プロローグと落涙(一話と二話)を少し改稿しました。なんだか描写不足すぎて意味がわからないかも、と思ったので。内容自体はそこまで変わっていないです。(真夜への好感度が少し上がっているくらい)
達也は真由美に連れられて、とある部屋へと案内されていた。
部屋の中には十文字克人をはじめとした一高の幹部と呼べる人物とそして何故か森崎と五十嵐がいた。達也はこの二人がここに居るのを見た瞬間、なんとなく嫌な予感がした。
「それで、自分はどうして呼ばれたのでしょうか?」
「そうね、まずは達也君も含めてみんなが気になっていることから説明します。灰村シュウ君は無事です」
瓦礫の下から運び出されて以来、シュウが今どんな状態なのかを誰も知らなかったので、真由美の一言で幾人かの口から安堵の息が漏れる。
「少なからず怪我をしていますが命に別状はありませんが、明日に延期になっているモノリス・コードの予選また決勝トーナメントには出ることはできません」
「だから、達也君。モノリス・コードに出てもらえませんか」
「いくつかお聞きしたいことがあるのですが、いいですか?」
達也はこの面倒ごとを回避する為に思考を加速させて、言葉を紡ぎ始めた。
「ええ」
「何故、自分に白羽の矢が立ったのでしょうか?」
「達也君が最も代理に相応しいと思ったのだけれど」
「君は実技はともかく、実戦なら一年男子の中で一、二を争うからな」
一、二という言い方をしたのは達也とシュウどちらが上かを摩利が判断できなかったからだ。
純粋に魔法力に優れ、そして体もかなり鍛えている魔法師として理想的なものを兼ね備えているシュウ。
うって変わって魔法力は人並み以下だが、優れた頭脳を持ち魔法式を読み取ることができるという常識はずれなことができ、体術にも優れているて、何より底が知れない達也。
どちらが強いのだろうかと、二人のことをよく知る人物に聞いても即答はできないだろう。ただし、深雪と真夜は除く。
「モノリス・コードは実戦ではありません。肉体的な攻撃を禁止した魔法競技です」
「魔法のみでも君はずば抜けていると、私は思っているけれどね」
「そもそも自分は選手ではありません。非常事態故に交代が認められるのは分かりますが、まだ一競技にしか出ていない選手もいる筈です。それなのに自分が出たとなれば、一科生も良くは思わないと思いますが?」
達也はこの場にいる一年の一科生である森崎たちの方を見て会長に反論した。四月の一件から森崎は達也に、というより二科生に対して良い感情を持っていないのは明白だった。
だから、達也はこういう言い方をしたのなら森崎が自分に同意してくれるだろうという事を考えて敢えて挑発するような言い方をした。
「構わない」
だが、達也の思い通りにはいかなかった。
「は?」
思わず気の抜けた声が出てしまう達也。達也だけではない。真由美と十文字を除く上級生全員が何かとんでもないものを見たような顔をしていた。
「だからお前をチームに入れても構わないと思っている。いや、入ってもらいたい」
森崎の真剣な目から冗談の類で言っているのではないといつことは達也にも分かった。だが、コイツは本当に森崎なのかと疑うほど四月とは別人だと達也は思った。四月の一件から話すと一悶着ありそうという理由から達也はそれとなく森崎には近づかないようにしていた。同じ風紀委員会に所属しているにも関わらず、森崎とは一言、二言くらいしか今までに話した事がない。
なので達也は森崎の印象は四月の時点から変わっていなかった。典型的な一科生という印象から。
「俺の記憶が正しければ、お前は俺の事を嫌っていたと思っていたんだが?」
「……嫌ってはいなかったが、はじめは二科生だからって下に見ていたのは認める。でもお前の今までの功績、九校戦での活躍、心の中では本当は分かっていた。僕なんかよりお前の方がすごいんだってことは……」
森崎は何かを思い出すかのように一度目を瞑って、微笑を浮かべた。
「それに灰村も良く話していた。司波達也は凄いやつなんだって。あれが凄い、これが凄いって……聞きたくもないのにお前に関しての知識が増えていったよ。それである日ふと思ったんだ。僕より凄い灰村が凄いって言う司波達也を何故僕は認められないのかって」
達也だけでなく、部屋にいる全員が森崎の話に聞き入っていた。
「……取るに足らないプライドのせいだった。一度、下だと決めた相手が実は僕なんかより優れていたなんて認められなかった。……でももう、僕はお前を下だとは思わない。人には誰にでも長所と短所がある。たまたま僕は魔法力に優れていてお前が優れていなかっただけの話だった」
魔法力という点からしたら化け物のような力を持っているシュウだが、実は知識の方は大した事がないという事を森崎は知っている。
昼ごはんを食べる時シュウが家から持ってきている弁当を本当にだらしない顔をして食べているのを見るとこんな奴が自分より優れているのかどうかを時々疑う。
だが、人は完璧なんかじゃない。誰にも得意不得意があり、出来ないことの方が多い。だからこそ、出来ない事を無くしたいと努力をする。
でも生まれ持った魔法力は努力のしようがない。
持って生まれただけの森崎が持って生まれなかった達也を見下す。それに何の意味があるのだろうか。
本当にするべきことは、努力してきた事を認めること。対等な人間として接することだった。
シュウと接していくうちに徐々にそう感じていき、そして頼りにしていたシュウが倒れるという非常事態に陥りこれからのモノリス・コードに対する不安に押しつぶされそうになった事で漸く森崎はその事に気づく事ができた。
「僕は勝ちたい。灰村にモノリス・コードの優勝を届けたい。だから、司波達也。君の力を貸してくれ」
頭を下げて達也にお願いをする森崎。それに続き、森崎の話を聞いていた五十嵐も頭を下げる。
正直なところ達也がモノリス・コードに出ることによる明確なメリットなど一つーー深雪が喜ぶーーしかない。
しかし、達也には秘密が多い。九校戦のような目立つところで、選手でもない達也が出場する。付け加えて交代する前は二人を助けた英雄的行動をした人物であり、その代わりに入るのは誰なのかという意味でも注目されるのは明らかだろう。
注目されるだけならまだ良い。しかし何かの拍子に自分の特異性に気づかれないとは限らない。
そもそもモノリス・コードは棄権した方が良いのだ。今日の夜中に行われた新人戦ミラージ・バットで一高が一位から三位まで独占という結果で終わった。新人戦の優勝は数ポイント差のせいで惜しくも三高に及ばず準優勝に終わるが、本戦を合わせるとまだ一高の方が上だ。無理にモノリス・コードに出る必要はない。
ーー断る。
その一言を言えば、達也の仕事はもう終わりだ。新人戦で技術スタッフとして活躍してこれ以上ないほど貢献した。ここで、断っても誰も文句は言わないはずだ。
「……分かった」
しかし達也の口から否定の言葉は出なかった。感情がほとんどない達也が感情に流されるということはない。それは達也が一番知っている。妹関連の事を除けば達也は極めて合理的に行動していた。しかし何故、今自分が了承の返事をしたのか達也自身よく分かっていなかった。
受けるメリットなら多々ある。代わりに出場する事でシュウに恩を返す事ができるかもしれない。一科と仲良くする事でこれからの面倒ごとを減らせるかもしれない。深雪の機嫌が良くなる事。
だが、それよりもデメリットの方が多いと思い断ろうと思っていたはずだった。
ーーこれは何だ。
心底からそう思っていた達也だが、後で深夜に体を見てもらうのを心の中にメモをして、 今はその事は置いておく事にした。
何故なら、目に見えて森崎は喜んでいたからだ。これから、明日のモノリス・コードの作戦会議で忙しくなりそうだ、と達也は思ったがそれほど嫌な気持ちにはならなかった。
今回の話のまとめ。
森崎君は綺麗になりました。映画版ジャイアン的な!
達也君は少し取り戻しつつあるよ。なんで?
五十嵐君は空気です。前からだよ!
モノリス・コードはこのメンバーで戦います。勝てるのか?