皆は逃げようとするシーザーに注目していたけれど、俺は違う。
ベビー5とバッファローが空から海へ落ちていく。
それは、オリジナルたるロシナンテが覚えているあの3人の子供時代の記憶からして考えられないもの。
喧嘩をしていることもあった。ベビー5が騙されてアイス奢らされてと少しだけ歪な仲の良さでもあった。
それでもちゃんと一緒にいた。兄妹のような関係だった。
あの3人が子供だった頃はこんな殺し合いのようなことが起きるだなんて思わなかったんだ。
「……ああ」
もう動いたからには止まらない。
「いいか! こっから先は俺ら海兵の領域だ! テメエらは入ってくんなよ!」
「貴方たち! みっともない真似はやめなさい!」
「何言ってんだよたしぎちゃん! 海賊と海兵は馴れ合いしちゃ駄目だろうが!」
「そうだぜ! リードのクソガキがまた海賊に憧れちまう!!」
「なにいってんだ! おれはかいぞくにあこがれてねぇぞ! ちゃんとかいぞくになるんだ!」
「ほら見ろもう海賊に洗脳されてやがる!」
「リードこっちこい! 肉やるから!」
「ほんとかー!」
「肉くれんのか!?」
「テメエにはやらねーよ麦わら!」
涎を垂らしたリードがトコトコと歩いて麦わら海賊団より厳つい顔をした海兵が持つ肉につられる。
ルフィもリードのように近づこうとしたが止められて、腕を伸ばして肉をつかみ、リードがそれを見て「おれのにくだぞー!」と叫びながらルフィから肉を奪おうとしているのが見えた。
「ちょろすぎじゃないあの子。本当にルフィみたい」
「なぁナミ。あいつの見た目ってさぁ────」
「ええ、そうね。聞かなきゃいけないことがたくさんあるわ」
ローに視線を向けた麦わらのオレンジ色の髪の女と、長鼻の男。もちろん彼ら以外にもリードの見た目とその中身に疑念を感じているようだ。
ちらりと俺の隣にいるローの様子を見るが、俺達の視線に気づいている筈なのに何も言わず、海を眺めていた。
ドフラミンゴとの戦いについて考えているのか。
(何でこんなことになったんだろう)
ローには幸せに生きてほしかった。復讐なんて望んじゃいない。
────オリジナルが子供の頃のローを連れていかなければこんなことにはならなかったのか。
復讐なんて思い付かないように、ローをドフラミンゴの所に置いて……。
いや、あの時ドジをしていろいろあってローを無理やり連れ出していたけれど、そうしなければローは死んでいたかもしれない。
ドフラミンゴに育てられて忠実な部下になり、ベビー5やバッファローのようになっていたかもしれない。
いろんな可能性を考えては、ドフラミンゴと対立しない未来を夢見るのは、俺の弱さが原因か。
こんな風に考えても意味がないのは分かってる。
立ち上がった俺に、ようやくローが反応した。
「待て、どこに行くつもりだ」
「ベビー5たちのとこ」
縛り付けられているベビー5達に近づいた俺を見て、彼女らは怪訝そうな顔をする。
「何よロナン。助けてくれるの?」
「ローの顔を見ろ。んなわけねーだすやん……」
バッファローが俺の後ろを見て嫌そうな声を出したので、ローがついてきていることを悟る。
ローが俺に過保護なのはロシナンテのクローンなせいか。
クローンのせいで、ローが怪我をするのだけは嫌だ。
「ドフラミンゴが言ってたけど、俺が死んだらまた次の『
「……若様がそう仰ったのならね」
「オメーが裏切ったんなら、別のオメーを作るのは当然だろ」
「なら、クローンを作るための技術はあいつの手元にあるよな」
クローンなんてこれ以上必要はない。俺ら以外に生まれていいのか分からないモノは潰す必要がある。
爆発した研究所から技術を持ち出したとは考えられない。G-5に捕まっていた時に俺らの身体を念入りに調べあげていたから、そこから技術は盗まれたかも。
考えられる最悪はあるけれど、ドフラミンゴが悪用するよりマシな筈だ。
リードは大丈夫。あのガープ中将もいるし、別人格の兄ちゃんがいればリードは守られるはずだ。
「……おいロナン、何を考えてる?」
そういえば、初めて俺の名前を呼んだなとローの方を振り返って笑った。
にっこり笑ってやったのに、何故かローは目を見開いて変な顔をする。
「俺もやりたいことをやるだけだよ」
ローより先にドフラミンゴを止めなければならない。出来るかは分からないけれど、ローに背負わせてはならない業だ。
俺がやらなきゃいけないんだ。
ドフラミンゴがクローンの技術を持っているならそれらを全部ぶっ壊してやる。
クローンの身体を調べて技術を盗まれたなら、それらも含めて壊せばいい。
それで────クローンたる俺が死ねば、二度とロシナンテは生まれない。
そう信じて前へ向くと決めた。それだけだ。
変な風に考えてドジってやらかして斜め上の方向に向いたロナンは気づかない。
それがローやリードにとってのブチギレ案件だということを。