何故か英雄になったけど俺は闇堕ちしない   作:月光法師

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お久しぶりです!(約五ヶ月振り)

前回の前書きは申し訳ないです。ヒロアカのオマージュです。挑発や煽りとして受け取ってしまっても納得の書き方になっていました(読み直した)
勘違いさせてしまい、またヒロアカファンの皆さんにも申し訳ありません。

もう一つ。
書き方が違うという感想を頂きましたが、これに関しては自覚しております。というのも、三人称で書く時は淡々と、一人称で書く時はとにかく下手。これらをどうすれば改善でき、より面白い文章が書けるのか試行錯誤しているからです。つまり趣味を兼ねた練習作品です。なのでそこに関してはご容赦ください。

あと感想くれて嬉しいです。未だに感想来るの涙でますよ。間隔長すぎてホント申し訳ないです。
あとあと、ヒロアカのオリ主ものを書いて欲しいとメッセが来ました。
ありがとナス! 仮面ライダーかドラゴンボールの気の個性だと嬉しいらしいです。書くならン・ダグバ・ゼバ氏をモデルにします(未完結作を見ながら)

そういえば最近シロちゃんが弄ばれてて楽しいです(唐突な宣伝)





向かう先は

 ボロスは敗北を確信した。

 

 目の前の恐ろしく強い男の戦士。遠方から様子見に徹している船を輪切りにした戦士。そして部下の、それも幹部を打ち破った戦士たち。

 

 目の前の男だけでも勝負は決まったようなものだというのに、更に後続が控えている現状を楽観視するほどボロスは鈍い頭をしていない。

 

 ならば、と。彼は全力を出すことにした。目の前の男には、全力をぶつけたくなった。

 

 「───メテオリックバースト」

 

 全力の踏み込みからの拳打。それだけで前方を諸共に吹き飛ばし。

 全力の蹴り上げはサイタマを月まで吹き飛ばす。

 冗談のような威力。しかしそれを受けたのも冗談のような男、サイタマ。

 

 サイタマはなに食わぬ顔で地球へと戻ってきた。サイタマの表情は変わらない。

 攻撃を受けて吹き飛ばされようが、大地に埋まってしまおうが、彼は平然と起き上がって一発のパンチを放つのだ。彼にとっては大して力を込めていない普通のパンチを。

 一発。胴体に穴が開く。

 その時点でサイタマは認識した。これまでの怪人より()()()()()()強そうだ、と。

 

 「連続普通のパンチ」

 

 恐ろしい威力の拳打が十数発。

 ボロスの体が弾け飛んだ。比喩でもなんでもない。文字通りに五体四散。いやそれ以上に粉々に砕かれてバラバラになったのだ。

 しかしそれはすでにボロスにとって既視だった。焦りなどなく、瞬時にバラバラになった体を繋ぎ止め傷を癒す。恐ろしいほどの超回復能力だ。

 

 だがボロスは限界だった。傷をいかに癒そうが、失った体力は戻らない。何より現在の状態、メテオリックバーストは無呼吸運動に等しい負担の大きな技。

 彼は次の一撃に全てを賭けることに決めた。己の全身全霊を込めた最強の技。

 ボロスを中心に稲妻が轟く。大地が泣き叫んでいるかの如く鳴動する。サイタマも拳を握り締め、ボロスを見据えた。決着の時だ。誰もが予感する。

 

 「───崩星咆哮砲!!」

 

 最後の攻勢。

 命を賭した、覚悟の一撃。

 

 ──だが、その攻撃が放たれることはなかった。

 

 「貴様……は……」

 

 気付けば銀髪の男が目の前にいた。手に持った武器を振り抜いた状態で。

 全てを賭した最後の一撃。それを邪魔するような不粋を働いた男。本来ならばそのようなことをする男ではないのだが……。

 銀髪の男、セフィロスは二人の攻撃によって、下手をすれば国が滅びると察してしまった。故の不粋な横槍。

 

 だがどんな理由があろうと関係ない。ボロスは無念の最中で意識を失った。

 最後に放たれる筈であったエネルギーはボロスの意識が無くなると同時、霧散するように空へと融けて消えていった。

 

 「悪いな、サイタマ。今のは流石に見過ごせなかった」

 

 振り返りセフィロスが言った。だがサイタマは余り気にしていないようだった。鈍い彼もあれだけ戦えば彼我の実力差は感じ取れたようだった。

 

 「そっか」

 

 握り締めた拳を解いてセフィロスの側まで歩み寄ると、サイタマは珍しく他人を気にするような疑問を放った。

 

 「そいつ、どうすんだ?」

 「捕虜扱いだな。なに、怪人ではないし悪いようにはしないさ」

 「え、そうなの?」

 「怪人ではなく宇宙人だろう」

 

 へぇー。なんて、気のない返事をするサイタマ。安定の平常運転であった。

 

 「なによ。そいつ生かしとくわけ?」

 

 タツマキだ。

 どうやら他の面々も集まってきたようで、近くではA級以下のヒーローたちも集まっており、船内にいた宇宙人たちを捕縛して回っている。どうやら近くに待機していたが、戦闘が激しすぎて近付けなかったらしい。

 

 セフィロスはヒーローたちに説明をすることにした。彼自身が知る怪人についての知識。とあるたこ焼き屋で知り合った学者の男からの受け売りを。

 怪人とは何か。その定義。怪人とそれ以外を隔てる基準。怪人以外の生物の存在。そして何より……怪人の発生条件と、その大元となる生物たち。

 

 そんな彼等を、いや、その中心にいるセフィロスを観察するが如く送られる視線があった。

 皆がセフィロスに視線を向けている中、それに紛れ己を影に潜ませる存在。

 

 敵意なし。害意なし。悪意なし。

 

 敵対者へ送られるような感情は全く感じられなかった。

 むしろそこには親愛があった。敬愛があった。情愛があった。

 

 故に誰も気付かなかった。

 仲間を見る視線を、敵対者と思うのは難しいから。

 近しい存在であったなら、感情、思想、言動といった要素から何かを読み取れたかもしれない。

 例え仲間を見るような視線であったとしても、そこに隠れ潜む過激思想や言動の矛盾に気付けたかもしれない。

 心理学の観点から見ても、人とは自分自身を客観視することが困難だから。

 本人は隠せているつもりでも、周囲から見れば分かり易い程に違和感を覚える。そんな事は往々にして起こり得るから。

 

 視線の主はそういった様々な要素を、細心の注意を払って考え抜いていた。

 リスクとリターン。メリットとデメリット。それらを生物学や心理学の観点から測量し、己の目的を達成するための手札を作り上げた。

 

 ────瞳だ。

 

 手札の一つ。

 遠隔操作を可能とし、視覚と聴覚、更に言語機能すら同調する、一つ目の肉人形。

 烏程の大きさであるが、球体に大きな一つ目と翅を着けた形態は怪生物と言って過言なし。

 

 怪生物はセフィロスを見ていた。サイタマを見ていた。S級ヒーロー達を見ていた。集ったA級ヒーロー達を見ていた。

 

 戦いが始まってからずっと(・・・)

 

 更に言えば、視線で気付くことは出来ない。武芸に秀でた達人たちは、視線の中に含まれる意を感じとるものだから。彼女自身はずっと遠くにいる。監視カメラを通しているようなもの。

 

 生体反応を検知することは出来ない。怪生物は生物にあらず、肉人形でしかないから。ラジコンを少し便利に使っているようなもの。

 

 彼女の本体がもう少し近ければ、エスパーであるタツマキは気付けたかもしれない。同類だから。

 

 けれど言っても詮無きこと。

 

 この場において、目的達成のために条件設定を事細かく決め、それを実行して見せた彼女が情報戦において上手だっただけのこと。

 

 ──サイボーグ達の各種検知機能無効。クリア。

 

 ──達人たちの気配察知無効。クリア。

 

 ──ヒーロー協会により設置された監視カメラの破壊確認。クリア。

 

 ──救援要請により招集のかかったヒーローたちの経路予測。クリア。

 

 ──後にメタルナイトの来訪を予測。撤退までの時間制限を設定。クリア。

 

「面白い。宇宙人か。あのエネルギーをオロチに取り込むことが出来れば、更なる進化が見込めそうだな。だが……どうもオロチでは勝てそうにないか」

 

 怪生物の操縦士は己が寝床で一人謡う。

 

 女だった。

 一人の美女と形容しても良い風貌の、眼鏡を掛け、波打つ長髪を遊ばせる女。

 

 彼女こそが次の動乱を呼び寄せるだろう。引き起こすだろう。

 だがそれは……未だ誰も知ることはない。

 

「都合良くS級ヒーローも戦ってくれるとは、思わぬ幸運。戦力分析も捗る」

 

 それに、と。

 彼女は一人のヒーローへ目を向けた。

 本当ならセフィロス以外など見たくもないが、それでも見なければならない。

 

 己の目指すモノは、盲目では達成困難な事柄なのだから。

 

 恋は盲目とはよく言ったものだ。

 思わず嘲笑が洩れる。

 本当に手に入れたいと思ったとき、真に本気だと魂に誓えるならば、盲目になどなろう筈もないのに(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 女はそう考え、しかし共感もまた抱く。

 盲目になりたいと、彼女自身が思うのだ。

 好いた男のことだけ考えて生きていけたら、それはなんと甘美な人生であろうか。

 

 だがしかし、そうなる訳にはいかない。

 

 禿頭のパッとしないヒーローを見据えて、意識を戻す。

 黄色いコスチュームに、赤い手袋と白いマント。

 宇宙人との戦闘時には真剣さが垣間見えたが、今となってはその面影もない。

 

 だが彼女は見ていた。感じていた。

 そこに秘められたエネルギーを。

 

 タツマキのように戦闘に特化した超能力の使い方ではなく、研究者としての使い方も試行錯誤を巡らせていたから。

 彼女には分かった。理解が及んだ。

 

 ──あのハゲは私の理解の範疇を超えている。

 

「……戦力の見直しが必要だな。彼方も、そして此方側も」

 

 最後にセフィロスを視界に収め、しかし湧き上がる感情を胸の奥に仕舞い込んだ。

 彼女は操縦する怪生物を、抉れた地面の中へ潜り込ませる。

 埋め立てることはあっても、無駄に掘り起こしはしないだろう。

 

 そして誰も居なくなった闇の中。

 夜の帳が下りてから、一対の翼が瞬く星を目指すように空を泳ぐのだった。

 

 その羽ばたきは、いずれヒーロー達へと向かうだろう。

 多くの破壊と混乱を携えて。

 血潮を撒き散らすために這い寄って来る。

 

 そして来たる翼を、彼等は甘受する以外にないのだろう。

 

 怒りも、悲しみも、怯えも飲み込んで。

 立ち向かう事しか許されない。

 

 彼等は……ヒーローであるのだから。

 

 

 







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