ダンジョンにサーヴァント7騎のマスターがいるのは間違っている 作:ルーニー
街でのモンスター騒ぎから早数日。あれからあの女神たちから何かしらの接触もなく、ギルドからも、まぁエイナさんから心配しただの大手のファミリアにあんなこと言うなんてだのと愚痴を言われはしたが、特にペナルティのようなことは何も言われておらず、特筆することもない平和な時間が流れていた。
今日も特に何事もなく鍛錬に時間を費やしてもよかったが、神ヘスティアから頼まれていたベル君と一緒にダンジョンに潜ることにした。
「ほうほう、ほう」
ベル君の邪魔にならない場所でモンスターを倒しながら、ベル君の戦う様子を見る。当たり前といえばそうなのだが、最初のころよりも戦う姿に板がついてきたというか、戦うことへの姿勢が変わったというか、ついひと月ほど前よりもずっと様になるようになっていた。
「お疲れベル君。久しぶりに一緒にダンジョンに潜ったけど、結構動けるようになってたね」
モンスターの脳天を砕いてチリへと変え、落ちた魔石を拾いながら同じく魔石を拾っているベル君に話しかける。ベル君も褒められて悪い気分ではない様子で少し照れたような顔をしたが、何かを思い出したかのようにすぐに表情を曇らせた。
「いえ、僕なんてまだまだですよ」
手に持った業物の剣を見て、自身の実力不足を嘆くかのようにため息を吐いた。ベル君の持っている剣、あの祭のモンスター騒動の最中に神ヘスティアから賜ったものらしく、シルバーバックを倒すのに一役買った最上級の剣だとか。
見た事のない剣ということでつい好奇心も逸ったこともあり、解析魔術を使ってみたのだが、なんと解析不可能だった。宝具級の解析も頭がはちきれそうになりながらも解析できた俺としては解析できないという事実に驚いた。俺の腕が悪かったのか、それとも乖離剣・エアのように特殊な事情があるのか。
神ヘスティアに作成した経緯を(無理やり)聞いてみたら、かの鍛冶神であるヘファイストスの作った神造兵器であるとのことだった。アーチャーはランクがだいぶと落ちるとはいえ神造兵器ですら投影して見せているためおそらくは前者だとは思うのだが、俺でも宝具級の解析だけならしばらく激しい頭痛に襲われるが大丈夫だったはずなのに、どうして不可能なのかがわからない。魔術の修行をもっと重ねる必要があるが、同時に神ヘスティアには悪いが1度アーチャーに解析が可能なものか確認してもらう必要があるかもしれない。
「……あの、フジマルさん」
モンスターの魔石も集め終え、解析できなかった剣のことを考えているとベル君が話しかけてきた。いかんいかん。ベル君の剣に意識を割き過ぎていたか。
「ん?どうしたんだい?」
「ずっと聞きたかったんですけど、どうしてその杖で戦っているんですか?魔法を使うわけでもないのに、剣や弓で戦った方がいいんじゃないのかなぁって思いまして」
そう言って俺の背中に背負っている杖を見る。確かに、戦いの場においてメイスでもない限り手傷を負わせるということにおいて刃物を使わないというのは戦いにおいて不利であるのは間違いない。まぁ、打撃という点では相手にダメージを与えているのは間違いないし、過去の戦争においても投石も戦場において十分兵器として成り立っていた。
しかし、それはあくまで人と人との戦いにおいてだ。人よりもはるかに頑丈で強いモンスターが相手となれば、人との戦闘におけるノウハウはあって無いに等しい。人の力で投げた石程度では傷一つ負わせられない。人の振るう棒では硬い筋肉にはじかれるだけ。そうならないために肉を断つ刃物というのは、この世界において重要な攻撃手段である。
「……まぁ、別に問題はないからだなぁ」
けど、例外というのは何事にもある。人を超えた筋力があれば投石も立派な武器になりうるし、噂に聞けば武器を使うことなく肉体のみで戦う冒険者もいるらしい。俺も強化の魔術無しでも杖を使って戦う分には何も問題はない。なんなら素手であってもモンスターを倒せる。現に上層にいる程度のモンスターなら問題なく倒せているし、なんなら以前下層から出てきた牛ですらも強化の魔術を使っているとはいえ杖で倒している。
「問題ない?」
「別に剣や弓が使えないわけじゃないけど、これを使う方が慣れてるからね」
事実、剣や弓、槍はサーヴァントたちに鍛えられたものであり、腕が錆びるような真似はしていない。剣を振るえば並みの剣士より、槍を突かば並みの槍兵よりも、弓を携えば並みの弓兵よりも動ける自信はある。まぁ、セイバーやランサー、アーチャーのように一を究めた達人には到底届かない程度の腕でしかないが、それでも並みの凡人以上に働く自信はある。
「それに、この杖は我が師から賜ったものだからな。この杖を使い続けていたいって思うわけよ」
風を切るぐらいに杖を曲芸じみたように回し、回したまま杖の先端を地面へと突いて瞬時に回転を止める。乾いた木を叩く心地いい音がダンジョン内に響いた。杖はいい。強化すればこん棒にも槍のようにも剣のようにも振るうことができる。魔力を用いれば何にでもできるのだ。
俺を鍛えてくれた師匠は7人いるが、その中でもこの杖をくれたキャスターにはかなり世話をしてもらった。ルーン魔術を詳しく教えてくれたり、杖での戦い方やケルト式槍術での戦い方まで教えてもらった。
まぁキャスターには
「現に、モンスターを倒すのに苦労も何もしていない。要は使い方なんだよ、武器っていうのは」
最も、俺には魔術という鬼札がある。キャスターとアーチャーに教わってきた魔術が。もちろん別に杖がなければ使えないというポンコツであるわけではないが、魔術の触媒としてこれ以上にないほど優秀でもあり
「本気を出せばレベル5程度、ゴブリンを倒すのと同じぐらいたやすいさ」
「いや、それはさすがに無理でしょう」
俺の言葉にベル君は苦笑しながら否定する。まぁ、さすがにゴブリンのように容易く倒すのは無理だろうが、冗談でもなく倒す自信はある。レベル5の実力はあの祭でのモンスター騒動で見ている。さすがに全力、というわけでもないだろうがあれよりも多少実力が上がった程度であれば、全力を以てすれば倒す自信はある。
「ま、レベル5以上と戦うなんてことはそうそうないから証明はできないんだけどな」
もしレベル5以上と戦うとなれば、それは偶発的で突拍子のない理由か、ファミリア間の戦争でしか戦うことはないだろう。戦争となれば相手の規模にもよるが、レベル5以上の相手がいるとなるとサーヴァントを使わざるを得なくなる。まぁ、何でもありの状況になれば容赦なくアサシンで要人を暗殺、バーサーカーで蹂躙する気ではあるのだが。ランサーやライダー、それとキャスターは強者と手柄を求めているから伝えれば勝手に動いてくれるだろう。セイバーは頼めば動いてくれるだろうし、アーチャーは小言を言いながらも動いてくれると思う。
……改めて思うけど、1つや2つのファミリア程度簡単に潰せるな、このメンツ。
「……さて、無駄話もここまでにして、そろそろ帰ろうか」
「あ、もうそんな時間ですか」
ダンジョンに潜って結構な時間が経っている。これ以上潜っていると帰りが遅くなってアドバイザーのエイナさんもベル君の心配で怒るだろうし、神ヘスティアも心配かけるなと怒るだろう。2人で稼いだ分を考えればこれぐらいで帰るのが妥当だろう。
「しかし、ずっと思っていたことだが魔石を拾い集める時間がもったいないなこりゃ」
「そう、ですね。たくさんのモンスターを倒しても魔石を拾い集める手間が増えるのはどうにかしないといけないですね」
「誰かしら魔石を拾ってくれる人を募集した方がいいのかもしれないな」
腰につけているポーチには大量の魔石が入っている。しかし、その魔石もそこいらの雑魚モンスターの魔石であるがゆえに質はなく量を必要とする。量を欲しているが、その量を入れる袋も必要となってくる。量を入れる袋を持っていれば戦闘の邪魔になることはまず目に見えているがゆえに持っていけないというジレンマもある。
「ま、こればかりはすぐには解決できないだろうな」
ダンジョンに潜るためには冒険者である必要がある。しかし、大抵の冒険者は自分のレベルを上げることに集中している。しかもそれなり以上にプライドを持っている連中もいる。そうだというのに、いったい誰が好き好んで雑用扱いされることを望んでくる奴がいるというのか。
「サーヴァントに頼むのも気が引けるしなぁ。俺だけならともかく、ベル君がいるし……」
ライダーなら喜んで引き受けてくれそうではあるが、こんな些事にサーヴァントに頼りたくない。いや、
「まぁ、特段急いで解決したいものでもないし。気長に探すとするかな」
なんならベル君と交代で魔石を拾う係と戦闘する係を交代していってもいいのかもしれない。しかし、ずっとそのまま交代を続けるのは非効率だ。
どこかで魔石を拾う専門の冒険者を探さにゃいかんなぁ、これは。
・追記
感想で業物の剣≠ヘスティアナイフなんですか?というご質問があったのですが、ここでは業物の剣=ヘスティアナイフ、ということでお願いいたします。武具を投影する主人公にしては大雑把にしているだけです。
わかりにくくて大変申し訳ありません。
オリ主の魔術は
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サーヴァントから教えられそうなもののみ
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拡大解釈してもええんとちゃう?
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好きに魔術を使えてもいいじゃん!