バトルスピリッツ コラボストーリーズ   作:バナナ 

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21コア「魅惑のビオランテ」

ここはとある場所にあるとある廃墟。

 

崩れ去った瓦礫の山々の上はトゥエンティらライダーハンターズの隠れ家である。

 

 

「あらトゥエンティ、もうお仕事に行くの??……熱心ねー」

「……イバラか」

 

 

短めの銀髪の青年、トゥエンティは次なるライダースピリット使いを狩りに赴こうと隠れ家を出ようとした直後、ねっとりとした声色の絶世の美女、イバラに呼び止められる。

 

 

「この間もあーんなにボロボロのボロ雑巾になって帰って来たのに、よくこんな短いスパンで狩りに行けるわね〜……私なんかまだ4枚よ??……分けて欲しいものだわ〜」

「フン……だったら今ここで貴様のライダースピリットを狩ってやっても良い」

「あーあー……冗談冗談!!私がアンタに敵うわけないじゃーん」

 

 

どこか掴み所の無いイバラ。だがトゥエンティは彼女のペースに流される事なく会話を進めて行き………

 

 

「あのダストとか言う無法者をユキカイ町に放り込んだのはオマエなのだろう?」

「っ!?!…あ…あらあら、な、なななんの話なのかしらん?」

「知っているぞ。オマエは大勢の男共を従えている事をな」

 

 

ユキカイ町にてダスト・トラッシュという青年が巻き起こした襲撃事件。それを裏で操っていたのは他でも無いこのイバラなのだが、トゥエンティは驚異の感の鋭さでそれを見抜いていた。

 

イバラは突然の事に動揺し、冷や汗が止まらなくなる。

 

 

「……まぁ良い……だがオレの邪魔だけはするな……さもなければ先ずはオマエから消す」

「もうトゥエンティ物騒〜……言われなくても何もしてませーん」

 

 

トゥエンティは脅すように宣言しながらこの場を去っていった。イバラはその背中を見ながら安堵するようにため息をついた。

 

 

「ふぅ〜……危にゃー危にゃー……トゥエンティに睨まれるとホントにオワコンのちゃんちゃんになりかなないわ〜」

 

 

この一瞬だけでトゥエンティと言う人間が如何に恐ろしい人物なのかを理解したイバラ。余計な事をしたら本当に何をされるかわかったものではないと直感で悟る。

 

 

「……それにしてもあの坊や、敵であるトゥエンティをあそこまで必死になって助けようとするなんてね〜………結構面白かったわ」

 

 

イバラはユキカイ町で見物していたアスラとエールの事を思い出しながらそう言葉を漏らした………

 

特にアスラだ。

 

敵であるトゥエンティをあそこまで必死に救おうとする姿は彼女にとって余りにも異常極まりないと感じていて………

 

 

「よし!!……せっかくだから遊んで来てあげましょ!!…うんうん、そうしましょ〜!!」

 

 

楽しみが増えた子供みたいな声を上げるイバラは、トゥエンティに続くように廃墟を去っていった…………

 

 

******

 

 

アスラとエールは次なる町、ライライ町へ向けて旅を進めていた。

 

しかし、今の時間帯は夜であり、2人はそれぞれ自分用の小さなテントを立てて就寝に付いていた。因みにこのテント2つを立てたのはアスラ1人だ。

 

 

「うぅーーーーーーむ……どうしたもんかな〜」

 

 

エールとムエが一緒のテントで就寝している中、アスラは1人自分のテントの中でデッキのカード、龍騎を眺めながら大きな唸り声を上げた。

 

 

「ユキカイ町で黄金の翼のカードが龍騎サバイブになった………ロンとのバトルでオレは確かに強くなってるって事はわかったけど………」

 

 

このままでは頂点王にはなれない。

 

まだ何かが足りない。ユキカイ町で龍騎サバイブというこれまでの比にならない程に強力な力を手に入れたが、その龍騎サバイブも決して最強ではない事もトゥエンティとのバトルを通して学んだ。

 

アスラはその事を痛感しているが、その先のヴィジョンが見えず、密かに悩んでいて………

 

 

「トゥエンティはオレの龍騎サバイブを利用してその力の限界を引き出した…………まだ何かあるはずなんだ……オレにしかできない龍騎サバイブの強化方法が………」

 

 

トゥエンティがグランドジオウというカードで龍騎サバイブを操った事を思い出しながらそう言葉を漏らすアスラ。

 

そう、あの時見たく、龍騎サバイブの力の限界を超えるような方法をアスラは欲していた…………

 

 

「だァァァー!!……わかんねぇ!!……何も思いつかねぇ!!だってオレバカだからァァァー!!!」

 

 

ただでさえ強い龍騎サバイブをそこからさらに強くするようなイメージが全然わかないアスラ。頭からプスプスと煙が上がり、ショートしてしまう。

 

しかしそれはこの先さらにバトルで勝ち星を上げ続けるためには必須条件なのは確かな事………

 

次の町はもうすぐ到着する…………

アスラに残された時間は残り僅かしかなかった………

 

 

 

******

 

 

早朝、日の光が差し込む森の中、スズメが囀り合う鳴き声が聞こえてくる中、アスラはただ1人Bパッドを構えていた。早朝特訓である。

 

早朝特訓と言っても、Bパッドを展開して、デッキを1人回ししたり、ダメ元でソウルコアを出そうとしたりする程度だ。しかし、その特訓の積み重ねがアスラの諦めない心の表れでもあり、彼をここまで成長させた1つの要因とも言えて…………

 

 

「っしゃぁ!!…先ずは考えるより動くだ!!…行くぜ、召喚!!……仮面ライダー龍騎!!」

 

 

手始めに相棒である赤きライダースピリット、仮面ライダー龍騎を召喚するアスラ。

 

 

「次はコイツだ!!…第二の龍騎!!」

 

 

立て続けに手札から引き抜き、Bパッドに叩きつけたのはコラボダンジョンで偶然発見した第二の龍騎。龍の尾を模した柳葉型の剣を装備した仮面ライダー龍騎が場に現れる。

 

 

「最後はオマエだ!!……召喚、仮面ライダー龍騎サバイブッ!!」

 

 

3体目の龍騎が現れると、その龍騎は左腕のバイザーを龍を模した銃器に変換させ、烈火の如く吹き荒れるカードをそこへ装填………

 

 

………サバイブ!!

 

 

と、無機質な音声が鳴り響くと共に、一瞬にして龍騎は新たな強化形態、龍騎サバイブへと進化を遂げる。

 

これにより、合計3体の仮面ライダー龍騎がアスラの目の前に出揃った。

 

 

「おぉ!!…やっぱライダースピリットが3体揃うと迫力がチゲェな!!………よし、んじゃ次はアタック行くぞ!!」

 

 

アスラはそう言いながらBパッド上の龍騎カードに触れようとする…………

 

 

………だが………

 

 

「あっ!!……や〜っと見つけた〜」

「ん?……どちらさま?」

 

 

女の人の柔らかい声がアスラの後ろから聞こえて来た。エールでもないその声に疑問を浮かべたアスラは咄嗟にその方向へと振り向く……

 

その先にいたのは絶世の美女とも言えるくらいの人物であり……

 

 

「ふふ、私はイバラ………ライダーハンターズのイバラよ、よろしくねソウルコアの使えない坊や❤︎」

「ら、ライダーハンターズ!?……トゥエンティと同じ組織の!?」

 

 

トゥエンティと同じ組織の一員である事を速攻でひけらかすイバラ。アスラの警戒態勢は一気に跳ね上がる。

 

因みに、組織の名前がライダーハンターズであると言う情報はユキカイ町の襲撃事件の後にテンドウとの会話から耳にしていた。

 

 

「アンタもオレの龍騎が目当てか!?……コイツは誰がなんと言おうがオレのだ!!…ゼッテー渡さねぇぞ!!」

「ノンノン!!……まぁ渡してくれたら嬉しいけど、今日は純粋にお友達になろうと思って!!」

「………………え」

 

 

イバラの意外な回答に拍子抜けするアスラ。

 

自分とライダーハンターズはいわば敵対関係にあるはずだ。トゥエンティを助けたのは彼がどうしても完全な悪人に見えなかったからで、基本は倒すべき敵である。

 

と、考えていたが、トゥエンティ同様、この女性からも完全な悪意は感じられなくて…………

 

 

「へ〜…意外と身体ごっついね〜」

「そりゃまぁ鍛えてますからァァァー!!!…………いやチゲェ!!触んじゃねェェェー!!!」

「まぁまぁ、そうお硬いこと言わないの」

 

 

知らぬ間にアスラの眼前まで近づいて来たイバラが彼の身体をベタベタ触って来た。アスラも力づくで振り解きたいところだが、相手が女性という事もあり、力が出せずにいた。

 

 

「ふ〜〜ん……筋肉質なとこ意外は普通の人間だと思うんだけどなぁ……ねぇねぇ坊やはなんでソウルコア使えないの!?」

「んなもんオレが聞きてぇよ!!……いいから離れてくれ!!」

「えぇいけず〜〜……でも離してやらない〜〜」

「うぁぁ!!?」

 

 

アスラを押し倒すイバラ。アスラは本能的にコイツが頭のネジが外れたやばいやつであると察する。

 

そしてイバラはアスラの上に跨りながらある事に気がつく。

 

 

「あれ、君全然ドキドキしないんだね??……私の事綺麗って思ったりしないの??」

「はぁ!?……言ってる意味がさっぱりなですけど!?……アンタは美人だとは思うけど普通に考えてこんなヤバイ女にトキメク方がどうかしてますってェェェー!!!!」

 

 

これまでのイバラの行為は全ていわゆるハニートラップと言うものだ。美しい美貌を武器に、対象の男性を色気じかけにかけ、その人物を意のままに操る。以前ユキカイ町で暴れ回ったダスト・トラッシュが良い例である。

 

しかし彼女の経験上、アスラは自分に靡かないタイプだ。因みにライダーハンターズの面々には全く通じない。

 

 

「もしかして坊や他に好きな女の子いたりするの??……おねーさん坊やの恋バナ聞きたいな〜〜」

「えぇ?……好きな女の子??………うーーーん…………ん??」

 

 

イバラにそう言われてアスラは頭の中で考えてみる。そうしたらなんか、ぼんやりと女の子のシルエットが出て来たが、それが誰なのかはアスラ自身にも分からなくて…………

 

 

「その反応!!やっぱりいるんだ!!……いいね恋バナ!!もっとやろうか!!……私の恋バナは長いよ〜…ストライクゾーン広いからね私!!」

「いや意味わかんねぇ!!…いいからそこをどけェェェー!!!」

 

 

だんだんイバラが怖くなって来たアスラ。もう恐ろしくてしょうがない。一刻も早く彼女と身体的にも精神的にも距離を置きたい。

 

するとそんな時だ。

 

アスラに救いの船が現れたのは…………

 

 

「ふぁ〜あ………朝っぱらから喧しいわね………どうせバカスラでしょ」

「エール!!」

 

 

寝起きのエールが欠伸をしながら現れた。アスラにとってはこれ以上にない救いの女神だ。

 

 

「エールゥゥゥー!!!……ここだァァァー!!助けてくれェェェー!!!」

「ん?」

 

 

そんな救いの女神の登場にいてもたってもいられなくなったアスラはコミカルに涙を流しながら助けを求める。

 

エールは寝ぼけながらもその方向へと身体を向ける………

 

するとそこには眠気なんぞ吹き飛ぶ光景が待ち構えていて…………

 

 

「なッ!?……何やってのよアンタ!?……誰よその女!!」

「お〜…君がエール・オメガちゃんだね〜私はイバラ、こう見えてトゥエンティと同じライダーハンターズの一員なのさ!!」

「はぁ!?ライダーハンターズ!?」

 

 

好きな男の子が謎の色気むんむんの女性に押し倒されている謎い状況に困惑するエール。めちゃめちゃ嫉妬しているが、それ以上に彼女がライダーハンターズの一員である事に驚愕していて………

 

 

「いや……この際どうでもいいわ……早くそいつから離れなさいよ!!」

「え??……じゃあエールちゃんが坊やとこうしていたいの?」

「ギャァァァー!!!……こぇぇぇぇ!?抱きしめるなァァァー!!……でもなんか良い匂いするゥゥゥー!?」

「なっ!?」

 

 

イバラが倒れているアスラを抱きしめ始めた。その謎の行為にエールは思わず顔を赤らめる。

 

 

「ねぇねぇ、坊やは私とエールちゃん。どっちに抱き締められたい?」

「!!」

 

 

イバラが抱き締めながらアスラに訊いた。アスラを早く彼女から引き剥がしたいエールだったが、この質問ばかりは本能的に気になってしまっていて………

 

 

「はぁ!?…んなもんエールに決まってるじゃねぇかァァァー!!……いいから離れろォォォー!!」

「っ!?!!」

 

 

即答だった。

 

アスラはイバラの拘束から解き放たれたくて必死だった。

 

そりゃ、今のこの状況を加味したらイバラよりもエールに抱きしめられた方が良いに決まっている。こんな愚問、答えは始めから一択だったのだ。

 

しかしそうだと知っていてもエールにはアスラの発言は耐えられなくて………………

 

 

「この………」

「え?」

 

 

倒されているアスラのすぐ横に殺気だったエールが現れる。イバラは思わずその場から咄嗟に避難するが、アスラは時既に遅し………

 

 

「このバカスラァァァー!!!」

「なんでだァァァーー!!!!!」

 

 

アスラはエールに地平線の彼方まで蹴り飛ばされた。

 

イバラはその様子を見て「うっふふ、仲が良いわね〜」と声を漏らし、御立腹であった。

 

 

ー…

 

 

「はいはーーい!!……じゃあ改めまして自己紹介ね〜…私はライダーハンターズのイバラ!!……この世界で一番美しい女よ〜よろで〜す!!」

「アスラです………」

「エールです………」

「あれれ??……なんか元気ないわね?…お腹空いちゃった!?…朝ですものね!!」

 

 

一段落したは良いものの、なんやかんや完全にイバラのペースになっている事を自覚しているアスラとエール。

 

正直言って今までで一番接しづらい。

 

 

「いや〜…最初はアスラ君を私の美貌で手中に収めようと思ったんだけど………無理だったか〜」

「やっぱ友達になる気なんてさらさらなかったんじゃねぇかァァァー!!」

 

 

意外と正直者なイバラ。

 

いや、これは正直者というよりかは口が軽すぎるだけと捉えるべきか………

 

 

「いや〜……私、お口がヘビーライトでさ〜」

 

 

極め付けはこの謎の語彙である。

 

意味がわからなさすぎる。会話にならない上にそれだけでせっかくの美貌が台無しだとも思えてくる。

 

 

「ところで2人は恋人同士なのかな?」

「は、はぁ!?……ち、ちちがうわよ!!バッカじゃないの!?」

「違うけど」

 

 

イバラに恋人同士なのかと唐突に聞かれて動揺するエール。しかしアスラはそれを聞いても特に揺らぐ事はなく、普通に返答した。

 

 

(何なのよこの女………恋人がどうとかって……私達って側から見たらそう言う仲に見えるのかしら…………って、私は別にこんなヤツどうとも思ってないんだからァァァー!!)

「??……どうしたんだよエール……」

 

 

慌てふためくエール。その内心で好意を否定する気持ちと無意識に肯定する側が争い始める。

 

アスラはそんな彼女の気持ちも知らずに疑問符を頭に浮かべた。そんな彼らの様子を見てイバラはニヤニヤしている。

 

 

「よし!!じゃあエールちゃん、私とバトスピ しましょうか!!……このアスラ君を賭けて!!」

「えぇぇぇぇ!?」

「はぁ!?」

 

 

突然のバトルの申し込み。しかも賭けるのはライダースピリットでもなく何故かアスラ本人だ。

 

その意味のわからない奇行に彼らはますます混乱してしまう。

 

 

(この人やっぱりアスラの事…………いや待て待て、なんで私そんなに必死なのよ!?…………落ち着け……落ち着きなさいエール・オメガ………コイツは一応仲間。仲間が盗られたら嫌よねよりゃ…………そう、仲間だから……仲間だから……バカスラは仲間だから……アホスラは仲間だから……チビスラは仲間だから………)

 

 

エールはまるで自分に催眠術でもかけるかの如く冷静さを取り戻していく。

 

そうだ。きっとこれは彼の事を仲間だと思ってるからに違いない。

 

 

「いいわよ、受けて立つわそのバトル!!」

「えぇ!?…受けるのぉぉぉ!?」

「やったね〜そうこなくちゃ!!」

 

 

話は何度も転がりながら結果的に2人の美人がアスラを取り合う事になった。

 

アスラは今自分がどれだけ男にとって羨ましい状況になっているのかを全く理解していない。

 

その後2人は自分のBパッドを展開。デッキをセットし、バトルの準備を瞬時に行った。

 

 

「このバトルで勝ったらアスラ君は私のモノよ〜…楽しみだわ〜」

「そんな事はさせない!!」

「あらあら必死なのね〜〜……そんなに嫌嫌の嫌?」

「ち、違うわよ!!…そんなんじゃなくて………い、いいからさっさと始めるわよ!!」

「はいはーい!!……可愛いわね〜」

 

 

………ゲートオープン、界放!!

 

 

「……ホントに始まったよ……なんなのこの状況……もう何がなんだか……」

 

 

アスラの理解が追いつかないまま、

 

オメガ家のエールとライダーハンターズのイバラのアスラを賭けたバトルスピリッツがコールと共に開始された。

 

先行はエールだ。

 

 

[ターン01]エール

 

 

「メインステップ、アグモンを召喚!!」

 

 

ー【太一のアグモン】LV1(1S)BP3000

 

 

「あらあら、可愛いトカゲちゃんねーーー!」

「トカゲじゃない!!…恐竜よ!!……召喚時効果でカードを4枚オープンして、その中の対象カードを加える!」

 

 

エールは太一のアグモンの効果で対象内になる2枚のカードを手札に加えた。

 

 

「ターンエンド!!」

手札:6

場:【太一のアグモン】LV1

【バースト:【無】

 

 

あんなおちゃらけた態度こそ取ってはいるが、イバラはライダーハンターズの1人。エールは気を引き締めてターンを送る。

 

 

[ターン02]イバラ

 

 

「メインステップよ〜……湖に咲く薔薇を2枚、ポンポンっと配置しちゃうわ!!」

「!!」

 

 

ー【湖に咲く薔薇】LV1

ー【湖に咲く薔薇】LV1

 

 

彼女の背後にまるで生きているかのように不気味で、巨大な薔薇が咲き誇った。

 

見た事がないカードにエールはより一掃警戒心を強めていく。

 

 

「このターンはエンド、さぁいらっしゃいエールちゃん!!…おねーさんがたっぷりと遊んだげる!!」

手札:3

場:【湖に咲く薔薇】LV1

【湖に咲く薔薇】LV1

バースト:【無】

 

 

悪意のなさそうな笑顔を向けながらそのターンをエンドとするイバラ。再びエールにターンが回ってくる。

 

 

[ターン03]エール

 

 

「メインステップ!!…創界神ネクサス、八神太一を配置!!……神託の効果でデッキからカードを3枚トラッシュに送り、その中の対象カードの数だけコアを追加!!」

 

 

ー【八神太一】LV1(0➡︎2)

 

 

「ふーーーん、創界神ネクサスか〜」

 

 

エールの身や周囲にはこれといった変化はないが、強力な創界神ネクサスである八神太一が配置される。

 

 

「さらに!!第二のアグモンを召喚!!」

 

 

ー【アグモン[2]】LV1(1)BP2000

 

 

2種目となるアグモンがエールの場に姿を見せる。

 

そして創界神ネクサスにもコアが追加されるのを目に移すなり、エールは「アタックステップ!!」と勢いよく宣言して見せて………

 

 

「第二のアグモンでアタック!!」

「ライフで受けるわ!!……ッ」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉イバラ

 

 

第二のアグモンでアタックを仕掛ける。鋭い爪がイバラのライフを1つ切り裂いた。

 

 

「よし、ターンエンドよ!!」

手札:5

場:【太一のアグモン】LV1(1S)BP3000(回復)

【アグモン[2]】LV1(1)BP2000(疲労)

【八神太一】LV1(3)

バースト:【無】

 

 

「あっれれーーー!?……もう一体で来ないのかしらん?……アスラ君が私の手に渡るのが嫌々なんでしょ??」

「だ、だから違う!!…戦術よ!!…アンタこそ早くしなさいよ!!…私はエックスよ!?」

 

 

アスラに対して素直になれないエールの気持ちをからかい、内心で笑みを浮かべながら、イバラは再び訪れた自分のターンを進めていく………

 

 

[ターン04]イバラ

 

 

「メインステップ〜……風魔ベニマトイちゃんいらっしゃぁい!!」

 

 

ー【風魔ベニマトイ】LV1(1S)BP3000

 

 

忍者の衣装を着た赤い小鳥が姿を見せる。

 

普通の緑デッキであれば単なる召喚に終わるが、イバラのデッキは違う。配置していた湖に咲く薔薇が発光していき………

 

 

「湖に咲く薔薇の効果発揮ゴー!!……コスト4以上の緑スピリットが召喚された時、コアを1つをネクサスに追加!」

「ッ……召喚しただけでコアを……!!」

 

 

湖に咲く薔薇のネクサスは2つ。つまりコスト4以上の緑スピリットが彼女の場に呼び出されるたびにコアが2つずつ追加される事になる。

 

イバラがどこまでこのバトルに対して本気なのか定かではないが、少なくともこの動きはどうしようも無く強力であって………

 

 

「さらにミツジャラシちゃんいらっしゃい〜…効果でコアブースト、さらに2枚の湖に咲く薔薇の効果でもう2つ追加よ〜」

 

 

ー【ミツジャラシ】LV2(2)

 

 

ミツバチのようなスピリットが現れると共にまたしても立て続けにコアが増えていく。

 

イバラはさらに増えたコアを使用して手札のカードを引き抜いた………

 

 

「そしてマジック、ハンドリバース!!…残りの手札を破棄してエールちゃんの手札の枚数分ドロー!!」

「減った手札が戻った………」

「すごいでしょ♡」

 

 

そしてイバラは続け様にアタックステップを宣言すると………

 

 

「ベニマトイちゃんでアタック!!効果でコア1つをリザーブに追加。ソウルコアの力でアグモンちゃんを疲労!!」

「!!」

 

 

ー【太一のアグモン】(回復➡︎疲労)

 

 

ベニマトイが小さな翼を広げ、動き出す。すると突風が発生し、エールのアグモンが横たわってしまう。

 

 

「ライフで受ける……ッ」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉ライフ5➡︎4

 

 

ベニマトイは脚に持つ忍法の巻物のようなモノをエールのライフに叩きつけ、それ1つを砕いた。

 

 

「うっふふ、もっと積極的に攻めてあげたいところだけど〜………楽しみはとっておかないとねん!!……ターンエンドよ〜」

手札:5

場:【風魔ベニマトイ】LV1

【ミツジャラシ】LV2

【湖に咲く薔薇】LV1

【湖に咲く薔薇】LV1

バースト:【無】

 

 

そのターンエンドしたイバラ。ここでようやくエールにターンが回って来た。

 

 

[ターン05]エール

 

 

「メインステップ!!…グレイモンを召喚!!」

 

 

ー【グレイモン】LV1(1)BP4000

 

 

 

立派な3本の頭角を持つ恐竜のような姿をしたデジタルスピリット、グレイモンがエールの場に現れた。

 

このスピリットが登場したと言う事はいわゆる攻めの姿勢であり、エールがこれから強力な攻撃を開始すると言う合図でもあって…………

 

 

「アタックステップッ!!……グレイモンでアタック!!…効果で風魔ベニマトイを破壊して1枚ドロー!!」

「あら〜…さよならベニマトイちゃん〜」

 

 

グレイモンの口内から放たれた火球がイバラのベニマトイを焼き尽くした。

 

さらにエールはここで畳み掛けると言わんばかりに手札からカードを勢い良く引き抜いてそれをBパッドに叩きつけた。

 

 

「フラッシュマジック、ガイアフォース!!」

「むっ……」

「この効果でミツジャラシを破壊して、グレイモンを回復させるわ!!」

 

 

ー【グレイモン】(疲労➡︎回復)

 

 

巨大な火球がミツジャラシを焼き尽くすと共にグレイモンが疲労状態から回復状態となった。

 

 

「おぉ!!これでグレイモンで2回、2体のアグモンで1個ずつライフを破壊すればエールの勝ちだぜ!!」

 

 

合計4回のアタックでエールの勝利が決まる。アスラもそれを喜ぶように声を漏らすが、イバラは「その言葉は失敗フラグよ!!」と高らかに宣言しながら手札のカードを引き抜く。

 

 

「フラッシュ神速、アグラオペリカンちゃんを神速召喚!!」

 

 

ー【アグラオペリカン】LV1(1)BP2000

 

 

「ッ……神速」

 

 

リザーブのコアのみを使用する事でフラッシュタイミングで召喚できる神速の効果により、ペリカンのようなスピリットがグレイモンの目の前に立ちはだかる。

 

 

「アグラオペリカンちゃんの召喚時効果!!…【旋風:1】によりアグモンちゃんを1体重疲労よ〜」

「っ!!」

 

 

ー【太一のアグモン】(回復➡︎重疲労)

 

 

アグラオペリカンのクチバシから発せられるエコーがエールのアグモン1体を重疲労させる。

 

重疲労とはいわゆる疲労を重ねたモノである。一度の回復で疲労状態となり、二度目の回復でようやく回復状態となる。

 

 

「グレイモンちゃんのアタックはアグラオペリカンちゃんが引き受けるわ〜」

 

 

イバラの指示によりグレイモンに飛びかかるアグラオペリカン。しかしグレイモンに首根っこを鷲掴みにされ身動きが取れなくなり、そのまま地面に叩きつけられて爆散してしまった。

 

 

「あらあら負けちゃった〜……でも」

「……ターンエンド……」

手札:5

【太一のアグモン】LV1

【アグモン[2]】LV1

【グレイモン】LV1

【八神太一】LV1(4)

バースト:【無】

 

 

「うっふふ、そうするわよね〜」

 

 

このターンで決めきれないならいっそ防御に徹したほうが良いと判断したエールは、追撃はせずそのままの状態でターンを終えた。

 

次は終始マイペースなイバラのターン。彼女が湖に咲く薔薇の効果で増え続けたコアを活かして強力なスピリットを呼び寄せるのは目に見えていて………

 

 

[ターン06]イバラ

 

 

 

「メインステップ……ちょこっとだけ本気出しちゃおーーーっと!!」

「ッ………何か……来る」

 

 

イバラは勢い良く手札のカードを引き抜き、それをBパッドに叩きつける。

 

 

「来なさい、ビオランテ・植獣形態ちゃんを召喚!!」

 

 

ー【ビオランテ(植獣形態)】LV2(5S)BP17000

 

 

「ッ……何よ……コイツ!?」

「や、ヤベー………」

 

 

イバラの場に現れたのは植物の体を持つ龍の姿をした怪物、ビオランテ。その不気味さ、異常さにバトルしているエールはおろかアスラさえもたじろいでしまう………

 

 

「この子の強さはヤバヤバのヤバなんだから!!……効果でコアを2つブースト!!さらに2枚の湖に咲く薔薇の効果でコアブースト!!……そのコアを使ってビオランテちゃんのLVを上げちゃう!」

【ビオランテ(植獣形態)】LV2➡︎3

 

 

止まらないコアブースト。ビオランテのLVとBPが飛躍的に上昇する。

 

 

「アタックステップ!!……やっちゃってビオランテ!!…効果でグレイモンを疲労!!」

「なっ!?」

 

 

ー【グレイモン】(回復➡︎疲労)

 

 

ビオランテはグレイモンに向けて口内から樹液を発射。グレイモンはたちまち疲労状態となってしまう。

 

 

「さらにフラッシュマジック、タフネスリカバリー!!…ビオランテちゃんのBPを2000上げて回復!!」

 

 

ー【ビオランテ(植獣形態)】(疲労➡︎回復)BP22000➡︎24000

 

 

「回復した!?……ライフで受ける!!……っ!」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉エール

 

 

効果により二度目のアタック権限を得たビオランテ。蔓を巧みに活かしてエールのライフ1つを破壊した。

 

 

「続けてアタックよ!!…今度はアグモンちゃんを疲労!!」

「くっ……」

 

 

ー【太一のアグモン】(回復➡︎疲労)

 

 

今度はアグモンがビオランテの樹液の餌食になる。アグモンはやる気をなくしたように尻餅をついて疲労状態となってしまう。

 

 

「さぁアタックはどうするのかなぁ!?」

「ッ…そんなの受けるに決まってるじゃない!!……ッ」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉エール

 

 

ビオランテによる連続攻撃でエールのライフが次々と砕け散っていく。

 

 

「うっふふ、アスラ君を得るまで残り2つね〜……あーーー楽しみだわ〜…ターンエンド」

手札:3

【ビオランテ(植獣形態)】LV3

【湖に咲く薔薇】LV1

【湖に咲く薔薇】LV1

バースト:【無】

 

 

ビオランテの疲労効果とマジックによる連続アタックにより一気に攻勢へと回ったイバラがこのターンをエンドとした。

 

次はエールのターンだ。しかし、ビオランテの効果の本領発揮はここからであって…………

 

 

[ターン07]エール

 

 

このターンのリフレッシュステップが回ってくる。エールのアグモンやグレイモン達が回復となるはずだったが………

 

 

「え……アグモンとグレイモンが回復しない!?」

「ふふ、ビオランテの効果で疲労したスピリットは次のリフレッシュステップで回復できない……その子達はまだおねんねしてなさーい」

 

 

ビオランテの効果により疲労したままとなっているアグモンとグレイモン。もう一体のアグモンも重疲労から疲労状態となっただけであるため、エールの場の3体のスピリットは全て疲労状態という状況でメインステップを迎える事になる。

 

ここに来て存在するスピリットの身動きが取れなくなるのはエールにとっては辛すぎるモノがあり………

 

 

「くっ……スピリットのLVをアップ……バーストをセットしてターンエンド」

手札:5

場:【太一のアグモン】LV3

【グレイモン】LV2

【アグモン[2]】LV2

【八神太一】LV1(4)

バースト:【有】

 

 

できることは限られてしまい、バーストのセットとレベルアップのみでそのターンをエンドとしてしまうエール。

 

次はイバラのターンだが………

 

 

「ねぇ……アンタは何を叶えてもらうの?」

「ん?」

「だからアンタもトゥエンティみたいに何か叶えて欲しい夢があるからライダー狩りなんて馬鹿みたいな事やってるんじゃないの?」

 

 

エールがイバラに訊いた。

 

トゥエンティと同じ組織に居るイバラ。だとすれば必ずあのちょび髭シルクハット………ウィルに何か願いを叶えてもらうために居るのではないかと……

 

致し方のない理由があるのではないかと考えていた………

 

 

「あぁ、そう言えば言ってなかったわね〜…私の願い、それは永遠の美貌を得る事よ」

「……は!?」

「そりゃだって〜…もったいないでしょ?…せっかくこんな美人で生まれたんだから老けていくのなんて、見たくないでしょ?」

「知らないわよ!!」

「えーーー…エールちゃんから訊いて来たんじゃない〜」

 

 

イバラの願いを聞くなり拍子抜けするアスラとエール。

 

無理もない彼女の願いはトゥエンティとは違い、なんとも適当だった。まるでどこまで本気なのかがわからない彼女の軽い性格を表しているかのようであり………

 

 

「だいたい、そんなに長生きしてなんになるって言うのよ!!」

「ノンノン!!…わかってないなーーー綺麗な私が生き続ける事に意味が有り有りの有りなのよ〜」

 

 

会話が通じない。エールやアスラは本当の意味でイバラがまともな人間ではない事を悟る。

 

 

「さっ……私のターンね〜……このターンで決めるわよーーー!!」

 

 

トドメを刺すと言わんばかりにイバラがターンシークエンスを開始させていく。絶体絶命に陥っているエールだが、この場は何も反撃する事はできず………

 

 

[ターン08]イバラ

 

 

「メインステップ〜……2枚の湖に咲く薔薇を最高LVにして、アタックステップ!!…ビオランテちゃん、やっちゃって!!」

「エールーーー!!」

 

 

ビオランテに攻撃の指示を送るイバラ。エールを心配するアスラが声を荒げた。

 

しかし、その様子にエールは何故か笑って見せて………

 

 

「ふふ……待ってたわ、その攻撃!!」

「!?」

「相手のアタックによりバースト発動!!」

 

 

エールの反撃だ。彼女の伏せていたバーストカードが火を吹くように勢い良く反転して行く………

 

その正体は………

 

 

「煌星銃ヴルムシューター!!…効果により、ネクサスカード、湖の咲く薔薇を破壊して1枚ドロー!!…その後召喚!!…不足コストは他のスピリットをLVダウンして確保!!」

 

 

ー【煌星銃ヴルムシューター】LV1(5S)BP6000

 

 

「ッ……」

 

 

空から放たれた炎の銃弾。それは瞬く間にイバラの湖に咲く薔薇を撃ち抜き、焼き尽くして見せると、エールの場に伝説の星龍を模して造られた銃が現れていて………

 

 

「うっふふ……だからどうしたって言うのよ?…ヤケのケンパチにでもなったつもり!?…そんなんじゃ私のビオランテちゃんは倒せないわよ!!」

 

 

バースト召喚されたのは所詮、単騎ではどうしようもなく性能が低いブレイヴ。イバラは余裕な表情を浮かべる。

 

だが、エールのこのヴルムシューターは単なるブレイヴではなくて………

 

 

「甘いわね!!…ヴルムシューターの本領発揮はここからよ!!」

「!!」

「フラッシュ煌臨を発揮!!…対象はヴルムシューター!!」

「な、何ですって!?…ブレイヴを対象に煌臨!?」

 

 

煌星銃ヴルムシューター。

 

数多く存在するブレイヴの中でも稀有な【装填】の効果を持つ特殊なブレイヴ。本来であれば煌臨元になれないブレイヴも、この効果があれば煌臨元とする事が可能だ………

 

そして、今からエールが呼び出す煌臨スピリットと言えばアレしかないだろう………

 

 

「来なさい!!…私のエースカード、ウォーグレイモンッ!!」

 

 

ー【ウォーグレイモン】LV3(4)BP16000

 

 

高熱を宿す炎の球体を切り裂きながら中より現れ出たのはオメガ家のカードを象徴する1体、鋭い鉤爪の装備が特徴的な竜人、ウォーグレイモン。

 

さらに今回はその登場だけでは終わらず………

 

 

「ヴルムシューターの効果!!…煌臨元となったこのカードをウォーグレイモンに合体!!」

 

 

ー【ウォーグレイモン+煌星銃ヴルムシューター】LV3(4)BP22000

 

 

「おぉ!!…スッゲェェェー!!」

 

 

ウォーグレイモンの鉤爪と背中のシールドが消滅。その手には新たにヴルムシューターを握り、背中には薄桃色の翼が生えてくる。最後にその身を紅蓮の赤に染め上げられ、ウォーグレイモンはさらなる強化を果たした。

 

この光景にアスラも興奮し、歓喜の声を上げた。

 

 

「ビオランテのアタックは合体したウォーグレイモンでブロック!!」

 

 

エールの指示を聞くなり、向かってくるビオランテを迎撃すべく出撃するウォーグレイモン。

 

ヴルムシューターにガイアフォースの力を込めて炎の弾丸を連射するが、ビオランテは口内から樹液を吐きつけ、それを容易く撃ち落としてしまう。

 

 

「うっふふ!!…何それ、必死過ぎて寧ろ笑えるんですけど〜!!…フラッシュマジック、タフネスリカバリー!!…ビオランテちゃんのBPを2000上げて回復!!」

 

 

ー【ビオランテ(植獣形態)】BP22000➡︎24000(疲労➡︎回復)

 

 

「ッ……2枚目!?」

「これで私のビオランテちゃんの方が強くなったわーーー!!」

 

 

2枚目となるタフネスリカバリーでBPが増幅するビオランテ。その眼光を輝かせると共に、自身の身体と繋がる蔓を伸ばしてウォーグレイモンを締め付ける。

 

身動きが取れなくなったウォーグレイモンはどうにかして脱出しようと試みるが、その拘束力は高く、中々振り解けないでいた。

 

このままでは装甲ごと破壊されてしまうが、その前にエールはさらなるカウンターのカードをBパッドに叩きつける………

 

 

「フラッシュマジック、ダイナパワー!!」

「!!」

 

「この効果により、このターンの間ウォーグレイモンのBPを3000アップさせるわ!!……これで合計BP25000、ビオランテを超えた!!」

 

 

ー【ウォーグレイモン+煌星銃ヴルムシューター】BP22000➡︎25000

 

 

「あらやだ」

 

 

力の増幅を感じ、緑色の眼光を輝かせるウォーグレイモン。力づくでビオランテの蔓から脱出し、今現在込められる最大の出力をヴルムシューターに込めると、それをビオランテに向けて発射。

 

ビオランテは迎撃すべく再び口内から樹液を発射するが、今回の炎の弾丸はそれさえをも焼き尽くしながら突き進み、遂にビオランテ本体に命中。

 

流石に耐える事は出来ず、ビオランテはたちまち焼き尽くされ、激しい断末魔を上げながら消滅してしまった………

 

 

「っしゃぁ!!…流石エール!!あのデケーヤツをぶっ飛ばしやがった!!」

「ふふ、結構やるのね〜……じゃあターンエンドで」

手札:3

場:【湖に咲く薔薇】LV2(5)

バースト:【無】

 

 

余裕の表情でターンを切るイバラ。

 

場のカードはネクサスのみ、エールのスピリット総数からしても圧倒的に追い込まれているはずであるのに………

 

まだ奥の手があるのか、それとも単なる強がりなのかは知れた事ではないが、エールはこのターンで決着をつけるべくターンシークエンスを進行させていく………

 

 

[ターン09]エール

 

 

ビオランテの樹液による影響も消え去り、エールの場にいる全てのスピリットはこのターンで完全復活を果たした。

 

 

「メインステップは飛ばしてアタックステップ!!……ウォーグレイモンでアタック!!」

 

 

トドメを刺すべく、ヴルムシューターの銃口をイバラに向けるウォーグレイモン。

 

しかしこのタイミングでイバラはあるカードの発揮を宣言して見せて…………

 

 

「まだまだ甘々のちゃんちゃんだけどねっ!!……ネクサスカード、湖に咲く薔薇のLV2効果!!…このカード上のコア5個をトラッシュに置く事でビオランテスピリットをノーコスト召喚!!」

「なっ!?…このタイミングでまたアレを出すって言うの!?」

 

 

湖に咲く薔薇の隠された効果がここでまさかの起動。

 

ビオランテスピリットと言われてエールは思わず前のターンでやっと破壊できたあのビオランテを頭に浮かべるが………

 

 

「アレなんかよりも凄いわよーーー!!……召喚、バイオ怪獣ビオランテちゃん!!」

「!!」

 

 

森を覆い尽くす程の巨大な植物、いや、植獣のシルエットが現れる。

 

アスラとエールは直感でこの存在こそがイバラのエースカードである事を理解した。

 

そしてその驚異的な存在がエールのウォーグレイモンに牙を向けようとした…………

 

………その直後だ。

 

イバラのBパッドからまるでアラームのような音が鳴り響いて来たのは。その音はバトルに敗北した際に鳴る無機質な機械音ではなく、単なるタイマーによるアラームのようであり…………

 

 

「あっ……朝ごはんの時間だ〜帰らなきゃ」

「え」

「は!?」

 

 

そう言いながらイバラはBパッドのバトルモードを解除し、自分からバトルを放棄してしまう。その影響で巨大な植獣のシルエットは何もせずに消滅してしまう。この場合は当然棄権したとみなされ、エールの勝利となる。

 

だが普通に棄権したならまだしも、その理由はまさかの朝ごはん。

 

アスラとエールには理解出来なくて…………

 

いや、彼女の言動は初めから理解できてはいなかったが………

 

 

「それじゃーねー!!一緒に遊べて楽しかったわ〜……ちゃんと朝ごはん食べるのよ〜」

「え!?…ちょっと本気なの!?…バトルの続きはどうすんのよ!?」

「ん?…あー…じゃあまた今度アスラ君をテイクアウトしに来るわ〜」

「ダメに決まってるでしょ!?」

「うっふふ、そうよねーーー…ダメよねーーー…好きな子取られたくないわよねーーー…エールちゃーん!」

「なッ……だ、だだから違うわよッ!?」

「?」

「それじゃ、また会いましょーねー」

 

 

イバラは最後にそう言い残すとBパッドの端末を操作してワームホールを生み出し、そこを潜り抜けて行った………

 

彼女の姿が消えた途端、アスラとエールはどっと疲れが身体に来てしまい、思わずその場に座り込んだ………

 

 

「つ、疲れたな………」

「え、えぇ……ある意味トゥエンティより相手にしたくないわ………」

 

 

これでライダーハンターズの4人のうち3人と邂逅を果たした事になるアスラとエールであったが、その中でもイバラは特に関わりたくなかった。

 

理由はただ単に会話するだけで疲れるからである。

 

 

「むあ〜」

「あっムエ」

 

 

そんな中オレンジの小動物、ムエが呑気に欠伸をしながら起きてきた。この瞬間より、アスラとエールはなんとなくだが平和な時間が帰ってきてくれた事を自覚し始めた。

 

 

******

 

 

場所は変わり、ここはライダーハンターズの隠れ家。イバラは崩れているコンクリートの塊の上でスプーンを使い、カップアイスを食していた。

 

 

「あーーー癒しーーー…夏はやっぱりアイスよねん!」

「しかし、朝からアイスではお腹を壊しますよ」

「あ、ウィルーーー…今日も素敵ね、特にお髭とか」

「お褒めのお言葉、ありがとうございます」

 

 

そんな中、ライダーハンターズの主任的存在であるウィルがシルクハットの束を持ちながら現れる。

 

 

「エール・オメガとあのゴミに会って来たのですね?」

「あらあら、流石ねーーー…そうよ、初々しくて可愛かったわーーー…特にエールちゃんは養ってあげたいくらいよ」

「ふむ。中々言い返しづらいボケですね。ノーコメントでお願いします」

「ボケじゃないわ、そこそこ本気よ?」

 

 

イバラの言い返しづらい言葉にも、紳士的な態度ですぐさま言葉を言い返してみせるウィル。流石はまともな人間が誰もいないこのライダーハンターズをまとめているだけのことはある。

 

 

「って言うかーーー…なんでウィルはアスラ君の事嫌いなわけ?……まぁそりゃイケメンじゃないけどーーー……あっ、でも身長さえ伸びてくれればそこそこいけるかもねーーー」

 

 

イバラがウィルに訊いた。

 

スーミ村のアスラは薄汚い小僧だ。しかし、その人当たりの良さと器の大きさで数多くの人物からそれなりに良い印象を受ける事が多い。少なからずイバラもそう思っているからこそ、ウィルが何故彼の事が嫌いなのかを疑問に感じていて………

 

 

「いやはや、いけない事だもわかっていてもどうしても腹が立ってしまうのですよ………あんなソウルコアに愛されなかった者如きが、あの世界の力に選ばれたのだと思いますとね………」

「??……ふーん…美味しそうねーーー」

 

 

ウィルの言っている意味がわからなかったイバラは取り敢えず「美味しそうねーーー」と適当に返答してみる。

 

 

「そろそろ潮時かもしれません。トゥエンティには申し訳ないでしょうが、あの薄汚い小僧には消えてもらいますか……クックック」

「えーーーアスラ君殺しちゃうのー…残念ーーー」

 

 

さっきとは打って変わって紳士的な態度を崩し、薄気味悪い笑いを浮かべるウィル。どうするのかはわからないが、少なくともアスラを消せる事を嬉しく思っている様子。

 

そんな彼を側で見ていたイバラは「まぁ仕方ないか」と言った感じの表情を浮かべていた。

 

 

 

 




《キャラクタープロフィール》
【イバラ】
性別:女
年齢:22歳
身長:170cm
身分:マスター
使用デッキ:【ビオランテ】
好きなモノ:自分、イケメン、可愛いモノ
概要:ライダーハンターズの1人。絶世の美女だが、性格が破綻しており、大抵の登場人物は彼女に振り回される。自分の美貌を永久に残すべくライダーハンターズに入団する。


******


先日、ブラストさんが執筆中の7Guiltとのコラボ回が完結致しました!!
執筆してくださったブラストさん、ありがとうございました!!

※下記はコラボ回のページに飛べます

『特別編 - プロローグ -』
https://syosetu.org/novel/211455/29.html

『特別編 PART-Ⅰ【激闘! 赤き龍騎士】』
https://syosetu.org/novel/211455/30.html

『特別編 PART-Ⅱ【天雷同地! 黄金の龍王──キングギドラ】』
https://syosetu.org/novel/211455/31.html

『特別編 PART-Ⅲ【無限大の究極進化】』
https://syosetu.org/novel/211455/32.html


コラボ回だけでなく、当然本編もたいへん面白いですので、オススメです!!


最後までお読みくださり、ありがとうございました!!

次回は本編ではなく、プロローグ回として0コアを更新しようと思います!!
シイナが何故頂点王なのか、何故頂点王になった後アスラとロンのいたスーミ村に一度も帰って来なかったのか、1コアの時点で謎だった事が大方明かされると思います!!

今回の話は所々変更するかもです〜

人気投票は次回発表です!!
一応まだ受け付けてますので、是非清き3票をお願いします!!

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