私が希望ヶ峰学園から出られないのはモノクマが悪い!   作:みかづき

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イマワノキワ 石丸清多夏

 

「ぜ、絶対に死んでるし…あ、貴方が悪いんですぞ、石丸清多夏殿!」

 

暗い視界の中で山田君の怯えた声と逃げるように遠ざかっていく足音が聞こえた。

兄弟が…アルターエゴが消えてから僕は冷静さを失った。

ありとあらゆる場所を探し、クラスメイト全員に疑いをかけ、特に山田君と何度も衝突した。

山田君も僕を疑い、お互いの感情は憎悪に近かった。

もはや僕は正気を失っていたのだろう。

僕は…壊れてしまったのだ。

 

石田になった時から…いいや、あの時から。

 

そんな時にセレス君に物理準備室に呼び出された。

兄弟がどこにあるか知っている、とそう言われて

僕は何の疑いもなしに彼女の誘いに乗ってしまった。

ここがどこで、今何が起こっているのか、それすらも忘れて。

 

怒声を上げ問い詰める僕。

微笑と憐憫を浮かべるセレス君。

奇声に気づき振り返った僕の瞳に最後に映ったのは、

憎悪に顔を歪め凶器を振りかぶる山田君の顔だった。

 

次の刹那、視界は反転し、僕は真っ暗な闇の中に落ちていった。

 

 

 

 

ああ…

 

 

 

 

ああ、あああ…僕は…

 

 

 

(僕は…何をしていたのだろう…)

 

 

 

大和田君…君がいなくなってから、僕はもう何もわからなくなってしまったよ。

 

あの日…モノクマと共に単車で爆走りだした君を僕は追いかけた。

少しでも早く追いつこうと足に力を入れたが上手くいかなかった。

何度も躓き転んだ。

まるで酔っているかのような…悪い夢の中にいるかのような、

そんな感覚を今でも覚えている。

僕は怖かったんだ。

目の前で起きている現実が…これから起きる絶望が。

直後、耳を塞ぐような爆音が鳴り響きた。

顔を上げた僕の目に映ったのは、単車と共に燃え上がり

ジェットコースターの輪を回る君の姿だった。

僕は全力で走った。

泣きながら、声にならない叫び声を上げながら。

何度も転んでも立ち上がり走り続けた。

何もできなくても、それでも最後に君の傍にいたかったから。

だけど最後の轟音の後、辿り着いた僕が見たのは

焼け焦げた学ランと骨…そして瓶詰にされた血と油だった。

 

それはあまりにも残酷で、あまりにも絶望的で、あまりにも非現実的だった。

 

だから…実感が湧かないんだ。

君がいなくなってしまったことに…君が死んでしまったことに。

あの時から僕の時間は止まったままなんだ。

 

もし…あの時、声が聞けたなら…それがたとえ絶望の叫びであっても…

最後に君の声を聞くことができたなら僕は受け入れることができたかもしれない。

前に向かって…歩き出すことができたかもしれない。

 

だけど、ダメなんだ…兄弟。

今も振り返ると君がいるような気がして…笑顔の大和田君がいるような気がして…

僕は…もうダメになってしまったんだ。

 

だから生き返った不二咲君に…アルターエゴに出会った時、僕は依存した。

石田になって辛い現実から逃げ続けた。

 

それが黒木君を傷つけることになっても…山田君に憎まれるとわかっていても。

 

僕は絶望から逃げ続けたんだ。

 

 

(その…報いが…この様なのだ…)

 

 

暗闇の中をゆっくりと僕の体は落ちていく。

こんなことならやっぱりあの時兄弟と一緒に死ぬべきだった。

人生において初めての喧嘩。

この世で一番信じることができる親友と背中を合わせて戦った。

この先に絶望しかないとわかっていても。

楽しかった。

本当に…楽しかったなぁ。

 

体が冷たくなっていくのを感じる。

 

 

(僕は…このまま死ぬのか?)

 

 

僕は…どこに行くのだろう?

最後に…何を残せるのだろう?

 

 

…ダイイングメッセージ…?

 

 

クラスメイトを…仲間達を救うために山田君がクロであることを伝えること。

それが僕にできること。

それが僕に残された最後の役目…なのか…?

 

 

…れ…違う…

 

 

声が…聞こえた気がした。

山田君とはアルターエゴを巡って何度も衝突した。

山田君はきっと僕が憎かったに違いない。

それは間違いない。

だけど…僕は知っている。

凶器を手に振りかぶる山田君の瞳には憎悪と共に怯えと絶望に染まっていたのを僕は見ている。

そんな彼がクロであるとみんなに伝えることが…

山田君を”おしおき”で死なすことが…僕の…最後の役目…なのか?

 

 

―――それは違う

 

 

誰かの声が聞こえた。

…そうだ。山田君は絶望していた。

怖くて…何かに縋りたくて…アルターエゴに依存したのだ。

この辛い現実から逃げるために。

同じ…じゃないか。

山田君は僕と同じじゃないか!

そんな山田君のことを慮ることができず、追い詰めたのは誰だ?

山田君を追い詰めたのは…僕…じゃないか…!

クラスメイトの心を慮らないで何が風紀委員だ!

全部…僕のせいじゃないか!

そんな哀れな山田君を…仲間である彼がこのままでは”おしおき”で殺されてしまう。

本当にそれでいいのか?

 

 

―――それは違うぞ!

 

 

 

声が聞こえた。

それは誰かの声じゃない。

僕の内なる声。

心からの…魂から発した叫びだ!

 

(そうだ…!このまま死んではダメだ!山田君を死なせはしない!)

 

心臓を中心に体に熱が奔った。

腕に少しだけ力が戻り、僕は天に向かって手を伸ばす。

そうだ!立ち上がれ!立ち上がるのだ!

山田君を…仲間を救うためにも僕はここで死ぬわけにはいかない!

みんなのためにも絶対に死んではいけない。

 

そうだ…!最後に伝えるのは絶望なんかじゃない!

 

 

 

最後に伝えるもの…それはきっと…!

 

 

 

「石丸・・・お前は―――」

 

 

 

      “生きろ”―――!!

 

 

 

 

声が聞こえた。

兄弟の…大和田君の声が、最後の言葉が聞こえた気がした。

 

(ああ、そうだとも兄弟)

 

僕は生きなければならない。

最後に伝えたいもののために…僕は生きるんだ!

 

だから―――

 

闇の中、眩いばかりの光が現れた。

その光に僕は手を伸ばししっかりと掴む。

ぬくもりと共に優しい光は僕の全身を覆った。

その瞬間、僕は思い出した。

 

失われた2年間の記憶を。

 

あ、ああ…思い…出した。

思い出したぞ!

 

クラスメイトのみんなとの思い出。

不二咲君と大和田君と僕と3人で笑い合った日々。

大和田君とは…兄弟とは、はじめはいがみ合って何度も喧嘩して、

そして最後に最高の親友になった。

 

 

ハ、ハハ…ハハハハハ。

 

ああ。

 

ああ…そうだな。

 

そうだな、兄弟…。

 

僕達はまた同じように喧嘩して、そして友達になったんだね。

 

記憶を失っても…また同じように。

 

 

あの時から僕はずっと立ち止まったままだった。

君の声を聞くことができなかった…

それを免罪符にして僕はずっと逃げていたんだ。

君が死んだことを…認めたくなかったから。

僕は絶望に屈し、前に歩き出すことができなくなっていたんだ。

でも君は違ったんだね、兄弟。

やっと…わかった。

やっとわかったよ、兄弟。

 

大和田君…君はあの時、ずっと叫んでいたんだね。

僕に向かって…”前に進め”とそう言っていたんだね。

 

君の声が聞こえなかったのは…

あの絶望と苦痛の中、君が叫び声一つ上げなかったのは…

 

 

全部、僕のため…だったんだね。

 

 

僕の心を気遣って…負い目にならないように…

僕が再び希望を信じて…前に進めるように…ただそれだけのために君は…!

 

 

 

 

(兄弟…確かに受け取ったぞ、君の熱い魂を…!)

 

 

 

 

 

 

大和田君…

 

 

あの時の君の”想い”(こえ)が…

 

 

今…ようやく…ようやく僕に届いたぞ…!

 

 

 

 

 

声が…聞こえる。

誰かが僕の手を握っている。

 

誰かが…黒木君が僕を呼んでいる声が聞こえる!

 

 

「黒木君!そこにいるのか!?」

 

 

姿が見えない。

だが、声は聞こえる。僕の手をしっかり握る温もりを感じる。

 

 

 

「待たせたな・・・黒木君!」

 

 

 

 

  約束どおり・・・僕は帰ってきたぞ!”

 

 

 

 

全て思い出したんだ!

クラスのみんなとの思い出を。

楽しかった時間を。

不二咲君と大和田君と僕と三人で笑い合ったことを。

全て…全て思い出したんだ!

 

二人はもういないけど…

でも、それは決して色褪せはしない!絶望に塗り潰されたりはしない!

 

 

「黒木君・・・信じるんだ!」

 

 

みんなとの思い出や不二咲君や大和田君が残した想いは今もこの胸の中にある!

希望はここにあるんだ…!いつだって僕達の心の中に輝き続けているんだ!

 

 

 

 

 

”希望は・・・ここにある。ここに・・・あるんだ!”

 

 

 

    

 

さあ、行こう!黒木君!

江ノ島君と戦刃君を止めるのだ!

彼女達に伝えよう!

 

希望は絶望なんかに絶対に負けないことを!

 

外には絶望しかなくて、

誰も希望を持てなくなってしまったのなら、僕達の中にある希望をみんなに伝えるのだ!

 

不二咲君や大和田君から受け取った希望の灯は今も僕達の中で輝いている。

その灯は僕達から誰かに…誰かから別の誰かにきっと受け継がれていく。

傷つき倒れた誰かがその光を見て、再び希望を信じて前に進んでくれるさ。

 

 

だから、たとえ世界中が絶望の闇に覆われてしまっても、

時には傷つき立ち止まってしまったとしても、

 

 

 

きっと…

 

 

 

  それでも―――

 

 

 

 

 

   それでも希望は、前に進むのだ!

 

 

 

 

 

 





希望の灯はもこっちの手に。


■あとがき

<本当の意味での2章の完結>

お久しぶりです。だいたい1年ぶりくらいの投稿でしょうか。
この話をもって3章の完結ですが、やはり2章の完結となる話でもあります。
大和田の想い(こえ)が石丸に届き、石丸が希望に帰ってきた…。
短い話ですが、石丸の強さと優しさ。大和田との絆。そしてこの物語が最も伝えたいことを伝えることができたと思っています。
最後の石丸は苗木とはまた違う、才能がなくとも誰しもが辿り着ける超高校級の”希望”になったと考えています。
石丸から希望の灯を無自覚にも受け取ったもこっちの話が今後の物語のテーマの1つとなります。

まあ、ちょっと体力的に書くのは厳しいですが...。
でも次話を書くなら元気に復活して舐めた態度に戻っているもこっちを描きたいですねw

<今後について>
もし順調に書ける能力があるなら以下のようなスケジュールでした。

・完全オリジナルの第4章
・イマワノキワ 戦刃むくろ(フェンリル時代の戦闘あり)
・イマワノユメ 黒幕(VSカムクライズル)
・覚醒の5章
・最終章
・イマワノキワ 江ノ島盾子
・最終話


頭にあるのと実際書くのとではかなり違うな…と今回も含めて毎回思っています。
上述のものも、実際に書けば全然違うものになっているかもです。
多分書けない…とは思っていますが、
スケジュールとしてはこんな感じでした、というのを記念に書いておきます。

ではもし機会があれば!

みかづき

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