此処は相も変わらず尸魂界にある瀞霊廷、その一角で一人の少女が誰かの姿を眺めていた。
(……黒崎くん、なんだか急に逞しくなった気がするなぁ……)
ぼーっと少し離れた場所を見つめる少女の名は井上織姫。なにを隠そう、一護の未来の嫁である。(唐突なネタバレ)
彼女の視線の先に居る『誰か』は勿論、オレンジ頭の我らが主
無論、わざわざ言わなくても分かる事だが、彼女の目は完全に気になる男子を見つめるソレである。まぁ未来の嫁だからね。(大事な事なので2回目)
(こういうの、なんて言うんだっけ……えっと、男の子は3日見かけなかったら急激に成長する、だったかな? ……はっ!?)
そこまで言葉を思い出して何かに気付いた織姫、先に言っておくが彼女は重度の天然である。
(こ、このまま3日見かけない日が何度も続いたら……黒崎くん、すごいマッチョになっちゃうんじゃ!?)
先程も言ったか彼女は重度の天然である、だがあえて言おう――
――どうしてそうなった
事実上のツッコミ不在のまま、彼女の脳内はどんどん妄想を加速させていく、おい誰か止めろ。
――そこは、何かが無数に突き刺さった大地であった。
そして、それ以外は何も無いその大地に、一人の男が佇んでいた。
その場に言の葉が紡がれる、それはまるで誰かの人生を表しているかのようで――
――I am the bone of my muscle.
体は筋(肉)で出来ている
血潮に鉄分、心に(プロテイン用ジョッキ)グラス
幾たびの(柔軟)体操を越えて腹(筋)背(筋)
ただの一度も妥協はなく
ただの一度も(筋肉)分解されない
彼の者は常に独り
己の体に鞭を打つ
故に、その人体に(余分な)脂肪は無く
その身体は、きっと筋(肉)で出来ていた
『
そう、ここは筋(肉)の丘。織姫の脳内風景である。
よーく見ると突き刺さっている物は全部バーベルやダンベル。何キロ持てる?
そこに佇む男は勿論、織姫の脳内の黒崎一護。彼女は彼を脳内でどうしてしまおうというのか。
……と、脳内の一護が唐突にグッとポージングをキメはじめた。もう判ったな?
――……ふんッ!! あァ……ッ!!
イイ笑顔でサイド・チェストをキメた脳内一護はその肉体を――否、筋肉を膨張させるッ!!
途端に弾け飛ぶ死覇装ッ!! 脳内一護はパンツのみを残し、その肉体美を曝け出したッ!!
顔は元の一護から一切変化が無いせいで、どう考えても雑コラにしか見えない程の圧倒的筋骨隆々なワガママボディ!!
今ここに、脳内一護の肉体は卍解したッ!!
祝え! 全ての筋肉を超越せし新たな筋肉の躍動をッ!!
え? これ卍解じゃなくて
細けぇこたぁいいんだよ! こちとらまだ
そうこうしている内に、圧倒的筋肉を見せ付けるように次々とポージングを変えていく脳内一護。
するとどうだろうか、突然何処からともなくナレーションが……
――それは、最強の筋肉神。それは、筋肉の究極なる姿。
そう、小○清志氏のナレーションである、大丈夫かコレ……?
「――…………ぅぇ……」
――我々が辿り着いた大いなる筋肉。
「――…………の…え……」
――その名は、
「――……の上……」
――筋肉王、
「……井上っ!!」
「――ひゃわああああああああっ!?」
「うおおおおおっ!? わ、わりぃ、驚かせちまったか……?」
ようやく織姫は脳内妄想の世界から帰還を果たした。いやあ、酷い世界でしたね。
そして帰還早々気になるあの人が目の前に、これは叫ぶ。(ラブコメ感)
「ど、どどどうしたの黒崎くんっ?」
いやお前がどうした。
「いや、なんかボーっとしてたからよ……なんかあったのか?」
大体お前のせいである、なお一護自身は何一つ悪くない模様。(酷い矛盾)
「う、ううん、何でもない、何でもないよ? えへへ……」
「そ、そうか……なら良いんだけどよ……?」
釈然としない一護に笑って誤魔化す織姫、モヤモヤしませんか? しますよね!
と、なんだか微妙にギクシャクした空気を換えようと織姫は笑顔で誤魔化しつつ頭を回した、のだが――
「……黒崎くんっ!」
「な、なんだ?」
「――ちょっとマッチョになったね……!」
やりやがった。
「!?!? そ、そうか……?」
慌てて自分の身体を見回す一護、そして織姫はというと――
(わあああああああっ!? なに言ってるのあたしいいいいい!?)
――冷や汗流しながら硬直した笑顔の裏で盛大にパニクっていた。おう、やっちまったなァ!
「……なあ井上、何か悩みでもあんのか?」
「…………えっ?」
と、ギクシャク通り越して混沌とした場だったが、そこは流石空気の読める男、黒崎一護、何かに気付いたようだ。さすいち。
「いや、なんつーか、どっか遠くでも見るような目でボーっとしてたからよ……違ったか?」
「…………!」
気になる男の子が自分をちゃんと見ていてくれている、コレはポイント高いんじゃないですかね?
と、一瞬嬉しそうな気配を発した織姫だったが、数瞬の後には目を伏せてしまっていた。
「……あのね、黒崎くん? あたし、何か役に立てたのかな……?」
「…………ん?」
どこか躊躇うようにそう問いかける織姫、しかしそれは、何か答えを求めているというよりも自分の心にあるモノを確認しているかのようで。
「……朽木さんを助ける為に
「………………。」
そうして、一護は織姫の言葉を黙って腕を組んで話を聞き続ける。
「あたし、最後の最後は見ている事しか出来なかったから「井上」……っ」
だが一護は、致命的となるであろう言葉を織姫が吐く前にそれを遮った。
「井上、ここで俺がお前に役に立ったとか言った所でお前は納得しないんだと思う、けどな――」
「――少なくとも俺は、お前が居てくれて心強かったぜ」
「……え」
一護の言葉に呆ける織姫、そんな彼女の様子に構わず一護は言葉を続ける。
「ルキアを助け出す、これは俺のワガママだった、そこに誰某のどんな思惑があろうともな」
「俺には、白哉の奴に負けて目の前で
「あぁ、アイツは恩人だ。アイツが居なきゃ俺や家族は下手すりゃ命が無かった。大恩だ、ちゃんと返さなきゃならねぇ」
「アイツが恩返しを受け取るかどうかはこの際どうでもいい、これは俺自身の気持ちの問題だからだ」
「俺は俺の気持ちを裏切りたくなかった、だから命をかけられた」
「けどな、ここまで来れたからこそ改めて思うんだ、俺一人じゃ……本当に何も出来なかった、ってな」
そんな事はない、と織姫は否定の言葉を口にしたかった、けれどそれはしなかった、安易な言葉を今の一護にはかけたくなかった。
「俺一人の力なんてタカが知れてた、コッチに来てから色んな奴に助けられた、だからこうして今俺はここにいる」
「……でもな、俺が一番感謝してるのは――
――現世から一緒に来てくれた井上たちなんだ」
その言葉で目を見開く織姫、そんな彼女が見つめる一護の表情はどこまでも柔らかく。
「頼もしかった、申し訳なかった、けどなにより……嬉しかった」
「ルキアを助ける、その為に一緒に命がけの場所に向かってくれる、こんなに心強い事はねぇ」
「だからよ、井上。ありがとな、俺と一緒に来てくれて」
「…………ッ」
感極まって思わず泣きそうになる織姫。織姫自身こそ嬉しかった、そんな風に思ってもらえて。
そして同時に思う、ずるいなぁ、と。改めて想う、あたしはこの人の事がどうしようもなく好きなのだ、と。
思わず抱きついてしまいたい、でも、今はまだそんな勇気は無くて。
だから彼女は精一杯の笑顔を浮かべた。お礼を言われたら返す言葉は一つだけ、でも今は先ず……
「……黒崎くんっ」
「なんだ?」
今度は間違えない。
「朽木さん、助けられて良かったねっ!」
「……おうっ!」
――あぁ、強くなろう、心も体ももっともっと強くなって、
そう、彼女は強く願うのだった。
「……うーん、青春しとるのう!!」
「そこだ、そこでハグ&キッスだよ姫ちゃんっ!!」
「黙ってろ片乃、あー口の中が甘い」
「七規殿、かつての『貴方達』もあんなカンジだったぞ?」
「……なん…………だと…………!?」
「そう言うてやるな砕蜂。まぁ、今アヤツは現世に居るからのお……」
「……くそぉ……彼女に会いたい……」
「まぁ、七規よ、そのうち機会が来る、今は雌伏の時だ(?)」
「桑井師範、わかりました……」
――と、物陰から思いっきり野次馬されていた一護達なのであった。
お前ら馬に蹴られて死ぬぞ?
季節性の鬱なのかナーバスなのか、ストレス性の胃潰瘍&逆流性食堂炎が久々に大暴れしてる中でギャグパロとラブコメの混合物を書いてる筆者がいるらしい。
私だ。
七規の修行編を回想にする為の導入用に書いてた筈なのに気付いたらイチャイチャし始めやがった、なんでや。
畜生ッ!! お前らなんかトリックアート美術館でデートでもしてればいいんだ!! バーカバーカ!!(頭の悪い罵倒)
あ、自分は何故かネットの一部界隈でものっそい嫌われてる織姫ちゃん推しです。
いやなんであの子あんな嫌われてんの……?
ルキアと恋次と一護の三角関係なんて見たくもないし、そもそも織姫ちゃんめっちゃ良い子だと思うんだけどなぁ……
まぁ最終的に原作ではくっついて子宝にも恵まれてたから良いよね!!
誤字報告、評価、お気に入り登録ありがとうございます。
ではまた次回。