天才物理学者と筋肉バカの新世界より   作:alnas

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「新世界での謎を巡って行動している仮面ライダービルドの桐生戦兎は、平和な朝を迎え、駒王学園で教師として活躍していた」
「おい、活躍なんかしてねーだろ! 俺の方が学校のためになってんじゃねえか?」
「そんなわけないでしょ。俺は生徒に大人気に決まってるでしょ。見なさいよ、このからくり装置!」
「いい出来ですね。戦兎さんは生徒の心を掴むことに長けているように思います」
「うおっ、急に出てくるなよ……生徒会の――」
「失礼しました。駒王学園の生徒会長、支取蒼那です。ところで戦兎さん、これはどうやって動くのでしょうか?」
「ああ、これか? これはビー玉をスタート地点から転がして、ドミノを倒してミニカーに引き継がしてと運動エネルギーを――」
「おい、ここで授業始めんなよ!」
「――で、連鎖が最後まで続くってわけ」
「なるほど。興味深いですね。もう一度再現してもらえますか?」
「もちろん。次はちょっと組み合わせを変えてみるか」
「二人ともちょっとは聞けよ! ああ、もうどうすんだよ第33話!」
「これ第32話な?」
「聞いてるなら手伝え!」


来訪フェニックス

 駒王学園に着いて早々、花壇の整備に向かった万丈を見送った俺は、準備室にある器機を実験室に持ち出していた。

 前の世界ではやっていなかったが、偶然かかっていた教育テレビで見たからくり装置を再現しているところだ。

「なるほど。やっぱりこの角度か」

 玉が落ちる速度や角度を計算し、配置。

 用いる物はチープな物が多いが、その実計算し尽くされた連鎖装置だ。

「なるほど。文化祭でからくり装置を作って展示するのも面白いかもしれないな。校庭の一角を借りて大掛かりなのを生徒たちと作るのもありか?」

 設計図は作っちまうか――いや、そこから一緒に……でも面倒な部分は嫌がるか?

 俺の生徒たちにはまず楽しさを知って欲しいしなぁ。悩みどころだ。

 まだまだ時間はあるし、生徒の傾向を知ってからでも遅くはないかな。校庭借りれるかもわからないし。

「正直、リアスや会長に頼めば借りれそうなのがこの学校の不思議なところだけど」

 考えているうちも手は動く。

 気づけば一連の仕掛けは組み上がり、からくり装置が出来上がっていた。

「他のことを考えながらでも作業が終わるって……やっぱ俺って天才すぎるでしょ」

 スタート地点から玉がいくつもの仕掛けをクリアしながらゴールへと向かう。

 最後のコースに入り、穴へと入った玉が重りとなり、「実験成功!」の旗が立った。

「いい出来じゃん。高校生にも通用する装置だな、これ」

 一人頷いていると、背後から声がかかる。

「はい。我が校の生徒なら楽しんで見てくれると思いますよ」

「うおっ!? びっくりしたぁ……居るなら一言欲しいんだけど、生徒会長?」

 振り返れば相変わらずの黒髪美少女が関心した様子でからくりを眺めていた。

 まったくこっち見ないじゃん。心臓バクバクですよ、こっちは。

「朝から授業の準備ですか?」

「あー……まあ、そんなところだな。今日の実験には関係ないけど、科学って楽しいぞってことをちょっとでも知ってもらえる方法を探していてね」

 答えれば、彼女は意外そうにした後に、すぐに笑みを浮かべる。

「そうですか。ふふっ、科学が本当にお好きなんですね」

「天才物理学者だからな。実験するのはもちろん好きだし、誰かが――駒王学園の学生が一人でも興味を持ってくれたら嬉しいさ」

「戦兎さんはいい先生になりそうですね。まだ授業が始まったばかりですが、生徒からの評判は良いんですよ」

「……それはありがたいな。嫌われるよりも好かれる教師の方がいいからさ」

 別に世界のためになる発明をして欲しいわけじゃない。

 ただ楽しんでくれたり、興味を持ってくれるだけでも十分だ。それがなにかのきっかけになれば尚いい。

「って、どうした?」

 蒼那がぎこちなくソワソワしているので尋ねると、彼女はゴールに入ったままの玉を摘み出した。

「これ、もう一度最初から見れませんか?」

 そんなことを少し恥ずかしそうに言ってくれる。

 既に一人、興味を持ってくれていたみたいだ。からくり装置を作るだけの労力はもう報われたな。

「何度でも設置しなおすよ。ちょっと待ってな」

 装置の一部の仕掛けを再設置して、今度は蒼那にスタートを切ってもらう。

 何度か繰り返すうちに副会長の椿が様子を確認に来て、彼女もからくり装置に目を輝かせて見学に参加し出す。

 それから朝のHR間近まで、気づけば集まっていた生徒会メンバーとからくり装置を見て過ごす時間になってしまった。

「次は別のパターンを期待しています」

 去り際にそんな言葉をもらってしまった。

 慌てて戻っていく彼女たちと別れ、俺も授業の準備に入る。

「これなら文化祭での許可は取れるかもしれないな」

 真面目に設計図を用意しておいてもいいかもしれない。悪魔なら大掛かりになっても材料の用意をしてくれるかもしれないし。

 ちなみに、教師陣も朝の打ち合わせがあると知ったのはこの後のことだった……。

 教師も中々自由にはいかないらしい。

「っていうか、最初に教えてくれてもいいだろうに」

 なんて言っても後の祭り。

 切り替えて授業の仕度だけでも終わらせておこう。

「あっ、最近手に入れたボトルの成分を抽出するだけの場所と機材も欲しいな。全然足りないけど、コレを復活させるのにボトルの成分は欠かせないしな」

 新世界を創る役目を終えて空っぽになったままのひとつの大型のボトル。

 必要ないままが良かったんだが、もしかしたらを考えればもう一度――と思っちまう。こいつの本領を発揮させることができれば安心感が違うからなぁ。

 けれど俺たちの持つフルボトルは十本未満。作り直すどころか調整するにも全然足りない。

 まあ、当分は無理だな。少しずつ戻していってやるか。

 このボトルがまた、俺たちの希望になると信じて。

 

 

 

 リアスや祐斗のクラスの授業も終わり、今日最後の授業はイッセーのクラス。

 作ったからくり装置は概ね好評で授業の掴みとして大きく貢献してくれた。

 それはいい。

「で、リアスの様子が変だってのか?」

「そうなんですよ! 昨日だって俺、よ、よよ夜這いされたんですよ!?」

「ハーレム目指してるイッセーとしてはいいことなんじゃないのか? ああ、いや。学生と教師の立場なら俺は止めるべきなのか?」

「いやいやいや! いいんですよ、超嬉しいんですけど……やっぱりどこか余裕ないっていうか」

 俺はどうしてイッセーの恋愛事情なんて聞かされているんだろうか?

 これって教師の役目なの? だとしても俺じゃない気がする。

「まあいいけどよ。俺にどうして欲しいんだ?」

「戦兎先生も一緒にオカ研の部室に来てください!」

「俺が? 必要か、俺」

「ここはひとつ! お願いします!!」

 旧校舎か。

 昨日リアスには止められたが、イッセーがここまで言ってるし行ってやるのもやぶさかじゃない。

「わかった。からくり装置の解体やおまえらの授業の後片付けなんかが終わったら旧校舎に行ってやるから。それまではしっかりやっておけよ?」

「戦兎先生! 俺、頑張ります!」

 イッセーは嬉しそうに笑って実験室から出て行く。

「なに頑張るんだよ。イッセーも考えるより先に体が動くタイプだな」

 どっかの誰かさんを見ている気分だ。

 しっかし、からくり装置の処分どうすっか。解体とは言ったものの……作るのはいつでもできるからいいけど、このまま飾っておいた方がいいような気もするな。

「よし、準備室に置いとくか」

 あとは生徒から預かったプリント類の整理だけっと。

 リアスは着眼点が面白いし、朱乃はまとめ方が綺麗だな。蒼那は全体的にレベルが高い。教えた内容の応用例を書いてくる辺りさすがだ。

「この三人は仲間の中心なだけあって優秀なんだよな。リアスの視点もそうした中で培われたものか」

 他にもちらほらと気になる生徒がいたな。

 確認してみると個性が出てて面白いもんだ。

「さて、旧校舎に向かうか」

 万丈は……あいつはいいか。生徒会に置いといた方が学園のためになるだろ。

 一人で旧校舎に向かい、リアスたちオカルト研究部の部室の前まで来る。

「入るぞー」

 中へと入ると――。

「魔法陣?」

 部室に描かれていた魔法陣が光り出していた。例のグレモリーの紋章って奴か。眺めていると、その紋章が別物に変化する。

 これは、なんだ?」

「――フェニックス」

 裕斗の声が漏れる。

 フェニックス――不死鳥か。って、不死鳥!?

 成分! 成分取れるじゃん? ああ、エンプティボトルないから採取できなーい! そもそも不死鳥の存在そのものからボトル生成って可能なのか? でも成分が一致するなら可能性はあるし……試したい。この上なく試し採りしたい!

「戦兎!? あなたどうして――」

 リアスが俺に気づいて声を上げるが、その矢先、魔法陣から炎が巻き起こる。

 っておいおい、室内でなにしてんだ! 消防車……ねえよ!

 慌てていると炎はすぐに弱まり、その中から赤いスーツを着た男性が姿を現す。

 まさか、アレがフェニックス?

「思ってたのと違う……」

 フェニックスって言うからもっと夢のある生物を期待してたのになんで人型なんだよ。もっとこう、あるでしょ? フォルムって大事なのよ!

「愛しのリアス。会いに来たぜ。さっそくだが、式の会場を見に行こう。日取りも決まっているんだし早め早めに動かないとな」

 男はリアスを視界に捉えると、彼女の腕を掴む。だが、リアスにその気はないようですぐに腕を払っていた。

 なんだ? 愛しい? しかも式って、もしかして婚約者的な関係か?

 でも仲は良くなさそうだな。

 もしかしなくても、一波乱起きそうだ……イッセーの頼みを聞いてやろうって場合じゃないな。

 それに気づかなかったけど見かけない銀髪美人までいるんですけど? メイド服を着ていることから従者って感じだけどグレモリー家の悪魔なのか?

「裕斗、あの人は誰だ」

「グレモリー家に仕えている人らしいっすよ。確かグレイフィアさんって言ってました。それより、俺はあいつに言わないといけないことがある!」

 裕斗が答えるより早くにイッセーが教えてくれたが、とうの本人は捲し立ててリアスたちの方へと行ってしまう。

 イッセーの言葉が正しいと裕斗も頷いているので、それはいいけど。

「フェニックスか」

 邪魔にならないよう部屋の隅に寄って様子を眺めているけど、随分と傲慢で自信家のようだ。

 例のメイド? のグレイフィアさんから正式にフェニックスの男――ライザーがリアスの婿だという紹介もあったし、悪魔側のお家問題ってところか。

 話を聞いていてわかったが、リアスはライザーと結婚するつもりは丸でない。

「私は私が良いと思った者と結婚する。古い家柄の悪魔にだって、それぐらいの権利はあるわ」

 耳を傾けていればこの言いようだ。

 途中まで機嫌の良かったライザーが舌打ちをして、一気に機嫌が悪くなる。向こうはそのつもりで来ていたんだから当然と言えばそこまでなんだが。

 それよりも、フェニックスって言いながら悪魔なんだよな。神聖な意味合いじゃなくて72柱の一角か。リアス絡みだから悪魔なのは当たり前だよなぁ。

 でも同一視されることもあるって聞くし、やっぱり成分は採ってみたいところだ。

 どうにかできないかと考えていれば、リアスとライザーの座る席から大きな音が響く。

「舐められたものだな。リアス、俺もフェニックス家の看板を背負っているんだ。この名前に泥をかけられて終わるわけにはいかないんだよ」

 直後、ライザーの周囲を炎が駆け巡る。

「俺はキミの下僕を全員燃やし尽くしてでも、キミを冥界に連れて帰るぞ」

 殺意と敵意が部室全体に広がったような錯覚を覚える。

 近くにいた裕斗と小猫が臨戦態勢に入ってもおかしくない様子に加え、リーダーであるリアスまで応戦するつもりのようだ。

「ちょっとちょっと、おまえらが争ったら学校どころか町にまで被害出るでしょうが」

 両者を止めないとダメだ。

 まったく。まだまだ若い証拠だな。

「仕方ない」

 懐から缶型のアイテムを取り出す。

 ひとなでしてから上下に振れば、シュワシュワと発泡音が缶から鳴る。

 あとは上部にあるプルタブ型のスイッチを入れれば――。

「お二人とも落ち着いてください。これ以上を望むのであれば、私も黙って見ているわけにはいかなくなります」

 ――ってうそー!?

 先にグレイフィアさんが介入したことによって、リアスとライザーの戦意が揺らぐ。

「先に言っておきます。私はサーゼクス様の名誉のためにも、どちらが相手になろうと遠慮はしないつもりです」

 この場を包んでいたリアスたちの戦意をすべて圧する力が、彼女の一言に込められていた。

 証拠に、リアスとライザーの表情が強張っている。それほどに差があるってことか。

 グレイフィアさんが振り返り、俺へと視線を向ける。正確には俺が持っているアイテムに、か?

「貴方も止めようとしてくださり、ありがとうございます」

 完璧な、とでも言えばいいのか。これ以上はないといった礼をされ、彼女は再びリアスたちへと向き合う。

「さて。それでは――今後の話をしましょうか」

 微笑む。

 しかし、その笑顔にはこれ以上問題行為は起こすなと、と書いてあるようでもある。これには俺も、そっとアイテムを仕舞うしかなかった。

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