ある日突然中世フランスっぽい世界に   作:満足な愚者

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感想返し再開したので十一話からの感想については返信します。最終話でもうすでにネタバレも何もないので何でもお答えします。今日は忙しいかもしれませんが時間をみて返信します――すみません、大変嬉しい話なのですが、感想の量が多すぎて返信を諦めさせてください。すみません、許して下さい何でもしますから。

とりあえず、今作も皆様の感想やら、評価に助けられて完結することが出来ました。お礼申し上げます。いつもいつも誤字脱字報告してくださる方々には本当に頭が上がりません。ありがとうございます。そして、これからもよろしくお願いします。


最終話

——本当に貴方は分かっているの? 

 

「あぁ、分かってるよ」

 

吐き捨てるようにそう言い放ち、そして息を一つ大きく吸い込み吐き出す。

 

「なんで聖女だったキミがそのように黒く染まったのか、その答えは情報さえ集まればすぐに出た」

 

初めて竜の魔女にあった時に感じたこと。そして、その時の問答。

 

『そうか……では、そのフランスを滅ぼすという行為は君自身だけの為か?』

 

『――ええ』

 

――彼女の瞳は……。

 

そう、あの時の彼女の瞳には明らかに揺らいでいた。

 

「初めてあった時の問答でキミが自分のためだけではなく、フランスを滅ぼそうとしていると言うことは分かった。そして、その前の戦闘で俺が異常な身体能力の増加をしていることも分かっていた」

 

あの日はその問答以外に竜と戦ったり、そしてシュヴァリエ・デオンと剣を合わせたりしていた。どちらの戦闘でも俺の異常なほどの力の上昇があることが分かった。

 

「でも、その時は自分自身の異常な力の事についても、そして何で君がフランスと言う国を滅ぼそうしているのかも分からなかった。でも全ての答えは単純な話だったんだ」

 

そこまで話すと、額から流れる血と汗をまだ無事な右手の裾で拭う。

 

——あぁ、これは結構やばいな。

 

血を流し過ぎたのと、低酸素の状況が相まって、結構しんどい状況だった。まだ立っているだけで動きがないからいいものの戦闘でもしようものならすぐに意識を失いかねない状況だ。

 

それでも、ここで話を止める訳にはいかない。全ての終わりなんだ、少しくらい体の方に無理を通して貰おう。

 

「疑問を抱えたままの俺に偶然とはいえ、情報が入ることになる。そう、カルデアのマスターとの出会いだ。彼女と出会い、そして彼女から聞かせて貰った情報によって大きくこの答えへと近づく」

 

人類の希望であり、人類最後のマスターの藤丸立香。彼女に出会ったあの日、彼女から色々な話を聞くことが出来た。

 

聖杯について、サーヴァントについて、マスターについて、魔術について、カルデアについて、人理について、未来の地球が亡びることについて、レイシフトについて、そして、特異点について……。

 

そんな色々なことを彼女から聞いた。

 

「いろいろことを立香から聞いたけど、それでも分からないことがあった。まずは俺自身の状況とそして部下たちの状況だ。そして、俺自身の存在がどんな物だったか分かった時、全ての答えが連鎖的に出た。俺自身は初めの方は、自分のことを周りから言われるように不完全なサーヴァントだと思っていた。でも、それは少しだけ違ったんだ」

 

「…………」

 

ゆっくりと話す俺をジャンヌはただただ黙って見つめており、口を開かない。まだ、彼女は言うべき言葉を持っていないみたいだ。

 

「不完全なサーヴァント、例えば、デミ・サーヴァントであるマシュもそうだし、ジャンヌもそうだ。彼女たちは不完全なサーヴァントだけど、俺のように力の上下がない。そりゃそうだ、いくら不完全なサーヴァントとして召喚されたからとは言え、力の最高値が上下するなんて普通のサーヴァントじゃ有り得ないからな。では、何でその力の増減が起きているのか……」

 

「答えは初めて会った時の君のセリフと、そしてどういう時に力が増して、どういう時に力が減るのかを考えれば簡単に出たよ」

 

俺と初めてあった時オルタは小さく漏らした。

 

『まさか、今更あなたが召喚されるなんてね……。いえ、寧ろここまでなったから召喚されたのかしら……?』

 

今更という言葉とそして、寧ろここまでなったから召喚された、という言葉。

 

そして、俺の力の増減は竜や竜骨兵などを倒した時に減り、逆に何もしないと増えるようだった。

 

「君はあの時に、寧ろここまでなったから召喚されたのかしら、と呟いた。そして、俺自身の力の上限は敵を倒す、即ち君の仲間を倒すと減って、何もしないと増える。俺たちが敵を倒すとどうなるか? 答えは簡単、フランスが滅亡から一歩遠のく。では逆に俺たちが何もしないということはどういうことか? それは、要するにフランスの滅亡を一歩早めることになる」

 

「もうここまで来れば答えまで直ぐだ。俺が召喚された理由はフランスが滅びそうになって召喚されるほどの力を得たからだ。召喚されるほどの力を得る。それは即ち、サーヴァント化したと言うこと。死んだ人間が甦る道理はない。俺はサーヴァントだった。でも、俺には座からの知識も無ければ、英霊として不安定だった。そりゃそうだよな――」

 

「――だって、俺は英霊になれるはずはないんだから」

 

立香は言った。サーヴァントとは英霊であり、英雄だと。

 

俺のようなただの人間にはなれる筈もないもの。そして、もしも万が一俺がその器でもなることが成れる筈のないもの。

 

「もう君は知っているんだろう。――俺が未来から来た人間だということを! そう俺が英霊になれない理由は単純だ。本当はこの時代にいてはいけない人間だからだ。時代に名を残すことは俺にはできない」

 

「でも、何の因果か俺は歴史に名を残すことになってしまった。歴史を変えてしまった」

 

あの終わりの時を思い出す。本来なら聖女は一人で処刑されるはずだった。しかし、実際には俺がいた。聖女の純潔を守るために命を懸けてそして、聖女の師として共に処刑された俺が居た。

 

「さぁ、答え合わせと行こうか。――消えるんだろ? 全て。俺が居たという証拠が、記憶が、証明が。この時代の全てから俺が消えるということだろ」

 

――世界は間違いを許さない。

 

ある冬の教会で考えた言葉がよみがえった。そう、きっとそういうことだ。

 

世界は間違いを許さない。

 

「そう考えれば君のフランスを滅ぼそうとすることの意味が分かる。世界の滅亡の原因は、特異点は君ではない。――それは俺だ。俺自身の存在が、歴史を変えてしまった俺の存在その物が特異点だ」

 

特異点とは何か、そんなもの考えるまでもなかった。この世界におけるイレギュラーは竜の魔女の前に存在した。俺がこの時代にやって来たそのこと自体だ。

 

彼女が世界を滅ぼす理由は俺という特異点を守るため。

 

分かっていた。彼女が自分のためじゃないとするならば俺のために行動する人間だということは。

 

「この世界が滅びれば、世界は俺を修正する必要はなくなる。でも、世界が未来へと向かうなら、その修正力ですべて元に戻る。そう、俺は中世フランスから消え去り、時代は決められたレール通りに進む。そして、俺は未来へと帰る。全ては元に戻るんだ」

 

このまま世界が滅びれば、俺の伝承も消えることがなくなり俺はサーヴァントとなる。しかし、世界が未来へと進み俺の存在そのものがこの時代から消え去れば俺はサーヴァントではなくただの人間に戻る。

 

敵を倒せば俺は人間に近づき、敵がフランスを滅ぼせば俺はサーヴァントに近づく。

 

俺の力の増減の理由はそんな単純なことだった。ましてや、この時代は俺が死んで間もない時だ、伝承も知名度も最高潮の時の物、その力は聖女にも匹敵する物があってもおかしくはない。

 

部下たちもそんな俺の影響を受けて神秘の力を得たのだろう。寧ろこの時代に本来いる彼らの方がその力は安定している。

 

「どうして、どうしてそこまで分かっているのに、貴方は笑っているの!?」

 

それまで黙っていたオルタが口を開いた。その言葉には前のような憎悪の音は聞こえず、ただ困惑の音だけが聞こえた。

 

「――私は悔しい! 私は許せない! だから、世界を滅ぼしてやろうと思った! 世界は間違っている! なんで貴方がそんな目に! あの終わりには納得してた! でも、でも、世界は貴方を裏切った! 消し去った! だから……!」

 

「だからといって世界を滅ぼすのかい?」

 

「えぇ! 全ての人の記憶から貴方が消えると言うならそんな世界滅びた方がましよ!」

 

「でも、君はそれが間違っていると分かっているよな」

 

「――何を言っているの!?」

 

「だって、聖女を召喚したのは君だろう」

 

「――なっ!?」

 

ずっと疑問に思っていた。何故、竜の魔女は黒く染まったと言うのに聖女は聖女のまま召喚されたのか……。

 

「ジャンヌダルクはジャンヌダルクのままだった。それはきっと記憶がなかったからだ。座についてからの記憶がない。彼女も俺と同じく、死んだ後の記憶がない。座というものに入れない俺とは違ってジャンヌダルクは聖女として正式に歴史に名を刻んだ英雄だ。本来なら記憶がないこと自体がおかしい」

 

「でも、こう考えれば納得する。ジャンヌダルクが座から知識を受け取ると竜の魔女に変わると……。座から知識を受け取ると自分が死んだ後の世界についても知れることになる。そうなると、不味い。だから、座からのバックアップ受ける前の状態で召喚するしかない。そして、それが出来るのは聖女自身」

 

「彼女を召喚した理由は……そうだな、世界を滅ぼそうとする自分と敵対して止めてほしかった。聖女のままなら間違いなく竜の魔女を止めるだろうし」

 

竜の魔女がその良心で呼んだのがジャンヌダルクと言う聖女だったのだろう。

 

「お見事な推理ね……でも、少しだけ違うわ。――彼女を召喚した理由は試したかったのよ。どちらの思いが強いか。私がこの世界を滅ぼしたい気持ちは本当。そして聖女がこの世界を救いたい気持ちも本当。だから、どちらの気持ちが強いか試してみたの。でも、結果はご覧の通りよ。聖女様は私に傷一つつけることが出来なかった」

 

「だから、この戦いは私の勝ちよ。後はカルデアのマスターの息の根を止めれば全てのサーヴァントが消える。それでこのフランスはお終い」

 

オルタは薄く笑いながら腰に提げていた短剣を抜く。

 

「まだ、その前に俺がいるんだが?」

 

「今にも倒れそうなほどにボロボロの貴方に何が出来るの? 大人しく部屋の隅の方でフランスの滅亡を見届けなさい。私と戦っても今の貴方じゃ逆立ちしたって勝てないわよ」

 

勝てないか……。そうだな、普通なら勝てないよな。

 

「確かに今の俺では君に逆立ちしたって勝てない。まぁ、そもそも何時だって俺に勝利はないんだけどさ。まぁ、それは今は置いておこう。――勝てないから、全てをひっくり返させて貰うよ」

 

どうせ俺が居たと言う事実がなくなるのなら、“不死不殺”という俺自身を現す伝承がなくなるのなら、最後に俺自身の手でこの伝承を終わらそうと思う。

 

右手に持つ西洋剣の剣先を自らに向ける。

 

「どういうつもり……」

 

「俺の伝承は知っているだろ? ただ戦場で死ななかっただけの俺だけど、二つ名のようなもんを頂くことができた」

 

「“不死不殺”でしょ? もちろん知っているわ。そして、その伝承そのものが昇華したのが貴方のその剣であり、宝具であることも……」

 

「そこまで分かっているなら話は早い。この伝承は半ば呪いのような物でね。俺は、戦いにて、自分が死なない代わりに相手も殺せないようになっている」

 

辺りは憎悪の炎に包まれ、酸素も薄い。サーヴァントになったからどうにか意識はもってはいるが、生身の人間だったのなら、間違いなく死んでいるだろう。その辺りは彼女の方も分かっているのか。妙な手加減がされてある。

 

しかし、サーヴァント化したとは言え、酸素がなければ、生きてはいけない。それに俺は元々半ば半分人間のような中途半端なサーヴァントだ。しかも、それは昔の話で今の俺は既に普通の人間と半ば大差がなくなっている。それに血だって大分足りていない。そんな俺にとってはこの状況は大分しんどい。

 

死ぬことはもう暫くないとしても、意識の方はもって、後数分。ジャンヌと打ち合う羽目になれば、その時間も大幅に短くなる可能性も高い。

 

でも、その数分有れば十分だ。

 

「言葉や概念と言うものは、結構簡単にひっくり返ってね。例えばこの剣の場合はこうだ。自らにその剣先を向けるだけで、その属性は反転する」

 

「何が言いたいの?」

 

「これを使えば、伝承を裏切ることになる。俺と言う存在の否定になる。でも、最期の終わりには相応しいと思うんだ。――言っただろ、全てをひっくり返すって」

 

前の話は見知らぬ人百人が乗った船と、知り合いが十人乗った船のどちらを助けるかと言う話だった。でも今回はその、見知らぬ人が百人乗った船と、十人の知り合いの乗った船の話ではない。

 

この話はもっと大きく、難しい話だった。

 

選ぶ人間とその特定の一人を除いた全世界の人が乗っている船と、愛する人が一人だけ乗った船、そのどちらを救うのか、という話だった。

 

ジャンヌオルタはその一人の愛する人を救う。

 

では、俺はどうか?

 

きっと、俺は最後までウジウジと悩んだ挙句、その愛する一人を見殺しにして――きっと自らも死ぬ道を選ぶ。

 

 

「“不死不殺”と言うのは、自らも死なない代わりに相手も殺さないと言うことだ。つまり、逆を返せば、俺が死を選べば、相手も確実に殺せる。行為をひっくり返すということは、その結果もひっくり返る――“不死不殺”の反対、それは“必死必殺”となる」

 

そう、これがこの宝具の本当の使い方であり、たった一度の使い方……。俺が自ら必死を選べば、相手にとっての必殺になる。しかし、それは俺が自ら自分自身の存在価値である、伝承を否定することになる。“不死”を否定し“不殺”を否定する。故に、この使い方をすれば、俺はもう二度とこの宝具を使うことは出来なくなる。

 

――まぁ、全てが終わるのなら……。全てがなくなるのなら、この終わり方こそ相応しい。

 

勝利の反対が敗北ならば、引き分けの反対は引き分けになる。

 

結局俺は戦場にて一度も勝てずに、負けもしない。でも、同じ引き分けでも、自分も相手も生き残る引き分けと、自分と相手が両方死ぬ、引き分けがある。

 

今までは前者の引き分けを選び、今回は後者の引き分けを選ぶだけだ。

 

「――なっ!?」

 

ジャンヌも気付いたようだが、もう遅い。

 

この宝具は詠唱も読唱も必要としない。自らの剣先を自らに向けるだけで発動する。それが発動のキーだ。

 

剣が光を帯び始める。それと同時に使用者である俺と対象者であるジャンヌの体も淡い光を帯びる。

 

「ハァア!」

 

ジャンヌが黒剣を操り、西洋剣を俺の手から弾こうとするがもう遅い。崩壊は既に始まり、それを止める手段はない。

 

――“必死必殺”

 

たった一度、俺にしか使えない宝具は文字通り相手と自分を殺す宝具。

 

そこには因果の逆転も、過程も何もない。――ただ、死んで殺したという“結果”だけを生む。

 

「さて、ジャンヌこれで終わりだ」

 

――パリン。

 

そんな甲高いガラスが割れるような音を立てて、西洋剣の刀身がまるでその役目を終えたかのように砕け散る。

 

全てはもう終わった。俺たちを包む光は徐々に光の粒になり、空へと昇っていく。それは魔力と呼ばれる物であり、魂と呼ばれるものだ。

 

「…………」

 

ジャンヌは何も言わずに此方を見る。賢い彼女の事だ。もう、何をやっても無駄なことを悟っているだろう。

 

力が抜けたかのように、ジャンヌの手から漆黒の旗が地面へと落ちる。

 

「アナタはこれでいいの?」

 

そして、ジャンヌはよろよろと力ない動きで此方にフラフラと近づく。

 

「あぁ、これでいいよ」

 

悔しくないと言えば嘘になる。虚しくないと言えば嘘になる。泣き叫びたくないと言えば嘘になる。

 

――悔しい、虚しい、泣き叫びたい。

 

「ほ、本当に……?」

 

世界はいつだってこんなはずじゃなかったことばかりだ。

 

世界はいつだって優しくない。

 

それが世界だ。

 

でも、俺はそんな世界で生きて、そして、死ぬ。

 

世界は美しくないが故に美しく、世界は優しくないが故に面白い。

 

理不尽に囲まれ、選べるはずの選択肢が選べず、生きていてほしい人から死んでいく。

 

でも、俺はそんな世界が好きだった。

 

「あぁ……」

 

俺たちから出る光の粒はどんどんとその量を増やし、空へと昇っていく。残された時間は幾らだろうか。

 

「何もかもが無くなってしまうのよ! アナタが生きた証も何も! この時代の全ての人の記憶から、世界の記憶からなくなるのよ! 本当に貴方はそれで……」

 

力が抜けたようにこちらに倒れ込んで来るジャンヌを抱きかかえるように支える。剣は既にそこらに投げ捨ててある。あの剣にはもう何の伝承も神秘も宿っていない。すでにその役目を終えた。

 

もしかしたら、数ある並行世界の中には俺とジャンヌがともに英霊になれた世界もあるかもしれない。でも、それはこの世界ではないようだ。

 

「あぁ……。ただ、世界が元に戻るだけだ。ただ、それだけだ」

 

「そう、私は悔しい。世界が許せない。こんな世界滅ぼしてしまいたい。でも――」

 

何時の日かドンレミの村で幼い日のジャンヌに聞かれたことがある。

 

『愛の理想とは何か?』

 

何でそんな質問が出たのか、今では覚えていないが、俺が何と返したかだけは、しっかりと覚えている。

 

「――“貴方がそれでいいなら、それでいい”」

 

――“君がそれでいいならそれでいい”。

 

愛の理想はきっと、ここにあると、俺は今でも思っている。

 

「そうか、それなら良かった」

 

光はドンドンと強くなる。体から流失する粒子はその勢いを増す。既にもう下半身の感覚はない。

 

光が全てなくなった時が俺と彼女の終わりだ。特異点が取り除かれた世界は修正力で元に戻り、彼女は聖女として英霊の座に帰る。そして、俺は未来へと帰る。

 

あったものが元の場所に返るだけだ。ただ、それだけ……。

 

「私、忘れないから……」

 

腕の中のジャンヌがか細い声をだす。その声は震えていた。

 

「例え世界中の誰が忘れても、私は忘れないから……」

 

「そうか、それは良かった。キミに忘れられると俺も堪える」

 

――この世界に来たことに意味はあったのか?

 

その何時もの問いかけに今なら胸を張って答えられる。

 

――意味はあった。確かに意味はあったんだ。

 

「うん、絶対に絶対に忘れない。忘れてなるものですか、だって貴方は――」

 

――私が唯一、愛した人だから。

 

その目には涙が浮かんでいた。

 

――なんだ、結局泣き虫の癖は治らないのな。

 

どちらでもなく顔が近づく。

 

唇が触れ合うだけのキスを一つ。

 

「それじゃあ、ジャンヌ。また、会おう」

 

「ええ、また会おうね。お兄ちゃん」

 

視界が白く染まった。

 

 

オルレアン最終決戦最終戦 悪魔の軍 隊長VS 竜の魔女ジャンヌ・ダルクオルタ 両者戦闘不能により引き分け。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――目がつくとそこは夜だった。

 

目の前には街灯に照らされたコンクリート道路に明かりが灯ったビル群の光。

 

生ぬるい夜風が髪を撫でる。通り過ぎる人々が話す言葉は日本語。

 

――あぁ、戻って来たんだ。

 

その言葉が浮かんできた。右手に重さを感じると思い、見て見ればコンビニのビニール袋。中にはブラックコーヒー。

 

試しに左腕を見てみる。風穴が開いたはずの二の腕は傷一つなかった。それに体中の火傷もない。どうやら全て元通りになっているらしかった。

 

――あれは夢だったのだろうか。

 

いや、そんな筈はないと否定する。痛みも熱さも苦しさも、楽しさも、嬉しさも、あの笑顔も全て覚えている。これが夢だった筈はない。

 

「あれ、先輩? こんな所でどうしたんですか?」

 

そんな時だったふと声を掛けられた。

 

「あぁ、シロウ君か……」

 

声の方を向けば見知った顔が一人。

 

俺が今までどうしてたのか……。

 

それを一言で表すなら、言葉はきっとこれしかない。

 

「――最高の美少女に恋をしてきて、ちょっと世界を救っていた」

 

「はい? 何言っているんです? それに先輩泣いてません?」

 

『夜のラジオニュースをお伝えします。フランスにて百年戦争終結頃の物と思われる旗が発見されました。その旗には不気味な悪魔のような物の刺繍とフランス語で「隊長、我々は確かに地獄でお待ちしております」と書かれているそうです。専門家は、当時の悪魔崇拝者たちの遺品ではないかと…………』

 

どこからか流れて来たそのラジオの音声が俺の耳に入ることがついになかった。

 

こうしてここに確かにあった物語が一つ終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「問いましょう、貴方が私のマスターですか?」

 

「――言っただろう約束は守るって」

 

「――ぐすっ、うん、お兄ちゃん!」

 

――――――――Fin




Fate/stay night編に……続かないです。多分。


この終わりはどうなんでしょうね。そこはまた見る人の判断に任せます。

そして、愛する人一人とその他の全人類、貴方ならどちらを救いますか?

私は……私はどうでしょうね。

あぁ、ちなみに主人公はサーヴァントになれる器でありません。なので、番外編は本当にイフの話です。まぁ並行世界の一つくらいには主人公が英霊となる世界があるかもしれませんが……。

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