UA129000ありがとございます!
活動報告にもあげましたが、最近更新がわかりやすくなるように色々話を入れ替えたので、栞を挟んでくれてた読者さんすみません……。
ついでに編集前だった第二部のお話を1回消去させてもらいました。これで更新された時にワンタップで最新話に行けるはず!です!
今回、上手くお話をまとめられたので
珍しく1万文字いかなかったです!!作者驚き。
今回もよろしくお願いします!
カルマside
いくら対先生物質の檻で囲んでいたとしても超破壊生物としての能力があれば1人では安易に逃げられてしまう状況……、それを俺等3年E組の生徒を1人も見捨てることができない、なんて殺せんせーの先生としての弱点を利用した『死神』の暗殺計画。俺等諸共まとめて殺す、なんて、殺せんせーにとっても俺等にとっても絶体絶命な状況になった……直後、俺等の前には鉄格子を挟んで2つの背中が並んでいた。
〝28人の命は地球よりも重い。それでもお前が彼等ごと殺すと言うならば、俺が止める〟
1人はE組の体育教師であり、防衛省……殺せんせーを暗殺するためにE組を暗殺者として育て、暗殺を依頼する仲介役のような立場から、日本政府の代弁者として『俺等の命を優先する』と結論を出した烏間先生。さっきまでピッチリと着ていたスーツの上着を脱いで戦闘の構えをとっている。そしてもう1人は、
〝契約は今、この場で破棄させてもらおう……私には、私の守るべきものがある〟
そんな一言で軽く『死神』との契約を目の前で破棄してみせた《銀》だった。烏間先生とは違って何処か戦闘というより、まるでこれから踊り出すような立ち振る舞いで、身長よりも明らかに大きすぎる剣を軽々と持ち上げて、真っ直ぐ『死神』に向けている。
まるで、おもちゃを扱うように軽く振り回して見せたそれは明らかに鈍い本物の金属の色を宿していて……背中越しだというのに『死神』を前にした時のような、圧倒的な闘気を、実力差を彼から感じるには十分だった。
「……何故だ?《銀》、お前は契約主の判断に従うと……!」
「──従っただろう?『生徒28人の命は地球より重い、お前が彼らごと殺すというのならば止める』という言葉に」
「……まさか、」
「初めから私の契約主は防衛省……そこのカラスマだ。お前の依頼を受けたのも政府からの依頼をこなすのに必要だったまで」
「……イリーナ、これを見てわかるだろう。プロってのはそんな気楽なもんじゃないぞ」
《銀》の突然の裏切りにも思える契約破棄に動揺する間もなく、烏間先生と《銀》の2人を相手取って無力化してから殺せんせーの暗殺に挑むことと、このまま2人を無視して計画通り暗殺を遂行することの2つを天秤にかけたのだろう……『死神』は作り物のような笑顔を崩すことなく、そして予備動作もなく、共闘関係にあるはずのビッチ先生にすら何も伝えずに扉へ向かって駆け出した。
慌ててそれを追いかけた烏間先生へ連絡を取れるようにとトランシーバーをつけるよう叫んだ殺せんせーは、2人の姿が見えなくなってすぐ、ビッチ先生と対峙している《銀》へ体ごと意識を向けた。
「《銀》さん、元々このつもりで……?」
「フフ、何もおかしな事はあるまい。契約前から先に私を殺そうとし、手を下せないと知るやここでのパートナーを持ち掛けてきたのは『
「そうだとしても防衛省との二重契約とは大胆ですね、身動きが取れなくなるとは考えなかったと?」
「そもそも犠牲を気にせずお前を殺すことだけを考えている『死神』と《
「
「あぁ、やっぱりアンタが『死神』と契約した目的は、そこのタコを殺すことじゃなかったのね」
《銀》は殺せんせーと会話しながら、大きな剣を軽く振り抜いたあと自然な動きで背に預けている。いや、軽くというか、あの華奢な体格で軽々振り回してるからそう表現するしかないけど、実際あの剣ってまぁまぁ重いはずだよね?振り回すたびに『ブォンッ』って明らか重いもん振り回す音してるもんね……?
あの小さな体格と現実のギャップに俺が若干引いてる間に、ビッチ先生はなんて事ないように首の爆弾を外して指先でクルクルと回している。……あんな簡単に外れるんだ、あれ。
「私と『死神』の前に姿を現した時点で、アンタが協力してたのは『ガキ共の情報のリーク』と『視覚的な誘導』だけだった……守秘義務があれどタコの暗殺計画に関わってるとは思えなかったもの。むしろ……『死神』が仕掛けたカラスマ対策の罠がある場所からガキ共を遠ざけて誘導してたあたり……」
「イリーナ」
「……はいはい、言わないわよ。それより『
「きぃぃぃぃーー!!」
「ビッチ先生……」
「なんでよ、仲間だと思ってたのに!」
「……怖くなったんでしょ。プロだプロだってこだわってたあんたが、ゆる〜い学校生活で殺し屋の感覚忘れかけてて……俺等を殺してアピールしたいんでしょ。『私、冷酷な殺し屋よ〜』って」
「……ッ」
信じてたのに。
仲間だと思ってたのに。
なんで。
そんなE組からの数々の投げかけはビッチ先生を責めるものでしかなかったんだろう……だんだんと俯いていく先生へ、ちょっと感じた罪悪感を笑顔の裏へ隠して俺も続いた。本トに俺等の事を好きになってくれていたのなら、これはこれできっと痛い言葉だと思うけど、煽って本音を引き出せたら万々歳かな、なんて。
予想通りそれをきっかけに顔を上げて睨みつけてきたビッチ先生は、さっきまでの『俺等なんてどうでもいい』という冷めた表情とは違って、受け入れてはいけないと押し殺していた感情を爆発させてその気持ちに困惑するような顔で、手にしていた首輪とともに言葉を叫ぶように叩きつけてきた。
「私の何が分かるのよ……考えたことなかったのよ!自分がこんなフツーの世界で過ごせるなんて!弟や妹みたいな子と楽しくしたり恋愛のことで悩んだり……そんなの、違う。私の世界はそんな眩しい世界じゃない……ッ」
そう言って息を荒らげていたビッチ先生が不意に耳へと手を当てる……長い髪で隠してインカムかなにか、そこに付けてるんだろう。聞こえなかったけど、多分死神からなにか指示が来たんだろうね、了解と一言返事を返して俺等の方へ一瞥も向けずに烏間先生達と同じ扉を通ってビッチ先生も姿を消した。
そしてここには殺せんせーを含めた俺等E組と《銀》だけになる。少しの間、《銀》は先生達が去っていった扉の方を見ていたけど何やら呆れたような、しょうがないというような……そんなため息を吐いたのに気がついて、次第に全員の視線がそちらへ集中していく。その《銀》本人は視線に気付いてるだろうにこっちを向こうともしないけど、俺等の声を聞く気はあるみたいだ。
「……なんだ。言いたいことがあるなら言えばいい」
「《銀》さん、もしかしてビッチ先生がああいう反応するって分かってたりした?」
「あんまり、ビッチ先生のことを心配してるようには見えないですもんね……」
「一応知り合いなんだろ、なんとも思わねーの?」
「ああ、……彼女はよくも悪くも生きるために、しかたなく人を殺すことを選んだ暗殺者だからな。家業として当たり前のように暗殺業を受け継いできた、初めから裏の世界にいた者達とは違う……だからこそ、まだお前達のような周りに影響され、自分の居場所に悩んでいる。それは、彼女がまだ自分の生きる場所を選べる余地があるということでもある……私が何も思わないわけじゃない、後悔する前に選べばいい……そう感じたまで」
「生きる場所……そうだよね、ビッチ先生は殺し屋だけど、
「大人の女性っていうけど、私達と5つくらいしか変わんないしねー。むしろちょいちょい子どもっぽいから、正直一緒に進路に悩めばいいのにって思ってる」
「わかるー!」
「……フフ」
1番の脅威である『死神』がこの場から離れたこと、その『死神』を強さに信頼できる烏間先生が追いかけたこともあって、命の危険にはまだ変わりないとはいえ、みんな少し話す元気が出てきたみたいだ。どうせ慌てたって拘束されて監視されてちゃなんにもできないことに変わりないし、殺せんせー含めて今すぐ脱出できないしね、それなら少しでも気を抜いて落ち着くのが優先だ。
思いがけず《銀》がビッチ先生を心配しているような言葉も聞けて、彼は言葉通り烏間先生の、突き詰めれば俺等E組の味方の立場に立ってくれているんだと実感できる。言葉の端々に気になるところは散りばめられてるけど……丁度いいし聞いてみるか。さすがにもう独り言じゃなくても答えてくれるよね?
「ねぇ、その言い方だとさ。《銀》は不老不死の1人の存在ってわけじゃなくて、代々受け継いできた家業って風にも聞こえるんだけど?」
「そう聞こえたか?……立場上明言は避けるが、例えそうだとしてもどの時代でも同時に存在する《銀》はただ1人。歴史に伝わる姿、言動、対応の仕方や技術そのものはどれも同一。もし別人だとしても、その事実に変わりはないから問題ない」
うーわ屁理屈……俺以外もそう思った奴は多いのか、数人から乾いた笑いが聞こえる。でも、この人にとってこの程度のツッコミは弱みでもなんでもないんだろうな……、ただ、この反応がなんというか……さ。
「……なんか、《銀》さん寂しそう」
ポツリ、と言ったのは誰だったか……女子の誰かだとは思うんだけど。『寂しそう』、俺からしたらその一言はしっくり来たんだけど《銀》にとっては思いもよらない言葉だったらしくて、驚いたようにピクりと小さく反応して軽く首を傾げて黙ったあと、ゆっくりと体ごと顔を俺等の方へと向けた。
「……寂しい、……私が?」
「う、うん。寂しい、とはちょっと違うかもしれないけど〜……ビッチ先生が、生きるために必要だった『殺し屋』としての日常以外に『普通』の、『安心していい』日常というものを知ってるのが羨ましい、みたいな〜……」
「……倉橋さんの言うことも分かる気がする。なんて言うか、私達の身近に自分はそういう感情をもつのはおかしいって思い込んでる子がいるしね」
「本トに。似てるって言っちゃうと失礼かもしれないけど」
「……、……似てる……」
「あー、えっと、《銀》さんが『死神』に黙って匿ってくれてる子もね、寂しいとか羨ましいとか嫉妬とかって誰かに向ける感情、向けられる感情が分からなくて、心が傷付いていてもなんて事ないように自分の中へ押し込めちゃう子なんです。顔に出てても本人が理解してないっていうか……」
「E組で言葉にしてあげてちょっとずつ理解してくれてて……そうやって自分の感情に無頓着で、感じなくてもいいって考えてそうなあたりが、なんとなくだけど似てる気がするなぁって。ね、カルマ君」
「……は?や、そこでなんで俺に振るわけ?」
「「「私達がそう思ったってことは彼氏なんだからもっと前から考えてそう」」」
「あー……まぁ、確かにサイズ感とかもだけど、俺等の前に姿を見せてからの位置取りが常に『死神』との間に入ろうとしてくれてるとことか、自分より俺等を優先しようとするあの子みたいで既視感あるなーとは思ってたけど……」
「言われてみれば、いつでも『死神』を止められる位置に立ってくれてたような……」
「でも自己犠牲精神が天元突破してる真尾とは違って、《銀》さんの場合は自分の強さに自信があるからだろ?」
「…………、フフ……ハハハッ……」
案の定問いかけられて女子達がちょっとだけ怯えた雰囲気を出しつつ答えていく。といっても怒ってるとか癪に触ったとかそんな雰囲気じゃなくて、純粋に疑問に思ったようなそれに、すぐにいつもの教室での会話のように脱線していく……で、そこでなんでアミーシャを例に出した上で俺に振るかなぁ。
確かに《銀》が契約を破らない範囲内で情報を落としてくれてた時に親しみのある雰囲気というか、アミーシャみたいな守り方をする人だなとは感じたけど、……別人でしょ明らかに。身長はともかく、あの子と比べて胸とか腰周りとか女性らしい部分も共通してないし、体格全然違うでしょ……なんて、俺が口に出したら女子から(場合によっちゃ男子からも)反感を買いそうなことを考えていたら、《銀》は少しの間黙りこくってたのに、耐えきれないように笑いだした。
「……お前達の居場所は眩しいな……、イリーナとは違い、私は物心ついた頃には……いや、それ以前からこの世界で生きていた。『普通の幸せ』?そんなものは知らない。それに、お前達の世界は狭間に生きるイリーナはともかく、私のように血に染まった暗い世界に生きる者が踏み入っていい世界じゃない。そして、逆に巻き込むのもお門違いだと私は考えている……お前達を助けるために手を貸してやろう、さて、この《銀》をどう使う?」
どこか、寂しさや諦めを感じる笑い方をする《銀》は、鉄格子の外にある監視カメラのモニターに視線を向けながら『俺等を助ける』と、そう言い切った。言い切ってはいるけど……この感じ、《銀》は自分から動いてくれる気は多分無い……殺せんせーも手助けしようとしないあたり、俺等にこの状況を乗り越えさせようとしてる。
すぐにいい案が思いつくわけがなくて、《銀》にならって監視モニターを見れば、そこには『死神』が仕掛けたのだろう、かかれば1発で命を落とすだろう罠を軽々と超えていく烏間先生が映っていた。それにしても、全く見たことの無い通路だ……一部の仕掛けはC班が知ってる素振りを見せてるけど、それ以上にヤバい道中だよ絶対……なんで飛んできたナイフを歯で受け止めてんの?手が塞がってるから?だとしても歯でって……、……いやさ、マジでうちの先生達は尽く人間やめてるよね……
もしかして、さっきビッチ先生と話してた《銀》の目的って……『死神』が殺せんせーを殺すためのサポートをすることじゃなくて、俺等を『死神』から守ること、だったりするのか。ビッチ先生も『カラスマ対策の罠から遠ざけて誘導してた』みたいなこと言ってたし。分かりにくいけど俺等を守ろうと動いてくれているこの人を見ていると、それが正解なような気がしてきた。
◆
カルマside
三村が殺せんせーの一言をヒントに監視カメラの弱点に気付き、倉橋さんの必死の訴えでトランシーバー越しに烏間先生を納得させた後、俺等はそっと行動を開始した。
「……
まずは、機械全般に強いイトナがビッチ先生の置いていった首輪爆弾の構造を見てそう簡単には爆発しないことを確認し、殺せんせーと《銀》の2人に手錠と一緒に外してもらう。その時に《銀》がアミーシャと同じクラフトを使ったのにはビビったけど……今はそれに言及しているほどの余裕はない。クラスメイトには俺と同じくらい気にしてる奴もいれば、自己解釈で納得してる奴もいる。
「次、岡島。監視カメラはどうだ?」
「……んー……強めの魚眼だな。忙しい時でも一目見れば部屋全体がチェックできる。あとは《銀》さんが言ってた絶対に壊せない檻の外に1つ……この2つに死角はないけど、お前の読み通り
次に、モニターに映るカメラの映像の歪み方から、岡島が監視カメラに使われている魚眼レンズは、モニターに出力する際に魚眼補正プログラムを組んでいないと結論付け、牢屋の中と鉄格子の外の2つのカメラの視野角から歪みが特に大きくなる部分を割り出した。そこなら監視カメラごしであれば『死神』の目を誤魔化せる可能性が高い。
「よし、その見えづらいところに上手く紛れるために……菅谷、できる?」
「おう、任せとけ。マジ使えるよ、超体育着の暗殺迷彩……壁の色そっくりに変えられるぜ」
その場所で違和感なく紛れるために菅谷が超体育着の暗殺迷彩として、壁の色をクラスメイト全員分コーティングしていった……菅谷のコーティングが終わるのを待っている間、待機組で3人1組や乗る順番を決めてたんだけど。
「……で、あとは
「そうだぜ。あ、下が嫌とか言うなよ?お前もE組の中じゃ細いくせにガタイはいいんだから1番下の土台に決まってんだし」
「うん、それは別にいいんだけど……、体格的に下になれない渚君がヘコむのはともかくとして、なんで1番上に乗る奥田さんがしょげてんのかがよく分かんなくて……」
「あー確かに。おい奥田、確かに1番上はバランス取るのが怖いかもしれないが逆に誰も乗せないから支えなくていいだろ、何しょげる必要あんだよ。男なのに1番上は絶対やだって抗議しまくって、妥協して2番目になった渚がかすむだろ」
「そこで僕を引き合いに出さないでくれないかなぁ……」
「だ、だって……渚君ごしとはいえカルマ君の上に乗せてもらう女子が私っていうのが、よくみなさんが仰ってる、か、解釈違い?というヤツとしか思えなくて……あ、茅野さん私と交代しません?私、アミサちゃんに申し訳ないんです……!」
「いや僕ごしなんだからそこ気にする必要なくない?!」
「それに私が乗っても結局は奥田さんの中では解釈違いのままじゃないかな?アミサちゃんじゃないわけだし……」
「いつもの3人組じゃないことに違和感あるなら意味ないよね」
「で、でも、まだ私よりは茅野さんって感じがしませんか!?」
「う、うーん……」
「奥田も誰かの変な影響受けてる上に絶妙にズレてるんだよなぁ……プリン1つで大暴走かます茅野に神崎狂いの杉野、大和撫子と思いきやゲームの達人な神崎に小動物かと思いきや強敵を倒す意外性のある渚と才色兼備ぶっ飛びバカップルだろ?……4班ってそんな奴ばっか集まってるのか?」
「ちょっと色々ツッこませてほしい」
「右に同じく!心外だ!」
「あはは……実際みんな濃いから言い返しにくいよね」
「もう1番上は女子なんだから勝手に決めてよ……」
き、緊張感ねぇー……とりあえず体重重くてがたいのいい奴を9人出して、そこから順に3人組を作ったことで、俺を1番下にして上に乗るのは渚君、その上に奥田さんって組ができたまではよかった。でも何故か奥田さんが謎に遠慮してて今でも茅野ちゃんと交代しようと奮闘してるし、4班を変な認識してる奴はいるし、渚君もまた落ち込んでるし……もうぐっちゃぐちゃだ。いつも通りの俺等だと思えばそうなんだけどさ。殺せんせーは殺せんせーでニマニマ見てるし……嬉しそうだね、みんなあんたの暗殺に巻き込まれてるんだけど?
……そういえば《銀》は何してるのかと思って視線をめぐらせてみれば、3人1組決めをしてる俺等の中心に立って、手の中でカチャカチャと小さな音を立てて作業している音が聞こえる……夏休みにも目にした太極陰陽図のカバーをつけたエニグマの蓋を開け、クオーツを入れ替えているようだった。この作戦を実行したらE組は全員『死神』か烏間先生に動きがあるまで肩車のままで待機することになるから、継続体力回復アーツをかけてくれるって言ってたし、そのためのアーツを用意してるんだろう。
「(……どうでもいいことなんだけど、こう近くで見ると《銀》って本トに小柄だな……)」
牢屋の外で俺等の前に立って、守ろうとしてくれた背中は大きいように見えてたけど、実際目の前にしてみると俺よりかなり小さい。見下ろせる位置に頭があるし、なんならアミーシャくらい……いや、肩の位置より少し上くらいには頭があるし、彼女より少し大きいか。大ぶりのフードも被っているせいでイマイチ分かりづらいな。
女子達が『《銀》がアミーシャに似てる』なんて言い出すから、つい共通点を探してしまう。小柄な体格、俺等を優先し守ろうとする行動、技名や詠唱が共通するクラフト……ま、それくらいなら似てるといっても他人の空似って要素程度だよね。
そう、それで《銀》から目を離そうとした時だった。
「ッ!」
「あ、と、す、すみません《銀》さん!」
「……いや、邪魔な位置で作業をしていた私も悪い。気にするな」
「……、……!」
移動しようとしたらしい木村が《銀》にぶつかって《銀》が手にしていた茶色のクオーツが1つ手を離れ、地面を転がって俺の足に当たって止まった。ぶつかった瞬間を目撃してしまって、何やってんだか……なんて、転がってきたクオーツを拾いながらそちらを見た、その一瞬で目に入ってきたのは《銀》の戦術
……別に、それだけなら気にしなくてもいいことなんだ。《銀》なんて、いかにも幻の存在って感じの人なんだから幻属性の縛りがあってもおかしくないし、使いたいアーツを組む上で偶然その配置になってしまっただけなんだろう。だけど……不自然に離れた位置に銀色が2つ、見えた気がして。
〝へぇ、実際はこうなってるんだ……幻固定のところだけ色が違うんだね〟
〝うん、私の場合はこことここが幻固定だから、残りの所で他の属性値を稼いでるイメージかな〟
その位置関係が、アミーシャの戦術導力器の幻縛りの位置と同じだったから、内心動揺してしまった。……まさか、ね。まさかそんな……
「……赤羽業、お前の近くにクオーツが落ちてないか?」
「…………………………」
「……赤羽業、聞いているか?」
「……ッ!ッあ、……はい、これでしょ」
「……?感謝する」
平然と俺に話しかけてきた《銀》に、考え込んでいた俺は一瞬反応が遅れたけど、握りしめていた茶色のクオーツを手渡す。俺の手からクオーツを受けとり、不思議そうに離れていった《銀》の後ろ姿を見ていてもう1つ疑問に思った。
「(夏休みに、リーシャさんが使ってる導力器はエニグマじゃない、みたいなこと言ってなかったっけ?)」
確かアミーシャも使ってる導力器を開発した会社が違って驚いてたような。『死神』や殺せんせー、ロヴロさん達の言葉から推測するに、《銀》が日本入りしたのは殺せんせーが現れた今年であって……それまではゼムリア大陸で活動してたはず。めちゃくちゃ高価とは言ってたけど《銀》程有名な暗殺者であれば容易く入手できてもおかしくない……なのに、型落ちの導力器を使っているのは……
「(……いや、考えるのはやめよう。導力器が変わるごとにアーツ構成とか使えるクオーツが変わるから覚え直すのが大変ってアミーシャも言ってたし、《銀》だって使い慣れた導力器を使ってるだけなんだよ、きっと)」
……そう、だから……、勝手に俺が既視感を感じてただけだ。
そうだ、そうに決まってる……彼女が、……アミーシャが、《銀》だなんて……そんなことあるわけ、ないじゃないか。
ループした元のお話はこちら
・https://syosetu.org/novel/138458/84.html
・https://syosetu.org/novel/138458/85.html
オリ主の導力器の回路をカルマが見たお話はこちら
https://syosetu.org/novel/138458/45.html
オリ主とリーシャの導力器についての会話はこちら
https://syosetu.org/novel/138458/64.html
「あれ、『死神』にやられたとこの痛みがない……」
「気絶させられた時の?」
「そう。《銀》がかけてくれたアーツって継続的に消耗してる体力を戻すだけじゃねーの?」
「何を言ってる、継続回復アーツだろう?傷はできたそばから治っていくぞ」
「なんでイトナが答えるんだよ……」
「シロに連れてかれた時、アミサにかけてもらったからな。明らかに対触手BB弾が当たったはずの場所が跡形もなく元に戻ってビビった」
「あー……そっか、体力回復=傷を治すなわけね」
「経験者は語る……」
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キーアが【断章】で言っていた通り、起きたことは大きく変化しないので、起きたことそのものは同じ場面で流れも全く同じですが、登場人物達の会話や思考は元のお話と違うようになってるはずです。
(あと、全く同じにしてもつまらないので、色々組みかえてたり切り貼りしてたりしてます)
その流れで、女子の一言からカルマが《銀》=オリ主という構図に気付きかけてます。が、確証に至る物証が無いのでそこ止まり、無理やり納得して終わりです。
この小説のカルマのように信じるものを信じるけど、素直というより疑ってから向き合うタイプは確証がもてないと何も言わないで終わると思ってるんですが、みなさんはどう思いますか?(カルマのキャラ解釈が違ったらすみません。ついでに作者的にカルマは、からかうのは好きだけどからかわれるのは慣れてないタイプだと思ってます。グイグイ来られると引いちゃうというか)
では、次回もまた執筆していくのでよろしくお願いします!