最後だからか、凄い筆が乗りました。
意外とこんなに早くかけるものなんですね……。
僕には、誰よりも愛情深く、少しだけ独占欲の強い素敵な彼女……いや、妻がいる。
季節は巡り、木々の緑が鮮やかさを増す初夏。
今回は、僕たちがこれまでの恋人という関係から、永遠の伴侶へと歩みを進めた、最高の1日の出来事。
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都内にある、白亜の美しい結婚式場。
その奥にある新婦控室のドアを、僕は少しの緊張と共にノックした。
「はい……どうぞ」
中から聞こえた、少し上ずった声。
僕は深呼吸を一つして、重厚な扉をゆっくりと開いた。
──香蓮、準備は……。
言葉は、途中で宙に溶けて消えた。
部屋の中央。大きな鏡の前に立っていたのは、純白のウェディングドレスに身を包んだ、僕の最愛の人だった。
183センチの長身と、無駄のないしなやかなプロポーション。それが、繊細なレースとシルクで仕立てられたドレスを、まるで海外のトップモデルのように完璧に着こなしている。
背中まで伸びた黒い艶やかな髪は美しく結い上げられ、輝くティアラと純白のベールが、彼女の顔立ちをこの上なく神聖なものに引き立てていた。
まさに、女神のような美しさ。
僕は文字通り、息を呑んで立ち尽くしてしまった。
「……〇〇」
香蓮は、頬を薄紅に染め、もじもじと指先を絡ませながら僕を見上げた。
「どう、かな……? その、やっぱり私みたいなデカい女が純白のドレスなんて、変じゃないかな……。ヒールも履いてるから、〇〇より背が高くなっちゃってるし……」
昔から抱え続けてきた彼女のコンプレックスが、この大一番で少しだけ顔を出したらしい。
不安げに揺れるその瞳を見て、僕は自分のタキシードの襟を正し、彼女の目の前へと歩み寄った。
──変なわけないよ。
僕は彼女の白い手袋に包まれた手を、そっと握る。
──世界一、綺麗だよ。僕の自慢の、最高のお嫁さんだ。
「……っ!」
僕のストレートな言葉に、香蓮の瞳から一瞬で不安が吹き飛び、代わりに歓喜の涙がじんわりと浮かんだ。
「〇〇〜〜っ!! 大好きぃっ!!」
感極まった香蓮が、ドレスの裾を翻して僕に勢いよく飛び込もうとしてきた。
「ああっ、新婦様! ダメです、メイクが崩れますしドレスにシワが!! 新郎様も今はハグ禁止です!!」
すかさず控室のメイクさんが悲鳴を上げて割って入り、僕たちは苦笑いしながら引き離された。
それでも、香蓮の顔には満面の、世界で一番幸せそうな笑みが浮かんでいた。
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挙式前の歓談の時間。
僕たちの控室(兼ウェルカムスペース)には、現実(リアル)の友人たちが集まってくれていた。
「いやー、まさかこひーが一番乗りで結婚するとはねぇ! 人生何があるか分かんないわー!」
ドレスアップした金髪の小柄な女性、美優さん(フカ次郎)が、シャンパングラスを片手に豪快に笑う。すでにできあがっているようで顔が赤くなっている。
「美優! アンタはもう少し静かにしなさいよ、一応厳粛な場なんだから」
香蓮がツッコミを入れつつも、親友の祝福に嬉しそうに目を細めている。
そこへ、綺麗なお辞儀と共に現れたのは、チーム『SHINC』の面々だった。
「香蓮先輩、〇〇様。本日はご結婚、誠におめでとうございます」
リーダーの新渡戸咲さん(ボス)が、相変わらずの丁寧な敬語で祝辞を述べてくれる。他の新体操部のメンバーたちも、少し大人びたパーティードレス姿でニコニコと僕たちを囲んだ。
「香蓮先輩のドレス姿、本当にお綺麗です……! 〇〇さんも、タキシード姿がすっごく素敵ですね!」
無邪気な彼女達の一人が、僕を見て感嘆の声を漏らした。
その瞬間。
以前のお茶会であれば、ここで室温が氷点下に下がり、香蓮から凄まじい殺気が放たれていたはずだ。
だが、今日の香蓮は違った。
「ふふっ。……でしょ?」
香蓮は僕の腕に自分の腕を絡めると、左手の薬指に輝くプラチナの結婚指輪を、これ見よがしに女子高生たちの前に掲げてみせた。
「カッコいいでしょ? でも残念。〇〇は、ぜーんぶ私だけのものだからね♡」
それは、威嚇というよりも、完全なる『正妻の余裕』だった。
法という絶対の盾と、結婚指輪という鎖を手に入れた彼女には、もはや泥棒猫の影に怯える必要などないのだ。堂々たるマウント宣言に、咲さんたちは顔を見合わせて笑った。
「ふふ、完敗です。お二人とも、どうか末永く……お爆発してください!」
咲さんのユーモア交じりの祝福に、場が和やかな笑いに包まれる。
──あ、そういえば香蓮。エントランスにすごいお花が届いてたよ。
「え? 誰から?」
──宛名がね、『ピトフーイ&M』ってなってたんだ。血のように真っ赤なバラと、毒々しいくらい鮮やかなピンク色の百合が混ざった、信じられないくらい巨大なフラワースタンドだったよ。式場のスタッフさんが『外国人の方のお名前でしょうか?』って困惑してたけど。
僕が苦笑しながら報告すると、香蓮も呆れたようにため息をついた。
──メッセージカードには、『死が二人を分かつまで、せいぜいイチャつきなさい!』って書いてあった。
「……あの二人らしいね。ま、GGOでの借りもあるし、素直に受け取っておいてあげようかなり」
香蓮は嬉しそうに微笑み、僕の腕をさらに強く抱きしめた。
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ステンドグラスから眩い光が差し込む大聖堂。
パイプオルガンの荘厳な調べの中、僕たちは神父の前に立っていた。
「新郎〇〇。あなたはここにいる小比類巻香蓮を妻とし、病める時も、健やかなる時も、これを愛し、これを敬い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
──はい、誓います。
僕の迷いのない声が、静かなチャペルに響く。
続いて、神父が香蓮へと向き直った。
「新婦、小比類巻香蓮。あなたはここにいる〇〇を夫とし、病める時も、健やかなる時も、これを愛し、これを敬い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
香蓮は、ベール越しに僕の目を真っ直ぐに見つめた。
その瞳の奥には、初めて出会った合コンの時の寂しげな色も、GGOでの狂気も、コンプレックスへの怯えもない。ただ、深く、果てしなく重たい愛だけが満ちている。
「はい……誓います」
香蓮はそうはっきりと答えた後。
僕にしか聞こえないほどの、極めて小さな囁き声で、こう付け足した。
「……たとえ死が二人を分かとうとしても、絶対に離さない。〇〇は、永遠に私だけのもの」
神への誓いすらも上書きするような、彼女らしい、激重な愛の宣誓。
普通なら恐れ慄くようなその言葉が、今の僕には、何よりも心地よい子守唄のように響いた。
──喜んで、一生捕まっているよ。
僕が同じように囁き返すと、香蓮の瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。
僕は彼女の純白のベールをゆっくりと持ち上げ、その涙を拭うように、愛しい唇に深く、誓いのキスを落とした。
参列者たちから、万雷の拍手とフラワーシャワーが降り注ぐ。
僕たちは、名実ともに夫婦となったのだ。
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その日の夜。
披露宴と二次会を終え、僕たちは二人の新居(元々は香蓮のマンションだが、ちゃんとこの一室を購入した)へと帰ってきた。
重たいドレスやタキシードから解放され、シャワーを浴びて薄手の部屋着に着替えると、ようやく「終わったんだ」という実感が湧いてくる。
リビングのソファーに腰を下ろすと、香蓮が小走りでやってきて、僕の隣にピタリとくっついた。その手には、今日役所に提出してきたばかりの「婚姻届受理証明書」が、立派な額縁に入れられて握られていた。
「ねぇ、〇〇。これ、寝室の一番目立つところに飾ってもいい?」
──いいけど……そんなに大事なレアアイテムみたいに扱わなくても。
「大事だよ! だってこれこそが、私と〇〇を繋ぐ最強の装備なんだから!」
香蓮は証明書を胸に抱きしめ、最高に幸せそうな、そして少しだけ危ういスマイルを浮かべていた。
「ふふ……これで、法の下でも〇〇は完全に私の所有物。もう誰にも文句は言わせないし、〇〇も絶対に逃げられないからね」
──逃げるつもりなんて、最初から一ミリもないよ。
僕が苦笑いしながら彼女の頭を撫でると、香蓮は額縁をそっとテーブルに置き、不意に僕の肩を強く押した。
「ふふっ……」
抵抗する間もなく、僕は柔らかいソファーの背もたれへと押し倒される。
そのまま僕の上に馬乗りになるような体勢で、香蓮が覆いかぶさってきた。彼女の長い脚が僕の腰に絡みつき、逃げ道を完全に塞いでしまう。
「……本当に?」
彼女の大きな瞳が、獲物を前にした肉食獣のように、だがとろけるような甘い情欲を湛えて僕を見下ろしている。
──本当だよ。
「……嬉しい。ねぇ、〇〇……私、もう我慢できない」
香蓮の手が、僕の部屋着の胸元へと伸びる。
震えるけれど確かな手つきで、ボタンが一つ、また一つと外されていく。露わになった僕の素肌に、彼女の熱い吐息が直接吹きかかり、背筋に甘い電流が走った。
「あぁ……〇〇の匂い。心臓の音……全部、私だけのもの……」
香蓮は僕の胸板に熱い頬をすりすりと押し付けながら、恍惚とした声を漏らす。
そして、彼女の顔がゆっくりと持ち上がり、その濡れた唇が僕の首筋へと吸い付いた。
「んっ……」
ちゅっ、という生々しい水音が静かな部屋に響く。
軽く歯を立てられたかと思うと、肉を吸い上げるような強い力で、執拗に同じ場所が貪られる。
──っ、香蓮……あ……。
「痛い? ごめんね……でも、消えないくらい濃く、印(マーキング)、つけさせて。〇〇の身体中、私の痕でいっぱいにしたいの」
彼女の舌先が、僕の肌の熱を直接味わうように滑っていく。鎖骨を舐め上げ、耳たぶを甘噛みし、僕の口から漏れる吐息のすべてを飲み込むように、唇が重なった。
息をする隙間さえ与えない、深くて重い接吻。
絡み合う舌。甘い唾液が混ざり合い、頭の芯が痺れて真っ白になっていく。
彼女の183センチのしなやかな身体が僕にぴったりと密着し、その柔らかい胸の感触と、女性特有の甘い匂いが、僕の理性を容赦なく削り取っていく。
僕も彼女の華奢な背中に腕を回し、その滑らかな肌を強く引き寄せた。
「ん……っ、はぁ……〇〇っ、もっと、もっと私を感じて……」
唇が離れると、銀色の糸が切れる。
香蓮の瞳は情欲に濡れ、とろとろに溶けきっていた。彼女は自らの部屋着の襟元を無造作にはだけさせ、白く美しい肌を惜しげもなく僕の眼前に晒す。
「私を見て。私だけを愛して。……〇〇の全部を、私が骨の髄まで食べ尽くしてあげるから」
──お手柔らかにお願いします、香蓮。
僕が熱を帯びた声で答えると、彼女は妖艶に微笑み、僕の耳元でねっとりと囁いた。
「手加減なんて、絶対にしないよ。……これから毎日、一生かけて、〇〇を狂わせるくらい愛してあげるんだから。覚悟してね、私の旦那様♡」
再び、重く甘いキスが落とされる。
ソファーの上で絡み合う二つの身体は、もはやどちらがどちらのものか分からないほどに溶け合っていく。
窓の外には、新しい季節の始まりを告げる穏やかな夜空が広がっている。
明日からもきっと、彼女の重すぎる愛情に振り回され、甘やかされ、時には理不尽な嫉妬に付き合う日々が続くのだろう。
でも、それがいい。彼女の中で愛され尽くすことこそが、僕の何にも代えがたい幸福なのだから。
改めて、僕には少し感情が重くて、最高に愛おしい『妻』がいる。
最後までお付き合い頂きありがとうございました!
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次はリーファちゃんメインでも書こうかなー、と考えてます。
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