ゼロの使い魔 ご都合主義でサーヴァント! 作:AUOジョンソン
それでは、どうぞ。
「アルビオン公王、ギルバート・オルレアン陛下! ご入場!」
タバサと別れ、待合室で待つことしばらく。呼び出しを受けて案内された扉の前で、典礼官の声を人ごとのように聞いている。俺の名前も大分長くなってきたのものだ。生前座に上がる前も俺ですら忘れそうな長い名前もあったが……結局英霊になればただのギルガメッシュ。いつも呼ばれている名ならギルである。個人的にはこっちの方が呼びやすいし説明しやすくて気に入っているのだが……まぁこういうのは説明の意味もあったり色々と理由のあるものだ。この世界、この国の理なら、従うことに否やはない。それにマスターのフルネームほど長いわけじゃないしな。俺はアレを噛む自信がある。
高らかになるファンファーレを聞きながら、開いた扉から会場に入る。他国からの外交官たちや、トリステインの貴族の子女たちもいるため、叙勲式よりもかなり多い数の視線がこちらに向く。立って談笑していたもの、壁際のソファに座っていたもの、全員が静かになって、こちらを見つめていた。ふふん、なんだ、俺の美貌に見とれたか? と冗談めかしておく。
まっすぐ目の前には、アンリが座る玉座。その両隣に、俺とガリア女王、シャルロットの席が一段低いところに置かれていた。片側にはもうすでにシャルロット……のふりをしたタバサが立っており、いつもの少しだけ眠そうな瞳でこちらを見ているのが分かった。
見える範囲にジュリオの姿はないが……。招待客のリストには乗っていた。サーヴァントの気配はないためドレイクは連れてきていないようだが……霊体化していたらわからんからな。だがまぁ、独特の見定めるような……ある種鋭さと意思を感じる視線は感じている。どこか俺から見えないところでこちらを見ているのだろう。ふふん、兄貴分である俺の姿をとっくりと堪能するがよい。どけ! 俺がおにいちゃんだ!
心の中で電波を受信しつつ、俺は会場をまっすぐ歩く。玉座の横、タバサの反対に着くと、そのまま着席。そのあと、タバサも静かに座り、全員がまた談笑を始める。ここからアンリが来るまではまた待ちの時間だ。
「……ご主人様」
「ん? どうした、タバサ」
ざわめきに紛れて、タバサが俺に話しかけてくる。俺の衣装は先ほどとは打って変わって黒を基調に銀のアクセントの入ったものに変わっている。タバサは舞踏会のためのものなのだろうか、綺麗な青色のドレスに身を包んでいる。
「……ダンス、踊る? 私はご主人様と踊りたい」
「いいけど……身長的にいけるかなぁ」
普段なら腰に回す手も、タバサくらいの背丈なら背中とかになるかもしれない。マスターですら脇の下に手を通すの結構苦しかったからな。あの時も少し苦労した。……タバサそれより小柄だしなぁ……。
「……無理なら、抱っこして振り回してもいい。ご主人様に触れられるなら、正直なんでもいい」
「それはそれで目立つよ。いやだろ、外国のお姫様振り回す公王」
翌日から俺の名前にジャイアントスイングが入ることになる。祝え! ギルバート・ジャイアントスイング・オルレアン公王の誕生である。何もめでたくない。祝うな。
「トリステイン王国女王、アンリエッタ・ド・トリステイン陛下、ご入場!」
くだらないことを考えていると、再び扉が開く。おっと、起立しないとな。タバサと一緒に立ち上がると、扉の方へ視線を向ける。先導する人物が扉を開いてそのまま前を進み、アンリが会場に入る。一歩ほど下がった位置で両隣を固めているのはマリーとマザリーニだ。そこから侍女たちが続いて、ぞろぞろと入場してくる。
ある程度前へ進むと、アンリは玉座への階段を上り、そのまま会場に向けて振り返る。
「――皆様。アルビオンを救い、ガリアとの聖戦を先駆けとして戦い抜いた新たなる公王、ギルバート・オルレアン公王の誕生を祝しましょう」
す、とアンリが右手を上げると、アンリの入場から静かにしていた楽士隊が華やかな音楽を奏で始める。……俺に音楽の知識はないのでいい曲だなぁ、くらいにしか思わないのだが……こういうところで弾くことを許されている人物たちだ。皆腕もセンスも上等なものなのだろう。
アンリの言葉に合わせて一礼し、アンリが座るのに合わせて俺とタバサも座る。
「……ふぅ。毎回こういうときは肩が凝るわ。……王さま、そのお召し物も素敵です。夜の闇と星空を溶かしたよう……」
「はは、ありがとう。アンリも、白が似合うね。フリルも可愛らしくていいと思うよ」
「……ご主人様、私。私も。元となったシャルロットも、ほめてほしがってると思う」
「そうか? なら後でシャルロットに直接言うよ」
「……ちょっと嘘ついた。私も褒めてほしい」
「素直でよろしい。やっぱりタバサは髪の色もあって空のような色が似合うな。アルビオンも空の国だし、相性良いんじゃないか?」
「……ん、とっても嬉しい」
玉座のある所はほかのところよりも高いところにあり、眼下に会場が広がっているようになっているので、この場所には俺たち三人しかいないんじゃないかと錯覚するほどだ。アンリも口に手を当てて上品に笑っているし、タバサも礼を失しない程度には話に夢中になっているように見える。
「――アンリ」
「うん、そうね」
いつの間にかアンリの背後に侍っていたマリーが、アンリに耳打ちする。多分正面ではなく横から登ってきたのだろう。まぁ、マリーなら霊体化しても良いんだが。アンリはマリーの耳打ちに返事をすると、静かに立ち上がる。
そこで、曲調が変わる。ここから舞踏会本番ということなのだろう。
「では、王さま? まずは私のお相手、よろしいかしら」
「もちろん。アンリエッタ陛下、お手を」
わざとらしく跪いてアンリの差し出した手を取ると、俺はそのままアンリをエスコートして会場へ降りる。タバサの方はマリーが連れてくるのだろう。ここからは確かアンリ、タバサの順に踊り、そこからは参加している全員がある程度自由に踊る、という流れのはず。
アンリは俺より頭一個ほど低いので、するりと腰に手を回せる。そのままこちらに抱き寄せるようにして、もう片方の手をアンリと握り合う。
「……こうしてここで踊れるなんて、夢みたい」
「そうか? こんなことなら、いつでも叶えるぞ。いつでも頼れ」
「そうします」
ニコリと笑うアンリに、参加している貴族たちが男女問わずにほぅ、と息を吐いたような気がした。流石はトリステインの華と呼ばれるアンリだ。その美貌、振る舞いで皆を虜にしてしまう。当然そんなアンリと踊ってる俺にも同じくらいの視線を感じるが……まぁ、それなりにやっかみも受けてきた身だ。受け止めよう。渡す気はさらさらないが。
それに、この舞踏会は半ば戦いの場でもある。他国から来た貴族。神官たち。その中にはいろいろと抱えた者もいるだろう。特にジュリオ。この舞踏会で……もしくはその外で。何をするかわからないやつだ。ロマリアという国ごと、警戒するに値するだろう。
さらに言えば、今はマスターも別の意味で戦っている。魔法の才を伸ばすため、テファと始祖の祈祷書を前にうんうんうなっているのをよく見る。『四つの四』とやらがそろうことはジョゼフがいなくなったためなくなったはずだが、ロマリアがそれを想定していないはずがない。そのため、虚無の使い手は狙われるものと考えて、その身を守るために虚無の力を磨こうということのようだ。テファは気性のためか、マスターのように直接危害を加えるようなものではなく、記憶を操ったり補助したりするような魔法に向いているらしい。マスターはジョゼフとの対峙で得るものがあったのか、最近はずっと始祖の祈祷書を眺めていたりかと思えば上の空になってみたりと忙しそうだ。
しばらく踊ると、曲が一旦区切られる。そしてまた曲調の違うものがかかって、アンリが離れていく。次はタバサの番だ。なんでもこの曲はかなり昔にガリアのなんとかって人が作曲した曲らしく、今回のこのダンスのためだけに流されているのだとか。……こういうところにも気を使ったりしないといけないから、外交は大変だよなぁ。
「……よろしく」
「ああ。ほら、おいで」
先ほどとは違って、腰には手を回せないので、自然に背中に手が回る。右手も真横には上げられないので、少し下げ気味だ。……おや、タバサのドレス、背中が大きく開いてるデザインなんだな。ドレスの生地とは違う手触りの良さを感じる。
「……少し、くすぐったい。……でも、ご主人様の体温を感じられて、良い」
歩幅の小さいタバサに合わせて、気持ち細かく足を移動させる。……ガリアから来た貴族たちが軒並み目を潤ませてるんだけど、なんでなんだろう。……なんというか、親戚のおじさんが子供の成長を見守る的な意思を感じる……。
「そういえば」
「ん?」
「シャルロットに、イザベラを引き合わせないとな」
彼女たちにも色々いざこざはあるだろうが、ガリアの王族はシャルロットとイザベラ、あとはシャルロットの母親しかいないのだ。いつまでも離しておくのも不自然だし、まずは会って話をしないと踏ん切りもつかないだろう。
「……それはそう。……んー、同期された時までの心情なら……シャルロットが許すか許さないかは、本当に半々だと思う。……でも、直接話したい、とは思っている」
タバサが、シャルロットの想いを予測して話す。この子は深いところでシャルロットの記憶やらを継いでいるので、この子が考えていることなら、シャルロットも大体同じことを考えているだろう、と思っても間違いではないだろう。イザベラも今は少し落ち込んでいるようだし、これが終わってアルビオンに帰ったら、早速動くことにしよう。
「……まぁ何よりもまず、この場の対処から、だけどな」
ロマリアの神官連中の中で、一人周りに人だかりを作っているジュリオをちらりと見ながら、俺はそう独り言ちた。
・・・
「やぁ兄さん。本当におめでとう!」
タバサとのダンスも終え、アンリとタバサはそれぞれトリステインとガリアの取り巻きを連れて会場を回っている。俺に取り巻きの貴族はいないので、少しの侍従を連れて寂しく一人飲み物を飲んでいると、朗らかな声をかけられる。
「ああ、ジュリオか。はは、兄貴分としての面目は保てたかな?」
「いやいや、本当にすごいと思うよ。使い魔として召喚されてからの成り上がり……本当の君の今までの道のりを物語にすれば、今流行ってる演目なんか目じゃないほどの話題になるだろうに」
「うん、まぁ、自分でも中々数奇なことやってると思うよ。……ヴィットーリオは元気にしてるか?」
「ん? ……もちろん。俺がここに来れてるってことは、そういうことさ」
なるほどね、とグラスを傾ける。ん、うまいなこれ。前宝物庫に適当にワインと炭酸入れて自動人形に作ってもらったシャンパンよりもおいしい。
「それに……ガリアの姫君との仲も、良さそうだ」
「うん? ……ああ、まぁね。いつかは……一緒になることもあるだろうさ」
少し離れたところでトリステインの貴族たちと交流しているタバサたちガリアの貴族たちを見ながら、答える。……さて、ジュリオたちロマリアは、どう展開してくるのか……。ジョゼフが去り、ミョズニトニルンも消えてしまった。ジョゼフがどう虚無を学んでいたかはわからないが……指輪なんかもなくなったのだろう。彼らがどう『四つの四』を取り戻す……あるいは代わりを立て、『聖地』を奪還するために動くのか……俺はあまり自分から攻めることはないから後手に回りがちだが……せめて後の先を取れるよう準備は怠らないようにするとしよう。
しばらくジュリオとたわいのない話をした後、お互い別々の貴族たちに話しかけられ、その後は舞踏会が終わるまで、その姿を見ることはなかった。
・・・
「いやはや、疲れた!」
ぼふ、とベッドに倒れこむと、その衝撃をすべて受け止めてくれる。あー、服も脱いでないが……脱ぐのも面倒くさい。
「ちょっと、埃立つじゃない」
マスターが、寝間着になってベッドに入ってくる。ここはトリステイン学院、マスターの自室。俺の改造しまくったマスターの部屋は、他の寮の部屋の三倍ほどの広さになってしまっている。そこに置かれた天蓋付きのベッドは、俺がちょくちょく寝ているせいか、かなりのランクアップを果たしている。……マジで何なんだろうなこの体質。ベッドにだけ働く品質上昇とか、俺そんな逸話ないぞ……? ……もしかして夜の営みが多いから……とか? そんなことないと言い切れないほどには俺は俺の下半身を信頼してないからなぁ……。
「ね、あんたも寝間着になりなさいよ。……その服、ごわごわしててぎゅってしても面白くないわ」
もぞもぞ俺に抱きついてきたマスターが、ぶつぶつ文句を言うので、魔力で編んでいた服を解く。大体寝るときは全裸なので、今の俺は下着すら着用していない状況だ。
「ほわぁ……あ、あんたの身体って、ほんと、硬い……わよね」
そういって、俺の腕やら胸元やらを触るマスター。……まったく。この子には刺激が強すぎたか。まぁ裸じゃなくても二人っきりになったらすぐ求めてくるくらいにはハマってるらしいからな。こういう遠回しなお誘いを受けたからには、俺から改めてマスターを誘ってやらねば拗ねてしまうだろう。
「だろう? ……ほら、こっちも硬いぞ」
「わ、わ……え、えへへ……す、する?」
「今日は色々堅苦しいことやらやってストレスがたまってたんだ。マスター……ルイズで解消しようかな」
「ん。良いわよ。ほら、来て……?」
目を閉じたルイズにキスをして、俺はそのまま服に手をかける。……まだまだ夜は始まったばかりである。
・・・
「……何? 始祖の祈祷書に?」
何回戦かのあと。お互い裸でベッドに横たわっていると、息を整えたルイズがそういえば、と今日の出来事を話し始めた。最初はテファとともに始祖の祈祷書を読みながらうんうん言っていたらしいのだが、ジョゼフのあの加速がつかえないか、と思い立ち、強く意思を向けると、始祖の祈祷書の新たなページが光り、そこには呪文ではなく文章が乗っていたのだとか。
要約すると、途中で四人の虚無のうち誰かが途中で力尽きても、その力はまた別の素質ある者に移るからあきらめるな、というのが書かれていたんだとか。
「……じゃあ、シャルロットかイザベラが……?」
「それはないと思うのよね。私とかテファとか……虚無に目覚める人間は、使えるはずなのに失敗するとか、そもそも四系統に目覚めないはずなのよ」
「なるほど……それなら虚無の血統でまだ虚無に目覚めてない人物か……」
だが、そんなものはいないはずだ。アルビオンは皇太子が倒れてしまったし、トリステインにはドットを失敗するような貴族の話は聞いたことがない。ガリアもシャルロットとイザベラの二人とも四系統の呪文に目覚めているからそれはないし……。
「ロマリアがその素質のある者に目を付けていて、確保している……?」
「やっぱりそうなるわよね……あの教皇もジョゼフとは協力できないってはっきり言ってたし……『聖戦』の時もガリアを平定するっていうよりは、あのジョゼフ王を何とか排除したいって感じだった。現に、ジョゼフ王が倒れてからはガリアからは手を引いて、タバサの後見人になったわけだし……」
なるほど……ヴィットーリオが子供を作っていたとしてもさすがに虚無を扱えるような年齢にまではなっていないだろうし、本人もそんなことはしないだろう。聖職者が自分の子供を利用するために産ませるとか、教義上がどうなのかは知らないがヴィットーリオとしては許せないだろう。
となるとほかの虚無の血統……王族の忘れ形見的な子がいるということか……? 確かにテファもアルビオンの王族の隠し子だし……。
「そうなると……テファに兄弟がいるとかは聞いたことがあるか?」
「いないと思う。だってエルフとの子供なのよ? 一人生まれただけでも驚きなのに」
それもそうか……。それにテファの父親は一途な人間だったと聞く。そのテファの母親以外とは子供を作らなかった可能性が大きい。
「となると……ガリアか? ジョゼフがイザベラ以外の子供を作るとは考えにくいが……」
少し触れあっただけでわかる、あの人間の欠落具合。イザベラを作ったのもたぶん『王族の義務だから』というところが大きいだろう。イザベラが生まれてもういいとなったのか、自分が死んだ後のガリアなんて知ったこっちゃないから跡継ぎを作らなかったのかは不明だが……。
「ふむ……明日アルビオンに戻った時イザベラに聞いてみるよ。……しばらく一人にしてたけど、そろそろ落ち着いてきたころだろうし」
シャルロットと顔を合わせる気はあるか、と聞かなきゃならないしな。……反抗しそうだよなぁ、あの子。なんかシャルロットに変な対抗心というか劣等感を抱いてそうだったし……ジョゼフとその弟みたいに関係が歪まなきゃいいんだが……。
まぁ、その辺は仲介する俺の手腕か。シャルロットに会わせる前に、イザベラの機嫌取りを頑張るとしよう。
「はぁ……仕方ないことなんだけど、あんたはほんとにいろんな女のことばっかり考えてるわね」
俺が思案している内容を察したのか、ルイズが少しむくれた顔で文句を言ってくる。俺は膨れた頬をつつきながら笑いかけながら、口を開く。
「それでも、今一番に想ってるのはマスターであるルイズのことだよ。……ほら、少し落ち着いてきたし、もう寝るか? ……それとも、まだ夜を楽しもうか」
「ん。……いっぱいキスしなさい! 私はまだ満足してないんだからね!」
そういって目を閉じるルイズに言われた通りキスをしながら、覆いかぶさる。これでまだ満足しないなんて、俺より絶倫なんじゃないかな、この子は。……やだなぁ、こっちで絶倫女王生まれるの。絶対俺の所為になるじゃん……。
・・・
「……さすがに匂わないよな……?」
自身のにおいをすんすんと嗅いでみる。来る前に軽くだが風呂に入ったので、たぶん大丈夫だが……いやはや、まさかあそこまで盛り上がるとは思わなかった。お互いの色んなものでお互いがすんごいことになってたからな。ルイズはまだ部屋でつぶれてるだろうか。自動人形にあとは任せてきたから多分大丈夫だとは思うが……。
「ま、風呂も入ったし着替えもした。自分の匂いには鈍感になるというが……大丈夫だよな?」
隣に立つ自動人形にも嗅がせる。いや別にこれでタバサ……シャルロットとかキュルケとか、関係持ってて慣れてる子なら別にいいんだけど、いやよくはないんだけど、何とかなる。でもイザベラって慣れてなさそうだしなぁ、こういうことに。
俺がそう心配しているのをよそに、自動人形は俺に抱きつくようにして胸元で深い呼吸を繰り返していた。……何? 良い匂い? ……ならいいんだけど。
「……離れてくれないか?」
「……」
「む、ぐっ……力つっよ……!」
無言で抵抗する自動人形を何とか引きはがす。……今日一番疲れた……。……え、今なんか念話でアップロード完了って聞こえたけど!? なんでもない? 嘘つけ!
「……くっ、だがこれ以上突っ込むとさらになんか厄介なことを引き寄せる気がする……。ここは寛大な心で見逃すとしよう」
別に藪を突きたくないってわけじゃないんだからね! ……誰得だこれ。
そんなやり取りをしているうちにイザベラを泊めている部屋にたどり着いた。ノックをしてみると、だいぶ遅れて扉が開いた。自動人形が心を落ち着かせる間を取ってくれたらしい。心づかいが憎いね。俺の胸元で匂い採取してアップロードしてるやつと同型とは思えんな。
「……ごきげんよう」
あんまりご機嫌よろしくなさそうな顔で、イザベラは挨拶をしてくれた。一応少し落ち着いたという手紙をもらっていたし、イザベラのところにお邪魔するという手紙は出していたので、以前よりはまともに話せそうだ。流石に父親がよくわからない存在になって討伐されたという話をした直後はだいぶ取り乱していたが、それも今は落ち着いたのだろう。涙のあとは見えない。
「ずいぶん落ち着いたみたいだな。……なぁ、イザベラ」
「なに?」
デレる前のルイズみたいだな、この子……顔を背け、つんとした態度で短い言葉を返してくる。……言葉すくないところを見ると、シャルロットと血がつながってるんだなぁという気がしてくる。ガリア王族は必要な言葉だけしゃべるとかそういう血筋なんだろうか。
「シャルロット……タバサと話さないか?」
一応そういいだされるとは思ったのだろう。少し目を見開くだけで、驚いたようなそぶりはあまり見せなかった。
「……今更……何を話せっていうのよ。……それに、ガリアの王弟派にとっては私なんて汚点中の汚点よ。タバサと話す前に捕まって打ち首にでもなるんじゃない?」
「二人っきりで話せばいいだろ。今度俺とシャルロット結婚するし、そうなったらこっちにシャルロットを呼んで俺を仲介にして話せばいい」
「そんなこと言われたって……でも、そう。タバサが……あの子が結婚……。結婚? 結婚って言った?」
「言った。俺がアルビオン公王になったからな。ガリアとトリステインの関係強化って名目で結婚することになったんだ。政略結婚ってやつだな」
「ちょっと待って公王!? あー話についていけない! 私の情報源あんたなんだからあんたと話してない期間の話されても困る! イチから! 説明! して!」
先ほどまでの落ち着きはどこへやら、こちらにずんずん近づいてくるイザベラを再度落ち着かせて、そういえばしてなかったな、と今までの話をしておいた。
「――という言わけなんだ。だからロマリアから何かされるってなったらシャルロットが一番危ないから、イザベラはできればシャルロットの近くで手助けとかできたら一番だと思うんだけど……」
イザベラはジョゼフが王である間、北花壇騎士団というのを任されていたらしい。そこにシャルロットもいて、色々と後ろ暗い任務や死の危険性が高い任務を任されていたそうだ。つまりガリアの暗部というやつだな。その伝手なんかが残ってるなら、陰ながらシャルロットを守るのに適していると思ったんだけど……。
「それは……しろと言われればするわ。私は乱心したジョゼフ王の娘。負けた王族に拒否なんてできないんだから。……でも、シャルロットの父を殺し、母の心を乱したのは私の父なのよ。……あの子が許すとは思えないわ」
そういって、再びうつ向いてしまうイザベラ。……まぁ、そういえばそうなんだろうが……。
「でも、ジョゼフがやったことはジョゼフがやったことだ。……王族として、それの責任も取れっていうのは少し……過剰な気もする」
実際そういう時は前王の血筋を絶やすために無理やり罪を作り出しているというか擦り付けているというか、王侯政治の暗いところの発露な気がしなくもない。シャルロットなら今の気持ち次第でイザベラは許し、利用するくらいの心の整理はついてるかもしれない。……けど、確実じゃない。
「だから、やっぱり実際に会わないとな。……今日の夜、シャルロットの部屋に突撃するぞ」
「きゅ、急ね」
「善は急げと……言わんのか、こっちでは」
なんてことわざになってるんだろうな、こっちだと。
そんなことはおいておいて、俺はイザベラに出発までに準備をしておくように、と伝えて部屋を出た。……と言っても、物の準備なんて必要ない。ヴィマーナで行って帰ってくるだけだ。日帰りガリア旅行、女王の部屋編だ。時間は短いが、濃さは相当だぞ。
・・・
「突撃。お前が晩御飯」
「……ん。準備は万端。私が自分で脱ぐ? 王様が脱がせたい?」
「……ごめん、まずはイザベラの件終わらせようか」
事前に連絡は入れておいたので、シャルロットはタバサを女王の寝室に配置して、この開いている予備の寝室で待っていたようだ。部屋の外に自動人形がいるので、この部屋の中も安全だと判断したのだろう。
窓を開けて開口一番いらんことを言ってみると、シャルロットは寝間着のままベッドに横たわり肩をちらりと見せてきたので、こういう時ノリノリな子だったな、と反省しつつ脱線した話を元に戻す。
「すごい……あの……こんなこと私の立場で言うことじゃないかもしれないけど……ギル。私の目の前で私の従姉妹を脱がせようとしないで」
「え、いや脱いだのはシャルロットの判断……」
「しないで」
「あっはい」
誰だイザベラがまだ落ち込んでるとか言ったやつ。目力すごかったぞ。
「……えと。……久しぶり」
「ん。……王さまのところは過ごしやすかった?」
お互いに少しは気持ちの整理もついているのか、気まずそうではあるが何とか話をできるくらいの関係にはなれそうだ。
「……そう、ね。良くしてもらっていたわ。……よく、されすぎてたのかもね。貴方のところに来るまで、時間がかかっちゃった」
「……誰でもそう。私は、直前まで悩んでいた。であった瞬間に、魔法を打ち込もうかとか、でもジョゼフとあなたは関係ないからとか、どっちも考えていた」
「どちらでも受け入れるわ。私はそうされても仕方のないことをあなたにしてきた」
「……直接会うと、少し心が動いた。……私には、味方が必要」
「……私も、直接会うまでは……少しだけ。あなたを許せないって思ってた。……最後に何かしてやろうとも思った。……でも、でもね……私は、知っていたの」
そういって、イザベラは膝をついた。
「……私の父がやっていたことを、知っていたし、知ったの。……それでも、父だったのよ」
ついには、顔を覆ってうずくまってしまった。……シャルロットも少し困っているな。助け舟を出すか。
「イザベラ。……顔を見てやってくれ。もう、二人とシャルロットのお母さんしか、家族はいないんだから」
そういうと、イザベラははっとした顔でシャルロットを見た。シャルロットも、そんなイザベラに目線を合わせるように膝をつく。
「……私は、あなたを……イザベラを許す。……私のために、味方になってほしい」
「……わ、私は……私は、あなたに、仕えるわ。あなたは私より魔法ができるし、皆に愛されている……あなたにこそ、ガリアの王冠は相応しい」
そういって、二人はおずおずと抱き合った。……従姉妹という関係ではあるが……姉妹のように近しく思える光景であった。多分、大きなわだかまりはなくなったのだろう。お互いに脳裏に少し何かは残るかもしれないが……それでも、彼女たちは家族として再び歩み始めることを選んだのだ。
「王さま。イザベラを少し、借りてもいい?」
抱き合いながら、シャルロットが顔だけ挙げて俺にそう聞いてくる。何をしたいのか察した俺は、もちろん、と頷いた。
「だけど、だいぶ夜も遅いだろ。起きてるのか?」
「……起きててもらっている」
半ば予想したのだろうか、シャルロットは少しだけはにかんでそういった。……なるほどね。
「自動人形だけは連れて行けよ。……終わったらまた、連絡を」
その間、俺はタバサのもとにでも遊びに行くとしよう。久しぶりの家族団らんだ。本当は夕食のタイミングにでも来れればよかったのだが……。
「ありがとう」
シャルロットの感謝を聞きながら、俺は霊体化してタバサのもとへと飛んだ。
・・・
「突撃。お前が晩御飯」「……召し上がれ」「……シャルロットより上手だな。すでに据え膳とは……」「私はオリジナルと違っていつでもばっちこい。あなたのことを考えると潤滑液が一部分から止まらなくなるので愛撫無しで挿入おっけー。ばっちこーい」「……あけっぴろげすぎると逆に興奮してくるな。タバサだからか……?」「……嬉しいことを言ってくれる。三割増しで出てきちゃう」「出しすぎ注意な」
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