Fate/SnowScene Einzbern   作:アテン

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田中敦子さんのご冥福をお祈りします。





第十六夜 最凶にして最優の同盟

 

 

茶の心───…それすなわち、千利休が説いた作法にして詩にもなった日本文化の一つだ。

利休の和歌である『利休道歌』にもある通り、茶とは湯を沸かし、茶を立てて神仏に供え…客を持て成し、自分もいただいて楽しむという日常生活をもとにしている教えである。

俺こと、衛宮 士郎はその事を思い出しながら、急須を傾けて湯呑の中に茶を入れた。

 

…上で、茶の心について説いていてなんだが、ウチには茶道道具なんてものはない。それでも、お湯を沸かして安い茶葉を使ったお茶しか作れなくとも、客人を持て成すくらいはできる。

人数分の湯呑を盆の中に入れて、居間へと足を向ける。

 

 

 

「お待たせ、茶が出来た……ぞ。」

 

 

 

客人とセイバーに視線を向けて述べるとすぐに、俺は絶句した。

目の前では、物珍しそうにキョロキョロと物色するイリヤと彼女とその従者の動きを警戒して、じっと見張るセイバー。

そして……フードの下に顔を隠し、胡坐をかいたまま両手を合わせたポーズを取っているイリヤのサーヴァント、バーサーカーがいた。

 

 

無邪気に視線を泳がせるイリヤと奇妙なポーズを取っているバーサーカー。

そして、彼らに対して警戒心剥き出しで一挙一動に怪しいところがないかと目を走らせるセイバー。

…ハッキリ言って、今から茶を飲んで話し合う雰囲気ではない。今までの事を思い出せば無理もない話ではあるものの、あまりにもこの空間は殺伐とし過ぎていた。

 

 

 

 

思わず顔が引き攣りそうになるが、この状況を作り出したのは他でもない自分であるため、潔く覚悟を決めるとしよう。

 

 

 

 

「どうぞ、二人とも。熱いから気を付けてくれよ。」

 

「あっ、シロウ。わっ、いいの!?ありがと!」

 

 

 

そう言いながら湯呑を渡すと、イリヤは花が咲いたかのように顔を綻ばせる。

対し、横にいる彼女の従者はポーズを取るのを一旦やめて、受け取るか否か少しばかり悩んでから、ゆっくりと俺から湯呑を受け取った。

 

 

 

「セイバーも飲むだろ?」

 

「はい。ありがとうございますシロウ。」

 

 

 

セイバーにも、湯呑を渡すと彼らから視線を外して受け取った…これで少しでも気が紛れるといいんだが…。

 

 

 

自分の分もテーブルに置いて、セイバーの横に腰を下ろす。

二人とは陣営で別れるように対面して座る形となった。

湯呑を手に持ち、一口飲む。うん、うまい。

ふぅ、と一息を付いて二人の方へ視線を戻すとそれぞれの反応が飛び移った。

 

 

イリヤは不思議そうに湯呑を眺めては、ふぅふぅと息を吹きつけながら飲み、横のバーサーカーは、熱さが気にならないのかスムーズに茶を飲んでいた。

音すら立てず、ゆっくりと緑茶を飲んでいるその様は行儀が良くかなり馴染んでいた。

普段の姿からはあまりにもかけ離れていて、少し笑いそうになった。

 

 

 

「…日本の紅茶って変わっているのね。なんか味が変だわ。入れ物もカップじゃないし。」

 

「……」

 

「えっ、これは紅茶じゃなくて緑茶?…入れ物はカップじゃなくて湯呑?…ふーん、そうなんだ。」

 

 

 

飲みながら呟いたイリヤにバーサーカーは彼女の方へ視線を向けると、会話もしていないのに意思疎通していた。

不思議な光景に俺は目を瞬いた、一体どんな方法を取ったのだろうか。

 

 

「あれは念話ですよ。マスター。」

 

「念話?それって、要するにテレパシーってことか?」

 

「ええ。魔力のパスを通じて口頭による会話を必要とせずに情報共有できる魔術です───…あれならば、第三者に情報が露呈されることはないでしょう。」

 

「へぇ、便利だな。」

 

 

 

素直に感想を述べていると、ふとセイバーの俺を見る目が呆れたものでも見るかのように変わった。

 

 

 

「…ええ、非常に便利です。是非、こちらも行いたいものです。“できるものなら”。」

 

「……」

 

 

…今、俺は皮肉を言われたのか?

自分が正規のマスターでなく、聖杯戦争についても素人であるにも関わらず嫌な顔一つしてこなかったセイバー…そんな彼女が、明らかに俺の方を見て不満を述べたぞ……バーサーカーを勝手につれてきたからか?

 

 

「…わるかったなっ、半人前でっ。」

 

 

決まりが悪くなり、思わず不貞腐れたように吐き捨てた。こっちだって、出来るものならやってるわ…!

 

 

「シロウはセイバーと念話できないの?」

 

 

 

俺たちの会話を聞いていたのか、イリヤは赤い瞳を向けて聞いてきた。

 

 

 

「ああ…俺は『強化』と『解析』…あとは『投影』の魔術しか出来ない。」

 

 

身を切るような感覚を覚えながら自分の使用できる魔術について述べる。才能の無さを露呈してるのだから、こんな気持ちになるのも無理ないだろ…。

しかも、出来ると言った割には『強化』なんて言う初歩的な魔術すらまともに成功させれない上、『投影』に至っては中身が無いガラクタばかりしか作れない。

専ら、自分が簡単に出来るのは物体の構造を把握する『解析』くらいなもので、魔術を教えてくれた切嗣からも「なんて無駄な才能なんだ」と言われる始末だ。

 

 

「『強化』と『解析』に『投影』って───…なんだか、中途半端ね。」

 

 

予想通り、落胆したような声音でイリヤが呟いた。

対して、バーサーカーは『投影』という言葉に少しだけ反応を示したものの、何も言葉を発することはなかった。

 

 

「俺に魔術を教えてくれた人が、あまり俺に教えてくれなかったんだよ。」

 

「…教えてくれた人って、シロウのお父様?」

 

「ああ、養父だけどな。その人は、あまり俺に魔術関連について関わってほしくなかったみたいで詳しく教えてくれなかったんだ。」

 

 

詳しく教えてくれなかったのは、自分に才能が無かったからではなく、危険なものだからだと信じたい。

土蔵で鍛錬する際に毎度、起こる苦しみを思い起こす…もう慣れたが、あれは普段から鍛えている自分でもキツいのだ。

思い思いに耽っていると、イリヤが悲し気に顔を伏せている事に気が付き、どくりと心臓が鳴る。

何か気に障るような事でも言っただろうかと自分の言動を思い出すが、思い当たる節が見つからない…一体どうしたというのか。

 

 

「イリヤ…?どうかしたのか?」

 

「いえ…大丈夫よ。」

 

「そんな風には見えないけど───」

 

 

 

気に障った事でも言ったかと聞く前に、こんっ。とバーサーカーが湯呑をテーブルに置き、スッと俺の前に突き出してきた。

 

 

えーっと…これは───?

 

 

 

 

「おかわり。」

 

「えっ」

 

 

 

「茶がうまい。おかわりくれ。」

 

 

 

ああ、左様ですか…。

突然の行動に面を喰らったが、どうやらお茶のおかわりが欲しかったようだ。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

地雷踏み抜き過ぎだろこの義姉弟と、内心冷や汗を搔きながらも何とか話を逸らすことに成功した。

俺ことバーサーカーは、自分が飲んでいた湯呑を士郎が持っていくのを見て息を吐いた。

全く、心臓に悪い会話を繰り広げるぜ……生前は二人の関係が深まってほしくて「もっと切嗣の事話せ」みたいな気持ちで眺めていたけど、実際に目の前でやられると困るもんだな…端的に言えば、気まずくてしょうがない。まぁ、二人の関係上、仕方ないんだろうがそれでも、見ていてこっちが冷や冷やする。

俺としては、イリヤにも士郎にも悲しんでほしくないし、二人の今の微妙だが互いに悪くない印象で保っている関係性を壊したくない。

 

二人にとって余計な世話だったかもしれないが、あのまま会話を続けるのは良くなかったハズ…いつか、二人が互いの素性を理解して話し合えるようになるまで待っておくべきだ。

思い出話を邪魔するのは気が引けるが…今は、衛宮切嗣についての話題は逸らさせてもらう。

 

 

 

 

…ってか、よくよく考えたらセイバーにとっても今は切嗣の話題って地雷じゃね?

 

 

 

 

あっぶね、マジで瀬戸際だったんじゃねえか。

 

 

 

 

 

「バーサーカー。」

 

 

 

 

 

「ひゃい」

 

 

 

 

実は、間一髪だった事実を噛みしめていたら我が主様に呼ばれた。

 

 

変な声が出たわ…なんだ今の声、気持ち悪すぎだろ。

 

 

 

「ありがと」

 

 

 

顔は見せない、されど確かに我が主様が述べた感謝の言葉は衝撃となって確実に俺のハートを打ち抜いた。

 

 

 

 

ふっ…俺のアヴァロン(理想郷)はここにもあったようだな。

 

 

 

 

あぶねぇあぶねぇ、思わず尊死するとこだったぜ───…恐ろしくエグい萌え、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。

何言ってんだろ俺。と心の中で一人ツッコミしつつ、「おう」とだけ我が主様に返しておいた。

ちなみに何のお礼かなんて、聞くつもりは毛頭なかった。

俺ってば、出来る従者ですわ。

 

 

 

 

 

 

 

そんな事をしていると、セイバーがとんでもない物でも見たかのように目を見開いてた…どしたの。

 

 

 

 

 

 

 

「バーサーカー…もしや、貴公は話せるのか…!?」

 

 

 

 

今更かよ。

隠していたつもりは───…あったけど割と適当にやってたから内心は、バレているものかと思ってた。

さっきの戦闘でも、バリバリ喋ってたし何だったらキレてたし!

 

 

何て思ったけど、仕方ないか…元々は話せない体でやってたしな。

 

 

 

さて、どうしたものか。

 

 

うん。こうしようか。

 

 

俺は徐に右手を上げて、人差し指と親指の間を少し開けたCの形を作ったポーズを取って言った。

 

 

 

「チョットダケー。」

 

「貴様っ…」

 

 

 

 

 

「すんませんでした、許してください…」

 

 

 

 

 

親の仇を見るかのように睨まれた。

めちゃくちゃこえぇ…一瞬、殺されるかと思ったぞ。

外国人風にごまかそうとしたのは、良くなかったみたい…。

 

 

「御覧の通り、問題なく話せるよ。さっき念話使ってたのは体裁と一応、敵の陣地ということで使ってた。」

 

「それは理解できます。しかし、クラススキルの【狂化】によって、理性を保つ事は出来ないハズです。如何に優れたマスターをであったとしても不可能だ。」

 

 

セイバーの言う事は間違いない。

バーサーカーとして召喚された以上、本来ならばクラススキルの弊害から逃れることは出来ない。

それこそ、令呪のような強い力が働かない限り、狂戦士が正常な精神を取り戻す事は不可能だ。

 

 

 

だが、俺の場合は例外だ。

 

 

 

それは、俺自身の特異性によるものが大きい。

なにせ、俺は正規のサーヴァントじゃない…本来、イリヤに召喚されるサーヴァントはギリシャの大英雄ヘラクレスなのだから。

女神様の特上の贔屓を使って、呼びかけに割り込んできたに過ぎない“語られる事のない英雄”だからな。

しかし、それをセイバーに説明しても理解できると思えない。

 

 

「なのに、どうして貴方はスキルの影響を受けていないのですか。」

 

 

「わからん。」

 

 

 

彼女の問いに間入れずに答えると、セイバーの表情がまた険しくなったがバーサーカーのクラスでありながら【狂化】がされてないのは、俺でもよく分かってないのは本当の事だ…むしろ、俺自身が知りたいくらいだ。

 

 

 

「悪いが、自分でも良く分かっていないんだ───…だから、こう考えることにした。」

 

 

 

間を一つ開けて、セイバーの翡翠の瞳を見て言う。

 

 

 

 

俺が狂ってない理由…強いて言うならこうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は“元から狂ってた”。」

 

 

「……」

 

 

 

しれっと答える俺をセイバーは、黙って鋭い視線を向けたままだ。

納得してはいないだろうが、可能性の一つとしては考えられると思ったのかそれ以上、追及はしてこなかった。

 

 

 

「まぁ、いいでしょう…貴方が、狂戦士とは思えない動きをしていた理由が分かっただけでも大きな収穫ですから。」

 

 

 

溜め息を吐くかのようにセイバーは言う。

…なるほど、ここまでの戦闘で俺の戦い方がバーサーカーらしくなかったと思ってたのか。

うーむ、割とガチで狂戦士っぽくふるまってたと思うんだけどなぁ…自分の演技の質について、頭を悩ませていると奥に引っ込んでいた士郎が俺の湯呑をもって帰ってきた。

 

 

「はい、バーサーカー。持ってきたぞ。」

 

「おお、サンキュー。」

 

 

普通に礼を述べて受け取ると、士郎は目を見開いた。

え、なに…?お前も?

 

 

「…ほんとに喋れるんだな。」

 

「喋れるよ…というか、ここに来るまで何度か喋って無かったか?」

 

「いやまぁ、そうなんだけど───…その前にイリヤと商店街で会った時、バーサーカーが話せること聞いてたんだ。」

 

 

 

え、まじ?

 

 

 

それは初耳だ…視線が隣にいる我が主様に向かう。

 

 

 

「言ったわ。普段は、割とお喋りだってことも話したわ。」

 

「まじかよ…」

 

 

天を仰いだ。

今までの俺の気遣いは何だったんだ…。

 

 

 

「そ、そんなことより、二人は何を話すつもりだったんだ?俺と話があるみたいだったけど。」

 

 

 

愕然とする俺を気の毒に思ったのか、士郎が話を変えようとしてきた。気遣ってくれたのは嬉しいが、“そんなこと”と言ったかね君?…恐らく自然と出た言葉なんだろうが、割とどの言葉よりも辛辣だったぜと苦笑した。

 

 

 

「あ、そうね。落ち着いたし、そろそろ本題に入りましょうか。」

 

 

 

士郎の言葉に思い出したかのように切り替える我が主様。

さては、案外ここが心地よくて忘れてたな?とニヤニヤしていると脇腹を肘で小突かれた…なんでわかったんだよ。

こほん、と可愛らしく咳払いをして真剣な表情に変わった。

 

 

 

さて…ここからはおふざけは禁止だな。

 

 

こっからは、聖杯戦争を勝ち抜くための話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「改めて───…此度の対話、応じていただいたこと感謝します。セイバーのマスター。バーサーカーのマスターとして、貴方に最大の敬意を送ります。」

 

 

 

そう言いながら立ち上がったイリヤは、両手で自分のスカートの両端を少し上げながら頭を下げた。

自然と出たその所作は、あまりにも綺麗で見惚れてしまって不覚にも暫く視線を離せずにいた。

恐らくそれは、俺だけでなく好敵手として感謝の言葉と敬意を向けられた士郎とセイバーも同様だった。

間もなくして、二人よりも先に意識が戻った俺は自分の主だけに頭を下げさせている失態に気が付き、慌てて同じく頭を下げる。

 

 

 

「そ、そんな…頭を上げてくれ!むしろ、礼を言うのはこっちだ!危ないところ助けてもらって───…」

 

 

 

遅れて復帰した士郎が狼狽えながらイリヤに頭を上げてもらうよう頼んだ。

我が主様の行動に相当驚いたようだ。

まぁ、我が主様はホムンクルスとはいえ、敷居の高い生まれだしな…貴族らしく礼を尽くしたのだろうが日本の庶民には馴染みのない動作だったから無理もない。

それにしても士郎…今、うっかり自分が死ぬところだったの漏らしたな。

 

 

 

「危ないところ…?シロウ、学び舎で何かあったのですか。」

 

「あっ……えっと…そ、それはだな…」

 

 

 

ほらぁ、セイバー睨んでるよぉ…こわ、士郎かわいそうに…。

貫くような視線を前にして、蛇に睨まれた蛙のよろしく額から汗びっしりの士郎少年。分かる、分かるぞ……美人の睨みって怖ぇよな…俺もよく、イリヤにやられているから分かるわ。

 

 

 

「リンに襲われたのよ、校舎内で戦って最後は2階の教室から吹っ飛んで落ちてきたの。」

 

「なっ───…」

 

「あッ、ちょ、イリヤ…!!」

 

 

 

イリヤ爆弾投下。

この空間には、いたいけな少年を守る法律は存在しないのだろうか。空気の読まないイリヤから発せられた事実に一層、セイバーの顔は鬼の形相と呼ぶべきか険しいものへと変わった。

 

 

 

「シ、シロウ!どうして令呪を使わなかったのですかッ!!あれほど、何かあれば呼ぶようにと───ッ!!」

 

「わ、悪かった!あの時は、そんな事まで思いつかなかったんだ!」

 

「貴方にはマスターとしての自覚が足りなすぎる!この間の戦闘も───ッ!」

 

 

 

令呪使わなかった問題で二人は徐々にヒートアップしていく。

まぁ、セイバーとしては自分の与り知らぬところで主が死んで聖杯戦争脱落する可能性もあったしな…。

騎士がどうとか、騎士道を云々振りかざす彼女にとって主の側で戦えずに終わるなんて屈辱以外何物でもないだろう。

しかし、士郎もまたついこの間まで魔術を少しかじってた一般人だったもんで心構えとか知識とか戦略も立てられるハズがないしな。

どっちの立場も気持ちも理解できる身としては、この場合は何とも言えない…が───。

 

 

 

 

「そこまでにしとけ。」

 

 

 

二人の間に横入って口論を止めると、俺の行動について二人は予想外だったのかちょっと驚いた顔をしてた。

あと、横にいた我が主様は「あ、止めるんだ。」みたいな顔でこっちを見てた。

 

 

 

 

止めるよそりゃ、話進まないもの。

 

 

 

 

「二人の言いたいことは分かるが、起きちまったもんは仕方ねぇ…今は、この時間の本当の目的について話し合おうぜ。」

 

「本当の目的…?」

 

 

 

言っている意味が分からないのか、士郎がオウム返して呟く。俺は、イリヤに目配せをして話の流れを持つ承諾を得る。

 

 

 

「セイバーのマスター。お前は、今日学校へ登校して何か気付かなかったか?」

 

 

「学校へ登校してから…?」

 

 

「魔的な力っつーのかな。いつもの違う雰囲気だった筈だ。」

 

 

「魔的な力…?」

 

 

「ほら、なんていうか、こう───…蜘蛛の巣に顔から突っ込んだような不快感っつーか…なんか、違和感とかなかったか?」

 

 

「蜘蛛の巣に顔から…?」

 

 

 

 

 

 

お前、ほんとにオウムにでもなったんか?

 

 

 

 

 

 

さっきから、俺の言葉を繰り返しすぎだろ…ここにきて知能指数だだ下がりしてんのか。いくら、魔術師として半人前以下の奴だろうと、魔術かじってんなら校門通った段階であの結界には気付けるだろ。

ほんの、ほんのちょーっぴり士郎に苛ついていると我が主様が呆れたように口を開いた。

 

 

 

「今、シロウが通っている学園にはライダーの結界が張られてるのよ。校門を通った時に気付かなかった?、明らかに雰囲気がいつもと違ったでしょ?」

 

「…もしかして、あの胸焼けするような甘ったるい感じのことか?」

 

 

 

そう、それ!それそれ!!漸く伝わったかおめぇ!!

我が主様の的確な説明によって、この半人前魔術師がやっと気付いた事に胸を撫で下ろす…あんまりにも伝わらな過ぎて軽く絶望したぞ俺。

会話を変わって数秒で躓くとは思わなんだ…二人の口論を止めた意味なさすぎるくらいの失速だったな。

 

 

俺の説明が悪かったみたいだけど、何が悪かったのかこれが分からない。

 

 

なんでイリヤのは良くて、俺のは駄目だったんだろう…。

 

 

 

切嗣は一体、こいつに何を教えてたんだ…。

いや、むしろ…ほぼ何も教えていないからこうなのか?

よくよく考えたら、原作でも遠坂がこいつの師匠になって魔術の事を教えてt───?

 

 

 

(待てよ…?、もしかして今日の出来事で士郎と遠坂が同盟結ぶルートが無くなったんじゃないか?)

 

 

 

今日の遠坂は、明らかに俺達が組んでいると思い込んでいる…そして完全に俺らの陣営を敵とみなしたハズ。

まずいなぁ…全ルートでもある士郎強化のイベントがまるまる潰れたってことだろ?

遠坂がいないんじゃ、誰が士郎に魔術のイロハを叩き込むっていうんだ…?

本格的に計画を考え直さないと、もっととんでもない事が起きそうだぞ…こりゃ。

 

 

「あの結界はライダーの宝具の一つ…魔力の規模を鑑みるに大人数を巻き込むタイプのものよ。

まだ発動していないみたいだけど───…完全に発動したら、ちょっと面倒かも。」

 

 

「…その結界が本当に発動したら、どうなっちまうんだ?」

 

 

士郎の問いにイリヤは、ほんの少し眉を寄せた。

おそらく、あの結界が真に発動した時に起こる結果を想定したからだ。

 

 

 

「わたしの見立てだけど、おそらく結界の中にいる人の生命力を奪うもの。奪った生命力を魔力に還元させて使用者が吸収するやつだと思う。」

 

「学園内にいる奴らから生命力を奪っているってのか…!?な、なんでそんなこと…」

 

「そうした方がライダーの陣営にとって都合が良いからだろうな。対した労力もなく、大量の魔力が手に入ると考えたんだろ。」

 

 

 

 

 

 

俺らからすれば、ナンセンスもいいところだ。

 

 

何せ、聖杯戦争における絶対的なルールである“神秘の秘匿”を完璧に無視してやがる。

 

 

 

この『鮮血神殿』は、学園内の全生徒と教職員がいる“日中”に起動する事を前提に仕掛けられている。

つまり、白昼堂々と自分の使い魔に人を喰わせてやろうって話なんだ…こんなの他の魔術師が黙って見ている訳が無い。

 

 

 

「生命力を奪われた奴らはどうなるんだ…!?」

 

「それは───…」

 

 

 

我が主様が目を逸らし、珍しく言い淀んでいる…彼女がそうしているのは、士郎の心情を気遣っての事だからだ。

 

 

…そこから先を、イリヤに言わせるのは酷だな。

 

 

 

 

「そんなの、死ぬに決まっているだろ。」

 

 

「なっ!?」

 

 

俺の言葉に表情が凍り付く士郎。横にいる住者のセイバーも厳しい眼差しで話を聴いていた。無理もねぇ…齎される結果を述べた俺ですら、心底胸糞悪いんだから。

 

 

 

 

「お前ら魔術師なら魔力に耐性があるから、ほとんど通用しないかもしれないが…“普通の人間”なら話は違う。空っぽになった人間は例外なく死ぬ。」

 

「…それをライダーのマスター…慎二は、やろうとしているのか?」

 

 

 

怒りで握った拳を震わせながら士郎は口を開く。

そんな大規模殺人を使用しているのが、自分の親友である事実を信じたくないって顔だった。

それに対して、俺は…ゆっくりと頷くしかできなかった。

 

 

 

「シロウ。ライダーのマスターを知っているのですか?」

 

「ああ…ライダーのマスター…慎二は俺の親友だ。そして、ついさっき、ライダーとそいつに命を狙われたんだ───…そこをバーサーカーに救われた。」

 

 

 

セイバーが、驚いたように目を見開いてこっちを見てきた…敵が自分の主の親友だった事か、はたまた俺が助けてくれた事に驚いているのか分からないが。

イリヤも同じような表情だったが、こっちの場合は、前者に対してだろうな。

 

 

 

「…神秘の秘匿ってのが、魔術師の基本なんじゃないのか?───…何で、慎二は、こんなことを…。」

 

「…手口を見た上ので主観だが───…おそらく、ライダーのマスターは、そんなのどうでもいいんだろ。自分の力を見せつけるのが目的ってところだと思うぜ?…じゃなきゃ、こんな馬鹿な真似はしないだろ。」

 

 

 

あのワカメは、魔術師としての自覚が何一つ無いというのが俺の見解だ。

己を過信し、全てを見下して、他の者を何とも思わない行動としか、俺には思えない。

 

 

 

「くそッ!!」

 

 

 

その場から、いきなり立ち上がって士郎は背を向けた…って、おい。

 

 

 

「シロウ!?何処に行く気ですかッ!?」

 

「慎二のところだ!!───…あいつッ…!!一度、ぶん殴って止めてやる!」

 

 

 

堪忍袋の緒が切れるとは、この事だろうか。

士郎は、俺らの声が聞こえないと言わんばかりに足を止めずに玄関へと向かおうとする。

このままでは、士郎はライダーのところへ行ってしまうだろう…なので。

 

 

 

「まぁ、待て。」

 

「うぐっ!?」

 

 

 

俺が、右手を向けると『黒帝礼装』の右袖が、某少年誌の主人公みたいに伸びて士郎の首元を捉えた。

少し勢いが強かったか、変な声を上げて、部屋の畳に向かって後ろ向きにびたーん!と倒れた…あれ?凄い音だったけど士郎死んでないよね?頭強く打ったとかでdead end行ってないよね?

急に不安になってきたけど、幸いながらも士郎は首筋を押さえながら起き上がった。よかったぁ…。

 

 

 

「げほっ…どっ、どういうつもりだよっ、バーサーカー!?」

 

「いや、こっちの台詞だわ。お前、さっき殺されかけておいて何しようとしてんだよ。」

 

「何って、これからあいつの家に行って慎二の奴を止めてくるんだよ!!」

 

 

 

止めてくるんだよ!!っじゃないよ、君。

どう考えても、それやったらdead endでしょ。

せっかく、助かった命を粗末にするんじゃないよ……っていっても、衛宮 士郎という男はそういう奴だったわ…と改めて思い出した。

 

 

 

「やめとけ。今、お前がいっても何も変わらねぇよ、ただ返り討ちに合うだけだ。」

 

「そんなのっ、やってみないと分かんないだろ!!このまま、あいつを野放しに出来ないッ!!」

 

「いやいや…やってみなくても、分かるって。」

 

 

 

こいつ、今日起こったこと…全部、忘れてんじゃないだろうか。

学校で遠坂に狙われた上、ワカメとライダーに殺されかけてただろ…とは言え、士郎にとっては親友がしでかそうとしているから、それを止めたいという気持ちが強いんだろう。

それは、否定しないし…こいつの良い所でもあると思う。

だが、このまま行かせたら今度こそ、間違いなく士郎は殺されてしまう。

 

 

ちらりと、自分の横にいるイリヤに目を向ける。

士郎を心配するような、不安そうな目をしていた。

…我が主様のためにも、何が何でもここは士郎に踏みとどまってもらう。

 

 

 

「今日、お前は何度死にそうな目に合った?…俺が見たところ、このままライダーの拠点に乗り込んだところで歯が立たないと思うぜ。」

 

「それは…!!そうだけど…」

 

 

 

よし、怯んだ。

 

 

畳みかけろ俺。

 

 

 

 

「第一、魔術の“ま”の字も知らないような半人前どころか三分の一人前が、敵の陣地に無策に突っ込むなんて馬鹿にもほどがあるだろ。

セイバーとのパスもまともに繋がってねぇし、そのせいで全力を出せない状態だ。しかも、これ、このままだといずれ魔力切れになってセイバー消えるぞ?」

 

 

「え…」

 

「なっ…!」

 

 

 

士郎の顔面が蒼白になった。

セイバーも、隠していた事がバレて言葉を失っている。

そして、我が主様も「え、言っちゃうんだ…」みたいな顔してた。

 

 

 

 

言うよそりゃあ、こいつらこんなにも詰んでるんだから。

 

 

 

 

 

「ほ、本当なのかセイバー…?」

 

「…ええ、今の私はマスターからの魔力を十分に供給できてない状態です。」

 

「な、なんで───…」

 

 

 

「シロウが、マスターとしても魔術師としても未熟だからよ。」

 

 

 

今まで黙っていた我が主様が、口を開いた。

 

 

 

「いくら、シロウが魔術をかじっていても、所詮は寄せ集めで選ばれただけなんだから…召喚の方法も適切じゃなかったんでしょ?」

 

 

 

その言葉に士郎は、ぐっ…と、言葉を詰まらせた。

士郎は元々、魔術について触れてはいたものの知識も技量も並以下の魔術師被れである。

それついては、こいつに問題があった訳ではなく、良い指導者がいなかった事がなによりも起因している。

考え見るに…きっと、士郎は腕の立つ魔術師から師事を貰えば、そこそこ光る気がするんだよな。

こいつの強みを理解し、長所を伸ばしてくれる指導者がいてくれれば、士郎は今以上に強くなるんだよ。

 

 

 

 

 

だからこそ、原作通りに遠坂が師匠になってくれたら良かったんだけどな…。

 

 

 

 

 

(“たられば”の話してもしょうがないか…)

 

 

 

無いものは無い。

出来なくなったことを未練がましく思っても、時間は止まっちゃくれない。

なら、この状況をとことん楽しむしかないか。

 

 

 

 

「というわけで…ここで“提案”だ。セイバーのマスター。」

 

 

 

現実を突きつけられて、すっかり肩を落としている士郎に持ち掛ける。

俺の言葉に反応して、項垂れていた顔をハッと上げる。

それを確認した後、俺はイリヤに視線を向けてアイコンタクトした。

俺からのバトンを受け取り、代弁するようにイリヤは口を開いた。

 

 

 

「シロウ、私たちと同盟を結ばない?」

 

「同盟…?」

 

「要するに…ライダーを倒すまでの間、お互い争うの一旦やめにして、協力しようって話だよ。」

 

「…俺達とイリヤ達が?」

 

 

 

こくこくと頷く。

イリヤもにっこりと笑みを浮かべてる。

すると、セイバーがしかめっ面のまま、俺ら二人に言葉をかけた。

 

 

 

「何故───…我々と同盟を結ぶ理由は何ですか。」

 

「魔術師として実力不足がさることながら、知識もない…それどころか、ちゃんとしたパスも繋がってない…正直、見てられんというか。」

 

「このままじゃ、シロウ達があっさり殺されちゃうもの。そんなの面白くないわ!余裕が持てるまで、わたしたちが守ってあげる。」

 

 

 

スーパー上から目線だな…我が主様…。

“守ってあげる”という言葉が気に入らないのか、セイバーがすっごい睨んでいる…ヤメテッヤメテッ!!今、同盟の話を持ち掛けてんだから!

肝が冷える想いだが、ここはぐっと我慢しよう。

 

 

 

「もちろん、同盟を結んでいる間は、我が主様がお前に魔術の師匠になって魔術のイロハを叩き込んでやる…それだけじゃない。俺も、同盟中は必要な限り力も貸すし、セイバーが動けない時は護衛もする。」

 

 

 

とりあえず、この場は同盟を結ぶことに集中したことで、自分で考え付く限りのメリットを提案する。

そんな中、俺の提案に意外にも我が主様が驚愕に染めた顔を向けてきた。なんだよ、いいだろ別に…弟に魔術っつーもんを教えてやれよ。

姉の威厳を見せる時だと言わんばかりに、目線を送る…すると、イリヤが何故か納得したように視線を外した。

今のやり取りで、何が分かったのかまるで分からないけど、何か納得したのならいいか。

 

 

 

「…一つ、気になることがある。」

 

 

 

今まで、俺達の話を黙って聞いていた士郎が口を開く。

 

 

 

「俺達と組むにあたっての二人のメリットは…何が目的なんだ。」

 

 

 

…意外だ。あの士郎が、駆け引きを覚えたのかこちらの真意を探ってきた。

 

ちょっと驚いた…なんだかんだ言って、士郎も成長してるんだなぁ。

 

お兄さん、ちょっとほろりしてしまったよ。

 

 

 

 

「ど、どうしたんだバーサーカー?…な、なんか、強く言いすぎたかな俺…?」

 

「気にしないで。こういうサーヴァントなの。」

 

 

 

じーんと感動して…目からはらり、ほろりと落ちそうなものを堪えている俺。

そんな俺を無視する我が主様と士郎。そんでもってはらり、ほろりしている俺を冷たい眼で見ているセイバー…うーん、世知辛ぇ。

 

 

「最優のサーヴァントの陣営と組めるんだもの。戦力の増強、それが最大のメリットよ。」

 

 

尤もらしい理由だ。

まさに、それ以外何があるんですかと言いたいくらいの模範解答…が、士郎は何故かしっくりこなそうに首を傾げた。

なんで?

 

 

 

「もしかして、信じられない?」

 

「いや、そうじゃない。けど、なんかなぁ…それだと対等じゃないだろ?、それだとこっちだけ得してるっていうか。」

 

 

 

───…ほぉ、そう来たか。

 

 

 

俺達のメリットが少ない事に納得できないらしい。

それも、“対等じゃない”という理由でだ…普通なら、何か企んでいるんじゃないかと考えて警戒する所なんだけど。

士郎は…俺らが得していないと思ってそれが気に入らないらしい。

 

 

 

…なんつーか、うん。

 

 

 

(…ほんとに、この時から変わってないんだな。)

 

 

 

脳裏に蘇るのは、あの赤い外套の弓兵の姿。

先の未来で何度も戦い(殺し合い)を繰り広げて、最後には互いの命を奪った関係だった。

けど、ほんの少しの期間中だが…共闘関係を結んだ事もあった。今までの事もあってか、「はい!今から仲間です!」みたいなテンションになれなかったんで、妥協策として俺が───…

 

 

 

 

 

 

 

“じゃあ、任務中は俺が常に前に出てやるよ。怪しいとか、信じられなくなったらいつでも矢撃ちゃいいんじゃん。それなら文句ないだろ?”

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事、言ってた。

 

 

うーん、今思えば…我ながらに極限までに捻くれてたなぁ。

あの頃は、色々と余裕が無かったし、人間不信が天井越えしてたからな。正直、組織に入ったのだって当時、バディを組んでいた相棒の女の子が、必死にスカウトしてきたから渋々入っただけだしな。

 

 

 

当たり前の事だが、俺の言葉にアイツは大変憤慨していた。

その上で、「戯け!それなら、俺も前に出る。お前の前で撃つ、それでようやくフェアだ!」などと言っていた。イメージでは正義の味方として、時には卑怯・姑息・不意打ちも厭わないリアリストだと思っていたが、意外にもそういう所は妙に義理堅い奴だった。

 

 

つい、昔の事を思い出して苦笑した。

やっぱり、同一人物なんだなって思ったわ。

こうなったら、梃子でも動かないのが衛宮 士郎という男だ。

なら、遠慮なく要望を一つ述べさせてもらおうか。

 

 

 

「…それなら、俺から一ついいか?」

 

 

 

声を上げると、みんなの視線が俺に集まった。

一つ、間を開けてから深呼吸しつつ、士郎に提案する。

 

 

 

「マスターをここに置いてくれないか?」

 

 

 

「えっ」

 

 

「え?」

 

 

「なッ」

 

 

 

 

上からイリヤ、士郎、セイバーの順のリアクション───…そんなに驚くことかね。

 

 

 

 

「えーっと…それって、イリヤをこの家に住まわせてくれってことか?」

 

「うん。」

 

 

「…なんで?」

 

「だめか?」

 

 

 

いや、ダメってことは無いけど…と、士郎が歯切れが悪そうに呟く。純粋に、俺が持ち出した条件の意味が分からないみたいだ。

 

 

 

「単純に…お前に魔術を教えるのに、一々ここまで出向くのも面倒ってのもあるが───…一番の理由は、隠れ蓑が欲しい。」

 

「隠れ蓑…?」

 

 

「自分で言うのもなんだが、俺らの陣営は強い。正直、俺もどんなサーヴァントが相手でも勝てる自信があるし、我が主様も今回の参加者の中でも最強のマスターだと思う。」

 

 

 

 

 

ホントに自分で言っても何だけど、事実だからしょうがないよネ!

イリヤ以外に自分を上げるような発言をした事が無かったから、ちょっとむず痒い…強気発言に士郎が「おぉう…」と意味分かんない声を漏らしていた。

セイバーは異を唱えたいが、今までの事があるのか苦虫でも噛みしめるが如く表情を顰めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イリヤ?

 

何故か、顔を赤くしてるよ?(すっとぼけ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「が、同時にそれは俺らの弱点でもある。強いが故に敵を作りやすい…それこそ、俺達を倒したいが為に手を組む陣営がいてもおかしくない──────…目の上のたんこぶは、みんな早めに取り除きたいだろ?」

 

 

「…なるほど。ここを潜伏先とし、拠点を敵の目から隠したいという事ですね。」

 

 

「ビンゴ。」

 

 

 

 

流石、セイバー。

こちらの戦略をちゃんと“読めてくれている”。

 

 

 

「もちろん、ライダー陣営を潰すまででいい。仮に敵が攻めてきても同盟中は俺らも加勢する。こっちは士郎に魔術師としての知識と力を付け、そっちはセイバーという戦力と仮住まいを提供する…どうだ、悪い話じゃないだろ?」

 

 

「……」

 

 

 

士郎が、顎に手を当てて考え出す。

ぶっちゃけ、内心油断できないでいる…悪い条件を出してないように見えて、お前らの拠点を囮にすると言っているんだ。

俺らと組むことで、聖杯戦争に関係のない一般人が出入りする事が多い、衛宮邸に戦火が降りかかる可能性がぐっと高くなる。

 

 

 

 

 

藤村 大河や間桐 桜(大切な人達)がいる士郎が、この事を察して断る事だっておかしくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ、どうする主人公?

 

 

思うに、どっちを選んでも間違いじゃないぜ。

 

 

 

 

 

 

 

お前が正しいと思ったことをするんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…わかった。二人と手を組む。セイバーもそれでいいか?」

 

 

「…致し方ありません。現状、我々が不利であるのは間違いないですから。」

 

 

 

 

 

 

選んで…くれたか。

やっべぇ、すっげぇ緊張したわ。

五分五分の確率だったから、同盟を蹴られてもおかしくなかった。

心の底から、安心した。いや、まじで良かった……別に、俺らは別に手を組まなくても戦えたけど、二人は俺らと手を組まなかったらほぼ詰みだ。まさか、遠坂と同盟を結ばないとは思わなかった───…俺のせいで、dead endとか嫌にも程がある。

 

 

 

 

 

難関を乗り越えた感が半端ない。

 

達成感を噛みしめたまま、俺はテーブルにゆっくりと突っ伏した。

 

 

 

 

 

 

「お、おい!どうかしたか!?何か具合でも───!!」

 

「…いや、何でもない。ただ、単純に安心しただけだ…」

 

 

「あ、安心…?」

 

「ああ、正直、断られるかなぁとも思ってたから。あぁぁ…マジで良かったわぁ…」

 

 

 

ははっ。と乾いた笑みを浮かべて言う。

俺の姿を見た士郎は、少しばかりか瞬いてから釣られるように笑みを溢した。対し、彼の横にいた従者は不思議そうな表情をしていた。

 

 

 

「…変わったサーヴァントですね、貴方は。」

 

「ん?どういうこと?」

 

 

「いえ、気を悪くしないでほしいのですが…先程の貴方は、まるで、生きている人間の様でしたので。」

 

「あー…うん。」

 

 

 

 

“生きている人間の様だった”か…。

まぁ…俺にとっても、我が主様にとっても、こいつらにとっても、色んな意味で死活問題だったしな。

自分の事だけだったらまだしも、他の人間も当て嵌まるなら軽く見る訳にはいかなかった。

死んで間もない、サーヴァント始めて早1ヶ月が経つ程度の初心者英霊だ…生前の記憶があっても、体験した全てが新鮮だ。

 

 

 

 

「まぁ、こうして茶飲んで、美味い菓子食ってるんだ───…ある意味で、俺らサーヴァントって“生きている”幽霊じゃん?…だから、大切にしたいんだよ。」

 

 

 

 

 

イリヤが、勇気を出して同盟という一手を提示し、士郎が悩み抜いて承諾した。セイバーだって、本当なら俺と組みたいとは思わないハズだ。俺だって、組むつもりはなかった。

でも、色んな事情もあったが、それ以上の何かが縁となってこの状況に繋がったのは確かだ。

 

 

 

 

 

どんな思惑があったにせよ、俺は今この状況を大切にしたいし、楽しみたい。

 

 

 

 

 

「最凶と最優の陣営が手を組むんだ。こんな面白い事無いだろ!」

 

「!…貴方は、本当に───ええ。そうですね…そのとおりです。」

 

 

 

 

その答えが意外だったのか、セイバーが俺に小さく笑みを見せた。

 

いいね。なんだか、彼女と初めて意見があったような気がする。

 

相手の真意は分からず、全てを理解できずともこの時は俺とセイバーには確かに“共感”した。

 

 

 

 

 

さっきまで戦っていた俺らが、こんな風に笑いあっている。

 

 

 

 

これだから、“人生”っつーのは楽しいんだ───…ん?何か変だな?二回死んでるから…“霊生”?“サーヴァント生”?…まぁ、いいかなんでも。

 

 

そんな事、考えてたら肩をちょんちょんと叩かれた。

角度的に我が主様が叩いたのだと、すぐに気付くとどこか不服そうにしていた…まずい、何かしたか…?!

 

 

 

「わたし抜きで話進め過ぎ。」

 

 

 

あ…左様でございますか…。

 

 

不服そうに頬を膨らませてイリヤがジト目で言ってきたので、大人しく下がる。

 

 

 

 

「こほん、では改めて…セイバーのマスター。これより、わたしイリヤスフィールとバーサーカーは貴方の同盟者となる事を誓います───…短い間だけど、よろしくねシロウ!」

 

 

「ああ、よろしく頼む二人とも。」

 

 

 

 

 

 

 

差し伸べられた我が主様の小さな手を士郎が優しく握って言う。

 

 

 

 

「っ…。」

 

 

 

 

この光景を見て、俺は胸の内から何かが込み上げてくるような感覚を覚えた。

なにせ、この光景は本来であれば絶対に有り得ないのだ。

イリヤスフィールと衛宮 士郎は、冬木の聖杯戦争中に同盟を結ぶ事は無く、お互いが血が通わない姉弟という事がどのルートでも終ぞ知らぬまま死に別れるんだ。

だから、この二人が手を組むなんて───…最高な展開じゃん…!

 

 

 

 

思わず、テンション爆アゲで叫びまわりたいのを必死に堪えて俺は立ち上がる。

 

 

 

 

「よし…我が主様よ、“後は”任せてもいいか。」

 

「ええ、“準備”はよろしくね。バーサーカー。」

 

 

 

 

俺の言いたい事を全部、理解してるイリヤと余裕の笑みで言葉を交わす。

対して、こっちの意図が分からない士郎&セイバーは、首を傾げている。

 

 

 

「ちょ、バーサーカーどこいくんだよ?」

 

「え、アインツベルン城。」

 

 

 

当たり前の事のように言うと、士郎が「城!?」って驚いてた。いつも、リアクションが大変そうだね君は。

直訳すると「家に帰ります」なんだけど、そんなに不自然か。

 

 

 

「今日から世話になるんだから、イリヤの身支度が必要だろ?、これからひとっ走りして持ってくるわ。」

 

 

外は真っ暗だけど、思いっきり走れば一時間もかかんねぇで来れるだろ。

イリヤの態度見る限りでは、既に準備万端みたいだし、着いてからも時間はかかんないと思う。

 

 

 

「じゃ、俺行ってくるわ───…」

 

「待ってくれ!バーサーカー。」

 

 

 

士郎に呼び止められた。

振り向いたら、士郎は何時になく真剣な表情でこっちを見ていた…え、なに…何かした…?

 

 

 

「なぁ…もしかしたら、俺達って何処かで会っていたりするか?、何だか、最初に見た時から初めて会ったような気がしなくて…」

 

 

 

 

 

 

 

───…。

 

 

 

 

これは、驚いた。

まさか、ここに来て初対面じゃないことに気付いたとか、今更かよとかは抜きにして“今の俺の状態”を見てそこまで行けたのか。

今、俺は自分の礼装のフードを被った上で『認識妨害』の魔術を使用していない状態だ。

故に、俺の存在を士郎とセイバーは認識できる…そう、“認識はできる”。

 

 

 

(『黒帝礼装』を被っているから、認識できても“俺の姿は分かんない”だよな。)

 

 

 

ポイントはそこだ、俺の姿が分からない。

この礼装は、時には某妖怪の少年の羽織よろしく意志があるかのように伸びたり縮んだり形を変え、時には俺をあらゆる攻撃から守る強固な鎧の役割を持っていたりと様々なのだが…。

最大の特徴は、身を包んだ者の姿を隠匿する事が出来るという点だ…二人から見た俺は、“真っ黒な何か”にしか見えないのかもしれない。

だから、この俺に既視感を覚える士郎には驚いた。一本取られたって感じだ。

 

 

 

 

…うん、マジで驚いたわ。

 

 

だって、サーヴァントにさえバレない程、強力なんだけどこれ。

 

 

まさか、士郎が気付くなんてな。

 

 

 

 

 

ふっ。と、つい笑ってしまう。

意外性ナンバーワンかよ、おもしれーなこいつ。

 

 

 

 

 

「まぁ、会ったことあるかと聞かれればイエスだな。」

 

 

「えっ───!?」

 

 

 

 

貴重な体験をさせてくれたという事で、ご褒美をやろう。

むしろ、どっかで姿を見せようと思ってたし、ここら辺でいいだろう。

目元まで被っていたフードを脱いで、士郎とセイバーの方を向いて口角を上げながら言ってやった。

 

 

 

「たい焼き美味かった。また食いに行こうぜ。」

 

 

 

踵を返して部屋から出ると、襖の向こうから「あーッ!!」と素っ頓狂な声が上がった。

本当に人を飽きさせない奴だと思う。

予想外の同盟だけど、もしかしたら存外に悪くなかったのかもしれない。

ちょっとだけ、可能性みたいなのが見えた気がする。

 

 

 

 

(しかし、本当に訳わかんない展開になって来たな。)

 

 

 

 

 

ライダー陣営によるアサシンの拉致。

 

 

遠坂と士郎の同盟フラグ崩壊および敵対。

 

 

そして、まさかの最凶と最優の陣営の同盟。

 

 

 

 

 

…正直、腹いっぱいだ。質の悪いB級映画でも眺めている気分だ。

 

夢なら醒めてくれと切に願ったが、残念ながら現実は非常である。

 

 

 

 

「なっちまったもんは、しょうがないか。」

 

 

 

嫌だ嫌だと叫んでも、現実は現実。

ここは、正直に受け入れてとことんやるしかないだろう。俺らしく、スタンスを貫いてこの物語を楽しもうじゃないか。

そうこれは…俺ことバーサーカーが織り成す、原作には全く無い…新しい展開───。

“運命の話”(Fate)でも無く、“理想を追い求めた(Unlimited Blade Works)男の話”でも無ければ、“運命に抗う少年と(Heaven's Feel)少女の話”でもない。

 

 

 

「第四の道…幻のルート…そうだなぁ、名前は───…」

 

 

 

 

 

 

【SnowScene Einzbern】

 

 

 

 

 

雪の少女(大切な人)が救われる話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 








【『認識妨害』と『黒帝礼装の隠匿』の違いについて】


『認識妨害』
対象の視点をずらし、気にならなくする。
要するにドラ〇もんの『石ころぼうし』。


『礼装の隠匿』
目には見えるが、素性が全く分からなくする。
滅茶苦茶、凄い変装みたいなイメージ。





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