ガンヴォルト 現地オリ主原作開始前スタート   作:琉土

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第五十話 それでも明日は続いていく

 

 

 

 

 

 あれからそれなりの月日が流れた。

 

 謡精暴龍を撃破し、デマーゼルを撃破し、暴走していたGVを助け出し……平和になりましたとさ、めでたしめでたし……とはならない。

 

 物語ならばこれで終わっても良いのだろうが、生憎私達は現実を生きている以上、これで終わるなんて事はまずあり得ない。

 

 被害にあった地区の復興は勿論の事、今回の事件の顛末や被害の補填等々、やるべき事が盛り沢山だ。

 

 幸い戦場は限定されていた事、避難は既に済ませていた事、そしてエリーゼが居た事で人的被害は0であったのは朗報と言える。

 

 しかし思ったよりも周辺被害が酷く、復興するのに相応の時間が掛かる事が確定している為、私も暫く情報管理部門で缶詰になる必要があった。

 

 その忙しさは何時ぞやの歌姫(ディーヴァ)プロジェクトにおけるデスマーチに相当していた為、本当に大変だった。

 

 それでも私の能力が強化された事に加え、情報管理部門の設立のお陰で大幅に負担は軽減されていた為、かなりマシにはなっていたのだが。

 

 

「フェムトくん、お疲れ様」

 

「ありがとう、エリーゼ」

 

 

 情報管理部門における私室での作業場にて、エリーゼが一息ついた私にお茶を差し出す。

 

 それを受け取った私はゆっくりとお茶を飲み、ほっと息を吐きながら力を抜きつつ、彼女が何故ここに居るのかを回想する。

 

 まず簡潔に言えば、エリーゼはやりすぎた。

 

 必要な事であったとは言え、死者の蘇生の乱発は今の人類における価値観では到底処理しきれない奇跡。

 

 そして、こう言った噂は戒厳令を出して情報封鎖を行っても、どうしても広まってしまう物だ。

 

 なので死者の蘇生に関してはカバーストーリーが作られる事となった。

 

 簡単に述べると「最前線で戦っていた戦士達を蘇生するのにチカラを使い果たしてしまった」と言った感じだ。

 

 実際チカラを使い果たして気絶しているエリーゼを目撃していた人は多い為、信憑性はそれなりにあるだろう。

 

 勿論これだけでは周りを誤魔化すなんて不可能な為、基地内での活動が評価された形として私直属の秘書として就職する事でより強く私や紫電の後ろ盾を得る事で、彼女の身の安全を守っている。

 

 無事に学校を卒業出来た事と合わせての就職である上に、相応に努力してくれていたお陰でどの分野の成績も高水準を維持出来ていた為、外から見る分には違和感は余り無い。

 

 とまあ、そう言った経緯でエリーゼはここに居るという訳だ。

 

 

「何にしても、学校をちゃんと卒業出来たみたいで何よりだよ」

 

「うん。一時期はダメかなって思ってたけど、思ったよりも早く事件が終息してくれたから支障無く授業も受けられたよ。オンライン授業だったお陰でもあるかな」

 

 

 エリーゼはそう言いながらテーブルに置いてあったリモコンでモニターを起動させる。

 

 映し出されたのはモルフォに引っ張られながらちょっと恥ずかしそうにしているシアンと、逆に堂々とモルフォの横を歩くアミカの姿。

 

 この映像は少し前に放映されたモルフォスペシャルライブの物で、この時は物凄く大きな反響がこの国に響いた物だった。

 

 私達からすればもう慣れた物だが、他の人々からの視点では皇神から新たに発表された新しいバージョンのモルフォと言っても良かったからだ。

 

 この時のシアンは決戦の時の小さな姿をしており、顔を赤らめながらモルフォの影に隠れている。

 

 人々の前に初披露した姿がこれであった為、その愛くるしさから一気に国民のハートを鷲掴みにする程の人気を獲得しており、評判は上々だ。

 

 対するアミカも、モルフォとは正反対の印象を与える黒モルフォ姿での登場は別の意味で大いに国民を驚かせた。

 

 あのモルフォの闇落ちを連想させるような姿は、この国に住む者にとって絶大な衝撃を与えるからだ。

 

 それに加え、私と最初に会った時みたいな挑発的で上から目線的なキャラ設定だったのもそうだろう。

 

 そして彼女は以前のやらかしが原因なのか、一部海外でカルト的な人気が爆発している。

 

 何でも頭領さん曰く、彼女は幽霊としての恪が世界的に見ても絶大である事から、霊能者を始めとしたオカルト関係者を強く惹きつけるらしい。

 

 彼女を直視すると強すぎるチカラのお陰で並大抵の霊能者は気絶してしまうが、離れた上で画面越しに見る分には大丈夫らしく、裏八雲内でも彼女の人気は高い。

 

 ……改めて、あの場面でアミカのアキレス腱と言うべきB.Bを借金漬けにした紫電の手腕はお見事であったと思う。

 

 借金と言うのは余り宜しくないイメージを持たれるが、それが一定の金額を超えるとまた意味が変わる。

 

 何しろ借金を回収しなければいけない以上、お金を貸した側も全面的に協力せざるを得ないからだ。

 

 今回のB.Bの借金漬けはその性質を利用した物で、この国に住む為の彼の身分証明やその他諸々の手続きを行わせる事に加え、首輪を付けると言う意味合いも存在する。

 

 ハッキリ言えばそれだけの価値がB.Bにはある。

 

 彼を慕うアミカは謡精暴龍を倒した事で能力的な意味で弱体化してしまったが、それでも龍放射を操ると言う特異な能力は間違い無く有用だし、現裏八雲が保有する封印の第七波動の上位互換とも言える能力を持つ鎖環(ギブス)を持つきりんの存在もそうだし、B.Bの持つ死霊(ガイスト)も有用な能力だ。

 

 これから能力者が増え続け、最終的に能力者だけになるこの世界。

 

 極めて有能な能力を抱えるこの三人を確保できたのは本当に有意義だったと思う。

 

 それに、国家規模の借金何て言われているが、回収する事は十分に可能だろうと私は考えている。

 

 何しろアミカの人気は相応にあるし、B.Bときりんも皇神社員として入社しているし、何より紫電が借金を回収できる道筋を立てているからだ。

 

 借金を負った直後は青い顔になっていたB.Bだけど、今ではこれらの話を聞かされたお陰か顔色は良くなっている。

 

 そこまで回想してエリーゼにお茶のお代わりを要求しようとしたその直後、ドアを叩くノックの音が鳴り響く。

 

 遠隔操作でドアを開けてみれば、そこに居たのは()()()()()()アキュラとロロだった。

 

 

「久しぶりだな。二人共」

 

『久しぶり! フェムト君、エリーゼ!』

 

「お久しぶりです。アキュラさん、ロロさん」

 

「久しぶりです。アキュ……()()()。今日はどうしたんですか?」

 

「また暫くこの世界で厄介になる。だから仮拠点の用意を頼みたくてな」

 

「分かりました。()()()()()()()()()()()()()()以上、そうせざるを得ないでしょうし」

 

『アキュラくんってさ、ほんっとうにミチルちゃんに甘いよねぇ。まあそれに賛成しちゃうぼくも、人の事は言えないんだけどさ』

 

 

 戦いが終わって暫くした後、この世界のアキュラが目を覚ました。

 

 つまり、私の知るアキュラ(イクス)がこの世界に居る理由は無くなってしまったのだ。

 

 元々いつでも目を覚ましてもいい様な手筈は整っていた為、帰還する分には問題無かった。

 

 しかし、ミチルに「もう会えなくなっちゃうのは嫌だ」と涙目で言われてしまった為、同じように懇願されたコハク達も一緒に定期的にこの世界へとお邪魔するようになったと言った感じだ。

 

 ただし、仮に見られてもいい様に仮面を付け、ロロも身体を用意すると言った措置を済ませているが。

 

 

「それで今回来たのはミチルの頼みでもあるが、別の事情もある」

 

「別の事情……ああ、あの事ですか」

 

 

 戦いが終わった直後、メビウスは私達に意味深な言葉を残してGVの中で眠りについた。

 

 その言葉の内容を要約すると、「この世界は非常に特異な世界で、とても良く目立っている。だからこれからも定期的に別の可能性世界からの来訪者が訪れるだろう」と言った感じだ。

 

 つまり、今後も否応なくこの世界は来訪者達が訪れ、場合によっては先と同じ様な事件が起こるという事でもある。

 

 そう考えると今回の事件である【暴龍事変】を比較的被害を抑える形で経験できたのは、逆にこれから起こるであろう様々な事件のチュートリアル的な意味で有意義であったと私は思う。

 

 そんな風に考えつつアキュラの仮拠点の手続きを終わらせ、彼らがこの部屋から出たタイミングで携帯端末から通信が入った。

 

 

『やあフェムト』

 

「どうしたの紫電? こんな時間に連絡を入れるなんて珍しい」

 

『この世界にまた来訪者が現れたと思しき痕跡を発見してね』

 

「痕跡ですか?」

 

『そう。ただ前回の時とは違って、今回はこの国の外で現れたらしいんだ。今はまだ目立った活動はしていないらしいけど、どうにもキナ臭い感じがする。また近い内にキミの出番もあるかもしれない』

 

「私としてはもう前線に出るのはこりごりなんですが……」

 

『分かっているさ。ボクとしてもフェムトを前に出すのは避けたい。だけど万が一という事もある。とは言え、GVが皇神に正式に入社してくれたから戦力的な意味で困る事は無いけどね』

 

「でも、GVは基本シアン達の護衛が仕事じゃ無いですか。簡単には動かせないでしょう?」

 

『それがそうでもないんだ。彼はキミから雷撃操作能力を伝授してもらった結果、座標さえ指定すれば何時でも何所でも()()()雷速で転移出来る様になったみたいだから』

 

「……もう何でもありですね、GVは」

 

『敵ならばともかく、味方である以上これほど頼もしい存在は他にはいないよ。……でも、相手がそれを承知している可能性もある。そこでキミに声を掛けた訳さ。フェムトも能力が強化されたから、ある程度は仕事しながら自由に動けるだろう?』

 

 

 私の能力が蒼き黄龍(リトルスフィア)になって強化されたお陰で、TASを経由しながら遠隔で何時でも何所でもリモートワークをする事が可能となった。

 

 これは私がこれまで仕事中にやっていた一時的に並列思考数を増やすスキル(シンキングアップ)が常時発動できるようになった事で出来る様になった事だ。

 

 お陰で眠りを必要としない体質もあって、物凄く仕事が捗るようになったのは朗報と言えるだろう。

 

 しかし、それで他の人の仕事を奪ったりするのはマズいと私も紫電も承知しているので、デスマーチ状態にならない限り基本セーブしている、或いはプライベートにおける作業にその労力を回していたりする。

 

 例えばTASの最適化であったり、錫杖の扱いであったり、ニコラから教わった奥義の練習であったり等様々で、最近は奥義の習得にチカラを入れている。

 

 ニコラの奥義に関しては、物語の様にぶっつけ本番で扱う事は出来なかったが、それでも決戦の時は見よう見まねで動きだけを真似ただけで大分戦いやすくなったので、ちゃんと習得出来ればこの先起こるであろう事件でも大きなチカラになってくれるだろう。

 

 

『話は変わるけどフェムト。TASを用いた実証試験部隊、思ったよりもいい結果が出てるよ』

 

「本当ですか? それは良かった」

 

『このまま順調に行けば()()()()()()()()()()()に目途が立ちそうだよ。いやホント、感謝してるよ』

 

「そう言って貰えると、苦労して実証データを集めてシステム構築した甲斐があったってもんです」

 

 

 能力者が台頭して問題になる事、それは能力の格差。

 

 特に純粋な暴力として振舞う際のチカラの差と言うのは能力者部隊を抱えているこの皇神に置いて、絶対に避けては通れない問題だ。

 

 一般的な部隊運用をする場合、特殊な運用をする部隊は別として、基本的に戦力を平均化しなければそもそも部隊と言う物は機能しない。

 

 そこで紫電から個人的な依頼として、この問題を何とか出来るシステムを構築して欲しいと頼まれていた。

 

 これを聞いた当初は余りにも無理難題でどうしようもないと思っていた物だが、色々とこれまで四苦八苦したお陰で何とか依頼を果たせそうだと今では安心している。

 

 その過程で生まれたTASの最適化は今も続いており、実証試験部隊が集めてくれたデータの反映も常に行われており、今のTASは暴龍事変の頃とはもう既に別物と言っても良い出来になった。

 

 アビリティはTASに完全にシステムとして組み込み、かなり特殊なアビリティはONOFFを任意に出来る様にして、パラメーター表記の簡略化も大分進んでいる為管理も容易で扱いやすくなっている。

 

 

『部隊内での評判も上々だし、このまま……うん?』

 

「どうしたの、紫電?」

 

『連絡が入ったからちょっと待ってて欲しい。……ふむ。……ふむ。なるほど、分かった。それはこちらで何とかするよ。それじゃあ、通信を切るよ。……ふぅ。お待たせフェムト。さっきの連絡は例の来訪者達の件だよ。どうやら思った以上に厄介な連中らしい』

 

「…………」

 

『近い内に、本当にキミの出番が来るかもしれない。だから今の内に練度を高めておいて欲しいんだ』

 

「分かったよ紫電。こっちでも色々と準備しておくから」

 

『それじゃあ通信を切るよ。皆にこの事を知らせないといけないからね』

 

 

 この言葉を最後に紫電との通信を終えた。

 

 ……どうやらまた厄介な事が起こり始めようとしているらしい。

 

 

『頑張ろうね、フェムト』

 

「わたしは何時だってフェムトくんと一緒です」

 

「わたくしも同じです。一緒に、この世界を生き抜きましょう」

 

 

 私の愛しい、そして生きる意味でもある三人から激励の声を掛けられる。

 

 私はそれを嬉しく思いつつ、部屋に立てかけていた錫杖を持ち出し、エリーゼと共に訓練場へと向かうのであった。

 

 この賑やかな世界で生き抜く為に。

 

 リトルと、エリーゼと、アニムスと共に歩む為に。

 

 一歩ずつ、確実に。

 

 

 

 




これで本編は無事完結しました。
ここまで来れたのは一重にここまで読み進めてくれた皆様のお陰であると言わざるをえません。
この後のお話と番外編も続けて行く予定ですが、本小説は諸事情により投稿間隔が空く事をご了承下さい。
より詳しい詳細は活動報告にてお知らせしています。
そして誠に恐縮ですが、もし宜しければ評価と感想をよろしくお願い致します。

では、改めまして……ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。





〇立てかけてある錫杖について
麒麟デバイスでは無く、裏八雲で鍛造してもらった物。
決戦の時にあまりにも手に馴染んだ為、フェムトが自発的に扱ってみようと手を出し、訓練に励んでいる。
なお、見本となった麒麟デバイスは犠牲となったきりん本人の希望によって完全に破棄されている。

〇GVの転移能力について
鎖環本編で暴走能力者達を全員鎮圧した後で発生したイベントで、ミサイル(と言う名の艦艇)を迎撃に向かった際に使用された物。
鎖環本編では安全性に問題があるから使用はこの時限りの物だったが、フェムトから伝えられた雷撃操作能力によってこの問題がクリアされている。

〇各種エンディングについて
トゥルーエンドはこの様な感じに終わりますが、他のエンドでは当然結末が違います。

ノーマルエンドはGVが暴走した際、アキュラに滅びた可能性世界に飛ばされて終わり、その後時間が経ってからフェムトが次の段階(ネクストフェーズ)へと覚醒し、GVを迎えに行くタイミングで終わるある程度希望のあるエンドとなっている。

バッドエンドはデマーゼル出現時の時点でエリーゼ、リトル、アニムスが諸々の事情で消滅してしまっており、その場にいたアキュラとロロとアミカときりんを除くGVや仲間達はデマーゼルに倒されてしまう。それでも四人が何とか新生デマーゼルと奮戦している間にフェムトを中心に無印でも起こったアレに近い現象が発生し、蒼き雷霆がフェムトに宿ると言う超展開が発生。
エリーゼ達が消滅してしまった為皆は生き返らず、紫電も含めた皆も死んでしまった為フェムトは復讐者と化し、執念でデマーゼルを撃破する。
しかし、紫電を始めとした主要な人物が死亡してしまったこの国を立て直す事は到底出来ず、しかも近い未来、フェムトはGVと同じ末路を辿る事となり……
なお、B.Bが復活していないルートである為、アミカがペスニアとしてフェムトのヒロインをやるルートでもある。
GVの代わりに蒼き雷霆による悲劇は続いて行くと言う意味で別名【ネバーエンド】とも呼ばれる。

大まかなエンドはこのような感じだが、「TASが完成していない」「エリーゼが立ち直っていない」「アニムスが人型になっていない」等でより細かく分岐する。
中にはストーリーを進めている間に起こる「魂の過労死エンド」や「滅びゆく世界(バニシングワールド)ver.生命暴龍エンド」なんかも存在している。
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