鬼喰いの針~人間失格になった私は鬼として共食いします~   作:大枝豆もやし

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大分長い間書いてましたが、やっと終わらせることが出来ました。
ご愛読、ありがとうございます!


物語の終わり

 

 鬼が全滅して、一か月が経過した。

 多大な犠牲を払いながらも、宿敵である無惨は討伐された。

 本来なら歓喜する筈なのだが、鬼殺隊士たちはどこか重苦しい空気を醸し出していた。 

 

 無惨を倒したのは鬼殺隊ではなく、鬼である葉蔵だった。

 その葉蔵も鬼との戦闘によって相打ち。

 鬼は鬼によって滅んだのだ。

 

 これは鬼殺隊の勝利ではない。

 鬼という種族が勝手に暴れ、勝手に滅んだ結果である。

 

 文字通り血の滲む鍛錬を重ね、文字通り命懸けの任務を熟してきた自分たちが何も出来なかった。

 あの強大な獣と龍に怯え、手も足も出ず、どちらも死んでくれと祈る事しか出来なかった。

 鬼殺隊を名乗っていながら、鬼を殺す事が出来ず、最期は“鬼頼み”をした。

 戦えなかった不甲斐なさと、自分たちで鬼を倒せなかった不完全燃焼感は、どこか重い空気に包まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……全員揃ったね」

 

 柱が全員揃った事を確認すると、産屋敷が口を開く。

 

「行冥、義勇、杏寿郎、実弥、天元、蜜璃、小芭内、錆兎、無一郎。今まで本当にありがとう。まさか、柱が全員揃ったままこの日を迎えられるとは思っていなかった」

 

 柱は全員生存。

 重傷こそ負ったものの、命に別状はない上に回復の兆しもある。要するに五体満足ということだ

 

「では早速本題に入ろう。今日が最後の柱合会議だ」

 

 最後。

 彼らの戦いは終わったのである。

 そしてそれは………。

 

「本日を以て、鬼殺隊は解散する」

 

 彼らの存在意義がなくなったことを意味している。

 

「長きに渡り、身命を賭して世の為人の為に戦って戴き、尽くして戴いたこと……産屋敷家一族一同、心より感謝申し上げます」

 

 産屋敷は奥に控えていた妻や子供達と同時に頭を下げる。

 

 

「顔を上げてくださいませ!」

「礼など必要御座いません! 鬼殺隊が鬼殺隊で在れたのは産屋敷家の尽力が第一です!」

「……ありがとう。義勇、実弥。そう言ってもらえると私も救われる」

 

 産屋敷たちは顔を上げた。

 

「それじゃあ、皆はこれからどうするんだ?」

「そうだな……しのぶのヒモにでもなって碁でも打つか」

 

 けっこう最低な発言をいい笑顔でする義勇。

 その場にいる者たちは若干引きながらもその光景を想像し、似合っていると感心した。

 

「冨岡、いくら胡蝶妹が葉蔵さんの会社に入社出来たからといって、甘えすぎだろ」

「……冗談だ。しばらくは柱として貯めた賃金があるからコレを切り崩す」

 

 伊黒の発言に対してバツが悪そうに答える義勇。

 

「……まさか、柱が全員揃ってこの日を迎えるだけじゃなく、子供たちの結婚まで見届けられるなんてね」

 

 この一か月足らずで、結婚ラッシュが続いた。

 実弥は胡蝶カナエと、義勇は胡蝶しのぶと、小芭内は蜜理と、錆兎は真菰と。

 未だ式は開いてない。今回の後始末が終わってからゆっくりとやる予定である。

 

 就職も万全である。

 胡蝶家は二人とも葉蔵が運営していた製薬会社に内定が決定しており、葉蔵と縁がある者の何人かは葉蔵か運営していた会社に入社する予定である。

 

 実に明るい未来。

 誰一人欠ける事無く明日を迎え、各々が忘れていた戦いのない世を生きようとしている。

 

「これも全部……葉蔵さんがいたおかげですね」

「「「・・・」」」

 

 沈黙。

 甘露寺の発言によって重い空気がその場を支配した。

 

「葉蔵さんがいてくれたから、私たちは無事生きられました。もし、あの人がいなかったら………」

「その通りだ! あの鬼がいなければ我ら鬼殺隊は皆殺しにされていた! そこは感謝している!」

「そうだ。あの人がいなかったら、俺らは為す術無くやられていた。……あの人には、足を向けて寝られらない」

 

 甘露寺、煉獄、伊黒の順に発言する。

 

 

「けど、あの人は死んでしまった」

 

 

「「「………」」」

 

 重苦しい空気が更に重くなった。

 

「私たちはあの人に助けられてばかり。蟲毒と化した藤襲山で助けられて、外でも人を襲わず鬼を退治してくれて、隊士達が退治しようとしているのに見逃してくれて、上弦の鬼もほぼ全部あの人が倒してくれた」

「……そうだな。葉蔵がいたおかげで俺たちは派手に生存確率が高くなった、無惨を倒した以外にも、俺たちはあいつに借りを作りっぱなしだ」

「……なんとかして、葉蔵さんと生きられる未来はなかったのでしょうか」

「ソレは無理だね」

 

 ぴしゃりと、産屋敷が断言する。

 

「お、お館様!? それは一体どういうことでしょうか!?」

「言葉通りだよ。針鬼は針鬼である限り、私達鬼殺隊と……いや、人と同じ道を歩むことはなかった」

「……その通りだ」

 

 今まで黙っていた悲鳴嶼が初めて発言した。

 

「あの鬼は子供だ。強大な己の力を玩具のように使い、命を賭けた戦いを」

「そうだ、彼は子供だ。幼稚だ。だからあれだけ強く成れたんだ」

 

 否定的な悲鳴嶼の発言に対して、産屋敷は後ろ向きだが肯定するような答えを返す。

 

「何かを守り、誰かのために戦い背負っているものを己の力に変える。ソレも強さの一つだ。けど、自分以外の事を考えず自分の為だけに戦い、ただ戦う事を存分に楽しみ、戦いの中で何かを得て力に変えるのも、

また強さの一つだよ」

「それが幼稚ゆえの強さだと?」

「そうだ。幼稚故に、強さ際限がない。大した理由もなく、ただ楽しいというだけでどこまでも強くなる事に没頭出来る。その結果あれだけ強くなれたんだ」

 

 ネオテニーという言葉がある。

 子どもの状態を保ったまま成体になることであり、身近な例では犬が該当する。

 未熟化というのは一見、退化のように思えるかもしれませんが、そんなことはない

 特に脳の場合、未熟ということは、様々な知識や経験を柔軟に吸収、学習出来るという事。

 つまり、未熟である限り、ずっと成長し続けられるということである。

 

 葉蔵は未熟であった。

 未熟だからこそ成長し続け、戦いを楽しみ、永遠に進化し続けれられたのである。

 もし仮に、彼が大人になってしまえば、鬼としての成長は望めなかったかもしれない。

 

「それに、炭治郎から聞いた話だけど、彼は死ぬ間際に笑っていたそうだ。……笑って逝ける事が、彼が幸せだった証だと私は思っている」

「………」

 

 その光景は甘露寺も見ていた。

 黒い灰へと散る間際、やり切った笑顔の葉蔵を。

 あの顔を見てしまえば、もう何も言えない。

 

「……結局、アイツは派手に最後まで自分のやりたいようにやったという事か」

「そう言う事だ。だから彼に対して何か後ろめたいことを感じる必要はない。だって、彼は私たちの犠牲になったつもりなんて露ほどもない筈なんだから」

 

 産屋敷は立ち上がって話を続ける。

 

「でも、勝手に感謝するぐらいならバチは当たらない筈だ」

「そう、ですね……」

 

 元・柱達は葉蔵に黙とうを捧げた。

 葉蔵に対してあまり良い感情を持たない煉獄や、あまり縁のない無一郎も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最期の柱合会議から数日後、とある港では、我妻善逸、嘴平伊之助、栗花落カナヲ、不死川玄弥、竈門禰豆子、そして竈門炭治郎が集まっていた。 

 

「禰豆子ちゃあああああああん! ほんとに……ほんとに行っちゃうのぉおおおお!?」

「うん、私はお兄ちゃんと一緒に海外へ行くの」 

 

 禰豆子と炭治郎は鞄を背負い学生の制服を着ている。

 海外の学校に留学する為である。

 葉蔵との会話で海外に興味を持った二人は、産屋敷と葉蔵の伝手を使って海外へ留学することになったのだ。

 無論、外国語もちゃんと話せる。鬼殺隊として活動する時間の合間に勉強していた。

 

「カナヲちゃん、家のことお願いね」

「うん、だから二人は外国で安心して勉強していってね」

 

 カナヲは炭治郎の家に住んで二人の帰りを待つ。

 海外には半年もすれば帰れる。それに、しのぶやアオイ達も頻繁に様子を見に来てくれるとのこと。

 

「(しのぶ姉さんもカナエ姉さんもお嫁に行った。なら、次は私の番ね)」 

 

 カナヲは髪飾りにそっと触れる。

 今着けているこれはしのぶの髪飾り。

 現代で言う婚約指輪の代わりに、しのぶは義勇から新しい髪飾りを贈られた。

 炭治郎とうまくいきますようにと、ゲン担ぎの意味も込めてこの髪飾りを使っている。

 

「………行ってきます」

「ええ、行ってらっしゃい」

 

 カナヲの手を炭治郎がそっと握る。

 ふんわりとした、お日様の光のような温もり。

 炭治郎の思いが、優しさが伝わってくる。

 

 

「きいいいいいいい! 何見せつとんじゃああ!?」

 

 手を握りあう二人を見て、善逸が汚い高音をあげる。 

 

「禰豆子ちゃあん……俺も着いて行っちゃダメ?」

「ありがとう、でもこの旅は二人用なの。結構ギリギリだったのよ?」

 

 この時代、海外へ学ぼうとするものは多い。

 華族でも何でもないただの炭売りだった二人なんて、本来なら行けるはずが無かったのだ。

 

「(葉蔵さん、貴方はすごい方でした……でも、俺は貴方と同じ道を行きません)」

 

 炭治郎は懐から赤い杭を取り出す。

 葉蔵が消える際に遺したものである。

 

「(これだけじゃない。貴方は色んなものを遺してきました。……けど、貴方はソレを望んでしたわけじゃないんですよね)」

 

 葉蔵は最後まで人間の繋がりの中に入る事を拒んだ。

 個として生き、個として楽しみ、個として死ぬことを選んだのだ。

 死んだ後も何かを残し、継承させようとする意志なんて葉蔵にはない。

 何故なら、死んだら全てが終わりだから。死後なんて知ったこっちゃないから。

 そんな葉蔵の考えは、家族や仲間との繋がりを大事にする炭治郎には受け入れられなかった。

 

「(けど、あの人だからこそ見えた世界がある。現に貴方は俺たちでは辿り着けなかった領域に到達していた。たぶん、上弦の壱も貴方に影響されたんですよね?)」

 

 しかし、そんな葉蔵だからこそ時空をも操る力を手にした。

 何ものにも縛られず、何ものにも属さず、何ものにも囚われないからこそ。

 全てから解放され、自由になった葉蔵だからこそ手にすることが出来たのだ。

 

 人との絆、繋がる心、受け継がれる思い。

 ああいいだろう、とても大事なことであり、幸せな事だろう。

 しかしソレが全てではない。

 その枠外でしか見えないモノ、手に出来ないものはちゃんと存在する。

 葉蔵はソレを追い求め、掴み取り、満足して逝った。

 

「(俺も俺の幸せを追い求めます。貴方がそうしていったように)」

 

 

 新しい旅路は、こうして始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、各々が歩き始める。

 

 人生というゲームに挑むために。

 

 

 命というたったひとつの、幸せを手に入れるための参加券。

 

 生きとし生きる者たちはその権利を有している。

 

 人生は楽しんだ者が勝ち。存分に楽しむがいい。

 

 幸せの形は千差万別。世間や他人と違って当然。

 

 たとえ歪んでいようとも気にすることはない。

 

 思うがままに生き、幸せを手にすればいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【時の流法 物語のやり直し(アクタ・エスト・ファーブラ)

 

 

 

 

 ほら、楽しもうとしているプレイヤーが一人、ここにいる。

 





ふ~、やっと終わりました!

書きたいことは大体書けました。
上弦のトップ3と無惨を満足死させて、原作キャラを救済して、鬼を喰って強くなって、オリジナルの血鬼術使って、原作にはない意見を出して、そして上弦の鬼ともっとバトルを繰り広げる。
あとは鬼滅の刃の根本である絆と繋がりの否定。
私はssを書く際、アンチ要素を入れないと満足できない病気にかかってるんです。

ええ、本当に描きたいことは粗方書いちゃいました。
ただ、書きたい事に力を入れ過ぎて他をなおざりにしてしまったのが反省点です。

皆さん、応援ありがとうございました!
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