半年以上ぶりのこの作品の投稿ですね! お待たせしました!
今回の番外編は、原作の白銀達が三年生編に進んだ後の世界線。及び『推しの子』とのクロスオーバー作品になります。
そこで一つ注意点。原作で明かされてないので勝手な設定となりますが、原作『かぐや様は告らせたい』に登場する現二年生『不知火ころも』と原作『推しの子』に登場する『不知火フリル』は姉妹設定になっています。それを前提とした上で読み進めて下さい。
ではどうぞ!
今の時代、世界にはSNSが当然の様に扱われている。一般的に普及されているTwitterやInstagramがその代表例と言えるだろう。
───ただし、許容範囲は全てが虚実であるのを前提とする事まで。居ない誰かを奉るなり貶めるなり、それは自由にすべきだ。一種のロールプレイで、それは必ずしも否定されるべき事じゃない。嘘だらけのネット。表面だけを見て言葉を鵜呑みにし、嘘を嘘と見抜けない方も悪い。
だが、そこに確かな『現実』が交わるならば話は別だ。誹謗中傷、罵詈雑言、現実改悪、虚言。虚実ならば兎も角、現実に交わる事実は法が交わるデリケートな問題へと移り変わる。でもSNSという場は非常に無責任な奴の集まりで、ネットという世界の壁があるだけで人はどこまでも残酷になれる。
汚い言葉と嘘を浴びせ続け、事実を知ったその時、その
それでも、汚い言葉は受けた人を苛み続けるのだ。
インターネットという世界の壁はとても厚く、同時に薄い。本当に知りたいならば自分の目で確かめるべきだと気付かされる。
そう───
「なんか俺めちゃくちゃやばい奴みたいな認識されてるんだけど!?」
……全国模試一位を掻っ攫ってったり、サッカーの全国大会前にインドに行ったりする頭のおかしい奴も、実際のところ普通の奴と大差はないという事である。
「……なあ
「良いのかっ、それで良いのかカウンセラー!? お前の役目は心理的負担を軽減する事だろ! なんか転校生に対する当たりが厳し過ぎないか皆!? お前は例外だと思ってたよ青星!」
「神童をビビらせるのは相当やばい奴だよ。俺もあの話は流石にやばいなって思う」
「だから何者なんだよ神童ッ!」
ふっと儚げに笑みを浮かべながらポンポン肩を叩く広瀬に、帝───
ただまあ仲良くするか仲良くしないかの権利は当人にあるから、帝が動かない事が原因だと言われたら強く反論はできない。転校生に対する興味は当然だとしてもだ。故に広瀬が転校生を気にせずにクラス内で早坂と会話してようが関係ない。例え彼の姉を除いて一番近しい人物だとしてもだ。
「ったく、薄情だよなぁ。あの中じゃ一番関わりあるの、お前なんだぞ? 彼女がいるからってデレデレしやがって……」
「可愛いだろ?」
「否定はしないけども! というか多少の面識はあるけども! そこだよそこっ、多少の面識があるから早坂の方も俺の方を気に掛けろとか言わなかったのか?」
「愛曰く、「彼はそういう運命にあるから大丈夫です」……って」
「俺の扱い!?」
「それに、白銀とは仲良くなれたろ?」
「そうだけどね!? すげー良い奴だってのが分かったけど、初対面でちょっとビビったからな俺!」
まあ目の前で自分の筆箱握り潰されれば当然ビビるよな、と。
お互い事情を理解したから仲良くなれたが、そういう所フォローするのが友達じゃないかと恨みこもった目で帝が広瀬を見る。苦笑し、弁当を頬張った。咀嚼し、飲み込み、言葉を紡ぐ。
「そりゃ本当にダメそうだったら会話するくらいは良いけどさ、まだ日も経ってないだろ? 帝が接し方に悩む様に、こっちも何を話せば良いのかは悩むよ」
「ぅ……それもそうだがなぁ」
「ま、取り敢えず自分から話し掛けてみろ。帝の人間性ならそうそう嫌われないだろうからさ」
何せ四条家に本業で行った時、同年代の奴というだけで親しげに話し掛けてきた程だ。高校三年というギリギリな場面での転校だからアウェーを感じてるだけで、実際のところ話せば分かりやすく良いやつばかりだ。
「特に神童は良い奴だぞ」
「マジで何者なんだ、神童」
「サッカー部のエースだし、そこから関わってけばいいんじゃないか?」
「いや、まあ……というかそうだよな。白銀とも模試がキッカケで話せた訳だし、サッカー関連って手があったか」
「……お前、全国大会前にインド行く余裕ある割には本当にノミの心臓だよな」
「インドは姉だ、姉の頭がおかしかったんだ……っ!」
いや、事情を聞いてるとは言え、四条家は四条家で海外に行く機会はあるだろう。別に姉一人だとしても大きな心配はないはずだ。……結果的にお腹痛めたのでついて行った理由はあったが、全国大会前に行くのは充分に頭がおかしい。
「まあ本当にダメそうなら話し相手にはなるからさ。気軽に行けよ、気軽に」
「青星……」
やはり持つべき者は友。そう言わんばかりに笑顔になる帝に、此方もまた笑顔で広瀬は告げる。
「基本的に愛といるから、恋人ともう一人っていう気不味い状況になるだろうけどな」
「クソ、爆発しやがれこの野郎ッ!」
高校三年生となった今、ある程度進路が決まってる広瀬にはかなりの余裕がある。しかし早坂を通しての四宮家御用達カウンセラーと言われるとコネになるし、そうである事は否定できない事実。
故に、現在広瀬は『広瀬家での功績』を捨てて単独での実績を積んでいる。その代表例はもちろん秀知院学園からの依頼だ。正確には校長に頼み込んで、カウンセリング関係の依頼を探してもらっている。主に秀知院の生徒ではあるが、その秀知院生徒からの情報でカウンセリングの必要な人物を探し、広瀬を配属する。
余裕があるのはあくまでも就職という面であり、働けるかどうかはこの実績次第だ。
そして今日もまた一人、広瀬の所に秀知院の生徒。
「……どうぞ、不知火さん」
「どうもっす、先輩」
不知火ころも。芸能界に属する人物となると、下の学年とは言え流石に広瀬も慎重になる。
「今日は自分の事じゃなくて、知り合いのカウンセリングをして欲しいって事だけど……」
「厳密には自分のじゃないっすけど、妹の───ああ、不知火フリルは知ってますかね?」
「まあ、うん」
「その妹の通ってる学校の人と、その友人っすね。恋リアは観てます?」
恋リア───恋愛リアリティーショー。恋愛をテーマにしたバラエティ番組の一つ。現在は高校生組の美男美女が集まっていて、何より。
「……黒川あかねか?」
「観てるんすね、なら話は早いです」
ある時の話が原因で、盛大なバッシングを受け、自殺未遂を起こした少女。その番組に関わる事が出来てない以上、真相は知らない。しかし自殺未遂の話がこうして上がってきている中で、恋愛リアリティーショーの話題を振るということは、間違いなく黒川あかねについてのカウンセリング依頼。
「何というか……細かい説明は事情を知らないんで出来ないんすけど、その妹の同年代の……星野アクア? が、黒川あかねの事でフォローの準備をしてるらしくて。で、黒川あかねがまた変な気を起こさないように、知り合いに優秀なカウンセラーがいないかって聞いてるらしいっす」
「……裏方には?」
「いるには居るらしいんすけど、掴みかねてるっぽいすね。というよりは、番組サイドにちょっとした不信感というか」
「ああ……」
黒川あかねの行動に問題がなかったと言えば嘘になる。ただ、それでも番組にはあからさまな“意図”がある事は広瀬も理解していた。他の女子二人と違って、黒川あかねは率直なタイプだ。言われた事を素直にやり、気負いするタイプの人間。
そんな人間が自殺未遂を起こしたのであれば……間違いなく、番組の煽りがあるはず。不信感を抱いてもしょうがない。
恋愛リアリティーショーは、国によってカウンセラーがつく事を法律で決められている。今回の番組では一応配属されてるとは言え、法律上の義務ではない。恐らく───
「適当に入れてポーズを取ってるだけか」
プロである事は間違い無いだろう。しかし予算の都合は勿論だが、相性の問題も大して確認は取ってないはずだ。ほぼ確実に、女子高生の相手には慣れていない、大人を専門にしてるカウンセラー。
日本だけでも二十人以上の自殺者を出しておいてよくもまあ、と。国に対する不信感を抱きつつ、溜め息を吐く。
「先輩ならあまり予算を取らずにしっかりとこなしてくれると聞いたので、お願いしたいんすけど」
「うん、ぶっちゃけたな。オフレコとは言え結構ハッキリ言うな、予算関係のこと」
「プライベートな問題なんで、番組が出してくれる訳じゃないですし。後で星野アクア……苺プロに請求します」
「ひでぇ……」
まあ赤の他人の為に遠慮なく払えるかって言われたら否定するしか無い。当然と言えば当然の選択だ。
広瀬も実績作りの目的とは言え、実際に働いたことのあるプロだ。流石に報酬無しに働くとは言えない。不知火ころもの遠慮の無さに苦笑はしてもそれまでだ。
「こう言う機会に芸能界の人間とコンタクトが取れるのは有り難いしな。キャストも同年代との方が喋りやすいだろうし、まあ任せとけ」
「じゃあこれ、交通費は置いとくんで。宜しくです」
「ああ。……ってもう出てるし」
石上曰く、不知火ころもはできる限り学校には出てるらしい。しかし収録もあって登校時間や下校時間はかなりギリギリな時が多いとのこと。用事が済めば即座に帰るのも納得だ。
広瀬は交通費を手に取り、件の少年───星野アクアの下へと足を運んだ。
疲れた。それが広瀬の感想だった。
今回は不知火ころもの個人的なお願いということもあり、事前アポ無しでの突撃だ。どんな人でも「カウンセラーです」なんて急に話し掛けられたら当然警戒する。その警戒を解いて本題に入る術は当然広瀬も弁えているのだが……星野アクアという少年の警戒度は想像以上だった。当初の番組内の気軽さはどこいった。
まるで大人と話しているような感覚。15歳の雰囲気とは思えない。なんとか時間を掛けてアクアの警戒を解き……完全に解けたとは言えないが、少なくともカウンセラーである事は理解してもらい、苺プロに通してもらった。
「……一つ聞いていいか?」
「ん?」
「B小町のアイと何らかの関係は?」
「………? ごめん、B小町のアイって?」
「アイドルグループ、B小町のエース」
「あー……んん? 薄らと聞き覚えは……」
「いや、ないならいいや」
アクアの問いに対し、広瀬は疑問符を浮かべて問い返す。十年ほど前に何処か聞いた覚えはあるが、ハッキリとはしてない。その様子で確信したのだろう。アクアは大人しく引き下がり、警戒を解いた。
まあ、アイは十数年前のアイドルだ。17歳の広瀬からしたら『聞いた事はある』程度の認識だろう。よほどアイドルオタクじゃなければ昔のアイドルの事も調べまい。
(……俺やルビーみたいな事例がある以上、父親さえも生まれ変わっている可能性はゼロじゃない。学生だろうと警戒すべきだが……コイツは杞憂だったか)
「で、黒川あかねについてだったか? 別に口止めはされてないから事実を言う分には構わないけど……言葉ってだけじゃ証拠にはならない。ネットで語ろうが何の解決にもならないぞ」
(……あー、なるほど)
「けど、
「!」
「さっきの言葉から推測するに、
アクアは現状を正しく理解している。……いや、率直に言い換えよう。広瀬はアクアが黒川あかねの自殺についてマスコミに情報を流していたのだと気付いた。流した本人だからこそ、現状を正しく認識していると考えていい。
そして今のアクアの感情の揺らぎで、それが事実である事を確信した。アクアは苦笑気味に話す広瀬に気味悪さを覚え、顔を顰める。薄まったはずの警戒心が増した。……詮索は嫌うタイプ。広瀬はアクアの性格を理解し、必要以上に情報を抜き取らないよう目を逸らす。
「なら星野、黒川あかねが
「は? こんだけ騒動起こして、今は母親の目もある。これ以上自殺する気なんか起きないだろ?」
「一理ある。でもそれは希望的観測だな。黒川あかねは率直なタイプの人間だ。指示には素直に従うし、努力家で、言葉を受け止める。「心配をかけた」「迷惑をかけた」「自分を他人に背負わせた」って事実が、逆に蝕む原因になりかねない。……ま、そんなケースは滅多に無いけどさ。ただ事例はある。強い責任感は、他人との境界線を作る。目に見えない“気持ち”ってものでも、全部自分で背負おうとするからさ」
時間を掛けるなら万が一を想定しておけ。そう言う広瀬に、アクアは顔を顰めながら聞き返す。
「……何をすればいい?」
「取り敢えず、黒川あかねが自殺をしようとした時に助けた人物。それと、助けた後の状況を説明してくれるか?」
「…………黒川あかねを助けたのは俺だ。その後は
「適切だな……。そこまで冷静にいれる高校生なんて中々いないぞ?」
「………」
広瀬としては純粋な褒め言葉のつもりだったが、アクアは再度顔を顰めた。探りとして捉えられたか。広瀬は答えを求めた訳じゃ無いと、直ぐに次の言葉を紡ぐ。
「その、恋リアの仲間達とのやり取りは?」
「……鷲見ゆきが心配でビンタしてハグ、他は過度なスキンシップはなくても心配してたくらいだな」
「なるほど……。なあ星野、黒川あかねを依存させる気はないか?」
「……は? おい、俺はこれでも役者なんだ。あんまりゴシップに発展しそうな事は」
「恋愛リアリティーショーに出てる時点でその辺は気にして無いだろ、お前。それに依存って言っても、別に縋りつかれていろって訳じゃ無い。あくまで気持ち的な面で「背負わせてもいい人」って認識されればいいだけだ。もちろん星野が嫌だって言うなら他の方法を考える」
「……なんで俺なんだ?」
「今黒川あかねは、「失敗した」という事実によって貶められている。リアリティーショーだから、余計にな。だから星野みたいに正しく導いてくれる人に、依存し易い。……ちょっと言葉を変えるか。信じ易い、任せ易いって方が良いな」
顔を顰める。……番組で見る飄々とした態度とは全くの別物だ。あの時は同世代の中じゃ大人びた所があったから冷静でいられたのだろうが、広瀬に見抜かれた以上感情を隠すこともないと判断したのだろう。
「何より今、黒川あかねの為に動いてるのは他ならない星野アクアだ。迷惑をかけたにも関わらず積極的に自分の為の行動をしてくれる。……一番依存し易いんだよな、現状だと」
「……それが手っ取り早いんだよな?」
「他の手もない事はないけど、時間は必要だな。……ちなみにこの件は苺プロから依頼料を貰うことになってるんだが。直ぐに解決するなら少なく済むけど、伸ばすようなら依頼料が高く───」
「わかった、それでいい。手っ取り早く済むなら依存させてくれ。……本当に責任感を分けるだけで済むんだよな?」
「其処は安心していい。あくまで気持ちを前向きにさせるだけだからな」
これでもプロだしな、と。立ち上がり、ポケットから名刺を取り出す。
「四宮家のお抱えになるカウンセラーだ。将来的にどうぞ宜しく」
「……出来れば下手に関わるのは避けたいな」
「はは、詮索する気はないから安心していい。俺も恨みは買いたくないからな」
肩をすくめて笑みを浮かべる。名刺を眺めるアクアを背に、広瀬は出て行った。
それと入れ違いになるように入ってきた少女、星野ルビーは出て行った広瀬の後ろ姿を見送り、呆然とアクアに問いかける。
「お兄ちゃん、遊びに来てくれる友達なんて作ってたの……!?」
「ちげーよ、仕事関係だ」
「え、苺プロに入る人?」
「外部の人間。しかも四宮家のお抱え予定だってよ」
「え、4大財閥の? ほぇ……虚言妄言とかじゃなくて?」
「少なくとも実力は本物だな。番組の裏方に居た奴なんか目じゃない」
「ふぅん。……そりゃまた良いコネ出来たね!」
「……どうだか」
広瀬から渡された名刺を見てそう言葉を吐き出し、アクアは肩を竦めた。
───その数日後、アクアの元からの目的であった、キャスト目線でのリアリティーショー動画がバズり、世間の評価は一転。黒川あかねは次週から復帰が決定する。
広瀬が本当に必要かどうかは、結局分からなかった。保険など必要なかったかもしれないし、黒川あかねにもう一度自殺する気はなかったかもしれない。それこそ広瀬本人が言う様に、珍しいケースにならなかっただけだ。
だがしかし、ただ一つの事実として、黒川あかねが星野アクアに恩返しをしようと行動しているのは確かだった。
『早坂 愛は支配したい』
https://syosetu.org/novel/238977/1.html
上記作品は今作『早坂 愛は恋をしたい』のR18作品です。質問箱で神々の話はないのかと来ていたので、この際に書かせていただきました。
そして、ここから下記は早恋以後に書いた作品です。興味がある場合は是非ともお読み下さい。作品名タップで進める様になっています。……特に一番下の作品は伸び悩んでいるので、お読み頂けるととても嬉しいです。
盤外の英雄 原作ダンまち
正義冒険譚原作ダンまち(盤外の英雄の続編)
リアリス・フレーゼ/ロスト√原作ダンまち