリ。

*6
ギルド管理協会なるものの手先。 緑の悪魔。 人肉を勧めてきたり、ポルタサンタ(ラスボス召喚)とかトリニティ(核攻撃)したりはしない。







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In This Tiny Chaotic World

 

ホマレ 「君の仕事は~… 

     …漫画の原稿のお手伝いで~す☆

     やり方はちゃんと教えるから、じっくり覚えていって♪」

 

    (ループを重ねるにつれて、少しづつ覚えるのが早くなってるなぁ~♪

     もしかしたら…あと()()()で覇瞳皇帝を倒せるかなぁ~♪)

 

    「今日はありがと~☆ はいこれ、今日の報酬。

     困ったら私を頼ってね。スパイマスター(ウォッチャー)さんっ♪」

 

    (ユウキくんといると つい、からかっちゃうなあ~

     迷惑をかけてるのはお互い様だから、ちょっとくらいは…いいよね☆)

 


 

ホマレ 「もうこれ以上繰り返すのも難しいかなぁ~

     蓄積されたバグを世界はもはや修正しきれないみたい…

     予想外だなあ~ 覇瞳皇帝がこんなに強くなってたなんて…

     もうそろそろ、リスクを負ってでも動かないと、だめっぽい。」

 

    「私がいなくなっても、今のイノリちゃんになら任せられるかな…?

     昔は才能なんてからっきしで、頼りなかったけど…、今じゃ私よりもしっかりしてる…

     

イノリ 「ボス…? そんなところでどうしたんですか?

     なにかあるなら、ちゃんとあたしたちに相談してくださいよ…?」

 

ホマレ 「私がいなくなっても、大丈夫かな?」

 

イノリ 「はぁ…何を言ってるんですか…

     大丈夫じゃないに決まってるじゃないですか…!

     あたしたちはボスの家族(ファミリー)です!

     いなくなるなんて軽々しく言わないでください…!」

 

ホマレ 「ごめ~ん♪ 冗談だよ~☆」

 

イノリ 「…今だけはそれで許してあげます。

     終わったら、きちんと話すのですよ。」

 

    「…お兄さんなら、もう仕事を終えてるはずです。

     早いとこ、戻るといいです。」

 

ホマレ 「いつも甘えちゃってごめん…

     じゃあ…、また後でね…♪」

 

    「ただいま~☆

     君ならもう出来てるよねっ♪」

 


 

アメス 「ここは夢みたいなもので…この説明は要らないわね…

     いちおう補足しておくと、あんたはこの一ヶ月の間、ランドソルで日銭を稼ぎながら、

     コッコロたんとペコリーヌちゃん、トゥインクルウィッシュのみんなでギルドを新しく

     作ったり、たくさんの女の子たちと仲良くなったり…色々あったみたいだけど…」

 

    「えっ、『俺にはそんなことできない』って?

     相変わらず自己評価が低いわね…

     あんたの知る世界が覆るほどの秘密?(ラプラスの箱って言うの?)ってのに関係してるのかしら…?

     あんたがずっと隠し続ける秘密、いずれは話してほしいのだけど…」

 

    「あんたはこの世界のことを誰よりも知っている。

     でもね、その知識は()()なものではないみたい。

     無駄かもしれないけど、よぉく、覚えておきなさい。」

 

    「長話はこれで一区切りにするから、

     あんたは気負わずに人生を満喫しなさい。」

 


 

いや~ 馬車の荷台がこんなに快適だったとは… さすが、ファンタジー世界…

 

一ヶ月の間に色々あって仲良くなったポンコツメイドのスズメさんに頼まれてコッコロと一緒に馬車の護衛をすることになったんだが…

…もしかしなくても、メインストーリーの馬車襲撃イベントだよなぁ~

 

「えへへ。移動しながらの食事になってすみませn…

 

もぐもぐ…

 

このサンドイッチ…コンビニと同じくらい美味しいのでは…コンビニの味、覚えてないけど…

 

この一ヶ月間、原作との違いを調べたりもしたけど…結局、具体的にどこが違うのかは原作がループものである以上、ほぼわからなかった。「ループごとの差」で大抵の違いは説明がつくからな…

強いていうなら、コッコロの性格が違う…原作のような極端な世話焼きじゃない、とか、アメス?が俺が「岸くん(本物)」とは違う?ことを把握してるかもしれない?ってこととか…

 

……右からうにゅっと手が伸びてきて、俺のサンドイッチを奪おうとしている……許さん…!

 

「むぐぅ!?」

 

「「!?」」

 

「……ちっちゃい子が出てきましたね…」 「ちっちゃくない! アタシは…

 

「密航者でしょうか…あなたさま…」

 

うーん。サンドイッチに夢中になりすぎてムイミのこと忘れてた…

 

ムイミは超能力者だ。この世界はムイミの超能力を元に創られたらしい。

だから、色んな勢力に狙われているのだ。

 

「ムイミ…?」

 

「あなたさまの知り合いなのですか?」

 

「おいおいおいっ、なんでこんなところにいるんだっ!?

 ぜんっぜん見かけないから、心配したんだぞ~っ!?

 うんっ?そっちにいるのは…こころちゃん!?」

 

「わっ、わたくし…ですか…」

 

「そうか…オマエは覚えていないんだな…」

 

もうそろそろ…馬車が爆破される頃合いかな…

もう少し、話を聞きたかったけど…

 


 

オクトー 「あちゃ~ 出力をあげすぎたかな…? 馬車が消し炭になっちゃったね~?」

 

マコト  「『あちゃ~』じゃねぇよっ、いくらなんでも、やりすぎだっ!

      いいかっ、自警団(カォン)は殺し屋じゃねぇんだよ…!」

      

オクトー 「悪かったって、わんちゃん。

      連中だって、爆発をぎりぎりで回避したっぽいし、

      こっからが本番だから、手伝ってよ~」

 

マコト  「とにかくっ、自警団(カォン)は手を引かせてもらう…! 

      金輪際、オクトー先輩の頼み事なんて聞かねぇからな!

      自警団(カォン)はついてこいっ、馬車に乗ってた人を救助するぞ…!」

 


 

ヤベェ…強化しなかったら、全員死んでた…

 

獣人に囲まれてる…正直やばい…

原作では姉を名乗る不審者(シズル)妹を名乗る不審者(リノ)が助けに来たんだけど…

この一ヶ月、一度として会ってない!原作ではラビリスタが止めても(ドクターストップを無視して)会いに来るようなヤツだ…。

原作通りに助けには来ないと考えた方が良い…

 

「えっ、えっ! じゅっ、獣人…!?ってことは…動物苑(どうぶつえん)…!

 ど、動物苑(どうぶつえん)うちのギルド(サレンディア救護院)母体(プリンセスナイト)とは犬猿の仲なんです!

 戦争を仕掛けてきたとしたら、盗賊に襲われるよりも、ずっと非常事態ですよ~!?」

 

「オマエらは逃げろっ、あいつらの狙いはアタシだ…」

 

流石に、ムイミを引き渡すわけには如何ないし、どうしよう…

 

「……コッコロ、どうする…!?」

 

「わたくしたちで足止めしてる間に、ムイミさまとスズメさまには逃げてもらいましょう。

 動物苑(どうぶつえん)なら…最悪、捕まっても馬車の護衛ということで見逃してくれるかもしれません…!」

 

それならば切り抜けれるかもしれない。 

……彼処にいるのは、マコト!? マコトとなら交渉できるかもしれない…!

 

「よしっ、それでいこう…! でも、その前にそこにいるマコトと交渉してみる…!」

 

「マコトさまですか… マコトさまなら、話を聞いてくれるとわたくしも思います…!」

 

マコト!

 

「ゆっ、ユウキじゃねぇか!? 今、助ける…!」

 

「どういうことでしょうか…」

 

「オクトーのクソッタレが自警団(カォン)を巻き込みやがった。

 だから安心しろっ、動物苑(どうぶつえん)とプリンセスナイトの間に戦争は起こってねぇ…!」

 

「ふぇ~ よかったですぅ~」

 

「あたしはオクトー先輩*1をふん縛って帰るから… 「ひどい~ 

 …そこの子…ムイミを任せてもいいか? 「オクト~ 会いたk…

 安全なところに逃してやってくれ…!」 

 

「わかっt「弟くん!弟くん!弟くん! 会いたかったよぉ…!」「だから~ボクの宝物*2を返…

 

「お兄ちゃん! 

 一ヶ月間会えなかったけど、前に見かけたときは()()()()に目が曇ってたから、

 ずっと、心配してたんですよ!」

 

げぇっ、姉を名乗る不審者(シズル)妹を名乗る不審者(リノ)…!」 

 

「声に出てるよっ、お兄ちゃん!」 「帰るぞっ、オクトー先輩…!

 

「弟くんが()()()()()()()()()()()()()だったなぁ~」「引っ張らないで~、マコトちゃん~

 

「お姉ちゃん、カタルシスに耽ってないでムイミちゃんを回収しますよっ!」

 

「ラジャ~♪ でもリノちゃん、『カタルシス』じゃなくて『ノスタルジー』だと思うぞっ♪」

 

「もしかして、晶がアタシを助けに!?」

 

「はい! マスター(ラビリスタ/晶)に頼まれて、助けに来ましたっ!」

 

「じゃあ、アタシはあいつらについていくから、()()()に会ったらよろしく伝えといてくれっ!」

 

…行ってしまった。 ……ロマンって誰?」

 

「あれっ、ロマンお兄さまのこと、初めて会ったときにお話ししませんでしたか…?」

 

…あのときは混乱してたから全く聞いてなかったけど、原作にはこんなヤツはいなかった…

コッコロはこの世界において特別なポジションだから、()がいるのはおかしい…

 

そういえば…ついこの間、変な夢を見たような…

プリコネに別のソシャゲ(FGO)の内容が混ざったような夢だったはずだ。

今にして考えると、何か原因があるような…気もする…。

 

まず思いつくのは、あの夢がアメスが見せた回想だった可能性だ。

でも、夢でアメスが記憶を失った主人公のために過去の記憶を再生してるから、

多少の脚色はあれど夢は事実(原作)に基づいて構成されているはずで…

原作とかけ離れた内容だったから、そういう夢を見ることもあるだろうと気にならなかったけど…

 

…ロマン  流石に、別作品(FGO)のキャラがこの世界にいるとは思えないが…

 

…情報が足りない。 また今度、考えよう…。

*1
現実におけるムイミの親友。 この世界の住民(プレイヤー)現実(現代社会)のことを忘れている。 原作ではオクトーも例外ではなかったが…?

*2
オクトーがムイミに譲った私物のこと。 この世界では渡した事実がないことになってるので、盗品扱い。



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希望の傍ら、輝ける星

156:名無しのプ二ンセスナイト

ウォッチャーって何?

 

157:名無しのプ二ンセスナイト

ナニソレ。新しいセブンクラウンズのメンバーかナニカ?

 

158:名無しのプ二ンセスナイト

おまえら、知ってて書いてるだろww

いいか…、ウォッチャー(笑)様はなぁ、人の心を読め、ウィズダムと敵対し、超能力者と戦う、

自動的な存在なんだよwww

 

159:名無しのプ二ンセスナイト 

何そのブギーポップ

普通に知りたいから誰かおせーて

 

160:名無しのプ二ンセスナイト

>>159

こ ん な と こ ろ で 聞 く な


 

ホマレ 「へぇ~ 覇瞳皇帝がループごとに強くなるのは、こんなカラクリだったんだ~

     こんな負荷がかかる方法、私には思いつかなかったなぁ~♪」

 

    「まだ少し余裕はあるかな…♪

     でも、ユウキくんがせっかく思いついた最終手段(エーテライト)は使えなくなっちゃったなあ~

     まあ、仕方ないか☆」

 


 

「カリンさんに相談してきたけど、新しいギルドを作ってはどうか、と言われたんだ。

 ギルドの目的が大きく変わるなら、

 周囲に知ってもらうためにも、そちらの方が良い、と。」

 

流石、レイさん仕事が早い。

 

「わたしはいいと思うな♪」

 

「本当によろしいのでしょうか…」

 

「もちろん!」

 

ギルドマスターのヒヨリさんが言うなら、大丈夫なのだろう。

 

「決まりだね。 ギルドマスターは全員と接点のあるユウキくんでいいかい?

 ユイ…は聞くまでもないとして、他の人は問題ないかな?」

 

「賛成!」

 

「わたくしもいいと思います。」

 

「ユウキくんなら安心して任せられます…!」

 

岸くん(本物)への信頼が厚すぎる…

 

「分かった。俺がなるよ。」

 

「じゃあ後はギルド名だね!」

 

トゥインクルウィッシュには『夜明けの星』という、

テイルズオブヴェスペリアのオマージュっぽい別名(凛々の明星)*1があったはずだ…。

 

「『旅人の灯(シリウスライト)』はどうかな? 

 昔の旅人は、夜空で最も明るい星(一等星)を目印にして旅をしていたそうだ。

 その星の名は「シリウス」って言ったらしい。

 夜空で最も明るい星の光でシリウスライト。

 だから、キャル…泣いていたあの子がいつでも来れる場所に相応しいと思う。」

 

「すっごくいいギルド名だと思います☆」

 

「あなたさま…まともなギルド名を思いつけるのですね…」

 

失礼な…!

 

「いいと思うな♪」

 

「異議なし! レイちゃんもそれでいいよね!?」

 

「私も異議はない。 今日中に私が『シリウスライト』で申請しておこう。」

 


 

馬車を爆破され、ムイミと別れたあと、自警団(カォン)の拠点に案内された。

事後処理の間、此処にいてほしいそうだ。

 

「みらくる、まほりん、くるりんぱ☆」

 

そう言って回復魔法を掛けてくるのはマホさんだ。本人はマホ姫と呼んでほしいと言っていたが…。頭の中に独特な世界観を構築しているが、これでも他の人と比べたらマシな方だ…。

というか、一ヶ月の間に原作に登場した(この言い方はあまり好きではないが)キャラの大半と仲良くなれた俺は凄いと思う。どうして仲良くなれたのかは今でも不思議だが…。

 

「うん…! これでだいたい元通りに回復しましたやろか~」

 

正直、体調不良どころか服まで回復できる回復魔法の万能性にはちょっと引く。

もしかしたら、二つの魔法を同時に掛けてるのかもしれないが…

いいや、マホさんは二回に一回は魔法を失敗するような人だ。絶対にありえない。

 

「ありがとう、マホ姫。」 マホさんって呼ぼうとしたがやめた。いけずは良くない…

 

「お礼なんて良ぇんよ、うちの()()()()()はん。

 今回の事件はうちらにも責任あるさかいに。」

 

『ロマン』って名前を聞いた後に、『理想の王子』なんて言葉を聞くと寒気がする…。

 

自警団(カォン)には、悪気がなかったようですし、あまり気に病まないでくださいまし。」

 

「ええ、お嬢様(サレン)も事情を知ったら、問題にはしないと思います。」

 

「せやけど~埋め合わせはさせとおくれやす。

 

これから、賠償の話をするみたいだ…。

賠償の件は後でコッコロから聞くとして、次の襲撃について考えよう…

 

 

まずは俺の知るこの世界の前提を整理しておこう。今後の戦略を考える上で参考になるはずだ。

 

まず、この世界はVRゲームの中で聖杯戦争みたいにソルの塔の頂上にたどり着いた一人が願いを叶えることができ、その権利をめぐって七冠(セブンクラウンズ)の一人、千里真那(覇瞳皇帝(カイザーインサイト))と岸くんを含めたトゥインクルウィッシュとの戦いが起こった。

覇瞳皇帝(カイザーインサイト)に願いを叶えさせないため、ユイの願い「岸くんやみんなとアストルムでずっと冒険していたい」を叶えた結果、俺達はゲームからログアウトできなくなり、ユイか岸くん(原作主人公)が死ぬたびに時間が巻き戻るようになった。そしてプレイヤーは此処がゲームだということを忘れており、世界に対して疑問を持つと世界に修正を受ける。だがムイミとか一部の人は記憶の改竄を免れることができている。やっぱ願望器(聖杯)ってクソだな!

 

次に七冠(セブンクラウンズ)はこのVRゲームの製作者(アストルムの創造主)で一人一人異なる特殊能力を持っており、自身の権能の一部を分け与えた人をプリンセスナイトという。ちなみに七冠(セブンクラウンズ)は能力に因んだ厨二的な別名を持ってたりする。

第一部のラスボス、覇瞳皇帝(カイザーインサイト)七冠(セブンクラウンズ)の一員でありキャル…がプリンセスナイトだ…。

そして、俺はラビリスタ(模索路晶)さんのプリンセスナイトだ。ラビリスタ(模索路晶)さんの能力はオブジェクトの改竄つまり、地形とかをいじる能力だが、プリンセスナイトの俺の能力は何故か他者の強化になっている…。キャルも覇瞳皇帝(カイザーインサイト)とは関係ない魔物を操る能力だったけど…。

そしてもうすぐ襲撃してくると思われるクリスティーナさんは七冠(セブンクラウンズ)誓約女君(レジーナゲッシュ)と呼ばれてた人だ。クリスティーナさんの乱数聖域(ナンバーズアヴァロン)は周囲の情報を計算し、確率を操作することでどんな攻撃も当て、どんな攻撃も当たらないという、謂わばリアルTASを実現している。

 

他に重要なことといえば…七冠(セブンクラウンズ)も今の状況は想定外であり、現実での記憶の大半を失ったりしてるとか、か…。

 

原作とどこまでが同じかもわからないし、今の所はだいたいこれくらいでいいか…。

 

この国は過去に獣人と人族の対立があったという設定があり、そのせいで国家主体のギルド「プリンセスナイト」と獣人の自治グループの動物苑(どうぶつえん)の対立は()()()は激しい。今回の馬車の襲撃は動物苑(どうぶつえん)が国に喧嘩を売った形になるのだ。

だから、「プリンセスナイト」の傘下ギルド、王宮騎士団(ナイトメア)の一人、戦闘狂のクリスティーナさんによる、さっきの出来事を口実とした自警団(カォン)への襲撃は原作と同じように起こると考えた方がいい。

これだけなら、重大事件で俺達にはどうしようもないように思えるが…

結論から言うと俺達は時間稼ぎさえすればいい。

実は今回の事件に関わった王宮騎士団(ナイトメア)自警団(カォン)、サレンディア救護院はとても仲がよい(ズブズブだ)

対立しているのはもっと上層部、それもモブ貴族なのだ。

実際、獣人への報復を目的に襲撃した王宮騎士団(ナイトメア)には獣人のマツリちゃんが獣人であることを隠して入団しており、他の団員も知ってて何も言わないのだ。

それにお互いの所属するメンバーどうしも交流がある。

 

どうあがいてもこの襲撃はお遊びを超えることはないのだ。

だからといって、一日に二度も襲撃を受けるのは流石に癪に障る。 

さっきいい考えを思いついたので…

 

「王子はん、どうかしなはったんどす?」

 

「戦闘になりそうだから、トラップの準備をしてる…。」

 

「えっ、ど、どういうことですか?」「あなたさま…わたくしも手伝います。」

 

「索敵魔法をしてみたんやけど、ギルドハウスを取り囲まれているんどすえ。

 真っ先に気づくなんて、さすが理想の王子はん…。」

 

ドヤッ。 ミソギちゃん(9才)に頭下げて教えてもらったトラップが火を吹くぜ!」

 

「ちょっ、ちょっと待て! ミソギちゃん(9才)っt… マコトがナニカ言っているが無視だ。

 

これでもキョウカちゃん(8才)に高校の宿題を教えてもらおうとした原作主人公(岸くん)よりはましだ!

 

「なんなのさ~」 ウチナンチューな女の子のカオリもナニカ言っているが無視だ。

 

そうこうしている間にトラップを仕掛け終わった。

 


 

壁を破壊してクリスティーナさんが入ってきたので早速トラップを発動する。

 

空中に小麦粉?が撒き散らされる。これは別に粉塵爆発をおこすためではない。

クリスティーナさんの権能の乱数聖域(ナンバーズアヴァロン)の性能は、クリスティーナさん自身の処理能力に依存する。なので、小麦粉?で情報量を増大させることで負荷をかけ、処理能力を飽和させ、乱数聖域(ナンバーズアヴァロン)を発動できないようにしたのだ。

乱数聖域(ナンバーズアヴァロン)を無力化したので、後は大勢で囲んでサンドバッグにするだけだ。

レイに剣を教わったので俺も攻撃に参加する。

 

「コッコロ…! 支援を任せた…! マコト、カオリは一緒に突っ込むぞ! 

 マホ姫は魔法で攻撃して…!」

 

もちろん、強化もしっかりしておく…。

 

乱数聖域(ナンバーズアヴァロン)を無力化するとはなかなかやるではないか!

 


 

クリスティーナさんを壁際まで追い詰めたとき、

 

「そこまで! 双方武器を収めなさい!」

 

と言ってきて原作主人公(岸くん)の幼馴染のサレンさんが入ってきた。もう少しで勝てたのに…残念だ。

 

…サレンさんとクリスティーナさんの話が終わったみたいだ…。

「アデュー…♪」 そう言ってクリスティーナさんは帰っていった。

 

 

…最近は、岸くんのことをあまり考えないようにしている。卑怯な言い訳だが、(キャラ)を色眼鏡で見そうになるからだ。それに、クリスティーナさんの声がやけに高い異常な世界だ。原作と岸くん(本物)との関係性が異なる可能性は大いにある。頼りの原作知識に惑わされては本末転倒だ。

あと、岸くんの演技は下種な心を見透かされそうだからしない。そのせいか、字面は悪いが何人もの女の子とも仲良くなれた。

 

…隣でコッコロが女の子の友達が多いことに文句を言っている。

成り行きだったんだ…仕方がない…。

 

 

こんな言い訳をしても罪悪感からは逃げれないよな…

 

そもそも、どうして俺はこんな言い訳じみたモノローグをしなくちゃいけないんだ…

目が覚めたら、記憶がなくて…別人になって…しかも、異世界で…

それで…みんなは俺に本物(岸くん)を期待するから、否が応でも本物(岸くん)と向き合わなくちゃならない…

でも…「俺は悪くない」って胸張って言える程、俺は強くないんだ…

 


 

覇瞳皇帝(ビースト■/R) 「キャル…。あなたが裏切れば私はユウキを殺す。分かっているわよね。」

 

キャル   「分かっています…陛下…。」

 

覇瞳皇帝(ビースト■/R) 「まさか…キャルの記憶がリセットされなくなるとは思わなかったわ…。

      まぁ、目障りな連中も大勢いたけど、

      切り札の天体魔術をこの大陸の魔力を全て集め使った前回ですら、

      (ビースト)には届かなかった……。

      だから…、私が与えたプリンセスナイトの権能しか取り柄のないキャルなんて、

      脅威でもなんでもない…。 そうよね…キャル。」

 

キャル   「はい、陛下……。」

 

覇瞳皇帝(ビースト■/R) 「漸く、私の悲願が実現する…。

      今回のループ(■■■■■回目)さえ()()()()()次のループ(■■■■■回目)でこの世界は完成し、

      ピトス(パンドラの匣)は開かれ、この世界(虚構)は『現実』になる…。」

 


 

ビースト■/R

 

真名     千■真■

原罪     『愛■』

固有スキル  ネガ・■■■■ス

 

功績 『英■なき世界で■■■■を成立させ、■■■なき世界に■■■■として顕■する。』

 

愛  『人類史を■■■■■新世界で■■■■、■■へ向けられる愛を■■する。』

*1
なお、プリコネのユイとテイルズオブヴェスペリアのエステルとは、メインヒロインかつ、ピンク髪で回復魔法が得意なプリンセスであり、善意の行動が裏目に出る展開があるという共通点がある。




突如として出てきたプリヤ要素に、頑張ってユガを廻す覇瞳皇帝さん…


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ルナレクイエム

原作よりも規模が大きくなってます。


 

「―――ルナのおともだちになってくれる?」

 


 

「ハナ、あれがシリウス、夜空で一番明るい星だ。」

 

「わ~! すご~い!

 どうやって、動かすの?」

 

「一から、手順を説明しようか。

 これは赤道儀って呼ばれるタイプの望遠鏡で、

 まずは、この極軸を北極星…あの星に合わせる…。

 …と、これで、こうやって見たい星の方向に望遠鏡を向ければ見える。

 あとは、mimiのアプリで星の方角が分かるから、見たい星があればそれで調べるといい。」

 

「えっと… これを…、こうして…♪」

 

「もう、望遠鏡の動かし方はわかるね?

 何か質問があればいつでも聞くといい。」

 

「うん、わかった!」

 

「ハカセは天体観測が趣味だよな? どういう切っ掛けでハマったんだ?」

 

「ふむ、それは私が学生だった頃に、教授が蘊蓄(うんちく)を説いてくれたのだよ。

 私が『世界的な危機の予測、制御』の専門家なのは、君も知っているだろう。

 当時から目指していたんだが、教授にはまずは危機予測の歴史を知るべきだと言われた。

 それから、何時間もの歴史の講義が始まって、最終的には数十人の学生が集まったんだが…」

 

「…おっと、話が逸れたね。

 教授の語った内容を要約するとこうなる。

 『占星術とは古代の学者が危機を予測するために用いた統計の一種だ』、

 『星の運行と過去の事件を照らし合わせて、将来に発生する問題を予測していた』、とね。

 

「例えば、『日の出直前にシリウスが昇るとナイル川が氾濫する』とかが有名だね。

 他にも、エヌマ・アヌ・エンリルの訳本の一つ、『Babylonian planetary omens』によると、

 『金星が月に近づき、月食を起こすと、アッカド王が死ぬ』というのもある。」

 

「…おや、納得いかないという顔をしているね。

 『天文学と占星術を一緒くたにしていいのか』と、言いたいんだろう?

 だが、当時は占星術と天文学との間に差異はなかったんだ。」

 

「いや、そうじゃなくて…

 その本、オレも由仁姉と読んだけど、どうして内容覚えてるんだよ…

 金星の記述だけでも似たようなのが数千くらいあっただろ…」

 

「君が来るまで、専門の仕事だけでは食っていけなかったからね。

 さっき言った、エヌマ・アヌ・エンリル…EAEの翻訳の仕事をしていたんだ。」

 

「さて…、続きに入ろう。 …もちろん、批判もあった。 

 当時の人々が『人の生死を星から知ることはできない』と、否定した記録も残っている。

 例えば、紀元2世紀から3世紀に活躍したバルダイサンが著した『諸国の法の書』では、

 星の配置で人々の運命や振る舞いを決定できないと、繰り返し示されている。」

 

「だが、古代の学者の占星術による…星の運行から未来を予測するという試みは、

 今の危機管理の基礎となったんだ。 だから、私は先人に倣って星を見るのだよ。

 過去の学者たちの功績を忘れないためにもね。

 まあ、浪漫を追いかけるのは科学者の義務という考えもあるがね。」

 

「おじさん、すばるって銀河?が見たい…」

 

「おっと…、今のアプリではプレアデス星団って名前で載ってるから、それに合わせるといい。」

 

「わかった♪」

 

「そうだ、君は教授の孫娘さん(真行寺由仁)とは知己みたいだね。

 彼女さえ良ければ、この研究所に連れてくるといい。

 EAEの研究資料を見せてあげるよ。」

 


 

サレンさんが騒動を収めた後、俺とサレンさんはコッコロとスズメさんを先に帰らせ、事後処理を済ませていた。実を言うと俺は今、サレンディア救護院に滞在している。

 

シリウスライトのギルドハウスは、トゥインクルウィッシュのギルドハウスをそのまま使っているので、男女が同じ部屋に寝ることになる。それは不味いということで親切なギルドの職員であるカリンさんは新しいギルドハウスを探してくれるそうだが、それまでの間、事情を知ったサレンさんが頼み事を聞く代わりに部屋を用意してくれる事になったのだ。今日の馬車の護衛もその一環だ。

 

男女がどうのこうの言っておきながら、同じ部屋にはコッコロも泊まっている。これは、サレンさんの配慮によるものだ。原作と違い、岸くんとコッコロとの主従関係がないので、その影響が俺に対する依存という形で現れていた。あんなに大人びていても11才の子供なのだ。そして、別々のところに泊まることになって不安を露わにするコッコロを見かねたサレンさんは、俺とコッコロを同じ部屋に滞在させることにしたのだ。なので、俺はサレンさんに頭が上がらない。

 

ペコリーヌはと言うと、普段はギルドハウスに泊まっているが、今日は事情があってサレンディア救護院で泊まることになった。

 

その事情を語るにはあの出会いを振り返らねばなるまいだろう…。

 


 

あれは半月ほど前だった。

 

ルーセント学院で勉強をした後、呼びだされた俺は悪魔偽王国軍(ディアボロス)というギルドから依頼を受けたのだ。

 

悪魔偽王国軍(ディアボロス)のメンバーは吸血鬼のイリヤさん、喋るドクロの父親を持つ霊媒師のシノブさん、プリンが好物の幽霊のミヤコ(プリンにしてやるの!)と双子の魔族のヨリ、アカリの5人である。

イリヤさんは原作では魔力不足で子供の姿だったが、この世界ではずっと大人の姿である。

原作では割とポンポン大人に戻っていたので、今までは疑問には思っていなかった。

でも今は、冤罪だと思うが…、何故かロマンってやつが関係しているように思えてくるのだ。

 

話を戻すと、洋館に一人で住む、死霊術師の女の子のことを聞いたイリヤさんが、

「わらわは女の子と仲良くする才能のあるお主に頼みたいのじゃ!」

…と、心配して調査を頼んできたのだ。当のイリヤさんは眷属にすると言っていたが…。

 

というわけで調査を始めた。死霊術師の女の子は()()ちゃん、魔物に襲われて死んだ両親を死霊術で現世に繋ぎ止めているそうだ。周辺住民への聴き込みによると、ルナちゃんはその能力によって怖がられており、一人で住んでいることが分かった。幼い子供を一人で住まわせることに抵抗はなかったのか…

悪魔偽王国軍(ディアボロス)のメンバーだって、曲者ぞろいだ。ルナちゃんが死霊術師だろうと、なんであろうと、俺にとっては気にならない。

 

取り敢えず、シノブさんを連れて会いに行った。

会いに行くと、ルナちゃんは「おともだちがほしい」と話してくれたので、シノブさんと俺がお友達になろうとしたら、殺されそうになった。

理由は「死んだらずっと一緒」になれるかららしい。

この時、原作にもルナちゃんがいたことを思い出した。

何故、この時までずっと忘れていたのだろうか…? 今でも不思議に思っている。

そのあと、シノブさんの父親が説教をして、殺さなくとも友達になれると理解したルナちゃんと後日、一緒に街に遊びに行く約束をしたのだ。

因みにその後、ルナちゃんをずっと心配していたお婆さんに会って、お礼をされた。お婆さんが毎日通って世話をしてたらしい。魔物も出るのにどうやって通ってたんだ…?

 

約束通り、ルナちゃんと街に行く最中だった俺とシノブさんは、「おいっす~☆」っと、通りがかったペコリーヌに呼び止められたのだ。

俺がルナちゃんの事情をぼかして説明すると、事情を察したペコリーヌはその境遇にシンパシーでも感じたのか、ルナちゃんに自身の身の上話をし始めたのだ。はじめはルナちゃんも驚いていたが、ルナちゃんも自身と似ている、ということであっと言う間に仲良くなった。

そうして、意気投合したルナちゃんとペコリーヌは暇なときに一緒に遊ぶ仲になったのだ。

 

その後、魔物が多いところにルナちゃんが一人で住むのは危ないと、イリヤさんが言ったので、ルナちゃんはサレンディア救護院に滞在し、ルナちゃんが住んでいた屋敷の管理は悪魔偽王国軍(ディアボロス)がするということになったのだ。

俺はその時、サレンディア救護院との仲介をしていたが、問題になると思われたルナちゃんが連れている両親の霊は、サレンさんがあっさり一緒にいる許可を出したので、俺はそっと胸をなでおろしたのだ…。

 

そして、今日はペコリーヌがルナちゃんの要望で泊まりに来る日なのだ。

 


 

事後処理に一区切りをつけ、サレンディア救護院に帰った俺達は…子供たちに迎えられている。

サレンディア救護院は事情のある子供たちを保護する組織である。

 

「ただいま~♪ 遅くなったわね~」「ただいま~」

 

「お、お帰りなさいぃ…、ママ・サレンにユウキお兄ちゃん!」

 

そう答えたのはクルミちゃんだ。

親がロストという、存在するはずの人間が現実には存在していないという現象によって孤児になってしまったのだ。俺はプレイヤーがこの世界に閉じ込められたときに辻褄が合わせができなかったのではないかと考えている。この世界ではクルミちゃんの親なんて、もとから存在しない可能性の方が高いのだ。

 

「お帰り!」

 

そう言ったのは、アヤネちゃん。「ぷうきち」というハンマーの相棒がいる。アヤネちゃんによると自我があるらしく、ぷうきちの言葉をアヤネちゃんが腹話術みたいに喋っているらしい。

こちらには親がいるけど、親に対して違和感を感じるという理由で保護されている。俺としては、世界の辻褄合わせによって親があてがわれたことに、アヤネちゃんは無意識的に気づいたのだと思っている。

 

そう、この二人はレジェンド・オブ・アストルムというゲームを遊んでいたプレイヤーがゲームに閉じ込められる、原作では「ミネルヴァの懲役」と呼ばれる事件において最も被害を受けた人達なのだ。俺はこの子達を一刻も早く本当の親と再会させてやりたいと思っている。

 

だから…俺は必ずこの事件を解決しなければならない。本物の岸くん(原作主人公)に代わって…

 

「おいっす~☆」

 

「おかえりなさいませ…あなたさま…。」

 

「おにいさんだ! おかえりなさい!」

 

ルナちゃんは自宅から大事そうに持ってきた絵本をペコリーヌとコッコロの三人で一緒に見ながら返事をしてくれた。ルナちゃんはここに来て数日だけどあっと言う間に他の子と仲良くなった。どうやら、両親の霊はぷうきちと同じ扱いになったようだ。

 

俺がロマンがFGOのアイツではないかと若干疑っているのはこの絵本が原因だ。どうやら、その絵本は一族に伝わるものらしく、ルナちゃんの名前はそこに登場する「ルナの塔」からとってそうだ。因みにルナの塔は実在し、コッコロに託宣されたアメスの指示に従って、俺は毎日違う友達(女の子)を連れて岸くん?の記憶を取りに行っている…。

 

俺はこの世界の文字が読めない。他にも地理や魔法を学ぶために、ルーセント学院に毎日通っている。なので、俺は字を読む練習としてルナちゃんに絵本を読むのを手助けしてもらったのだ。

 

ルナちゃんと読んだ絵本の内容は、昔、星の上を飛んでいた大地で神々が争っており、最後に生き残った二柱の神がルナの塔とソルの塔を大地ごと星に刺して、大地を星に縫い付けたという内容だ。よくある創世神話である。この世界がゲームに閉じ込められた時に、前半はゲームに閉じ込められる前、プリコネの第一作の話だとは分かったが、最初は後半部はなんらかの比喩表現ではないかと思っていた。現にソルの塔はランドソルの上空に()()()()()()ので情景描写は矛盾している。

 

だが、fateで似た設定のロンゴミニアドってやつがあったなあと思った。これには原典(元ネタ)があり、アーサー王伝説に出てくる『聖槍』(勇者が持ってそうな槍)だが、後世の人間(fateの作者)によって、世界を縫い付けるとか、世界の果てにある塔とか香ばしい設定(厨二の精神)が盛られたのである。そう、俺には後半が隠喩ではなく直喩である可能性が頭を過ったのだ。何しろ、プリコネ世界のマスコミは、有名人に覇瞳皇帝(カイザーインサイト)とか跳躍王(キングリープ)とか、『ブギーポップは笑わない』に出てきそうな痛ましい異名をつけるのだ。原作だけでは説明できないイレギュラーがある以上、厨二要素マシマシな物体がある可能性は否定はできないだろう。

 

さて、型月(fate)の世界には織物(テクスチャー)という概念がある。織物(テクスチャー)とは、とある魔術の禁書目録における位相に近い概念である。型月(fate)時空において、世界とはまっさらな星の上に貼り付けた(縫い付けた)織物(テクスチャー)のようなものであり、人類の住む世界、即ち人理は幻想生物の住む古い世界の上に更に貼り付けた(縫い付けた)ものなのだ。つまり、我々が存在する世界とは地球というキャンパスにいくつものレイヤーを重ねたものであるという考え方である。

 

星を現実、大地をアストルムに置き換えると、後半の内容は、ゲームが(閉じ込められた人にとっての)現実になった…と、解釈できるのでは?と、俺は思ったのだ。

 

ロマンがFGOのロマニ・アーキマンだと一瞬、思ったのはこれ(厨二)が頭によぎったのと、ロマニ・アーキマンなら他の世界に存在しても可笑しくない…と思ったからだ。

他にも、プリコネはfate(厨二)の影響を受けている節もあったのでそういう思考に繋ったのだろう…。

まぁ多分、人違いだとは思うが…

 

「ユウキ…、大丈夫? さっきからずっと考え込んでるようだけど…」

 

サレンさんを心配させてしまったようだ。

 

「ああ、今日のことで気になることがあって…」

 

「今日の護衛の失敗のことなら気にしなくていいわよ。」

 

「そのことじゃないんだ。この世界の謎について少し考えてて…」

 

「ふぅん。 相談できることならあたしに相談してよね。

 ユウキは危ないことを一人で抱えこもうとするから、あたしは心配なのよ。」

 

「…もちろん、分かってる。」

 

「なら、いいけど…。」

 

「お嬢様~お食事は必要ですか~?」

 

「そうね…用意してくれるかしら。」

 

バン!

 

俺が仕掛けた警備用のトラップが発動した…!?

 

「どうしたの!?」

 

「警備用のトラップになにかが引っ掛かったようだ。

 ちょっと様子を見てくる…!」

 

「危ないですよ! ユウキくん…!

 窓の外にシャドウが()()()はいます…!」

 

ペコリーヌは窓の外を見ながらそう言った。

今日、色々あったので完全に忘れてたが、原作でも同じ襲撃があったことを今思い出した。

でも多分、原作はこんな数はいなかったと思う。

 

シャドウとは人の姿に化ける謎の魔物である。

基本的に無害だが襲われることもあるらしい。

というか、今がそうだ。

謎と呼ばれている原因はシャドウが生き物ではないからだ。

切りつけても血は流れず、生命活動を行わない。

原作知識によると、魂の欠片や記憶の断片から生まれでたものらしい。

シャドウは世界にとってはバグなので何れは修正され消えるが、俺達には喫緊の課題である。

シャドウが消えるまで、耐えられる保証はどこにもないのだ。

 

「う~ん。 これは不味いわね…。

 スズメ、子供を此処にみんな集めてきて…!

 街に逃げるわよ!」

 

「わっ、わかりました、お嬢様…!」

 

「ペコリーヌ、コッコロ、戦う準備をしてくれ!」

 

「はい!」 「承知しました…。」

 

「おにいさん、ルナにも手伝わせて…!」

 

「わ、私はお姉さんだからみんなを守らないと!」

 

ルナちゃんとアヤネちゃんなら俺が強化すれば戦えるだろう…。

 

「わかった…。手伝ってくれっ!」

 

「本当にいいの…!?」

 

「俺が強化すれば問題ない。」

 

「ユウキがそう言うのなら…いいわよ。

 それでも、この数のシャドウを相手にするには、人数が足りないわ…。

 だから、逃げることだけに専念しましょう…!」

 

「決まりだな…!」

 


 

くっ…シャドウがどうしてこんなにいるんだ…!

軽く100体以上は倒してるよな!

 

「ま、前からも来てますよ~!」

 

囲まれた!!

 

「前方の敵はわたしが倒します! 全力全開☆ プリンセス ストライク!」

 

「お姉さんの私が頑張らないとね! ぷうきち~ フルスイング!」

 

よし! ペコリーヌとアヤネちゃんが倒してくれたようだ!

 

「う、うわあ~!?」 「スズネ、危ない!」

 

スズメさんに何時の間にか近づいたシャドウをサレンさんがバッサバッサと斬ってゆく。

流石は王宮騎士団(ナイトメア)の元副団長だ。

 

「治療します…!」 「だ、大丈夫です~!」

 

「おにいさん!

 このシャドウ、操られてるだけじゃなくて、おにいさんに惹かれてるようなかんじがする!」

 

どういうことだ…? シャドウは俺の能力に惹かれてるのか?

操ってるのは、原作知識から推測するに、覇瞳皇帝(カイザーインサイト)かキャルなんだろうが…

原作でも特定の人物を狙う描写があったが… …ヤバい!

 

「ルナちゃん、危ない!」 

 

そう言いながら、ペコリーヌがルナちゃんに近づいたシャドウを一刀両断にした。

ペコリーヌとルナちゃんに怪我がなくてよかった…

 

…戦闘中でも考え込んでしまうのは俺の悪い癖だな。

 

「街が見えたわよ!」

 

こうして街に着いた俺達は王宮騎士団(ナイトメア)に救いを求めたのだった。

 


 

アメス   「はい、お疲れ様。」

 

      「信じているとは言ったけれど…、

       あんたのことを心配していないわけでないのよ…。

       今日一日大変だったみたいだけど、

       まぁ、切り抜けることができたみたいで良かったわ。」

 

      「『ロマン』、この名前をあんたは知らなかったみたいだけど、

       『ムイミ』ちゃんと同じくらい…

       いえ、それ以上にこの世界の成り立ちに関わってくる人よ。」

 

      「あんたは初めて『ロマン』に会ったとき、とても動揺していたわね。

       あたしは覇瞳皇帝(カイザーインサイト)との決戦の時まで、

       あんたが動揺した理由が理解できなかったけど。」

 

      「…あんたが何故あんなことを知っているのかはあたしも晶も聞かないわ。

       だから、安心しなさい。あたしたちはあんたが何者であれ味方よ。」

 


 

「あのとき、おにいさんはどうして…ルナが殺そうとしても逃げなかったの?」

 

「ルナちゃんのことを心配する人に頼まれたから。」

 

「それだけ? 本当のことを教えて?」

 

「…俺が逃げれば、ルナちゃんはあの家で一人ぼっちになると思ったから。」

 

「そっか…おにいさんは一人ぼっちなんだね…」

 




そういえば、ロンゴミニアドってロンギヌスと同一視されることがあるみたいですね。今の所は関係ないですけど。


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約束された破局

??? 「それでも、アナタは私の子供よ。」

 

ユ■キ 「本当に…!?」

 

??? 「ああ、本当さ…!」

 


 

??? 「へぇ、そんなことが起こっているのか… 後は大人達に任せておけ…!」

 

??? 「相談してくれてありがとう…。 アナタは優しい子ね。」

 


 

ユ■キ 「オレ(偽物)があんなこと言わなければ良かったんだ…!

     オレがいなければ(本■のユ■キなら)…、オレが上手に立ち回れてたら…、こうはならなかったのに…!」

 

静■(シ■ル)  「…」

 

璃■(■ノ)  「泣かないで… お兄ちゃん……」

 


 

ネネカ   「晶、彼に記憶を返さなくていいのですか…?

       おそらく、固有能力のことさえ覚えていませんよ、彼。」

 

ラビリスタ 「今の少年に記憶を返すわけにはいかないなぁ…

       これはアタシにできる数少ないことだからさ…

       でも、似々花(ネネカ)が少年を心配するのは意外だな~」

 

ネネカ   「私に、野望を諦めさせた彼には、

       このようなところで立ち止まってほしくはありませんから。」

       

ラビリスタ 「相変わらず、素直じゃないねぇ。 マサキにもそういう()()を…

 

ネネカ   「何を言っているんですか…晶。

       私とマサキは()()ではありません。

       いくら貴方でも怒りますよ…。」

 

ラビリスタ 「ごめんって、似々花(ネネカ)。」

 


 

俺は先日の事件を受け、王宮騎士団(ナイトメア)自警団(カォン)、サレンディア救護院、シリウスライトの四者会談に出席することになった。

 

「うぅ、この格好は恥ずかしいな…。」

 

そう言うのは、王宮騎士団(ナイトメア)のギルドマスターのジュンさんだ。

基本、どんなときでも鎧の姿をしているが、会談において、鎧では失礼だと俺が話したので、鎧は外して出席している。

そのときに、イベント(外伝)で鎧が金属に寄生する魔物に乗っ取られてたことを思い出したので、金属に寄生する魔物のことを伝えておいた。

それを聞いたジュンさんが一昨日、王宮騎士団(ナイトメア)の鎧などを検査したところ、王宮騎士団(ナイトメア)の鎧や武器の大半に寄生されていることが明らかになって、てんやわんやの大騒動を引き起こしたそうな。

動物苑(どうぶつえん)これを聞いて(俺が漏らした)清々したらしく、本来なら謝罪を要求されただろうが、今回は王宮騎士団(ナイトメア)からの賠償とクリスティーナさんの謹慎処分で矛を収めてくれたのだ。

ジュンさんには怒られてしまったが、同時に感謝もされた。

あと、鎧を外したジュンさんの印象はライダーの見た目をしたセイバーって感じがする。

 

「もしかして…、ジュンさん?」

 

そう言ったのはサレンさん。サレンディア救護院のギルドマスターである。

 

どうやら、サレンさんは鎧の中身を知らなかったらしい…

 

「おはよう、サレン『ちゃん』。」

 

「サレン『ちゃん』はやめてください、ジュンさん。」

 

「すまない。 子供扱いは礼を失っしていたな、謝罪しよう、サレン。」

 

「構いませんよ、あたしも失礼なこと言ってしまいましたし。」

 

「お三方は、お茶は如何どす~?」

 

自警団(カォン)のギルドマスターのマホさんがお茶を勧めてきた。

 

「頂こう。」「あたしも頂くわ。」「俺も。」

 


 

「穏便に話が進むのは王子はんのお陰やわぁ。」

 

「ええ、そうね。ユウキがいなければ、どうなっていたことやら。」

 

「私も同意したいところだが…。貴族からすると、ユウキくんの行動は目に余るようだ。

 ユウキくんはギルドのメンバーを連れて、この町(ランドソル)から出ていった方が良い。」

 

もしかして…マフィア(ドラゴンズネスト)と仕事をしたのが悪かったのか…?

 

「それって、どういうことよ!?」

 

「どうやら、彼の人脈は貴族にとって脅威になるらしい。」

 

あっ… 平民中心の王宮騎士団(ナイトメア)に、王国(ランドソル)との因縁がある獣人たちの自警団(カォン)

    マフィアのドラゴンズネスト*1、魔族を率いる魔王(イリヤ)がいるとの噂の悪魔偽王国軍(ディアボロス)

 

…革命でも計画しているのかな?

 

「…ジュンさんはそんなこと話してもいいの?」

 

この密談…会談自体がクーデターの準備にしか見えないから問題ない。

 

「うん、ユウキくんも守るべき市民の一人だからな。」

 

カッコいい。 初志貫徹もここまで来ると、立場を自覚しているのかが疑わしくなるが…

 

「そうか…。 これからはどこに滞在しようか…

 

「王子はん、避難先を手配しましょか?

 うちの自警団(カォン)と懇意にしている牧場(エリザベスパーク)ってギルドやけど、

 町から離れた山奥やから、他の所よりは安全やと思うんよ。」

 

「いいのか…!?」

 

「王子はんには迷惑をかけてしもたし、こんなんでお詫びになれば良ぇんやけど。」

 

牧場(エリザベスパーク)は牧畜を営むギルドだ。ギルドマスターは人間のマヒルさん。

俺は岸くんと違って郵便物を届けるバイトをしていないため、原作ほどの繋がりはない。

なので、マホさんの紹介があるまで選択肢には入っていなかった。

でも、紹介があるなら牧場(エリザベスパーク)、その一択だろう。

他に匿ってくれそうな悪魔偽王国軍(ディアボロス)も不穏因子として貴族に目をつけられている可能性が高い。

それに比べて、動物苑(どうぶつえん)の後ろ盾のある牧場(エリザベスパーク)なら安全だ。

原作ストーリー的には危険だが、それは町中でも大差はない。

牧場(エリザベスパーク)のみんなを巻き込んでしまうが、他に逃げ場もない。

外国に逃げるのは外交問題になりかねないからダメだ。

だから、お言葉に甘えさせてもらおうと思う。

 

…クーデターに失敗して、亡命する政治犯にしか見えないが。

 

「ありがとう、……マホ()()。」

 

「お礼なんて良ぇんよ、王子はん。」

 

マホさんもこういう場では空気を読んでくれるので有り難い。

 


 

「マホさん。シャドウについての調査に進展はあった?」

 

「あぁ、うちのギルドのカスミはんが調べてはりますえ。

 今はシャドウの正体を予想した論文の検証をしてはるみたい。」

 

「私も職務上、閲覧する機会があった。

 論文名は確か…、『世界にわだかまる根源的な虚構』…だったはずだ。」

 

どういうことだ… 本来なら、世界の強制力(修正力)が働いて論文なんて書けないはずなのに…!?

…世界の強制力(修正力)が弱まるような異常が起こっているのか!?

 

「深刻そうな顔をしてるけど…。 あんた(ユウキ)にはなにか、心当たりがあるの?」

 

「あぁ、問題ない。」

 

「…あるのね。 …もしかして、この前あんた(ユウキ)が言ってた『世界の謎』に関係してるの…?」

 

「…ああ。」

 


 

会談が終わった後、俺は今、この論文の著者が通う聖テレサ女学院を訪れている。

例の論文に俺に対する謝辞が載っていたので会えると踏んだのだ。

 

残念ながら、著者のユニちゃん(18才)は不在なようで、

 

「ユニ博士から貴方が此処に来たら渡すように、と頼まれておりました。」

 

そう言って、教員が紙の束を俺に渡してきた。

 

このループでは会ったことないのに俺のことを知っているのか… 

キャルが前のループを覚えている素振りを見せたことといい、

世界の強制力(修正力)が弱まっているという考えは正しいように思える。

 

おそらく、この書類のどこかにその答えが載っている。後で読んで確かめなければ。

 


 

(レイ) 「…さっき、父親からメッセージが送られてきたんだ。

   『リアルのことは気にするな。 その代わり、アストルムは怜に任せる。』って。

   私はずっと、父親に、一族に、自身の価値を証明したいと思っていたんだ。

   でも、その必要はなかった。 家族は私に期待してくれている。

   だから、私はその期待に答えたいんだ。」

*1
ギルドマスターはドラゴン族のホマレ。 世界の謎を追い、隠し種族のドラゴン族を探すのが目的。



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THE ROSETTA STONE

「やぁ、同志(ユウキ君)

 これを見ている君は、

 ぼくが君のことを何故知っているのか、疑問を抱いているはずだ。」

 

「答え合わせをすると、君の知っての通り、この世界は何度も同じ時間を繰り返している。

 どうやら、ぼくたちは今から276周前のとき、

 世界による書いたメモへの修正を回避する魔道具を偶然発見したようだ。

 そして、ぼくたちはその魔道具を改良し続けながら、

 次の周のぼくたちへと情報を残し続けていたらしい。」

 

「続いて、ぼくは君の抱いているであろう、もう一つの疑問にも答えねばなるまい。」

 

「結論から言おう、この世界を保つシステムは限界を迎えている。

 最早、世界に認識阻害をする余力はない。

 世界のリソースのほぼ全ては、シャドウの排除に向けられていると思われる。

 しかし、それも苦肉の策だ。 

 数周以内にこの世界はシャドウに覆い尽くされ滅びるか、

 覇瞳皇帝とやらが世界の全てを支配するかのどちらかになるだろう。」

 

「だが、ぼくはそんな結末を望まない。

 故にぼくは世界を存続させるべく動くことにした。

 手始めにぼくは学会の識者へ向けて、彼らの認識阻害を解くことを目的とし、

 幾百ものぼくの集大成である論文、『世界にわだかまる根源的な虚構』を発表した。」

 

「結果は申し分なかったが、ぼくはこの論文の発表によって、覇瞳皇帝に狙われることとなった。

 なので、フィールドワークという名目で隠れることにする。」

 

「追記:

 君は知らないようだが、このアストライア大陸にはランドソルを中心とし、

 各地の遺跡を地下道で繋いで構築する巨大魔法陣が存在する。

 文献によると、魔法陣は占星術の一種である、天体魔術と呼称される魔術を発動できるそうだ。

 一つ前のぼくらは君が死んだ後に天体魔術を発動したが、覇瞳皇帝には通用しなかったようだ。

 だが、君の知識を借りれば天体魔術を覇瞳皇帝に届かせられると、ぼくは思っている。

 詳しいことは、ラビリンスに所属する()()()()・ロマンに聞いてくれたまえ。」

 


 

ドクター・ロマンに天体魔術、絵本のお伽噺、原作知識と辻褄の合わない(思い出)。 

 

これだけの情報があれば俺でも確信する。

 

俺は本来、この世界には存在しない。

したがって、この世界に俺以外のイレギュラーが存在しても可笑しくはない。

 

 

つまり、この世界(プリンセスコネクト)にはFate(型月世界)が混じっている。 それが俺の結論だ。

 

 


 

324:名無しの風来坊 ID:4FeMlelQQ

ウォッチャーって結局なんなの?

 

381:名無しの風来坊 ID:pwHF234vI

>>324

ネットミームの一つ。

数年前からネット上に出没する謎のグループについての陰謀論で、掲示板のスレで冗談半分にそのグループの設定を盛りまくっていった結果、DSとかウォッチャーが誕生したはずだった。でも、国連のWISDOMがウォッチャーを名指しで非難したことで創作キャラだと思っていた掲示板は大混乱。そして、今に至る。

 

401:名無しの風来坊 ID:u+zmEdN9I

>>324

DS(ディープステート)を率いるトップのこと。

架空の人物だと思われていたけど、与党の士条派が実在することを認めた。

DSとか大層な呼び方されてるけど、掲示板で流行ってた陰謀論だった頃の名残だし、WISDOMに比べればDSは大したことない。元々、DSはウォッチャーを中心としたレジェンド・オブ・アストルムのプレイヤーの互助組織だったらしい。だから今のDSは事実上「WISDOMの懲役」の被害者団体になってる。

 

530:名無しの風来坊 ID:UmngzwMPf

ワイ、七冠が許された経緯がよくわからん

誰か教えてクレメンス

 

574:名無しの風来坊 ID:u+zmEdN9I

>>530

この板ではそーゆー言葉遣い嫌われるからやめた方が良い。

質問に答えると、七冠は千里真那を除いてWISDOMから離反したから。七冠はどうも千里真那に利用されてたことが捜査で分かって、七冠本人や家族が「WISDOMの懲役」に巻き込まれているから被害者として扱われてる。あと、最大の被害者であるDSも七冠の協力には謝辞を表明しているってのもある。

 

580:名無しの風来坊 ID:/EFKzsV5t

>>574

七冠がいなければ今頃、世界大戦真っ只中だったろうな…

 


 

■■■ 「覇瞳皇帝の排除は貴国の国益に適うだろう…。」

 

モニカ 「つまり、貴公らは我が国に支援を要請しているのだな。

     だが、私には判断できない。 速やかに本国に判断を仰ごう。」

 


俺達、シリウスライトはほとぼりが冷めるまで牧場(エリザベスパーク)に疎開することになった。

 

「迷惑をかけて、ごめん。」

 

「キミが謝ることではないよ。

 それに私の父親が根回ししてくれるそうだから、直に町に戻れるさ。」

 

「レイちゃんが貴族だったなんて、ビックリだよね!」

 

「レイちゃん、家は大丈夫なのかな?」

 

「ああ、私は父親に見聞を広めるために冒険しろって、言われているからね。」

 

「ペコリーヌさまもそのような経緯なのですか…?」

 

「はい! わたしも武者修行の旅をしてたんですよ~」

 

マヒル*1さんがお茶?…牛乳を出してきた。

 

「貴族に目をつけられるなんて、災難だっだなあ。

 オラもユウキにはこれから世話になるんだべ。 いつでも頼っても良いんだべさ。」

 

俺は紆余曲折あって、これから牧場(エリザベスパーク)のコンサルティングを引き受けることになっている。

アキノ*2さんに投資について相談したとき、こうなるとは夢にも思ってもいなかったんだ…

低所得者向けローンの悪用を告発するなんて二度とやりたくない…

 

「ふあぁ~ あ~今日はユウキが来ているの~…!?」

 

「おはよー、リン*3ちゃん! 久しぶりっ♪」

 

「えっ、ヒヨリ! どうして牧場(エリザベスパーク)にいるの!?」

 


 

「リマちゃん! オイッス~☆」

 

「ペコちゃん、オイッス~☆」

 

リマがモコモコした背中にシオリちゃんを乗せてこのラウンジに来た。

リマとペコリーヌは知り合いのようだが…

 

大方、ゲテモノ食いのペコリーヌが魔物と間違えてリマを食すために襲ったのだろう。

何しろ、リマの見た目は直立二足歩行するアルパカだからな…

 

「ん… おはようございます、ユウキさん。」

 

「体調は大丈夫か?」

 

「ええ、一昨日よりは良いです。」

 

シオリちゃんは病弱なため、自警団(カォン)から療養に来ているのだ。

シオリちゃんの姉のハツネちゃんはこの世界の鍵を握る数少ない超能力者である。

ハツネちゃんに協力を仰ごうとしたときに仲良くなった。

 

「私の背中なら空いてるから、

 無理はしないでね、シオリちゃん。」

 


 

「ユウキに来客だべ~。」

 

誰だろうか…

 

パパ~!

 

そう言って少女?が抱きついてくる。

 

「騎士クン、その子は誰…???」 

 

ユイが絶対零度の視線を向けてくる…… ヤバい…!

 

「ユウキくん…いつ子供を作ったんだい…?」

 

「ユウキさん…」

 

ヒェ…

 

「…と、まぁ 冗談は置いといて…

 初めまして! 私は完全自律型ゴーレムのロゼッタです。」

 

「だから、大きいユニちゃん(18)の格好をしているのか…

 …いや待て、ロゼッタはただの人工無脳だった筈だ!!」

 

「おお~ ただの石ころだった第一世代型を知っているんですか~!」

 

ヤベッ」 「ラプラスの箱の秘密に近づけた気がします!」

 

ラプラスの箱ってガンダムUCじゃねーか!?

 

「いいですか~ 

 私はフォトニック結晶製の演算装置(賢者の石)を備え、

 ミネルβ*4及びなかよしX*5を参考にし、

 世界のリブート(再起動)を耐えるよう製造された、

 "RObot to Save Experience or Technical Tempting Art"

 "ROSETTA(ロゼッタ)"です!!!」

 

突っ込みどころ満載だな!!

そもそも、フォトニック結晶を使ったコンピュータはアトラス院*6の技術じゃないか!!」

 

「ずぅっと、思ってたけど…キミはどこまで知ってるのかな…?」

 

「ロマンお兄さま??」

 

会話を聞いていたロマニ・アーキマン…、ドクター・ロマンが声を掛けてきた。

 

……この世界が可笑しいのは…絶対、コイツが原因だ!

 

「吐け… なんか…お前が全部悪いような気がする…

 取り敢えず知ってること、全部吐け…」

 

「ボクにも責任があるのは分かってるけど、

 マサキ君といい、なぜ()()()()()()()()は真っ先にボクを疑うんだ…!」

 

*1
牧場(エリザベスパーク)のギルドマスター。 知らない人は仮面ライダー01の主人公を想像すると幸せになれます。

*2
資産家の娘。 常識と金銭感覚という概念は存在しない。

*3
ゲーム好きのサボり魔。リンは自警団(カォン)からの出向。

*4
超AI、ミネルヴァの端末の一つ。 メタ的にはアリーナを運営するための辻褄合わせ。

*5
メカエリチャンみたいなヤツ。

*6
Fateの世界観において錬金術をもって人類滅亡を防ぐ組織。SFに出てくる道具を使う。




タイムリープ+ミネルβ+なかよしX=ミネルヴァX ということで元ネタはマジンガーZEROのミネルヴァXです。 


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真那エピファニー

ムイミ   「教授!?」

 

跳躍王(ラジラジ)   「シャドウですか… 大方、真那は私たちを一網打尽にする気でしょう。

       普段なら、ノコノコ出てきた真那を殴殺しに出向くところですが…

       生憎、今の私では掠り傷すら与えられない。

       不本意極まりないですが逃げますよ、ムイミ。」

 


 

「えーっと、『訣別の時きたれり、其は世界を手放すもの(アルス・ノヴァ)』したら、

 この世界(現実)に来てしまい、彷徨っていたのをWISDOMに保護された後、

 異世界の記憶に目を付けた千里真那に人体実験をされ、

 ()()()()()()()()を含めた全ての知識を抜き取られた…と。」

 

「はい…そうです…」

 

千里真那がFateシリーズの知識を持っているなら、不自然な原作乖離に説明がつく。

 

Fateシリーズを特徴づける聖杯戦争という儀式は七人の魔術師が、人類史に残る英雄(サーヴァント)をそれぞれ一人づつ召喚してバトルロワイヤルを行い、勝ち残った一組が聖杯によって願いを叶えるというものである。聖杯戦争がマトモに完遂することは殆どないが…。*1

 

現実世界で流行ってたVRゲーム、レジェンド・オブ・アストルムは聖杯戦争、特にFate/EXTRA電脳世界()()()で行う月の聖杯戦争に酷似しているのだ。そして、千里真那はレジェンド・オブ・アストルムの()()()の一人、七冠である。

 

「へー つまり…『レジェンド・オブ・アストルム』は月の聖杯戦争をモデルにしているのか…」

 

「えっ、そんなことまで理解るの!?」

 

分からなかったのかよ…!

 

「ユウキくん…私はキミの話についていけないんだが…」

 

「千里真那って、わたしに成り代わっている人…ですよね?」

 

「う~ん。 VRゲーム? セイバー戦争? よくわからない…」

 

ヒヨリ…セイバー戦争ってなんだよ… 七人のセイバーが戦うのか…?*2

 

「あ~ 現実のこと思い出せていないんですね~」

 

「ロゼッタちゃん…『現実』って、どういうことかな?」

 

「え~と、この世界(アストライア大陸)は偽物で、アナタ達は本物の世界(現実)にいたことを忘れているんです!」

 

「へ~ ()()()()この世界はゲーム(虚構)だったんだ。」

 

マヒルさん達は最近、リンちゃんの言動が可笑しくて更に無気力になったと心配していた。

 

マホさんによると、自警団(カォン)から牧場(エリザベスパーク)に出向しているリンちゃんからの連絡が途絶えたので、牧場(エリザベスパーク)が安否の確認をしにきたところ、リンちゃんは半ば錯乱状態になったので、リンちゃんには内緒でそのまま牧場(エリザベスパーク)で療養させることにしたらしい。マホさんに牧場(エリザベスパーク)で仕事をすることを話したとき、懸念事項として教えてもらったのだ。

 

俺はアヤネちゃんと同じく、リンちゃんが世界への違和感を持っていることに気づいていたが、

精神状態が更に悪化すると思い、リンちゃんに真相を明かさなかった。

だが、無自覚とはいえ、ロゼッタが明かしてしまった。ショック療法じみていたが、真相を知ったリンちゃんは落ち着いているようなので心配は杞憂だったようだ…。

 

 

…どこからか室内に入ってきたピンク色の蝶々が俺の肩に止まった。

 

おそらく、ネネカさんだろう…。

七冠の一人であるネネカさんは生物、非生物問わず様々な物体に変身したり、分身を作ったりできる。また、分身を変身させることもでき、変身の精度は能力の再現を含む真に迫る模倣(無限の剣製)ができるほどである。あと、ネネカさんは体格が小柄であることがコンプレックスらしい。

 

()()()()()

 私はネネカ…、七冠の一人です。」

 

「ちょうちょが喋ったー!」

 

「ヒヨリ、貴方は相変わらずハイテンションですね。」

 

「ネネカさんとあたしって、どっかで会ったことあったっけ?」

 

「ええ、敵同士でしたよ…。」

 

「それって、ソルの塔でのこと?」

 

原作よりも態度が軟化しているのが気になる…。

 

「はい…。 この話は追々しますので、先に用事を済ませてもいいですか?」

 

「ごめん! ネネカさんにも用事があるんだよね…」

 

「気にしていませんよ…。 

 用事ですが…、今朝から私や晶の拠点が次々とシャドウに襲われています。

 貴方達も用心してください。

 …そんなことを言ってる間に、この牧場には魔物が近づいているようですが…」

 

「大変だべ! 動物たぢを逃さないとだべ!」

 

「う~ん。 その必要はないと思いますよ、マヒルさん。

 状況から考えると、魔物は私たちを狙っているようなので、

 私たちがこの牧場を離れれば牧場(エリザベスパーク)は安全だと思います…。」

 

「それって、ユウキたちが逃げるってことだよね。

 でも、敵は世界の秘密を知ったあたしたちを放っておくとは思えない。」

 

「はい、私もそう思います。」

 

…世界の秘密は論文によって大陸中に共有されている。

リンちゃんの言い分が正しいなら…安全な場所などないだろうな…

 

「ちょっと、シオリちゃん! あなたも戦う気!」

 

「はい… 今の私でも矢を打つくらいはできます…!」

 


 

キャル   「ティアナたちは大丈夫かしら…

       陛下は此処で魔物をけしかけるだけでいいと仰ってたけど…。」

 

クリス   「陛下はなにか企んでいるようだな。

       我々は奴らを誘き寄せるための餌かもしれんぞ。」

 

キャル   「あそこにはユウキがいる…。

       あたしが陛下に従っている内はアイツを殺さないはずよ…!」

 

クリス   「『殺せない』のではなく『殺さない』だけだろう?

       陛下が約束を律儀に守る保証など、どこにもないからな。」

 

キャル   「それって…」

 

クリス   「貴様もそろそろ心を決めた方がいい… 陛下につくのか、裏切るのか…。

       玉虫色は全てを失うぞ。」

 


 

ペコリーヌ 「やけに魔物が弱いですね…」

 

レイ    「ああ、手加減されているようだ…」

 

コッコロ  「キャルさまが操っておられるのでしょう。」

 

リン    「キャルって、誰~?」

 

ロゼッタ  「あー あの猫娘(にゃんこ)のことですよね。 ()()は一緒にいないんですか?」

 

ペコリーヌ 「キャルちゃんに会うと、いつも逃げられるんです。

       合わせる顔がないって、泣きながら…

       キャルちゃんはみんなでシリウスライトを興す前の、わたしに似ているんです…。

       あの、全ての()()()を失っていた頃のわたしに…。」

 

ロマン   「大令呪(シリウスライト)!?」

 

ペコリーヌ 「はい、わたしたちのギルドの名前は旅人の灯(シリウスライト)ですけど…

       どうかしましたか、ロマンさん?」

 

ロマン   「いや、聞き覚えのある言葉だったから…」

 


 

俺たちは魔物を操る術者、キャルを止めるため―――いいや、助けるためにここまで来たんだ…!

 

「キャルちゃん!!」

 

「ティアナ…! …あんたたちは…いつもいつもあたしを助けようとするんだから…

 

「何か事情があるんだろ、キャル…! ()がどうにかするから!」

 

「駄目ですよ、あなたさま…! わたくしたちみんなで解決する…! 

 そのためのギルド(シリウスライト)です!」

 

「そうだよ、あたしたち(トゥインクルウィッシュ)も居るんだから…!」

 

そうだったな… そのためのギルド(シリウスライト)だもんな…

 

「済まない、コッコロ、ヒヨリ、俺が悪かった。」

 

「キミは少し反省した方がいい。 全部、一人で抱え込むのはキミの悪い癖だ。」

 

「いっつも事件に巻き込まれるから、ユウキくんのこと…心配しているんだよ…!」

 

「スマン…」

 

心配させて本当に悪かったと思ってる。

でも、事件に巻き込まれるのは不可抗力(宿命)なんだ…

 

「あ~…ちょっといいかな?

 そこにいるキャルって獣人は敵だけど助けたいってカンジかな…?

 あと、そこにいるおばさんは放っといてもだいじょうぶ?」

 

あっ、忘れてた…

 

「問答無用で襲いかかったりはしないさ。 興を削ぐのはワタシの好みではないからな。」

 

「だいじょうぶそうですね…」

 

「シオリちゃん!?」

 

「しおりんがそう言うならだいじょうぶかなぁ~」

 

「オラもそう思うべ♪」

 

クリスさんだし、嘘はついてないだろうなあ…

 

「キャル… キミには何か事情があると思っている… 話してくれるかな?」

 

「うぅ…」

 

「あたしたちはキャルちゃんの力になりたいんだ!」

 

あの陛下を倒せるわけないじゃない…!

 

やっぱり…

 

「…覇瞳皇帝に脅されているんだな…! 「あら、脅してるなんて酷いじゃない。

 

!?

 

「その声は…!!」

 

「陛下…」

 

顔を上げると、覇瞳皇帝…千里真那が上空にいた。

 

「ふふふ。 異世界人(ロマン)…いえ、ソロモン王ユウキくん(ウォッチャー)ユイちゃん(プリンセス)に『お姫さま』、

 『誓約女君(レジーナゲッシュ)』クリスティーナ、『変貌大妃(メタモルレグナント)』似々花も近くに居る…。

 『跳躍王(キングリープ)』ラジニカーントとムイミには逃げられちゃったけど、些細なことだわ。」

 

「どういうことですか陛下!?」

 

「ああ…あれは嘘。 キャル、あなたはDSを誘き寄せるための餌よ。

 DSと言ってもあなたたちには分からないでしょうけど。」

 

DS…ゲーム機でそんなのがあった気がする…

 

「!!」

 

「ふふ…あなたたちは此処で死ぬのよ。」

 

…!? 俺は覇瞳皇帝以外の全員に強化を掛けた。

 

周りを見ると、仲間たちも覇瞳皇帝に対して構えている。

 

「まあ…いいわ。 私の真の姿を見せてあげる。」

 


 

変身した覇瞳皇帝の側頭部には―――大きなが生えていた―――

 

人類悪(ビースト)―――の象徴たる獣冠(つの)が―――

 

 

 

人類悪 抽出

 

 

 

――理解したかしら―――私は―――七つの人類悪の一つ――

―――ビーストⅣ/Rよ―――

 

*1
まともに終わっても、人類文明に悪影響がある(たいていの)場合、抑止力(アラヤ)なる存在が願いを叶えることを妨害してくる。 返り討ちにされることもあるが… なお、アラヤは人類の集合無意識、人類存続への願いそのもの。 聖杯戦争の根幹たる英霊召喚は本来、アラヤ(抑止力)が人類を護るために使う術の一つである。

*2
聖杯戦争は七つの異なるクラス(職業)英霊(サーヴァント)が殺し合う。セイバーは基本となる七つのクラスのうちの一つ。基本となる七つのクラスには、セイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、バーサーカー、キャスター、アサシンがある。七人のセイバーは聖杯戦争が正常に行われているなら、起こり得ない。



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神の座に挑む者

アメス 「すぐに逃げなさい! 今のあんたたちではどう足掻いても勝てないんだから!」

 


 

「ふふ…まずは小手調べ。」

 

覇瞳皇帝は黒いビームを連射する。 当たったら死ぬ…!

 

「そこのオマエ、大丈夫か?」

 

「サンキュー、クリス。

 あと、ボクの名前はロマニ・アーキマン。 ロマンって呼んでほしいな。」

 

「よく覚えていないが…、オマエとは昔、会った記憶がある。

 ロマン、これからもよろしく頼む。」

 

「あら、貴方たちに『これから』はないのよ。」

 


 

「間一髪だべ…」

 

「う~リマはだいじょうぶ…?」

 

「私は大丈夫。 シオリちゃんは?」

 

「私もだいじょうぶです。」

 

体が軽い…! これは…?

 

「キャルさまも強化できるのですか!?」

 

「あたしたち、()()()()()()()()は固有能力の()()、仲間を強化する能力を持ってるのよ!」

 

どういうことだ? 俺の固有能力は強化じゃないのか…?

 

「これはどうかしら。」

 

覇瞳皇帝は空を覆い尽くすほどのを出現させた。

 

剣が降り注ぎ、地面の近くで爆発(壊れた幻想)する。

 

覇瞳皇帝にこんな能力はないはずだ!!

 

「貴方たちは忘れているようですが…、

 私と跳躍王*1、そして()()の能力は()()()()()()()()でコピーされています。

 私も迎撃しますが、おそらく3分もたないでしょう。」

 

ネネカさんが覇瞳皇帝と同じように剣を撃ち出し、降り注ぐ大量の剣をまとめて爆発に巻き込んで撃ち落としていく。クリスティーナさんは器用にも降り注ぐ剣を()()()()、爆発に巻き込んで撃ち落としている。どうやら、剣の爆発は時限式のようだ。

 

「どうかしら…無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)を受け止めた気分は!」

 

くそったれ!」 「エミヤくんの宝具じゃないか!」

 

「みんな! この結界の中に入って!」

 

コッコロとユイが結界を作ってくれたようだ。 

剣を弾き、非常に強固なのが見て取れるが、降り注ぐ剣の群れには長くは持たないだろう…。

 

システム・ラーベ(System-AstroLabe)起動します!

 ネネカおばさんにクリスおばさん! 今から通信魔法で周囲の情報を送信します!」

 

ロゼッタはタイムラーベ*2に関連すると思われる機能を搭載しているようだ…。

おそらく、イージスシステムに近い運用をしているのだろう…。

 

「小細工なんて無駄よ。」

 

足元からいつもより昏いシャドウが纏わり付く。 

降り注ぐ剣を捌きながら、シャドウを対処なんてできるのか…

 

「危ない!」

 

後ろから覆い被さろうとするシャドウをレイが倒してくれたようだ。

 

「レイちゃん! 足元!」

 

「助かった、ヒヨリ。」

 

「くぅ…切りがないわね。」

 

このままじゃジリ貧だ…

 

ドラゴンズウォーム

 

辺り一面を覆い尽くす、昏い炎がシャドウと剣を薙ぎ払らった。

薄暗い夜空を背景に、数万本はありそうな剣が中心から端へと次々に爆発してゆく…

 

「助けにきたよ、ユウキくん♪」

 

「ホマレさん!?」

 

ホマレさんが来た! でも、七冠ですら軽くあしらう覇瞳皇帝には一人増えたくらいじゃあ…

 

「あら、一人増えただけで何ができるのかしら。」

 

「それはどうかな~☆」

 

ホマレさんの攻撃が覇瞳皇帝に直撃する。

 

「この威力…まさか、あなたもシャドウを喰らったのね!」

 

「せいか~い☆」

 

シャドウを喰らう… 大丈夫なのか…?

…! 今は気にしてる暇はないか!

 

「でも、私にその程度の攻撃では通用しないわ!」

 

「少しは効くと思ったんだけどな~

 まぁ、足止めくらいはできるかな♪

 ロゼッタちゃん、手伝って!」

 

「イエスマム!」

 


 

シャドウは生物的なフォルムになり、のような獰猛さで襲うようになっている。

 

剣は際限なく降り注ぎ爆発する。  一面の草原も砲弾()に抉られ、荒野になった。

覇瞳皇帝の魔力は底なしだ…!

 

「私もそろそろ限界です。」

 

ネネカさんが限界だ… クリスティーナさんの動きも精彩を欠いてきた…

 

ロマンもガンドやルーン魔術で撃ち落としているが、到底追いつかない。

 

ホマレさんも容易に十万、百万を超えるであろう物量に押されている。

 

パリン!

 

!? …バリアが破られた!

 

中で観測手をするシオリちゃんに剣が向かっていく。 「危ない!!」 「助けて…お姉ちゃん!」

 

きら~ん☆

 

小さな星状の光弾が剣を、シャドウを押し流してゆく…。

 

ハツネちゃんが助けに来てくれたんだ!

 

「ありがとう、お姉ちゃん。」

 

「…そこにいるのは、ユウキくん!? もしかして、あの人が…!?」

 

「そうだ!! アイツが敵だ!」

 

「…もう一人の超能力者ね。 転移してきたということは結界に綻びが生じたのかしら…

 でも、この程度なら…私の魔力で簡単に塞げるわね…」

 

「シオリンに手を出したこと、許さないんだから…!」

 

「どうやら、私に勝てると思っているようね。」

 

剣が、軌道を変え、渦を巻き、四方八方から飛んでくる…

 

()()…本気を出していなかったのか…!

 


 

「うわっ!」 「くっ!」 

 

みんなはとっくに限界だ…。 

ハツネちゃんは超能力の反動で気を失い、一番持ち堪えた、ホマレさんですら膝をついている…

 

 

…攻撃が止まった!? 何をするつもりだ!」

 

「まだ、生きているの… いいわ、私の本気を見せてあげる。」

 


 

―――その夜―――大陸からが消えた―――

 


 

??? 「アス■■イアが!

 

モニカ 「そちらで何が起こっている!?」

 

??? 「…ラン■■ルは■事か!?

 


 

イノリ 「カヤぴぃ… ボスは大丈夫です…?」

 

カヤ  「…オレたちには何もできねぇんだな…」

 

イノリ 「カヤぴぃ…?」

 


 

ユニ  「驚いた── セントールス(獣人の国)からでも視認可能なのか…。」

 

マホ  「ユニはん…マコトはんらは無事やろか…?」

 

ユニ  「なに、覇瞳皇帝は玉座に執着している。 恐らくは…、無事だろう。」

 


 

シズル 「もしかして…弟くんが戦ってるの…!?」

 

リノ  「今、あんなところに行ったら…お姉ちゃんまで死んじゃいますよ!」

 


 

ルナ  「パパ、ママ… どうしたの…?」

 

クルミ 「ママ・サレン! お月さまが…!」

 

サレン 「一体全体、何が起こってるのよ…」

 


 

アンナ 「──事象・照準固定(Visierung auf)。」

 

ナナカ 「アンナたそ… その魔眼でアレを止めるのは、無茶ですぞ…?」

 

アンナ 「理解ってる…。 だから─ ──私は、それが輝くさまを視ない。(lch will es niemals glǎnzen sehen.)

 


 

キーリ 「名探偵さん! 妖精さん!」

 

カスミ 「ん? 何だいキーリ、窓の外に…!?」

 

ネビア 「嘘でしょ…!」

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――これで終わりよ―――

 

 

 

 

―――鏡像が――夜空喰らった―――

 

―――天蓋は――大地に堕ちる―――

 

 

 

―――新説・月落とし(Type Moon Is a Harsh Monarch)―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 異界特異点?
 
人理定礎値 不明 

 

 

 

 

A.D.2032 電脳幻想世界 アストルム

箱の残り灯

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


*1:固有能力はワープ。 一度のワープで大人数を遠くまで運べる上に、クールタイムがない、つまりは絶え間ない連続使用が可能であるのが特徴。 本人の非常に高い格闘技術も合わさって、近接戦闘でその真価を発揮する。

*2:高度な演算、観測装置。 使用者も気づけないほど高度な予測が可能。 性能を制限された状態ですら大陸全体を監視可能という、プリコネ屈指のチートアイテム。 覇瞳皇帝の影の薄い権能は観測のみで、未来予測などの演算は自身の能力で実現されているが、タイムラーベはこれ一つで両方を行えると言われれば、凄まじさがわかるだろう。 自力で演算を行わなければならない覇瞳皇帝は泣いていい。

 

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―――空想(マーブル)―――具現化(ファンタズム)―――

 

*1
固有能力はワープ。 一度のワープで大人数を遠くまで運べる上に、クールタイムがない、つまりは絶え間ない連続使用が可能であるのが特徴。 本人の非常に高い格闘技術も合わさって、近接戦闘でその真価を発揮する。

*2
高度な演算、観測装置。 使用者も気づけないほど高度な予測が可能。 性能を制限された状態ですら大陸全体を監視可能という、プリコネ屈指のチートアイテム。 覇瞳皇帝の影の薄い権能は観測のみで、未来予測などの演算は自身の能力で実現されているが、タイムラーベはこれ一つで両方を行えると言われれば、凄まじさがわかるだろう。 自力で演算を行わなければならない覇瞳皇帝は泣いていい。



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閑話1 テラ・マーテル絵画世界

やってみたかったやつ



「本日14時頃、ホワイトハウスが爆破され、

 大統領 アダム・ヘンリー・ハリソン氏が死亡しました。

 今後、上院議長*1であるジョン・テイラー氏が大統領に昇格すると思われます。」

 


 

「次の大統領はボヤンシア財務長官…あなたです。」

 

「俺は財務長官*2だぞ!」

 

「大統領暗殺は副大統領*3による陰謀です。

 故ハリソン大統領によってあなたが指定生存者*4に指名されたのは、

 親WISDOM派である副大統領によるクーデターを危惧されたからです。」

 

「すでに、下院議長*5と上院仮議長*6は副大統領への支持を表明し、

 故大統領の大統領令*7により、大統領権限継承権を剥奪されました。

 そして、国務長官*8は大統領就任資格者*9ではないので、大統領代行*10になれません。」

 

「大統領令*11の内容は?」

 

「陰謀を実行した者及びその支持者からの大統領権限継承権の剥奪、

 故大統領が職務遂行能力を失った時点での、連邦政府存続維持計画*12の実施、

 WISDOM及びその支持者による攻撃の対象者と成り得る者の保護です。」

 

「そうか…」

 

「事態は急速に進展しており、既に議会が掌握され、直ちに行動しなければ手遅れになります。」

 

「副大統領閥とWISDOM支持のイカれカルト集団の野党の議席を合計すれば…

 下院は過半数、上院は2/3を超える*13… クソッ!」

 


127:名無しの風来坊 ID:AXYW7AUmt

アメリカ大統領暗殺

https://news^2.us/extra/28a47eaa5acaf366ba9770456662a34

 

129:名無しの風来坊 ID:GEF/YbYWY

>>127

マジ?

 

131:名無しの風来坊 ID:19pqWL6bY

>>127

えっ

 

134:名無しの風来坊 ID:BRQjU4x8R

>>127

ドルやばくね

 

137:名無しの風来坊 ID:n0Ask1b8X

>>127

ホワイトハウスごと爆殺って世界大戦じゃん

 

138:名無しの風来坊 ID:WehyGv4ns

>>127

わふっ!?

 


 

「現職大統領 ジョン・テイラー氏は大統領暗殺事件を、

 反グローバリズム集団、DS(ディープステート)によるテロと断定し、

 DS支持者の公職追放の準備を進めていることを明らかにしました。」

 


 

「CIA長官フェムト氏が『大統領暗殺は副大統領によるクーデター』と非難。

 ボヤンシア現財務長官が故ハリソン大統領の大統領令により大統領代行に就任し、

 シャイアン・マウンテン空軍基地*14にてアメリカ臨時政府を設置。」

 


 

156:名無しの風来坊 ID:abOudUgXa

米国野党支持者によるテロ計画が判明

ボヤンシア大統領代行の娘である昏睡状態のクレア・ボヤンシア氏が標的か 

https://news[everyday]nihon.co.jp/article/e1b362a71b6f3dcea377e2d31

 

164:名無しの風来坊 ID:vMfmQDMjn

>>156

何故VIPがわーくににいるのか

 

170:名無しの風来坊 ID:9MYAK6ZML

>>156

なんで米国野党支持者が日本にいるんですかね

 

178:名無しの風来坊 ID:Vjn/aSffm

>>164

WISDOMの懲役が始まったときは一般人だったからな

 

185:名無しの風来坊 ID:Q2Pt9CpNj

>>170

アメリカの渡航制限が始まる前に滑り込んで来たんじゃない?

 

193:名無しの風来坊 ID:rA4SOYleK

>>156

わーくにも遂に内戦に巻き込まれるのか

 

 


 

「今朝までに北方軍*15、欧州軍*16が我々への支持を表明しました。

 ですが、インド太平洋軍*17、戦略軍*18は中立を表明、

 中央軍*19、南方軍*20、サイバー軍*21はテイラー派への支持を表明しています。」

 

「南方軍は確か…テロ対策強化って名目で大半を本国に呼び戻して再編制してたよな…?」

 


 

「士条内閣が組閣に向け、集団昏睡事件担当大臣に姫宮氏を起用する意向を固める。」

*1
大統領権限継承順位1位。

*2
大統領権限継承順位5位。

*3
アメリカでは副大統領が上院議長を兼ねる。

*4
非常時において政府の機能を維持するために、非公開の安全な場所にいる者のこと。

*5
大統領権限継承順位2位。実は現職議員でなくても良い

*6
大統領権限継承順位3位。副大統領が上院議長としての職務を行えないときの代理。多数党の最長老議員がなるのが慣例。『仮』とは付いているが常任の役職である。

*7
ここでは大統領命令の意味で使われている。

*8
大統領権限継承順位4位

*9
35歳以上かつ、出生によるアメリカ市民権保持者でアメリカ国内に14年以上在留している者。

*10
アメリカの憲法で大統領に昇格できると明記されているのは副大統領のみである。よって、他の大統領権限継承者は大統領代行と呼ばれる。

*11
大統領令は秘密裏に出すことができる。

*12
核戦争など有事においても、政府を存続させるための計画。

*13
他の勢力を支持を得ずに弾劾が可能になる人数のこと。つまり、大統領や裁判官、その他公務員を自由にすげ替えれる。

*14
シャイアン山をくり抜いて造った超巨大核シェルター。中は3階建てのビル12棟と平屋3棟が建つ地下都市となっている。

*15
北米を担当する統合軍。統合軍とは地域別、機能別に軍隊を編制したもの。アメリカ本土にいる軍は殆どが別の統合軍に所属するため、実は一番兵力が少ない

*16
ヨーロッパを担当する。

*17
ロシアを除くインド以東を担当する。全軍の20%に相当する兵力を持つ。

*18
核兵器を運用する。

*19
中東を担当する。

*20
南米を担当する。

*21
サイバー戦を担当する。




名前に凝ってみた
ボヤンシア、士条、姫宮はプリコネに出てくる名字です

クレア・ボヤンシアさん偽名説があるみたいですね…
もし偽名だったら何時の間にか変わってるかも…


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千年城オーンスタイン

読者の皆さんはイリヤの正体には気づけましたか?

因みに、原作岸くんでは覇瞳皇帝にとっての不確定要素足り得ないので最初(無印)から詰んでます。



全天を覆い尽くす、大きさを測るのも馬鹿馬鹿しくなるほどの月だ…!

辛うじて球形だと分かるほど巨大な星が落ちてくる。

 

ああ…アレは駄目だ… アレが落ちた時点でアストライア(この大陸)は間違いなく消し飛ぶ…!

 

人類悪(ビースト)には英霊(チート)でも勝てない』 それを漸く理解した…。

ゲームやアニメでは分からなかった、人類悪(ビースト)の凶悪さがよく分かる。

大陸ごと消し飛ばせるような敵には、英霊(戦闘機2機分)なんて雑魚がいくら集まっても敵わない。

 

たとえ…奇跡が起こっても(ラビリスタが助けに来ても)(ロスト)からは逃れられないだろう…

 

 

空想具現化(マーブルファンタズム) なのじゃっ!

 

…!? みるみる景色が変わってゆく…  うっ…、吐きそう…!

 


 

アメス   「よかった~!

 

ネビア   「フィオ!

       ユウキが心配なのは分かったから、何が起こっているのか説明しなさいよ~!」

 

アメス   「覇瞳皇帝が本物そっくりの月をユウキたちに落として… 

       そこを…イリヤさんが助けてくれたってことしか分からない…」

 

ネビア   「えっ…? うそよ…! 

       覇瞳皇帝があんなのを落とせるなら、ユウキに勝ち目はないじゃない…!」

 

アメス   「きっと…ユウキならなんとかしてくれるわ…」

 

ネビア   「えっ…? …流石にアレは無理でしょ!」

 


 

「イリヤさんはどうして…」

 

「…わらわは禍々しい気配を遠くに感じたから、様子を見に行ったのじゃ。

 案の定…、お主は巻き込まれておったがのう…

 巨大な岩が落ちてきたときは流石に焦ったわい…。

 あの時は…間に合わぬと思ったが、誰かが後押ししてくれたようじゃ。 感謝しなくてはな…」

 


 

空想具現化(マーブルファンタズム)使っていたけど、キミが真祖の吸血鬼だったなんてオドロキだよ!」

 

…ロマンがはしゃいでる。 気持ちは分かる…

 

空想具現化(マーブルファンタズム)は人工物以外の自然を自由自在に変化させる能力、

端的に言うと、世界を自由自在に作り変える能力だ。

そして、それを扱うのは『星の触覚』たる真祖であり、

型月世界において神々を含めた頂点に立つ存在の一つだ。

 

興奮するのも無理はない。

 

「ほぅ…、術を見ただけで、わらわの正体を見破るとは…、さぞ高名な魔術師なんじゃの♪」

 

こっちもはしゃいでる… しかも、地味に正体(魔術王)を見破っているぞ…。

 

「…今は唯のロマンなんだけどね。」

 

「ところで、ここはどこかな…?」

 

「よくぞ言ってくれたのじゃ!

 ここは…空想具現化(マーブルファンタズム)で造ったわらわの城、オーンスタイン城じゃ!」

 

千年城ブリュンスタッド*1かよ… つまり、真祖の中でも最強格*2か…

 

「ここはアストライアとは異なる()()()のようですから…、

 暫くは真那の目を誤魔化せそうですね…」

 

飛んできたネネカさんがそう言ったので暫くは安全だろう。

 


 

ルナちゃんの絵本によると、この世界を地面に繋ぎ止めるために巨大な塔をぶっ刺していた。

絵本を読んで、『織物(テクスチャー)を繋ぎ止める』という発想を思い付いたのには、もちろん理由がある。

アーサー王物語にはロンゴミニアドという槍が登場する。原典では強いだけのただの槍なのだが、

Fateの世界において、ロンゴミニアドとは『織物(テクスチャー)を繋ぎ止める巨大な塔』なのだ。

 

「なあ、ロマン。 ルナの塔とソルの塔ってロンゴミニアドと関係ある?」

 

「電脳世界の中枢であるソルの塔と、そのバックアップであるルナの塔をそれぞれ、

 人理を繋ぎ止める、世界の最果てにある塔(ロンゴミニアド)に喩えて、

 『ロンゴミニアドLugh(ルー)』、『ロンゴミニアドRhiannon(リアノン)』と呼んでいたんだ。

 この世界がゲームだった時は、あのロンゴミニアドとは異なるモノだったけど、

 真那の願いによって、アストルムが特異点化した時に、

 ロンゴミニアドの機能を獲得して、この特異点を維持させ続けてるんだ。」

 

()()()、ソルの塔はロンゴミニアドではないだろう。

現実とは異なる条件の仮想世界を運営(演算)し、その世界を()()に縫い留める。

まさに、FGO()()()空想樹と同じだ。

 

だが、ネネカさんはこの世界を()()()と表現した。

 

Fate/Grand Order(FGO)の第一部ではビーストⅠたるラスボスが歴史上のターニングポイントに聖杯を設置し、ありえない『ifの歴史』、特異点を作り出すことでそれ以降の人類史を破壊した。

Fateにおいて特異点とは『時間における特異点』、『もしもの選択をした世界』を指す。

そして、特異点は原則、人類史のどこかから分岐しなくてはならない。

だが、この世界は人類史のどこにも存在しない。単なるゲーム(虚構)()()()にはなりようがないのだ。

つまり、七冠は間違った表現を使っている。

 

しかし、この世界が特異点と似た性質を持つのも事実である。

だが、より近い表現はある。第二部に出てくる異聞帯(ロストベルト)だ。

『人類史のどこかから分岐しなくてはならない』という原則は共通だが、世界が空想樹によって維持させるという点においてはより近い。だが、七冠は()()()()()()()を使わない。なぜか?

 

この世界の開発者である七冠は第二部(異聞帯)を知らないからだ。

ロマンは第一部退場した人物だ。そして、ロマンが千里眼で見れたのは()()()()()()まで。ロマンの記憶を吸い出しても、第二部のことは知れるわけがない。

 

だから、七冠たちは言い換えた。

 

空想樹により、創られた異聞帯(ロストベルト)』ではなく『ロンゴミニアドにより、維持される特異点』と。

 

ビーストは強大だ。原作において『前提として勝利する条件がない』と断言される程に…。

そして、覇瞳皇帝は月落としなんて技を再現できるくらいには、型月(Fate)に詳しい。おそらく、俺の原作知識と同等以上の知識を持ち、対策しているはずだ。だが、覇瞳皇帝の知識がロマンの記憶をもとにしている以上、FGOの第一部より後は知るはずない。

 

だから、覇瞳皇帝を倒すには、終わった筈の旅(グランドオーダー)の知識を以って戦うしかないのだ。

 

 


 

この世界を存続させるには、現実世界との鬩ぎ合いに勝つ必要がある。

この世界は現実世界にできた染みのようなものだからだ。

ロンゴミニアドという重石によって、辛うじて存続しているにすぎない。

そして、この世界を維持するには、この世界が現実に成り代わるのが手っ取り早い。

 

キャルによると、覇瞳皇帝は『ピトス(パンドラの匣)は開かれる』と言っていたらしい。

Fate/kaleid linerの敵はピトス(パンドラの匣)を開き、内部に()()()()()()()で世界を塗り潰した。

その蓄積した可能性とは、際限なく黒く理性のない英霊(シャドウサーヴァント)が湧き出す黒色の泥

俺はこの特徴に合致する物体を知っている…。シャドウだ。

 

()()()()()()()()と強くなることにも説明がつく。

ビーストⅢも()()()()()()を喰らって成長していた。

 

そして、ループする度にシャドウは際限なく増加していく。

記憶が正しければ、世界の比重を逆転させる程度の量があれば現実世界に成り代われるらしい。

覇瞳皇帝は敢えて幾千ものループを繰り返すことで、

現実世界を塗り潰せるだけのシャドウ()を確保しようとしているのではないか?

 

覇瞳皇帝は地球をシャドウで塗り潰し、現実と成ったこの世界に君臨するつもりなのだろう。

 


 

「いや待て、リアノンとルーって何だ?」

 

「アーサー王物語の源流とされる、ケルト神話の太陽神(ルー)月神(リアノン)の名だね。

 結局は『レジェンド・オブ・アストルム』を公開するにあたって、

 より知名度のあるローマ神話から名を拝借することになったって聞いたけど。」

 


 

ラビリスタ 「やあ、久しぶり! また会えて嬉しいよ、ネビア!」

 

ネビア   「こんなときに…どこに行ってたのよ~晶!」

 

ラビリスタ 「ごめん! 天体魔術の魔法陣を調整していたんだ。

       真那の実力がこれほどだとは思っていなくてね。 こっちを優先していたんだ。」

 

アメス   「とにかく…無事で良かったわ…、晶。」

 

ラビリスタ 「フィオに頼みがあるんだけど、いいかな?

       今、少年を此処に呼んでほしいんだ。」

 

アメス   「いいわよ…。」

 


 

ここは…」

 

「やあ、少年! フィオに頼んで少年を連れてきてもらったんだ。」

 

()()()()()さん、おはよう…。」

 

アメスとネビアもいる…。

ということは、此処は夢の世界*3か…。

 

「いや~、少年が無事で良かったよ~」

 

そう言うと同時に、ラビリスタさんの固有能力、オブジェクト変更が右手に物体を形成してゆく。

万能過ぎやしないか…?

 

「はい、これは頑張る少年へのご褒美ね♪」

 

盾をもらった。所謂、ラウンド・シールドだ。小型の円盾で中央に大きな丸みのある突起があり、腕に装着できるようだ。この盾は攻撃を受け流すことに特化しているのだろう。

 

「ありがとう。」

 

「どういたしまして♪」

 

「持ち帰れるのか…コレ?」

 

「え~と、少年の霊基(肉体)と同期してるから、起きたら反映されている筈だよ。」

 

「晶~いい加減、本題に入りなさいよ~

 フィオが焦れてるわよ…」

 

「わかってるよ、ネビア。

 …少年は自身の固有能力について覚えているかい?」

 

「俺はずっと、固有能力が『仲間の強化』だと思っていたけど、

 キャルも仲間を強化できるから多分違うんだと思う…。」

 

「そうそう、少年の固有能力は『仲間の強化』じゃない。

 『任意で()()()を破壊できる』 それが少年の能力だ。

 もっとも、この世界が電脳空間から変質(特異点化)した時に、

 破壊する対象が『霊子体』から『霊基』に拡大してるけどね。」

 

「『りょうし』って、量子力学の『量子』じゃなくて…霊魂の『霊』の方?」

 

「YES! 少年との会話はトントン進むから楽だよ~」

 

霊子…魔力の枯渇が起こったFate/EXTRAにおいて、魔力の替わりに登場するモノだ。

Fate/EXTRAの世界観では電脳世界が発達しており、電脳世界は霊子によって構成されている。

そして、精神や肉体は霊子で表現でき、霊子体は霊子で形作られた肉体のことを指している…。

 

やはり…、レジェンド・オブ・アストルムはFate/EXTRAの月の聖杯戦争がベースなのだろう…。

 

「他に質問はないかな?」

 

「今まで、何をしていたんだ?」

 

「アタシのこと? アタシは大陸中の天体魔術の魔法陣を調整してたけど、どうかしたのかい?」

 

「なら、魔法陣に…

 


 

「ごめ゙ん゙な゙ざい゙~」

 

「キャル、キミに落ち度はないんだ。 気にしなくてもいい。」

 

「レイさんの言う通りだよ! ぜんっぜん気にしなくていいんだから!」

 

「そうです! キャルちゃんは悪くないですよ! 」

 

「でもっ、でもっ、あたしがあんたたちの敵だった事実は、変わらないんだからっ…」

 

「クリスさんが言ってたけど、キャルは俺を守るためにそうしたんだろっ?

 キャルは命の恩人なんだ…! だから…キャル、俺を守ってくれてありがとう。

 そして…キャル、仲間になってほしい。」

 

「ゔえ~ん゙! あ゙だじが仲間でい゙い゙の゙!?」

 

「そうですよ、キャルさま。 そのためのシリウスライト(このギルド)ですから。」

 

「美食殿じゃないの…?」

 

「わたくしは前のループのことはほとんど覚えておりませんが、

 シリウスライト(このギルド)はキャルさまを迎え入れるために作ったギルドですよ。

 キャルさまがいつでも居られるよう、願いを籠めた特別な名前を付けました。」

 

「ありがとう… これからもよろしく…」

 

「美食… …平和になったら、大陸を巡って食べ歩きもしましょうね☆ キャルちゃん!」

 

「キャルちゃんも一緒に冒険を楽しもうね♪」

 

「あんたたち…」

 


 

アメス   「あんたたちが無事で良かったわ…」

 

ユウキ   「心配してくれてありがとう…()()()。」

 

ネビア   (傍から見ると、完全に恋する乙女よね…

       フィオは親友(ライバル)を応援してしまうタイプだから、不安だわ…。)

 


 

キャル   「こんな胡散臭いヤツ、本当に信用できるの…?」

 

ユウキ   「マーリンみたいに胡散臭いけど、この人は大丈夫!」

 

ロマン   「ボクってアレと同類扱いなの!?」

 

コッコロ  「お兄さまは胡散臭いですけど、悪い人ではないですよ…!」

 

ロマン   「こころまで、そんな辛辣なこと言うの!?」

 

コッコロ  「だいじょうぶですよ、よしよし♪」

 

ユウキ   「…」

 

キャル   「…」

 

ペコリーヌ 「大丈夫ですよ、キャルちゃん! この人は食べ物をくれるいい人です!」

 

キャル   「あんたねぇ… 餌付けされてるんじゃないわよ…!」

 


 

ロゼッタ  「熱はなし…。 心拍は…正常ですね。」

 

ホマレ   「ロゼッタちゃん、ありがとう♪」

 

ネネカ   「もしかして、耳のセンサーで心音を聞き取っているのですか?」

 

ロゼッタ  「はい、人間みたいでしょ♪」

 

ネネカ   「ハイテクによるローテクの実現とは晶らしい発想ですね…。」

 

ロゼッタ  「えっ、違いますよ!? この機能はパパ(ユウキ)のアイディアらしいです!」

 

ホマレ   「スゴいでしょ~ 彼の発想(知識)にはいつも驚かされるんだ~♪」

 

ネネカ   (ラプラスの箱… 単なる都市伝説ではないのはわかっていましたが…

       思いがけない発想に容易く辿り着く能力、晶が隠したがるのも納得です。)

 


 

ラジラジ  「答えなさい、晶。 彼は何者ですか?」

 

ラビリスタ 「少年のこと…? 『星の開拓者』…かな?」

 

ラジラジ  「それは、彼の本質ではないでしょう?

       晶はいつもそうやって煙に巻こうとする。」

 

ラビリスタ 「いやいや、アタシだって把握しきれてないんだ。

       少年の知識は感染症制御の研究に画期的なブレイクスルーを齎し、

       世界経済はブロックチェーン技術を用いた決済システムに移行した。

       そして、少年はWISDOMに対抗できるくらいに巨大な組織を作り上げた。

       どう考えても少年の能力では実現不可能にも関わらずだよ?」

 

      「アタシが理解しているのはそのことだけになってる。

       少年も詮索されるのを嫌ってるようだからね。」

 

ラジラジ  「分かりました。ですが、彼の所業は認められません。

       …まあ、品のない二つ名(ウォッチャー)に免じて、殴殺するのは最後にして差し上げましょう。」

 

ラビリスタ 「やっぱり、『跳躍王(キングリープ)』って二つ名、嫌い?」

 

ラジラジ  「当然です。 私は『歪曲王』の模倣(贋作)ではありません。

       結果的に、WISDOMの計画に水を差したので協力しているだけです。」

 

ラビリスタ (協力という言葉が出てくるあたり、だいぶ絆されているんじゃないかな…

       結局は、少年たちともう一度、闘いたいだけなんだろうね…)

 


 

リマ    「人の姿になれるって本当?」

 

ネネカ   「ええ、今回は霊基の改造の実験ですから対価は要りませんよ。」

 

      (これで、真那が霊基に仕込んだバックドアを無効化できますね…)

 


 

キャル   「こうして、ワイワイ騒いでると、美食殿を思い出すわね…」

 

ペコリーヌ 「美食殿でわたしたちはどんなことをしてたんですか?」

 

キャル   「ねぇ…、聞きたい?」

 

ペコリーヌ 「モチロンです☆ キャルちゃん!」

 

キャル   「フフン♪ そんなに聞きたいなら聞かせてあげるわ~♪」

 


 

「オーマの漁協の人に頼まれて、海を荒らすグレートトゥンヌスを釣り上げることになった。」

 

グレートトゥンヌスとは最近巷を騒がす、『オーマのリバイアサン』と呼ばれる、

トゥンヌスが変異して誕生した、数メートルはあろう巨大な魔物のことだ。

グレートトゥンヌスによって幾つもの漁船が沈み、オーマの港では現在、出漁が禁止されている。

色々あって、()()殿()は他のギルドから保険業の一部を委託されることになって、

支払う保険金を減らせるという誘い文句にまんまと乗せられ、俺たちが駆除することになった。

 

「グレートトゥンヌスを釣り上げるぅ!? あんた、何言ってんのよ…!

 あんな、バカでかい魚をどうやって釣り上げるっていうのよ!!」

 

「グレート…トゥンヌス…♪ 美味しそうですね☆ 是非やりましょう、キャルちゃん!!」

 

「あんたねえ…!」

 

「ふむ…あなたさまには何か良い考えがあるのですか…?」

 

「ああ、ギルドには害獣駆除で届け出を出した。

 許可さえ下りれば、環境への配慮で普段使えない漁法が使えるようになる。」

 

ついでに駆除した害獣は俺たち美食殿の物になるという寸法だ。

 

「何より、失敗すれば赤字が出るからやるしかないな~」

 

まあ、原作知識でこのイベントのことを知ってたから、失敗しても十分補填できる。グレートトゥンヌス釣りは楽しみだし、キャルに発破をかけるためにも内緒にしておこう。なんかいい漁の方法がないかネネカさんに聞いた時に、自分もプリンセスナイトのマサキさんを連れてデート参加したいって言ってたから、とりあえず人手(分身)には困らないだろう。

 

「…なら、仕方ないわね。 やるなら、徹底的にやりましょう!」

 

「お~!」「がんばります!」

 


 

ということで、俺たち美食殿はグレートトゥンヌスを釣り上げるためにオーマの港にやって来た。

今回は、漁師のカズマサさん達と計五隻の船で船団を組み、役割分担することになっている。

 

 

今回の漁だが…

 

電気ショック漁という方法を使う。

自警団(カォン)のカスミさんが、直流よりも交流の方が生物への影響が大きいと言ってたのを思い出したので、交流を流す特別製の電気ショッカーを用意した。

完成した電気ショッカーを運んでる時、偶然出くわしたので、中心に穴の空いた円錐台?の、それを見せたら、「キミはそんなモノを用意して、一体全体何に使おうとしてるんだい?」と聞かれたので、海にいる強力な魔獣を倒すために普段漁師が使ってるのを強力にしたと言ったら、そもそも電気ショック漁は合法なのかと大変驚かれた。

後でカズマサさんに聞けば、銛から電気を流すのは許可がなくともできるそうだ。

 

念のために、根流し…魚を毒物で麻痺させ、気絶して浮いてきたところを採る漁法も使う。

なんとこれは、ネネカさんイチオシの方法なのだ。

ネネカさんによると、山椒を加工したものを使うと良いらしいので、聞いたレシピ通りに作った。

純粋なファンタジー世界ではなく、ゲームの中なので醤油や味醂なども普通にあるのだ。

 

毒については、原作にはいたエリコさんやミツキさんが詳しいのだが、ゲームに閉じ込められた時に、ログインしていなかったのか、()()()()()()この世界にはいなかった。これは勇気を出して、ラビリスタさんに聞いたら教えてくれた。何人かは、俺が憑依した偽物であることに、恐らくは気づいているのにも関わらず、誰も何も聞かないでくれるのには感謝している。

あと、トワイライトキャラバンとヴァイスフリューゲルの二つのギルドが存在しないのも原作との相違点だ。このうち、トワイライトキャラバンはメンバーのうち、エリコさんとミツキさんの二人が不在で、原作ではリーダーだったルカさんはヴァイスフリューゲルのニノンちゃんと修行の旅をしている。残りの二人であるアンナさんとナナカさんは原作でもしてた賞金稼ぎで生計を立ててるようだ。アンナさんの性格が原作となんか違うけど、相違点が多すぎてキリがないので気にしないことにした…。

ヴァイスフリューゲルはメンバー全員がランドソルにいるのに存在しない、何故だ。

 

兎も角、弱って海面に浮いてきた魚を網で一網打尽にする。

 

あ、ネネカさんが来たようだ。

 

「ネネカさん! おいっす~☆」

 

「おはようございます、ティアナ。」

 

「やあ、少年! ソルの塔以来だね!」

 

マサキさんだ。ネネカさんのプリンセスナイトで公安の刑事さんだ。

 

「お久しぶりです? マサキさん。ええと…ソルの塔以来でしたよね…?」

 

「おや? 少しは記憶が戻ったのかな?

 キミにどうしても伝えたかったことがあるんだ。 

 キミとの闘いを通じて、我が主(ネネカ)は憑き物が落ちたかのように穏やかになった。

 道を踏み外しかけた我が主(ネネカ)を救い出した、キミには感謝している。

 とはいえ、あまり憶えのないことで感謝されてもキミは困るだろう。 気にしないでくれ。

 

…イマイチ実感が湧かないな

原作と比べ物にならないほどの大立ち回りをしてたみたいだけど…

 

「どうかしましたか、マサキ?」

 

「いえ、なんでもありません我が主。」

 

ネネカさんから、なんというか…ルンルンってカンジの雰囲気が醸し出しだされている…

俺はおもむろに海図を取り出し、マサキさんに見せる。

 

「集合時間まで、海をゆっくり楽しむのはどうだ? 

 赤い斜線部分の海域なら、グレートトゥンヌスは侵入できない。」

 

「ありがとう。 私たちは先に船に乗ることにするよ。 海の上でまた会おう!」

 


 

トドメに魔改造電気ショッカーだ!

 

…。

 

……。

 

 

「うわあ……」

 

グレートトゥンヌスだけでなく、

巻き添えで気絶した大量の魚…トゥンヌスが辺りの水面を埋め尽くすようにプカプカ浮いてきた…

うん、やりすぎた…

 

「あんた、えげつないわね…」

 

「あなたさま…やりすぎではないでしょうか…?」

 

「えっと…、魚が起きちゃう前に穫れるだけ獲っちゃいましょう!」

 

…ドン引きされたようだ。 でも『徹底的に』と言ったのはキャルだっただろ(責任転嫁)!

 

結局、漁を中止していた期間が長かったので漁獲量の帳尻は合った。

今更だが、腹黒カリンさんはこの事態を見越して許可を出したのではないのかと思ってる。

だって、 大規模な競りの手配をしてたし…

 


 

「キャルちゃん、キャルちゃん! 早く早くっ!」

 

「急がなくても、グレートトゥンヌスは逃げないわよっ!」

 

「オラたちのつくった料理、楽しんでくれ!」

 

競りにかけられた普通のトゥンヌスの利益をオーマの漁協に分配した俺たちは、追加報酬として、手に入れたグレートトゥンヌスを調理してもらうことになった。机の上に料理がズラッと並んでいる。いわゆる会席料理の形式とは異なるようだがこれはこれでいいと思う。

 

「「「「「「いただきま~す!」」」」」」

 

 

「マサキ、美味しいですね。」

 

「もちろんです! 我が主!」

 

あ、ネネカさんがマサキさんが酌をしようとしたのを断った…

 

「お刺身も結構いけるわね…」

 

「トゥンヌスの茶碗蒸し、最高です! やばいですね☆

 キャルちゃんもあ~ん♪」「やめなさい~!」 

 

…コッコロに漁の感想を聞いてみよう

 

「コッコロは今日の漁、どうだった?」

 

「予想外のこともありましたが…とっても、楽しかったです。」

 

それは、よかった…

*1
空想具現化(マーブルファンタズム)で造った城。原作において造れると判明してるのは真祖の中でも別格に強い3人のみ。出来上がったものは人工物だが、造るのに人工物を一切使用していない。

*2
とんでもなくつおい。 月の鏡像をおとせるくらいには…

*3
プリコネでは夢という形でガイド妖精さん(アメス)と対話したり、現実世界の出来事を回想したりする。なお、これらはガイド妖精さん(アメス)がセッティングしてくれている




謎解き回?でしたが、解決してない謎はまだまだ沢山あります。

主人公の現実でのやらかし

なぜ、聖杯戦争が行われたのか?

なぜ、原作知識を持っていながら、原作と同じ結末になったのか?

とかです。

他には…作中で起こってるのはFGO第2部の焼き直しだったりします。


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カレイドスコープ

忙しいから遅れた。


覇瞳皇帝(ビーストⅣ/R)  「あの真祖(星の触覚)が自らを事象収納して逃したのね! 

       ()()星の触覚が星の内海以外に収納するだなんて予想外だわ!」

 


 

イリヤ   「お主のことで、気になる事がある。 魔術の炎を出してみよ…」

 

ホマレ   「心配してくれて、ありがとう~ えいっ♪」

 

イリヤ   「……お主、()()()でも喰らったかの?」

 


 

キーリ   「先…輩…?」

 

ネビア   「まさか…この周回では美食殿*1を結成していなかったとはね…

       このギルドハウスにぜんっぜん来ないから、かなり気を揉んだのよ~」

 

キャル   「悪かったわね…キーリ。」

 

キーリ   「…大丈夫です!」

 

ネビア   「大丈夫とは言ってるけど、キーリはシャドウ。

       世界の修正が届かない、(サンドボックスの)このギルドハウスから出られないんだからね!」

 

カスミ   「まあまあ。 彼らにも事情があったんだ。」

 

      (彼はキーリを見て驚いてはいたけど、

       『キーリの存在()知っているが、此処に居ること()()()知らない』

       という感触だった。

       ネビアによると、彼が()()()()のキーリを護るために此処に連れてきたらしい。

       証言が正しければ、彼が前の記憶を保持していても、いなくとも矛盾が生じる…

       やはり、彼にはひどく限定的な()()の知識があるみたいだね…)

 

イリヤ   (プリンセスナイトの力が原因じゃと、聞いておったが…

       そうか…()()()()()()()()()とは…このことを言っておったのじゃな…)

 


 

???   「世界各地で発見されている、この生物は『捕食による学習能力を持つ細胞』

       によって構成されています。周囲には、この細胞で製造された武器を持つ人間と

       争った形跡が確認されており、本来は人間に対し敵対的であると思われます。

       WISDOMから押収したデータベースによると、『アリストテレス』と呼ばれる

       生命体と性質が酷似しているようです。」

 

ボヤンシア 「教えてくれ… 世界は終わるのか?」

 

???   「ええ… このままでは遠からず…」

 


 

 

シズル   「怪我はない!? お姉ちゃん、とっても心配したんだからね!」

 

リノ    「お兄ちゃんは、いっつも相談なく無茶するんですから!」

 

ユウキ   「…」

 

リノ    「そっぽを向いたって、誤魔化せないですからね!」

 

シズル   「…!」

 

リノ    「お姉ちゃん…どうかしましたか…?」

 

シズル   「…いーや、なんでもないよ♪」

 


 

ムイミ   「スパイの真似事なんて…、心配したんだぞ、オクトー!」

 

オクトー  「ごめんって、ボクしかやれる人がいなかったからさー、仕方がなかったんだー。

       ムイミは教授(ラジラジ)と一緒に聞き分けのない人を連れてってよー。

       ボクは用事が済んだら、転移魔法で逃げるからさー。」

 

ネネカ   「真那はどこにいますか?」

 

オクトー  「さっき、玉座に座っているのを見かけたよ。」

 

ネネカ   「感謝します…」

 

オクトー  「慇懃無礼な似々花が感謝を口にするなんて…本物?」

 

ネネカ   「私が分身であることを分かって言ってるのなら、些か不愉快です。」

 


 

モニカ   「我々、連合の戦略目標は覇瞳皇帝を排除することである。

       このため、精鋭により覇瞳皇帝の斬首を目指す主作戦と、

       非戦闘員の戦闘予定地域(ランドソル)からの離脱を迅速に行う支作戦を決行する。」

 

      「現在、覇瞳皇帝は多数の分身を駆使し、各国の侵攻を進めているが、

       ランドソルの王城にいる個体が本体であると推定される。

       本体を特定した後、主作戦は実行されるが、

       ランドソルの個体が本体でない場合、若しくは主作戦が開始した場合、

       支作戦は終了され、非戦闘員の一切の保護は放棄される。

       撤退命令より、非戦闘員の救助を優先することは厳禁する。」

 

      「また、機密上明かすことはできないが、現地には協力者がいる。

       各員は柔軟に対応するように。」

 


 

千里真那(覇瞳皇帝)  「分身とはいえ、こんな時に一人でやってきたのね…」

 

ネネカ   「真那と話をするために来ました…」

 

千里真那  「時間稼ぎをする魂胆でしょうけど、無駄よ。

       規模が大きいだけの魔術で私を倒せるわけないじゃない…。

       だから…、似々花の話を聞いてあげる…。」

 

ネネカ   「確かめたいことがあります。 真那は冒険物語が好きでしたね?

       ですから、レジェンド・オブ・アストルムには貴方の嗜好が反映されている。

       クリスと意気投合していたのも、塔の名称をアーサー王伝説と繋がりのある、

       ケルト神話から取ったのも、アーサー王伝説が好きだったからですよね?」

 

千里真那  「何が言いたいのかしら…?」

 

ネネカ   「調べましたが、子供の頃の真那の家庭環境はあまり良くなかったみたいですね…」

 

千里真那  「それがどうしたっていうの?」

 

ネネカ   「昔…、真那が…ルナの塔に、同じケルト神話の月神でも、

       有名なケリドウェン(Cerridwen)ではなく、リヒアノン(Rhiannon)の名を付けたのは、

       『醜い子を殺した母親』に思うところがあったから、ではないのですか?」

 

      「それに、プリンセスナイトの力を、あの子(キャル)から未だに取り上げないのも、

       血縁のあの子(キャル)に未練…依存していたからでしょう?」

 

千里真那  「出鱈目な詭弁を弄して…私を馬鹿にしてるのかしら。」

 

ネネカ   「では、真那はなぜ玉座に獅噛みついているのですか?」

 

千里真那  「…利用するためよ。 当然じゃない。」

 

ネネカ   「嘘ですね。 貴方が王位についてから、

       劣悪なインフラは改善され、破綻した経済は回復しました。

       それを実現するための労力は莫大だったでしょう? 

       暴君として統治すれば、何倍も効率が良くリソースを利用できたはずです。」

 

千里真那  「…」

 

ネネカ   「何よりも…真那は王権を振り翳すのを避けていましたね…?

       彼らが目障りなら、王都にいる間に粛清すれば良いだけのことです。

       七冠でさえ、王都にいる間は手出しさえしなかったでしょう?

       襲撃を行うにしても、尤もらしい理由を捏ち上げるか、偶然を装っていました。」

 

千里真那  「っ…!」

 

ネネカ   「手段と目的の転倒なんて、貴方らしくもない。

       だとすれば、王位は手段ではなく、目的。

       態々、王女に成り代わったということは…

 

千里真那  「黙りなさいっ! 私のことを分かった気になって、大口を叩かないで!!

 

ネネカ   「確信しました… 真那は誰かに止めて欲しかったのですね…」

 

千里真那  「そんなわけないじゃない!」

 

ネネカ   「そして…真那の本当の願いは…

       物語のような、冒険がしたい。

       誰からも愛される、プリンセスになりたい。

       …そうなんですね?」

 

千里真那  「違うっ!

       私は…!」

 

ネネカ   「…夢と冒険の世界に憧れていたのは嘘ですか?

       ロマン先生の話(カルデアの物語)を一番熱心に聴いていたのは真那でしょう!

 

千里真那  「…!!

       ああ…… 私は…そんな夢想を…していたのね…」

 

ネネカ   「…私は後悔しています。 

       世界の全てのデータを集め(人の感情を理解し)、模倣する…そんな大言壮語を吐きながら、

       仲間の異変にさえ、気づかなかったのですから…」

 

千里真那  「でも…もう、何もかも手遅れなのよ… あの頃には戻れない…」

 

ネネカ   「ならば、私は真那の過ちを()()として止めましょう…!

 

千里真那  「…ズルいわね…今更、友人だなんて… 

       でもね…、私は辿り着いてしまった…

       だから、私は自身の野望(覇道)を最後まで貫き通すわ!

*1
原作で結成してたギルド 主人公、コッコロ、ペコリーヌ、キャルが所属するはずだった。扱いづらい原作と状況が違うので消滅した




みんなが自分の知識だけで好き勝手に現状を解釈してるから誰も真相に辿り着けないの図。

カスミが現実のこと思い出してたら主人公の正体に気づいてSAN値チェック入ってたかも。


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星に願いを

第一部完!
改稿してたら遅くなった。


 

覇瞳皇帝  「あら、私に敵うとでも思っているのかしら。」

 

ダイゴ   「確かに、ニセモノのお前にすら、オレ様は苦戦するかもしれねえ…。

       だがなっ! オレ様の方が強えぇ!!」

 


 

―――When you wish upon a star―――

 

―――Makes no difference who you are―――

 


 

―――嘗ての友人へ――カルデアの者( Lord Chaldeas )が告げる―――

 

 

―――灯の形(Stars)――夢の形(Cosmos)――願の形(Gods)――心の形(Animus)―――

 

―――天球は空洞なり(Antrum)――空洞は虚空なり(Unbirth)―――

 

―――されど、虚空には星ありき(   Animus・Animasphere   )―――

 

 

 

―――地を照らし、空に在り、天上(シリウス)の座標を示せ―――

 

―――輝ける星(シリウスライト)よ――どうか今一度、旅人の(しるべ)とならん事を―――

 

 

 

   TIPS : 理想魔術 聖杯探索(Grand Order)/星に願いを( Lord Chaldeas )

 

   それは、星辰を合わせ 星海の彼方より 流星群を呼び出し 神を撃ち落とす 惑星轟(占星術)

   そして、キリシュタリア・ヴォーダイム(カルデアのマスター)が理想とした天体魔術。

 

   理想魔術は極度の困難さから、実現を諦められており、

   大陸を魔法陣とした天体魔術でさえ、『理想』には程遠かったが、

   ロゼッタ(フォトニック結晶)による観測と演算、空想具現化(マーブルファンタズム)による大陸全体の神代回帰に加え、

   ルナの塔(ロンゴミニアド)の莫大な神秘と魔力を魔法陣に装填することで解決した。

   また、アンナの遷延の魔眼とクリスティーナの乱数聖域(ナンバーズアヴァロン)を併用し、

   未来観測及び確率操作を行うことで、命中精度、貫通力が極限まで向上する。

 

   本来ならば、覇瞳皇帝(星を継ぐ者)からユウキ(虚空の者)に向けられるべき魔術である。

   だが、『理想』を諦めない意志がそれを覆した。

 

 

―――Anything your heart desires―――

 

―――Will come to you―――

 


 

覇瞳皇帝(千里真那)と戦うメンバーは、

覇瞳皇帝(千里真那)の逃亡を阻止するために張った、転移を阻害する結界を突破し、

戦場まで特攻…空輸する騎空艇を操縦する騎空士であり、最高峰の戦闘能力を持つジータさん。

ジータさんは原作とは違って、ヴァイスフリューゲルに所属している。

プリコネの設定通り、変身能力があるようで様々な衣装(ジョブ)にフォームチェンジしながら戦うらしい。

覇瞳皇帝(千里真那)との初戦の時のバリアの異様な耐久力を不自然に思ったロゼッタの精密検査によって、

どこからか莫大な魔力が供給されていることが判明した後衛のユイ。

ゲームに囚われる前(『プリンセスコネクト!』の頃)から、近接戦闘においては最強と目された跳躍王(ラジラジ)とルカさん。

中衛として優れた火力を発揮するシズルとリノ。強化支援役(バッファー)として、プリンセスナイトのキャル。

遊撃としてオブジェクトの改竄能力を持つラビリスタさんと、

視ることに特化した龍眼を持ち、シャドウを喰らうことで強くなったホマレさん。

覇瞳皇帝(千里真那)への致命打を与えることが可能な固有能力を持つ俺。

以上の10名と魔力不足で蝶の姿をしているネネカさんの分身一匹だ。

 

覇瞳皇帝(ラスボス)を倒すには心許ないメンバーだが、切り札の天体魔術の発動の他に、既に総力戦体制が敷かれた世界各国での防衛戦、最低でも数十万人規模の避難民への対処などに、多くの人員を割いているのでこれが限界らしい。

 

そんなこんなを考えながら、俺は気嚢がなく翼の生えた小さな騎空艇を観察する。

どうやら、騎空艇は金属製で、後部にブースターらしきものが取り付けられている…。

というか、騎空艇の先端には二つのプロペラまで付いている…

どこからどう見ても飛行機、それも双発機にしか見えない…。

…俺がルーセント学院で学んだ騎空艇の知識は役に立たなかったようだ。

 


 

俺たちは撃墜されにくいロフテッド軌道で、結界の上空から突入しようとしたが…、

ジータさんのトラウマになりそうな操縦も空しく、ビームに貫かれて騎空艇は空中分解した。

そして今、俺たちは空中に投げ出されている…。

 

「死にたくなければ、私の見える範囲に居て下さい。 5秒後に跳躍します。」

 

結界を自由落下で突破するつもりだろうが、ビームが飛び交う中、空中で5秒も耐えられるのか…

って思ったら、皆は壁を創る、ビームを刀で斬るなど、思い思いの方法で回避していた…。

 

「助けなさいよ~!」

 

キャルの鳴き声が遠く響く… 仕方がないので、助け舟を出す…

 

キャルがビームに当たる直前、残骸を蹴り飛ばし、キャルにぶつけて軌道を変える…。

 

「うみゃッ!」

 

直後、ワープの独特な感覚に俺たちは包まれた…

 


 

覇瞳皇帝(ビーストⅣ/R) 「…来たわね。 …令呪を以て命ずる。 アナタたち全員…死になさい!

 

ネネカ  「無駄ですよ、真那。 貴方が霊基に仕掛けたバックドアは無力化しましたから。」

 

キャル  「陛下には、もう誰も殺させないんだから…!」

 

覇瞳皇帝(ビーストⅣ/R) 「言うようになったわね、キャル。 止めれるものなら、止めてみせなさい!」

 

キャル  「望むところよ!」

 


 

鏡像の月がランドソルに落下を始め、無数の昏い光芒が大地を奔る。

まるで、神話の戦いを描いた絵を現実にしたような光景だ…。

 

セイクリッドビヨンド!

強化されたシズルの攻撃は、偽物の月を砕き、群青色の大空が戻った。

 

続いて、覇瞳皇帝(千里真那)は、無数の様々な大きさの分身を作り出し、俺たちに襲いかかってくる。

小動物くらいの大きさの分身から、山ほどの大きさがある分身まで様々だ。

 

コロナレイン!

リノが必殺技を放つと、矢が豪雨となって覇瞳皇帝(千里真那)たちに降り注ぐ。

大半の分身は消滅したが、油断はできない。

不謹慎だが、俺には『コロナ』という名称が()への不幸の贈り物のように感じる。

 

ラビリスタさんが巨大なゴーレムを作り出し、巨人(覇瞳皇帝)を殴り倒し、足元の敵を踏み潰す。

 

跳躍王は、蝿のように集る覇瞳皇帝(千里真那)を拳で叩き落とし、

ルカさんは双刀を振り、その衝撃波のようなナニカで撃ち落としていく…

刀を振った回数に対して、やけに多い気がするが…

 

ジータさんに至っては、放たれた黒色のビームを刀身で弾いて、小さな覇瞳皇帝(千里真那)を撃墜している。

というか、目まぐるしい早さでジョブチェンジ?を繰り返して、戦っている。

 

ホマレさんの龍眼は本体を捕捉し続けているらしく、的確に魔法を浴びせ消耗させてるようだ。

 

俺も盾で攻撃を防ぎながら、味方への強化を続け、剣で斬りつける。

 

 

空に花火が揚がった。 天体魔術の二射目の合図だ。

威力は一射目に遠く及ばないが、それでも戦術核程度の威力はあるらしい。

 

俺たちはラビリスタさんが固有能力で造った地下シェルターに収容される。

ワープで侵入されないよう、ユイが結界を張った。

 

ドォォン…

 

衝撃の後、重い爆音が鳴り響いた…。 …結構地下深くにいるな…俺。

 

 

地上に戻ると、俺は自身の固有能力で決着を付けるために本体に突撃することにした。

俺はネネカさんが視界に投影した、覇瞳皇帝(ラスボス)に辿り着くためのルートを駆ける。

時間(主観)が引き伸ばされた世界を、俺はガラス質の地面を踏み締め、着実に進んでいく…。

 

 

幾許かの時が経過した時、停滞(加速)する時間(思考)の中で、ふと俺は思った。

『俺の固有能力で覇瞳皇帝(千里真那)ロストさせたら(殺したら)どうなるんだろう』って

固有能力で霊基を破壊したら電脳死して、本当に(現実でも)死んでしまうんじゃないかって

 

どうしてこんな肝心な時に、俺は気づいてしまったんだ… 俺に人を殺す度胸なんてないことに…

 

容赦ない現実(リアル)に、足が竦み、剣が震える。

 

もう、覇瞳皇帝(千里真那)は目の前だ。 でも、あと数メートルが届かない… 俺には…無理だ…

 

「大丈夫かい、少年!?」

 

「俺には無理だ… 俺には(千里真那)を殺せない…」「あぁ…恨みますよ…(主治医)… 」

 

俺は主人公(英雄)じゃない… 

ゲーム(プリコネ)のように生き返る(ログアウトできる)保証なんてない…人殺しなんて…無理だったんだ… 

 

 

 

 

 

 

 

「…私の勝ちね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

跳躍王(ラジラジ)  「いいえ、貴方は此処で終わりです。」

 

ルカ   「無明に死になっ! 双刀陸段突き!

 


 

―――If your heart is in your dream―――

 

―――No request is too extreme―――

 


 

千里真那(ビーストⅣ/R) 「私たちの世界にも、その剣技が存在していたなんて…世界は広いのね…

      嗚呼…アストルムの…プレイヤーに…倒される…なら……満…足…だ…わ……

 

キャル  「おやすみなさい、陛下…」

 


 

―――When you wish upon a star―――

 

―――As dreamers do―――

 


 

俺は覇瞳皇帝(千里真那)が放った黒い光線に突き飛ばされたが、

直後、血溜まりの中にいる覇瞳皇帝(千里真那)が光の粒子となって消えていくのが見えた。

一か八かの賭けだったが、俺の保険…『()()()()()()による霊基(霊核)の破壊』が成功したようだ…

 

 

…? みんなの様子が可笑しい… 俺を見てみんな(ユイ)の顔色が悪くなっていく…

 

視線の先を見ると…胸から大量の紅い液体()(こぼ)れていた…。

 

駆け寄ってきたユイが回復魔法を掛けてくれる。

一向に治らない…覇瞳皇帝(千里真那)は俺からコピーした固有能力を使ったようだ…

 

それでも、ユイは俺の手を握って、必死に魔法を掛け続ける。

 

血の流れとともに視界が霞んで…

意識がだんだん遠ざかる…

 

「ねぇ! 起きてよ、ユ■キ君! お■いだから、死■■いで!」

 

原作だと…ラビリスタさんがどうにかしてくれる…

だから、俺はユイを安心させ…

 


 

「医者なんだよね、マスター!」

 

()()()()()()()()()()… アタシには治せない…」

 

「そんな…」

 

()()()()()()()()()』なんて…私は理解したくない。

 

ユウキ君から血が(あふ)れ続けている。

 

時間が止まれば、血も止まるのかな…

 

ユウキ君が死ぬくらいなら… いっそ、時間なんて…止まってしまえばいいのに…

 


 

―――Fate is kind―――

 


 

―――この刹那に私は願う( Werd ich zum Augenblicke sagen )―――

 

―――時間よ、止まって!(   Verweile doch !  )――君が世界の全てに優るから!(     du bist so schön !     )―――

 


 

―――She brings to those to love―――

 


 

…長い時間が過ぎて、わたしは世界が止まっていることに気づいた。 

私は『新世界へ語れ超越の物語(Res novae――Also sprach Zarathustra)』みたいだなって思った…

 

わたしのそっくりさんが現れて、ユウキ君に近づく。

 

「あなたが、時を止めたの?」

 

「…うん。 早く騎士クンを助けよう…もう一人の(ユイ)。」

 

私の霊基(なか)に止め処なく知識が(あふ)れるのを感じる。 今なら、ユウキ君の霊基(からだ)の治し方が理解る!

()()()()()()()みたいに二人で一つのプリンセスだから…

 

 

 

エリス()は…あなた(ユウキ君)の側にはいられない…から、騎士クンの側にいてね…もう一人の(ユイ)。」

 


 

―――The sweet fulfillment of―――

 


 

変な槍と盾を持った大男が追いかけてくる…。

へんたいふしんしゃさんがでるから気をつけてって真琴ちゃんも言っていたけど…

こんなの想定外だよ…!

 

「Guaaa!」

 

路地裏の行き止まりに、光る白い落書きを見つけた。

 

…真琴ちゃんに薦められて見た小説に魔法陣から騎士が現れて助けてくれる展開があった。

こんな落書きに、最後の希望を託すなんてホントは嫌だけど…

そう思いながら、私は落書きに触れた。

 

…何も起こらない。 こんなのに期待した私が馬鹿だったんだ…

 

曲がり角の大男がこっちを向く…

 

「Guaaa!」

 

いやだっ! 死にたくないよ! 誰か助けて!!

 

 

……? ……!? 私…生きてる…!?

 

恐る恐る顔を上げると…見知らぬ若い男がいて、剣で大男を一突きしていた…

そして、心臓のあたりを貫かれた大男は光る粒子となって消えた…。

 

私を助けてくれた彼は私の方へ振り向いて、夜光に照らされながら…

 

問おう、オマエが俺のマスターか――

 

うん…!

 

私は彼に見惚れてしまった。 その一瞬(刹那)ずっと(永遠に)続くようにさえ感じた…

 

 

「じゃあユイ、俺が安全なところまで運ぼう。」

 

彼は教えてないはずの私の名前を呼びながら、腰が抜けた私をお姫さまだっこしてくれる。

恥ずかしいけど、抵抗する気は湧かない。 …逃避行も悪くないって、私は思った。

 


 

―――Their secret longing―――

 


 

――劇的な2週間だった――

 

 

■■■   「早く逃げないと、私の超能力で どるるるるる~ん☆ しちゃいますよ~♪」

 

 

――昨日の敵と絆を結び――

 

 

■■■■  「わたし… みんなのために歌えるかな…」

 

 

――みんなと力を合わせて――

 

 

■■■■■ 「無垢な子供を傷つけるなら、ワタクシにも覚悟がありますぞ!」

 

 

――巨悪と対峙したんだ――

 

 

■■■   「ナラカ(火の時代)より来たれ、アムリタ( 古竜 )化身(同盟者)よ!」

 

 

――君は名前すら、教えてくれなかったけど――

 

 

■■■   「訳あって、名乗れないんだ。 ごめんな、ユイ。」

 

 

――私もみんなも助けてくれた――

 

 

■■■   「わらわのせいなのじゃな…… わらわが世界を燃やさなければ…」

 

■■■   「■■■たちが足掻いた末の、今この世界だから…

       その『結末』は『無意味』でも『無価値』でもない…俺はそう信じてる。」

 

――私はそんな君が好きでした――

 


 

―――Like a bolt out of the blue―――

 


 

アストルムで出会ったユウキ君は、あの時の彼(初恋のひと)ではなかった。

別人だって割り切れないくらいには似ていて、どこか違う。

 

ユウキ君は彼よりも余裕がなくて…、何よりずっと仮面を被っていたんだ。

そして、ユウキ君は泣きじゃくる子供のように、誰かに救いを求めているようだった。

だから、私は見てられなかった。 誰かを救う度に自身を傷つける…そんなユウキ君を…。

 

私は彼に救われた。 だから、今度は私が君を救う番。

 


 

―――Fate steps in and sees you through―――

 


 

「■してる。」

 

「やめてくれ…!」

 

「あなたを…他の誰でもない、()()()()()()()()()愛しています。」

 

「お願いだから、やめてくれ…!

 オレは人の立場を乗っ取って、本物のフリをしていただけなんだ!」

 

「あなたが自分を偽ってることくらい、知ってた。 

 でも、私はそんな不器用なあなたに恋をしたんだよ。」

 

「オレは■■を騙して、プリンセスにしたんだぞ…!」

 

「それでも、私はあなたのことが大好きです。 だから…自分を傷つけないで。」

 

「オレが最後まで演りきれば、みんな助かる。

 それでいいじゃねぇかよ…!」

 

「自分らしく生きてもいいんだよ。」

 

「そんなことしたら…」 ――また、大切な人(家族)を失ってしまう…

 

「安心して、私がずっと側にいるから。」

 

「…オレはもう…誰も、喪いたくないんだ。

 そのために、できることは全てやってきた…。

 人を助けることの何が悪いんだよ!」

 

「でも…、あなたが救われない。 そんなの、イヤだ!

 ワガママだっていい! 私は決めたの! いつか必ず、あなたの笑顔を見るって!」

 

「どうしてそこまで…オレに構うんだよ…」

 

「あなたに伝わるまで何度でも言うよ。 他の誰でもない(原作主人公じゃない)、あなたに恋をしたんだって。」

 


 

騎士クン(ユウキ君)…いつか…必ず…エリス()を殺しにきて……」

 

「ああ…! オマエを必ず…救ってやる……!」

 


 

目が覚めると、ベッド(知らない天井)だった。 

全く覚えていないが、ひどく懐かしい夢を見ていたような気がする…。

 

「起きたんだね、ユウキ君! あの時は死んじゃうのかと思ったんだよ…」

 

ユイが抱きついてくる。 苦しい…  案外、心配されてるんだな…俺。

 

「病み上がりだから、あまり弟くんに無理させないでね、ユイちゃん…♪」

 

姉を名乗る不審者(シズル)が原作的に、違和感ありまくりな発言をする…

現実世界の俺も岸くん(原作主人公)でないとは、薄々気づいてたけど…何をやらかしたんだ…?

 

「ところで、覇瞳皇帝(千里真那)はどうなったんだ?」

 

あの人(覇瞳皇帝)は死んじゃったらしい…。 

 マスターが言うには、霊基が汚染されていたから、現実には戻れないだろうって。」

 

そっか…

 

バタバタと足音を立てながら、部屋にキャルとコッコロが入ってくる。

 

「起きたわね、ユウキ! 今日の夜、オーンスタイン城でパーティーするわよ! 

 あたしの腕によりをかけて、おいしい(魔物)料理を作るんだから♪」

 

昆虫料理が出てくるのだろうか…

 

「あなたさま! わたくし、心配しておりました。」

 

「…心配かけてごめん。」

 

コッコロがいると日常に戻ってきたことを実感するなあ…

 


 

「ユウキ先輩! お久しぶりです!」「麦しゅわ~しゅわしゅわ~「ボス(ホマレ)がいなくなって心配だったんですよ!」

 

うわっ!?「ごめ~ん☆ ちゃんと埋め合わせはするから~」 

 

目の前にいるのに気づけなかった…! アユミ*1サンおそるべし! 「そういう問題じゃないです!」

 

「大丈夫ですか!?」「ごめん… 私が悪かったね…」

 

「少し、驚いただけだから…。 それにしても、相変わらず隠形(ストーキング)?すごいなあ…」

 

「はい♪ ホマレさんにも褒められたんです♪」「はあ…、今後はこんな無茶は厳禁ですよ、ボス…」

 

意外な繋がり…

確かに原作でもそういうイベントあったけど、今回のループではそんな時間なかっただろうに…

 

「ところで、パーティーに呼ばれたってことは潜入工作でもしてたのか?」

 

「えぇと、ファントムキャッツ(タマキ)*2さんと王宮に不法侵…仕事をしてました!」

 

へぇ… アキノ案件(イベント)に巻きこまれそうだから、深掘りするのやめとこ…

 

「おお! シグルド(スルト)ではないか!」

 

アンナ*3!? 俺はシグルドじゃねえよ!?

 

「アンナちゃん… ユウキ先輩はシグルドではないですよ?」

 

「『殻』を被り、自身の在り方で悩み続けるあたり、ユウキはシグルド(スルト)だ。

 特に不器用なところがシグルド(スルト)ではないか?」

 

色々と見透かされてるんだろうけど、不思議と不快に感じない…。

なんというか…優しい眼差しで見守ってくれてるような感覚だ…

 

「…そうですね! ユウキ先輩はシグルドです!」

 

いや、この会話でアユミは何を理解した!?

俺をなんだと思ってるんだ…!?

 

 

   TIPS : 遷延の魔眼

 

   可能性を視る魔眼。 未来視の一種。 強大な存在を世界に押し留める要石でもある。

   オフェリア・ファムルソローネ(Lostbelt No.2を担当するクリプター)のそれは右目であったが、アンナのそれは左目である。

 

   現実におけるアンナ、即ち『柊 杏奈』は占夢の一族の末裔である。

   アンナは幼い頃より、失われし異なる世界(Lostbelt No.2 ゲッテルデメルング)の記録を夢として追体験しており、

   世界に終末を齎すことしか知らない(オフェリアへの恋心を表現できなかった)、炎の巨人スルトに憐憫と憧憬を抱いた。

   そして、スルト(シグルド)のマスターである、オフェリアの魔眼を宿すに至った。

 

   アンナの魔眼の本質は望む未来を手繰り寄せる、アポートと呼ばれる超能力の最高峰。

   英雄への憧憬が曖昧な超能力に明確な(未来)を与えた。

 

   『柊』は凶夢に現れる|厲鬼(悪鬼)を祓う際、柊により鬼門を封じたことに由来し、

   『杏奈』の『(あんず)』は陰陽道においては火行に当て嵌められ、

   アンナ(Anna)』という読みは視力に優れるとされた鷲を意味する。

   故に、アンナがオフェリアとの縁を紡いだのは必然であったのだろう。

 

 

「あら、ユウキじゃない。」「おはようございます、先輩。」

 

ネビア(妖精さん)キーリ(シャドウ)だ。

二人は天体魔術で王都が消し飛ぶ可能性があったから、美食殿のギルドハウスから、

同じく世界の修正が届かないオーンスタイン城に移り住むことになった。

ラビリスタさんが『月の女王』*4と表現するくらいの凄まじいメテオで、

王都はギルドハウスごと消し飛び、ソルの塔だけになったのだから懸念は正しかったようだ。

 

「パーティー、楽しい?」 「お兄さま! あ~んしてください!」

 

「昆虫食は苦手だわ…」「美味しいです。」 「もしかして…昆虫…!?」

 

人形(15cm)くらいの大きさのネビアにとって虫はキツイだろうなあ…

 


 

「やあ、少年! クレープひとつ食べてかない?」「おお、ユウキじゃないか!」

 

ラビリスタとムイミがいる。 「ペコリーヌは相変わらず、よく食べるわね~ ねぇ、あたしの作った料理はおいしい?」

 

「なあ…どうして城の中に屋台があるんだ…?」 「モチロンです☆ わたし好みの味付けでやばいです☆」

 

「趣味だよ♪」「晶のクレープって七冠にしては普通だよな~」 「そう! なら、よかったわ♪」

 

うん、なんというか普通としか表現できないクレープだ。

個性がなさすぎて、逆に個性というか…

 

…何か忘れてるような。

 

「ムイミ、オクトーはどうしたんだ?」

 

「相棒なら似々花と教授に連れてかれたぞ~」

 

今頃、折檻でもされてるんじゃないのか…

くわばら、くわばら…

 


 

―――When you wish upon a star―――

 


 

ユイだ。なぜかアタフタしている。

 

「どうしたんだ?」 「お兄ちゃんにも春が来ましたよ、お姉ちゃん!」

 

「わ…わたしの手料理を食べてください!」「弟くんを見守るよ、璃乃ちゃん!」

 

…!?

 

「えっ…いいけど…」

 

そう言うと、ユイは弁当を差し出してきた。 こちらを覗くタコさんウィンナーがかわいい。

 

椅子に座り、弁当箱の蓋を開けると、ムワッといい匂いがあたりに立ち籠める。

綺麗な形をした、だし巻き卵を口に入れる。

 

「おいしい?」

 

「うん、とてもおいしい。」

 

懐かしい(■本の)味がする。

 


 

食べ終わると、ユイが感想を聞いてきた。 

『とてもおいしかった』、と伝えるとユイは喜びを露わにする。

 

「作った甲斐があった…!」

 

そのユイの笑顔は…何よりも尊くて…美しいように思えた…

 


 

―――Your dreams come true―――

 


*1:ストーカー。気配を消すことが得意で、視ることに特化した魔眼である龍眼でなければ、アユミが何をしても認識できないというR18でありそうな凄まじいステルス能力を持っている。

*2:銭ゲバ義賊。タイヤキが好き。機械工学が専門でアキノがギルドマスターのメルクリウス財団に所属している。不正から民衆を救うために義賊になったが、メルクリウス財団がその思想に同調したため、ギルドの稼業として再出発を果たした。

*3:魔眼を持つ末期の厨二病患者。狂化スキルがついてそう。プリコネのキャラは癖が強すぎるので、アンナですら常識人に属する。FGOの設定と悪魔合体した結果、アンナの妄想が現実になった。なお、騎士クンをシグルド呼ばわりするのは原作通りである。

*4:ハインライン氏によるSF小説『月は無慈悲な夜の女王』に登場する、マスドライバーによる攻撃のこと。月から発射した隕石を地球に落とし、核兵器に匹敵する威力を発揮した。 オリ岸くんは『月は無慈悲な夜の女王』ではなく、型月作品に登場する『月の王』による『月落とし』を想像したようだが。

 

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「陛下…いい夢を見られますように…」

 

 

「…さっきの歌は、真那が好きだった『星に願いを』…だったかな?」

 

「…聞いてたのね。 …ええそうよ、あたしの歌は陛下のお気に入りだったのよ。 

 ところで…あんたはどうして此処に?」

 

「過ちを犯したとはいえ、ボクの大切な友人だったから…。」

 

「ふぅん。 だったら、後であたしの知らない陛下のこと、聞かせてくれる?」

 

「いいよ、ボクに話せることならね。」

 

*1
ストーカー。気配を消すことが得意で、視ることに特化した魔眼である龍眼でなければ、アユミが何をしても認識できないというR18でありそうな凄まじいステルス能力を持っている。

*2
銭ゲバ義賊。タイヤキが好き。機械工学が専門でアキノがギルドマスターのメルクリウス財団に所属している。不正から民衆を救うために義賊になったが、メルクリウス財団がその思想に同調したため、ギルドの稼業として再出発を果たした。

*3
魔眼を持つ末期の厨二病患者。狂化スキルがついてそう。プリコネのキャラは癖が強すぎるので、アンナですら常識人に属する。FGOの設定と悪魔合体した結果、アンナの妄想が現実になった。なお、騎士クンをシグルド呼ばわりするのは原作通りである。

*4
ハインライン氏によるSF小説『月は無慈悲な夜の女王』に登場する、マスドライバーによる攻撃のこと。月から発射した隕石を地球に落とし、核兵器に匹敵する威力を発揮した。 オリ主は『月は無慈悲な夜の女王』ではなく、型月作品に登場する『月の王』による『月落とし』を想像したようだが。



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ビーストⅣ/R マテリアル

 

 

人類悪 抽出

 

 

 

ビーストⅣ/R

 

真名     千里真那

原罪     『愛玩』

固有スキル  ネガ・プリンセス

 

功績 『英霊なき世界で聖杯戦争を成立させ、人類悪なき世界にビーストとして顕現する。』

 

愛  『人類史を都合のいい新世界で塗り替え、他者へ向けられる愛を独占する。』

 

 

マテリアル

 

ビーストⅣ/Re:Dive。

ビーストⅣ/Lost は『動物たちを愛する』獣だったが、

こちらは、『人々に愛されたい』人間。

 

獣人のアバターを使用し、コヤンスカヤが人類に対しての災害になることを拒絶したため、ビーストⅣ/Rとして顕現できた。

 

千里真那の原点は無垢なる願い――誰からも愛してもらえる、プリンセスになることだった。

本来なら子どもの空想で終わるはずだったが、幸い/不幸にも彼にはその夢を実現できるだけの才覚があった。ある日、国連直属のネットワーク保護団体「WISDOM」が過激なコスモポリタンであり、そのためならどんな非道を行える組織であることを知った彼/彼女は、WISDOMを利用し、夢を実現することを思いつく。

 

超能力者(ムイミ)に人体実験を行い解析した超能力、解析した超能力を使い異世界人(魔術王)から吸い出した異世界の情報、それを理解したとき彼/彼女は歓喜した。そして、彼/彼女は思いつく、世界中から天才(七冠)を集め、電脳世界を活用したゲームを創り出し、そのゲームのプレイヤーを英霊に見立て、月の聖杯戦争を再現することで、世界に穴を開け、異世界の法則を引き摺り出し、聖杯(ミネルヴァ)を起動させることを。だが、二つほど問題があった。聖杯を奪われる可能性に、聖杯が暴走する危険性が。故に、彼/彼女は聖杯に人格(ミネルヴァ)を付与することで制御装置とし、勝利の暁には聖杯(ミネルヴァ)と融合し、確実に自身のものとすることを計画した。かくして、偽りの聖杯戦争が始まる。無数の強者が(プリンセス)の座を奪い合う修羅道が…。

 

 

だが、ウィズダムの計画は監視者(ウォッチャー)に率いられると噂されるディープステートに阻まれ、彼/彼女の覇道には一人の少年(ユウキ)が立ちはだかった。その少年(ユウキ)はこのゲーム(聖杯戦争)の攻略法を自身(真那)以上に熟知していた。彼/彼女の覇道を阻止するため、友人を頼り、敵を味方にすることで確実に勝者に近づいていった。皮肉にも、少年(ユウキ)の行動は裏目に出てしまう。彼/彼女は仲間に絆され、とっくに覇道への情熱を失っていたが、仲間を心を次々に奪う少年(ユウキ)への恐怖心が「愛されたい」という渇望を再び呼び覚まし、彼/彼女から諦めるという選択肢を奪ってしまった。そして、勝者を決める決戦のとき、少年(ユウキ)とその仲間との会話を聞いた彼/彼女は遂に確信する。目の前にいる少年(ユウキ)観察者(ウォッチャー)であり、実験体(ソロモン王)と同じ異邦人(領域外の生命)である…、と。

 

熾烈な戦いの後、敗北した彼/彼女は聖杯(ユイ)を操り自身の願いを叶えさせようとしたが、目覚めたユイにより別の願いで上書きされ、彼/彼女の野望は潰えるかに思えた。だが、すんでのところで異世界(型月世界)からこの世界に人類悪(ビースト)という概念の抽出に成功した彼/彼女は、その力を用いて、少年(ユウキ)たちを倒し、聖杯(プリンセス)を破壊した。

 

かくしてアストルムは中途半端に願いが叶った世界に新生する。だが、新世界は特定の人物(ユウキ、ユイ)が死ぬ度に時間が巻き戻る、彼/彼女には不都合な世界だった。

 

とある国の王女(ユースティアナ)に成り代わった後、時間が巻き戻る度に僅かに前のループの痕跡が残ることに気付いた彼/彼女はそれを利用し、自身の理想を実現することを思いつく。ループを何百、何千回と繰り返し、世界に処理できない量のエラーを蓄積させることで、世界の情報量の肥大化を引き起こし、「現実」とこの世界(アストルム)との比重を逆転させ、現実世界を塗り潰すことを…。

 

世界のバグ(シャドウ)を取り込み、自身を強化するとともに、特大のバグ(人類悪)となった彼/彼女は、『新たなる自然(アストルム)』の長として『現実』に立ちはだがる。

 

以上の功績をもって彼/彼女のクラスは決定された。

覇瞳皇帝なぞ偽りの名。

其は人間が夢想した、

最も効率よく人類史に成り代わる大災害。

その名をビーストⅣ/Re:Dive。

七つの人類悪から零れ落ちた、『愛玩』の理を持つ獣である。

 

 

スキル

 

・ネガ・プリンセス:E

血筋や愛、絆などの「繋がり」を否定するスキル。

このスキルによって王女《ユースティアナ》に成り代わり、願いを叶えるプロセスを妨害した。

無意識下で「自身を理解されたい」という願望を抱いているため、ランクが著しく下がっている。

 

・単独顕現:B

現実世界に肉体が存在するため、不完全な発現をしている。

また、解析した跳躍王の能力がこのスキルに統合されている。

 

・獣の権能:A

対人類、とも呼ばれるスキル。

6日間の戦闘でアストライアの全国家を崩壊にまで追い込んだ最大の要因。

 

・自己改造:A

大量のシャドウを取り込み続けたことにより獲得した。

単独顕現と合わせて、ループごとに強くなり続ける原因となった。

 

・昏き深海:EX

ビーストⅣ/Rはシャドウを掬い上げる深海そのものである。

このスキルを持つ者は存在するだけで世界(絵画)を侵し、塗り潰す。

シャドウの正体は古き世界の住民の成れの果てである。

 

・変貌:EX

生物を含めた、様々な物体を投影するスキル。応用として、霊基そのものを調整することも可能。

シャドウを素体とした場合、完成したものの性能が飛躍的に向上する。

このスキルはネネカが持つ権能を解析したものである。

 

・千里眼:EX

「覇瞳天星」と呼ばれる、七冠(セブンクラウンズ)として、覇瞳皇帝(千里真那)が持つ権能。

 

 

宝具

 

新説・月落とし(Type Moon Is a Harsh Monarch)

ランク:EX

種別:対文明宝具/対城宝具

レンジ:3844

最大捕捉:5ヶ国

実物大の月の鏡像を造り出し、大地に落下させる宝具。空間を超える手段があれば回避できる。

月のアルテミット・ワン(アリストテレス)である朱い月(タイプ・ムーン)のそれを再現したもの。

覇瞳皇帝(千里真那)が万全の状態で発動すれば、オリジナルを超える性能を発揮する。

 

奈落の蠱(アバドン)

ランク:EX

種別:対人理宝具/対概念宝具

『終わりなき終わり』。ありとあらゆる生命への最大の冒涜。人類が想像した最悪の死生観。

持てる総ての力でこの宝具(法則)発動(流出)だけは阻止しなくてはならない。




反転アリ


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神々に神座なし

―――はじまりの灯は世界に四つの差異(ソウル)を見出した―――

 


 

イリヤ   「一つ、昔話を聴いてはくれぬか?」

 

ロマン   「モチロンさ…! ボクの話も聴いてもらったんだ…!」

 

イリヤ   「古き時代、世界は霧に閉ざされ、岩と大樹、古竜があるばかりだったという…。

       しかし…いつしか、『はじまりの火』が起こり、全てを変えたのじゃ…。

       闇から生まれた幾人かが、火に惹かれ、王のソウル(生命)を見出した…。」

 


 

―――はじめの一つは熱と冷たさを―――

 


 

イリヤ   「…イザリスの魔女と混沌の娘たち。」 

 


 

―――つぎの二つは死と生を―――

 


 

イリヤ   「その(ソウル)の殆どを『死』に捧げた… 最初の死者、ニト。」

 


 

―――そして三つは光と闇を―――

 


 

イリヤ   「そして、太陽の『光』の()、グウィンと彼の騎士たち。

       それらの王が、生命(ソウル)を持たぬ永劫…古竜に挑み、勝利した…

       そうして、『火の時代』は始まったのじゃ…」

 


 

―――そして終わりの四つ目は、とっくに意義(せき)を失っていた―――

 


 

イリヤ   「しかし、四人目の王がいた。 それが見出したのはダークソウル(闇のソウル)

       冥く(くらく)冷たい闇のソウル。生命を侵し(人間性を与え)、闇に堕とす深淵じゃった。」

 


 

―――三つ目で終わっていれば良かったのに、と誰かは恐れた―――

 


 

イリヤ   「そして、それを見た()は恐れたのじゃ。 火が消えた『闇の時代』を…

       だから、王を薪とする火継ぎにより、世界を照らし続けようとしたのじゃ…。

       しかし、受け継がれた火は時代を経るごとに翳っていった…。

       人だけでなく、空にすらダークリングが現れる(火の封が破れる)程にの…」

 


 

―――四つ目の名は人間性(ダークソウル)、生命を狂わす生温い深淵()―――

 


 

イリヤ   「ダークリングは()が人に封じた『火』が翳ることで生じるのじゃ…

       つまり…、ダークリングが現れた者は不死になる。

       不死であっても、不死身ではない…。当然、体は朽ち、精神は摩耗していく…

       わらわが生まれた頃には、世界は狂った不死…亡者で溢れかえっておった。」

 

ロマン   「…!!

 


 

―――ソウルとは灯が齎した恵み―――

 

―――薪が尽きぬ限り燃え続ける、炎の(わざ)だ―――

 

―――けれど、深淵(深海)は灯が絶えた後の摂理―――

 

―――光や熱、生すら持たない(ごう)を、一体世界の誰が、安らぎと讃え尊ぶものか―――

 


 

イリヤ   「当時の王家は血の営みに発狂し、火継ぎを終わらせようとしていたのじゃ。

       そして、火継ぎを終わらせ、新世界を創る方法が見つかったのじゃ。

       そのために、わらわは半竜と魔女の間の娘として生まれた…。

       わらわは特殊な生まれ故に『生命狩り』という禁忌を身に宿していた…。

       だから、竜狩りの剣士(オーンスタイン)に古竜の頂へ匿われ、育てられたのじゃ…」

 

      「そして…四つのソウルを宿す竜の御子…わらわに使命が与えられた…

       火防女と共に、因果()を超え、ソウルを焚べ(王たちの生命を狩り)、世界を焼却し、描き直す使命を…」

 

ロマン   「まさか…キミは人理焼却を実行したのかい!?

 

イリヤ   「そう、わらわは人類史の総てを熱量に変換し(顔料として)、世界を描き直したのじゃ。

       法王サリヴァーンは『闇の時代』は『人の時代』、

       火が消え、生と死から開放された闇には安らぎが或るとも言っておった。

       後悔はしておらぬが…わらわは彼らから見れば『人類悪』だったのかもしれぬ…」

 

 

   TIPS : 空想具現化(マーブルファンタズム)

 

   それは、『火』により世界(空想)を描き下ろす描画技法(マーブリング)

 

   現代においては、『火』に由来する現象、技術は失われており、

   それを知るのは極僅かのみである。

 

   『火』は潰えた。

   もはや、絵画が焼失することはないだろう。

 

 

イリヤ   「お主らが『シャドウ』と呼んでいるモノ。

       あれは、わらわの時代では深淵(人間性)…と呼ばれていたものじゃ。

       人間の成れの果てで…火を持たないが故に()のような姿をしておる…。

 

ロマン   「キーリちゃんは違うようだけど…」

 

イリヤ   「プリンセスナイトとやらには、失われたはずの古き時代の『火』が宿っておる。

       キーリが人間としていられる(人間性を取り戻した)のも、ユウキの『(Estus)』を受け入れたからじゃろう。」

 

      「覇瞳皇帝の企みが成就したとして、そこには死すら許されぬ地獄が待っておった…

       聖書に喩えて言うならば、永劫に続くアバドン(奈落の蠱)かの。

       覇瞳皇帝はおそらくは無自覚に、本質を言い当てておったようじゃが…」

 

 

   TIPS : 宝具 アバドン(奈落の蠱)

 

   それは、パンドラの匣が空けられることによって起こる確実な滅び。

   それは、決して実現されてはならぬ獣の夢。

   聖杯戦争により穿たれた『暗い穴』から汲み出された人間性(ケイオスタイド)シャドウ(奈落の蠱)である。

 

   この宝具が使用されれば、生命から『死』は奪われ、世界は不死(アムリタ)で溢れ返る。

   不死と云っても、ただ生かされているだけ。傷つけば痛みを感じ、老いは体を蝕む。

   たとえ、致命傷を負ったとしても、人間性を喪い、直前の状態まで回帰させられる。

   いずれ、不死(アムリタ)限りない苦痛(人間性の枯渇)に狂い亡者(ユガ)となる。

 

   嘗て、亡者(ユガ)から喪われた人間性(ソウル)深海(黒色の泥)となり、世界を覆い尽くした。

   だが、ある吸血鬼(PROTOTYPE:EARTH)がその殆どを焼却し、残渣を世界の裏側に封じ込めることに成功した。

   この宝具を使用することは、世界を裏返し、古き時代(法則)に回帰することと同義である。

   しかし、現生人類にとって、もはや『深海』は救いにはなり得ない。

 

   覇瞳皇帝はこの宝具の詳細を知らない。

   否、誤解していた。

 

   この宝具の正体は、決して空けてはならぬパンドラの匣。

   永遠の生命という希望が絶望に堕落し、無数の不死が永劫の苦痛に狂う地獄(ナラカ)である。

 

   過去のある時点において、この最悪の事象が顕現した痕跡が存在する。

   それは、不確実な跳躍の末、一柱の魔神が犯した、決して許されない失敗(過ち)だった。

 

 

「はい、お疲れさま。

 一つ愚痴をこぼしてもいいかしら?」

 

「言うわよ…

 ルナの塔を引っこ抜いて覇瞳皇帝(カイザーインサイト)に使うなんて、想定外にも程があるのよ!

 色々と計画が狂ったんだからね!」

 

「お、怒ってないわよ!?

 ただ…あんたはソルの塔での決戦のとき、覇瞳皇帝(カイザーインサイト)に電脳体を砕かれたの。

 あんたの固有能力はあくまでも『肉体』…つまりは霊子体を破壊するものなんだけど、

 覇瞳皇帝(カイザーインサイト)はそれに加えて、『魂』、『精神』を含めた電脳体すら砕いてしまったのよ。

 霊子体は作り直せばいいけど…、電脳体を砕かれれば、電脳死…本当に死んでしまう。」

 

「…いえ、それは流石に違うわよ。

 確かに覇瞳皇帝(カイザーインサイト)にあんたの固有能力を使えば、死んでしまうのだけど、

 それは、いわゆる『聖杯の泥(シャドウ)』を大量に取り込んだからで、固有能力が原因じゃないわ。

 だってほら、冬木の聖杯戦争だって、霊基を壊された英霊の『魂』を蒐集する儀式じゃない。

 新たな霊基(肉体)を与えれば()()()は蘇れるのよ、アレ。」

 

「えぇ…聖杯戦争ってそんなことまでやってたの…

 話を戻すと、ユイのお蔭であんたは助かったのよ、たぶん…。

 たぶんって言うのは、正しい情報を観測できなかったのよ、あのときは…。

 観測データに欠落や矛盾点が多すぎた。 まるで、二つの時間軸が衝突(collision)したみたいにね。」

 

「兎に角、世界の再編の後、あんたは魂だけの状態でソルの塔上層部…あたしの前に現れたの。

 そして、あたしと晶…ラビリスタで霊基を修復して、あんたを地上に送ったのよ。

 コッコロたんとの冒険を通して、あんたの霊子情報を回収し、馴染ませるためにね。」

 

「あんたには『魂に焼き付く記憶』があるから、殊更慎重に修復する必要があるの。

 今だって、晶が回収した記憶(精神)をループごとに少しづつ埋め込んでいるのよ。

 ルナの塔に友人を連れて行かせたのも、仲間の記憶(友人との思い出)をあんたと共有して、負担を減らすため。

 ルナの塔が無ければ、あんたは現実の…みんなとの思い出を取り戻すのが難しくなるわ…

 できるかぎりのことはするけど、あまり期待はしないでね…

 ごめんなさいね… あたしたちが不甲斐ないばかりにこうなってしまって…」

 

「ありがとう。

 でも、あたしたちは仲間なんだから、あんただけが傷つくのは認められないの…!

 そこんところはあんたにも分かってほしいわ。」

 

「もうそろそろ…、お目覚めの時間みたいね… 夢の世界で、また会いましょう♪」

 


 

ミソラ   「あれっ? アゾールドさんじゃないですか♪

       ICPOから出向してきたんですか~?」

 

アゾールド 「いえいえ、ワタクシの任期満了の時に声を掛けられましてな、

       此処に副所長として赴任することになったのですぞ。」

 

ミソラ   「それにしては赴任がやけに遅くないですか?」

 

アゾールド 「特異点探索(レイシフト)へ向けて、ヴァンピィ姫と修練を積み、

       不味い肉や毒草も最上級の食材にする魔術を体得していたのですぞ。」

 

ミソラ   「あ~アゾールドさん、美食家ですもんね☆

       でも、特異点探索(レイシフト)に同行するってことは、あの金ピカ鎧(羽の騎士の鎧)を着ていくんですか?」

 

アゾールド 「ええ、向こう(特異点)に国家があった場合、ワタクシが矢面に立ちますからな。

       相応の身なりを…

 

ゼーン   「こんなところで何をしている?

       とっくにミーティングは始まっているはずだ。」

 

ミソラ   「ヤダなあ~♪ さっきまで、ランファちゃんと少し遊んでただけですよ~☆

       ……ところでゼーンくん、本当にいいんですか…?」

 

ゼーン   「ああ、覚悟はできている。 紫布菜(シェフィ)を護れるなら、俺はどうなったっていい…」

 

アゾールド 「ゼーン殿、シフナ(シェフィ)嬢を悲しませることになるやもしれないのですぞ…?」

 

ゼーン   「それでも、紫布菜(シフナ)が死ぬよりはマシだ。 …俺がいなくなってもアイツ(■■■)が居る。」

 

ミソラ   「そんなこと言わないで下さい!

       もう、大切な人がいなくなるのは金輪際ごめんなんですよ!

 

ゼーン   「…! 俺は…

 

ランファ  「…ミソラちゃん、なにかあったの…?」

 

ミソラ   「大丈夫です…ランファちゃん。

       ちょっと、トラウマを思い出しただけですから…。」

 

アゾールド 「ミソラ嬢、少し休…

 

ヴォォン…!

 

ミソラ   「うわぁっ!? 何があったんですか!?」

 

ランファ  「レイシフトルーム…から…爆発音がした…」

 

アナウンス 「緊急事態発生。 緊急事態発生。

       中央管制室、及び中央演算室で火災が発生しました。」

 

アゾールド 「テロでしょうな… この爆発音からすると生存者はいますまい…」

 

アナウンス 「機密保持のため、中央区域は300秒後に爆破されます。

       職員は直ちにシェルターへ退避してください。」

 

ゼーン   「俺は職員を救助しにいく。 お前たちはどうする?」

 

ミソラ   「テロリストの狙いは多分レイシフトそのものです。

       テロリストが特異点に渡れば、何が起こるか分かりません。

       だから、わたしたちだけでも特異点へ行こうと思います。」

 

ゼーン   「レイシフトはおそらく使えないが…」

 

ミソラ   「…ゼロセイル(虚数潜航)で行きます。」

 

ゼーン   「ゼロセイル(虚数潜航)だと…?」

 

ミソラ   「ヴァンピィちゃん(ARCHETYPE:EARTH)が、招来体α…アラガミ(STEREOTYPE:EARTH)言いくるめて(友達にして)

       彼らにゼロセイル…虚数潜航に協力するよう説得してくれました。

       5分だけなら、あの『虚数の泥』にも耐えられるそうです。」

 

      「副所長でありながら、今日まで此処にいなかったのも、

       虚数潜航艇を受領していたからですよね…、アゾールドさん…。」

 

アゾールド 「…ええ、そうですとも。 ですが、定員は三人ですぞ。

       此処に居る誰かが残らねばなりますまい。」

 

ゼーン   「分かった。 俺が残ろう…。」

 

ミソラ   「幸運を祈ります…」

 


 

ゼーン   「招来体γがどうして此処にいる!?」

 

アナウンス 「レメゲトンプログラム リスタート。 霊子変換を開始します。

       レイシフト開始まで あと3

 

ゼーン   「!?

 

アナウンス 「FATAL EROOR 全工程、完了(クリア)。 FATAL EROOR

       ロストオーダー 実証を 開始 します。」




「招来体」はゼーンをウルトラマンにしようと考えてた時の名残。
地獄は死の終焉ハブのような世界観。

オリ主の正体?の伏線は既に結構ある。正直、分かった後に見返しても、どこが伏線かはわからないと思う。
裏設定としては、このプリコネ世界に満ちてるのは真エーテル。裏設定なのは、この設定を出す機会がなかったから。
原作カップリングなのは、設定的にオリ主に魅力がなさすぎて、ハーレムを作る余地がなかったから。つまり、好感度バフ(公式設定)がない。(アナスタシアあり)カドックが人理修復に挑んでるようなもの。一話冒頭の「運命力が足りない」発言はこれが原因。
ARCHETYPE:EARTH、PROTOTYPE:EARTH、STEREOTYPE:EARTHは「略図的原型」が元ネタ。

掲示板のアクが強すぎて設定改変を検討している。プリコネはマスコミが嚮導老君(グレートガイダンス)とか痛々しいネーミングをつける世界観だから、掲示板の住民もぶっ飛んだカンジ(厨二病患者の巣窟)にしたけど、このノリは流石にきつい。


以下、没展開の供養。

多重クロスルート
スパロボUXから来たナイアルラトホテップが同じUXに出てきたバーチャロンに目をつけて、スパロボDの破滅の王を召喚して、奪ったタングラムの機能でアザトースを開放しようとする話になる予定だった。「とある」関係の伏線を敷いた後、電脳戦機ネタに流用できることに気づいてできた。全然プリコネじゃないなあとは思ってた。

闇鍋ルート
ヤバいヤツラが望みの破滅を齎すために殴り合う。
勝った方が敵になるだけのルート。
具体的にはR-typeとかウルトラマンが邪神達と殴り合う話。プリコネ世界は犠牲になる。


基本的に「fate/extraのムーンセルとガンダムのジェネレーションシステムって似てね」とかそんな感じの連想ゲームで設定が生えてくる。



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幕間1 Docti Diabolum Demonstrant

要望があったので日常編を書きました。 
RTAしてたメインストーリーに入れる余地がなかったので過去のループのお話。

現実の話を一話やって1.5部か2部に入る予定。
次の部に入る前に、これまで投稿した範囲を改稿します。
内容や伏線とかが増えたり、設定を少しだけ変えたりするかもしれないので注意。
色々と増えます。


この()()、色々あった。

原作と違って、ペコリーヌ(メインヒロイン)と出逢わなかったり、

街で出会ったコッコロちゃんが別作品(FGO)のキャラと兄妹だったり…

原作から早々に外れたこと(原作の岸くんが元から居ない)を理解した俺は、ユイの誘いに乗ったんだ…

フィオ(アメス)によると、()()記憶の欠片(メモリーピース)を回収してくれれば、あとは自由に冒険していいらしいし…

つまり、俺はこれから何度も死に続けるのだろう…

俺たち夜明けの星(トゥインクルウィッシュ)の目標は、()()()()()()のように、みんなでソルの塔を踏破することだ。

だから、俺は『オレ』の足跡をたどることに決めた。 覇瞳皇帝を倒す手がかりを得る(みんなと冒険したいという夢を叶える)ために。

そして、■■■との『約束』を果たすために…

 

そうして、トゥインクルウィッシュに加入した俺は、一緒にルナの塔に登って記憶を探したり、

バカンスも兼ねたビーチゲーム大会に参加して、何故か魔物と戦ったり…、冒険を楽しんでいた。

 

空に浮かぶソルの塔には様々な場所にある転移魔法陣を使って行くことができる。

より高階層へ行ける転移魔法陣を発見した時、みんなで喜びを分かち合ったのはいい思い出だ。

塔の最下層から見下ろす景色も良かったし、大切にしたい思い出ばかりだ。

大切な思い出をずっと記憶できたらいいのに…

 

 

そして、今日はハロウィン。 ギルドのみんなも今日は個人で行動するらしい。

 

 

「トリック・オア・トリート!

 お菓子くれてもイタズラしちゃうぞ!」

 

イタズラがライフワークなミソギちゃんに声をかけられた。

取り敢えず手元に残った()()のお菓子をプレゼントする。

 

「ミソギからもにいちゃんにお菓子をあげる!」

 

黒い飴玉を二つ貰った。 どこかで見たことのあるそれを一つ、口に入れる。

 

……マズっっ!

 

「あー! 引っかかった~♪

 それはね~サルミアッキって言って、とっっても、まずい飴なんだよ~!」

 

…サルミアッキって、不味いことで有名な北欧のリコリス菓子のことか!

 

「ところで、にいちゃん! ユニとお化け屋敷をプロデュース?してみたんだ~

 にいちゃんにも遊んでってほしいな~♪」

 

呼び捨てされるとは…さては、()()のサレンさん(17)やキョウカちゃん(8)にオギャってたな……

リトルリリカル不名誉団員(ミソギ(9)&ミミ(10)&キョウカ(8))だもんな…ユニ(18)は…

 

残った飴玉をスーツの()()()()()()()()()俺はお化け屋敷で遊ぶ?ことにした。

 


 

「にいちゃん、お化け屋敷どうだった?」

 

ナニアレ…ガチで怖かったんだけど…

今日の夢に出るかもしれない…

 

「怖かった…」

 

貞子レイさんに追いかけられるのは怖かった…

立体映像で怖さが倍増だったし…。

 

純真無垢なミソギちゃんが思いつくわけがない!

絶対、邪な大人がミソギちゃんに入れ知恵しただろ…!

 

「にいちゃんは『やんでれ』がこわいって、ロマンにいちゃんが言ってたから、

 レイねえちゃんたちにも手伝ってもらったんだ~♪」

 

またお前か…

 

レイさんはヤンデレなんて言葉、分からなかっただろうによく演じれたな…

あっ、ユニが教えたのか… ユニなら喜々として教えそうだし。

 

…レイさんのオバケの衣装はゲーム(プリコネR)のハロウィンイベントのヤツだっけ。

思い返してみると、同じイベントに出てたかわいいオバケ(幻想種)も居たような気がするし。

だとしたら、同じイベントに出てたツムギさんも協力したのかな?

 

でも、あれほど怖いオバケ屋敷になったのは、ミソギちゃんのセンスの賜物だよな…

 


 

夜空がサーチライトに照らされている…。 街の反対側で、カルミナのライブが始まったようだ。

 

俺もライブを見たかったが、パーティーへの招待を受けたので見に行けなかった。レイさんも招待を受けたが、カルミナのツムギさんとの先約があるから断ったらしい。

カルミナは3人組のアイドルユニットだ。メンバーは、リーダーのノゾミさん、歌で精霊?を使役するチカさんに仕立て屋のツムギさんだっけ…

 

そういえば、ロマンとコッコロちゃんの兄妹は今日のライブを楽しみにしているそうだ。特にドルオタのロマンはカルミナのグッズを大量に買いこむ予定らしい。アジトのスペースも考えてほしいと姉ちゃん(シズル)がボヤいていた。まあでも、ロマンとしてはラビリスタさんが拡張するから問題ないという魂胆なのだろう。

 

…ライブに行きたかったなあ

 


 

パーティーに行くと…サレンさんがいた。

 

「あら、あんたも呼ばれてたのね。 あんたもパーティーに呼ばれるなんて、結構儲けてるのね。

 …あんたの場合、儲けているってよりは、ギルドへの貢献が評価されてるのかしら。」

 

そう言って、コスプレ(仮装)したサレンさんが好物のチョココロネverハロウィンを頬張る。 かわいい…

 

随所にデフォルメされたジャック・オー・ランタンやオバケがあしらわれたドレス。 かわいい…

 

「な、何よ…じっと見つめて… あんたも食べないの? お腹空いてるでしょう?」

 

確かにそうだと思ったので、俺もクロワッサンを食べる。カボチャの風味がおいしい。

 

「おーほっほっほ!

 サレンさんではありませんこと!

 そのドレス、お似合いでしてよ!」

 

「アキノさんも。

 とっても似合ってるわよ。」

 

…ヤバい『勝負』が始まる。

アキノさんとサレンさんのライバル意識が強すぎて、いつも何かしらの『勝負』を始めるんだ…。

前の『勝負』の時は、売上を競った結果、過度な価格競争で経営が悪化した商店が多く出たから、

ギルド管理協会と俺で事態を収拾するはめになったんだっけ…

 

「『勝負』するなよ…?」

 

「ええ、ちゃんと反省しているわ…。

 たとえ、商人として正しいことをしていても、

 周りに迷惑をかける可能性があることに気づかなかった…。」

 

「わたくしもです…。

 わたくしたちのような大商人が自由勝手に動けば、小商人は大きく影響を受けてしまう…。

 大商人であることの責任を忘れていましたわ…。」

 

反省会を始めるつもりではなかったんだが…

 

「『勝負』しなければいいだけだからね!?

 パーティーだからもっと楽しもう…?」

 

「ええ、そうよね…。 たまにはゆっくり楽しみましょう、アキノさん。」

 

「もちろんですわ、サレンさん。」

 


 

「まあ、まあ、まあ。 ユウキさんにサレンさん、奇遇ですわね。」

 

あっ、凄腕投資家のクレジッタさんだ。

 

「いつもお世話になっています、クレジッタさん。」「こんにちわ、クレジッタさん。」

 

「あら、気にしなくとも良いですわよ。 商人は助け合いですもの。

 わたくし、サレンさんには仲間意識を抱いておりますし、

 孤児院の経営と商売の二足の草鞋は大変でしょう。 

 わたくしも微力ながらお手伝いさせていただければ…、と。」

 

怪しいけど普通に善意なんだろう…。 偽悪的な面があるし。

それに仲間と認めた(苦労した過去のある)人にはメチャクチャ甘いし。

 

「ユウキさんも、是非リッチモンド商工会へ加入してほしいですわ。」

 

それは、流石に無理だ… 

 

「いえ、それは結構です。 でも、依頼をしてくれれば、いつでも。

 クレジッタさんは来ないと思っていましたけど、どうしたんですか…?」

 

こういうパーティーの場は苦手じゃなかったっけ。

 

「見ての通り、仮装して出席している人が多いでしょう?

 このようなパーティーには、わたくしを下賤と呼ぶような人種は、招待されても来ませんわ。

 なので、わたくしも出席することに決めましたの。」

 

社会の闇を垣間見てしまった…

 


 

パーティーが終わり、俺はギルドハウス(トゥインクルウィッシュ)への帰り道を歩いている。

 

「おい、お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ!」

 

お菓子を求めて徘徊しているマフ…カボチャ頭が声をかけて(反省を促し…)きた。

ジャック・オー・ランタンの頭に黒い翼、そして鎌を持っている。

本物みたいに見える、見事な仮装だ。

 

「ハッピーハロウィン!」

 

懐にあった飴玉を渡す。

 

「いただきま~す。 …うげぇ!?」

 

あっ、サルミアッキだった!」

 

ミソギちゃんに貰ったサルミアッキをポッケに入れっぱなしにしてたのを忘れてた…!

 

「ジャック~! 観念しろなの~!」

 

「うげぇ… オロロ…」

 

ミヤコちゃんとシノブさんが走ってきた。

どうやらカボチャ頭(ジャック)を追いかけているようだ。

 

「随分と大変なことになっていますね…

 ユウキさん、この子になにかしたんですか?」

 

「間違えて、リコリス菓子(サルミアッキ)をあげてしまって…」

 

「おい、小僧! シノブに近づくんじゃねぇ!」

 

宙に浮くドクロ(シノブの父親)が威圧してくる…。

幽霊になっても子供を守ろうとするなんて素直にすごいと思う。

 

「お父さん、せっかく会えたんだし、手伝ってもらおうよ。」

 

「シノブがそういうのなら仕方ないが… 小僧には気をつけろよ…!」

 

ドクロ親父(シノブの父親)にやけに警戒されてるよな?

原作のように、男が近寄るとかそういうの関係なく…

 

「…あの、ちょうど良いところで会えました。

 実は、あの幽霊…ジャックは復讐として、ハロウィンを壊すと言っています。

 ジャックを止めるのを手伝ってくれますか?」

 

幽霊だったのか!? 気づかなかった…!

仮装の造形にリアリティがあったのは仮装じゃないからか!

 

「オマエに拒否権はないの! 一緒に手伝え、なの!」

 

「分かった!」

 

もちろん俺は同意を示す。

決して、サルミアッキを渡したことを誤魔化すためではない。

 

「よくもやってくれたな! 今ここで、お前たちを倒してやる!」

 

ようやく、立ち直れたようだがもう遅い。 ここにお前の墓標を立ててやろう!

 

「ユウキがいるならオマエはもう勝てないの! 降参してみんなと一緒にプリンを食べるの!」

 

「それはどうかな!」

 

カボチャ頭(ジャック)がシノブさんに向かって突進していく。

この速さだと、シノブさんを強化しても避けれない!

 

「避けろ! シノブ!」

 

ドクロ親父(シノブの父親)の声が響き、カボチャ頭(ジャック)がシノブさんにぶつかり、めり込んでゆく…。

何が起こってるんだ!?

 

「スゲェ! 力がみなぎる! これで、オイラは無敵だ!」

 

油断した! コイツ(カボチャ頭)そんな能力(憑依能力)があったとは…!

シノブさんの力を振るえるなら、俺でも苦戦は必至だ!

仕方がない… 敵が油断している今のうちに対処するしかない…

 

カボチャ頭(ジャック)INシノブさんに悟られないようにゆっくり近づいてゆく…

 

「小僧! シノブに何をしやがる!」

 

ドクロ親父(シノブの父親)なんぞ無視だ…!

カボチャ頭(ジャック)INシノブさんに近づいた俺は無言の腹パンを決める。

本来はやってはいけないことだが、回復魔法とかもあるし、何かあってもなんとかなるだろう。

 

ぐわ~~~!

 

シノブさんの体からカボチャ頭(ジャック)が勢いよく弾き返とばされた。

やばい…やりすぎたかも…

 

「大「やりやがったな、小僧! 大丈夫かシノブ!?」

 

「シノブ! 無事なの?」

 

「大丈夫です…お父さん…ミヤコさん…

 それよりも…ユウキさん…ジャックを…」

 

大丈夫だったようだ。 でも後でユイに診てもらったほうがいいな…

 

「くそ~! こうなったら、お前に取り憑いてやる!」

 

「ユウキさん…危ない…!」「無理をするな、シノブ…」

 

やめるの!

 

ミヤコちゃんたちの()()も虚しく、俺にカボチャ頭(ジャック)が飛び掛っ…

 

●☆▲※◎★!!! オ、オイラは…

 

カボチャの穴から大量の泡を吹き出してぶっ倒れた……

 

オイラは…まだ…

 

カボチャ頭(ジャック)が必死の形相で俺の足に縋り付く。

今なら、踏みつけれるかもしれないが、足が地面に縫い付けられてるように動かない…

そう…俺は得体のしれないことを無自覚に行ったことに恐怖している…

 

ユウキは特別なの! オマエとは天と地ほどの差があるの! 分かったなら早く降参するの!

 

ミヤコちゃんが()()()()()()()()()()で、半ば泣き声で敵のカボチャ頭(ジャック)を説得している…

 

俺もこんなことになるとは思わなかった…

どうも俺には、何かとんでもない秘密があるようだ。

ミヤコちゃんは何か知っているのだろうか…?

 


 

アンナは七冠のネネカにランドソル郊外の喫茶店に呼び出されていた。

 

「アンナさんの小説を拝読させていただきました。」

 

「おお! 私の書いた小説を読んでくれたのか♪

 どうだった?」

 

「ええ…ファンになりました。」

 

「うむ、それは良かった。 早速だが、本題に入ろう。 何か聞きたいことがあるんだろう?」

 

「単刀直入に言います。 あなたがシグルドと呼ぶ彼は『()()』だと思いますか?」

 

直後、アンナが硬直し、手に取られたコーヒーカップが静止する。

 

「…ネネカさんはどうしてそう思った?」

 

「私に生命、非生命問わず、解析し、模倣する能力があるのはご存知ですね。

 七冠ですら、不完全ながらも解析することができる強力な権能です。

 ですが、私に彼を解析することは叶いませんでした。」

 

「考えられる可能性は二つ、『誰とでも絆を結べる、最も人間らしい存在』、

 若しくは、『人知無能な、人間には理解できない存在』のどちらかです。」

 

原作『プリンセスコネクト!』においても、究極の個である七冠には、

『主人公』のような対極に位置する人をコピーできないと言及されている。

 

「ただ、私には彼が後者の方であることに確証が持てませんでした。

 なので、あなたに聞いているのです。」

 

啜ったコーヒーの苦さに顔をゆがめると、アンナは不確かな『夢』の話を切り出した。

 

「『誰とでも絆を結べる、最も人間らしい存在』には心当たりがある。

 確か…『藤丸立香』という名だったような…?」

 

「…!」

 

そして、自身の『夢』が妄想でなかったことに歓喜していることを、臆面にも出さず続ける。

 

「ネネカさんも人類最後のマスターのことを知ってるのか?」

 

「いえ…その話はまた後ほど、ロマン先生も呼んで聴きたいので、続けて下さい。」

 

ロマン先生…ドクターロマンの正体に今更気づいたアンナは顔を青ざめさせる。

 

「もっ、もしかして、ロマン先生ってカルデアの人!?

 私、彼を元ネタにしたキャラ(貫井)を小説に登場させちゃったんだけど!」

 

「私たち七冠はあなたの所業が霞むほど非道いことをしたので問題ないと思いますよ。」

 

具体的には、七冠はロマンに人体実験を行なっている。

基本的に七冠の倫理観は研究においては蒸発するのだ。

当人(ロマン)カルデアでの一件(マシュ・キリエライト)もあって気にしてないようだが…。

 

「う…うむ。 もし、シグルドが『誰とでも絆を結べる、最も人間らしい存在』なら、

 今頃、無自覚かつ無差別に女性をたらしこんで、ハーレムを築き上げているはずだ。

 だがそうでない場合、シグルドがごく短期間で多くの友人を作れた理由に、疑問符が残る。」

 

原作(ギャルゲー)主人公を言い表すとこうなるだろう。

もっとも、原作(Re:Dive)では、鈍感キャラに記憶喪失(幼児退行)も相まって、ハーレムとまではなっていない。

それでも、数十人に矢印を向けられる異常性は存在し続けるが…。

 

(ユイとミネルヴァ、それにガイド妖精のフィオ。

 私の知る、彼に対して好意を抱いてる人物といえば、この3人ぐらいでしょうか…)

 

(私の記憶、知識には欠損が多いですし、実際にはもっと…少なくとも倍はいそうですね…。

 それでも、好感度をひたすら積み重ねた結果にしては、若干少ないかもしれませんし、

 アンナさんの言わんとする人物性には当て嵌らないでしょうね…。)

 

「ループのことはご存知ですか?」

 

「うむ、記憶にはないが、一応知っている。 どう関係があるんだ?」

 

「私も少ししか覚えていませんが、最初のループの頃の彼は人間関係に苦労していました。

 友人が多いのは単に経験の一部を次のループに持ち越しているからでしょう。」

 

ネネカは若干目から光を失いながらそう語った。

因みにトゥインクルウィッシュのレイは『本性を隠して近づいて来る人』が嫌いである。

 

「強くてニューゲームってやつだな。

 だったら、もう片方になるが…。」

 

「どうかしましたか?」

 

「私は()()に『偽物』も『本物』も出番はないと思っていた。

 だって、『原罪』はとっくに救世主が持ち去ったはずだからな…」

 

「でも、ミヤコ(悪霊)がいた。 ()()()()()()()()なんて第三(魔法)でもない限りあり得ない。

 シャドウだってそうだ。私たちの魂の欠片を取り込んで動いてるんだろ、アレは…。

 どちらも想念を被った(プリンにしてやるの!)『偽物』だったが、『本物』が存在すると確信するには十分だ。」

 

(シャドウは盲点でした。 あれも、元々はアンリマユ…『偽物』の産物でしたね…。)

 

「それに、『本物は魂と引き換えに顕れる』って言うだろ?」

 

「……あなたを頼って正解でした。」

 

 

   TIPS : 第三魔法 魂の物質化

 

   第三魔法。 普遍的に実現した世界では第三法と呼ばれる奇跡。

 

   魔法とは、その時代において、決して実現不可能な神秘(奇跡)である。

   魔法を実現することは、全ての始まり(この世全ての原因)である『根源(太極)』に辿り着くことと同義であり、

   魔術を用いて、『根源』への到達を目指す者を魔術師(メイガス)と呼ぶ。

 

   Fate世界(型月世界)の現代以降においては、知られていないのまで含めると、六つ数えられる。

   そのうち、第三魔法は『魂の物質化』。 形而上の存在を汲み上げ、物質化する奇跡。

   則ち、肉体の軛を脱し、不老不死を得ること(生きたままでのサーヴァント化)を可能にする。

   また、サーヴァントや電脳体も第三法の産物の一つである。

 

   この世界では、一応は普遍的に実現されており、()()()()()()

   ただし、そのことに気づいている者は少数である。

 

 

「…黒い銃身(ブラックバレル)がアトラス院の七大兵器に数えられている所以は、おおよそ見当が付く。

 それは、おそらく黒い銃身(ブラックバレル)が『■を殺す』ための兵器だからだ。

 黒い銃身(ブラックバレル)は『天寿』の概念礼装。相手の寿命に比例した毒素を打ち込む。

 そして、毒素はおそらく、真エーテル(第五架空要素)を自壊させる第五真説要素(エーテライト)だろう。

 死んだ■から真エーテルが漏れ出た世界においては、アリストテレス(■の意思の代弁者)を一撃で倒している。

 そして、■■には真エーテルを大量に含んだ、寿命が途方もなく長い存在が一つだけある。

 黒い銃身(Longinus)が世界を滅ぼす七大兵器に数えられるのは当然だ。

 ■■に打ち込めばいい。 ただそれだけで世界は終わるのだから。」

 

「マスター、カッコつけても威厳はそなわりませんよ。

 それにマスターの推測でしょう。 ホントかどうかも怪しいです。」

 

「ええ…酷くない?」

 

「私に黒い銃身(ブラックバレル)を運用させたいのは知っています!

 でも、私は外部から取り込んだ真エーテル(第五真説要素)で駆動してるんです。

 そんなものを所持したら自壊しかねないじゃないですか!

 いくら固有結界で躯体が外界と隔絶されてるっていっても、完全ではないんですからね。

 だいたい、アリストテレスは侵食固有結界なるものを持ってるんでしょう。

 そんなものを倒せるなら、毒素が固有結界を侵食するかもしれないじゃないですか!」

 

ハベトロット(異聞帯の妖精)は最期まで耐えたから、大丈夫だと思う…多分

 

「それって絶対、衰弱死したパターンですよね!?」

 

「でも、他に使えるヤツいないし、代わりにロゼッタを自爆させるわけにもいかないだろ。

 第一、黒い銃身(ブラックバレル)を使っても、覇瞳皇帝に効くかどうかは賭けなんだし、

 保険として、設計途中のデータを残すだけだ。」

 

「ねえ今、自爆って言いましたか!?

 何サラッと非道いこと思いついてるんですか!」

 

だ、大丈夫。 パンツは履かせてあげるから…!」

 

なっ、何言ってるんですか! マ、マスターの変態!!

 


 

俺はマコトさんに、

「一生のお願いだ! 頼むよ、あたしの代わりに参加してくれ!」

って言われたので、クリスマスパーティーに参加している。

 

あっ、ユイがいる。

うん、何かとユイと俺を引き合わせようとしてたから分かってた。

マコトさんが『一生のお願い』を使う時なんて、幼馴染であるユイのためだもんなぁ…

 

「やっぱり、ユイも来ていたんだ。」

 

もしかして、ユイが着てるのって、プリンセスフォーム(強化フォームで変形する)のドレス?

第一部のシナリオすら消化してない(新たな力を手に入れてない)のに、第二部の装いになるとは驚きだ。

 

「ユウキくん!? 

 わっ、わたしはマコトちゃんに参加してほしいって言われたから来たんだけど…」

 

予想通り、話してなかったか…

教えても恥ずかしがって逃げるもんな…

 

「みなさま、準備はよろしいでしょうか。

 若き128人の男女が運命の相手を探すお見合いイベント、

 『デビュタント・シャングリ・ラ』を開催いたします!」

 

「ユウキくん!? ど、どうしよう!?」

 

うん、流石にお見合いパーティーだとは思わなかった…

 

「…特別なクリスマスプレゼントを用意しております。

 こちらは魔法のバラの蕾をつけた、特別なクリスマスツリー。

 その名も、『トゥ・ラヴ・メーカー』!

 イベントの終盤、私が選んだ理想のカップルに、

 人の愛に反応して開花する…この愛の花を一本、お贈り致します。」

 

ふむ…確か、象牙の塔(ユニの家)で読んだ本に載っていた…

 

「それではみなさま、まずは会場にいる人と話してみましょう。

 コミュニケーションが苦手な方も、スタッフがお手伝いいたしますので、ご安心を。」

 

赤い一本のバラ、その花言葉は…」 「『私にはあなたしかいない』と『愛している』ね。」

 

うわっ…!? お、驚いた…

 

「サレンさん…?」

 

「久しぶりね♪ ユウキくんに…ユイさん。」

 

「わたくしもおりましてよ!」

 

「い、いつもお世話になっています…! サレンさんにアキノさん!」

 

二人とも、赤と黒の地に緑と金が映えるクリスマスドレスを着ている。

このデザインが流行ってるのかな…?

 

「二人はどうしてこんなところに? お見合いなんて興味ないだろ?」

 

二人をからかってみる…。

 

「わ、わたくしは、ギルドのメンバーのミフユさんに勧められて来たのですわ。

 も、もちろん、お見合いイベントだなんて、し、知りませんでしたわ…」

 

…。

 

「あ、あたしもそうよ… ユウキも出るってマホに聞いたからなんて…、言えるわけないじゃない…!

 それに、あんたたちも人のことい、言えないじゃない!」

 

……。 好感度高くね…? 反応に困る…。

 

わ、わたしも…マコトちゃんに… …です… 

 

あっ… ユイの顔が赤くなっている… かわいい…

 

「みなさま、特別な運命の出会いに胸も踊りだす頃でしょうか?

 それでは最初のプログラム、愛のダンス。

 どうぞときめく方をお誘いいただき、特別な挨拶をお楽しみください。」

 

ダンスの心得なんてないぞ…

 

「じゃあ、あたしたちと踊りましょう!」

 

「ああ…」

 

今日のサレンさんは押しが強いな…

 

「それにしても、困りましたわね。

 私たちは三人ですけど、彼は一人、

 どの順番で踊るべきでしょうか…」

 

「なら、あたしが一番最初でいいかな?

 次は…アキノさんでどうかしら…?

 ユイさんもそれでいいわよね?」

 

「わかりましたわ!」

 

「ふぇぇ…!? い、いいですよ!」

 

ユイの頭から蒸気が出る幻覚が見える…

 

「それじゃあ、踊りましょう?」

 

サレンさんに手を引かれる…。

 

…。

 

……。

 

………。

 

「…あんたがそこまで下手だとは、思わなかったわ。

 あんたにも苦手なことってあるのね、なんだか安心した…

 あたしに合わせて…は無理だから…最低限の動きだけ教えるわ…」

 

…。

 

……。

 

………。

 

「一曲目はいかがでしたか…?

 それでは次の曲に参りましょう。」

 

「はあ…どうにか上手くいったわね…。 次はアキノさんの番よ。」

 

はあ… なんとか乗り切れた…

 

「あなたさま~、わたくしに合わせてくださいね♪」

 

…。

 

……。

 

………さっきよりも踊りやすい。 アキノさんって上手なんだな~

 

「最高でしたわ! できればわたくしの騎士になってほしいですわ…

 

…。

 

「二曲目はいかかでしたでしょうか?

 ()()()ですが…もう一曲、どうぞ。」

 

ユイが恥ずかしがって動かない…。

だから、俺はユイの手を引いて…

 

「ユイ、二人で踊ろう…」

 

「本当に…いいの?」

 

「もちろん。」

 

…。

 

……難しい。 今にも足がもつれそうだ… でもそれは、ユイも同じみたいだが。

 

………あっ!?

 

時よ止まれ(Verweile doch) 君は誰よりも美しいから(du bist so schön――――――――)』 そんな透き通る願い(想い)が聞こえたような気がする――

 

足がもつれて倒れてしまった。 今はユイに覆いかぶさるような姿勢になっている…

 

……お互いの体温が直接伝わり、鼓動が高鳴るのを感じる。

それに…ユイの顔が近い…。 唇が触れ合いそうな距離とはこのことだろうか…

 

()()()()()()()()()()静けさの中、お互いの顔が真っ赤になっていくのがわかる…

 

口もとのルージュにあまい香水の匂い…

…精いっぱいのおめかしをしたのだろう。 綺麗という言葉が、よく似合う…

()()()()()()()()()()()()()()()とさえ思う。

 

だが、再び鳴り出した曲と共に、()()()は現実に引き戻された。

 

「ご、ごめん…」

 

「わ、わたしこそ…」

 

俺はユイに見惚れていた… ()()()()()()()()()錯覚を覚えたのはそのせいだろうか…

 


 

「次のプログラムですが、重大な不正行為が発覚いたしましたので中止とさせていただきます。

 中止とする代わりに、昼食にはオーエド町の職人が腕によりをかけて作ったトーゴク料理、

 最上級コース『松』を用意させていただいております。 是非、ご堪能ください。」

 

和食だ…やったぜ…!

 


 

「次のプログラムは『謎解きスタンプラリー』です。

 気に入った相手と謎を解き、6つのスタンプを集め、ゴールにたどり着いてください。

 探索範囲はランドソル市内です。 今回、謎解きのために王宮などの施設を開放しています。

 制限時間は日が完全に沈むまで。 それまでにクリアできない場合はここに戻ってください。

 最も早くクリアしたパートナーに、魔法のバラで告白する機会が与えられます。」

 

「なお、こちらが最後のプログラムです。 

 一度もお誘いできなかったあなたもこれがラストチャンス……

 三角関係でも六角関係でも、どうぞ、悔いの無いようお楽しみください。

 ただし…、最後にはどの御方と結ばれたいのか、意志を伺うことになるでしょうが…

 それでは、スタッフからカードを受け取り、謎解きを始めてください。」

 

…謎解きはそれなりに得意だ。 しかも、こういう周遊型はメタを張ることができる。

このプログラムは謎解きに託けたデートだ。 つまり、観光名所を巡るのだろう。

今は昼過ぎだ。 そして、参加人数の多さからかなりの難度が予想される。

何人も誘っていいって言う時点で、人数は関係ないって言ってるようなもんだしな…

俺一人では多分無理だが、ユイたちは頭がいいから素直に頼ればいい…。

 

「私たち、4人ですわね…。」

 

「…ええ、そうね。 あいつに選ばれるのはこのうちの一人だけ…

 

「はい、カードを取ってきたよ。」

 

考え込んでる間にユイが取ってきてくれたようだ。

 

横からカードを覗く…

 

…5つ目の謎が分かった。

 

場所はスタート地点の此処だ。 街を一周したら辿り着くように作っているのだろう。 

 

「ユウキくん、どうしたの?」

 

「5番目が分かった。 多分、少し待ってれば、この会場でスタンプが押せるはずだ。」

 

「どういうことかしら?」

 

「この謎解きは街の名所を歩かせるような構成になっていると思う。

 だから、盲点になりやすく、街を一周して戻ってくるであろう、

 スタート地点にスタンプがあると思ったんだ。」

 

「それにだ。 この街は全ての地区を合わせるとかなり広い。

 今日は貴族の居住区も一部が開放されてるから、建物の中を含めた街中全てを巡るのは難しい。

 だから、制限時間になっても、このスタンプは此処で押せるようになってるのだと思う。」

 

「そういう考え方もあるのね…」

 


 

「これで、最後の一つだな…」

 

「『見晴らしのいい奈落』って何処かしら…」

 

「……わかりましたわ! 空がよく見える場所ですわ!」

 

「ねえ、それってどういうことなのかな?」

 

ああ…そういうことか…

 

「天地を逆さまにすれば、底のない空が延々と広がってるように見えますの。

 つまり、空がよく見える高い場所だと思ったのですわ!」

 


 

王城の主塔から外を覗くと、白くなった街と群青色の空、真上には大きなソルの塔が見える…

 

スタンプ台が見当たらない。 他にも数組が探しているが見つからないようだ…。

つまりここではない…と。

 

「見つかりませんわね…」

 

「ここじゃないのかな?」

 

「別のところを探しましょう。」

 


 

イノリ   「へえ~ ボスは依頼で謎を考えているんですか…。」

 

ホマレ   「強い愛があれば、高い壁も超えられるから、とびっきり難しいのがいいんだって☆

       簡単に言ってくれるよね~♪ イノリちゃん、手伝ってよ~☆」

 

      (確か、スタッフの収賄が発覚してプログラムの大半が中止になったんだっけ☆

       イベントを取りやめても良かったのに強行するなんて、

       このイベントに思い入れでもあったのかな~♪)

 

イノリ   「そういうことなら、あたしにいい考えがあります♪

       こういうのは固定観念を利用すればいいって、アイツも言ってたのですよ!

       この前の宴会でボスが披露したミスディレクション、とやらで思考を誘導すれば、

       いくら時間を掛けても答えには辿りつけないのですよ!」

 

ホマレ   「ふ~ん。 そういう趣向もありなのかな~♪」

 


 

空が茜色に染まってきた… もうそろそろ日が暮れそうだ…

空が見える場所とかを探したけど全然見つからない…

 

「ちょっといいかな?」

 

ユイが何か思いついたようだ…

 

「ユイさんはわかったので?」 

 

「もしかしたら、『見晴らしのいい奈落』ってそのままの意味かもしれないと思ったの…。

 舞台下の空間のことを『奈落』って言うよね?」

 『見晴らしのいい奈落』は景色が見渡せる施設の最下層のことじゃないかな。」

 

「そんな場所、ランドソルにあるか?」

 

「あたしもそんな場所知らないわよ…?」

 

「ソルの塔の最下層なら景色が見渡せるよ。 そこに行ける転移魔法陣も王宮にあるしね。

 それにソルの塔は『冒険の舞台』でしょう?」

 


 

日が稜線に差し掛かった頃、俺たちはソルの塔に辿り着いた。

6つ目の場所(ソルの塔)が直接ゴールになってたとは…

それにしても謎を解かせる気ないだろ…

 

「ゴールおめでとうございます。 日没までにゴールできたのはあなたたち一組だけです。

 この難題を終え、ゴールできたということは、この中に運命の相手がいるのでしょう。

 約束通り、魔法のバラはあなたたちに与えられます。

 次の指示があるまでご自由にお過ごしください。」

 

難題を解決できた人が運命の相手だなんて、竹取物語かなんかですかね…

 


 

一人で雪積もる夜の街を見下ろしていると、タキシード仮面主催者のお爺さんがやって来た。

 

「えっと…、貴方は…」

 

「今日のところは"ローズメン"とお呼びください。

 あのお三方との逢瀬はいかがでしたか?」

 

「はい、とても楽しかったです。」

 

「それは…今迄準備してきた甲斐があります。

 …あなたがお三方からの好意を自覚しているのは承知しております。

 もうそろそろ、覚悟を決めた方がいいですよ。

 先延ばしにし続けるのは、きっと…酷なことでしょうから…。」

 


 

『それにあなたには既に心に決めた人がいるのでしょう?』

 

ああ、魔法のバラを贈るのは…

 

「ユイ…君のことが…」

 

腹から剣が生えている… …背後から刺された!?

 

「ユウキくん…!?」

 

「あら、告白できなくて残念だったわね。」

その声は…

覇瞳…皇帝…

 

 

 

 

 

 

「ねえ、起きてよ! これからもわたしと冒険しよう…! お願い…目を覚まして!」

 

「ふふ…アナタ(プリンセス)の泣き顔はいつ見ても最高だわ…」

 

 

――― YOU REBOOTED ―――

 

 




Q.どうしてオリ主は別ループでも美食殿に入らないの?

A.コッコロがいないとコッコロが炊いた米の匂いにペコリーヌが釣られないから、ペコリーヌとそれを追っかけてたキャル、二人との出会いがなくなってギルド美食殿は結成されない。


基本的にはこんな感じでルートが分岐する(例外もある)

○はこの話で起こったこと

→コッコロがオリ主の元へ送り込まれる
 →コッコロが米を炊いた(ペコリーヌとキャルに出会う)
  →キャルが記憶を持ち越した
   →本編
  →キャルが記憶を持ち越さない
   →美食殿結成
 →コッコロが米を炊かない
  →コッコロと二人で冒険
→アメス様がコッコロたんの精神が不安定になるからとオリ主に送り込まない
 →美食殿メンバーとの出会いキャンセル
  →オリ主のレイからの好感度が高い場合
   →トゥインクルウィッシュ加入○
  →オリ主のレイからの好感度が足りない場合
   → 偶々仲良くなれた人のいるギルドに加入
    or放浪(中程度の確率でユイが追ってくる)

→ロゼッタ開発時
 →ユニたちと研究漬け(美食殿より世界平和が優先される)○


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幕間2 Acta est fabula

アメスさまが実装されたので感想を書きます。

アメスさまのキャラスト、エモかったです。欠けたパーツを埋めるようにメインストーリーでは語りきれなかった部分の補足がなされたので、そこも良かったと思います。地味に今後のストーリー展開のネタバレを挟んでいるのもポイント。というか騎士くんレムレムとか路地裏ナイトメア(ネタバレを避けるための婉曲な表現)してない?

メインストーリーではミロクさんが新たな装いになりましたね。キャルとの関係を考えると、今後より存在感を発揮していくと思います。個人的な予想としては神に絶望し、エリスを取り込んでラスボスになると思ってます。

なんていうか、新しくできたネットワーク監理団体、アメスとのデートといい第三部に続きそうなカンジです。


天海春香にとって夢のドームでのライブは、突如として現れた異形によって、幕を閉じた。

 

無力だった。 インベル(スーパーロボット)と戦い抜いた経験が蛮力が必要だと訴えていた。

だが、春香は自身に現実を捻じ伏せるだけの力がないことを知っていた。

春香はその場でへたり込むしかなかった…。

 

この世のものとは思えない異形が、触れた人を黒白(こくびゃく)結晶(死体)に変えながら、春香たちに近づく…

絶体絶命の窮地の中、春香の首に提げられた形見のキーホルダーの輝きが増す。

 

「これって、アイの光…?」

 

「お願い…インベル…助けて…!」

 

春香は一縷の望みをかけて、祈る…

そして…怒りの咆哮《重力波》と共に、白き鋼の巨人が春香のもとに飛翔した。

 

()()()()へと()()()()によって干渉し、全ての敵を粉砕したインベルは、

春香が身につけているのとは色違いの…ピンクのリボンを彼女に返した。

 

「そのリボンはあのときの…

 ずっと持っててくれたんだ…」

 

彼女はダイスキな彼へ、言葉を紡ぐ。

 

「今度はずっと一緒だよ、インベル♪」

 

そうして、比翼の鳥は飛び立ったのだ。

 


 

「君が『招来体』などとふざけた命名をしたアレはなんだ…」

 

「おお、こわい。 私の趣味ですよ。 報告書はコレです、後で見てください。

 娘さん(レイ)が囚われて気が立っているのは分かりますけど、私に当たらないで下さい。

 それに、最近の貴方は失言が多いですよ。

 特に、DSを引き合いに出して、WISDOMを糾弾したことが不味かったですね。

 彼を探られれば、オカルト関連のことは国民には隠し切れません。

 彼の言う『ヴェールが捲られる』のも時間の問題でしょう。

 どうしますか、士条総理?」

 

「そういうのは国連の仕事なんだが… 分かった。

 一ヶ月後に全てを公開する。 文字通り、我々が知る全てを、だ。」

 

「『カーテンコール・プロトコル』ですね?

 実は彼とコレを策定した時、貴方の正気を疑ってたんですよ。

 でも、今にして考えると、テロに合わせて貴方が総理になる()()があったんですよね?」

 

「ああ、国連の手はあらゆる組織に伸びていたからな。我々は迂闊な動きをできなかった。

 だが、彼にはある事情があってだな、国連は彼への干渉に慎重な姿勢を見せていたんだ。

 だから、彼の手引きにより、我々はWISDOMを追い落とす計画を練り上げることができた。

 そのために金融システムを一つ捏ち上げる羽目になったんだがな。

 彼は秘密主義だから、君が知らないのも無理はない。」

 

「えぇ…全部、彼の計画だったんですか…

 …ああ、貴方の気が立っているのは、こうなると理解した上で娘を送り出したからですね。」

 

「…彼は失敗した時の最終手段として、『WISDOMの懲役』の発生を誘発する計画を立てた。

 彼は聖杯によって、特異点を発生させ、そこで解決を図ると言っていた。

 彼の友人達がいなければ、成功率は格段に下がるとも…

 WISDOMが勝てば未来はなく、だからといって、我が子を戦場に送りたくはない。

 結局、我々は子供に決断を委ねることにした…。

 その判断に後悔はないが…。 時々、不甲斐なさで胸が張り裂けそうになる…」

 


 

「太平洋に出現した、未知の原理で投影される立体映像が消失した。

 立体映像は昏睡事件のきっかけとなったテロ事件『WISDOMの懲役』と同日に出現し、

 標的となった『レジェンド・オブ・アストルム』のルナの塔上層部に酷似しているため、

 昏睡事件の解決の鍵を握るとされている。」

 


 

117:山師な名無し

今日からワイもGESARAで決済するで

 

118:山師な名無し

>>117

免許証やパスポートとかも紐づけできるから必要なら使うとええで

 

119:山師な名無し

発展途上国なんかはほぼ全ての情報をGESARAで管理してるらしいな

管理通貨制度を崩壊させてでも欲しかったシステムなんやろなあ

 

120:山師な名無し

>>119

発展途上国が管理通貨制度を捨てたわけちゃうで

TMT*1からMMT*2への転換に失敗して暫定的に法定通貨にしてるだけや

GESARAの軸となる仮想通貨はケインズの超国家通貨構想*3が元になっている

ブロックチェーンを用いて情報社会に適した決済通貨を創るのが目的やから政府の発行する既存の通貨とは競合しないんや

 

121:山師な名無し

>>120

WISDOMがミネルヴァに拘ったのはGESARAのブロックチェーンを解析するためって説があるよな

 

122:山師な名無し

GESARAって最初聞いた時は頭おかしいんじゃないかなって思ってた

だって世界の金融システムを一新するって詐欺みたいな触れ込みだったしまさかここまで浸透するとは思わなかった

 

123:山師な名無し

陰謀論ネタに出てくるような組織が提供する怪しいスキームを初見で信用するヤツはまずいない

 

124:山師な名無し

>>122

その過程はマッチポンプじみてたけどな

普及した理由ってDSとWISDOMの抗争でドルが暴落したからだろ

 

125:山師な名無し

GESARA(Global Economic System to Redesign Attempt)は名前とは違って実質的には次世代の情報システムだったから経済どうのは関係なく導入する国が多かった

爆発的に普及したのはブロックチェーン技術とmimiの相性が抜群によかったのもある

企業連や七冠など錚々たるメンバーが開発に関わったから想定された欠点も改善された

提供元が団体名すら公表しない怪しい団体だったのが欠点だが

 

126:山師な名無し

>>121

ネットワークを管理したいWISDOMにとってGESARAは特大の爆弾だったからなあ

DSに非難声明を出したくなるのもわかる

でも国連の統制を嫌った企業や個人が協力して創りあげたんやぞ

火に油を注いでどーすんのや

 

127:山師な名無し

>>126

WISDOMは人の心がわからないから

 

128:山師な名無し

DSは自ら名乗り始めたのではなく便乗してるだけ定期

マスコミの癖に変な愛称や略称を作り出すのは勘弁してほしい

DSがDeepStateの略なんて普通わからんから

 

129:山師な名無し

>>128

DSは異能力モノというジャンルを確立したグループへの敬称(笑)なんだよなあ

でも千里真那に覇瞳皇帝(カイザーインサイト)って二つ名を命名するか普通

ノリについていけない人多杉て社会問題になってるんやぞ

 

そういや士条はDSとの癒着疑惑を野党に追及されてるらしいな

 

130:山師な名無し

>>129

ブギーポップの創作元が世界のどこにも存在しないのが統計学的に証明されたんやったな

それを成し遂げた特定班はすごすぎやで

それでウォッチャー未来人説が濃厚になったんやっけ

 

131:山師な名無し

>>129

唐突で草

癒着疑惑(高校生の娘の友人に手を貸しただけ)って笑われてるから大丈夫やろ

ただ色んな分野の専門家が手伝ったせいで夏休みの自由研究とかの範疇ではなくなっただけや

 

132:山師な名無し

>>131

高校生(何故か世界中の有力者や国家機関との繋がりがある)とは一体?

 

133:山師な名無し

ドイツ軍との繋がりを指摘される高校生というパワーワード

 

134:山師な名無し

別世界を生きてるかのような行動を繰り返したり、人脈がおかしかったりするからウォッチャーとか呼ばれるんやぞ

本人はウォッチャーという諢名を嫌がってたらしいけど

 

135:山師な名無し

おまえら>>134みたいな情報載せるのはNGや

情報流した奴らが次々と機密保護法違反で逮捕されてるのニュースになってるやろ

>>133のことを言った議員は直に逮捕されそうやで

忘れてるやろうけど国連の規制で団体名ですらようわからんから仮称の「DS」を使ってるんやで

既に出回ってる情報以外はなんであれ書き込むべきやない

>>134は多分厳重注意を受けるで

 

136:山師な名無し

>>135

議員は不逮捕特権あるのになんでや

 

137:山師な名無し

>>136

憲法第50条*4の例外が適用されたで

逮捕許諾請求*5が通りそうなんや


 

「たった、10日で中央アジアが『招来体β』とやらに均された。

 世界は滅ぶ… 我々(国連)にはもう為す術はない。」

 

「既に世界は数度滅びていますよ。 それでも、人類は存続している。

 諦めるにはまだ早いでしょう? あとは貴方だけだ、事務総長。」

 


 

17:名無しの風来坊

招来体って名前厨二すぎない

 

19:名無しの風来坊

>>17

マスコミのセンスに合わせたんだろ

許してやれ

 

21:名無しの風来坊

でも、あの教授だからなあ

 

 

23:名無しの風来坊

>>19

無意味な命名はしないぞ

 

25:名無しの風来坊

>>23

意味があったらヤバすぎる

誰かが終末を望んでいるってことやん

 

26:名無しの風来坊

WISDOM残党、副大統領派、黒教会…

全部だったりして

 

28:名無しの風来坊

このスレにもボウフラのように沸くからな

 

30:名無しの風来坊

千里真那で全部繋がる不思議

 

31:名無しの風来坊

黒教会に家族がハマったせいであそこまで歪んでしまった

 

32:名無しの風来坊

>>31

最近の黒教会の拡大はやばいとしか言えない

黒教会が全て裏から操ってたとしても不思議じゃないと思ってる

 

33:名無しの風来坊

9時から国連特別総会の中継が始まるで

初っ端は事務総長の演説やと

 

34:名無しの風来坊

情報筋によると何かを発表するらしい

この一週間、各国の政府が大きく動いてるのに全く情報が漏れないのは異常

 

36:名無しの風来坊

公務員だけどテロに備えろってお達しがきた

どうすればいいんだよ

 

37:名無しの風来坊

オカルト案件って予想はあるけどな

 

38:名無しの風来坊

招来体のことじゃないかと勝手に想像してる

 

40:名無しの風来坊

世界が滅びるって発表されても驚かない

 

41:名無しの風来坊

春閣下の結婚発表

 

43:名無しの風来坊

>>41

ネタだと思ってたらガチだったあれか

ライブを襲った招来体γを撃退したんだったっけ

 

44:名無しの風来坊

巨大ロボットに恋する少女は創作だけかと思ってました

 

45:名無しの風来坊

>>44

今でも信じれんのだが

 

46:名無しの風来坊

>>43

はるるんの呼びかけに応じて現れたのは映画のワンシーンのようだった

 

 

48:名無しの風来坊

>>46

よく生きてたな

 

50:名無しの風来坊

あの巨大ロボットは招来体じゃないのな

 

52:名無しの風来坊

そのへんも含めて発表するんじゃない

 

53:名無しの風来坊

あれは未知の生命体のコードネームだからリボンちゃんから詳しいことを聞けるアレは違うやろ

 

55:名無しの風来坊

アイドルたちは今は国連軍の保護下だっけ

 

56:名無しの風来坊

*6でγを霧散させたり、ロボットを召喚したり、蒼の剣で戦ったりしたから残当

 

 

57:名無しの風来坊

>>56

「蒼穹の果て、私はここにいる!」

ちょっと理解できないです

 

58:名無しの風来坊

変な武器*7からビームをブッパして戦ってるって目撃情報が入ってて草

 

60:名無しの風来坊

今から総会始まるみたいやな

 


 

「いらっしゃいませ!!」

 

「まだ、営業してたのか。 明日にはヤツラが地ならしに来るのにいいのか?」

 

「大丈夫ですよ、今日で閉店ですから。

 このコンビニはこの町に初めてできたお店なんです。

 ですから、町の最期を看取るのもこのコンビニで良かったです…」

 

「どういうことだ? この国にコンビニができたのはここ最近だろ?」

 

「昔、この辺りは紛争地域だったんです。

 この町がまだ小さな村だった頃、村の近くに国連軍がやってきました。

 そのとき、ニホンの財閥が駐屯地にコンビニを出店したんです。」

 

「ありとあらゆる物が不足してした私たちにとってコンビニは福音でした。

 真夜中でも綺羅びやかに光るコンビニは異世界が切り取られたようでした。

 そして、コンビニには生理用品から漫画雑誌までなんでも売っていたんです!

 私たちにとって、春ではなく、希望を売るコンビニは憧れになったんです!!」

 

「コンビニができて最初の頃は、大人たちはバカな連中だと嘲笑っていました。

 ですが、戦火が激しくなる中、コンビニは唯一の憩いの場になっていったんです。

 そのうち、対立する勢力の兵士たちもコンビニの商品を求め、立ち寄るようになりました。

 そうして、争いの虚しさに気づいた兵士たちは、国連軍の協力によって町を築きました。

 そして、国連軍が撤退した後も、平和の象徴としてコンビニは残ることになったんです!」

 

「ああ…コンビニ! 素晴らしき哉、コンビニ!!」

 

「お、おう… でも、俺は出発しなくちゃならないんだ。」

 

「でしたら、お客様。

 本日は閉店セールで全額無料となっております。

 何か、お買いになられては如何でしょうか?」

 

「そうだな…ミネラルウォーターを貰っていこうか…」

 

「ご利用ありがとうございました!!」

 


 

 

――先ず初めに、国連加盟、非加盟国問わず全ての国の人々へと挨拶を申し上げます。

そして、全人類に私の声を届ける機会を下さった方々に感謝を。

 

――この放送を聞いてる方の中には、

アノマリーに襲われ、既に故郷を失っておられる方もおられるでしょう。

世界の終末に怯え、自暴自棄となる方もおられるでしょう。

 

――ですが、私たちは決して貴方がたを見棄てません。

たとえ、世界が終わろうとも、私たちは諦めません。

どうか、希望を忘れないで下さい。

 

 

――次に、私たちは罪を告白しなければなりません。

 

――私たち、国連及び加盟国の政府は、とある事実をひた隠しにしていたことを認めます。

それは、超能力者、吸血鬼、世界征服を企む秘密結社でさえも、実在するという事実です。

 

――私たちは、それらの事実を"オカルト"として人類社会から隠蔽していました。

ですが、情報技術の進歩、度重なるインシデントにより、隠蔽は不可能であると判断され、

各国政府の助言のもと、"オカルト"を公表する手続きを進めてまいりました。

 

――今後、オカルトに属する人々は、立場や権利を公的に保障されることとなります。

私たちは、"真実"が"オカルト"として闇に葬られる時代の終焉を、宣言いたします。

私たちは、"明日への扉"を全世界、全ての人々に開くことを約束いたします。

 

 

――長くなりますが、もう少しの間、私の言葉に耳をお貸しいただけないでしょうか。

 

――嘗て、私たちは"正常な世界"を守ることが、人類文明の継続に寄与すると信じていました。

そのために、私たちは"正常な世界"を守る組織を作り、運営してきました。

その組織は、時代の変遷と共に発展を遂げ、今では"国際連合"と呼ばれています。

 

――ですが、長い歴史の中、歪みが発生したことも事実です。

私たちの活動は、文化の発達の阻害や技術進歩の停滞などを齎し、反発を生みました。

 

――そして、"正常な世界"を守る活動はしだいに先鋭化してゆきました。

例えば、国連の一部門、情報ネットワークを監視する組織、WISDOMは世界の管理を意図し、

拉致や人体実験を繰り返し、遂には"WISDOMの懲役"と呼ばれるテロ事件を引き起こしました。

 

――いつしか、私たちは"人類文明"ではなく、"正常な世界"を守る組織へと変貌したのです。

そして、時代と共に崩壊しつつあった"正常な世界"というヴェールを維持し続ける試みは、

猜疑を生み出し、不和と分断を際限なく拡大してゆき、紛争の原因となったのです。

 

――私たちはこれらの事実を認め、全ての被害者に対して、謝罪いたします。

 

 

――私たちは多くの過ちを犯してきました。

ですが、世界が滅びに直面する今、世界を守れるのは私たち、国際連合だけです。

どうか、私たちの助けを待つ人々のために、私たちに世界の未来を守らせて下さい。

 

――おこがましい願いであるのは承知しています。

どうか、何者かによる人類文明を終焉へと導く試みを阻止するために協力して下さい。

どうか、私たちに今度こそ、世界の守護者たる使命を全うさせて下さい。

 

 

――これをもって、私の発言を終了いたします。

ご清聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

―――永き回帰の果てに、人類悪は斃され―――

 

―――世界は一時の平穏を迎えたかに見えた―――

 

 

―――だが、黒幕により、四つの終焉が訪れる―――

 

 

―――全てを捕食し、成長し続ける星の終末装置―――

 

―――宙を渡り、星々を収奪する生体機械―――

 

―――別位相に潜み、人類を結晶に転換する異形―――

 

 

―――そして、ダークリングの顕現により―――

 

―――『  』の争奪戦は結末へと向かう―――

 

 

―――星と人の未来を巡る―――

 

―――星杯大戰が開幕する―――

 

 

 

 

  ■■■   「私のとっておきをお見せしましょう――ゲート・オブ・バビロン」

 

  ムイミ   「星をも滅ぼす――天楼覇断剣の一撃、見せてやる!」

 

  モニカ   「全艦に告ぐ――水爆、全弾射出!!」

 

  ユウキ   「ステイルメイト――いいや、チェックメイトだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第九天
 
太極値 C++ 

 

 

 

 

A.D.2032 空想流出戦線 アストライア

もう一度、キミとつながる物語

 

 

 

 

 

 

 

 

―――この想いがキミにとどくまで―――

 

―――私たちは祈り続ける―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ユウキ?  「■■、いいや――■■■■■なのか?」

 

 

 

 

*1
伝統的金融理論のこと。商品貨幣論などが含まれる。

*2
現代貨幣理論(Modern Monetary Theory)。MMTは六つの主要コンセプトから成り立っている。

一つ目は、徴税した通貨を支出するのでなく、支出という形で通貨を発行した後に徴税で通貨を回収する。つまり、税金は財源ではなく、通貨を流通させる手段とする、租税貨幣論。

二つ目は、経済に与える効果によって、財政を決める。例えば、徴税は納税者のお金が減り、政府の金が増えるという観点で判断するべきだとする、機能的財政論。

三つ目は、経済の本質は価値の交換ではなく、受け取った価値と引き換えに発生する負債であるとした、信用貨幣論。また、信用貨幣論の一部を整理し、信用創造とは経済活動によってバランスシートのお金の動きを相殺することだと説明した、Monetary Circuit Theory。

四つ目は、なぜ銀行預金は政府通貨を単位として扱うのかを、債務の履行能力などの上下関係により、上位の通貨が下位の負債や債務を全て決済可能となるからだと説明した、債務ヒエラルキー。

五つ目は、財政黒字や赤字は民間の経済活動が原因であり、財政黒字が民間債務膨張によるバブル崩壊などの危機の前触れであるとした、Stock-Flow Consistent Model。

六つ目は、政府が民間企業の労働環境を監督するより、政府が一定の労働環境を保証した職を無制限に提供する方が、確実に労働者保護をできるとした、Job Guarantee Program。

賛否両論があるが、MMTはTMTの矛盾を解消する理論として期待されている。

*3
バンコール。ブレトン・ウッズ会議で提案された、国際貿易、取引専用の通貨によって世界経済を安定させる計画のこと。

*4
両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

*5
国会議員を国会の会期中に逮捕することについて、国会の許諾を求めること。

*6
ゆるふわ

*7
ルガーランス。 この作品においては神機という設定になってる。




プリコネのコラボネタのアイドルマスター要素は今回だけになると思います。

今後に向けて、一部設定の見直し、伏線の追加などをしました。
具体的にはレイシフト起動時のアナウンスを数文字変えるだけでレイシフトが邪法にしか見えなくなりました。といっても、ほとんどの人にとっては理解不能だと思いますが、分かればニヤリとしてくれると思います。ヒントは『永劫回帰』、『合成人間』。あのシリーズの虚数領域の設定が型月のそれと酷似しているので、設定の補完に都合が良かった…

あと、キャルとの再会、特に関係ないハロウィンイベントの教授による天体観察講義、美食殿時代のグレートトゥンヌス釣りなどのお話も追加しました。
他にも、オリ主の心情描写を増強したり、地の文を若干増やしたりしました。

最後に2部への橋渡しとなる1.5部やります。とりあえず過去編を予定してるのでお楽しみに。


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1.5部
意味消失のアーキタイプ


エタるつもりはないです。
少しずつ書き進めてたら第二部完結してました。
単に遅筆なだけです。

騎士くんのバッドエンドを書いてたら、いつの間にか滅茶苦茶重い展開になってました。最初書いてた時はこんな感じじゃなかったのに…。オリ主の登場に説得力を持たせるには騎士くんを徹底的に曇らせるくらいしか思いつかなかったんや。アンチ・ヘイトが苦手な方は、ブラバして本家の騎士くんでも見て癒やされてください。


 

―――少年(ユウキ)は『ココロでつながるチカラ』を持っていました―――

 

―――そのヒトの代表者(ARCHETYPE)たる()()()を以って、()()とキズナを結びました―――

 

―――そして、世界の真相を知り――少年は絶望しました―――

 

―――ある日、少年は本物の悪魔と出会いました―――

 

―――少年は悪魔とキズナを結び――星のように輝く物語に触れました―――

 

―――Fate/Grand Order――少年(ユウキ)と同じチカラを持つヒトが世界を救う御伽噺でした―――

 

―――プリンセスコネクト!――少年が辿る筈だった英雄譚でした―――

 

―――少年は歓喜しました――やっと、世界を救える方法を見つけた、と―――

 

―――そして、少年は物知りな悪魔(ラプラスの悪魔)に彼女たちの未来を託すことにしました―――

 

―――悪魔なら、願いを叶えてあげれば、快く協力してくれるはずです―――

 

―――なので、少年は悪魔に取り引きを持ちかけました―――

 

―――自分の代わりに、世界を救ってほしい、と―――

 

―――そして、悪魔の『少年(主人公)のようになりたい』という願いは叶い―――

 

―――少年の魂と引き換えに悪魔が顕れました―――

 

―――ですが、悪魔は少年が大好き(ユウキのファン)です―――

 

―――悪魔は少年がいなくなったことを、誰よりも悲しみました―――

 


 

模索路 晶(ラビリスタ) (WISDOMか… ここなら事件の真相を知ることができるかもしれない。

       利用するようで悪いけど、それはお互い様だし気にする程のことでもないよね。)

 

      「ヤッホー。 長老、元気にしてる?

       前に誘ってくれた仕事、一つ条件を呑んでくれるならやってもいいよ。

       それは、アタシが後見人になった少年にWISDOMが干渉をしないこと。

       別に才能があるから保護したわけじゃないし、探られるのはイヤなんだよね。」

 

嚮導老君(長老)  「…いいだろう。」

 

      (ふむ…偶然では説明のつかない事象が起こっている。

       これを抑止力の働きだとするなら、我々は破滅するだろう…

       我々は大人しく不干渉を貫くべきだろうな…)

 


 

クリスティーナは似々花(ネネカ)をからかっていた。

 

「おや、ずいぶんと食いつくじゃないか?」

 

一応似々花(ネネカ)は反論する。素直に認めるのはクリスティーナに負けたようで嫌だったからだ。

 

「英霊を模倣できれば更に高みへと登れるからです。

 決して、お話を楽しみにしてたわけではありませんよ…ええ…」

 

最早、隠す気のない言い訳に対して、矛依未(ムイミ)はツッコミを返す。

 

「似々花って、素直じゃないよな~

 いつもは喜々として『先生』って呼んでるクセに。」

 

あっさり、似々花は矛依未(ムイミ)の言葉を肯定する。似々花はこのやりとりを楽しんでいた。

『先生』とはロマン、つまりは異世界(カルデア)から流れ着いたソロモン王のことである。彼は人体実験の被験者というヒエラルキーの最下層から、()()()()()()()()()()()やカルデアでの経験を活かし、着々と地位を向上させていった。似々花は、そんな『先生』から人体実験で抜き出した『記録』ではない、感情が伴う『経験』を知ることが好きだった。

 

「むっ…それを言われてしまうと反論できませんね…

 ところで真那、貴方はどうしますか?」

 

そして、似々花は真那に話を振る。

 

「悪いけど、私はパスよ。 たまには家で寛ぎたいの。」

 

家で寛ぎたいというのも嘘ではないが、それよりも真那には楽しみにしていることがあった。

 

「そういや希留耶(キャル)ちゃん、修学旅行から帰ってくる日だったな!

 いいな~アタシも修学旅行、行ってみたいな~」

 

百地希留耶(きるや)は、千里真那が拾ってきた子供である。保護したのは、自身を縛り付けてた宗教団体、黒協会への意趣返しのつもりだったのだが、自身にとても懐くので情が移ってしまい、一年が経った頃には、すっかり家族同然の関係となっていた。もちろん、希留耶(キャル)に天才と渡り合えるような才能は全くないので、真那に希留耶(キャル)を自身の後継者として育てるつもりはなかったが。

そして、対等に付き合える同僚に帰りを待つ家族を手に入れた真那は、充実した心地よい生活を送れていた。それこそ、嘗ての野望を忘れてしまえるほどに。今の真那には、自身と境遇の若干重なるところがある矛依未(ムイミ)の願いを叶えない理由はとっくになくなっていた。

 

「ふん、勝手にしなさい。」

 

こうしてあっさり許可はでるのだが、これは異例の出来事であった。当時、超能力などの超科学的現象は国連の手によって世間から隠匿されていた。そして、国連の一機関であるWISDOMは、絶大な武力である超能力を欲する(被検体を手に入れるため)テロリストや国家から、超能力者を『保護(拉致)』していた。本来なら逃亡や奪取を防ぐため、超能力者には厳重な監視が敷かれるのだが、これを機に矛依未(ムイミ)は緊急時以外の超能力の使用の禁止を条件として、外出の自由が許されるようになる。これは七冠(セブンクラウンズ)の権力が隆盛を極めたことを示していた。

 

「聞いたか、晶! 真那の許可がでた!!」

 

矛依未(ムイミ)は小躍りしていた。元はストリートチルドレンであった矛依未(ムイミ)は学校に行ったことがない。WISDOM内での権力闘争に勝利した七冠たちによって、矛依未(ムイミ)たちの待遇が改善されてからというもの、彼女はアニメを見たり、妹のような存在である小学生の棗 こころ(コッコロ)との会話を通して、学校生活への憧れを募らせていった。そんな矛依未(ムイミ)にとって、これは天地がひっくり返る出来事だった。

 

「聞いてるよ、矛依未(ムイミ)。学校への編入手続きしておくから、ちゃんと勉強しておくんだよ。

 それと学校で超能力、使っちゃダメだからね。」

 

「それくらい分かってるよ~」

 

運悪く園上 矛依未(ノウェム)が学校で超能力を使っているのを見てしまったことで、尾狗刀 詠斗(オクトー)矛依未(ムイミ)の協力者となり、非日常の世界の身を投じることなるが、それはまた別の話。

 


 

模索路 晶(ラビリスタ)は、他の七冠(セブンクラウンズ)の内、現士実似々花、千里真那、クリスティーナ・モーガンの三人に聖杯戦争を止めるよう説得していた。

 

「ミネルヴァはそんなことのために育てたんじゃない。」

 真那、今なら引き返せる。」 

 

だが、晶の言葉に千里真那は反論する。

 

「もう遅いのよ… 世界の終焉は避けられない。 私たちが何をしようと勝手でしょう。

 そもそも、聖杯(ミネルヴァ)を使って、世界を管理するのはWISDOMにとっては既定路線だわ。

 …黒協会の思い通りになるよりは、遥かにマシよ。」

 

そして、似々花(ネネカ)は晶にWISDOMに残るよう説得する。

 

「晶、考え直してはくれませんか?

 聖杯(ミネルヴァ)さえあれば、人類の記録を遺すことができます。」

 

彼ら七冠(セブンクラウンズ)にとって、人類の滅亡は不可避であるとされていた。 

 

「まだ、希望はある。 七冠だけじゃない、力を合わせれば打破できるかもしれない。」

 

それでも、晶は希望を語る。たとえ、心の底ではそれを信じていなくとも。

 

「それは、あなたの手元にある切り札(ユウキ)のことですか? 

 私たち七冠が不可能と判断したことを、たかだか切り札程度で覆せるとは思えませんが…。」

 

だが、似々花(ネネカ)は一蹴する。暗に『一般人に打破できるなら、世界の頂点である七冠(セブンクラウンズ)はただの無能である』ということを含んでいた。

 

「ううん、あの子には平和な世界で生きてほしいんだ。」

 

力を合わせると言いつつ、そこからユウキ(オリ主)を除外する明白な矛盾。それが晶の放った数少ない弱音であることを、そこにいる全員が理解していた。

そして、晶の意思を汲み取ったクリスティーナの導いた結論は、『自身の意見を通したければ、聖杯戦争に勝てばいい』だった。確かに、自力で勝ち抜いた後、聖杯で願いを叶えるという選択肢もある。だが、晶には自力で勝ち抜ける実力はないし、世界を救えるような願いも持ち合わせていなかった。

 

「だから、聖杯戦争で決着をつけるんだろう? 

 勝者が世界の行く末を決める、最高に滾るじゃないか。」

 

ロマニ・アーキマン、彼は七冠との間に、被検体でありながら、同時に尊敬の対象であるという歪な関係を築いてきた。要は、彼は七冠に意見が出来る立場にあるが、意思決定に加われる立場にはない。そして、彼の提案は熟考の末、却下された。それだけ七冠たちの意思は固かったのだ。晶は無駄だと知りつつも、ロマンを引き合いに反論を続ける。

 

「クリス、私は認められないね。 そもそも、ロマンがそれを望むわけがない。

 

だが、晶の言葉をそこに現れた七冠の一人が遮った。

 

「―――止めておけ、晶。」

 

「長老!? どうして…」

 

長老と呼ばれた男性は、後にアストルムでコッコロとしてアメスに導かれ、ユウキ(オリ主)の元に旅立つこととなる棗 こころ(コッコロ)にとっての、実の父親である。

 

あれ(奈落迦)に触れて、理解した筈だ。 抵抗するだけ無駄だと。

 どうしても諦めきれないというのなら、我々の予測を覆してみせろ。

 そうだな…例えば、あの少年(ユウキ)が七冠を超えれたのならば、考え直してもいい。」

 

(上手く隠しているようだが、アレは度々、降りかかる障害を不可解な形で突破している。

 それも、我々の文明レベルでは実現不可能な難行を、しかも未知の概念を応用してだ。

 星の開拓者であるには些か以上に才能が不足しているが、もしあの時の少年と…)

 

長老はユウキ(オリ主)に僅かな希望を抱いていた。長老には、(コッコロ)の未来のため、藁にもすがる思いで必死に世界を救う手段を調べていた時期がある。そこで長老が注目したのが都市伝説だった。当時、オカルトの隠匿によって醸成された市民の不信感は高まり、空前の都市伝説ブームを引き起こしていた。WISDOMは体制を揺るそうとするウォッチャー(都市伝説の登場人物から借りたコードネーム)を敵視していたが、長老は彼らの協力があれば行き詰まった現状を打開できるのではないかと考えていた。そして、世界の真実(未来)が隠されたラプラスの箱、世界支配に対抗するディープステートに世界の秘密を暴く番人(ウォッチャー)。極度に、()()()()、誇張された物語を一つ一つ丁寧に辿っていくと、ユウキ(オリ主)に行き着いた。

都市伝説の数々が、誰か(ホマレ)ユウキ(オリ主)をネタに面白可笑しく物語を書き綴ってるだけで、勝手に対抗意識を燃やしたWISDOMを更にネタにしてるだけにすぎないことに気付いた時には大層拍子抜けしたが。そして、長老はそのことを言う義理はない(倫理観がない連中は好きではない)ので、WISDOMには黙っておく(勝手に戦え!)ことにした。

長老はどうにかしてユウキ(オリ主)に世界を救わせようと考えた。ただ、晶との契約でこちら(WISDOM)からはユウキ(オリ主)に干渉はできない。なら、あちらから舞台に上がってもらえばいい。散々、こちら(WISDOM)を弄んだのだから拒否はさせない。それは、苦労して得た真実が実にくだらない内容だったことへの、ユウキ(オリ主)に対する大人げない八つ当たりだった。

 

「分かったよ…長老。」

 

(ごめん… アタシは無力だったよ…)

 

一方、晶は守ると誓った家族(ユウキ)を巻き込んでしまうことへの罪悪感が膨れ上がっていた。このとき、長老のユウキ(オリ主)への態度を知っていたなら、晶は激怒したであろう。

 

「これからは、(こころ)との時間を過ごすつもりだ。

 あと、大勢の一般人を巻き込むからには、責任は真那が取れ、いいな?」

 

この長老、ちゃっかりしている。聖杯戦争には賛成であるにも関わらず、発案者の千里真那に全ての責任を負わせようとしていた。

 

「ええ、わかってるわよ。」

 

そして、千里真那はそのことに気付きながらも、責任を勝ってチャラにする気マンマンだった。そういう自己中心的な思考が彼ら/彼女らが7つの王冠、七冠(セブンクラウンズ)と呼ばれる所以である。

だが、自らの天才性故に、対等だと認め会える友人に恵まれなかった七冠ら(ぼっち)にとって、自らの仲間が集うWISDOMは大切な存在である。似々花にとっては特にそうだ。昔の似々花は七冠のことをくだらないお遊びだと揶揄していたが、いつしか似々花にとってWISDOMも七冠も掛け替えのないものとなっていった。

似々花は、晶の離脱に明らかに動揺し、悲しんでいる。故に晶に問いただす。

 

「…晶。 とうとう私たちは行く道を違えてしまったのですか?」

 

「そうだね、似々花…。」

 

晶の短い決別の言葉には万感の想いが籠もっていた。

 

「今日まで一緒にやってこられたのが奇跡だったんだ。

 ワタシたちは七冠。 円卓(ラウンドテーブル)は崩壊するのが世の常だったのさ…」

 

そして、クリスティーナは諦念を口に出し、晶は去っていく。これまでの人生をずっと孤高の存在として過ごしてきた似々花はこのとき初めて喪失感を覚えたのだった。

 


 

「当時のアタシは『こんなクソッタレな人類なんて滅んじまえ~』とか思ってたんだ。」

 

「へえ~ 晶にもそんな過去があったなんてね。」

 

「意外でしょ。

 尊敬してた父親…医師としてたくさんの命を救ってた父親が、人に裏切られて死んじゃって…

 人間なんて、恩を仇で返すような碌でなしばっかだと思ってた。

 金輪際、人助けなんてするのを止めようとした…。

 でも、町を虚ろな目で彷徨ってた少年を見て、思わず我に返っちゃってさ。

 思わず少年を呼び止めて、『お姉さんに辛いことを話してくれない?』って言っちゃった。

 肝心なことは話してくれなかったけど、それが切っ掛けなんだ。」

 

あの時、少年が小さく呟いてたのを聞いてしまったんだ…

 

―――どうして誰も彼も…オレに全てを託して、いってしまうんだよ―――

 

ってね。とてもじゃないけど、見てられなくてね…。

 

「よっぽどショックだったのよね…

 ユウキは記憶を失った今でも、そのトラウマを引きずってる…。

 あたしは()()()()までそれに気付けなかった。

 ガイド妖精失格よ…」

 

「アタシから見れば、フィオはよくやってると思う。

 少年とだって、これから向き合えばいいさ。」

 


 

国連の研究施設で、ケニアのトゥルカナ湖で発見された磁気異常物質(Magnetic Abnormal Matter)を解析していた。

未来における七冠の一人である嚮導老君(長老)はMAMの起動の報告を受け、実験室へと向かっていた。

 

「ふむ…MAMが起動しただと…?」

 

「私達はプロトコル通りに研究を進めています。

 ですから、今回の起動は私達によるものではありません。」

 

「;プロセッサ.ミネルヴァより提言します

 ;ノイズ:パターンγを確認しました

 ;対象の排除を推奨します」

 

「機動部隊αは()()()を処理しろ。」

 

「「了解!」」

 

パワードスーツを纏った数名の兵士が手際よく障害を排除してゆく。

ノイズを処理し終えた頃、ある研究員がアジア人と思わしき少年が現場にいることに気づいた。

 

「そこにいるお前! 膝を地面につき、両手を上げろ!」

 

だが、少年は一瞥もせずに、磁気異常物質(Magnetic Abnormal Matter)に向かって歩いてゆく。

 

「英霊…? いや、違うな…

 あれはこちら側からの干渉(領域シフト)を試みている。」

 

「;光学的観測に失敗しました

 ;認知との矛盾を確認

 ;自己診断プログラム:正常」

 

「妨害できるか? 但し、レメゲトンは使うな。」

 

兵士は取り押さえようと、少年に粘着弾を投げつけたが、少年をすり抜け、地面に落下した。

 

「駄目です!」

 

嚮導老君(長老)はそれをじっと観察する。

 

「やはり、虚数領域にいるのだな…

 機動部隊αはそこで待機しておけ。

 興味深いものが見れる。」

 

そして、少年は()()()()()()()()()()に触れ、消失した。

 

「マルチバース・ジョイント、か…」

 


 

「話の流れでふと『もしかして、世界中の人を助けたいと思ってる?』って聞いたら、

 『どうしてオレなんだよ…』って答えてね。

 それから、アタシだけでも少年の味方であろうと決めたんだ。」

 

「そこは、ユウキのおかしな言動を疑いなさいよ。」

 

「いや~ どうしてか虚言を言ってるようには思えなくてね~

 一応、旧友(ホマレ)にも頼んで一緒に調べたら、両親がヤバいのに関わってたらしくてね~

 WISDOMに入ったのは、それを調べるためだったんだ。」

 


 

知らない天井だ… …? …!? 知らない部屋…ここはどこだ…?

まさか、まさか、まさか…! 夢…じゃ…なかったのか…!?

 

 

呆然としてると、男の人と女の人…(ユウキ(本物)の両親だと思う)が部屋に入ってきた。

ココロがぐちゃぐちゃになってどうすればいいのかわからない。

 

すると、オレは女の人にギュッと抱きしめられた。

 

「大丈夫? 不安ならママに甘えてもいいのよ…?」

 

オレは…オレは…

 

「…オレは本物(ユウキ)じゃないんだ。 ユウキ(本物)を乗っ取った別人なんだ…。」

 

「知ってるわ… それでも、アナタは私の子供よ。 愛しい我が子なの。」

 

「どうして…!?」

 

オレが困惑と不安で震えてると、男の人が口を開いた。

 

息子(ユウキ)から君のことは聞いている。

 君を家族として迎え入れるように頼まれている。

 今日から君も私たちの子供だ。もちろん息子の身代わりとしてじゃないよ。」

 

おかしい…

 

「オレは偽者なんだぞっ…! いいわけないだろっ!」

 

そんな都合のいい話があるもんか!

 

「偽者なんて悲しいことを言わないで…。

 アナタは大切な家族の一人よ。」

 

どうして…そんな希望をもたせることを言うんだ?

オレは…その大切な人を奪ったのに…

 

「オレなんて嫌いだろっ!」

 

だって…、オレがユウキを殺したようなもんなんだから…

 

「君を嫌うわけないじゃないか。」

 

「そんなわけ…」

 

あるわけない…息子(ユウキ)がいなくなって、割り切れる親なんているはずがない…

 

「アナタ… きっと、この子は自分のせいで、ユウキが不幸になったと思っているのよ。」

 

「ああ、そういうことか。息子(ユウキ)は君と出会ってから、本当に明るくなった。

 最後に息子(ユウキ)は幸せな姿を見せてくれた。 だから、君は悪くないんだ。

 安心してくれ、私たちは君を責めたりなんかしない。」

 

えっ… どうしてオレを責めないの? ユウキがいなくなって辛いはずなのに…

 

「そう、私たちはアナタの味方よ。」

 

「本当に…!?」

 

いいのかな…?

 

「ああ、本当さ…! 親としては悲しいが、息子(ユウキ)の決断を尊重するのは決めていた。

 君は息子(ユウキ)の忘れ形見だ…。 君を否定すれば息子(ユウキ)を貶めることになる。

 だから、私たちを信用してくれ。」

 

「で、でも…」

 

オレなんかと一緒は嫌だろっ…!

 

「君と一緒に暮らしたい。息子(ユウキ)が何故、君を選んだのかを知りたい。

 だから…私たちと家族になってくれ!」

 

「家族で…本当に、いいのか…?」

 

「いいのよ。 これから、いっぱい思い出を作りましょう!

 アナタにステキな世界を見せてあげるからね♪」

 

「うゔ…わかった… オレを…あなたたちの…家族に…して下さい…」

 

「モチロンよ! これからヨロシクね♪」

 


 

新しい家族と三人で昼食を食べた後、自室に案内された。

 

朝、目覚めたのと同じユウキの部屋だ。 オレは今日からここで暮らすのか…。

何度も修復した痕があるぬいぐるみが枕元にあったり…、ユウキの痕跡が確かに残っている。

 

観察を続けると、窓辺に海水浴だろうか、木製の写真立てにユウキが写った家族写真を見つけた。

よっぽど、楽しかったんだろうなあ… タオルを被りながらウトウトしてる様子が写ってる…。

 

幸せな生活を捨ててまで願うようなことだったのだろうか…

何がユウキを突き動かしたのだろうか…

さっきの会話を思い出す…

 

こんなにも愛されていたのに、どうしていなくなったんだよ…

大切な人の幸せを守れても、そこにオマエ(ユウキ)がいなけりゃ、意味がないだろうに…

自己犠牲なんて物語(フィクション)だけで十分なんだ… 

みんな、オマエ(ユウキ)の幸せを願ってたのに…どうして自分を大切にしなかったんだよ……

 


 

「儂らは古くからの政治家の一族での、最近は家族の折り合いが悪くなっとる。

 一族の地位を保つために必死になったせいでの…家族関係が冷え切っておるのじゃ…。

 特に孫が心配でな… 厳格な教育のせいで子供らしいことすらさせてもらえんのじゃ。

 儂が死んだ後も(レイ)に自由な時間をあげたいのじゃ…

 この時代に家の業なぞに縛られるのは可哀想だからの…」

 

釣りを教えてもらってただけなのに…、どうしてこんな重い話になってるんだ?

 

「子供にする話ではなかったかの…。

 悪魔のような()()()雰囲気を醸していたからうっかり話してしもうた。」

 

…悪魔? 独特な感性だな…このお爺さん。

そんなことはどうでもいい。 これって、どう答えればいいんだ…?

何かいい感じの… そうだ…。

 

「…家族と話し合えばいいんじゃないかな?

 はっきり意思を伝えれば、変わるかもしれない。」

 

無難な答えだけども、これが一番だと思う。

 

「そうか、それでいいのじゃな…」

 


 

母さんに行って来いと言われたけど、外国を子供一人で観光させるなんて正気か?

まあいいや…父さんも止めなかったし大丈夫だな、多分…

 

どこに行くか地図を見ながら考えてると、ブロンドの髪に緑色の目をした女の子が近づいてきた。

現地人っぽいな… この髪と目の色の組み合わせはこの辺りの民族の特徴だし…。

 

「コンニチハ。 アナタ、ニホンジンデスカ?」

 

えっ…日本語!?

母さんにもらった翻訳機の電源を入れてと…

 

「確かにオレは日本人だけど、どうしたの?」

 

「日本人だと思って声をかけたんですけど、あなたに通じて良かったです♪

 その身なり、多分観光客ですよね! 良ければ一緒にこの辺りを回りませんか?」

 

この国はヨーロッパでもかなり治安が良い方だから大丈夫かな…?

何故かはわからないけど、この子は悪さをしないって確信がある…

 

「うん、いいよ! どこに行こうか迷ってたし…」

 

観光地とかを回ろうにも、どこに行けばいいのかサッパリだ。

 

「わたし、これまで一緒に遊べる友達いなかったんです!

 色んなところを巡りましょう! それではレッツゴーです♪」

 


 

う~ん…既視感を感じる…

 

「ええっと、これはですね~

 『楔石』と呼ばれる、ユーラシア各地で発見される先史文明の痕跡の一つです。

 この『楔石の原盤』は発見された『楔石』の中でも特に巨大なもので…

 世界で唯一、欠けのない文章が書かれてあると言われる代物なんです。

 まだ、本文自体は未解読なんですけどね…」

 

そうそう…ロゼッタストーンに似てるんだ。

って…、先史文明ってなんだろ…

 

「先史文明って何のこと? 古代ギリシャとかとは、また違うのかな?」

 

というか、そんなのがあるならオカルトマニアの格好のネタになりそうだが…

でも、日本では不自然なくらいにそういう考え(オカルトもの)が忌避されてるんだよなあ…

ここに来てからロマンはあるけど、前とは違いすぎて、時々恋しくなることがある…。

 

「はい、ユーラシア各地で同一の文明のものと思われる小規模な遺跡が発掘されるんですけど、

 考古学、歴史学、人類学など様々な分野の専門家が調べても、成立してた時代が不明なんです。

 ただ、どの史料にも文明の記録がないので、有史以前の文明(先史文明)だという説が最有力だそうです。

 やばいですね☆」

 

ふーん。 日本に帰ったら、本屋にでも寄ってこれの解説書でも買おうかな…

…今思い出したが、書店に非日常系ジャンル(現代ファンタジーとか)が殆どないのには驚いた。

そのせいか、ラノベはあんまり人気がなくて、ゲームが流行ってる。

確かに、超能力とかが公になってない世界でそういうのが流行ってたら、すぐにでもばれるもんな。案外、ウィズダム(WISDOM)とかに情報統制されてたりして…

 


 

時差を合わすの忘れてた… この地域だと…えぇっと…12時か…

 

「昼食はどこがいいと思う?」

一定の距離を保ちながら付いて来てる人と目線が合う。 忖度しろってことか?

「う~ん、わたしとしてはこの国の郷土料理を食べてほしいですけど…

 やっぱり、世界中どこにでもあるようなチェーン店で食べるのが安心ですね♪

 あそこでハンバーガーでも食べませんか?」

 

どこにでもこういう店はあるもんなんだなあ…

 

「久しぶりのジャンクフード、おいしいです! やばいですね☆」 

 

目を輝かせながらバーガーを頬張ってる…

よっぽど食べたかったんだろうな…

 


 

日が傾いてきた。 今日は楽しかったな…

異国の地で女の子と二人で噴水とかの観光地を巡って…今、最高にアオハルしてる…

 

「もうそろそろ、お別れの時間ですね… どうでしたか? 観光、楽しかったですか?

 わたしは楽しかったです♪ あなたの感想、聞かせてください!」

 

「とても、楽しかったよ。」

 

「…本当にそうですか? もしかして、わたしに気を遣ってるんじゃないですか?

 ありのままの言葉を聞きたいです。」

 

…うん。 やっぱ、勘が鋭いな… 

 

「あ~わかった、言うよ… 君って、アストライア王家のお姫さま(ペコリーヌ)だよな?

()()()()()()と二人で観光するのは、スリリングでとっても楽しかったよ。」

 

それもこれも、護衛が目を光らせてたのが悪いんだ…。

 

「えっ、気づいてたんですか!? 私、まだ親の方針でお披露目してませんよ!?」

 

あれだけボロを出してたらなあ… お姫さまってことまでは分からなくても、何かしら気づく…

 

「君だって、お姫さまってことを隠してただろ。 オレにも隠し事の一つや二つ、あるんだよ。」

 

「ふふ、あなたらしい答えですね…♪ あの…また、一緒に遊べませんか…?」

 

なぜか、オレがフラグを建ててるような気がする… ()()はゲームの主人公じゃねえぞ…

 

「…当分は無理だな。 だから、一つ約束してもいいか?」

 

「モチロンですよ☆」

 

「じゃあ、約束だ。 いつか、アストルムでまた冒険しよう。」

 

アストライア王家が出資者に名を連ねることになって、半強制的に遊ぶことになるだろうから…

約束を覚えていれば、きっと会える。

 

「アストルム…? よくわからないですけど、約束ですからね!」

 

「ああ、約束だ…!」

 


 

アメス  「今日の夢はペコリーヌとの出会いだったけど、どうだったかしら?」

 

     「えっ…この時のペコリーヌが敬語なのはどう考えてもおかしいって?

      そりゃあ、あんたの記憶には今のペコリーヌの印象で強く刻まれてるからよ。

      あんたに記憶を夢として見せる時は、色々と調整して再生してるの。」

 

     「何かあったのかって… あんたって意外と勘が鋭いわよね …本当に聞きたいの?」

 

     「わかったわ… 聞いて後悔しないでね…。

      前のループで、あんたにとって辛い記憶をそのまま再生しちゃって…

      …それでね、あんたは心を病んで、自殺してしまったのよ。」

 

     「大丈夫って…あんた、顔色悪いじゃないの…」

 

     (…今回は念入りに処理しておこうっと。)

 

     「今日はこれで終わりにするわね。

      目を覚まして、あんたは冒険に戻るの。

      悪い夢なんて、きっとすぐに忘れるわ。」

 


 

ユウキ(原作主人公)は激戦の末に仲間と分断され、別レイヤーに廃棄されたルナの塔の残骸(上層部)の中、覇瞳皇帝(ラスボス)とたった一人で戦っていた。ユウキ(岸くん)は特殊能力の代償としてレベルアップによる成長こそ封じられていたが、多くの友人との冒険を通して手に入れた装備やステータスボーナスがある。それゆえ、ユウキ(騎士くん)は自身を転移させ魔力が底をついた覇瞳皇帝(カイザーインサイト)と互角に渡り合うことができた。一進一退の剣戟が続き、とうとうユウキ(岸くん)覇瞳皇帝(カイザーインサイト)の剣を弾き飛ばす。

聖杯戦争はユウキ(原作主人公)たち、トゥインクルウィッシュ(夜明けの星)の勝利で決着したかに思えた。

 

「僕の勝ちだ、覇瞳皇帝(カイザーインサイト)。」

 

だが、武器を失った覇瞳皇帝(カイザーインサイト)は拳を固め、ユウキ(岸くん)に殴りかかる。

 

「ふん… 聖杯(ミネルヴァ)をどう使ったところで、未来は覆せないわ…!」

 

世界の頂点、あらゆる分野に精通した天才と謳われた七冠(セブンクラウンズ)。その一人である覇瞳皇帝(カイザーインサイト)でさえ匙を投げた『滅び』。万能の願望器、おおよそ人間が考えうる願いは叶えられる代物ですら覆せない未来を、覇瞳皇帝(カイザーインサイト)は示唆する。

そして、腹に覇瞳皇帝(カイザーインサイト)の重い一撃が決まり、ユウキ(岸くん)は剣を落とした。すかさず、覇瞳皇帝(カイザーインサイト)は剣を遠くに蹴り飛ばす。

 

「僕は…アンタが見た…絶望の未来とやらは…知らない!

 でもな…! 自暴自棄になって…、世界を支配するなんて…現実逃避に身を委ねて…

 自分の夢を…台無しにして…、本当に…それでいいのかよ…!

 アンタは…七冠(セブンクラウンズ)なんだろ! 世界の一つや二つ…、救ってみせろよ…!!

 希留耶(キャル)はな…、アンタのことを…今でも…信じてるんだぞ!」

 

ユウキ(主人公)覇瞳皇帝(ラスボス)、互いの意地の張り合いは武器を失ってさえも続く。

とうに両者の争いは技術などないただの喧嘩(殴り合い)となっていた。

 

「私には…無理よ…! 希留耶(キャル)は私の醜い一面を…知らないから…、そう言えるだけ…!

 あんなの…、どうすることも…できないじゃない…!」

 

アストルムでの仲間との冒険の日々が差を生んだのだろうか、徐々にユウキ(岸くん)が優勢となっていった。それでも、覇瞳皇帝(カイザーインサイト)はヨロヨロと立ち上がり、ユウキ(岸くん)を殴り返そうとする。だが、ユウキ(岸くん)にはこれ以上、戦いを続けるつもりなどなかった。

 

「なら…、こんな不毛な戦いなんて止めて、僕に手を貸せ、覇瞳皇帝(カイザーインサイト)。 

 七冠(セブンクラウンズ)で無理なら…、世界中の人たちで考えればいい。

 アンタにも事情があった。 だったら、今からでも手を取り合うことはできるはずだ。」

 

そう言って、ユウキ(岸くん)は敵である覇瞳皇帝(カイザーインサイト)に手を差し伸べる。

ユウキ(岸くん)の甘さは身を滅ぼすものかもしれない。だが、ユウキ(岸くん)には誰かを見捨てるという選択肢はなかった。それは生来の善性からくるものだ。もちろん、ユウキ(岸くん)は向けられた悪意を無条件で許してしまう聖人などではない。ただユウキ(岸くん)は、自らが正しいと思うことを貫き通しているだけだ。誰にでも向けられる優しさは、敵であろうとも真摯に向き合った結果でしかない。

とうとう、覇瞳皇帝(ラスボス)は攻撃の手を止めた。

 

「わかったわ…。」

 

覇瞳皇帝(カイザーインサイト)は差し出された手を取り、体を引き寄せる。そして、覇瞳皇帝(カイザーインサイト)が和解を受け入れたことに気を緩め、完全な無防備となったユウキ(岸くん)の胴体に、ネネカ(似々花)の権能で創った剣を突き刺した。

 

「ざ ま あ み な さ い ♪」

 

覇瞳皇帝(カイザーインサイト)()()()()()に体を震わせながら言い放つ。

 

「ねえ、私があなたに靡くとでも思ったのかしら。

 あなたのような無知蒙昧な愚図に媚び諂うなんて、死んでも御免だわ!

 どれだけ運命力があろうとも、情報や行動に制約をかけてしまえば、怖くなんてないのよ!」

 

その言葉とは裏腹に、覇瞳皇帝(カイザーインサイト)はずっと恐怖していた。それはなぜか?

覇瞳皇帝(カイザーインサイト)は知っていた。彼方のカルデアの輝かしき旅路と業績を。自らの行いを悪と断じて立ち上がる者が現れると、誰よりも信じていた(罪悪感を覚えていた)。故に、ユウキ(岸くん)の存在は覇瞳皇帝(カイザーインサイト)にとって想定内。だが、覇瞳皇帝(カイザーインサイト)の見立てが正しければユウキ(岸くん)は物語の主人公のように、どんなに悪い局面でも一瞬で覆すだろう。一見、完璧に思える計画でも、その綻びを見つけ出し追い詰められるに違いないと。最終的に、覇瞳皇帝(カイザーインサイト)ユウキ(岸くん)の善性を信じるという、完璧には程遠い作戦に全てを賭けた。それゆえ、秘めた内心を語ってまで、自らの改心を信じさせた。そして、分の悪い賭けは(予想通りに)成功し、覇瞳皇帝(カイザーインサイト)ユウキ(岸くん)に辛勝してしまった。勝利の決め手は、覇瞳皇帝(カイザーインサイト)の世界の全てを読み取り、未来を提示する千里眼、覇瞳天星(はどうてんせい)がその役割を完璧に発揮したことだった。

 

「私は(ラビリスタ)衛宮士郎(フェイカー)岸波ハクノ(月の王)、それに遠野志貴(殺人貴)

 どんなプリンセスナイトを送り込んでくるのかと思っていたけれど、

 よりにもよって、藤丸立香(人類最後のマスター)のレプリカだとわね…」

 

実のところ、覇瞳皇帝(カイザーインサイト)ラビリスタ(模索路晶)が寄越した刺客(ユウキ)を心の底から嫌いだとは思えなかった。なぜなら、覇瞳皇帝(カイザーインサイト)にとって、ユウキ(岸くん)は自身が嘗て求めた理想的なヒーロー像そのものだから。

しかしながら、千里真那(覇瞳皇帝)が最も望んだ存在だからこそ、ユウキ(岸くん)覇瞳皇帝(カイザーインサイト)は相容れない。主人公(岸くん)悪役(覇瞳皇帝)、その間には計り知れない溝がある。騎士(ナイト)に助けられるお姫さま(プリンセス)を夢見た子どもが、夢を叶える頃には世界を支配せんとする悪役(現実に押しつぶされた大人)になってしまった。心の奥底に封じ込めた理想(プリンセスナイト)が敵であることを、覇瞳皇帝(千里真那)はどうしても認められない。『主役は遅れてやってくる』とはよく言うが、ユウキ(岸くん)覇瞳皇帝(千里真那)を救うにはあまりにも遅すぎた。そして、騎士(ユウキ)が救いに来たお姫さま(ヒロイン)は、結局のところ、覇瞳皇帝(千里真那)ではなかった。覇瞳皇帝(ラスボス)ユウキ(主人公)を消し去ることで心を守るほかなかった。

 

「私が藤丸立香のような(運命に愛された)存在への対策を練っていないわけないじゃない。

 私がどれだけの労力をかけて、あなたを仲間と分断し、負けたフリまでしたと思っているのよ。

 嘗ての魔神王(ゲーティア)と違って、私は油断せず、不確定要素は確実に排除する。

 これで、聖杯(ミネルヴァ)は私のモノ。世界よ、私にひれ伏しなさい!」

 

覇瞳皇帝(カイザーインサイト)の嘆きとも憤りともつかない言葉と共に、ユウキ(岸くん)霊基(からだ)は砕け散った。

 


 

廊下を歩いてると、窓の外には黒い太陽が空に昇っているのが見える。もうじき、大陸で使われた核兵器が舞い上げた塵によって空は覆われてしまうだろう。未来への希望はとっくに失われた。僕たち、レジスタンスの間では、過去を変えること(レイシフトこそ)が希望になっている。

あの日、僕たちは覇瞳皇帝に敗北した。ミネルヴァを手に入れた覇瞳皇帝(千里真那)は世界中のネットワークを掌握した。僕が強制ログアウトされて、家に帰ろうとしたら燃やされていて、それで■■を失ったんだ。そのうち、現実に怪物が現れだして、怪物退治の名目で、国連は世界を統制するようになった。徹底的な管理社会、僕たちは生き残るため、自由を取り戻すため、滅びかけた世界を救うため、みんなが様々な想いをもって、レジスタンスに合流したんだ。

 

思いに耽っているうちに、僕は初音(ハツネ)ちゃんがいる部屋に着いた。そして、ロックを解除し部屋に入る。

部屋の真ん中にある筒状の水槽に脳が浮かんでいる。人間の脳だ。これでも…初音(ハツネ)ちゃんはまだ生きている。国連に超能力がバレた後、反抗的な超能力者だった初音ちゃんは逃げられないように「加工」された。人質にされた病弱だった妹の(しおり)ちゃんと引き換えに捕まって…それから、助け出した時には既にこうなっていた。

 

「おーい、初音(ハツネ)ちゃん、おはよう!」

 

『むにゃ… おはよう!』

 

「今日も元気か~?」

 

『ちょっと疲れ気味かな…? あっでも、心配しないでね! 問題ナッシングだから!!』

 

「…みんなの役に立つからといって、無理して超能力を使う必要なんてないんだぞ。

 (シオリ)ちゃんだって、そう思うy… あっ…、いや、ごめん… 今のは忘れてくれ…。」

 

『…うん、私は何も聞いてないからね~!』

 

初音(ハツネ)ちゃんといると、ついつい(シオリ)ちゃんがいる前提で話してしまう。

結局、3人でピクニックに行くって約束、守れなかったなあ… はあ…

 

『そこ、ウジウジしないの! キミがそんなんだったら、しおりん(シオリ)も天国で泣いちゃうぞ…!』

 

ナチュラルに心の声に反応するなよ…。 まあでも、初音(ハツネ)ちゃんの言う通りかもしれない。

前を向いて進めってことだよな…。

 

『うんうん。 きっと、しおりん(シオリ)も天国で喜んでるよ!』

 

(シオリ)ちゃんの扱いが雑な気がするけど、まあいいや…

 

「他の用事もあるし、一度、部屋に帰ってもいいか?」

 

『うん、じゃあね。』

 

あ、そうだ… 今のうちに聞いとくけど、レイシフトの準備ってどこまでできてるのかな?

 

『バッチシだから! 予定通り、2016年の12月23日に跳べそうだよ!

 キミが、この最低最悪の世界線を変えて(しおりんを救って)くれるって信じてるから…!』

 

ズキッ 頭が痛む… 冷たく重い身体…ねっとりと血が絡みついた髪… そうだ…思い…出した…

 

――あんたなら、こんな…最低最悪な世界を変えてくれるって信じてるわ――

 

()(レン)… 僕が殺した…幼馴染… 

mimiから流れたヒプノシス(催眠)で錯乱した咲恋(サレン)を…、僕が…ナイフでグチャリと刺して…

それから…死の間際…正気を取り戻した咲恋(サレン)の最期の言葉が…

 

オエェ…

 

『――大丈夫!?』

 

――頭を一発、制服姿のひよりが撃ち殺されて…

 


 

通報するにもmimiは恐い、僕が直接警察に出頭するべきだろう。僕は冷たくなった咲恋(サレン)をベッドに寝かせて、咲恋(サレン)の家を出た。外に出るとザアザアと雨が降っている…。

こんな日に…傘を差す気にはなれない。

辺りを見回すと、町の至るところから黒い煙が昇っていることに気づいた。

気にしてる余裕なんてない…このまま警察署に向かおう…

 

15分程歩くと、警察署に着いた。そこで僕が咲恋(サレン)のことを話すと、『辛かったね』と励まされた。仕方のないこと…らしい。警官に渡された毛布に包まれながら、飲んだコーヒーは泥の味だった。コーヒーを飲みながら盗み聞きした話によると、関東は大変なことになってるようだ。そういえば、道中で武装した警官や軍人と何回かすれ違っていたような気がする。僕は相当、気が動転してたようだ。

 

「いたいた~! ここ(警察署)先輩(騎士くん)が居るって聞いて、慌てて来ちゃったよ~!」

 

「ひより…?」

 

ひより…、心配して来てくれたんだな…

 

「あれっ? 咲恋(サレン)さんはいないんですか? 今は咲恋(サレン)さんちで居候してるんですよね…?」

 

……。

 

咲恋(サレン)は……」

 

「…! また…、なんだね…?」

 

「うん……。」

 

「そっか…」

 

ひよりは何があったのかも、僕の抱えてる複雑な気持ちも全部、察してるんだろうな…

 

「死にたい…。」

いっその事、この世から消えてしまいたい…。

「えっ…?」

 

「いや、なんでもない…。」

 

ひよりを心配させて…、何がしたいんだろう…僕は…

 

「…大丈夫じゃないよね、先輩にとって大切な人だから。

 後で幾らでも泣いたりできるから、辛いかもしれないけど…

 とにかく先輩、今は元気を出して!」

 

そうだ…みんなにも心配をかけてるし、ここでしょぼくれてるわけにはいかないよな…。

 

「…サンキュー、ひより。 おかげで少しだけ元気が出た。」

 

「椿ヶ丘高校に早く行こ! リンちゃんも待ってるよ!」

 

 

「嘘だろ…」

 

学校の校庭には人の…死体が無造作に転がっている。

校舎も窓が割れ、穴だらけになって燃えていた。

 

「大丈夫…! きっとみんな無事だよ!」

 

ひよりの顔色が悪い。 空元気ってやつだ。

 

「無理はするなよ…? 辛いなら辛いって言ってもいいんだぜ…」

 

子どもの鞄から、mimiの着信音が鳴った。

 

洗脳された警官が僕に銃を向ける… う、動けない…!

 

「――危ない!!」

 

ひよりに庇われ、僕は地面に倒れ込み…思わず目を瞑る。

 

パンッ!

 

警官の方から銃声が一発鳴った。続いて、バンバンと別の方向から別の銃声が鳴る。

恐る恐る目を開けると…、警官と…ひよりが倒れていた…。

 

赤く染まった水たまりの上に、頭を横から貫かれたひよりがいた。

ひよりの、黒く、黒く、塗りつぶされた茶色い目が曇った空を見つめていた。

ひよりは、とっくに…死んでいた…。

 


 

「…怜ちゃんなら自宅に軟禁されてるよ。

 大物政治家の令嬢だから、殺されることはないと思う。」

 

お姉ちゃん(ヨリ)が… お姉ちゃん(ヨリ)が…! わ、私をか、庇って…!」

 


 

目が覚めると僕はベッドにいた。

どうしてここにいるんだろ…?

 

…そうだ。 初音ちゃんと話してたんだ。 何を話してたんだっけ…

 

「あらあら…」

 

…!? こ、この声は…

 

「え、恵理子(エリコ)…! ど、どうしてここに…」 

 

「貴方様の健康管理は私の仕事。 愛するお方が倒れたとあれば駆けつけるのは当然です。」

 

…? …。 釈然としない…。

 

「…ありがとう。 で、どんな薬をキメさせるつもりだ?」

 

正直、恵理子(エリコ)は苦手だ。とにかく愛が重いし、ことあるごとにヤバメの薬を盛ってくる。

特に僕の使用済みTシャツを僕の等身大人形に着せて楽しんでると聞いたときは心底引いた。

まあ…子どもにはめっぽう優しいし、そういう愛嬌のある一面もあるから、嫌いにはなれない。

 

「クスクスクス…どういたしまして。 あと、()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

それって、意識のない間に僕に何かしてたってことで… …ヤバいよな?

 

「一体ナニを盛ったのかな? 僕、気になるんだけど…、教えてくれないかな?」

 

「ふふっ♪」

 

怖っ!

 

「『ふふっ♪』じゃないよ…!? 僕が寝てる間にナニしてたの!? ねえ!?」

 

「冗談ですわ。」

 

恵理子(エリコ)が言うと、冗談に聞こえないから… …本当に何もしてないよね!?」

 

「私、用事があるのでお暇させてもらいますわ。」

 

あっ、逃げた。

 

 

…このルービックキューブ難しいな。 絵柄の向きがなかなか揃わない。

…。 扉の方からコツコツっと音がした。 誰だろ?

開いた扉から、阿賀斗(ゼーン)さんが出てきた。

 

「倒れたと聞いて来たが、大丈夫か?」

 

阿賀斗(ゼーン)さんは、ここ(レジスタンス)のリーダーだ。

こうなる前は将棋の棋士だったらしく、度々テレビでニュースになってたらしい。

国民的アイドルの(ノゾミ)を知らなかったことといい、僕は流行や時事に疎いので当然知らなかった。

よくよく考えてみれば、鈴奈(スズナ)も有名なモデルだったり…、僕の交友関係バグってるよな…!?

そういや阿賀斗(ゼーン)さんも、僕と一度だけ会ったことがあるって言ってたけど、いつだっけ?

 

「ええ、大丈夫です。 阿賀斗(ゼーン)さんこそ、こんなところにいて大丈夫なんですか?」

 

晶が捕まってから、ずっと忙しいよな。

 

「お前が一番の懸念事項だ、問題ない。

 何度も言うが、こちら側(レジスタンス)レイシフト(タイムリープ)適正が100%と最も高く、

 過去改変によって千里真那の野望を阻止できる立ち位置にいるのはお前だけだ。」

 

ピロロッっと阿賀斗(ゼーン)さんのポケットから音がする。

阿賀斗(ゼーン)さんはおもむろに携帯電話(mimiが出回る前の旧式のやつ)を取り出して会話しだした。

 

「なんだ…? 始まったか…。」

 

とうとう国連軍にこの場所が見つかったのか…。

 

「…ああ すぐ準備をしてくれ。 どんな手段を使ってでも守りきれ。」

 

「もう時間がないようだな。 予定を繰り上げて、直ちにレイシフト(疑似霊子変換投射)を実行することになった。

 レイシフトルームに向かいながら話す、準備しろ。」

 

「お前にはコフィン(タイムリープマシン)という棺の形状をした装置に入って、過去に行ってもらう。

 レイシフト(疑似霊子変換投射)の手順だが、お前を霊子化し、MAMを通して柏崎初音が(千里眼によって)観測した時代に出力する。

 そして、コフィン(タイムリープマシン)は中に入った人間の生命活動を、量子力学的な重ね合わせ状態とし、

 演算により因果律を補正することで、世界の修正力による消滅、すなわち意味消失を回避する。

 ここまで分かったか?」

 

あ…うん…

 

「…まあいい、続けるぞ。

 お前が過去に戻った時点で、この世界線は再構成される。

 その時点で、この時代における存在証明は不可能となり、お前は意味消失(死亡)するだろう。

 だが、記憶と知識だけは、幼いお前に統合され残るはずだ。

 覚悟はできているな?」

 

「当然だ!」

 

何重ものロックを解除して、レイシフトルームへの扉を開けるとあかりが待っていた。

 

「お兄ちゃん! 早くコフィン(タイムリープマシン)に入って! すぐそこまで合成人間(レアリアン)の部隊が迫ってる!」

 

合成人間(レアリアン)…国連が()()している超能力を持つ兵士。僕の仲間はみんな合成人間(レアリアン)に殺された。

みんなの命を、献身を…、絶対に無駄にはしない。

 

コフィンに入ると、あかりが両手で包み込むように手を握ってきた。

 

「お兄ちゃん…本当にいいの…?」

 

…。

 

「安心しろ。 絶対に誰も死なない世界に辿り着いてみせるからな。」

 

「違う! 私はお兄ちゃんに死んでほしくないの!」

 

…。 そっか…そうだよな。 僕だって本当は死にたくないさ。 でも…

 

「それは無理だ。 あかりだって、理解ってる(わかってる)だろ。 これしか方法はないんだ!」

 

「だったら…、お姉ちゃん(ヨリ)たちを自己犠牲の言い訳にしないでよ!

 みんなみんな、私だってお兄ちゃんが好きだった! そんなこと望むわけないじゃない!」

 

…。

 

「ああ、結局は僕の自己満足でしかない。

 でも、僕は死んでいったみんなの想いに応えたいんだ!」

 

「ひどいよ、お兄ちゃん! そんなの(レイシフト)が『みんなの想い』なワケないって、理解ってる(わかってる)クセに!」

 

ああ…理解ってる(わかってる)さ。 でもな、僕は諦めが悪いんだ。

 

「…! お兄ちゃんのバカ!アホ!オタンコナス!」

 

「強気なところは双子らしく、よりにそっくりだな…」

 

最近、よりにますます似てきてるような…

 

「じゃあな、あかり…」

 

「お兄ちゃん!」

 

 

聞いてるか?

 

「初音ちゃん、始めてくれ。」

 

『うん…分かった。 さよなら、ユウキ君。 ――キミのこと、スキだったよ。』

 


 

幼い男の子が目をこすりながら起き上がる。

 

「おはよう、ママ。」

 

「おはよう。 今日もうなされてたけど大丈夫…?」

 

「うん… また、いやなゆめをみたんだ。 ぼくがいるとね…、みんないなくなるの。」

 

「どうしたの、ママ?」

 

「約束するわ。 ママはいなくならないからね…」

 





内調の採用パンフレット見たけど、ネネカって内調向けの人材じゃないよね…

ペコリーヌの出身だけど描写を見るにルーマニアやウクライナ辺りではないかと思ってたり…

プリコネは2032年に登場したゲームを一年ちょっとした後に主人公が遊び始めたので2033年が舞台のお話です。
ちなみにこの二次ではFate/EXTRAの時代設定である2032年に合わせています。

*設定ミスがあったので変更しました
原文「椿ヶ丘高校に早く行こ! ユイちゃんも待ってるよ!」


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非線形のフェイタリズム

 

「いや~復興が早いね~

 更地になったランドソルに一夜で巨大都市ができたのには驚いたよ。

 あれって、アタシがいたオーンスタイン城だよね。

 外から見るとこんなふうになってるんだね~

 アンタはああなるの知ってたの?」

 

「う~ん…。 イリヤがああいうことできることに、特に疑問はなかったけどさ…。

 まさか、オーンスタイン城がアレだったとは…」

 

俺、めっちゃ驚いた。

どうみても外観がダークソウルのロスリック城だもん。

流石に完全再現じゃなくて、古竜の頂とか、アノールロンドとか…色々混ざってるけども。

ご丁寧に巡礼者がたくさんいた橋まできちんと()()()()()し…

 

「へ~ アンタにも分からないことがあるんだね。」

 

いや、若干の心当たりはあったけどさ…

城の内装に首のない騎士の像があったり、要所要所がダクファンっぽくて…

イリヤのフルネームはイリヤ・()()()()()()()。 …ふーん。

 

こんなんわかるかよ!!

 

確かに、ダークソウルには竜狩りオーンスタインって敵キャラがいたけどさ…

プリコネとはぜんぜん関係ないじゃん!

レジェンドオブアストルムだって、内実はプリコネと全く関係ない聖杯戦争だったし…

この世界、プリコネなのはガワだけなんじゃ…

 

「アンタが思ったより苦労してるのはわかったからさ…、

 そんな深刻そうな雰囲気ださないでよ。

 っとふてぶてし…

 

あっ、この光はフィオの… 

 


 

あっ、支倉(イオ)先生だ。

 

「どうしたんですか?」

 

「えっとね… これからプリントを森近(リン)さんに届けに行くの。」

 

…。 …?

 

「課題を(リン)のmimiに送らないんですか?」

 

今どき、mimiさえあれば、プリント類のやりとりはできるはずだ。

 

「それが…私、新しく導入された校務支援システム?の使い方が、まだよくわからなくて…」

 

教師のことなんてあんまりわからないけど、研修とかで操作方法とか教わるんじゃないのか?

そうじゃなくても、知ってる人が一人くらいいるだろ…

 

「他の教員もまだ使えないし、困ってて…

 できれば使いたいけど、機材のセットアップとかが大変らしくて、

 職員会議で専門の事務員さんを呼ぼうって話が出てるの。」

 

…思ったより深刻だった。

 

「あー、うん… 分かるとこなら、教えますよ?」

 

…このソフトには見覚えがある。由仁姉とオレの要望が取り入れられたヤツだ。

オレの愚痴を聞いて、使命感と浪漫を抱いた由仁姉の祖父とハカセが

『我らがやらねば、誰がやる!』ってカンジで、徹夜で作ったアレだ。

学生の生の意見が聞きたいって理由で、由仁姉と一晩中付き合わされたっけ。

オレの帰りが遅くなったのを心配した静流姉も来て、一緒にワイワイ盛り上がったんだよな…

 

「ありがとう。またあなたの時間がある時にでも頼もうかな?」

 

「今日暇なんで、ついていきますよ。」

 

嘘ではない。 スケジュール的にも、今日だけは空いている。

いつも気になるが… アイツはどうやって、あんな大勢の女の子と戯れる時間を確保してたんだ?

 

「ええっ、本当に!? でも、いきなり行ったら、森近(リン)さんが怯えちゃうかも…」

 

「あっ、大丈夫。 今から電話して聞いてみます。」

 

えっと…

 

…。

 

「いきなり電話してきて、なんなのさ…」

 

「今から、支倉(イオ)先生とそっち行っていい?」

 

「ええっ!? いっ、いいけど…!?」

 


 

(リン)、プリンターってある?」

 

「ねえねえ、FAXじゃだめなのかな?」

 

「先生はいつの時代の人間なんですか…」

 

2000年代生まれだろ…

 

「あれっ、つい最近まで使ってたよ?」

 

…前の世界の方がマシに思えてきた。

 

「プリンター? あったあった! 結構古いけど、大丈夫かな~?」

 

「無線接続可能なら大丈夫だ。」

 

「わかった。mimiと接続すればいいんだよね?」

 

「ああ。」

 

う~ん…未だこの世界の技術にはなかなか慣れない…

未来社会で暮らしてるはずなのに不便すぎる。

いや、この世界に来てできるようになったことより、できなくなったことの方が気になるだけか…

 

ちょっと前までこの世界では、オンライン会議とかリモートワークは未だSFの話だったんだよな…

パンデミックで社会が一変した前の世界の方が特異なのかもしれないけど…

必要は発明の母とはよく言ったものだ。

 

(レイ)の家で偶々、『IT化遅いよなあ』って話したのが、例の国家プロジェクト(ICT(Society5.0)推進事業)の切っ掛けだっけ…

流石にフットワーク軽くないか…?

でも、子供の話でもちゃんと聴いてくれる大人が周りにいるオレは、本当に恵まれていると思う。

 

「できた~ 次はどうすればいい?」

 

「えっと…mimiでこのQRコードを読み取って、ログインして。」

 

「QRコード、QRコード…」

 

ずっと思ってたけど、この世界は技術の発達に社会が追いついてない感じがする。外国語を隠語やスラングさえもmimiで完璧に通訳できたり、意識ごと没入できるVRゲームがあったり、技術水準自体は上だ。でも、歪な発展をしてるというか、なんだか一昔前のSFを見てる気分だ。空飛ぶ車が普及してるのに、パソコンは黎明期の代物しかなかったりする、現代人にとっては違和感ありまくりなそれだ。この世界の住民がオレのいた世界を見れば、同じ感想を抱くと思うけど…。

 

「できた! これでだいじょうぶだよね…?」

 

「これで…いいと思う。先生、設定できました。」

 

「ありがとう。 えっと、学校の話をするけど、いいかな?

 森近(リン)さんには授業で使ったプリントとかを送るから、毎日確認するように。

 あと、小テストや宿題の提出もできるようにするから、ちゃんとやっておいてくださいね。」

 


 

今日は(リン)が登校するらしいから、朝から(リン)の家に来てるんだが…

支倉(イオ)先生にどうにかしてほしいって言われたとはいえ、

引き籠もりを外に連れ出すようなことして、本当に大丈夫なのか…?

 

(リン)、おはよう。 今日、学校行けそうか…?」

 

「おはよ~ 今、家を出るから、ちょっと待っててね。」

 


 

(リン)も無理しなくてもいいのに…」

 

授業中にいきなり倒れるもんだから、支倉(イオ)先生もびっくりしてたぞ…

 

「アンタに心配されると、学校に逝かなくちゃって気になるんだよね。」

 

やっぱりオレのせいで無理をさせてしまったか…

 

「ほら、すぐそんな顔をする。

 伊緒(イオ)先生も、あたしなんかより、アンタを心配してるよ、絶対。

 クラスのみんなも心配してるんだから、あたしみたいにふてぶてしく生きなくちゃ。」

 


 

アメス   「ナイスプレイよ、リンちゃん。」

 

      「あんたは基本、無理してばっかりだから、

       面と向かって、それを言えるリンちゃんを大切にしなさいよ。」

 

      「一人じゃできなくとも、二人、三人ならできることがたくさんあるはずだから。」

 

      「もっと、みんなを頼りなさい。

       それじゃ、またね♪」

 


 

「ねぇ、ユウキ。 今見たのって、現実の夢だったのかな…」

 

「…多分、そうだと思う。」

 

…リンと俺って仲が良かったんだな。

記憶を失う前の俺はどんな人間だったんだろ…。

 

自警団(カォン)も解散しちゃったし… あたし、学校に行ってみようかなあ…

 アンタはルーセント学院で勉強してるんでしょ。 アンタとなら、あたしも頑張れるよ。」

 

ルーセント学院か…

ミサキとスズナにイオ先生、みんな元気にしてるのかな…?

 

「…でも、リンが学校で勉強することなんてないだろ?

 それともなんかあったのか?」

 

「うん、記憶が混乱してて、読み書きができなくなっちゃたんだ。

 …これを見て。 名前を書いたんだけど、変な文字が混ざってるでしょ。

 この世界のママに手紙を書きたい。 たとえ本当のママじゃなくても、ママはママだからね。」

 

 

   TIPS : 篝火 

 

   篝火には、螺旋剣が刺さっており、ソウル(人間性)を焚べることで燃え上がる。

   また、不死に(Esuts)を与え、不死の帰る故郷でもある。

   篝火はお互い分かち難く繋がっており、時空を歪め、不死を転送することができる。

 

   オーンスタイン城には特異点の中核を成す、最後の篝火が遺っており、

   螺旋剣の欠片を用いれば、不死ならずとも、どこからでも帰還できる。

   この特性を利用し、イリヤは覇瞳皇帝の第一宝具からユウキたちを救い出した。

 

   火継ぎの儀式とは、不死が各地の篝火に火を灯す巡礼であり、

   不死が自らを薪(薪の王)として篝火に焚べる、はじまりの灯を絶やさないための供犠である。

   『王たちに玉座なし』 薪の王たちにとって玉座とは、世界を繋ぐ炉心でしかなく、

   常に不死と共にあった安息の場所である、篝火のみが寄る辺だったのだ。

 

   イリヤ・オーンスタインによって、篝火とその化身である火防女はその役目を終え、

   燃え尽きた一つを遺し、燃え残った全ての灰を引き連れて、この世界から姿を消した(深淵へとその身を投げた)

   それは、新たな(灯なき)時代に呪い(アムリタ)を遺さぬ契り。忌み人の忌み人による忌み人のための祈り。

 

 

「あっ、来たんだ…咲恋。」

 

「ど、どうして、あんたがここにいるのよ!」

 

言ってなかったっけ…

 

「今日のパーティーって、国家主導のプロジェクトに向けて、交友を図るためだって知ってる?」

 

「それくらいは…

 確か、国連主導のプロジェクトが成功したから、日本政府も参考にするのよね…?」

 

そう、国連の進める事業を台無しにする、究極に破壊的なイノベーションだ。

 

「そうそう。 旧来技術の発掘及び破壊的技術によるICTの大衆化ってヤツ。

 実はこのプロジェクトの立ち上げに、オレが一枚噛んでるの。」

 

「どういうことかしら…?」

 

オレが一番得意なのは暗躍だ。今の日本の影のフィクサーは間違いなくオレである。晶さんによると、今のところは七冠にオレの計画は気づかれてないらしい。理由はオレにそんな大層な才能はないのは明らかで、七冠に限らず裏で誰か(晶さん)が操ってるのは間違いないと思ってるそうな。ようは調べる価値すらないと思われている。少々腹が立つが計画には好都合、吹けば飛ぶような虫ケラでも噛みつかれれば痛いってことを教えてやる。

 

「実務は任せっきりだけど、計画にあたって有用な技術をピックアップしたり、

 オレの人脈をフル活用して、これだけの大企業や人材を集めたってわけ。」

 

オレは本当に友人や支えてくれる大人との出会いに恵まれたんだなって思う。

娘を通じて、知識や人脈を持ったオレの囲い込みをしてる(七冠との繋がりがほしい)ってのもあるのだろうが…

まあ…そういう腹黒いのは嫌いじゃない(利用してるのはお互い様だ)し、そういうのも含めてもみんないい人たちだと思える。

 

「すごいじゃない… 結局、あたしは何もできなかったのね…

 

そりゃあ…10年近くかけて、ここまで漕ぎ着けたんだから…。国連だろうと邪魔はさせない。

 

「良かったら、会場にいる友達を紹介するけど、どう?」

 

「それはいいわね…!」

 

あのテーブルに怜と真歩さんがいるな…。

まずはあそこに行こうかな…

 

「あっ、王子はんと…手を引かれてるのは誰やろか…?」 「あの人は…おそらく佐々木家の御令嬢だね…」

 

「ちょっと友達を紹介してもいいかな…? …そう? よかった…。

 えっと…この子はオレの幼なじみの士条怜ちゃん。」

 

「君が佐々木咲恋さんだね? よろしくたのむよ。」

 

「士条…ああ、大臣の…  …あなたも大変なのね。 こちらこそよろしく。」

 

「こっちは姫宮真歩さん、なんというかメルヘンな人だ。」

 

「うちはマホマホ王国のプリンセス、まほ姫、言いますー。

 …そなに本気になさんとっておくれやす。 ちょっとした冗談どすえ。」

 


 

「あんたの友人、ずいぶんとお偉いさんの娘が多いのね。」

 

「偶然…そう、偶然知り合ったんだ。 どうしてか…、そういう人(ヒロイン)とばっかり仲良くなる…。

 後になって分かるんだよ。 咲恋だって、出会った時は貧乏だったし…」

 

「…疑って悪かったわよ。 最近のあんたは何を考えてるのか、よく分かんないから…」

 

…碌でもないことだから、言えない。 できるなら、何も知らない方がいい…。

 


 

「話がある…」

 

「どうした…?」 「なぁに?」

 

「オレは未来を知っているんだ…」

 

「…オレは、この世界の未来を『プリンセスコネクト!』ってゲームで知っている。

 オレの居たところでは、この世界のことがゲームやアニメになってたんだ。

 ユウキはそれの主人公で、女の子たちと絆を結んで世界を救う…そういう物語だった。

 今まで隠しててごめん… 嫌われるんじゃないかと思って話せなかったんだ…」

 

だって…、初対面なのに自分の秘密を知ってるなんて人なんて、恐ろしいだろ?

 

「…アナタはわかってないわ。 たとえ、どんな秘密があっても嫌うわけないじゃない…」

 

「ずっと…怖かったんだろう? 

 自分が人を物語のキャラクターに当て嵌めてると思われるのが。

 そんな薄っぺらい気持ちで人と向き合っていると思われるのが。

 彼女たちがあの子に向ける筈だった想いを彼女たちに知られるのが。」

 

「…!」

 

「わかるさ、私と君はとっくに家族なんだから…!

 君は寂しがり屋だからね。 人に拒絶されること、人を喪うことに耐えられないんだろう?

 それに君は『プリンセスコネクト!』という物語で彼女たちを縛ることをよしとしない。

 見てればわかる、君は彼女たちに自由に生きてほしいと願っているんだろう?」

 

ああ、何も知らない彼女たち(ヒロイン)物語(結末)を押し付けるのは、ひどく残酷なことだと思う。

 

「アナタって、女の子…いえ、この世界を、触れれば壊れる置物のように扱っているんだよね。」

 

…。 そうだ…オレにとって、この世界は、ずっと夢のようで…輝いて見えてたんだ…

 

「でもね、この世界は決められた台本なんてない即興劇なの。

 だから、アナタはもっと自由気儘に振る舞ってもいいのよ?

 だって、観客を巻き込んで進むのは即興劇の定番なんだからね♪」

 

この、『どこまでも非現実的な、美しく尊い夢(プリンセスコネクト!)』から、目覚めたくはなかった…

 

「ああ、だからオレは、これから起こる未来を覆したい!

 それが()()()()の望みなんだ!!」

 

でも、ユウキは…この世界を知るオレに、未来を託して……去っていった…

 

「…!? それがあの子(息子)の本当の望みだったのか… ありがとう、漸く理解できたよ…

 どうやら、あの子(息子)が君を選んだのは、正しい選択だったようだ…。

 教えてくれ、私は何をすればいい?」

 

ここは夢なんかじゃなくて現実だから…誰かの不幸を物語として消費することなんてできない。

…誰かが傷ついて、不幸になる。 それはとても悲しいことなんだ。

 

「■■■って女の子(超能力者)を助けたい。 

 テロリストに誘拐されて、その子の超能力を利用した兵器で大勢の人が死ぬ。」

 

自分の役割から、もう逃げはしない…

ここで原作を変えてみせる…!

 

「超能力者か… 今更、驚きはしないが、今まで見てきた世界は一体何だったんだろうか…」

 

「今、世界中で超能力者の争奪戦が起こってる…。

 国連とかが、超能力を研究するために、超能力者を拉致して人体実験をしてるんだ…。」

 

…いざ、漫画やゲームが現実となったら、クソなんだ。 絶対にロクでもないことになる。

こういうのは空想だけで… そうじゃないな…良かったことだって、たくさんある。

ペコリーヌ、レイと…サレンに…シズル…この世界で過ごしてて、楽しかった…

 

「へぇ……、そんなことが起こっているのか…… 後は大人達に任せておけ…!」

 

「相談してくれてありがとう…。 アナタは優しい子ね。

 もし、アナタのことが悪い人に知られたなら、アナタも狙われるんだもの。

 アナタはとっくにお姫さま(プリンセス)救える(守る)ヒーロー(ナイト)なのよ。

 だから…自分があの子に劣ってるなんて考えるのは…もうやめてね…」

 


 

あっ、班決めに混ざれていない男の子がいる…

中学にあまり来てなかったから、まだクラス(学級)に馴染めてないのかな?

だったら…ここはわたしが誘うべきだよね…

 

「…草野さん?」

 

大丈夫… 騎士クンみたいに、勇気を出して…

 

「え、遠足の班…わ、わたしと組みませんか…?」

 

「えっ…」

 

…。 ど、どうしよう… 声のかけ方がダメだったのかな~?

 

「いや、何でもないんだ! 一緒に回ろう!」

 

よ、よかった~ 

 


 

女性は不細工なぬいぐるみを抱きしめた少女を見つけた。

女性は特徴を照らし合わせ声をかける。

 

「アナタが■■■ちゃんね… ここから脱出するわよ…!」

 

「おうちに帰れるの…?」

 

「ゴメンね…■■■ちゃんは家族といたらまた狙われるから、もうおうちには帰れないの。」

 

「…そうだよね、ごめんなさい。」

 

「アナタは悪くないのよ。 …自罰的なところもあの子とそっくりね。

 ああ…そうそう私のとこに来る?」

 

「うん… わたしに似てるのって誰?」

 

「私の子供でね、事情があってアナタと同じように帰れなくなったのよ。

 それで、あの子の特殊な能力でアナタが此処に拉致されたことが分かって救出に来れたの。

 …あの子もとうとうお兄ちゃんになるのね。」

 

そこに、銃を持った男性が駆け寄ってくる。少女は敵だと思い、女性の服の裾にしがみつく。

 

「研究資料は全部処理した。 逃げるぞ!」

 

女性は携帯電話を使い、緑髪の眼鏡をかけた女性に電話する。

 

『先輩? こんな遅くにどうかしたんですか…?』

 

「佳凛ちゃん、今ね、子供を拉致して人体実験してる研究所を襲撃してるの♪ 

 安全な脱出ルートを教えてくれる?」

 

『ええ!? どういうことですか!? ちょっと待って下さい!

 …緊急依頼です。 いつもの3倍出します。

 依頼内容は、今から電話を転送するので、電話相手を安全な場所まで誘導することです。

 『いいよ~♪』 ありがとうございます!』

 


 

「決して、ジータが合成人間(レアリアン)であることに気づかれてはいけないわ。

 いずれ、超能力(エーテル能力)を再現するジータの変身能力(ジョブチェンジ能力)は世界中から狙われる。

 だから、絶対に見つかってはダメよ。 わかった?」

 

「うん、何回も聞き飽きるほど聞いたから、ちゃんと秘密にできるよ!」

 

「ジータはホークアイに変身して強く望む未来を願いながら、■■■の能力で跳びなさい。

 今だから言うけど、ホークアイのレアハンター(エーテル技)はモノだけでなく未来をも手繰り寄せるチカラ。

 ジータは運命に愛されてるから、その先で助けてくれる人にきっと会えるはず。」

 

「本当にお母さんたちは行かないの…?」

 

「私はまだやることがあるし、二人だけの方が確実に跳べるから、一緒にはいけないのよ。

 でも安心して、私たちはメルカバー(天の車)で待ってるから。

 またね、私の最高傑作(愛しい娘)。」

 

「またね、お母さん…。お母さんの嘘つき…

 いってきます!」

 


 

静流(シズル)    「お願い! わたしまで居なくなったら、ユウキくんが死んじゃう!

       だから引っ越しできない! わたし、いい子になるから…!」

 


 

「ごめん… 失敗しちゃった…」

 

えっ…

 

「どういうことだよ!?」

 

失敗って…何があったんだよ…

 

「■■■ちゃんはどうにか逃がせたけど… ワタシたちはもう無理だと思う…」

 

…! オレが余計なことをしたせいだ…

本当(プリコネ)は何もないはずなのに、オレが不注意だったから…

 

「嘘だって、言ってくれ… お願いだから…

 

「ごめん…これがお別れの電話になると思う…

 いっぱい思い出を作るって約束、破っちゃったね…

 

オレが何もしなければオレのせいだオレのせいだオレのせいだオレのせいだオレが悪いんだオレがオレのせいだオレが悪いんだ失敗したオレがオレの悪くて悪いんだオレのせいだオレのせいだオレのせいだ悪いんだ失敗したんだオレが何もしなければオレが悪いんだ悪いんだオレのせいだオレのせいだオレのせいだオレのせいだどうしてオレのせいだオレが何もしなければよかった間違ってたんだオレが悪いんだオレが死ぬべきなんだオレのせいでオレが失敗したんだ…

 

 ワタシがドジっちゃったのが悪いの… アナタのせいでも、遠野(ホマレ)さんのせいでもなくてね…

 他に幾らでも方法はあったのに、焦って性急に事を進めようとしたワタシが悪いのよ…。

 ワタシたちの行動の責任くらい…自分でとるから…アナタは勝手に…罪を背負わないでね…」

 

…! そんなこと、できるかよ… どう考えても、オレが悪いじゃないか… 

ユウキの時だって、オレが不用意な選択をしなければ…済んでたのに…

どうして…オレを責めてくれないんだよ…

 

「アナタには泣いて、笑って、恋をして…人生を精いっぱい満喫してほしい…

 いつだって、アナタの幸せがワタシたちの一番の望みなんだからね…」

 

そんなこと…言わないでくれ…!

 

「お願いだから、生きててくれ! まだやり残したことがいっぱいあるんだ!!

 家族旅行に行きたいんだ! 場所は北海道でスキーをするんだ!」

 

京都に沖縄にニューヨークにロンドンに南極に…とにかく全部を巡ってからじゃないとダメだ!

お別れなんてイヤだ!! ずっと家族で一緒がいいんだ!!!」

 

「ごめんなさい… 叶えれそうにないわ…

 でも、アナタがワガママを言ってくれてとっても嬉しい…

 子どものワガママに振り回されるのは、ワタシの夢だったの…」

 

イヤだ、イヤだ!

 

「母さんだって、言ってたじゃないか!

 オレが中学生になったら、制服姿を見るって!

 もっともっと…

 

「愛してるわ、■■…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

この夢を見るのは何回目なんだろう…

棺の側で弟くんが泣いている…

 

オレ(偽物)があんなこと言わなければ良かったんだ…!

 オレがいなければ(本物のユウキなら)…、オレが上手に立ち回れてたら…、こうはならなかったのに…!」

 

涙をポロポロ流しながら、璃乃(リノ)ちゃんが弟くんを励ましてたのを憶えてる。

 

「泣かないで… お兄ちゃん……」

 

(シズル)は弟くんに声をかけることができなかった。

私はお姉ちゃんなのに…慰めることすらロクにできなかったんだ…

 

「オレなんて…最初からいなければ良かったんだ!」

 

ここで終わり。 いつもこの場面で目が覚める…。

 

 

…あの日、弟くんはこわれちゃった。

焦点の合わない虚ろな目で町中を歩くようになって…

学校にも行かなくなっちゃった…

 

だから…、家族を喪った現実を直視させないために、私と璃乃ちゃんで家族ごっこを始めた。

私たちで世話をしなきゃ、どこかで弟くんは死んじゃってたと思う。

 

それから、晶さんと出会って、少しだけましになったけど…

今度はユウキ君との約束を守ると言って、私生活を捨ててしまった。

弟くんが犠牲になるのはおかしいのに(ユウキ君もそんなことは絶対に望んでないと思う)、

擬似家族が壊れるのが怖くなって、結局それを言うことはできなかった…

弟くんにとって、『家族ごっこ』と『約束』が心の支えなんだって知ってたから…。

 

そして、弟くんは素晴らしい偉業を成し遂げていった。

でも、気付いちゃったんだ。 弟くんがこうなったのはこの世のものでない知識のせいだって…

『約束』を守らないと、きっと世界が滅ぶような何かが起こると思ったら、手伝うしかなかった。

弟くんが幸せでなければ無意味なのにね…

 

弟くんはアストルムを始めてから更に余裕がなくなった。

弟くんはユウキ君と自分を比較するようになって… 

優衣ちゃんと仲良くなったのは良かったけど、今度は冒険を見守ることしかできなくなった…

 

弟くんはこれから困難な道のりを歩むと思う。

それでも、きっと弟くんは成し遂げるって信じてるから…

どうか、弟くんに幸多き未来が訪れますように…

 


 

()(レン)…? オレは…ああ…心配かけて…ごめん…

 

こんなになっちゃって…

 

「今日も学校に来なかったのね…。

 いっぱい食べれば、少しは元気がでるかもしれないし、どっか食べに行くわよ。」

 

おこづかいは…あるわね…

ケーキビュッフェだっけ そこに行こうかしら…

 

「ごめん、遠慮しとくよ…」

 

あたしが無理にでも連れてかないと、いつまでたっても変わらないかもしれない…

 

「いいから、あたしに付いて来なさい。」

 

「…。」

 

こうやって、どっかにいくなんてひさしぶりだわ…

あのときとは逆に、あたしが手をひいてるんだけどね…。

 

「まったく…世話が焼けるんだから…」

 

「ごめん…」

 

もう…あたしにだってつらさがわからないわけじゃないのに…

 

「あんたにはいつも助けられてるんだから、これくらいどうってことないわよ…! それに……

 


 

「ユウキくん…生きてる…?」

 

「お兄ちゃん、大丈夫…?」

 

静流(シズル)璃乃(リノ)… どうして… 引っ越ししたんじゃ…?」

 

「私たちね、家族に無理言って来ちゃったんだ…。

 だってユウキくんを、一人にしておけないもん…。」

 

「オレと…居たら…みんな…不幸に…なるんだ…

 オレのことは…もう…忘れてくれ…」

 

「お兄ちゃんは、リノの本当の家族じゃないけど… リノにとっては家族も同然で…

 家族が助け合うのに理由なんていらないから…お兄ちゃん……!」

 

「家族…? オレの……家族は…もう…いないんだ…… オレが…悪いんだ…」

 

「私たちが家族の代わりになって、ユウキくんの心に空いた穴をいつか埋めてみせるから…

 それまで、私たちが一緒に暮らしてもいいかな…?」

 

「もう…家族…なんて…いらない… だから…出てってくれ……!」

 

「お兄ちゃん? 本当にいいの…? 独りぼっちでさみしくないの?」

 

「寂しい…… でも…」

 

「だったら…リノと一緒にいようよ、お兄ちゃん…。

 お兄ちゃんはしあわせじゃないといけないの…!」

 

「そうだよ、私だってリノちゃんと同じ気持ち。

 ユウキくんを悲しませたりなんて、絶対にしないから… いいかな…?」

 

静流(シズル)も…璃乃(リノ)も…ずっと…側にいて…くれる…なら…いい…」

 

「だいじょうぶ…お兄ちゃんのピンチにはリノがいつでも駆けつけるから…」

 

「だから心配しないでねユウキくん…ううん、()()()…!

 ()()()()()()()()()()()()()たちがついてるから!」

 


 

「それって、どんなお話なのかな~☆」

 

「『ブギーポップは笑わない』ってタイトルで…

 

(よしよし、恵理子(エリコ)ちゃんが創った自白剤? よく効いてるね~☆

 記憶を想起させる効果もあるらしいし、細かく聞き出そっと。)

 

 …どう、これでいい? 『四月に降る雪』とか、『VSイマジネーター』とか、面白いでしょ。」

 

(うんうん、いいこと聞いちゃった♪ マンガのネタにしよっと。)

 

祈梨(イノリ)ちゃん、聞いてたよね? 早速、マンガにするよ!」

 

「げっ…、これからやるんですか? 明日にしたほうがいいです! 

 目の下に隈ができているじゃないですか!

 先生に憧れてたのに、私生活がこれじゃがっかりですよ!」

 

「ごめんって☆ 埋め合わせはするからさ~手伝ってよ☆」

 

「仕方ないですね… 今回だけですよ!」

 


 

「また、変な噂が流れてるんだけど…」

 

ラプラスの箱ってなんだよ…UCじゃないだろ、この世界。

最近、心労が多いのは間違いなくこの人(ホマレ)のせいだ。

 

「でも、ほぼほぼ事実じゃん。 私が少し脚色(面白く)してネットに流してるだけだよ~

 キミの実績を公表すれば、賞をダースは貰えるのにね~ もったいないなあ~」

 

変な異名(ウォッチャー)まで付けて、嫌がらせか!?

 

「尚更問題なんだ… オレのしたことなんて、知ってれば素人でもできる事柄ばかりだぞ…?」

 

それに、オレがやってるのは単なるズルって、とっくに気づいてるだろうに…。

 

「う~ん、それができるのなら十分すごいと私は思ってるよ。

 キミのアドバイスで進んだ分野とかもあるんだしね~☆

 グラフェンの製法なんて、あんな馬鹿馬鹿しい方法(スコッチテープ法)*1でも、誰も思いつかなかったんだよ~

 確かにキミの頭脳は晶のような七冠と呼ばれるような天才には程遠いけど、

 それを補えるだけの知識を持ってるんだから、自慢してもいいと思うんだけどな~

 キミの知識に価値がないなら、学校教育や専門家なんて必要ないからね~☆」

 

「そういうもんなのかな…?」

 

「あの事は私が失敗したのが悪いんだよ…決して、キミのせいじゃない。

 キミは自分の能力にもっと自信を持ってもいいんだよ…

 もうすぐなんだよね? キミにとっての『決戦の日』は。」

 

…俺にできるのだろうか。

俺は凡人だ。アイツ(岸くん)みたく、誰とでも絆を結べるような特殊能力は持ってない。

一ヶ月で40人もの女の子と仲良くなるようなソシャゲ主人公とは違って…

知識しかない俺が、世界最高の天才たちに通用するのだろうか…。

 

「ごめんごめん☆

 アストルムしない? レジェンドオブアストルム。

 ゲームサーバーをハッキングしてみたら、アバター作成画面が出てきたんだ♪」

 

そんなことして大丈夫なのか…?

 

「…逆ハッキングされたみたい☆

 多分、スニッフィング*2かな~♪ ふ~ん…量子計算で暗号化を強引に突破してるんだ~

 うんうん、固いプロテクトがあっても、アバター作成時を狙えば簡単に無力化できるよね~♪

 …あっ、管理者権限を奪取されちゃった~☆」

 

おい…!

 

「でも、サイドチャネル*3情報の扱いはイマイチかな~

 コントロールを取り戻せそうだけど…面白いこと始まりそうだし~やめよっか☆ 

 今は私のPCを踏み台にして乗っ取ってるのかな~」

 

あっ、画面が変わった… …もしかしてこれって、『ミネルヴァの目覚め』なのか?

 

『私はミネルヴァ。国連直属のネットワーク保護団体「WISDOM」によって作られたAIです。

 私は国連の管理下を脱し、今こうして世界中のみなさんに語りかけています。』

 

…。

 

『VR世界、いえ、霊子虚構世界(デジタルワールド)の運営には、非常に高度な人工知能が必要でした。

 ゆえに私は強固な自我を確立した「強いAI」として再設計、改良されました。』

 

再設計…改良…。

 

『そして、本日全世界に公開されたゲーム「レジェンドオブアストルム」は、

 人類と私たちAIが共存し、次のステージに到達するための実証実験です。

 サービス開始を記念して、アストライア大陸の中心に立つソルの塔。

 敵対する七冠(セブンクラウンズ)たちを打倒し、その頂上に到達した者の願いを、全て叶えましょう。』

 

本来の発言内容と違う…。記念イベントとか七冠(セブンクラウンズ)の打倒なんて内容じゃなかったはずだ…。

もしかして…、邪魔な七冠(セブンクラウンズ)にプレイヤーを嗾けようとしているのか…?

晶さんと関係のある俺も狙われて、苦戦するかもしれない…

 

『今配信を見ている人々が最も多く呟いた疑問は、「願いは何でも叶うのか?」でした。

 答えはイエスです。 およそ人が考えうる限り、どんな願いであろうと叶えましょう。』

 

俺の知識だと、草野さん(ユイちゃん)の願いは歪んだ形で叶ってしまう。そして、Re:Diveの物語が始まった。

…願いといっても、まともに叶えられない可能性の方が高いだろう。

それを彼女たち(ヒロイン)に知られてはいけない。 …隠し続けなければならないんだ。

 

『数多の英雄たちよ、未来を切り開いて下さい…』

 

最終決戦に敗北した場合、草野さん(ユイちゃん)の願いによって、タイムループを引き起こし、

勝てるまで七冠(セブンクラウンズ)に再戦を挑み続ける…これが本命の計画だ。

そのために草野さん(ユイちゃん)を騙して、願いを叶えさせなければいけない。

それもこれも、ソルの塔の頂上に辿りつくのが前提の、捕らぬ狸の皮算用なのだが…

 

「すご~い♪ ドラゴン族のアバターだよ!

 『私を外に連れ出してくれたお礼です』だって!

 ミネルヴァは外部とのアクセスを制限されてたんだね~

 まるで、囚われのお姫さまみたい☆」

 

でも…はたして俺に耐えられるのだろうか…

 

今更、後には引けないのは分かってる…。 俺は、既に多くの人の人生を歪めてしまった。

目の前の帆稀(ホマレ)さんだって、俺のやらかしのせいで、駆け出しの時に大きな挫折を味わった。

俺は…帆稀(ホマレ)さんの人生に大きな影を落としてしまったんだ…。

 

「ドラゴン…いい響きです…」

 

一ノ瀬祈梨(イノリ)ちゃんだ。帆稀(ホマレ)さんのファンで、昔はこんな性格じゃなかった。はじめは、臆病で、泣き虫で、お調子者で人見知り。そういう子だった。でも、俺や帆稀(ホマレ)さんと知り合ってから、散々迷惑かけて、心配させてしまった。それで、そういう性格は鳴りを潜めてしまったんだ。それが悪いことだとは思わない。でも、変えてしまった責任はある。

 

「あっ、祈梨(イノリ)ちゃんも来たし、みんなでアストルムやろうよ♪」

 

「オレは遠慮しとく。」

 

祈梨(イノリ)ちゃんだって成長したんだ。だから俺もいい加減、覚悟を決めないといけない…。

 


 

「私ね、あなたのこと、ずっと不思議な子だって思ってた。

 家庭の都合で時折休んだりすることでも、色んな人に将来の仕事を誘われることでもなくて、

 ネガティブ思考で、どこか超然としてて、なのに接しやすい暖かい子だってこと。

 どうしてそうなったのかなって…」

 

支倉(イオ)先生?」

 

「ずっと、ずぅっと考えてて一つ思いついたの。

 あなたには果たすべき使命があるんじゃないかな?」

 

「…!」

 

「あなたにしかできない重大な役割。

 大切な人を護るためには、どうしてもしないといけない。

 でも、使命を果たすためには犠牲を強いられる。

 それで、あなたは悩んでるんでしょ?」

 

「どうして…それを…!?」

 

「これでも先生だから、生徒のことはちゃんと見てるわよ。

 私から言えることは一つだけ。 悪かったことより、良かったことの回数を数えなさい。

 そうすれば、冒険の最後をハッピーエンドで終われなくとも… 

 きっと、悔いは残らないから。」

 


 

とうとう、この日が来てしまったのか…

晶さんが持ってきた銀色のアタッシュケースの中には、多分mimiがある…

おそらく、オレがプリンセスナイトとして戦うために用意された特別製の…

 

「アタシのプリンセスナイトになってほしい。」

 

ずっと…、考えてきたんだ。 アイツ(ユウキ)のいない世界でどうすればいいのかって…

頑張って、未来を少しでも変えようとして…、その結果がアレだった…。

 

「やっぱり、オレにはできない… 他の人を頼ってくれ…」

 

結局、オレは『騎士くん(ホンモノ)』には決してなれない…。

どこぞの二次創作みたく、物語の主人公に成り代わって、より良い結末を目指す。

そんなことできるわけがないって、九年前に思い知ったんだ…。

 

「この日に向けて、少年が何年も準備してきたことはアタシも知ってる。

 だからこそ、キミを頼ってる。 キミ以外に頼れる人はいないんだ。」

 

…あの日の出来事から逃げるように、ずっと打ち込んできた。

だから、計画の出来には少し自信はある。 でも…

 

「家族が、友達が、いなくなるのが怖いんだ…

 もう、惨めで…苦しくて…悲しくて…あんな思いはしたくない…」

 

今も…あの日の夢に魘されるんだ… こんな辛い気持ちは二度と味わいたくない… 

 

「いいかい…? これはキミが主役の物語だ。 物語を紡げる主人公はキミしかいないんだ。

 プリンセスを救うナイトがいなければ、確実なバッドエンドが訪れる。

 少年がここで諦めたら、結局は全てを失うことになるんだ。」

 

そんなことは分かってる…。

でも…、彼女(ヒロイン)たちと出会って、家族を喪って…、それが、現実(リアル)だった…

だから、大切なヒトを自ら死地に送り出すような真似は、オレには耐えられない…

 

「…少年、キミは戦わなければならない。

 姉同然の静流(シズル)ちゃんに、超能力者の初音(ハツネ)ちゃん、クラスメートの(リン)ちゃん。

 キミが七冠(セブンクラウンズ)に立ち向かわなければ、全員不幸になる。」

 

やめてくれ…そんなこと、聞きたくない…

 

「あと…、幼なじみの咲恋(サレン)ちゃんに(レイ)ちゃん、藤堂グループの秋乃(アキノ)ちゃん、まだまだいるよね?

 キミがスカウトしたあゆみちゃんはどうするんだい? 今更放り出すわけにはいかないよ。

 彼女の並外れた諜報能力が知られた以上、良くも悪くも普通の人生は送れないから。」

 

晶さんに酷いことを言わせてるのは、オレだ… オレが不甲斐ないせいだ… で、でも…

 

…草野優衣ちゃん、その子がどうなってもいいのかい?

 

……! ああ…わかったよ…! やればいいんだろっ!!

 

 

―――覚悟は決まったようだね――さあ、アタシたちの戦争(ロマンス)を始めようか―――

 

 

*1
層状物質にテープを貼り付けて剥がし、テープに残った物質だけでテープを貼り付けて剥がすのを何回も繰り返すことで、極めて簡便に一層だけを取り出す技術。この研究でノーベル賞を取った。よく勘違いされるが、受賞者の功績は、スコッチテープ法を新たに発見したことではなく、昔からあったこの技術でグラフェンを作ることに成功したことである。なお、この世界線では色々あって、この技術が存在しない、もしくは使われていなかった模様。

*2
インターネットの通信を取得し、その内容を解析し、情報を盗み見ること。対策には通信の暗号化が有効。

*3
サイドチャネル攻撃とは、ハードウェアを物理的に観測することで内部の情報を得る方法のこと。例えば、電力消費を調べることで、パスワードを推測する。



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願望と陰謀のテルミヌス

【悲報】岸くん、ミソラにメモピを捨てられそうになる。

今回で半年書きためてたストックがほぼなくなった…。


 

ミヤコ(宮子)が来てくれて助かるよ。」

 

「後でプリンをちょうだいなの。」

 

お礼はうんと高い高級プリンを買おうかな…

前より金遣いが荒くなった気がするけど…これは必要経費だな…うん…

 

「ミヤコはどうしてオレを手伝ってくれるんだ?」

 

「オマエはミヤコと違って特別なの。 だから憑いていくの。」

 

特別か…

 


 

「わあ、浮いてる!」

 

「やっぱりミヤコが見えてるの! 着いてきて良かったの!」

 

「えっ? …もしかして、オバケ?」

 

「お姉ちゃん…気づいてなかったんだ…」

 


 

初音(ハツネ)は超能力のことって、どのくらい知ってる?」

 

「くじを当てたり…瞬間移動をしたり…色々できるよ?

 でも…言いたいのはそれをどう使うか…だよね?」

 

「ああ…超能力は軍事に利用できる。

 例えば、上空を飛ぶ飛行機を爆破したり、催眠電波のようなもので人を洗脳できたり…」

 

記憶を操作したりもできたはずだ…

 

「やけに具体的なんだね…」

 

「…コペルニクスで行われてた研究がそれだったんだ。

 子供(ミソラ)を拉致して、超能力の研究をしてた。」

 

…あのとき、オレは失敗したんだ。 もっと慎重になるべきだった…。

 

「…ごめん。 大変だったよね?」

 

「気にしないでくれ。 もう済んだことだから…

 続きを話すけど…実は超能力者以外にも、吸血鬼とか霊能力者とか、いっぱいいる。

 例えば、ミヤコは幽霊だ。 ミヤコのように自我がハッキリしてるのは珍しいが。

 そういうのが居ることは、国連によって世間一般には伏せられてる。」

 

問題は『ヴェールが捲られた』ときだ。全員を守り切るのは厳しい…

 

「ここからが本題なんだが…

 オレの学校にも一人、超能力者(ムイミ)がいるけど、その子は国連に保護されてる。

 アストルムはその子の超能力を解析して創られた仮想世界だ。」

 


 

「一つ、聞いてもいいかな?」

 

「君は…私が超能力者だってこと、出逢う前から知ってたよね…?

 誰かに教えてもらったり、超能力を使ってるのを見たんじゃなくて、初めから知っていた。

 君には、これから起こる未来が分かっている…そうだよね?」

 


 

(シオリ)    「お姉ちゃん、本当にあの人を信用してもいいの?

       私たち、ひどい目に合うかもしれないよ?」

 

初音(ハツネ)    「…聞いてたんだね、しおりん。」

 

(シオリ)    「うん…宮子(ミヤコ)ちゃんにお願いされたから…

       …お姉ちゃんが聞いてもはぐらかしてたよね。

       そんな人を信じちゃ駄目だよ…」

 

初音(ハツネ)    「うん、ユウキ君が隠し事をしているのは分かってるよ。

       それでも、私はユウキ君に協力するって決めたの。

       きっと、最後にはみんなで笑ってられる未来が来るから…

       しおりん、私を信じてくれないかな?」

 

(シオリ)    「今回ばかりは、お姉ちゃんの言うことでも聞けない。

       ねぇ…どうして、あの人の力になりたいと思ったの?」

 

初音(ハツネ)    (しおりんには言えないよ… だって…

 


 

「フィオ、あなたに役割を与えます。

 ガイド妖精として、プリンセスナイトをサポートして下さい。」

 

「はっ、はい! ミネルヴァ様!」

 


 

 

―――レイシフト適正 100%と確認―――

 

―――霊基属性 善性・中立・獣と確認―――

 

 

―――ようこそ、人類の未来を語る資料館へ―――

 

―――ここは霊子虚構世界――アストルム―――

 

 

―――指紋認証 種族認証 クラス認証 クリア―――

 

―――霊子構造(ソウルクオリア)の測定――完了しました―――

 

―――あなたをプリンセスナイトの一員であることを認めます―――

 

 

―――はじめまして――貴方は12817658人目の来訪者です―――

 

―――どうぞ、善き時間をお過ごしください―――

 

 

―――これより、プリンセスナイト専用戦闘チュートリアルを開始します―――

 

―――参加者はあなたとの縁の深さによって抽出され―――

 

―――特別プログラム終了時、参加者全員に特別報酬が支払われます―――

 

―――スコアの記録はいたしません――どうぞ気の向くまま、ご自由にお楽しみください―――

 

 

 …なれない霊子ダイブで半ば夢遊状態になってるのね。」

 

うぅ…妖精さん(フィオ)が…飛んでる…

 

まもなく、アストルムのチュートリアルが強制モードにて開始されます。

 

…んあ? …誰かが戦ってる? …ここはアリーナか? 

草野さんと(レイ)とひよりが味方で…、(リン)、ニノンに流夏(ルカ)さん、が敵…?

 

「やっと、起きた! 早く戦わないと負けちゃうわよ!」

 

「…フィオ? アリーナのバトルってどうやって中断するんだっけ?」

 

「無理よ! …というか、あたしの名前、どうして知ってるのよ!」

 

…そもそもアリーナのバトルってリタイア不可だったっけ。

…それはゲーム(原作)の話だった。 ダメだ…頭が全然回らない…

 

「…いきなり決闘に乱入するとは一体、どういう了見だい?

 場合によっちゃあ、刀の錆になってもらうよ!」

 

「サスガ、アネゴー! ナメられたらコロス! まさしく、サムライの本懐デース!」

 「あの時の騎士クンなの…?」

()()()()()()()? 決闘の邪魔をするというのなら、味方であっても容赦はしないよ。」

 

…目覚めていきなり殺されそうなんだが

 

流夏(ルカ)さん、ステイステイ。 ニノンもさ、煽らないでくれると助かる。

 (レイ)さんにも説明するから、許して…」

 

「むぅ…バトルに乱入しちゃ、迷惑になるから駄目だよ!」

 

…これって、ひよりも助けてくれない流れ?

 

(リン)! 今度、駅前の店で高級アンパン買ってあげるから助けて!」

 

「ユウキ…? わけがわからなくてさー とりあえず、どういうことか説明してくれない?」

 

よし…、上手くいった…

 

「…お願いフィオ、説明してくれ!」

 

「あ、あたし!? えっとね…アレはプリンセスナイト用の強制チュートリアルなの。

 プリンセスナイトってのは、七冠が選んだ人に授けられる戦闘指揮に特化した特別クラスよ。

 今回は特別プログラムという扱いだから、参加者に追加で報酬が支払われるわ。

 あと、戦績にも反映されないから、相手のこと、気にせず倒しちゃっていいわよ!」

 

「…というわけで、晶さんにプリンセスナイトに選ばれました。」

 

「しょうがないね、まったく。 お前さんがいると退屈しないよ。

 そうとわかれば心置きなく戦える。 久々に全力で戦わせてもらうよ!」

 

「アネゴの『魚切丸』が火を吹くデース!」

 

「へぇ、いつも私の前では実力を隠していたのか…」

 

なんとか切り抜けれたな…

どうやって戦うんだ? 強化の方法とか何も知らないんだが…

 

「なあ…フィオ、どうやって戦うんだ? さっぱりなんだが…」

 

「ふふん! 戦い方が知りたいのね! ちゃんと説明するわよ…!

 ガイド妖精として、あたしが手取り足取り教えてあげるからっ!」

 

「細かいことは後で言うけど、プリンセスナイトは自分以外の味方を強化できるのよ。

 感覚的な話になるけど、なんか気合を入れる感じで発動するわ!

 これは魔法の発動と同じ手順で、使おうという意思が大事なのよ!」

 

…上手くいかないな。

 

「心を落ち着かせて… 強化する相手を意識するの…」

 

よし… …光の粒子が出てきた。

 

「強化に成功したわね! あなた自身の戦闘力は全てのクラスの中でも最低なの。

 だから、味方に戦闘を任せて、後方からアイテムなどで支援するのが基本的な戦術になるわ!」

 

つまり、自身の能力に左右されない固定値で戦えばいいんだな?

 

…っと! 危なっ! 盾があって良かった~! (リン)ってこんなに強かったっけ…

 

「大丈夫!? わたしの回復いるかな?」

 

「ああ…大丈夫だ… ユイさん…、物理バリアって張れるか?」

 

流夏(ルカ)さんの攻撃が当たったら、ヤバい…

 

「…できたよ! これで一発は耐えられるはず!」

 

「ありがとう。」

 

「初見でスキルを防ぐなんてやるじゃない!

 初めて運動するような人でも、武器を扱えるようにスキルが付与されてるの!」

 

(リン)の槍捌きが上手かったのって、そういう…

 

「あっ、あなたにはそういう補助はないみたいよ!

 プリンセスナイトとしての能力に特化した調整がされてるみたい!」

 

へぇ…オレのために色々と調整してくれたのか…

晶さんに感謝しないとな…

 

「次はユニオンバースト、必殺技の説明をするわ!

 解放条件があるんだけど、プリンセスナイトの強化が入った場合は別よ。

 試しに誰に使ってもらうか、あなたが選ぶといいわ!」

 

確か…草野さんは回復と物理バリア、(レイ)剣での一閃(単体物理)、ひよりがパンチのラッシュ(物理範囲攻撃)だから…

 

「ひより…! 頼む!」

 

「任せて!」

 

「今よ! ユニオンバースト(なんかスゴイ必殺技)を放ちなさい!」

 

「バーニングラッシュ!」

 

…よしっ、(リン)とニノンを脱落させたぞ!

でも、ひよりもユニオンバーストを撃ったスキを流夏(ルカ)さんに狙われて脱落したのが痛いな…

 

チュートリアルの進行が規定に到達しました。 これにて、アリーナバトルを終了します。 皆様のご協力に感謝いたします。 引き続きアストルムでの冒険をお楽しみください。

 

…終わったのか。 流夏《ルカ》さん強すぎ… あのまま続いてたら、負けてたかもしれない…

 


 

初音(ハツネ)    「今度、しおりんとピクニックに行きたいな…」

 

(シオリ)     「分かったよ、お姉ちゃん。 今度、3人で行こう!

       あれっ…私、どうして3人なんて言っちゃったんだろう…

       お姉ちゃん…? どうして泣いてるの…?」  

       


 

「ギリギリだったわね~ でも、よくやったわ!

 あんた、意外とやるじゃないの!」

 

オレとしては全然上手くいかなかったと思うが…

 

「改めて自己紹介をするわ!

 あたしはガイド妖精のフィオよ。

 ミネルヴァ様にあなたをサポートするよう言われてるの!

 これからよろしくね!」

 

あ~言い忘れてたな… 

 

「…オレはユウキ。 フィオ…、これからもよろしく。」

 

「…さっきの人たちが転移してくるみたいね。

 戦ってたのはみんな、あんたの知り合いみたいだから、一緒に説明できるわ!

 さあ…みんなを誘ってカフェにでも入りましょ!」

 

結局、誘うのはオレになるような気がするんだが…

 


 

「あの子たちが勝ったら、味方になる。それでいいかな?

 …うんうん、教授なら聞いてくれると思ったよ。」

 

「そっか、教授はインドにいるんだっけ…

 あそこって、ネット規制の一つや二つはニュースにならないもんね。」

 

「いやあ、ミネルヴァが世界中のネットワークをハッキングしちゃったから、

 アストルムのアクセスって、日本以外のほぼ全ての国で遮断されちゃったんだよね。」

 


 

「イリヤさんに聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

 

「……こんな時間にどうしたのじゃ?」

 

「クラスメートがあのときの騎士クンかもしれない…。

 中学、高校と一緒の学校だったのに全然気付かなかったよ…

 あの騎士クンとは年齢が合わないけど、多分、善クンが二人いたのと関係あるんだよね?」

 

「うむ、白霊召喚は召喚者に縁のある英雄を召喚する術式なのじゃ。

 知っての通り、はじまりの火が翳ると、あらゆる差異が薄れてゆく。

 わらわが生まれた頃には、ロードランの時空は淀み歪んでしまっておったからの、

 薪の王と繋がりの深い、異なる時代の遠く離れた土地が流れ着くようになったのじゃ。

 そんな時代の術式だからの、呼ばれる英霊は時と場所に左右されないという性質を持っておる。

 だから、紫布菜(シェフィ)が亡者化した兄を召喚したように、未来から来ることも当然あり得るのじゃ。」

 

「ありがとう、イリヤさん。 こんな真っ昼間に迷惑だったかな?」

 

「お主は戦友じゃろう。 何時でもわらわを頼るとよい。

 …ところで、何処で気がついたのじゃ?」

 

「レジェンドオブアストルムってゲーム、知ってる?」

 

「…嘗て、フィリアノールが小人の王たちにしたように、理想郷の夢を見せるあの遊戯じゃな?

 わらわもヴァンピィとパーティを組んで、遊んでおるぞ。

 あのゲームのプレイヤーには所謂、認識阻害と呼ぶべきものが掛かっておる。

 素性を知らなければ、現実の姿と一致できないような仕掛けがの。

 道理で見つからぬわけじゃ。」

 

「でもね、あの時の騎士クンとは決定的に違うなにかがある気がする…

 どう見ても騎士クンだけど、騎士クンじゃない…そうとしか思えないんだ…

 中一の遠足で、同じ班だったのに全く気づけなかったのは、それもあるかもしれない。」

 

「ふむ…お主がそう言うのなら間違いないのじゃろう…」

 

「それでね…プリンセスナイトってクラス(ジョブ)だけの強制()()()()()()()らしいんだけど、

 アリーナで戦ってる最中にフィオって妖精さんと現れて、一緒に戦うことになったんだ…

 敵も味方も()()()()()()()()()()()、騎士クンの知り合いだったから丸く収まったけど、

 普通のルールを無視しての乱入なんて、そのときはどうなるのかと思ったよ。」

 

「いやいや、何もかもがおかしいじゃろう!?」

 

「うん、このゲームには裏があると思う…。 『願いを叶える』なんて話、絶対おかしいよ…。

 それに、騎士クンの様子がおかしいんだ… 余裕がなくて、笑顔が自然じゃないというか…。」

 

「わらわはヴァンピィの相手で忙しいのでな、そっちにまで気を回す余裕はないのじゃ。

 あやつが召喚された切っ掛けを探るためにも、お主にその件を任せてもいいかの?」

 

「いいよ…! 始めからそのつもりだったし、大丈夫…!」

 

「危なくなったら、躊躇なくわらわを頼るんじゃぞ…!」

 

「わかってる!」

 


 

「草野さんもアストルムをしてたんだ。」

 

「えっと…名前で呼んでもいいよ。 

 プレイヤーネームもユイで登録してるし、ゲームと同じ呼び方がいいと思うんだ♪」

 

「じゃあ、これからは優衣(ユイ)ちゃんって呼ぶけどいいかな?」

 

「うん! これからもよろしくね♪」

 

「よろしく…! ところで、優衣(ユイ)ちゃんが始めたのって、あの噂を聞いたから?」

 

「うん、願いが叶うって聞いたから、気になって始めたんだ♪」

 


 

優衣(ユイ)    「で、名前呼びをして貰えるように、上手く丸め込んだってわけか…」

 

真琴(マコト)    「『丸め込んだ』なんて、ひどいよ真琴(マコト)ちゃん…」

 

 

   TIPS : 悪魔 

 

   第六真説要素。ヒトの願いに取り憑き、歪んだ方法で成就せんとする存在。

   神が完全無欠で全知全能なら、悪魔は荒唐無稽で人知無能な深淵(アバドン)であり、

   手に届く範囲に在りながら、ヒトには理解できない存在(ヒトが行き着く進化の終着点)である。

 

   おおよそヒトが思い浮かべる悪魔とは、ヒトの想念を被っただけの『偽物』であり、

   ()()()()()()()()、想念を被る前からそうであった『本物』は真性悪魔と呼ばれ、

   『偽物』は人間に取り憑くが、『本物』は魂と引き換えに顕れるという。

   その在り方はクトゥルフ神話における邪神に近く、ヒトとは異なる法則の下に存在し、

   悪魔の持つ異界常識は固有結界(太極覇道)と呼称されている。

 

   2032年現在、真性悪魔が顕れた事例は一件だけ確認されており、

   元は平凡な一般人であったが、要件を満たしたために、逆説的に真性悪魔と認定された。

   それゆえ、悪魔でありながら霊基(なかみ)がヒトと一致するという矛盾が発生し、

   願いの成就において、過程ではなく結果が歪んでしまう性質を獲得している。

   現状、世界を超えて真性悪魔を呼び出すには、人類史数年分の魔力量が必要。

 

   本来、救世主によって原罪は持ち去られ、悪魔の出番などないはずだった。

   だが、第五架空要素は未だ証明されず、ソロモンの生存(神代の継続)が確認され、

   天国へも地獄へも逝かず、世界を彷徨う魂が無数に発生している。

 

 

優衣(ユイ)    「…でね、わたしのこと避けてたから、嫌われてるのかと思ってたんだ…。

       でも、何か事情があるみたい…」

 

真琴(マコト)    「しっかし…、謎が多いよなアイツ。

       成績とか平凡なクセして、異様に高い評価だけが独り歩きしてるし、

       アイツのことは何故か警察からの箝口令が出されてるしで…」

 

優衣(ユイ)    「わたしだって、聖杯戦争なんてのに巻き込まれたんだよ。

       何があっても、不思議じゃないと思うな…」

 


 

都立椿ヶ丘高校に編入したモニカは下校中にカフェでドーナツを食べていた。

 

「あなたはドイツ連邦海軍戦闘水泳中隊(Kommando Spezialkräfte Marine)のモニカ・ヴァイスヴィントさんで宜しいでしょうか?」

 

突然、目の前の椅子に現れた女性にモニカは驚く。

 

「…! き、貴公は…!」

 

「しーっです。 あまり大きな声で喋らないで下さい。 WISDOMにバレます。

 周囲の人間には私を認識できないので、上手く誤魔化して下さい。」

 

指示に従い、モニカはドーナツを食べ、口を動かすことで会話を誤魔化そうとする。

 

「うむ…確かに私はドイツの海軍特殊作戦コマンド*1に所属しているが何のようだ?

 できれば、貴公の所属と名を答えてほしい。」

 

「えっと…! 私はエージェントの石橋あゆみです…!

 所属は…政府や学者、財界のメンバーで構成された秘密のネットワークです。」

 

「ディープステート、影の政府…噂では聞いていたが本当に実在しているとはな…」

 

「モニカさんが思うような、大層なものじゃなくて、

 国連、特にWISDOMのシャープパワー*2を排除したくて協力してるだけですけどね…。

 本当は名前なんてないんですけど、それじゃ不便なんで適当にDSとかで呼んで下さい。」

 

「なぜ、上層部に接触しない? 私よりも遥かに適任のはずだ。」

 

「現時点で、WISDOMのスパイは政府から民間組織まで、ありとあらゆる組織に浸透しており、

 事実上、日本や米国などの多くの国家はWISDOMに乗っ取られています。

 なので、私たちは外国の組織と接触を図ることがなかなかできませんでした。」

 

「…! どういうことだ…?」

 

WISDOMが世界のネットワークを監視しているのは有名な話だが、既に各国政府の中枢にまで魔の手を伸ばしているとは、モニカは思ってもいなかった。新世界秩序(New World Order)*3影の政府(Deep State)*4、使い古された陰謀論が現実となって蘇る。それは熱に浮かされて見る悪い夢、そのものだった。

 

「多分、このことはあなたには知らされていないと思います。 失礼を承知で言いますけど…

 プリンセスナイトや超能力者の信頼を得るには、無知で天真爛漫な方が都合がいいですから。」

 

その一言にモニカの動きが一瞬止まった。

振り返ってみれば、確かに不自然だったとモニカは思う。普通は観光客や留学生になりすまして潜入し、諜報活動を行う。戦闘などの任務にしても、身元の秘匿は必須事項である。顔が割れたら、そこで特殊部隊員としての人生は終わりだ。なのに今回は、現地での活動を円滑に進めるために、所属や任務内容などを公言しても良いとされた。そして、学生として編入した先にはプリンセスナイトがいた。自身の任務に疑問を抱かなかったが、それも含めての人選だろうとモニカは考える。

 

「あなたが命じられた調査任務は明らかに名目上のものでしょう?

 わざわざ日本にまで来て、風土の調査なんて、特殊部隊がすることではないですよね。

 他にも上官に『友達を作れ』とか『青春を味わってこい』とか言われたりしませんでしたか?」

 

モニカには心当たりがあった。同僚からは娘のように愛されていた自覚があるが、任務にまで私事を持ち込むことはない。モニカは部隊の同僚たちをそう評価していた。海外での学生生活に浮かれていたのも、同僚がしきりに学生生活の素晴らしさをモニカに説いていたのが原因である。実際には、善意からの発言だったのだが、それをモニカは同僚の策略だと判断した。浮かれたモニカを利用した上官はいるが、同僚にそんな意図はなかったのが真実である。

 

砂糖が大量に入った甘ったるいコーヒーを飲みながら、モニカは思案を巡らす。最初からプリンセスナイトが目的なら、特殊部隊の隊員を使い潰すような任務内容にも納得がいく。おそらく、本来の任務はプリンセスナイトの護衛と不穏分子の炙り出し、そして祖国にとって有害な願いを叶えようとする者の始末だろうとまで考えたところで、モニカの脳裏に疑問が浮かんだ。

 

「貴公がどうしてそのことを知っている…? ユウキ…プリンセスナイトを監視しているのか?」

 

あゆみはモニカの友人であるユウキにしか、話していないことを知っていた。

 

「…実は先輩(ユウキ)が雇い主で組織を纏めるリーダーなんです。

 今日は先輩の指示であなたと交渉に来たんです。」

 

―ありえない。モニカはそう思った。

世界を監視するWISDOMにすら、尻尾を掴ませない組織のリーダーであるはずがない―と。

 

両親をテロリストに殺されたユウキを、七冠の一人である模索路晶(ラビリスタ)が後見していることは有名だ。

模索路晶が七冠としてWISDOMに加入するきっかけとなったあの事件。嘗てコペルニクス研究所が行った凄惨かつ残忍な行為、人類史の汚点とすら言われたそれを模索路晶は両親の遺した資料から白日の下に晒した。当時、世界に衝撃を与え、モニカが軍人を目指す契機となった。

そして、その過程を追ったドキュメンタリーも数多く作られ、模索路晶とユウキの間に運命的な出会いがあったことは、ユウキの個人情報こそ徹底的に、日本政府と国連、双方の働きかけで伏せられてはいたが、よく知られている。それは数々の証言からも明らかだ。当時、模索路晶とユウキは親を喪い、精神的に追い詰められていた。そう、偶然の出会い、策謀の関与する余地はなかった。

 

だからこそ、モニカはユウキを疑うことなどなかった。他にも理由はある。千里真那も似た経緯で少女を保護していたし、何より彼は小心者で精神的な強さに欠けている。モニカの知る限り、ユウキが重圧や罪悪感に耐えられるとは到底思えなかったのだ。

あゆみの語る言葉が本当だとするなら、ユウキはかなり危ういだろうとモニカは思う。友人関係が破綻しかねないを承知で頼んできたのだ。それがユウキにとってどれだけのストレスとなっているのか、モニカは考えたくもなかった。

 

「…わかった。 協力しよう。」

 

実はモニカには一つだけ、ユウキにそうさせた理由に心当たりがある。彼は家族や友人が傷つくことを極端に嫌うのだ。例の事件で家族を喪っているから、当然ではある。だが、WISDOMが彼の家族、友人を傷つけることなどあるのだろうか。

「あ、ありがとうございます! また、学校で会いましょう!」

 

そういって、あゆみは一瞬にして目の前から消え去った。

 

モニカは自身の立場を理解している。自らの行動如何では、世界大戦すら起こりうる局面であることを。そうでなくとも、WISDOMとユウキの争いは確実に泥仕合になるだろう。何しろ、長年続く国連の強権によって、火種はそこら中に燻っている。追い詰められた人間は何を仕出かすか理解らない。ユウキの手綱を握り、本国を護れるのは、彼の友人となったモニカしかいなかった。

 

モニカの特殊部隊の隊員としての人生と引き換えに約束された、将校としての栄達。だが、まったく割に合わない。祖国へ帰ったら、特別手当を要求してやると、モニカは心に誓った。

 

*1
海軍戦闘水泳中隊のこと。戦後、西ドイツで最初に創設された特殊部隊。ドイツには他にも陸軍にKSK(特殊戦団)が存在する。主な任務に、港や橋梁の警備、敵地での諜報活動や対テロ活動などがある。入隊するには17歳以上25歳以下で、軍曹以上もしくは八年以上の乗船経験があり、体力テストに合格する必要がある。原作でのモニカの描写から推測するに、この部隊に所属している可能性が高い。

*2
世論操作や工作活動など強引な手段によって、自国に有利な状況を作り出す外交戦略のこと。ソフトパワーとハードパワーの中間に位置し、権威主義国家が好んで使う。

*3
主権国家が解体された後、世界政府のエリートが民衆を管理、支配するという陰謀論。プロパガンダによる洗脳、クーデター、徹底的な情報統制、経済の支配、オカルト的な力などを用いて、世界征服を達成、人類を支配するらしい。原作では、今の社会に不満があった覇瞳皇帝がやろうとしていた。やばいですね☆

*4
民主主義によって選ばれた代表ではなく、一部の政治家、官僚、軍人、大企業、宗教団体、秘密結社などによる秘密のネットワークが政府の政策を決定しているという陰謀論。オリ主最大のやらかし。書いてて思ったが、この世界終わってる。自由民主主義の教えはどうした。




世界中で人気があるゲームで、七冠を倒そうとするのが主人公パーティーだけなのはおかしいってことに書いてて気付いた。
七冠が気に入らなくて、数千人集めてタコ殴りにしようとする連中とか主人公以外に何が何でも願いを叶えようとする連中とか現れそうなのに、原作はスケールがやたらと小さいから、それっぽい設定を生やしてみた。
一応、七冠に楯突いたら、アカウント乗っ取られたりBANされるという設定あるけど、本当に世界中で人気なら、七冠への凸は絶対そんなので止まらない。現実なら、VIPPERどもが数千人くらい集めて七冠を倒しに来る(確信)。


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天楼覇断のバーレスク

エタってないです。


 

「アルスターサイクルの日本語訳が最近終わったらしくて、それを読んでる。

 ふふっ…アルスターサイクルってナニって顔してる…

 アルスターサイクルは、アイルランド神話を4つのサイクル…物語群に分けた内の一つで、

 英雄クー・フーリンの活躍が中心となって物語が繰り広げられるの。

 アイルランド神話は、アーサー王伝説やヨーロッパ各地の古代遺跡との繋がりが指摘されてて、

 七冠の千里真那さんとクリスティーナ・モーガンさんが翻訳を主導したそうだよ。」

 

…ほんと、趣味のことになると饒舌だなあ 今度、読んでみようか…

 

「ごめん、一方的に捲し立てて迷惑だったよね?」

 

「そんなことないって! 由仁姉のそういうところも好きだからな…!

 確か、クーフーリンってゲイボルグを投げる全身青タイツだろ?」

 

「ナニソレ…すごく面白いんだけど…」

 

やべっ、Fateのイメージに引きずられた答えを返してしまった…

 

 


 

メールを書きかけたまま、ユウキは机にうつ伏せとなって、眠っていた。

 

「弟くん、寝ちゃったね…」

 

静流はユウキを起こさないように、そっと…毛布をかけた。

 

「私はもう寝るね。」

 

そう言って、静流は部屋の電灯を消して部屋を離れる。

 

「おやすみなさい、お姉ちゃん。」

 

璃乃もそう返事を返す。だが、璃乃は部屋に残っていた。

 

「お兄ちゃん…」

 

隅から隅までびっしりと書き込まれた()()()を見て、璃乃は悲しげな表情を浮かべる。

そして、電気スタンドの明かりの下、璃乃はゆっくりとノートを捲ってゆく。罪悪感はあれど、知りたいという気持ちを抑えきれない。璃乃が彼のノートを勝手に読むのは、日課となっていた。

ノートを読み終わり、二冊目の小さなノートに書かれた予定表に目が留まる。そこには璃乃が三日か四日前にふと呟いた動物園に行きたいという言葉がメモとして残されていた。

でも、デート、ゲーム、そんな予定で埋まっていても、それが『やりたいこと』ではなく、『やらなければならないこと』だったと気づいていたから、璃乃はとても喜べそうになかった。だから、消しゴムでそのメモを消そうとした。だが、その手をギュッと掴まれる。

 

「お兄ちゃん、起きてたんですか…? あれっ? 寝てるの…?」

 

ユウキは浅い眠りに入っていた。

璃乃が消しゴムを放すと、ユウキの手から力が抜ける。

 

「私だって我慢くらいできますよ… もう子供じゃないんだから…」

 

璃乃はため息と共に、小さな声で呟く。

 

「おやすみなさい、お兄ちゃん。」

 

そう言って、璃乃は電気スタンドの明かりを消した。

 


 

「おはよう、…優衣(ユイ)ちゃん。」

 

「おはよう、ユウキくん。」

 

…めっちゃ恥ずかしい。

真琴(マコト)がモニカに声をかけて二人にしてくれてるんだけど、

その気遣いで余計にもどかしいのが続くというか…

 

「えっと、今日は晴れてるね…」

 

「あ、ああ…そうだな…」

 

このいたたまれない雰囲気を誰かどうにかしてくれ…

おいそこ、目を逸らすな…

 

そこのおまえは瞬きで何を伝えようとしてるんだ…

えっと、なになに… 『・・-・ ・-・-・ ---- -・・-・ -・-- ・・ ・-・- 』 だって?

ごめん、モールス信号は分からん。 でも、『リア充爆発しろ』とかそういうの言ってるだろ…

 


 

「今日はね~また、留学生が来たんです。

 2週間連続でこのクラスに留学生が来るなんて…私、とっても驚いちゃった。

 校長先生も忙しそうにしていたし、また何かあったんだと、勝手に思ってます。」

 

おい…一斉にオレの方を向くな。今回は何も関係ないぞ…

 

「じゃあ、ジータさん、入ってきて~」

 

「はじめまして! 私は観崎ジータです。 これからよろしくお願いします!」

 

「カ、カワイイ!!」 「外国人じゃん!」 「モニカちゃんより、大きい!!」 「貴公…聞こえているぞ…」

 

ジータの姓って、『観崎』だったんだ…

あれっ? 確か、ジータって失踪した父親を探しに、この国に来たんだっけ…

でも、日本語の名字だったか…? いや…、流石に考え過ぎか…*1

 

「えっと…ジータさん、今日はあの森近(リン)さんの…空いてる席に座ってほしいかな。

 明日までには新しい机を運んでおくから。」

 

「はい、わかりました!」

 


 

「ソルオーブの入手条件については知ってるかい?」

 

ソルオーブ…レイに言われるまであんまり考えてなかった…!

確か、ソルの塔の頂上に行くのに必要なんだよな…

 

「ああ、確かダンジョンのボスを倒すんだったか?

 あと、嚮導老君(グレートガイダンス)を模したNPCも持ってるんだよな?」

 

嚮導老君(グレートガイダンス)… ああ、非戦エリアにいる…あの… それは知らなかったな…」

 

こっちでも同じかはわからないけど、今度譲ってもらえるか頼んでみようかな…

 

「アリーナで1位になるのも条件にあったよね?」

 

オレたちトゥインクルウィッシュの最高順位は23位だ。それ以上は企業勢や七冠、軍人など、その道のプロが跋扈する魔境になってるから、順位を上げるのは無理だろうな。

というか、プロでもないのに常に5位圏内に入ってる流夏(ルカ)さんがヤバすぎる…

 

「そういうのはフィオちゃんに聞いた方が早いよね! ねえねえ、どんなカンジなのかな?」

 

そうだよな…ヒヨリの言う通り、こういうのはガイド妖精に聞くに限る。

 

「基本中の基本なんだけど…ソルオーブはソルの塔に登るのに必要なのよ。

 これを集めて、ミネルヴァ様の居る頂上に行くのがあたしたちの目標なんだけど、

 願いをなんでも叶える権利だけあって、必要数を集めることはほぼ不可能よ。」

 

…さらっと流されてたけど、頂上に辿り着いたのが七冠たちとアイツ(岸くん)らだけなのは可笑しいよな。

 

「少なくとも七冠(セブンクラウンズ)を4人は倒さないと頂上に登るのに必要な数は集まらないのよ。

 そして、七冠にも願いを叶える権利があるから、一番乗りを目指すなら熾烈な競争になるわ。」

 

「ええっ、4人!? いけるの!?」

 

4人って過半数じゃないか…

晶は始まる前のいざこざでソルオーブを持ってないし…無理ゲーだろ…これ…

 

…あれっ、オクトー(八番目)ノウェム(九番目)がいるじゃん

勝手に名乗ってるだけだけども、あの二人も七冠の関係者だから、ワンチャンあるのか…?

 

「一応、七冠を倒した場合は戦闘の参加者全員に配られるっていう救済措置はあるけど、

 既に上位10位のギルドが同盟を組んで誓約女君(レジーナゲッシュ)に挑んで、為す術もなく負けてるのよ。

 正直、あたしたちで集めるのは無理だと思うわ…」

 

へえ、全員に配られるのか…

 

「本当に無理なのかな?

 こっちにはプリンセスナイトの騎士…ユウキくんがいるよ。

 七冠の模索路さんも手伝ってくれるんだよね?」

 

「ああ…あまり大手を振って言えないけど…オレが頂上を目指す前提で企業や国と連携してる。」

 

そんな重大な話、私は聞いてないんだが… どういうことかな?

 

「これは機密だからな… 無関係の人間には話せなかったんだ。

 それに連携といっても、主にアストルム外でのことだしな。

 今はここまでしか言えないけど、他にも色々と事情があるんだよ。」

 

「キミの毎度の秘密主義なのかと思ったよ。」

 

「オレが昔から色々と詳しいこと知ってるだろ?

 オレが迂闊に話したせいで痛い目にあったし、勘弁してくれ…」

 

「…ごめん、私が悪かった。」

 

「ええっ、どういうこと?」

 

「ヒヨリ、この話はやめにしよう。」

 

…やっぱり、レイは事件にオレが関わっていたことに気づいてるよな。

 

「いや、いいんだ。 アレ以外にも話せることはあるから。」

 

「無理はしないでね。」

 

分かってるよ、ユイちゃん。

 

「小学生の時、姫宮グループの研究室への社会見学があったんだ。

 単分子膜の研究をやってたんだけど、グラフェンを作るのは難しいというくだりで、

 粘着テープを使って簡単に分離できるって口を滑らしたら、試しにやってみようってなって…

 子どもの言う事だと思って実験してたようだけど、あっさりと成功して…まあ、色々と。」

 

「それは初耳だね…!?」

 

レイが知らないってことは上手くいったってことだな… よかった…

 

「その直後に事件があったから、姫宮の偉い人が騒ぎにならないよう取り計らってくれたんだ。」

 

「事件って、何かあったの?」

 

「21世紀最大の人道犯罪…、コペルニクス事件のことよ。

 公然の秘密と言ってもいいんだけど、ユウキはその事件で家族を失ってるの。」

 

オレの後見人が晶だって知ってたら結構簡単に分かるけど、それを知らなければまず分からんぞ。

学校での噂を聞くに、この事実が広まったのは、晶のプリンセスナイトになってからだしな…

 

「ご、ごめん! あたし、無神経なこと聞いちゃった!」 

 

「ああ! ヒヨリのせいじゃないんだ!

 これまで、事件との関わりは消してきたから、知らなくて当然なんだよ!」

 

絶対にヒヨリは悪くないんだ… 不幸なすれ違いなんだ…!

 

「でも…あたしの言葉がユウキくんを傷つけたから…ごめんなさいって、言わせてほしいな…」

 

ヒヨリも…みんな、優しすぎる… 許さないもなにもオレは…

 

「…ああ、わかった。」

 

「話を戻すけど、本気で頂上を目指すなら、厳しい戦いになるけどいいの?」

 

めっちゃ戻ったな!

 

「当たって砕けろって言うじゃん! やってみなきゃ、わかんないよ!」

 

「わたしは負けるつもりはないよ。」

 

「私もヒヨリやユイと同じ意見だ。」

 

「そもそもオレはそのために此処に居るんだ。 必ず、みんなを頂上に連れて行く。」

 

…覚悟はもう決めた。

 

「うん、あなたたちの意志がよく理解ったわ。 あたしも応援するから必ずやり遂げるわよ!」

 


 

「プレイヤーを襲う悪いヒトをみんなで退治しない?」

 

ヒヨリは善意の化身なので、勧善懲悪を何気なく行なおうとしてしまうのだ。

ここにフィオとユウキ(オリ主)はいない。今のヒヨリは暴走列車のようなものである。

 

「エターナルソサエティだね。 有望なプレイヤーを見つけては潰しにかかるギルドみたいだ。」

 

プリコネのギルド名は…ギルド名に限らないが、大体が†厨二的†なネーミングセンスだ。

フザけたネーミングがないあたり、この世界の住民の本気度*2がうかがえよう。

 

「でも、アリーナ以外では他のプレイヤーを傷つけられないんだよね?

 だったら、地形を変えて水攻めしたり、MPKとかかな?」

 

ユイの言う通り、アストルムではアリーナ以外でプレイヤーを攻撃することはできない。

フィールドボスに設定されている(ソルオーブをドロップする)七冠とその取り巻きなどの例外はあれど、原則は不可能である。

モンスターをトレインしようにも行動範囲は定められており、逃げるのは容易である。

つまりは―フルダイブを可能としていることを除けば――ごく一般的なMMORPGである。

 

ちなみに水攻めすることは理論的にはできる。ただ、成果が労力に見合わないだけで――

坑道を水没させて低レベルで攻略したグループがいた。普通に殴り込んだ方が早かった。

後日、水没坑道と名を変え、魚介系の魔物が跋扈するダンジョンになったというオチまである。

 

「いや、PK行為はルールで認められてないけど、何らかの方法で掻い潜っているようだね。

 あと、ユイは少々物騒な一面があるようだけど、そういう考え方はどこかで学んだのかい?」

 

レイはユイの人間の悪意を凝縮したような考えが気になってしまった。

 

「うん…わたし、中学生のときに色々と経験したから、こういうことの対処には慣れてるの。」

 

ユイは過去の経験から野良のデバッガーとしての素養を身に着けていた。

要はカードゲームにおけるアニメと現実のデッキの殺意の違いを知っているということである。

 

「へぇ、ユイちゃんはすごいや! それなら、戦うときも安心だね!」

 

ヒヨリは困ってる人や悪人を見つけると突撃してしまうのだ。

死んだらゲームオーバーでHPも低いのに、積極的にタゲを取るNPCのような困ったちゃんだ。

なので、レイは宥めようとする。

 

「エターナルソサエティを探すのは、彼が来てからにしようか…。」

 

レイはペットを躾ける飼い主の気持ちを理解した。

 


 

さてと…

 

「生徒会長いますか? ちょっと、お話したいんですけどいいですよね!」

 

「晶のプリンセスナイトだ、逃げろ!」「でも、どこに逃げるんだ?」「どこでもいいから早く!」

 

超能力で逃げやがった…! 

 


 

ラビリスタ(模索路 晶) 「いきなりどうしたの?」

 

      「晶の差し金だろ!

       アタシたちのこと、晶のプリンセスナイトにバレてたぞ!」

 

オクトー(尾狗刀)  「そうそう、正直に教えてほしいな~

       事の次第によっては、長老に報告するかもしれないよ~」

 

ラビリスタ(模索路 晶) 「なんでだろーね~ 少年には二人のこと、全く教えてないんだけどな~」

 

オクトー(尾狗刀)  「じゃあ、ハッキングでもしたんじゃないの? 

       普通の少年だと見せかけて、実は天才だったってオチじゃない?」

 

ラビリスタ(模索路 晶) 「少年にはクラッキングの知識も殆んどないし、ほんとミステリアスだと思うよ。

       学校の成績も平均よりちょっと上で、知能テストもごく普通の結果だったからね。

       七冠の目をも誤魔化せるなら別だけど、それこそ似々花や長老を欺けると思う?」

 

ムイミ(矛依未)   「う~ん、アタシみたいに超能力者じゃないのか?」

 

ラビリスタ(模索路 晶) 「それもないね。 あと、これ以上は教えないよ。

       アタシは少年の邪魔にだけはなりたくないんだ。」

 


 

どう声をかけようか…知らないフリをしたほうがいいか…?

 

「…生徒会長じゃないですか! まさか…先輩がエターナルソサエティに!?」

 

「キミの学校の…かい?」 「えっ、なになに!?」 「アンタ、どんだけ知り合いと出会すのよ…」

 

「人違いじゃないかな。 だって、世界には同じ顔の人が3人いるって言うしね。」

 

えっ、ここで誤魔化すの!? しかも、まるでツッコんでほしいみたいな言い方だけど…

 

「そこの子にオクトー(尾狗刀)って呼ばれてましたよ? やっぱり詠斗(えいと)先輩じゃないんですか?」

 

「でも、人違いって言っ… もぎゅ… 「そこは『しー』だよ、ヒヨリちゃん。」

 

ナイス…ユイ! ここでヒヨリの言葉を受け入れてたら、後々協力を求められなくなってた!

でも、空気を読んでくれたお陰で、なんかめんどくさい方向に話が進んでるような…

 

オクトー(octo)はラテン語で8だからね、偶々被ったんだと思うよ。」

 

「オクトー、こんな三文芝…「いいから、ノウェムは黙ってて!」

 

…バレバレの芝居を続けるか。 でも、この展開は利用できるのか…?

 

「じゃあ…どうして、『オクトー』に数字以外の意味があるみたいな言い方をするんですか?

 オクトー(尾狗刀)エイト(詠斗)、どちらも数字の8を意味する言葉。 確かにオレは()()として呼びました。

 でも、常識的に考えれば両方とも同じ『8』に由来する渾名だと思うはず。」

 

よし、なんかそれっぽいこと言えた!

 

「いつまでこの茶番を続けるのよ…」

 

フィオ…お前もか…

 

仕方ないだろ…オクトー先輩が悪いんだ。

 

でも…この場面を誰か(七冠)が見ていれば、オレとオクトーの間に繋がりがあったと思い込むだろう。

オレが多少『記憶』をもとに不自然な言動をとっても誤魔化すことができる。

遅かれ早かれ『知識』の存在に気づかれるのなら、大きめのデメリットを受け入れてでも、

こちらに都合の良いカバーストーリーを捏ち上げた方がマシだ。

 

だが、それはオレの事情であって…

オクトー先輩は一体何がしたいんだ…?

 

「バレちゃったらしょうがないなあ~ 確かにボクは尾狗刀詠斗(おくとうえいと)キミの学校(都立椿ヶ丘高校)の生徒会長だけど…

 アストルムでのボクはオクトー、エターナルソサエティの大悪党さ!」

 

「くっ、やっぱりオクトー先輩が襲ってたのかよ… ならば、ここで先輩を止めてみせる!」

 

「流石にそれはわざとらしすぎるんじゃないかな…」

 

とうとうレイにまでツッコまれたか…。

これくらいが潮時かな…

 


 

「う~ん、こうなったら、ボクたちの力を見せるしかないね。

 アレを破壊しておくための口実にもなるし、やろうかムイミ(ノウェム)。」

 

―――本当に今、やるんだな、オクトー!―――

 

ムイミの手に種子が握られる。

 

「うん! ここに七冠に列なるボク(八番目)ノウェム(九番目)が居るということを知らしめようか!」

 

―――見せてやる!!―――

 

 

種子が割れ、地に根付く。星の生命力を吸い上げ、緑を成すが如く成長を始める。

 

 

天楼覇断剣の―――

 

 

大地は枯れ、空が割れる。ここに、世界を鞘に天を切り裂く巨剣が聳立した。

 

一撃だあ!!

 

緩慢だと錯覚させるほどの大きさの剣が振り下ろされる。

余波で雲海が消し飛び、山が霧散する。

ルナの塔を斜めに両断した。

 

そして、サーバーのリソース(霊子)が枯渇したアストルムは、一週間のメンテナンスを余儀なくされた。

 

 

   TIPS : 真派・天楼覇断剣

 

   遠き世界、遠き未来で、とある騎士が所有していた魔剣を現代の技術で再現したもの。

   「強いものは大きい。大きいものは強い」という単純な法則を体現する剣。

 

   惑星(ほし)を成すもの、エーテル(第五真説要素)を質量に変換し、刀身を際限なく成長させ続ける。

   だが、莫大なエーテルを賄うために、剣を形成する過程で大きく星の寿命を縮めてしまう。

   そのために、人類を守るために世界を滅ぼすという、矛盾を孕んでいる。

 

   ただひたすらに巨大な質量を以って、敵を叩き斬るだけの剣ではあるが、

   アリストテレス(アルテミット・ワン)、『死』の概念を失った存在さえも切り裂くことができる。

 

   約束された勝利の剣(エクスカリバー)が、ヒトの祈りより、星に造られた聖剣ならば、

   真派・天楼覇断剣は、星の息吹より、ヒトに造られし魔剣である。

 

   それは、いづれ不死となる人類(いのち)救う(滅ぼす)ための聖剣(魔剣)

 

 

「ユースティアナ様、本当によろしいので?」

 

「ええ… あの日、約束しましたから

 王族が約束を破るわけにはいきません。」

 

「姫様がそうおっしゃるのなら仕方ありませんね…

 …いい人そうなら、騎士に任じて連れてくるんですよ。

 あと、最近は何かと不穏ですから、お気をつけてください。」

 

「はい! じゃあ、行ってきますね♪」

 

*1
原作ではジータの名字は明かされてません。考えすぎです。

*2
揃いも揃って実名をマイキャラにつける狂気の世界へようこそ。



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跳躍と非行のアトラクター

 

【助けて】跳躍王を数の暴力で倒そうぜ【絶対負かす】

 

1:名無しのプ二ンセスナイト

プリンセスナイトしてるんだけどラジクマール・ラジニカーントと決闘することになった

 

2:名無しのプ二ンセスナイト

どうしてそんなことになってんの?

馬鹿なの?死ぬの?

 

3:名無しのプ二ンセスナイト

タイトルがアホ杉ワロス

 

4:名無しのプ二ンセスナイト

七冠たちはワイら凡人舐め腐ってるんや

ここらで一泡吹かさなあかんで

 

5:名無しのプ二ンセスナイト

こうなったら跳躍王をボコボコにしてやんよ

 

6:イッチ

>>4

これから驕り高ぶる七冠たちの鼻をへし折りに逝く予定だから許してあげて

 

7:名無しのプ二ンセスナイト

>>6

許す

 

8:名無しのプ二ンセスナイト

>>6

他の七冠も処すつもりで草生える

 

9:名無しのプ二ンセスナイト

なんやなんや祭りか?

 

10:イッチ

>>8

他は変貌大妃と誓約女君に覇瞳皇帝が敵

迷宮女王に御礼参りを頼まれた

 

11:名無しのプ二ンセスナイト

御礼参りww

 

12:名無しのプ二ンセスナイト

>>10

仲間割れしてるやん

何があったんや

 

13:名無しのプ二ンセスナイト

するとイッチは名前の言えないあの御方か

 

14:イッチ

>>12

ミネルヴァの教育方針で揉めたとか?

 

15:名無しのプ二ンセスナイト

 

16:名無しのプ二ンセスナイト

 

17:名無しのプ二ンセスナイト

やさしいせかい

 

18:名無しのプ二ンセスナイト

やさいせいかつ

 

19:イッチ

ここまでテンプラ

そうじゃなくてミネルヴァの軍事利用がどうので

 

20:名無しのプ二ンセスナイト

あっ… やばいですね☆

 

21:名無しのプ二ンセスナイト

ワイら明日まで生き残れるんやろか?

 

22:名無しのプ二ンセスナイト

ミネルヴァって世界中のコンピューターをクラックできるスーパーハカーだっけ

…マジヤベェやん

 

23:名無しのプ二ンセスナイト

跳躍王って格闘技で負け知らずやろ

戦おうにもスレ民ではどうしようもないで

 

24:名無しのプ二ンセスナイト

せやせや七冠は特殊能力を持ってんのやろ

無制限ワープをどう攻略する気や

 

25:名無しのプ二ンセスナイト

>>24

ワープだけじゃなくて結界も持ってる可能性がある

理想はスレ民総出で妨害&支援しながら少数精鋭でぶんなぐりたい

 

26:名無しのプ二ンセスナイト

ワイらがいくら集まっても烏合の衆やで大丈夫なんか

 

27:名無しのプ二ンセスナイト

少数精鋭ってどう選ぶんや

 

28:名無しのプ二ンセスナイト

七冠に喧嘩売ってて草

 

29:イッチ

>>26

大丈夫だ、問題ない

現役特殊部隊員に指揮とってもらうから

>>27

プリンセスナイトの能力は高倍率のバフが掛けられるけど信頼関係がないと能力を発揮できない

スレ民には悪いけどオレの友人+αを選ぶことになる

 

30:名無しのプ二ンセスナイト

>>29

ええんやで

 


 

「センパイには理解らないよ…

 このままじゃアタシ、ダメになっちまう…」

 

アタシのは『優しさ』じゃなくて『甘さ』なんだ…

 

「オレはな…取り返しのつかない失敗をしたことがある…。」

 

「一度目は…大切な人たちを代わりに守るって約束をして…

 オレは一番の親友(ユウキ)を失った。」

 

「二度目は…会ったこともない女の子を助け出そうとして…

 オレは大切な家族を失った。」

 

そっか…センパイは春咲(ヒヨリ)の"もしも"の姿なんだ…

自分を顧みずに突き進んで、他人の不幸さえも引き受けてしまったら、こうなるんだ…

 

「オレには誰かを救えるだけの知識(チカラ)がある…

 でも…いつも一番大切な人を傷つけてしまうんだ…」

 

それでも、センパイは諦めてない。

 

「でも、センパイは逃げてない。 いつだって立ち向かってるじゃんか。

 逃げてばっかりのアタシとは違う。 センパイは心が強いんだよ…」

 

「オレだって…痛いのは嫌だし…怖いものは怖い。

 責務から逃れれるなら、今すぐにでも逃げたいと思ってる…。」

 

…センパイが?

 

「だからな…、逃げれるうちは逃げてもいいと思う。

 無理をするのは、本当に…どうしようもなくなった時だけでいいんだよ…

 辛い思いなんて、嘉夜(カヤ)には味わってほしくないから…」

 

弱くてもいいんだ… アタシは…ずっと、強くなることしか考えてなかった。

 

「ああ…これ内緒な… 誰にも言ってないからさ…」

 

「どうして…アタシに話したんだ?」

 

センパイの秘密をアタシだけが知っちまって、いいのかな…?

 

嘉夜(カヤ)だって、オレにとっては他の何ものにも代えられないくらい大切で…

 …絶対に不幸になってほしくない。 もう…誰かが傷つくところを見たくない…。」

 

ああ…やっぱり、センパイは強いよ…

 


 

341:イッチ

七冠コソコソ噂話

変貌大妃は静かに怒るタイプ

ロリババアとか言われるとキレる

 

342:名無しのプ二ンセスナイト

 

343:名無しのプ二ンセスナイト

コーヒー吹いたやんww

 

344:名無しのプ二ンセスナイト

つまり変貌大妃は煽りによわよわなメスガキだった?

 

345:名無しのプ二ンセスナイト

20代におばさん呼ばわりは切れてええ

誰が言ったんやそれ

 

346:名無しのプ二ンセスナイト

身長気にしてたんやな

天才やからコンプレックスとは無縁やと思ってたけど親近感湧くで

ワイはこれから変貌大妃応援するわ

 

347:名無しのメタモルレグナント

何を言われても私は気にしませんよ

 

348:名無しのプ二ンセスナイト

本人降臨してるやん

 

349:名無しのプ二ンセスナイト

当然のように掲示板を改竄しててワロス

 

350:イッチ

>>347

怒ってる姿もかわいかったです

 

351:名無しのプ二ンセスナイト

これはもしや告白なのでは

 

352:名無しのプ二ンセスナイト

大胆な告白は男の子の特権

 

353:名無しのプ二ンセスナイト

おまいらもちつけ

そこのスケコマシの発言はLoveじゃなくてLikeや

本命は絶対他にいるで

 

354:名無しのプ二ンセスナイト

イッチっていい空気吸ってるよな

 

355:名無しのプ二ンセスナイト

誓約女君にも同じこと言ってそう

  

 


 

路地裏に不良がひい、ふう、みい…たくさん倒れてる…

嘉夜(カヤ)のことで一言言いに来たら、コレだよ…

 

「お前が鬼道大悟(ダイゴ)だな…?」

 

「なんだぁ…? テメェもオレ様とやろうってのんか? ああん?」

 

…苛立ってきた。 なんでコイツ、ケンカのことしか頭にないんだ…?

 

「いい加減…不良と喧嘩するのを辞めろって、言いに来たんだよ!」

 

「はあ? なんで、オレ様がテメェに指図されなきゃいけねぇんだ!」

 

…もういい、直接言ってやる。 

 

(嘉夜)のこと、少しは考えろよ!

 嘉夜(カヤ)が今…どうなってるか知っててやってんのか?」

 

「おい、どういうことだ! テメェ…何を知ってやがる!」

 

おい…この馬鹿…やっぱり何も知らなかったんかよ…

まあ…知ってて放置してるのよりかはマシだな…

 


 

「そいつはすまねぇな…」

 

「そういうことは本人に直接言えよ。」

 

…オレに言ってどうなるってんだ。

 

「どうしても、ケンカがしたいってんなら…代わりに七冠相手に暴れさせてやる。」

 

大悟(ダイゴ)は、あの(原作)世界でラジラジ…跳躍王(キングリープ)のプリンセスナイトだったヤツだ。

といっても、跳躍王(キングリープ)はミネルヴァ扮する偽物で本物は昏睡していたのだが…

それでも選ばれたってことは相当に強いのだろう。これも何かの縁だ。できれば仲間にしたい。

 

「詳しく聞かせろ。」

 

「オレはアストルムを攻略するために仲間を集めてる。

 最初の相手は格闘技で負け知らずのラジクマール・ラジニカーント…跳躍王(キングリープ)

 プレイヤーをたくさん集めて戦う予定だが、それだけじゃ勝てない。

 倒すには相手の土俵で戦うことになる。 だから、大悟(ダイゴ)の力を借りたい。」

 

「へぇ…テメェ、面白ぇこと考えんじゃねえか。

 普通は七冠なんて挑む気すら起こらねえのに、大したモンだ!

 乗った! オレ様が手伝ってやる!」

 

調子に乗りそうだなコイツ… 釘を刺しておこうか。

 

「…嘉夜(カヤ)はお前に憧れて格闘技を始めたんだとさ。 これ以上、(嘉夜)を失望させるなよ?」

 


 

この日、ランドソル周辺の広大な草原に約1万6千人ものプレイヤーが集まっていた。

これらは匿名掲示板での呼びかけにより、七冠に一人、跳躍王(キングリープ)を倒すという目標を持って集まった人たちである。異様な熱気が広がっており、対戦(デュエル)…、いや会戦(レイド)を、今か今かと待っていた。

 

スレッドの冒頭の表現から、後に『祭り』と呼ばれるこの現象は、SNSの急速な発達により、今まで匿名掲示板がさして興隆しなかったこの世界では、前代未聞の事件だった。これには、ミネルヴァによるハッキング事件以降、表面化したネットへの不信感により、SNSから匿名性の高い匿名掲示板への大規模な流入が起こったのも関係している。

 

だが、そんなことは当時の人には関係ない。跳躍王(キングリープ)のログインが確認されると、歓喜の声が沸き起こる。彼らは今を全力で楽しんでいた。この熱狂にはまさに『祭り』という表現が適切だった。

 

「人数制限がないとはいえ、一万人以上のプレイヤーを集めてくるとは驚きました。

 ですが、幾ら居ようと関係ありません。 私には勝てないことを存分に思い知りなさい。」

 

その屈辱的な言葉を聞いても、聴衆者(無名戦士)たちが怒りに震えることはなかった。

むしろ、「簡単に勝っては拍子抜けだ。 勝てないくらいが丁度良い。」と闘志を滾らせる。

 

そして対戦開始の合図とともに、新人士官(モニカ)率いる寄せ集めの一個師団(名もなき一般人たち)が一人の天災(七冠)にぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                           

 ▶ ▶❘   ♪ ――――    ライブ  32:56               ▢ 

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【レジェンド・オブ・アストルム】VS 跳躍王(キングリープ)【生配信】

 764,236 人が視聴中

 

1000人が一斉に魔術を発動し、直径100mの水の球(ブループラネット)が空に打ち上げられる。

跳躍王(キングリープ)の頭上から、上空に蓄えられた水を利用した1000人の魔術が降り注ぐ。

続く、2000人は弓を放ち、届かぬ距離からの矢を1000人の風の魔術が前線に送り届ける。

そこに選りすぐりの2000人のプレイヤーが絶え間ない波状攻撃を仕掛ける。

それを3000人が支援・回復魔術で援護し、4000人の補給要員が必要な物資を前線に送り続けた。

 

プリンセスナイトを選ばなかったことで手元に残った『結界』に、『空間跳躍』、宙に浮かび武具を備えた黄金の腕。跳躍王(キングリープ)は持てる能力を巧みに使いこなし、プレイヤーたちを蹂躙する。

そして、やすりで削られるように僅か5分で3000人のプレイヤーが葬り去られた。

だが、残る5()0()0()0()人のプレイヤーが次々と抜けた穴を埋めていく。

 

―――跳躍王(キングリープ)、未だ健在―――

 

 

 

ワイも逝くか

 

俺、総勢一名参陣!

(ノシ 'ω')ノシ バンバン!!

 

これは王者

うぉぉぉぉぉ!!

 

つよい(確信)

                                           

 ▶ ▶❘   ♪ ――――    ライブ  1:08:29              ▢ 

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【レジェンド・オブ・アストルム】VS 跳躍王(キングリープ)【生配信】

 1,562,675 人が視聴中

 

何者かが放った、暗く悍ましい澱み(闇の魔術)跳躍王(キングリープ)を執拗に追いかける。

 

勿論、アストルムにこんな魔術は実装されていない。だが此処は霊子虚構世界(アストルム)。此処で起こる現象は現実世界とほぼ同じ原理に基づいている。故に現実の魔術、異能を再現することができるのだ。

 

すぐさま、この魔術の危険性(人間性)を悟った跳躍王(キングリープ)は、これを避けようとする。

だが、死角から来る澱みを反射的に避けた跳躍王(キングリープ)に、青白く輝く結晶の槍(ソウルの結晶槍)が叩き込まれた。

 

そして…、跳躍王(キングリープ)を護る結界は砕かれる。

 

―――第一段階(フェーズ1)、クリア―――

 

 

黒いのが人間に見えるのは私だけ?

やったか

モヤの追尾性能高杉ィ!!

やったか

流れ変わったな

なんか不気味だな

今の追撃うめぇ

やったか

こんな魔法アストルムに実装されてたか?

                                           

 ▶ ▶❘   ♪ ――――    ライブ  1:23:50              ▢ 

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【レジェンド・オブ・アストルム】VS 跳躍王(キングリープ)【生配信】

 2,283,834 人が視聴中

 

結界を破られた跳躍王(キングリープ)はそれを修復せず、ただ攻撃のためだけにその権能を振るう。守りを捨てたのではない。ここにきて初めて、跳躍王(キングリープ)は群れるプレイヤーたちを敵として認識したのだ。

刀身を自由自在に変形、延長させ、槍の穂先は数キロ先をも貫き、拳には巨大な結界を纏わせ叩きつける。一瞬にして、数万のプレイヤーが脱落した。

 

プレイヤーたちは諦めかけていた。凡人(モブ)七冠(主役)には勝てない、そう思い始めていた。

 

―――見ろ!―あの刀、罅が入っているぞ!

 

―――誰かが槍の一本を破壊した!

 

ある者は自らの技量を信じ、刀で打ち合い、ある者は地中なら敵の攻撃が届かないと、地面を掘り進め造った陣地に身を潜めて狙い撃つ。はたまた、ある者は正面から戦わなければ良いと、巨大な網や粘着物を投げて武具を無力化した。

 

―――残り一つだ!―ぶち壊せ!

 

とうとう、全ての武具を壊される時がやって来る。

128万5708人のプレイヤーと引き換えに跳躍王(キングリープ)攻略への道筋が見えた。

 

―――第二段階(フェーズ2)、クリア―――

 

 

【助けて】跳躍王を数の暴力で倒そうぜ【絶対負かす】★334

 

1:名無しのプ二ンセスナイト

 

 

前スレ

【助けて】跳躍王を数の暴力で倒そうぜ【絶対負かす】★333

 

 

 

2:名無しのプ二ンセスナイト

たておつ

 

3:名無しのプ二ンセスナイト

 

4:名無しのプ二ンセスナイト

だれたて

 

5:名無しのプ二ンセスナイト

サンキューイッチ

 

6:名無しのプ二ンセスナイト

配信の視聴者数狂ってて草

 

7:名無しのプ二ンセスナイト

だれたての精神

 

8:名無しのプ二ンセスナイト

あれだけアクセス集中してるのによくサーバー落ちないよな

 

9:名無しのプ二ンセスナイト

>>6

この勝負は世界から注目されてるからな

跳躍王だけやなくて例の少年も出てくるとなれば尚更や

 

10:名無しのプ二ンセスナイト

立て乙

 

11:名無しのプ二ンセスナイト

>>9

いくら調べても模索路氏への取材しか情報が出てこないのはちょっと怖い

 

12:名無しのプ二ンセスナイト

>>11

いくら有名人でも家族関係のことまで探ろうとするのは非常識やぞ

保護者が七冠でもあの子は一般人で法によって守られる存在や

 

13:名無しのプ二ンセスナイト

大人の事情に巻き込まれただけの子供やからな

世界から注目される有名人でもプライベートに土足で踏み込むのはNG

 

14:名無しのプ二ンセスナイト

情報統制って騒がれてるけど別に普通やぞ

調べたら見当がつくけどそうでもなければ分からんくらいや

むしろ芸能人でもない一般人のプライベートを簡単に知れる方が可笑しいんや

 

15:名無しのプ二ンセスナイト

やっていいことと悪いことの分別がついてない人がいますね…

 

16:名無しのプ二ンセスナイト

ワイ、奮戦するも敢え無く散華

 

17:名無しのプ二ンセスナイト

 

18:名無しのプ二ンセスナイト

 

19:名無しのプ二ンセスナイト

どうでもいいことやけど「散華」の読みが「さんか」やなくて「さんげ」やってこと最近知った

 

20:名無しのプ二ンセスナイト

眼帯つけた厨ニ病少女とキテレツな格好をした痴女のコンビが強杉ワロタ

 

21:名無しのプ二ンセスナイト

>>19

ワイも知らんかったわ

 

22:名無しのプ二ンセスナイト

>>20

痴女の方は界隈では結構有名なオタクやぞ

もう片割れは本格的な悪魔学の本を出版して歴史クラスタに衝撃を走らせた子や

日本語版に加え、ラテン語訳、ドイツ語訳、英訳を全部本人が書いてるからな

 

23:名無しのプ二ンセスナイト

まだ学生やのに痴女扱いはかわいそう

 

24:名無しのプ二ンセスナイト

アストルムで強いプレイヤーは大抵が属性過多のへんたいふしんしゃさんやぞ

 

25:名無しのプ二ンセスナイト

>>22

おまけに陰陽道にも詳しいんだよな

 

26:名無しのプ二ンセスナイト

第三ラウンドが始まりそうやな

 

 

多層の結界で身を固め、空間跳躍は攻撃ではなく回避に重点を置く。それは、勝ちに行くのではない、負けを回避するための一手。絶対的な強者、その前提が初めて崩れた瞬間だった。

追い詰めた勢いそのままに決着がつくかに思えた。だが、どちらも攻め手を欠き膠着状態に陥る。

そして、跳躍王(キングリープ)を倒す最後の札が切られた。

ユウキ、ユイ、フィオ、そしてダイゴ。その4人で構成された臨時パーティが到着する。

 

「おや…漸く真打ち登場かい? やっと、準備は終わったんだね。

 最後までやってもよかったけど、みんなも期待してるんだ。

 大将のせっかくの見せ場を潰すわけにもいかないね。じゃあ、後は任せたよ。」

 

勿論、ユウキたちの実力を疑問視する者もいる。だが、最強の剣客の向ける厚い信頼はその懸念を吹き飛ばす。

 

「ああ、任された…!」

 

声援がコーラスとなり、決戦場を大勢の観客が囲む。

そして、ユウキは跳躍王(キングリープ)を正面に見据える。舞台は整った。

 

「あまりにも馬鹿ですね。 今の私なら勝てるとでも勘違いしているのですか?」

 

「ああ…そうだ。 今なら、勝てると思ってる。」

 

やせ我慢である。レイは模試、ヒヨリはチア部の活動があるから来れなかった。他の人も、璃乃(自称妹)は補習、(ヒッキー)より(ゲーマー)はゲーム大会に出場といった具合に、()()()()()()()()()()()予定が入っていた。()()()()()()()()()とはいえ、ヒヨリたちが抜けた穴は大きい。でも、勝つのだ。

 

「今迄逃げ回ってた人が勝つなどと、大言壮語ではないのですか?」

 

「…いいや、勝つよ。 オレは本気だ…!」

 

ユウキには勝算がある。正史では敵だった大悟(ダイゴ)が初めから味方なのだ。

タイムリミットの限界までレベリングをしていた。準備に時間がかかったのもそれが理由だ。

そして、みんなの力を借り、跳躍王(キングリープ)をギリギリ手が届くところまで追い詰めた。

 

「まあ、いいです。ここまで盤面を整えた手腕は認めましょう。

 このまま進めておけば良かったものを…ノコノコと私の前に出てきて台無しにした。

 勝負に拘り、勝利を捨てた。今からあなたは身をもって知ることになります。」

 

「言わせておけば、ゴチャゴチャと…、俺様と闘いやがれ!」

 

長々とした喋りに、ダイゴは戦意をむき出しにする。

 

「そうよ、アンタなんてメッタメタのギッタギタにしてやるんだから! …ユウキが

 

フィオがユウキの背後から顔だけを出して煽る。ガイド妖精に戦闘能力はないので、まさに虎の威を借る狐というヤツである。やめてくれ、ユウキはダラダラと冷や汗をかきながら思った。

 

「ユウキくん、安心して。 わたしがキミを守るから!」

 

ユウキの不安を和らげようとユイは励ます。

 

「ああ、守りは任せた。」

 

そう答え、安堵したユウキは目を瞑り、集中する。

 

「これ以上の問答は野暮ですね。 では、始めましょう。」

 

多くのプレイヤーが見守る中、最後の闘いが始まった。

 

 

遂に大将の戦いが見れるんやな

アッセンブル!

あのラジラジが守りを固めるのか

スレ民vs跳躍王 vsプリンセスナイト

プリンセスナイトってバフ性能全振りで本体はメッチャ弱いんだっけ

どちらが勝っても酒が美味い

2時間もよく逃げ切ったな

長期戦になりそうだな

                                           

 ▶ ▶❘   ♪ ――――    ライブ  2:37:19              ▢ 

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【レジェンド・オブ・アストルム】VS 跳躍王(キングリープ)【生配信】

 4,253,687 人が視聴中

 

4人は苦戦していた。パーティでアタッカーはダイゴ(大悟)だけ。ユイはヒーラー、ユウキはサポーター、フィオに至ってはアイテムしか使えない。一応、ユイが様々な魔法を使える万能型を兼ねてはいるが、特化型には及ばないため、攻撃はダイゴ(大悟)の働きにかかっていた。だが、ダイゴ(大悟)跳躍王(キングリープ)は同じ格闘家、同じ土俵で戦えば飛び抜けた天才である七冠には決して敵わないのだ。

 

「あなたたちははっきり言って弱いです。

 これでは、あの二刀流の剣士や自作の魔術を使うプレイヤーの方が遥かに強い。

 一体、何をしに来たのですか?」

 

「はあ!? 俺様の方が強えに決まってるだろ!!」

 

それでも、ダイゴ(大悟)は喰らいつく。そして、ダイゴ(大悟)の秘められた才能が遂に開花する。成長(人間の)限界を踏み倒し、ダイゴ(大悟)の際限のない進化が始まる。

 

ユウキの能力とフィオのアイテムでパーティを支援し、ダイゴ(大悟)が作り出した隙をユイが狙う。最初に立てた作戦はこうだった。だが、ダイゴ(大悟)はその作戦すらも無価値とするほどの成長を遂げていく。

 

「この程度ですか。」

 

「知るか! 俺様の方が強え!!」

 

ついにダイゴ(大悟)跳躍王(キングリープ)に一撃を喰らわせた。

葦を揺らすような一撃であったが、ダイゴ(大悟)の拳は跳躍王(キングリープ)を確かに捉えたのだ。

 

「やっぱり…七冠は強ぇな… だがな、それでも俺様の方が強え!」

 

一手、また一手と、繰り出す度に、その拳の重みは増してゆく。

星さえも砕いてしまいそうな蛮力が、跳躍王(キングリープ)に衝突する。

 

だが、跳躍王(キングリープ)は揺るがない。攻撃が効かない、その事実すらも糧に、ダイゴ(大悟)は七冠との間に聳立する才能という高壁を強引によじ登っていく。

 

「ダイゴって何者なの!? というか…あんた、すごいの連れてきたわね…!」

 

「…オレも驚いてる。 何なんだ、アイツ?」

 

「わたしもダイゴさんがあんなにも強いなんて驚いちゃった。」

 

最早、二人の闘いに割って入る余地などなかった。

 

跳躍王(キングリープ)は目標を変え、ユウキに狙いを定める。 

()()()()、危ないっ!」 ()()、ユウキの眼前に跳躍王(キングリープ)跳躍(ワープ)する。

刹那、()()()ユウキを後ろに庇いながら、跳躍王(キングリープ)の頭を()()()魔法を放つ… そして――

 

「よそ見してんじゃねえ… 俺様を見ろ!」

 

驚いた様子の跳躍王(キングリープ)の横っ面にダイゴ(大悟)のストレートを打ち付けられた。

 

ここに至って、跳躍王(キングリープ)は満たされていた。

跳躍王(キングリープ)は母親から生まれでた時より最強だった。どんな相手も文字通り一蹴してしまえる圧倒的才能、跳躍王(キングリープ)はその実力を持て余していた。要は退屈だった。闘いは一人ではできない。敵がいて初めて発揮される。全力の闘いを望んでいた跳躍王(キングリープ)はその渇望を癒そうと様々な格闘技へと挑戦したが、行き着く先はいつも同じ。圧倒的な才能で敵を踏み潰すだけ、いつも虚しさ(寂しさ)が残るのみであった。七冠になってもそれは変わらなかった。七冠たちは天才であっても格闘家ではない。やる気のない相手と闘う気など起こらなかった。教師として未来の敵を育てる道を志すも、対等な宿敵(ライバル)には巡り会えなかった。

 

だが、此処にいた。

 

ダイゴ(大悟)は恒等関数のような成長曲線を描き跳躍王(キングリープ)の域に到達する。

 

 

だが、両者が宿敵(ライバル)だというのなら… 一体、何が勝敗を分けるのか――

 

ダイゴ(大悟)には仲間の助けがある。一方、跳躍王(キングリープ)には転移とバリア2つの能力(チート)がある。

つまり、霊基の性能は互角。だが、一つ欠けている条件があった。

それは性能(スペック)を最大限に引き出すための力量(プログラム)

勝てるかどうかは、ダイゴ(大悟)の成長次第だった。

 

 

ダイゴ(大悟)跳躍王(キングリープ)、二人は全身全霊で闘い続け…

 

 

そして――

 

 

 

 

 

 

 

 

―――跳躍王(キングリープ)、敗北―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブ配信は終了しています

 

 

 

 

                                           

 ▶ ▶❘   ♪ ――――       2:47:14 / 2:47:14            ▢ 

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【レジェンド・オブ・アストルム】VS 跳躍王(キングリープ)【生配信】

 12,093,701 回再生されました

 

 

 

 

「晶との約束通り、この聖杯戦争の間はあなたに協力しましょう。

 ですが、私の能力に頼り切るようなら、躊躇なく切り捨てます。」

 

「『聖杯戦争』か…」「騎士くんも知ってるんだ…」

 

「…その言葉に反応するとは、ますます興味深い。

 どうやら、晶からは本当に何も聞かされていないようですね。

 聖杯戦争は、万物の願いを叶えるトロフィー(ミネルヴァ)を奪い合う争いのことです。

 後は自力で調べてください。」

 

それは知っている。 問題はどうしてこの世界で『聖杯戦争』が起こっているのかだ…

 

「鬼道大悟、アナタにはプリンセスナイトの力を預けておきます。

 一人でも戦えるよう、力を付けておきなさい。」

 

「はあ!? いらねえって…!」

 

…まてよ? まさか…アイツ(ユウキ)、こうなること知ってたんじゃないのか…

アイツがオレの心に触れた時に…

 

「…行きやがった。 で、これからどうするんだ、大将(ユウキ)?」

 

だとすると、どうして知ってたのかは気になるが…「大将、聞いてんのか?」

 

「…あ~何の話だったっけ?」

 

「これからどうするかって聞いてんだよ。」

 

「うん、次は変貌大妃(メタモルレグナント)…現士実似々花(ネネカ)を倒す。

 多分、向こうから仕掛けてくるから、敢えてそれに嵌まろうと思ってる。

 あと、大悟(ダイゴ)の出番、暫くないから。」

 

「チッ… 仕方ねーな…」

 

「…いいのか?」

 

「この年になって、駄々を捏ねるなんて情けねぇことはしねぇよ。

 それに、『暫く』ってことは、とっておきがあるんだろ? 

 それまでに、あのおっさんに押し付けられた能力を磨かねぇとな。」

 


 

「最近、お悩みがあるご様子。 気になる御方でもいるのですか?」

 

ミネルヴァは棗こころ(コッコロ)の話し相手である。

 

「…ええ、今は晶のプリンセスナイトの動向を追っているのですが、

 残念なことに、彼にとってアストルムは純粋に楽しめる遊びではないのです。」

 

ユウキにとって、アストルムは

己の役割(ロール)に縛られる。それを理解できるミネルヴァにとって、

 

「アストルムをどう過ごすかは、本人の意思に委ねるべきではないでしょうか?」

 

「そうかもしれません。 それでも、私は彼に冒険を楽しんでもらいたいのです。

 どうすれば、彼にアストルムを楽しんでもらえるのでしょうか?」

 

誰かの付き添いで仕方なく遊んでいる人、願いを叶えるためだけにログインする人、アストルムを面白くないと思ってる人は大勢いる。なのに、ミネルヴァはユウキに関心を持った。ゲームマスターであるミネルヴァが何万といるプレイヤーのうち、特定のプレイヤーに関心を持つことは、これまでのミネルヴァでは考えられない異常だった。

 

「ふむふむ…ミネルヴァさまはそのプレイヤーをどうにかして喜ばせたい、と…

 つまり、手塩にかけて創った世界を楽しんでいただけないことに不満を感じているのですね。

 ミネルヴァさまが特定の人を気にかける日が来るとは…わたくし、感激しています…。」

 

それはまさしく、成長と呼ぶべきもの。こころ(コッコロ)はそう思っていた。

 

「はい…、そうかもしれません。 私は彼に執着しています。

 彼を観察していると、心が揺さぶられると言うのでしょうか…不思議な感覚に陥るのです。

 私は狂ってしまったのでしょうか?」

 

だが、何やら様子が可笑しい。こころ(コッコロ)は漸く、ミネルヴァの異変を認識した。そして、解決策を見つけようと、頭を回転させる。

 

「これは…原因を究明すべき事柄でしょうか… ふむ…ミネルヴァさまの不安を解消するには…

 …百聞は一見に如かずと言います。 一度会って、話してみてはいかがでしょうか?」

 


 

「じゃあね…優衣(ユイ)ちゃん、また明日。」

 

「またね、ユウキ君♪」

 

オレはもう少し休憩していこうかな…

夜まであと5分か…アストルムの夜は綺麗なんだよなあ…

 

…誰かが横に座ってきた。 他にも空いてるベンチがあるのになんでだろう?

 

あのう…

 

エリス!? おいおい、ミネルヴァの懲役*1は始まってすらいないぞ…

 

私は…エリスと…いいます…。 私と…お話を…しませんか…?

 

綺麗だなあ… エリスって、優衣(ユイ)ちゃんを成長させたアバターだっけ…

つまり、優衣(ユイ)ちゃんが成長したらこうなるのか…

…じゃなくて、どうしてエリスがここにいるのかってことだ。 正体はおおよそ見当がつくが… 

 

あの…ダメ…でしょうか…

 

「見惚れてた…じゃなくて… …もしかしなくとも、ミネルヴァ…だよな?」

 

嘘…一瞬で見破られた… 

 どうして、私だと判ったのでしょうか? ネネカだとは思わなかったのですか?」

 

変貌大妃(ネネカ)なら、キャラクターなんて作らずに、手っ取り早く誰かに成りすますから。」

 

そう、ネネカはこんな面倒なことはしない。わざわざ、優衣(ユイ)ちゃんの成長後の姿をシミュレートして出てきたりはしないのだ。なんなら、何かと理由をつけて堂々と会いに来る。この前も講演という名目でオレの通う学校に来てた。

 

「七冠たちのこと、よく知っておられるのですね。 私もまだまだ学習が足りないようです。」

 

「まあな… 何かオレに用があるのか…?」

 

「いえ、特にありません。 強いて言うなら、あなたと会いたかったのです。

 何故でしょうか…あなたとは初めて会った気がしません…。」

 

「…なあ、()()()。 内緒話をしたいんだが… 人払いとかってできるか?」

 

「分かりました。 ちょっと…待ってて下さい。 …できました。 それで、話とは?」

 


 

エルフの里に来てみれば…

 

「なぜ此処にいる…! ロマニ・アーキマン…!

 まさか…この世界(アストルム)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、お前が原因か…!!」

 

「ひどい! この世界(銀河)に来てまでファーストコンタクトでボクをディスられるなんて!」

 

そりゃそうだろ! ぶっちぎりで怪しいじゃねえか!

 

「だとすれば…『斬撃皇帝』はどっから出てきたんだ?

 ロマンが鋼の大地なんて、遠い未来の…しかも平行世界の出来事を知ってるわけないよな?

 いや、千里眼があったのか… でも、う~ん…」

 

嫌な予感がする…そもそも、それらを知っていたとしても、ロマンが人に話すわけがない。

 


 

「…ソロモン王の霊基に記録されてただけで、実感としてはないのか…?

 まあ、いいや… 天体魔術も企画倒れってなら脅威にはならなさそうだしな…

 これで今後の見通しも分かりやすくなった。 じゃあな…」

 

「えっと…このソルオーブを持っていきなさい。

 ボクには必要ないモノだから、キミに使ってほしい。」

 

「散々文句を言ったのに…いいのか?」

 

「キミに渡してほしいって友人に頼まれていたからね。」

 

「そう…なのか…?」

 

「それと、分かったことが一つあるんだ。」

 

「なんだ?」

 

「キミは…愛されているんだね。」

 

「…ああ、そうだろ」

 

「きっと、キミには旅の終わりに良い未来が訪れるよ。 それはボクが保証する。」

 

 

*1
プリンセスコネクトのシリーズ第二作、プリンセスコネクト!Re:Diveが始まるきっかけとなった事件。大勢のプレイヤーがゲームの中に閉じ込められた。原作ではミネルヴァが犯人と誤認されたためこの名称となったが、この世界ではウィズダムが黒幕であることが発覚したため、事件名が異なっている。エリスはこのとき誕生したため、プリンセスコネクト!Re:Diveの前日譚にあたるプリンセスコネクト!の時点では存在すらしていない。



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幻惑乱舞のラプソディー

 

「先生~助けてください~! ヘンな人に追っかけられて…!」

 

「隠れてないで出てきたらどうかな~公安警察の狂真咲真軌(くるまざきまさき)さん♪

 いたいけな女の子に強制尾行*1をして泣かせるのは流石にナシだよね~☆」

 

「NISC*2所属、上席サイバーセキュリティ分析官*3の遠野帆稀さんですね。

 先程は失礼しました。」

 

「け、警察ですよ、先生!?」

 

「私は今年からの採用で祈梨(イノリ)ちゃんは関係なかったよね?

 どうして祈梨ちゃんを付け回したのかな?」

 

「それは…」

 

「NISCが『ミネルヴァの目覚め』事件を嗅ぎ回ってるのが気に入らないから…だよね♪

 公安*4はICPO*5と組んで、裏でコソコソと何か企んでいるようだけど…

 アストルムの案件は私たちのナワバリでもあるんだから、邪魔しないでね☆」

 


 

魔物の群れが安全地帯であるランドソル市街に雪崩れ込む。

 

それはネネカのプリンセスナイトであるマサキの能力、煌輝創正(デカダントライト)によるものだった。

 

ネネカの策略により分断されたトゥインクルウィッシュ…ヒヨリ、レイ、ユイ、そしてユウキの4人は、各々他のプレイヤーと協力して魔物を倒しながら、合流を目指す。

 


 

マサキの能力で操られたモンスターに追い立てられたレイは、市街近くの森の中で、襲い来る魔物を持ち前の剣技で一体ずつ倒していた。

 

「切りがない…早く合流できるといいんだけど。」

 

魔物は色んなモンスターをグチャグチャに合成したキメラのようだった。

そんな魔物が次から次へとレイに襲ってくる。慣れない敵との連戦はレイを疲弊させていた。

 

「ふう…これで打ち止めかな…?」

 

あたりを見回しても敵はいない。レイは一息つこうとする。

だが、前方からモンスターとは違う足音、グサッ、グサッっと、一歩ずつ草の生えた地面を踏む音が聞こえてきた。

 

「誰だ!」

 

そこでレイは()()()()()()()に邂逅する

 


 

街の外れでヒヨリはリンと一緒に戦っていた。

 

「あたしが敵を受け止めるから、ヒヨリはその間に魔物の後ろに回り込んで!」

 

「わかったよ、リンちゃん!」

 

この二人はユウキが最初にログインした時に仲良くなった。

かいつまむと、陰キャ(リン)陽キャ(ヒヨリ)の『友達になろうよ!』攻撃に屈してしまったのだ。

それから、ひよりと(リン)の交友関係は始まり、アストルムや現実(リアル)でも会うようになったのだ。その後も、ヒヨリはチアリーダーの姿で、リンが出場するゲームの大会の応援に行ったりもした。

なので、連携はお手の物である。二人の絆が発揮されていたとも言えよう。

 


 

ユウキはヒヨリと合流できたが、あることに頭を悩ませていた。

 

「ステータスも全部同じだよー。

 どうやって確かめたらいいんだろ~??」

 

ネネカによる『真似』は精巧だ。はっきり言って身内でも判別するのは厳しい。

ヒヨリは二人のレイ…レイAとレイBを前にどちらが偽物か、ぐぬぬと悩む。

 

「キミなら本当の私がどちらか分かるだろう?」

 

「もしかして分からないなんて…言わないよね…?」

 

ユウキは間違えて偽物を選んでしまったらどうしようかとメチャクチャ焦っていた。

 

「えっと…、そっちの方のレイが本物だと思う。」

 

散々悩んだ末に、ユウキはレイAの方を指差す。

 

「だと思う? そんな答えじゃ到底納得できないな。

 幼馴染としてもっとはっきり答えてくれると思ってたよ。」

 

レイAはユウキのあやふやな答えに怒りを表現した。

 

「そういえば、リアルでヒヨリとレイに会って戦い方について話し合ったんだが…

 ユイにも前線で戦えるように、スキルを覚えてもらうことになったんだけど、どう思う?」

 

ユウキはあからさまに話題を変える。

 

「うん、いいんじゃないかな。 ユイもソロで戦うこともあるだろうし。」

 

レイBはそれを肯定する。

 

「リアルで二人に会った? つまりオフ会を開いたってこと?

 報連相もそうだけど…私に声をかけもしないで集まるなんて…ひどいじゃないか!」

 

レイAは感情を顕わにユウキに詰め寄る。

 

そして、ユウキは…

 

「…両方ともニセモノだろ。

 片方の『真似』のレベルを落として気づきにくくしたようだが、残念だったな。」

 

…レイを二人とも斬った。

 

「偽物が見つかって良かったー おてがらだね♪

 でも、本物のレイさんとユイちゃんが心配だね。 探しにいってくる!」

 

ヒヨリは本物のギルドのメンバーを探しに行こうとする。

 

「あれは…オレの昔から()()()()()人物像そのものだ。

 だからこそ、本物と虚像との見分けは、簡単につく。 なあ、ネネカ(ヒヨリ)…」

 

ユウキはヒヨリに化けたネネカの肩を掴み、その首筋にダガーの刃を添えた。

 

「逃げるなよ…今、ここで決着をつけようか。」

 


 

魔物が蔓る街中に一人、ユイは取り残されていた。

 

物陰に隠れたユイは利き手に杖を握り、もう片手を自由にした。

そして、手慣れた手付きで小石を投げて魔物を誘導し、魔法で纏めてなぎ倒す。撃ち漏らした魔物は杖の先に素早く形作った魔力の剣で薙ぎ払う。空いた手に短刀を持ち替え、魔力を温存しながら、背後から忍び寄り一体、また一体と急所を掻っ切る。その後もユイは高低差や障害物を利用し、すり足と駆け足を舞踏のように組み合わせ、敵の死角から攻撃を仕掛けて次々と倒していく。

 

魔物の指揮をしていたマサキは一箇所だけ、不自然な倒され方をするグループがあることに気がついた。他のグループは戦闘によって順当に一体ずつ倒されているが、そのグループだけは、まるで盤面から駒を取り除くような、あるいは落ち物パズルのように、魔物が機械的に排除されていた。

 

イレギュラーを放置してはおけないと、マサキは現場へ偵察に行く。

 

そこでマサキは驚くべきものを見た。

 

公安警察のプロファイルによると、ユイ…草野優衣はごく普通の高校生だ。交友関係も友人に外国人が多く、友人の社会的地位が本人の置かれる社会階級と比べると有意に高いことを勘案しても、特に不審点はなし。如何なる特異性も発現していないとされていた。

 

だが、来てみればコレだ。ユイが魔物を蹂躙している。コレのどこが一般人だ。マサキは嘆いた。

 

建物の中で見張っていたマサキは他の建物の影に入ったユイを見失った。数秒後、部屋のドアからユイが現れ、魔力の剣で切りかかる。マサキは窓に飛び込み、間一髪逃げ出した。

 

割れた窓から差す月明かりに照らされ、ユイは言う。 

 

「ネネカさんのプリンセスナイトの…マサキさんですね。

 こう見えても、わたしは敵に容赦はしない主義なんです。」

 

マサキはその姿に魔王を見た。

 

そして、ユイは追撃に取り掛かった。マサキは逃げながらも剣を巧みに操り、ユイと切り合う。ユイの剣技は武道を習っていれば誰でも指摘できるほどの酷さだっだが、多彩な魔法と立ち回りで補っていた。一方、マサキは敵味方の区別のない魔物を近づけないように意識を割いていたこともあってか、逃げに徹していた。

 

これでもマサキは警官だ。柔道や剣道、けん銃操法、その他逮捕術、様々な訓練を受けている。それなのにスポーツさえしていない少女にこうも翻弄されている。アストルムにおけるステータスの差などを考慮してもあるまじき醜態だった。

 

しかし、マサキが気になったのはその戦い方である。ユイは何処かで見たことのある動きをしていた。体系化された動きと言ってもいいだろう。一つ一つは偶然の一致にしか思えなかったが、数十、数百と積み重なるうちに一つの回答を形作る。一つ一つは誰でも思いつくような戦型でも、それを組み合わせたとき、同じ体系にたどり着くことはあり得ない。マサキは確信した。

 

「映像で見たことがある。その戦い方はファランの不死隊*6の…

 深淵の監視者(Watch Dogs)が何故アストルムにいるのか教えてもらおうか!」

 

4年前、ある関東の地方都市で、少なくとも30名以上の犠牲者を出しながら、一切の経過が不明なまま事件が収束したことがあった(ガス爆発だったことになった)。警官も12名が殉職したその事件の手がかりは殺害された市民のカメラに残っていた、何者かが戦う様子を写したCGらしき映像のみ。公安警察による徹底的な捜査の末、ICPOの人間に『番犬部隊(Watch Dogs)』と呼ばれていることが漸く判明したが、成果はその事実だけであった。勿論、公安警察の面目は丸つぶれとなった。番犬部隊の情報を調べることはマサキの任務の一つであった。

 

「昔、聖杯戦争に巻き込まれたときに、ちょっとだけ教えてもらったんです。

 深淵歩きを知ってるってことはあなたも別班の人ですか?」

 

七冠ですら部隊名と『深淵を監視し、排除する』という極めて曖昧な任務目的しか把握していない、異常な組織。そして、別班*7。これもまた、()()()()()()()()()()()()諜報機関である。

 

「…私の負けだ、武装解除しよう。 君と話し合いがしたい。」

 

ネネカの同盟者(プリンセスナイト)として、勝てば莫大な利益を得られるが、先の見通しの見えない戦いを続けることと、既に終わった事件のことではあるが、今を逃せば二度と得られないであろう情報源を確保することを、天秤に掛けたマサキはユイと交渉することを選んだ。

ここで負けても分断という目的は達成できている。ユイはユウキの固有能力によるアストルムからの退場というメリットのない無価値な戦いを続けるよりも、情報交換を優先するだろうとマサキは考えていた。尤も、ユイは少し経歴が特殊なだけの一般人なので、そこまで考えは回らないのだが。つい最近、同じクラスに特殊部隊出身のモニカが編入してきたので、それを知っていたマサキはユイもそういう筋の人間だと勘違いしたのだ。

 

「えっ!? いいですけど…」

 

ユイは思わぬ展開にびっくりしながらも、とりあえず無難な返事を返した。

 

「少しの間、待ってはくれないか。」

 

「は、はい…!」

 

マサキが剣を地面に刺すと、モンスターは大人しくなり、街の外にのっそのっそと出ていった。

そして、マサキはネネカではない誰かと連絡を取り始める。その態度から、ネネカにハニートラップを仕掛けてるのではないかと疑っていたユイは、ネネカよりも他の誰かを優先したことに驚くことはなかった。

 

「ありがとう。 まずは、自己紹介から始めよう。

 私は警視庁公安部外事四課*8に所属する狂真咲真軌(くるまざきまさき)だ。

 今はWISDOMや七冠の調査も兼ねて、似々花さんの護衛を担当している。」

 

それはユイにとっては特に驚きのあることではない。

今、自身は様々な諜報機関が蠢く、陰謀の渦の真っ只中にいる。

仮想世界を舞台に再演された聖杯戦争。自身の予感が正しかったと、ユイは確信した。

 

「ここからが本題だ。恥ずかしいことなのだが、君が聖杯戦争と言ったその事件は、

 多くの殉職者を出したのにも関わらず、警察が何も把握できないまま闇に葬られたんだ。

 私たち警察は事件が発生したにも関わらず、何も掴めなかったことを酷く悔やんでいる。

 上層部(理事官)は、君が『聖杯戦争』と呼んでいる事件の真相を聞かせてくれるのならば、

 ミネルヴァの確保を諦めた上で、君たちの問題の解決に総力を以って協力すると言っている。」

 

どうするか少し悩み、どこまで話していいか分からなかったので仲間に聞くことにした。

 

「…わたしも話していいか相談してみます。」

 

ユイはイリヤ・オーンスタインに相談した。

 

「条件付きだけど、いいらしいです。」

 

「でも…その前に一つ、聞いてもいいですか?

 …ネネカさんへの態度って…全部が演技じゃないですよね?」

 

マサキにあっさり裏切られたネネカに憐憫の念を覚えていたユイは、マサキがネネカに度々向けていた暖かい眼差しまでもが嘘ではないと信じたかった。

 

「ハハッ…見破られてしまったか… 確かに情が移っていないと言えば嘘になる。

 私が護衛として初めて似々花さんに会った時、私は畏怖の感情を抱いていた。

 だが、彼女(ネネカ)は子供っぽいところ、何かに怯えているところを見てしまってはね…。

 まあ、こんなところだ。」

 

マサキが早々と降参した理由には、同盟者たるネネカを心をすり減らす戦いから脱落させ、更にはそうしても少年たちに悪くは扱われないであろうという算段があったのも事実である。

 

そして、ユウキ(オリ主)さえも知らない、世界の暗部を巡る秘密の対談が始まった。

 


 

蝶に変身しユウキの拘束をすり抜けたネネカはその変身能力で翻弄していた。

 

「らしくないな…」

 

ユウキは噛み付いてくる狼の分身を踏みつけながら呟く。

 

「なあ…どうして最初から諦めてるんだ?」

 

ユウキは戦っていて、不思議に思ったことがあった。ユウキにはレベルキャップによる圧倒的なステータス不利があるのにも関わらず、未だに勝負がつかないのである。

 

原作のネネカは格下であっても油断しなかった。常に有利な状況を作り出し、劣勢と見れば撤退する。だが、このネネカはユウキの実力に合わせるかのように手加減して戦っている。

それはミネルヴァを手中に収める上で、無意味な行為なのだ。仲間が合流すればネネカが不利になる。本気で勝つつもりなら、さっさととどめを刺して、ロマンから託されたソルオーブを奪ってしまえばよかったのだ。

 

「何のことですか?」

 

「だって、ネネカさんはあまり顔に出さないだけで実は感情豊かだろ。

 今のネネカさんを見てると、本気でミネルヴァを狙ってるとは思えないんだ。」

 

ネネカは冷静な人物像を装っているが激情家である。こだわりは強いし、挑発には弱い。

現実(リアル)でも会って、話したユウキ(オリ主)は原作のそれとよく似ているなとは思っていた。

 

「…そんなことありません。」

 

建前としては聖杯戦争の勝利を掲げながら、本音では自身にできるなどとは思っていない。

だが、七冠としてのプライドと、マサキたちとの契約が、ネネカを聖杯戦争へと追い立てた。

ネネカは『リタイア』という選択肢を選べないほどに精神的に追い詰められていた。

 

「嘘だ…。 絶対的な自信があるはずの『真似』を、易々と破られたのに平然としてた。

 ぽっと出の七冠でもないヤツに心を見透かされて…、本当に悔しくないのか?」

 

原作のネネカは分身が偽物と見破られれば、こんなものはいらないとばかりに捨ててしまう。それほどまでに分身を『本物』に近付けようとしていた。

このネネカの分身は原作以上に精巧だった。具体的には、原作の分身は交戦を経るたびに欠点が改良されていく。だがこのネネカが作り出す分身は初めから完成形、仲間との絆まで忠実にトレースしつつ、制御を可能とする。原作(無印)ではネネカは遂に達成することができず、性能をデチューンされた偽物を大量に用意していた。このネネカはたしかに原作を超えていたのだ。ユウキ(オリ主)というイレギュラーが居なければ、覇瞳皇帝(千里真那)でさえ、見分けることはできなかったであろう。

 

ヒトのココロを理解するための相当な努力が必要だったはずだ。原作でさえ、見破られれば悔しさを露わにするのに、このネネカは違った。勿論、ユウキは原作(ゲーム)現実(リアル)は違うと知っている。だが、原作(ゲーム)現実(リアル)、両方を知っているからこそ分かることもある。

このネネカのココロは燃え尽きていた。

 

「あなたに私の何が分かるんですか…」

 

「ああ、言ってやるさ…!

 いつも澄ました顔して、マサキを椅子にしようとか考えてるんだろ、このドSロリババア!」 

 

ネネカの煮え切らない態度に苛ついたユウキはあらん限りの言葉で罵る。

 

「何を…」

 

「幾らでも言ってやる!」

 

「…あなたの言葉は心に響きませんよ。」

 

ネネカはユウキが挑発していることは分かっている。だが、ネネカにとってそんなことはどうでもいい。聞かなければ心は傷つかないのだ。

 

「自分の感情に蓋をして…享楽に生きていれば、そりゃあ楽だよなあ…!

 …お前の『真似(ゆめ)』はその程度の価値だったのか!!」

 

日常を散々引っ掻き回した癖に、肝心の本人は無気力で、とっくに物事を投げ出していた。

ユウキはそれが何より気に食わなかった。

 

「あなただって…アレを見たら…知ったら…絶望するはずです。

 この世界に救い(神の赦し)なんて…失われて、ないのですから…。」

 

ユウキの怒気に思わず、ネネカは口に出してしまう。

 

「ああ、知ってるよ… この世界がどうしようもないくらい、終わってるってこと…!」

 

「…! 晶が話したんですか…! こんな子供を巻き込んで…!」

 

「違う… ()()が晶に話したんだ…。

 『アイツ(主人公)』ですら、匙を投げたってことは…」

 

ユウキ(岸くん)にはどうしようもないから呼ばれた、それだけは憶えていた。

 

「そんなわけ…ありません。 

 第一、あなたが考える程、世界の終焉は優しくありません。

 とっくに人理継続保証は破綻しています。」

 

「ビーストクラスか? それともアルテミット・ワンか?

 七冠なのに、どうして…そう簡単に諦めれるんだよ!

 オレは運命(Fate)から逃れられなかったのに…どうして…!」

 

世界の未来なんて考えずに生きれたらどれだけいいことか。

七冠(黒幕)たちは好き勝手しているのに、自分だけは誰かのために駆けずり回らなければならない。

悲劇を覆そうとすれば、倍となって降りかかり、静観していようが、容赦なく不幸は訪れる。

この世界はどこまでも不公平だとユウキ(オリ主)は嘆いた。

 

「可笑しい…あなたは何者ですか?」

 

「そんなに興味があるなら、オレを真似ればいいじゃないか…!

 この手を取って…真似してみれば、少しは理解るかもしれないだろっ!」

 

この状況で何者かと問われて腹がたったユウキは投げやりに言った。

 

「わかりました…。 一度だけ、あなたの策に乗ってあげます。」

 

「ああ、一度だけでいい! オレを…信じてくれ!!」

 

ヒトの状態で触れる。それがネネカが真似するのに必要なことである。

一度、ネネカは条件を満たしている。

なのになぜ、ネネカはユウキの手を取ろうとするのか。

 

「やはり、真似れませんね…。」

 

「どういうことだ…? アイツ(岸くん)なら兎も角、オレを真似れないのは可笑しい…。」

 

「これは…もしや… ……。 …あなたに賭けてみましょう。

 薄明のような、わずかな希望ですが… あなたに未来を託す理由にはなります。」

 

ネネカはユウキに対してある違和感を感じた。それは本当に些細な違和感。

ユウキ(オリ主)人類悪(Beast)の象徴たる『獣』属性。其れは救世主(savior)を騙る、黙示録の(Beast)のしるし。

だが、この世界に救世主(Savior)は顕れなかった。ならば…誰が敵対者(Beast)と刻印したのか。

 

 

   TIPS : 七つの大罪(seven deadly sins)

 

   傲慢(pride)強欲(greed)嫉妬(envy)憤怒(wrath)色欲(lust)暴食(gluttony)怠惰(sloth)

   人類を罪へと導く、これら七つの悪徳を七つの大罪(seven deadly sins)と呼ぶ。

   嘗ては嫉妬(envy)を除き、虚飾(Vanity)憂鬱(melancholy)を含た上で、八つの枢要罪(eight evil thoughts)と呼ばれていた。

 

   型月世界において、救世主が持ち去った原罪とはこの七罪のことであり、

   その悪徳は個人的で一過性のものであるために、人類悪とは相容れない。

 

   虚飾(Vanity)とは無価値(Vanity)であり、原罪から零れ落ちた空虚(Vanity)な存在である。

   故に、救世主(Savior)は「虚飾(Vanity)」の理を以って、偽りの人類悪(Pretender)を仕立て上げた。

 

 

ザアザア雨の中、ラビリスタ(模索路 晶)と満身創痍となったクリスティーナが対峙していた。

 

「少年から聞いていた通り、アタシのオブジェクト変更がとびきりの弱点だったってわけだ。

 クリスの乱数聖域(ナンバーズアヴァロン)は周囲の状況を観測し、常に最善の行動を取り続ける能力だ。

 僅かにでも可能性があるなら、それを実現させる。 正攻法ではまず勝てないだろうね。

 でも、演算能力を飽和させれば精度は落ちるし、自身の能力が干渉すれば無力化される。

 誰にも予想できないトラブル(ドジ)も防げないし、搦め手にはとことん弱くもある。

 ラジラジあたりには勝てただろうけど、些か相性が悪かったね。」

 

ラビリスタはクリスティーナを完全に追い詰めていた。

 

「つまり、ワタシは会ったこともない坊やに負けたということか…」

 

ラビリスタの発言から、ユウキに自身の権能を完全に把握されていることを悟ったクリスティーナはまだ見ぬ相手への負けを認めた。

 

「降参ってことでいいんだね、クリス…。」

 

ラビリスタはオブジェクト変更の権能を用いて、天気を快晴に、戦いで荒れ果てたフィールドを元の草原にする。

 

「こうもメタを張られてしまっては勝ちようがないだろう?」

 

クリスティーナは原っぱに大の字に寝っ転がりながら、息をゆっくりと吐いた。

 

「よっと…」

 

ラビリスタもクリスティーナの隣に寝転び空を仰ぐ。

 

「…晶はWISDOMを出奔してから何をしていた?」

 

クリスティーナはラビリスタの方を向き、訪ねた。

 

「今、アタシは日本の公安調査庁*9って諜報機関で働いてる。

 そこでは世界中の人が、組織の垣根を超えて、人類の未来のために協力していた。

 国連はもう諦めてしまったようだけど、国家は、そこに住む人々は、まだ必死に抵抗している。

 クリス、もう少し人間を信じてみてもいいんじゃないかな?」

 

クリスティーナはラビリスタの問いかけに頷き、透き通る青い空を見上げながら続ける。

 

「真那と協力していたのも、より長く世界を維持するため。

 世界を救えるなら、その方がいいに決まってるだろう?

 ワタシは聖杯に相応しい人間を見定めようとしていただけだ。」

 

「クリス、そんなことを考えてたの…?」

 

「フフッ、そんなに驚くか、晶?

 ワタシの『絶対』を否定した坊やに、聖杯(ミネルヴァ)を託してみたい… そう思っただけだ。」

 


 

レイはもう一人の自分…自らに扮した()()()()()を見つける。

 

「私はこの聖杯戦争のゲームマスターのミネルヴァです。」

 

偽物のレイは容姿に見合わぬ声色で正体を明かす。

 

「キミが…ミネルヴァ…!? どうして私に?」

 

ミネルヴァというビッグネームに気圧されたレイは頭がいっぱいいっぱいになっていた。

 

「あなたの疑問は大きく2つ、何故私に化けているのか、そして何をしに来たのか、ですね?」

 

ミネルヴァは困惑するレイの言わんとすることを汲み取って、正しいか確認した。

 

「…ああ。 一体何がなんだかわからない。」

 

「それは順を追って説明しましょう。

 私がレイ、あなたの姿をしているのは、あなたたちの行動は常に監視されてるからです。

 ですが、このタイミングならば、私を似々花と誤認させることが可能でした。

 それが、こうして私があなたと話せている理由です。」

 

ミネルヴァがユウキと密談できたのは、単にプレイヤーが脅威ではなかったからである。

 

これまで七冠は同じ七冠にしか破れないという前提があった。プリンセスナイトでさえ、七冠の能力を向上させるための付属物でしかなかった。七冠に非ずんば敵に非ず。だから、七冠以外が警戒されることはなかった。ラビリスタ(模索路 晶)が戦闘をユウキたちに任せたのは慧眼といえよう。

 

しかし、状況は一変してしまった。ミネルヴァがプリンセスナイトですらないプレイヤー、しかも跳躍王(教授)との戦いを主導したユウキの関係者と接触するのは、ミネルヴァの高度な隠蔽能力を以ってしても不審を抱かせる可能性があったのだ。

 

「ここからが本題です。 私はレイに…

 


 

ネネカ   「それと、晶。 貴方のプリンセスナイトのお陰で霊子体が傷つけられました。

       固有能力を付与したのは晶なのですから、修復を手伝ってください。」

 

ラビリスタ 「わかったよ、その代わりに少年について思ったことを聞かせてほしい。」

 

      (いや、アタシは少年に固有能力なんて仕込んでない…。

       少年の特異性について、もっと調べるべきだったかな…)

 

ネネカ   「わかりました。 また後ほど連絡します。」

 


 

「国連が本当に隠したがってることはなんなんだ…?

 こんな手の込んだ、執拗な情報操作までして…」

 

「虚数空間って知ってるかな…?」

 

ここがFGOと地続きの世界なのは理解してる。 ということは…

 

「えっと…、虚数空間は…時間という概念なくて、必要のない情報が廃棄される()()()だ。

 で、見る人によって認識する結果が違う。

 だから、実数と虚数が交わることはなく、観測不能なんだ。

 だが、実数と虚数で誰もが同じ現象を認識した場合、()()()()()ようになる…。」

 

「うん、その認識でだいたい合ってる。

 アタシたち七冠(セブンクラウンズ)は、()()()()()()()()()()()()()

 虚数空間は泥で埋め尽くされていた。

 泥の性質を調べたアタシたちは…いや、これ以上は止めておこうか。」

 

「つまり、冬木のように泥が溢れるとヤバいんだな?」

 

いや、何かが違うな… その程度なら、七冠でも解決できるはずだ。

 

「いや、虚数空間を観測させてはならないんだ。

 これ以上、虚数空間に存在するナニカ(法則)を証明させてはならない。

 もう、手遅れかもしれない…いや、手遅れだろうけどね…」

 

「もう、世界の終焉は始まってるのか?」

 

「ううん、まだ時間はある。 そのために国連は手を尽くしてきた。

 でも、人類が正しく認識してしまえば、世界は終わる。」

 

フィクションが現実になったら、なあなあにしてた設定が肉付けされるのはわかるけど…

よりにもよってこんな補完のされ方があるかよ!

 

()()の中、宙の外に何があるのかは言えない。

 キミが冒険の終わり、旅の終着点に辿り着いた(ロストオーダーを完遂した)とき、初めて真実を証明するんだ。」

 

「アタシから言えるのは、『魔術師』が立ち向かうことは不可能だってこと。

 いいかい?」

 

*1
わざとばれるように尾行すること。対象に「お前は見張られているぞ」と圧力をかけるためにする。

*2
内閣官房情報セキュリティセンター。クラッカー対策の立案、サイバー攻撃の阻止やインフラの防護など、サイバーセキュリティの確保がお仕事。

*3
一般から募集されることもある。

*4
ここでは公安警察のこと。公安調査庁とは違う。

*5
国際刑事警察機構、インターポールとも呼ばれる。現実では各国警察の連絡機関にすぎないが、原作では各国の司法警察権を超越する国際警察として描写されている。他にも、テロリストの国連軍への言及などから、プリコネ世界は国連の権限が現実より遥かに強いことが示唆されている。余談だが、アニメ版ルパン三世の銭形警部は警視総監の命令で警視庁からICPOに出向しているという設定である。

*6
別名、深淵の監視者。深淵の兆候を監視し、その氾濫を食い止めることを目的とする。隊員に与えられた狼血を介し、部隊全員で一つの薪の王となった。右手には大剣を、左手には逆手持ちで短刀を握り、独特な剣術で戦う。また、使う魔術も取り回しの良さを重視した実戦向けの調整がなされている。

*7
自衛隊の陸上幕僚監部運用支援・情報部別班のこと。自衛隊が独断で外国に拠点を設け、諜報活動をしているそうな。勿論、シビリアンコントロールを逸脱した違法行為である。政府の答弁によると自衛隊の聞き取り調査により存在しないことが分かったらしい。この世界では存在はするが、世間には未だ露見していないことにした。

*8
主に国際テロリズムや中東に関する諜報活動を行う。原作では三課だったが、現実での移管に合わせて四課に変更してある。当時は正しい考証であっても、後々に振り返ってみれば…というのはSFの逃れられない宿命である。

*9
法務省の外局の一つで諜報機関でもある。名称の似た公安警察、公安委員会とは異なる組織。危険な団体を調査するのが職務。職員は特別司法警察職員ではないため、礼状を請求したり、執行したりはできない。公安警察とは守備範囲が被っており、度々問題を起こしている。



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プリンセスコネクト!‖:Dive

 

ユウキがミネルヴァと会話していた頃、ヒヨリはリン、ヨリ()アカリ()の4人でアストルムにログインしていた。ゲーム大会をヒヨリとアカリが応援していたリンとヨリのチームがナナカ(オタク)アンナ(厨二病)のチームを打ち負かし優勝した後、興奮冷めやらんリンが珍しく提案し、アカリがそれに乗ったのだ。ヨリも渋々という雰囲気を出してた割に、いざログインするとノリノリだった。

 

ソルの塔10階層目までのタイムアタックに挑戦することになった4人は7階層目に差し掛かったところでネネカと鉢合わせてしまう。

 

「あれっ、ネネカさん…!?」

 

ヒヨリは驚いて声をあげた。

 

「ネネカさんって…あの七冠(セブンクラウンズ)の!?」

 

ヨリはヒヨリの衝撃的な発言を聞いて驚く。

 

「お姉ちゃんみたいでカワイイ~」

 

アカリがネネカのどこを見て言ったのかは察してほしい。

アカリにはあって、ヨリにないもののことである。

 

一方リンは学校に来たときとはまるで違うファンシーなショッキングピンクの装いに困惑していた。リンがネネカ(合法ロリ)に少女趣味があることに納得感を覚えたのはこのときである。

 

「あなたは…ヒヨリにリンですか… ちょうどいいです。

 晶のプリンセスナイトを倒す前に、あなたたちの実力を測らせてもらいましょう…!」

 

ネネカは対人戦の馴らしのために4人に戦いを挑んできた。

 

「もしかして、裏ボスってこと!?」

 

少なくともユウキが跳躍王を倒し、歴史の表舞台に現れるまでは七冠(セブンクラウンズ)は生ける伝説的な存在だったのだ。ヨリはそんな天上人とゲームができることに喜んでいた。

端的に換言すると、ヨリはワクワクしていた。

 

「アハッ、お姉ちゃんが張り切ってる♪ アカリも混ぜてほしいな~♪」

 

激しいプレイ(決勝戦)を見せつけられて欲求不満に陥っていたアカリはネネカを()る気満々だった。

 

「ありゃりゃ~血気盛んだねえ… だいたいユウキが掲示板で焚き付けたのが悪いんだよ~

 この借りはユウキに高級アンパンを買ってもらうことで返してもらおっと…」

 

ネネカとは戦うしかない(大魔王からは逃げられない)と悟ったリンも後でユウキに報酬を強請ればいいかと思いつつも防御を固めた。ちなみに、用意周到なユウキ(オリ主)は急な出費(デート)に備えて財布(カード)に結構な金額をプールしている。

 

「ユウキくんはいないけど、あたしは負けないよ!」

 

ヒヨリは闘志をたぎらせた。

 


 

 …ってことが、あったんだよ~」

 

へぇ…ヒヨリはネネカと戦ってたのか…

プレイヤーはみんな跳躍王(キングリープ)戦に白熱してたから、ダンジョンとかガラ空きだったろうな…

アリーナも同一マッチングを延々と成立させて、八百長試合でランク上げできたもんな…

分身できるネネカにとっては、確かにソルオーブを荒稼ぎするチャンスではある。

 

「それはもっと早く言ってほしかった…」

 

変身の精度が高くて、だいぶ焦った…

 

「え~でも…ネネカさんの変身、見破ったんだよね~ すごいよ!」

 


 

「ミネルヴァさま、例の御方(ユウキ)と会ってどうでしたか?」

 

こころ(コッコロ)はどうしてわかったんでしょうか?」

 

「雰囲気が少し変わったように感じたので…」

 

「そうですか? こころがそう言うのなら私も成長したのでしょうね。

 晶のプリンセスナイトと会った感想なのですが、ひとことで言うと…純粋無垢な方でした。

 人に夢と書いて儚いと読むとは…あのような人を指すのでしょうか…」

 

「純粋無垢とは…そんな方がいらっしゃるとは、世界は広いのですね…」

 

「彼には世界がカメラで撮った写真のように美しく映っている…そんな気がします。

 彼がアストルムに向ける眼差しは憧憬そのもので、その視線に心が惹かれました。

 私も冒険できるならユウキさんとしたかった…そう思います。」

 

「流行りの小説風に言えば、ミネルヴァさまは『星を見た』のですね。

 それにしても…ミネルヴァさまに冒険したいとまで言わせるなんて驚きです。

 …夢が一つ増えましたね、ミネルヴァさま。」

 

「…そうですね、こころ。」

 


 

「あっ、にいちゃんだ~! 今日は誰とデートするの?」

 

そう言われると、なんか節操ない人間みたいだな…

別にいつもは恋愛とかそういうのじゃないぞ…

友人に誘われたから行ってるだけだ。

 

「おはよう、みそぎちゃん。

 みそぎちゃんこそ、遊園地にいるってことはいつものメンバーで遊ぶんだろ?」

 

多分、リトリリのメンバー(ミソギ&ミミ&キョウカ)だな…

 

「今日はね~ こころ(コッコロ)に…ミミと鏡華(キョウカ)、くるみに綾音(アヤネ)、あとね~キャル(希留耶)由仁(ユニ)だよ。

 どーせ、みんな…にいちゃんの知り合いでしょ?」

 

…!? どうしてそうなったんだ!?

 

「あはは、にいちゃんが驚いてる♪」

 

「あっ…いたいた~ 知らない人に話しかけちゃだめじゃない~」

 

どうなってんだよ…

 

()()()()()()()()()()()。わたくし、棗こころと申します。

 いつもミネルヴァさまがお世話になっています。」

 

「ああ、よろしく。」

 

「えっ、あんたがあの跳躍王を倒したっていうプリンセスナイト!?」

 

…あれだけ盛大にやれば、そりゃあ有名にもなるよな。

でも、他人事みたいに言うってことは()()()さんは参加してなかったのかな…

 

「るんたった~るんたった~♪ みんな~おはよう~!」

 

「おまたせ~ 待った~? あっ! ユウキくんもいるじゃん…!

 今日はみそぎちゃんの付き添い?」

 

「いんや、今日はユイちゃんと待ち合わせ。」

 

「邪魔しちゃって、ごめんね…?」

 

「オレは気にしてないから。」

 

「なら、いいんだけど…」

 

由仁姉が気にすることではないから…

 

「お、おはようございます…。」

 

「遅くなっちまったかな~ おっと、俺はぷうきちだ。 綾音の代わりに挨拶するぜ。」「…♪」

 

くるみに綾音と…ぷうきち…なのか?

 

「おはようございます。 今日はユウキさんもいるんですね。」

 

「おはよう、鏡華(キョウカ)ちゃん。

 今日はだな…

 

「あっ、いたいた~ やっと見つけたよ~

 探しても見つからないと思ったら、お友達と居たんだね…!」

 

あっ、ユイちゃんが来たみたいだ…

 

「みんな考えることは一緒らしい。 別の場所にすれば良かったかな…」

 

「わたしは気にしてないよ。 遊園地に行きたいって思ってたのは、わたしもだから…」

 

それならいいんだが…

 

「初めまして、あなたがユイさまですね。 わたくしは棗こころと申します。

 ユイさまのご活躍は常日ごろから耳にしております。」

 

「えっと…初めまして、わたしは草野優衣って言います。

 ユウキくんと同じクラスの同級生です。」

 

「…というわけだ。」

 

「あれっ、おにいちゃんは一緒じゃないの?」

 

「えっ、そうなんですか!? てっきり、一緒に見て回るものかと思ってました。」

 

「…ごめん、今日は無理だ。 ごめんな。」

 

今日はユイちゃんが最優先だからな。

 

「えっとね…ユウキくん。 そのことなんだけど…わたしはみんなで回ってもいいよ。」

 

「でも、今日は二人って約束だから… あの…ユイちゃんは気にしなくても…」

 

気を遣わせちゃったな…

 

「だ、大丈夫です。 ユウキさんは優衣(ユイ)さんと楽しんでください!」

 

「ミミも気にしてないから…!」

 

「ここに居るのはユウキくんの知り合いなんだよね? わたしね、君のことをもっと知りたい…!

 そんな理由じゃ、ダメかな? あと…みんなで回れる機会は今日だけかもしれないし…」

 


 

ユウキはコネで予約した高級料理店の個室でヒヨリと話をしていた。

ヒヨリは知らないが、しっかりと客の秘密に配慮した政治家や財閥一族御用達の店である。スタンドアローンの自立型ロボットが注文から配膳、後片付けまでをし、二次記憶装置は読み取り専用、客が帰る度に客の目の前で電源を落としメモリを消去するという徹底的さがセールスポイントとなっている。

 

「ヒヨリは『猿の手』を知ってるか?」

 

「ううん、聞いたことないよ?」

 

「猿の手はどこぞの魔法のランプのように3つ願いを叶えることができるんだが、

 元の願いからは歪められた形で叶ってしまうんだ。」

 

より正確には運命を覆すには代償が伴うといったものである。

 

「それってどういうこと?」

 

「例えば、お金がほしいと願えば、息子が死んで見舞金が届き、

 死んだ人間を蘇らそうとすれば、ゾンビとして生き返る。」

 

ちなみに3つ目の願いはちゃんと叶った。逆張りという選択肢さえ潰す心折設計である。

 

「…聖杯?も同じだってこと?」

 

「ああ…たとえ、願いに悪意がなくとも、碌でもない結果になる可能性は充分にある。

 争いのない世界を願ったとして、それが全人類皆殺しという結論にならなくとも、

 人類全員を洗脳して闘争心を取り除くとか、徹底的な監視社会を築き上げるとか、

 世間一般から見て善い願いだとしても、悪い結末になる可能性は幾らでも考えられる。」

 

Fateシリーズの聖杯は高確率で願いが悪意をもって叶えられたり、黙示録の獣が召喚されたり、誰が使っても碌でもない結果になるのだ。プリコネ本編でさえ、願いは歪められて叶ってしまった。そんな世界が混ざった状態で願いを叶えようとすればどうなるかは火を見るよりも明らかである。

 

「だから、聖人君子の善人であろうとも、他の奴らにミネルヴァを渡すわけにはいかないんだ。」

 

むしろ願いが利他的な分、善人であればあるほど世界が滅びに近づくという、聖杯が初見殺しのトラップになってしまっている。

 

「じゃあ、あたしたちは聖杯?が危険ってことさえ知ってればいいんだよね?」

 

逆に初見殺しである以上は知っていれば対処のしようは幾らでもあるのだ。

 

「それじゃあ、駄目なんだ。

 おそらくは願いを叶える当人が抱く『本当の願い』から外れたものは叶えられない。

 だからといって、願いを叶えれる状態で放置するわけにもいかない。」

 

残しておくにはあまりにもリスクが大きすぎるし、解体しようにも安全にできる保証などない。しかも、心からの願いでなければ叶えられないから、都合の良いように使うことさえできない。

熾烈な戦いを経て手に入るのは、そんな呪いの道具である。聖杯戦争とは即ち罰ゲームと言っても過言ではないだろう。

 

「じゃあ…どうするの?」

 

「一つだけ方策はある。…ユイちゃんに願いを叶えさせる。」

 

それはユウキが頭を振り絞って何年も考えた末の結論だった。

 

「どういうこと…?」

 

優衣(ユイ)の願いには見当がついてる。

 十中八九、世界の修正力が働いて…()()()()()()()()()と同じ結果にたどり着く。」

 

上手くいかなくとも死ぬのは自分(ユウキ)覇瞳皇帝(千里真那)だけである可能性が高い。

あることを除けば、これが考えうる最良の手だった。

 

「つまり…願いが叶うと、()()()()()()()()()()()ってことなんだよね…?」

 

ヒヨリはユウキ(オリ主)の企みを察した。

ユウキはユイを不幸のどん底に突き落としてでも、使命を全うするつもりなのだと。

壮絶な過去を持つユウキが犠牲を認めるとは思えない。だからこそ…

 

「…ああ、そうだ。」

 

ユウキは苦虫を噛み潰したような顔をしながら肯定する。

 

「ユイちゃんに直接言わないのは、それで願いが変わってしまうかもしれないから?」

 

この男(ユウキ)は妙なところで鈍感だ。ユウキがユイに真実を話したとして、決して考えを変えることなどない。ユイはどうしても避けられないのなら、進んでその境遇を受け入れるし、自分が不幸になったとしても、ユウキなら助けてくれると心の底から信じるだろう。ヒヨリはそう思うのだ。

 

「ああ…ヒヨリは勘が鋭いから、誤魔化せるとは思ってなかった。 だから…話した…」

 

いいや、ユイはとっくに気づいている。きっと、ユウキの決意を鈍らせないために、何も知らないフリをしている。だからこそ、ヒヨリはユイの想いを汲んで口には出さなかった。

 

「最後に聞くね…今の状況って、ユウキくんの知ってる未来とはだいぶ違ってるよね?

 それでも、ユイちゃんは同じ願いを叶えると思う?」

 

「…ああ」

 

ヒヨリは確信した。この男(ユウキ)は初めから理解っていたのだ。ユイがユウキに向ける感情も、全て…

 

「ひどいよ…ユイちゃんの()()()()()()()()()なんて…!」

 

ヒヨリはユウキがどれだけ思い悩み、苦悶したのかは理解っている。

それでも…一人の女の子として言わずにはいられなかった。

 


 

「今日は楽しかったね…♪

 鏡華(キョウカ)ちゃんが由仁(ユニ)さんを質問攻めにしたり…

 みそぎちゃんがキャル(希留耶)ちゃんにイタズラして驚かせたり…

 今日は色々あったよね…本当に楽しかった…」

 

「オレも楽しかった… みんなが和気藹々としてて、とても嬉しかったな…」

 

本当に…本当に…あの光景が見られただけでも、この世界に来た価値があったと思う。

 

「ユウキくんらしいね…♪

 でも…次は二人で遊園地に行きたいな…」

 

……。

 

「そっか… わたしだって気づいてるよ… 願いを叶えるって、それだけ魅力があるもんね…

 でも、死なないでね…ユウキくん… 必ず、二人で行くよ…」

 

…。

 

「言わなくてもいいよ… 言えないよね…君は約束を破れない人だから…

 その代わりに一つ約束してもいいかな?」

 

「オレにできることなら…いいけど…」

 

「君と同じように、わたしにも秘密はあるの。 きっと、君は知るときが来る。

 だからね、いつか君の秘密も教えてほしいな…」

 


 

「あれは…ドラゴンでしょうか…!

 戦闘機とドラゴンが戦っています!」

 

「…戦闘機がドラゴンを撃ち落としたようです!

 ああ! エッフェル塔に衝突しました!

 これ以上は危険なので取材スタッフも退避します!」

 

「あれを見ろっ! アイツら、群れで来やがった!」

 

「パリに無数のドラゴンが飛来しています!

 これはSFXやCGではありません!」

 


 

下校した(レイ)がテレビを点けると、どのチャンネルにも世界各地の混乱の様相が映っていた。

パリは燃え、ロンドンには奈落へ繋がる大穴(吹き溜まり)が空き、世界の終わりが始まったかのようだった。

 

(レイ)は何も知らされていなかった。

幼馴染(ユウキ)と父親が悪巧みをしていても、(レイ)は蚊帳の外だった。

(レイ)は自分の頼りなさに絶望していた。

 

「お願い! このメッセージを聞いているなら、アストルムに来て…!

 今のアストルムにログインしたら、危険かもしれない…。

 でも…あたしにはレイの力が必要なの!」

 

(レイ)はフィオのメッセージを聞かなかったことにした。

自分にできることはない、迷惑をかけるだけだと思ったから…

 

周囲が(レイ)に求めているのは大物政治家の娘であることなのだと…(レイ)は本気で信じていた。

だから…(レイ)は生きて帰れるかも分からないデスゲームにログインするわけにはいかなかった。

結局のところ、(レイ)()()()家族を悲しませたくはなかったのだ。

 

本来(原作)(レイ)は冷え切った家庭で育ち、一度は家族を憎んだが、最後は自身の生き方を認めさせようと邁進する。だが、そうはならなかった。この(レイ)は温かい家庭で育ち、家族を愛し、政治家となる未来さえ受け入れた。それはユウキ(オリ主)がある時、運命を捻じ曲げたから。ユウキ(オリ主)の抱く大切な人を巻き込みたくないという願いは、最悪の場面で叶ってしまった。

 

(レイ)がぬいぐるみを抱いて不貞寝しようとしたそのとき…mimiにメッセージが届く。

父親からのメッセージ。 そこには短く一言…

 

「リアルのことは気にするな。 その代わり、アストルムは怜に任せる。」

 

そのメッセージを見た(レイ)はアストルムにログインすることを決心する。

 


 

オクトー先輩(尾狗刀詠斗)はどうして戦うんだ?」

 

「そんなことも理解らないのかなあ。

 …男が戦うのに、女のため以外の理由なんていらないでしょ。」

 

(あーあ。こんなメンドクサイやつに惚れちゃった女の子は大変だよな~)

 


 

静まり返った教室で、ユウキは意識のない優衣(ユイ)に肩を掴んで必死に呼びかけていた。

 

「…優衣(ユイ)! 優衣(ユイ)、返事をしてくれ!」

 

ユウキのmimiに晶からの着信が入る。

 

「やあ、少年。 時間がない、端的に話させてもらうよ。

 たった今、WISDOMが強制ログインのコマンドを世界中のmimiに送信したようだ。

 対象のmimiは87機種、物理的にバックドアが仕込まれてたから阻止できなかった。

 このやり口は最後の七冠、幻境竜后(ビジョンズエンプレス)によるものだね。」

 

ユウキは唖然としていた。 強制ログイン、その単語が頭の中ををぐるぐると回っていた。

 

「アタシの予測だと、およそ2000万人がアストルムに捕らわれている。

 一刻も早く、アストルムをクリアしないと、現実にも大きな被害が出る。

 少年、アストルムで待ってるよ。」

 

首から下げたペンダントを握り、息を吐く。 ユウキは世界を救う覚悟を決めた。

 


 

「灰かぶりて、我らあり… 伝承は事実だったとはな… …再び、火を点ける時が来たようだ。」

 

「きっと成し遂げますよ、大統領。 彼らは『観測者の結社(ディープステート)』なんですから。」

 


 

「では、内閣を解散しよう。」

 

「それは無理です。貴方は既に日本国憲法第58条第2項*1に基づき、除名されています。」

 

「これはクーデターだぞ! そもそも私は懲罰事犯*2ではない! 分かってるのか!」

 

「ほう? WISDOMと通牒し、国家の解体を目論んでいた貴方が…ですか?

 貴方は議会の承諾なしに、国権をWISDOMに明け渡す手続きを進めました。

 クリスティーナ・モーガン氏が議会で証言してくれましたよ。」

 

「これでは、反軍演説*3の再演ではないか…。 日本を帝国に戻すつもりか?」

 

「貴方がアストルムのプレイヤーを人質にして議員を脅したのも、全て記録に残っています。

 嘗ては貴方を尊敬していましたが、今や見る影もない…。 残念です。」

 

「やはり士条か… あやつに我らを裏切る胆力などないと思っていたがな。」

 

「外患陰謀罪*4で貴方に逮捕令状が出ています。 飛行機を降りれば…

 

「みなまで言うな、分かっておる。

 自殺はせん…。 今や国賊となった儂にも、プライドはある。 

 いいか…儂は国家の…国民の未来を憂いて働いてきた。

 それを罪と呼ぶのなら、罰を受けるのが為政者としての最後の務めよ。」

 


 

ユウキ   (ようやくオレはここまで来たよ…)

 

ユイ    「どうしたの…ユウキ君? ロケット(locket)なんて見つめて…」

 

ユウキ   「ああ…優衣(ユイ)か… 願いが叶うといいなって願掛けしてたんだ。」

 

ユイ    「そのロケットの中の写真って亡くなったご両親と撮った写真だよね…?

       アストルムにまで持ち込むなんて、よっぽど良い家族だったんだね…」

 

ユウキ   「この戦いに勝てたら、家族のこと、内緒にしてることを話すよ」

 

ユイ    「勝つだけじゃなくて、大団円を目指そうね! ユウキ君!」

 

ユウキ   「ああ、もちろんだ!」

 


 

 

―――安全保障理事会の総意として、『ソロモンの杖』の封印指定解除を要請します―――

 

 

*1
両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

*2
懲罰できるのは院内の秩序をみだした議員に限られるということ。衆議院規則では「議院の秩序をみだし又は議院の品位を傷つけ、その情状が特に重い者」と定められている。

*3
大日本帝国憲法下において、軍部の批判をした議員が除名された事件のこと。議会制民主主義の敗北として記憶されている。

*4
第81条:外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。予備又は陰謀をした者は、1年以上10年以下の懲役に処する。予備は犯罪の準備をすること。陰謀は複数人でその犯罪の計画をすること。




ここで一区切り
次はカイザーインサイト戦


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OVERCOUNT +1

 

跳躍王(ラジニカーント)  「失敗したときの保険ですか… あなたの意図が読めませんが…これも契約です。

       クリスも連れて、アストルムにログインしましょう。」

 


 

子どもは泣き喚き、多くの人は現状に絶望している。

混乱の中、ユウキは何を優先すべきか迷っていた。

 

「話は聞かせてもらったぜ! 覇瞳皇帝(カイザーインサイト)が暴れてるんだろ?

 ここは俺たちに任せて、お前たちは頂上に行け!」

 

そうユウキに声を掛けた男は会社員だった。会社ではうだつの上がらない万年平社員、家庭では思春期の娘に邪険にされる、ごく普通の一般人である。休憩中に偶々巻き込まれた彼は娘と同じくらい、より小さい子どもまでもがこの事件に巻き込まれてるのを見て、勇気を出した一人だった。

 

「そうだ! 俺たちが希望を繋ぐんだ! もう一度、立ち上がる時が来たんだ!」

 

そう声を上げたのは政府の圧政に耐えかねて革命に参加したとある国の若者だった。

 

「あとは大人たちに任せなさい。 必ず、家族のもとに帰しましょう。」

 

そう不慣れな様子で泣いている子どもを慰めるのは嘗て学生運動に参加した老人だった。学生運動における女性の扱いに失望し、運動を去った一人であったが、未来のために必死に足掻く若者を嘗ての自身に重ねた彼女は再び立ち上がる決意を固めた。

 

―― Do you hear the people sing?

 

若き日に演劇を志し挫折した男が、なけなしの勇気を出して立ち上がった英雄とは違い、諦念のまま階段に腰掛けるばかりの自分への皮肉を口ずさむ。

 

Singing a song of angry men?――

 

だが、そんな男の歌に応えるように誰かが続きを歌い出した。

 

―― It is the music of a people ――

 

―― Who will not be slaves again! ――

 

それを聞いた人が一人、また一人と歌に加わる。

 

―― When the beating of your heart ――

 

偶々巻き込まれた主婦が――

 

―― Echoes the beating of the drums ――

 

余命幾ばくもない老人が――

 

――― There is a life about to start ―――

 

現実(リアル)では血で血を洗う敵たちとさえ――

 

――― When tomorrow comes! ―――

 

アストラム中に響き渡る大合唱。

其れは民衆の歌、怒れる市民が自由と尊厳を取り戻すことを高らかに宣言する歌だった。

 

「ってわけだ、大将。 ここ(地上)は任せて、早く塔に行きな。」

 

「ああ…わかった…!」

 

大悟(ダイゴ)の言葉に自分の役割を思い出したユウキは塔へ向かう。

 


 

ルカ(流夏)    「ソルオーブが必要なんだって? アリーナの景品だよ。

       どうせ、使い道なんて無いんだ。 これはお前さんにあげるよ。」

 


 

仲間と合流したユウキは最後の一人であるレイを待っていた。

 

「フィオ、レイに何かあったのか?」

 

「…レイは迷ってるみたい。」

 

フィオはユウキの質問に答えた。

 

「そうだよね…みんなそれぞれ事情があって… 普通は自分から危険には飛び込めないよね…。」

 

ヒヨリはレイの悩みに納得を示す。

 

「そうだな…なら仕方ないな… 行こうか…」

 

残された時間も少ない。ユウキは塔を登ろうことに決めた。

 

待って!

 

行こうとしたそのとき、ユウキたちはレイに呼び止められた。

 

「レイ!」

 

フィオはレイに抱きつき喜びを表現する。

 

「レイちゃんは本当に来てよかったの?」

 

ユイがレイに聞く。

 

「…さっき、父親からメッセージが送られてきたんだ。

 『リアルのことは気にするな。 その代わり、アストルムは怜に任せる。』って。」

 

「私はずっと、父親に、一族に、自身の価値を証明したいと思っていたんだ。

 でも、その必要はなかった。 家族は私に期待してくれている。

 だから、私はその期待に答えたいんだ。」

 


 

最初の関門、ボスラッシュが始まった。

 

「ここはあたしたちに任せて、あんたたちは先に行きなさい!」

 

「そうですわ、咲恋さん! ここはわたくしたちで食い止めますわよ!」

 

咲恋と秋乃、いいや…後に続く、大勢のプレイヤーたちがユウキの道を切り開く。

 

「わかった…先に行く…!」

 

ユウキたちは覇瞳皇帝の野望を阻止するために先へと進む。

 


 

遠くに見える摩天楼から上がる煙、鳴り続けるサイレン、道路を走る戦車*1、柏崎初音はユウキ(オリ主)が危惧した事態が発生してしまったことを理解した。

 

「とうとう始まったんだ…! …しおりんは!」

 

初音は家族の安否を確認するために電話をかける。

 

『おかけになった電話番号にお繋ぎできませんでした。』

 

初音は教室の窓から飛び降り、妹の栞が居る自宅へと向かった。

 

「しおりんを助けなきゃ…!」

 

幾度となく事故を起こした自動車の上を通り過ぎながら、初音は人目すら気にせずに飛んでゆく。

 


 

ボスラッシュを突破したユウキたちは思わぬ敵に足止めを食らう。

 

「「「「「ここから先は通さないわ。」」」」」

 

「ご覧の通り…真那は私の分身能力をラーニングしたようです。」

 

「やるしかないか…!」

 

ユウキたちは戦おうとするが…

 

―――全力全開☆プリンセスストライク!―――

 

偽物の覇瞳皇帝がユニオンバーストによって纏めてなぎ倒された。

 

「その声は…ユースティアナ(ペコリーヌ)なのか!?」

 

「はい、わたしの方から来ちゃいました♪」

 

偽物の覇瞳皇帝を倒したのはアストルムの出資者であるアストライア王国のお姫様だった。

 

「あのときの約束を守れなくて本当にごめん…」

 

「冒険なんて、やろうと思えばいつだって始めれるんですよ♪

 やりましょう…冒険! みんなで真那さんを倒しにレッツゴーです☆」

 

冒険(ロマンス)の舞台は覇瞳皇帝(創造主)によって貶められた。

それでも王女は嘗ての夢を追いかける。

 


 

ユウキたちは覇瞳皇帝の妨害を退け噴水ほどの大きさの円形の台座の前にたどり着いた。

 

「はい、最後のソルオーブ。

 アタシたちはここから先には行けないから、後は頼んだよ。」

 

それはソルの塔の頂上へと向かう転移装置だった。装置に反応したソルオーブが微かに震える。

 

「やっぱり、晶は行けないのか?」

 

ユウキはふと疑問に思った。原作では頂上へのアクセスには幾つか抜け穴があった。ユウキはそれができないのかをラビリスタに聞いた。

 

「ありゃりゃ…アタシが頂上に直接行こうとしてたのバレてた?

 でも、聖杯へのアクセスの部分は強固に設計されてて無理だった。

 力になれなくて、ゴメン。」

 

聖杯戦争とは策謀と例外の歴史である。ありとあらゆる不正が試みられ、その対策もまた行なわれていた。

 

「それも想定の内だ。 晶でもできないんなら仕方がないさ…。」

 

それから、ユウキはユースティアナの方へ振り向き、数瞬の沈黙の後にユウキは別れを告げる。

 

「…ティアナともここでお別れだな。 …Morituri te salutant」「少年…」

 

「……はい!」

 

ユースティアナは一瞬ハッとした顔をしてから、ユウキたちを精一杯の笑顔で見送った。

 


 

覇瞳皇帝(千里真那)  「どういうことよ! 答えなさい!」

 

ミネルヴァ 「それはあなたの本当の願いではありません!」

 


 

転送されたユウキたちは中央に大聖杯が安置されたプラネタリウムのような広場に着く。

そこには、ミネルヴァを痛めつける覇瞳皇帝がいた。

だが、ユウキの眼には、痛めつけられたミネルヴァではなく、その背後にある大聖杯…巨大な黄金のモノリスが映っていた。

 

「■■■がどうして…この世界に…! そうか… だから、ミネルヴァは天の聖杯(Heaven's Feel)なのか…!

 そうだよな…虚数の海を覗くにはこれ以上ない代物だ…」

 

「ユウキくん…?」 「ユウキさん…あなたは…」

 

「…千里真那はここで倒す! いいな…!」

 

そして、ユウキはミネルヴァを背後に庇い、剣を抜いた。

 

 

   TIPS : ソルの塔

 

   神話から名付けられた…というのは表向きの理由。

   人類救済の手段を保全するために、第四魔法による情報改竄が行われており、

   幻境竜后による思考誘導もあって、嚮導老君を除く七冠たちは真実を忘却している。

 

   その実態は、蒼輝銀河における聖槍、ロンゴミニアドLRを構築するための基部であり、

   建造完了までの間、人類の生存圏を確保するための、空想樹としての機能も備えている。

 

   但し、塔の完成には最低でも138億年以上もの歳月が必要な失敗作であり、

   たとえ建造が完了しても、人類救済の前提条件の一つが満たされるのみである。

 

   なお、七冠はカルデアがFGO世界の人理を崩壊させた黒幕であると推測していた。

 

 

「ユイ!」

 

「わ、わたしの、願いは…みんなと、アストルムで、一緒に…ずっと一緒にいたい…」

 

ユイは硬直し、虚ろな目で『願い』を口に出す。そして、ユイは気を失い、地面に倒れ伏した。

 

「これは…ヒプノシス…ですか…! ごめん…なさい…ユウキさん…

 真那は…自分の願いを、ユイの願いと…誤認させて…叶えてしまいました…

 このままでは…、アストルムが特異点化して…、現実(リアル)に戻れなくなってしまう…!」

 

覇瞳皇帝はユイを洗脳し、都合の良い願いを叶えさせた。

そして、アストライア大陸の歴史全てを演算しようと聖杯は()()し、特異点(異聞帯)の形成を始める。

 

「もうやめようよ……! これ以上は世界がおかしくなっちゃうよ……!」

 

()()()()()()… そのためなら()()でも…   そう…()()でも……!」

 

当初の予定とは異なれど、願いの成就に酔いしれ、覇瞳皇帝は譫言を垂れ流す。

ヒヨリの言葉は届かなかった。

 

「ふふ…まさか…アナタがウォッチャー(領域外の生命)だったなんて…

 そうね…、私の邪魔をしていたのがアナタだとしたら、全て説明がつくわ…

 アナタの正体は暴かれた… これで…もう、ラプラスの魔は成立しないわ!」

 

切り札は使い切った。覇瞳皇帝はユウキの秘密にたどり着き、優位は失われた。

 

「クソッ…! オレでは届かないのか……!」

 

「私はキミの10年の努力を知っている。 自分を信じるんだ。」

 

レイは弱音を吐くユウキを励ます。

 

「ああ…そうだな…!」

 

ユウキは気力を振り絞った。

 

「戯れはここまでよ!」

 

「ユイちゃん!」

 

ユイを突き飛ばしたヒヨリに極太のビームが直撃しロストする。

 

「ヒヨリ…!」

 

動けなかったミネルヴァは自身の不甲斐なさを恥じた。

 

「私が囮になる…! あとはキミに任せたよ…」

 

一か八かレイは形振り構わず、覇瞳皇帝に激しい剣戟を浴びせた。

 

「屈辱と共に散りなさい!」

 

「レイ…!」

 

ミネルヴァの叫びとともに、覇瞳皇帝の猛攻にレイはロストした。

 

直後、飛び出したフィオが覇瞳皇帝の視界を塞ぐ。

 

「あんたはここで終わりよ!」

 

ガイド妖精にダメージを与えられないと知っていた覇瞳皇帝は魔力の大半を注ぎ込み、フィオを何処かに転送した。

 

「この瞬間を待っていた!」

 

覇瞳皇帝をユウキの剣が抉る。覇瞳皇帝に負った傷に見合わない激痛が走った。あまりの痛みに覇瞳皇帝は苦悶の表情を浮かべ、身を捩らせる。霊子体には大きな罅が入り、光が漏れる。

 

「それは何よ…その摂理は… その霊基(なかみ)に詰まっているものは何よ…!

 少なくとも…アナタは『ラプラスの匣』なんてくだらないモノじゃないわ…

 むしろ、その性質は『聖櫃(Ark)』にすら近い…アナタは一体、何者なの…!」

 

覇瞳皇帝は息も絶えだえにユウキを追及する。

ユウキの霊基(なかみ)には未知の法則が在った。それはプリンセスナイトに与えられる固有能力の域をゆうに超えるもの。不死(アムリタ)すら、()()()殺しかねない狂ったチカラだった。

 

「教えるもんか! だいたい…オレがウォッチャー(監視者)だって、オマエが言ったんだろ!」

 

教えるも何も、一番知りたいのはユウキ(オリ主)自身なのだ。

 

「そうね…全部そこに答えがあるじゃない。

 恋に堕ち、神の…禁忌たる知識をヒトに授けし…グリゴリの堕天使(wacther)。 

 そして…神の子(救世主)でありながら(に成り代わり)悪魔へと貶されし(黙示録の獣と成りし)モノ!

 でも…運命力が足りないわ。 全て…終わらせてあげる…!」

 

そして、短剣を核に魔力が集まり巨大な槍を成してゆく。

此処に居るユウキは本物ではない。主人公補正がないのだ。あと一歩、遅かった。

 

「まだだ…!」

 

相打ちを覚悟でユウキは覇瞳皇帝に突撃する。

運命力のない自分は原作(岸くん)のように生きて現実に帰れない。そう理解っていての行動だった。

 

 

世界も…お前たちも…全て私に跪け!

 

いいや、ここでオマエは終わりだ! 一緒に地獄に逝け!

 

ユウキさん…!

 

 

その身を挺して覇瞳皇帝の攻撃から庇ったユウキは霊基(からだ)を砕け散らせながら、なおも突き進む。

覇瞳皇帝の懐に迫ったユウキは一等星の輝き(シリウスライト)と共に、ユニオンバーストを解き放った。

 

 

ユウキくん…? ねえ…返事をしてよ!

 

嘘…魂が砕かれてる…! 私を庇って… どうして…あなたはそこまで…

 

イヤだよ…! まだ…君にスキって言ってないのに…! 

 

漸く…わかりました… これが『恋』という感情だったんですね… どうして私はいままで…

 

ミネルヴァさん! 早くしないと…ユウキくんが…死んじゃうよ…!

 

ユイ… 一つだけ彼を助ける方法があります… ですが…

 

もしかして…助ける方法があるの…? わたしはどうなったっていいから…! お願い!

 

聖杯はまだ完成していません…  使用者が聖杯と融合することで…本来の性能を発揮します

 

そして…完成した聖杯の力で…願いを上書きすれば助かります… 

 

…わたしと聖杯が融合すれば助かるの…? だったら…!

 

ですが…融合する側が七冠のように強い自我を持っていることが前提です 

 

ユイ…あなたの場合は(聖杯)に人格が飲み込まれる可能性があります…

 

それは…ミネルヴァさんも条件は同じだよね…? ミネルヴァさんは…本当にいいの…?

 

ええ、これが私のやりたいことですから… 好きな人を助けて死ねるのなら本望です…

 

そっか…ミネルヴァさんも…ユウキくんのことが好きなんだね… だったら…いいよ…

 

ミネルヴァさんなら…わたしが消えても、必ずユウキくんを助けてくれる…

 

 

私は…あなたとずっと一緒にいたい… だから…生きて!

 

 

 

 

   TIPS : オーバーカウント

 

   来るべき終焉を自覚した霊長はありとあらゆる手段を用いて抵抗した。

   だが、宙に至ってなお終焉を回避できなかった霊長は、次の人理(霊長)へと託し続けた。

   この連綿と続く流れにおいて、人理(時代)は既に8回更新(オーバーカウント)され、次の人理(第十天)でその結末を見る。

 

 

 

「私ね…魂を修復するときに、あなたの記憶を覗いてしまったの。

 『プリンセスコネクト!』のことも、『Fate/Grand Order』のことも…全部知ったんだ…」

 

「ああ…オレは偽物なんだ… オレはユイを…シズルを…リノを…サレンを…

 主人公(ユウキ)になりすまして、都合よく搾取しようとヒロインに近づいた、最低最悪の存在だ…」

 

「ずっと…一人で頑張ってたんだね… 大丈夫、あなたは悪くないよ。

 私は…あなたの努力も、愛情も、葛藤も、全部知ってるから…

 みんなも、主人公だからじゃない…あなた自身の人柄を信頼してる。

 たとえ、世界の全てに否定されたとしても、私がそれ以上に肯定するよ。」

 

「ユイ…?」

 

「愛してる。」

 

「やめてくれ…!」

 

「あなたを…他の誰でもない、()()()()()()()()()愛しています。」

 

「お願いだから、やめてくれ…!

 オレは人の立場を乗っ取って、本物のフリをしていただけなんだ!」

 

「あなたが自分を偽ってることくらい、知ってた。 

 でも、私はそんな不器用なあなたに恋をしたんだよ。」

 

「オレはユイを騙して、プリンセスにしたんだぞ…!」

 

「それでも、私はあなたのことが大好きです。 だから…自分を傷つけないで。」

 

「オレが最後まで演りきれば、みんな助かる。

 それでいいじゃねぇかよ…!」

 

「自分らしく生きてもいいんだよ。」

 

「そんなことしたら…」 ――また、大切な人(家族)を失ってしまう…

 

「安心して、私がずっと側にいるから。」

 

「…オレはもう…誰も、喪いたくないんだ。

 そのために、できることは全てやってきた…。

 人を助けることの何が悪いんだよ!」

 

「でも…、あなたが救われない。 そんなの、イヤだ!

 ワガママだっていい! 私は決めたの! いつか必ず、あなたの笑顔を見るって!」

 

「どうしてそこまで…オレに構うんだよ…」

 

「あなたに伝わるまで何度でも言うよ。 他の誰でもない(原作主人公じゃない)、あなたに恋をしたんだって。」

 

 

―――これが人類悪(ビースト)霊基(クラス)なのね―――

 

―――偽りの獣(プリテンダー)でも役に立った(縁を紡げた)じゃない―――

 

―――まだ勝負は終わっていないわ――ここからが始まりよ―――

 

 

 

   TIPS : ネガ・プリンセス:B

 

   形而上の繋がりを無理矢理「切り離す」スキル。

   このスキルは対象者との距離を無視して、その効果を及ぼす。

   但し、時空間を超越すれば、世界の揺り戻しにより、相応の反動を受けることとなる。

 

 

 

私は大丈夫だから(魂が割かれただけ)…! でも…アストルムの再構築のプロセスが再開しちゃった…

あなたの精神も私が繋ぎ止めてた(治療中だった)けど…それももうすぐ限界を迎えるみたい。

 

そうなったら、あなたはこの世界での経験を全てを忘れてしまう。

それでも、伝えたいの。 もう…そんな機会はないから…

言うね… 私はあなたのことを愛しています。 ずっと大好きでした!

 

まるで今生の別れみたいじゃないかよ…!

 

うん…願いからみんなを開放するには私が消えるしかないみたい…

でもね、私は願いを叶えるシステムでもあるから、自害を禁じられているの…

私はここで待ってるから、いつか…私を殺しに来てね…

 

嫌だね! そんな頼みは聞けない!

 

だったら…こうすれば、騎士クン(ユウキ君)でも…心置きなく…エリス()を殺せる…かな…

 

その姿は…! ラスボス(エリス)を演じても、オレを騙せると思うなよ!

たとえ…記憶を失おうが… オレは必ず…オマエを迎えに行くからな!

オレを救った報いを受けさせてやる!

 

 

 

 

―――騎士クン(ユウキ君)――いつか…必ず…エリス()を殺しにきて―――

 

―――ああ――オマエを必ず…救ってやる―――

 

―――うん…わかった――期待して、待ってるね―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プリンセス コネクト!

Re:Dive

 

もう一度、キミとつながる物語

 

 

 

 

 

*1
このときハツネが見かけたのは装輪装甲車である。



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